JP3212626B2 - 長短複合糸およびその製造方法 - Google Patents

長短複合糸およびその製造方法

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JP3212626B2
JP3212626B2 JP04869091A JP4869091A JP3212626B2 JP 3212626 B2 JP3212626 B2 JP 3212626B2 JP 04869091 A JP04869091 A JP 04869091A JP 4869091 A JP4869091 A JP 4869091A JP 3212626 B2 JP3212626 B2 JP 3212626B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強い張り・腰・反撥性
並びにこれと全く相反する柔らかいソフトタッチとを同
時に有し、しかも非常に均一なスパン調の外観とタッチ
とを有する、従来にない感性豊かな衣料用合成繊維糸条
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】強い張り・腰・反発と柔らかいソフトタ
ッチとは相容れない特性であり、両特性を同時に有する
ような高感性の衣料用素材は、シルク,ウール,コット
ンなどの天然繊維の中の極く一部の高級品を用いたもの
に僅かに見られる程度で、合成繊維は勿論天然繊維にお
いても、上記の要求を充たすための研究はされている
が、一般には未だ十分なものは開発されていないのが現
状である。何故なら、両特性を単一素材で表現するのは
極めて難しいため、これまでは主として太さの異なる繊
維同士を複合する方法が種々行われてきたからである。
しかるに、複合材が短繊維のみの場合は、繊維長が短い
かあるいは座屈による捲縮を有している、ことなどから
腰,反撥が得られ難い。そのため、デニールを太くして
いくとこんどは糸表面に露出した繊維端がチクチクして
風合を損なうなどの問題や、太細繊維の混紡斑さらには
ドラフト斑が発生し易く均一な糸が得られ難いといった
問題があった。
【0003】一方、デニールの異なるフィラメントから
なる長繊維のみの場合は、両者は単繊維つまりフィラメ
ントオーダーで均一に開繊し難く、かつ熱収縮が両者共
各々の糸内で同一水準にあるため、太デニール群、細デ
ニール群のフィラメント各々同士でブロック化して混繊
斑になったり、また太い繊維が糸表面に露出し易いとい
う問題がある。さらに、細デニールフィラメントがいわ
ゆるタスラン糸のようにループ化してしまい高反撥性が
得られない問題、長繊維同士のために、外観が均一,単
調,人工的で感性に富んだスパン風合,ナチュラル外観
が得られ難く、品位に欠けるといった問題があった。
【0004】さらには、短繊維の場合は勿論、長繊維の
場合にも太い繊維を糸の芯部に入れかつ細い繊維を糸の
鞘部に均一に位置させることが難しいという問題もあ
る。
【0005】所で、これらの欠点を改良するため短繊維
と長繊維とを複合した長短複合糸のケース、例えば紡
績工程の精紡工程で長繊維を糸の芯部に挿入したコアス
パン、特開昭59−82424号公報や特開昭60−
2715号公報などに見られるように、細デニールのフ
ィラメント群を引き千切りながら別の太デニールのフィ
ラメント群と抱合したもの、あるいは特開昭57−5
932号公報に見られるように、高伸度で太デニールの
フィラメントと低伸度で細デニールのフィラメント群と
からなる長繊維束を延伸機または延伸仮撚機で延伸し、
その際細デニールフィラメントを切断して抱合したもの
など、いわゆる長短複合糸がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの方法
では未だ外観,風合共に満足される品位のものは得られ
ていない。即ち、の場合は、長繊維と短繊維の単なる
合撚のため、(a)両者の間での抱合、からみ合いが弱
く、甘撚,中撚では取扱が難しい、(b)長繊維対比短
繊維の過剰供給が難しく嵩性が出し難い、(c)細デニ
ール繊維の方が短繊維のため0.8de 以下の細い繊維にな
ると紡績が難しい、あるいは(d)工程が繁雑で生産性
が低く、コストが高くなる、などといった問題がある。
また、の場合は、(a)太デニールのフィラメント群
を糸加工工程の途中から高張力で挿入するため、開繊し
難く、牽切された細デニールフィラメントと太デニール
のフィラメントとの抱合性が弱くなり易い、(b)細デ
ニールフィラメントを常温で引き千切るのに対し、太デ
ニールフィラメントは単にこれに引き揃えるだけであ
り、後者対比前者の熱収縮を大巾に小さくすることがで
きないため、細いデニールフィラメントによる太デニー
ルフィラメントのカバリング効果が得られ難い、あるい
は(c)牽切斑が起り易くて細番手の糸が得られ難いな
どといった問題がある。さらに、の場合は、牽切比が
小さいため、牽切長の割には牽切繊維長が長くなり易
く、かつ一般の延伸機や延伸仮撚機のニップローラーの
間隔は長尺であって、この間隔で牽切したのでは、
(a)平均繊維長が600〜700mm以上にもなり、斑
ピッチが天然繊維よりはるかに長くなって不自然な外観
になり易い、(b)牽切ローラーに相当するニップロー
ラーが一点ニップでない巻掛け式あるいは一点ニップで
も一般に使われているような数kg/ローラー幅1cm程度
の接圧のゴムローラーないしエプロンローラーのニップ
力では、ニップ点で繊維のスリップやニップ斑が発生し
易く、均一に牽切することが難しい、(c)フィラメン
ト糸のように構成繊維本数が少い繊維束を牽切する場
合、繊維束の集束性が弱く、牽切された繊維のフリー端
部が空気抵抗や牽切ローラー表面の随伴気流によって影
響を受けてニップローラー間に均一に把持され難く、牽
切斑が発生し易い、(d)ホットローラーやプレートヒ
ーターで加熱した状態では繊維束の伸張応力が低くな
り、わずかな力でも伸び易く牽切斑が発生し易くなった
り、牽切繊維のフリー端部が熱収縮して染斑が発生し易
くなる、などの理由により、均一牽切が極めて難しい状
況にある。また、フィラメント群をヒーターで加熱しな
がら牽切すると牽切繊維が熱セットされてしまうことに
なり、異デニールフィラメント間の熱収縮差が少くなっ
て嵩性が得られないとか、延伸仮撚の場合は捲縮が発生
し、かつ無撚のため抱合部と非抱合部で嵩性が異なり外
観斑が発生したり、仮撚捲縮糸独特のふかついた風合に
なったり、熱セットの影響で異デニールフィラメント間
の熱収縮差が縮小してしまうといった問題もある。
【0007】本発明は上述の問題点を解決し、ソフトタ
ッチでありながら腰,反撥があり、かつナチュラルで均
一性に富んだ外観とスパンタッチを有する、従来にない
感性の高い衣料用合成繊維糸条およびその合理的製造手
段を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、(1)
共に非捲縮で、均一に冷延伸された長繊維(A)と、該
長繊維よりも沸水収縮率が小さく、かつ少くとも一方の
端部が先細り状の短繊維(B)とが抱絡され、その際長
繊維(A)の周りに短繊維(B)が異なった張り出し振
幅でループを形成しつつ存在することを特徴とする長短
複合糸 さらには(2)太デニールで高伸度のフィラメントと細
デニールで低伸度のフィラメントとからなる紡糸混繊糸
を高々2倍以下の牽切比で牽切工程に通して、高伸度フ
ィラメントと低伸度フィラメントの中間の伸度領域で伸
張牽切することによって低伸度のフィラメントのみを牽
切する際に、牽切伸張倍率を高伸度フィラメントとの一
次降伏点以上で切断伸度の80%以下とし、かつ牽切中の
混繊糸の側面の少くとも一部に表面が滑らかな面状のガ
イドを押し当てることを特徴とする長短複合糸の製造方
法が提供される。
【0009】以下、添付図面により本発明を詳述する。
【0010】図1(a)は本発明の長短複合糸の側面
図、同(b)はその部分拡大図である。
【0011】図において、Aは非捲縮で牽切時に均一に
冷延伸された長繊維である。Bは非捲縮でAよりも沸水
収縮率が小さく、かつ少くとも一方の端部が先細り状の
短繊維であり、その一部は自由端b1 として突出し、残
りは長繊維Aの周りに異なった張り出し振幅でループb
2 を形成した形で該長繊維Aと抱絡されている。ここ
で、短繊維は通常その突出端部が先細り状であるが、長
繊維A中に抱絡されている他端部も先細り状になること
がある。
【0012】ここで、所望の長短複合糸を得るには、長
繊維(A)および短繊維(B)共に非捲縮であること
(要件a)、長繊維(A)は牽切時に均一に冷延伸され
ていること(要件B)、短繊維(B)の沸水収縮率が長
繊維のそれよりも低いこと(要件c)、短繊維(B)は
少くとも一方の端部が先細り状であること(要件d)、
短繊維(B)は長繊維(A)の周りに異なった張り出し
振幅でループを形成していること(要件e)、が前提と
なる。そして、各要件の意義は次の通りである。 要件a 紡績糸や仮撚加工糸のような捲縮を付与すると曲げに対
する硬さや回復性が低下し、いわゆる張、腰、反撥等の
風合が悪くなるほか、不適正な伸縮性や嵩性が発生して
ふかついた風合になってしまい、品位的に従来の紡績糸
や仮撚加工糸などと大して差のない品位のものしか得ら
れなくなる。 要件b 短繊維に対して高い沸水収縮率にする必要性および染色
仕上げ工程で織物組織による糸の折れ曲り構造をセット
し易くして反撥性のある風合を得るために冷延伸が必要
であり、また染斑を防ぐために均一に延伸されなければ
ならない。 要件c 逆に短繊維の沸水収縮率の方が高くなると、太デニール
の長繊維がたるんで糸の表面に出易くなりソフトタッチ
が得られなくなる。 要件d 天然繊維の羊毛や木綿のように短繊維の少くとも一方の
端部、特に突出端部を先細り状にすることにより、いっ
そうソフトタッチの風合が得られるほか、短繊維の長さ
方向に物性が変化するため、より複雑で、よりナチュラ
ルな集合体構造が得られる。 要件e 上記の一結果として、短繊維の長さ方向に沿って沸水収
縮率が徐々に変化するため(一般には中央部が最も高
く、両端部に向って徐々に低下する)、長繊維の周りに
突出する短繊維の張り出し振幅が大中小さまざまとな
り、曲げに対する抵抗や回復性が向上して張、腰、反撥
性に富んだ風合が得られるほか、適度なふくらみ感も得
られる。
【0013】さらに、本発明の複合糸にあっては、上記
(a)〜(e)の必須要件の下で、さらに以下の要件
(i)〜(vii )を充足することが好ましい。 要件(i) dA /dB ≧2 [dA ;長繊維Aの単繊維デニール、dB ;短繊維Bの
短繊維デニール] (ii) dB <2 (iii ) 3.3≧DA /DB ≧0.3 [DA ;長繊維Aの全デニール、DB ;短繊維Bの全デ
ニール] (iv) lB /lA ≧1.01 [lA ;2mg/de荷重下で測定した複合糸の糸長(m
m)、lB ;lA の状態の糸条を伸張し、長繊維の側面
に突出している短繊維のループがほぼ消滅したときの複
合糸の糸長(mm)] (v) LB /LA ≧1.03 [LA ;2mg/de荷重下で20分沸水処理し、乾燥し
て測定した複合糸の糸長(mm)、LB ;LA を伸張し、
長繊維の側面に突出している短繊維のループがほぼ消滅
したときの複合糸の糸長(mm)] (vi) S≦25 [S;複合糸の沸水収縮率(%)] (vii ) 60>Lm >10 [Lm ;短繊維の平均繊維長(cm)] (i)の要件は風合上複合効果を出す上で重要なもの
で、更に6≧dA /dB ≧4が特に好ましい。その際ソ
フトタッチの面から(ii)の要件が浮かび上がってく
る。さらに、(iii )の要件は、(i)の要件と合わせ
て強い張・腰,反撥と、これと相反する柔らかいソフト
タッチとを同時に満足させるためのものである。(iv)
の要件は短繊維(B)が長繊維(A)の周りに異なった
振幅でループを形成していることから導き出されるもの
で、短繊維(B)の糸足が長繊維のそれよりも長いこと
が要求される下限である。同様に(v)の要件は長繊維
(A)および短繊維(B)が沸水処理により収縮し複合
糸全体としてより嵩性を示すための要件である。要件
(vi)は複合糸全体として沸水処理により、より嵩性を
得るにはある程度の沸水収縮率を持つことが必要である
が、この沸水収縮率が25%を越えると実用上取扱性が
低下してくる。(vii )の要件は、自然な外観の複合糸
を得るために有効である。
【0014】そして、上記の長短複合糸の特に好ましい
態様は以下の通りである。 短繊維の長さ方向に沿っ
て沸水収縮率が徐々に変化しており、中央部は両端部の
それより大きく、平均沸水収縮率としては16%以下で
あること。この要件は複合糸全体の中で異収縮部を存在
させ多層ループからなる嵩性、ソフトタッチを表現す
る。ただ、沸水収縮率が16%を越えると、長繊維との
収縮差が少なくなり、嵩性が低下すると共に長繊維が露
出し易くなって、風合がガサツクようになる。 短繊
維が、 a.複合糸の断面方向にあっては非捲縮の連続フィラメ
ント間をマイグレートしつつ、該連続フィラメントと絡
合し、 b.複合糸の長手方向にあっては、該連続フィラメント
糸の側面から自由端として突出すると共に異なる張り
出し振幅でループを形成しつつ長繊維の周りに多層構造
部を形成して長繊維をカバリングし、これにより、該複
合糸が、沸水処理したときに断面及び長手方向にランダ
ムな収縮を発現するような潜在的な沸水収縮差が付与さ
れていること。 複合糸全体としては以下のU%式で
特定されるような均斉感を呈する。
【0015】U・N1/2 ≦104 [U;実測Uパーセント(%)、N;複合糸の任意断面
における構成繊維本数(本)] 複合糸素材がポリエ
ステル繊維であること。 特に、6≧dA ≧3、dB
<0.8、1.52≧DA /DB ≧0.25であるこ
と。これにより超長綿調の高級風合を呈する長短複合糸
が得られる。
【0016】次に、本発明における長短複合糸の製造方
法について述べる。
【0017】長短複合糸は、短繊維のみからなる糸条に
比べて太デニール繊維の硬さ,反撥性が有効に利用でき
るほか、糸表面に露出した場合の触覚の低下が少くて済
む利点がある。一方、長繊維のみの場合に比べると細デ
ニール繊維が牽切加工されるため太細や毛羽が付与され
ナチュラル風合が大巾に向上する利点がある。また、牽
切無撚抱合紡績法は従来型一般紡績法に比べ繊維長を長
くでき、複雑な熱収縮分布を付与でき、かつ加工速度が
圧倒的に速く、風合,生産性の点で優れている。このよ
うな理由で本発明者等はこの牽切無撚紡績法による長短
複合糸の製造について種々検討を行った。しかしなが
ら、実際にいろいろ検討してみるとこの牽切無撚紡績法
による長短複合糸は太さ斑,糸欠点,加工中の断糸など
が非常に多発し易いことが判った。つまり、特許的には
数多くの提案がなされているものの実際の商品は未だ市
販されたことがないことからも判るように、製造法が非
常に難しいことが判明した。その理由としては、短繊維
を長繊維と複合する場合、長繊維の分だけ短繊維の量を
減らして細くする必要があり、そのため短繊維成分の構
成本数が少くなって短繊維同士の集束性が弱くなる結
果、走行中に空気抵抗やニップローラー周囲の随伴気
流,牽切時のはねかえりショック,静電気等の影響を受
け易くなるためであることを究きとめた。特に牽切用の
供給繊維が太いと高倍率で牽切する関係で牽切中の繊維
の速度が一寸でも変動すると牽切ローラーにニップされ
る繊維本数が変化して太細斑,断糸などが発生し易く、
一方供給繊維が細いと低倍率で牽切する関係で牽切中の
繊維の走行速度が速くなって空気抵抗による乱れや供給
ローラーのラップ等の影響を受け易く、太細斑,糸欠
点,断糸などが発生し易い。さらに供給する原糸の構成
繊維の配列形態や集束性,油剤付着量,強伸度,均一性
なども敏感に影響する。
【0018】そこで、本発明者等はこれらの不利益を克
服するために鋭意研究した結果、太デニールで高伸度の
フィラメント群と細デニールで低伸度のフィラメント群
とからなる、捲縮を付与されていない紡糸混繊糸を牽切
域に供給し、該混繊糸を屈曲させて開繊状態を上げた後
で、該混繊糸の側面に面状ガイドを押し当てた状態で、
高伸度フィラメントは牽切せず低伸度フィラメントのみ
が牽切される倍率で伸張するとき、驚く程に均一な牽切
性が奏せられることを見出した。即ち、混繊糸を屈曲さ
せて擦過しながら走行させることにより、混繊糸中の構
成フィラメントのからみや固着が解かれ、1本1本の単
繊維が互いに余り干渉し合わず牽切できるようになるこ
とと、高伸度フィラメント群と低伸度フィラメント群と
が良く混ざり合うため、結果的には短繊維が長繊維に抱
持された状態で走行することになって、短繊維が空気抵
抗や牽切ローラー周囲の随伴気流の影響を余り受けるこ
となく安定走行できるようになるのである。さらに、牽
切中の混繊糸条の側面にガイドを押し当ててやると牽切
される繊維が牽切されない繊維とガイドに挟まれた状態
で走行させられる形になり、さらなる空気抵抗や牽切ロ
ーラー周囲の随伴気流の影響を受け難くなることが確認
された。ただし、供給する混繊糸がからみの少ない、静
電気や集束性の少ない油剤を用いた開繊性の良好なもの
であれば、上記の“屈曲”は必ずしも必要でない。
【0019】図2は牽切無撚紡績法の工程を示したもの
で、(a)は従来法、(b)は(a)の工程の牽切部に
おいて、糸条をガイド8で屈曲したもの、(c)は
(b)の工程において、牽切中の糸条の側面に、(a)
または(b)の工程における非接触シュート9に代え
て、接触式の面状ガイド10を押し当てたものである。
そして、表1は単繊維デニール4.6,全デニール1
8.4,伸度75%の高伸度フィラメント群と、単繊維
デニール0.5,全デニール40,伸度20%の低伸度
フィラメント群とからなる紡糸混繊糸条を無撚状態で3
本合糸した原糸を図1に示した各種工程に通した結果を
示す。即ち、上記の原糸1を供給ローラー2と牽切ロー
ラー3の間で1.3 倍に伸張して低伸度フィラメント群の
みを牽切して引取ノズル4を経て抱絡ノズル5で抱絡さ
せ、その後引取ローラー6で引取って巻取機7に巻取る
ものである。ここで、9は横断面が凹字形の非接触シュ
ートで、牽切中の糸条は該シュートの内壁面に接触する
ことなく走行する。また、4の引取ノズルとしては、一
般に旋回流ノズルが用いられ、他方5の抱絡ノズルとし
ては、旋回流ノズル、交絡(インターレース)ノズル、
あるいは両方の機能を具備したノズル等が用いられる
が、ここでは旋回流ノズルを用いた。
【0020】表1は上述の各工程で得た長短複合糸の物
性を示したものである。この結果から、図2に示す工程
において、(a)より(b)、さらには(c)の工程が
U%(太さ斑),シン・シックネップ(Thin, Thick, N
ep) (糸欠点)とも大巾に改善され、同時に、断糸回数
も大巾に向上し生産性も改善されることが判る。
【0021】
【表1】 使用原糸;2種の異なる面積の穴形状を有するキャップ
を用いて紡糸された4.6デニール,4フィラメント,
伸度75%の高伸度フィラメント群と0.5デニール,
80フィラメント,伸度20%の低伸度フィラメント群
とからなるポリエステル紡糸混繊糸条。
【0022】牽切加工条件;図2の(a),(b),
(c)の各工程に上記原糸を3本合糸して供給し、牽切
比1.3倍,加工速度400m/min で加工。牽切長は
28cmを採用。
【0023】特に本発明の工程(c)によれば、次式 U・N1/2 ≦104 [N;複合糸の任意断面における構成繊維本数(本)、
U;実測Uパーセント(%)] のNに便宜的に高伸度フィラメント群と低伸度フィラメ
ント群の繊維本数の和を代入するとU・N1/2 =61.
5となり、普通の紡績工程で得られる紡績糸がU・N
1/2 =104〜128であることからして驚くべき均一
性を有する長短複合糸が得られることが判る。
【0024】ここで、牽切ゾーンで糸条に与える屈曲の
程度としては、図2(d)に示すように曲率半径r≦1
0,屈曲角度θ≦160°が好ましく、これより大きい
と十分な開繊効果が得られ難い。また屈曲ガイド8の挿
入位置としては供給ローラーと牽切ゾーンの中間点の間
であれば任意の箇所を選ぶことができる。ガイド形状と
しては丸棒状、板状等が挙げられる。材質としては摩耗
を受け難いものが好ましいが、トラバース方式にして糸
がガイドの一点のみを擦過するのを防止してやれば、こ
の限りではなく自由に選ぶことができる。
【0025】次に、牽切中の糸条の側面に押し当てる面
状ガイドについて述べる。糸条側面に沿って牽切ローラ
ーのニップ点近傍まで軽く接触するもので、形状および
押し当てる角度は自由に選ぶことができる。即ち、板
状.わん曲板状,パイプ状,溝付板状などがあるが、糸
に接触する箇所は滑らかでかつ摩耗し難く静電気が発生
しない材質が好ましい。“接触”の意味は、切断された
低伸度フィラメントを、切断されない高伸度フィラメン
トとプレートガイドとの間で挟持しつつ走行させ、切断
短繊維の飛散、乱れ等を防止することにある。
【0026】さらに、牽切長について述べる。本発明は
高伸度フィラメント群と低伸度フィラメント群とからな
る混繊糸条を牽切ゾーンに供給し、両糸条の伸度の中間
の伸張を加えて低伸度糸条のみを切断するものであるか
ら、牽切倍率としては高々2倍以下であり、従来の牽切
無撚紡績法の30〜10倍のオーダーとはかなり挙動が
異なる。即ち従来に比べて供給ローラーの速度が非常に
速くなるため供給ローラーから送り込まれる糸長が無視
できなくなり、従来の高牽切倍率の場合より牽切繊維の
平均繊維長は長くなるという現象を究きとめた。表2は
64de/144fil,伸度18%の原糸を用いて、
図2(c)の工程を使用し、低牽切倍率と高牽切倍率で
各々130Deになるように原糸の合糸本数を調整し、
これを牽切加工して得た糸条の平均繊維長について測定
した結果である。驚くべきことに低牽切倍率を使用する
と平均繊維長が牽切長より長くなる場合も出てくる。従
って、従来の牽切長やいわんや図3に示すような普通の
延伸機(a)や延伸仮撚機(b)を流用したものでは繊
維長が長すぎ斑ピッチも長尺化し、かつフィラメントラ
イクとなり不自然な外観となり好ましくない。即ち、適
正な平均繊維長は50cm以下、好ましくは30cm以下が
製品外観上必要で、従って牽切長は約50cm以下、好ま
しくは30cm以下にする必要がある。
【0027】なお、図3において、11はヒーター,1
2は仮撚スピナーである。
【0028】
【表2】 使用原糸;全デニール64de,単糸デニール0.4d
e,伸度18% 加工条件;図2(c)の工程を利用。加工デニールが同
じになるよう牽切倍率によって供給原糸の本数を調整。
加工速度は400m/min 。
【0029】本発明の方法によれば、供給原糸が良く開
繊されかつ高伸度フィラメント群と低伸度フィラメント
群とが良く混ざった状態で空気抵抗その他の外乱作用を
余り受けず均一に牽切されて抱合されるため、糸性能面
でも図1(b)に示すように短繊維が長繊維の間をマイ
グレートしつつ長繊維と結合し、かつ長繊維の側面から
自由端が突き出したり、一部巻き付いたり、また異なる
張り出し振幅で短繊維が均一に分散した状態で多層構造
部をも形成して長繊維の周囲を短繊維がカバリングした
状態が得られる。
【0030】さらに、長繊維(太デニールのフィラメン
ト群)の方が配向が低く冷延伸されているため熱収縮が
大きく、他方短繊維は引き千切られているため長さ方向
に熱収縮分布をもち、配向が長繊維より高く熱収縮が低
い。このために、太デニールのフィラメント群が芯にな
り、その周囲に細デニールの短繊維がランダムに嵩を出
す潜在的熱収縮性能を呈する。この結果織編物にされ仕
上げられると表面が非常に柔らかいタッチを有しなが
ら、一方では腰,反撥も強いという、従来にない優れた
風合、さらには均一かつナチュラル外観を有した高感性
の製品が得られる。
【0031】なお、単繊維デニールについては、表3に
長繊維と短繊維の単繊維デニールと風合および加工性の
関係を示す。
【0032】
【表3】 ソフトタッチ風合を得るためには当然のことながら短繊
維は細い方が良く、風合上から短繊維デニールを2デニ
ール以下にすることが有用である。ここで、これを0.
8デニール以下まで細くしてやるとスーピマ綿や海島綿
などの高級綿使いの製品のような高触感のものも得られ
る。また、長繊維と短繊維の単繊維デニール比も風合上
重要で、長繊維の単繊維デニール/短繊維の単繊維デニ
ール≧2の要件を満たすことが重要である。表4は長繊
維と短繊維の全デニールと風合の関係を示したものであ
るが、風合上長繊維の全デニール/短繊維の全デニール
=0.3〜3.3にするのが好ましい。即ち長繊維と短
繊維の単繊維デニールおよび全デニールおよびこれらの
比率が上記範囲にあるときは、特に強い張・腰・反撥と
これと相反するソフトタッチとを同時に満足する高感性
の衣料用合成繊維が得られる。
【0033】
【表4】 全デニール ;130de 長繊維単繊維デニール;4.2de 短繊維 〃 ;0.4de 風合 ;筒編地をボイル処理してハドリ
ング評価 以上のことからも明らかなように、本発明の長短複合加
工糸を得るに当って重要なことは、牽切工程において原
糸である紡糸混繊糸が高度に開繊され、ランダムに切断
されることである。この意味では、上記の紡糸混繊糸に
その様な潜在的特性(高度の開繊性、ランダム切断性)
を付与しておくことも有用である。
【0034】そして、その具体的方策としては、紡糸混
繊糸に、静電防止能を有し、かつ室温で固状を呈する化
合物を紡糸油剤として付着し、さらに10ケ/m以下の
軽度の交絡を付与しておくことが極めて有用であること
が判明した。この点についての本発明者等の検討によれ
ば、ランダム切断のためには、従来のように単にフィラ
メント内部に構造的欠陥を生じさせるだけでは極めて不
十分であり、むしろフィラメント間の相互作用を低く
し、従来のマルチフィラメントと比較して、極度に集束
性を低下させることが最も重要であることが判った。さ
らに詳しく言えば、紡糸混繊糸に要求される最も重要な
特性は、巻取機に巻取られるまではフィラメントが十分
に集束され、次いでこの原糸を切断をともなう加工に供
した場合はその集束が容易にはずれ、ランダムに切断さ
れるということである。このための油剤として室温で固
状となるもの、例えばアルキル基の平均炭素数が12〜
18の範囲にあるアルキルホスフェートカリウム塩およ
び/またはアルキル基の平均炭素数が8〜18の範囲に
ある脂肪酸アルカリ金属塩を70重量%以上含有させる
よう調合したものが好ましい。さらに、上記以外に通常
繊維処理剤として使用されている界面活性剤、高級脂肪
酸、脂肪族多価カルボン酸、芳香族カルボン酸、もしく
は含硫黄脂肪族カルボン酸と高級アルコールもしくは多
価アルコールとからなるエステル、あるいは鉱物等の平
滑剤、脂肪酸、アルコール等の乳化調整剤等を本発明の
目的を損なわない範囲で適宜選択使用することができ
る。その付与に当たってはできるだけ均一に油剤を付着
させることが必要である。該油剤の使用により、紡糸時
のフィラメントには粘着性が付与され、適度な集束が施
される。従って、高速紡糸においても回転ローラーへの
巻き付きは見られず、かつローラー、ガイド類でのスカ
ムの蓄積、脱落といった問題も生じない。しかし、この
ように設計した油剤であっても、単にフィラメントに付
着させただけでは、空気中の僅かの湿度によっても粘着
性を呈するため、フィラメントはやはり強く集束されて
しまい、加工時のランダム切断は望めない。ところが驚
くべきことに、該油剤をフィラメントに付着後、一度絶
乾状態にすると、高湿度下にフィラメントを放置しても
再度の粘着性の上昇は起り難く、固状を保つことが見出
だされた。その結果、加工時のフィラメントの分繊性は
高く、その切断性も良好となる。さらに大きな利点とし
て、フィラメントに擦過等の軽い衝撃を与えることで、
絶乾状態を経た固状油剤は簡単に破壊・細分化され、フ
ィラメントの分繊性が一層向上することも判明した。
【0035】次に、空気ノズルによる糸交絡数は10ケ
/m以下である。これ以上の交絡数になると、たとえ油
剤が上記条件下で付着されたとしても、糸交絡部に応力
が集中し一斉切断してしまう。さらに、交絡の程度はな
るべく安定していることが好ましく、空気ノズルはでき
るだけ張力変動の少ない箇所に設置すべきである。この
ように、油剤と糸交絡数の条件をバランス良く満たすこ
とによりフィラメント間の集束性は低下し、よりランダ
ムな切断が期待できる。
【0036】このような考え方の下での好ましい紡糸混
繊糸の態様は、以下のようなものである。 I. dA /dB ≧2、dB <2、3.3≧DA /DB
≧0.3の異デニールフィラメントからなり、異デニー
ルフィラメント間の伸度差が20%以上で、かつ糸全体
には、静電防止能を有し、かつ室温で固状を呈する化合
物が紡糸油剤として0.1〜0.5重量%(OPU)付
着され、さらに10ケ/m以下の軽度の交絡が付与され
ている紡糸混繊糸 II. Iの態様において、細デニールフィラメントの平
均伸度が35%以下である紡糸混繊糸。
【0037】上記の“35%以下”の要件は、元々細デ
ニールフィラメントは切断されることが前提であるの
で、伸度は低い方が好ましい、ということから設定され
た値である。
【0038】ここで、上記の交絡数、OPU、および伸
度は以下の定義に従う。
【0039】糸交絡数 糸長50cmのサンプルを50℃の水中に30秒間浮かべ
て、この交絡点の数を読み取る。その操作を5回繰返
し、その平均数から1m当たりの交絡数に換算する。
【0040】油剤付着量(OPU) フラメント重量に対する油剤成分の重量比は常法(屈折
法)に従い求めた。
【0041】強伸度 オリエンテック社製、テンシロン(UTM−III )を使
用し、試長20cm、引張り速度100%/分の条件で室
温で測定した。
【0042】また、細デニールフィラメントを選択的に
切断するためには、太デニールフィラメントの伸度に比
べて、前者のそれを相当に低くしておく必要がある。し
かし、通常の丸断面同志の組合せでは太細フィラメント
間の伸度差が小さく、現実には細デニール側だけを切断
すること困難な場合もある。この点、細デニールフィラ
メントの紡出口金を異形断面特にマルチローバル形状と
して、表面積を増加した面の細デニールフィラメントを
紡出することにより、低伸度化(結晶化促進)が達成さ
れる。この場合の好ましい紡出混繊糸の態様は次のとお
りである。III . 太デニールフィラメントのデニール
(DA )と、細デニールフィラメントのデニール
(DB )との比(DA /DB )が2〜7、細デニールフ
ィラメントの断面がマルチローブであり、かつ異デニー
ルフィラメント間の伸度差が20%以上である紡糸混繊
糸。
【0043】なお、細デニールフィラメントの断面異形
度(R/r)が2.5以上であればよい。ここでRはマ
ルチローブに外接する円の半径であり、rは内接する円
の半径である。
【0044】また、紡糸混繊糸の紡出にあたっては、5
000m/分以上の超高速紡糸、あるいは2500〜5
000m/分未満の高速紡出糸を低倍率で延伸熱処理
し、太デニールフィラメントと細デニールフィラメント
との間の伸度差が少なくとも20%、細デニールフィラ
メントの伸度を30%以下にするのが好ましい。
【0045】本発明における原糸素材としては、ポリエ
ステルが好ましく採用され、就中テレフタル酸を主たる
酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、特に好まし
くはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テ
トラメチレングリコールから選ばれたアルキレングリコ
ールを主たるグリコール成分とするものを言い、例えば
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリエチレンナフタレート、ポリヘキサメチレン
テレフタレート等、あるいはこれらのポリエステルとイ
ソフタレート等の共重合体、これら各種重合体のブレン
ド体物があげられる。これらのポリエステルには通常使
用される艶消剤、安定剤、制電剤等の添加剤を含有させ
ることはいっこうに差し支えない。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、強い張り・腰・反撥性
並びにこれと全く相反する柔らかいソフトタッチとを同
時に有し、しかも非常に均一なスパン調の均斉な外観と
タッチとを有する、従来にない感性豊かな長短複合糸が
安定な工程の下で提供される。
【0047】以下、本発明を実施例により詳述する。
【0048】
【実施例1】 紡糸混繊糸の構造極限粘度が0.64の
ポリエチレンテレフタレート(艶消剤としてTiO2
0.3wt%含む)を溶融後、孔径0.18mm、ランド
長0.90mmの丸孔を80ホール、一方孔径0.39m
m、ランド長2.16mmの丸孔を4ホール有する同一の
口金から吐出した。吐出されたフィラメントは横吹き冷
却風により冷却された後、表5に示す油剤X,Y,Zを
夫々に付与されてから、旋回流ノズルを通過し、紡糸中
に1.33倍に延伸した後、120℃で熱処理し、40
00m/分の速度で巻取った。巻取られた原糸は0.4
8de×80本(伸度75%)のフィラメント群と、
4.0de×4本(伸度21%)のフィラメント群とか
ら構成される。表5において、X,Yは室温で固状を呈
する成分を含む油剤、Zは通常の油剤である。
【0049】
【表5】 紡糸混繊糸に対するOPU、交絡数、および該混繊糸の
紡糸性並びにランダム切断性について表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
【実施例2】実施例1の表6のNo. 5の紡糸混繊糸を3
本合糸して、図2(c)に示す牽切無撚紡績工程に供給
した。その際、供給ローラー2と牽切ローラー3の間で
屈曲ガイド8で原糸に屈曲を与え、かつ面状接触ガイド
9を軽く押し当てながら1.3倍に伸張して低伸度フィ
ラメント群のみを牽切し、引き続き吸引と旋回性を有す
る引取空気ノズル4、および強い旋回性を有する抱合ノ
ズル5に通して冷延伸した太デニールの長繊維と、牽切
した細デニールの短繊維とを抱合して巻取った。ここで
用いた屈曲ガイドは2φのセラミック製丸棒で屈曲角と
しては140°を採用した。また、牽切長は280mm,
牽切速度は400m/min ,引取ノズル圧は2kg/c
m2 ,抱合ノズル圧は3kg/cm2 ,抱合オーバーフィー
ド(牽切ローラー3の表面速度−引取ローラー6の表面
速度)/牽切ローラー3の表面速度×100(%)は5
%とした。
【0052】得られた複合糸は図1に示すような形態を
とっており、突出端部が先細り状の短繊維Bと、長繊維
Aとが抱絡され(詳細には、短繊維Bが長繊維Aとマイ
グレートしながら長繊維側面から自由端として突出して
いた)、加えて、短繊維Bは長繊維Aの周りに異なった
張り出し振幅でループを形成していた。そして、この異
なる張り出し振幅が多層構造となって糸の長さ方向に均
一に分散し、部分的に自由端が糸条に巻き付き長繊維の
周囲を短繊維が覆い非常に均一な外観を呈していた。
【0053】さらに、長繊維の平均沸水収縮率は17.
1%(R=4.5)、短繊維Bのそれは平均6%で中央
部は7.6%、先細り状の突出端部のそれは平均4.5
%(R=3.5)、他端部のそれは平均5.8%(R=
2.0)であった。
【0054】次に、得られた長短複合糸の物性を表7に
示す。
【0055】
【表7】 表7から dA /dB =8.4 U・N1/2 =87.5 DA /DB =0.47 であることが判る。
【0056】次に、この複合糸条に600T/Mの撚を
入れ経密度84本/inch,緯密度72本/inchの平織に
織製し、約20%のアルカリ減量とカレンダー加工を含
む染色仕上げ加工を施したところ、長繊維と短繊維間に
若干の染着差があるにもかかわらず織物製品としては染
着差がほとんど表面に現われず、かつ糸の太さ斑並びに
スラブネップ等の欠点もほとんどない均斉のとれた良好
な外観の織物が得られた。さらに、風合的には非常に柔
らかな触感(ソフトタッチ)をしており、かつ適当な張
・腰・反撥性があり、いわゆる高級超長綿を使った超高
級織物と同等かそれ以上の高感性を有した織物布帛が得
られた。また、驚くべきことに、毛焼処理を施していな
い状態では織物表面を毛羽が多数存在するにもかかわら
ず、また普通ηのポリマーを使用しているにもかかわら
ず抗ピリング性がICI法10時間のテストでも4級を示
した。この理由は定かではないが、原糸段階で太デニー
ルと細デニールとが混繊しており、かつ牽切時にも糸条
に屈曲を与えて原糸を良く開繊しながら牽切するため長
繊維と短繊維のマイグレーションが極めて良く短繊維が
織物組織から抜き出てこないということと、細デニール
フィラメントが牽切中に低伸度化するためと推定され
る。
【0057】
【比較例1】実施例1で得た混繊糸条を図3に示すよう
な普通のフィラメント延伸機(a)および延伸仮撚機
(b)に供給し、供給ローラー2' と取出しローラー
3' の間で1.3倍に伸張しながら各々延伸および延伸
仮撚を実施したところ、いずれも混繊糸条が一斉に切断
して断糸してしまい、ほとんど牽切加工が出来ない状態
であった。さらにまた、延伸機のホットローラーおよび
延伸仮撚機のヒーターを昇温せずに実施しても、また延
伸仮撚機の仮撚スピンドルを除去して仮撚を入れない状
態で実施しても牽切性の向上はほとんど認められなかっ
た。
【0058】
【実施例3】実施例1の表6のNo. 1の紡糸混繊糸を実
施例2と同様の条件で牽切加工した。得られた複合糸は
図1に示すような形態をとっているのは勿論であるが、
実施例2の場合に比べてより均整な外観を呈していた。
そして突出端部が先細り状の短繊維Bと、長繊維Aとが
互いに抱絡され(詳細には、短繊維Bが長繊維Aとマイ
グレートしながら長繊維側面から自由端として突出して
いた)、加えて、短繊維Bは長繊維Aの周りに異なった
張り出し振幅でループを形成していた。そして、この異
なる張り出し振幅が多層構造となって糸の長さ方向に均
一に分散し、部分的に自由端が糸条に巻き付き長繊維の
周囲を短繊維が覆い非常に均一な外観を呈していた。
【0059】さらに、長繊維の沸水収縮率は16.2%
(R=4.3)、短繊維Bのそれは平均6.3%で中央
部は9.4%、先細り状の突出端部のそれは平均4.2
%(R=3.2)、他端部のそれは平均5.3(R=
1.8)であった。
【0060】次に、得られた長短複合糸の物性を表8に
示す。
【0061】
【表8】 表8から dA /dB =8.4 U・N1/2 =74.7 DA /DB =0.47 であることが判る。
【0062】次に、この複合糸条に600T/Mの撚を
入れ経密度84本/inch,緯密度72本/inchの平織に
織製し約20%のアルカリ減量とカレンダー加工を含む
染色仕上げ加工を施したところ、長繊維と短繊維間に若
干の染着差があるにもかかわらず、織物製品としては染
着差が全く表面に現われず、かつ糸の太さ斑並びにスラ
ブネップ等の欠点も全くない均斉性に富んだ外観の織物
が得られた。さらに、風合的には非常に柔らかな触感
(ソフトタッチ)をしており、かつ適当な張・腰・反撥
性があり、いわゆる高級超長綿を使った超高級織物と同
等かそれ以上の高感性を有した織物布帛が得られた。ま
た、驚くべきことに、毛焼処理を施していない状態では
織物表面を毛羽が多数存在するにもかかわらず、また普
通ηのポリマーを使用しているにもかかわらず抗ピリン
グ性がICI法10時間のテストでも4.5級を示し
た。この理由は定かではないが原糸段階で太デニールと
細デニールが混繊しながらも、よりランダム牽切性が改
善されていること、牽切時にも糸条に屈曲を与えて原糸
を良く開繊しながら牽切するため長繊維と短繊維のマイ
グレーションが極めて良く短繊維が織物組織から抜き出
てこないものと推定される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の長短複合糸の側面図。
【図2】(a),(b),(c)は長短複合糸を製造す
るための種々の工程図、(d)は牽切中の紡糸混繊糸を
屈曲させる態様を示す側面図、(e)は牽切中の紡糸混
繊糸の側面に面状ガイドを押え当てた態様を示す斜視
図。
【図3】(a)は延伸工程を示す略線図、(b)は仮撚
工程を示す略線図。
【符号の説明】
A 長繊維 B 短繊維 b1 自由端 b2 ループ 1 原糸 2(2' ) 供給ローラー 3 牽切ローラー 4 引取ノズル 5 空気抱絡ノズル 6 引取りローラー 7(7' ) 巻取装置 8 屈曲ガイド 9 非接触式シューター 10 接触式面状ガイド 11 ヒーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 3/38 D01G 1/08 D02J 1/18 D03D 15/00

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共に非捲縮で、均一に冷延伸された長繊
    維(A)と、該長繊維よりも沸水収縮率が小さく、かつ
    少くとも一方の端部が先細り状の短繊維(B)とが抱絡
    され、その際長繊維(A)の周りに短繊維(B)が異な
    った張り出し振幅でループを形成しつつ存在することを
    特徴とする長短複合糸。
  2. 【請求項2】 短繊維内の長手方向に沿って沸水収縮率
    が変化しており、その平均沸水収縮率が16%以下であ
    る請求項1の記載の長短複合糸。
  3. 【請求項3】 短繊維が、 i) 複合糸の断面方向にあっては非捲縮の連続フィラ
    メント間をマイグレートしつつ、該連続フィラメントと
    絡合し、 ii) 複合糸の長手方向にあっては、該連続フィラメン
    ト糸の側面から自由端として突出すると共に異なる張
    り出し振幅でループを形成しつつ長繊維の周りに多層構
    造部を形成して長繊維をカバリングし、 これにより、該複合糸が、沸水処理したときに断面及び
    長手方向にランダムな収縮を発現するような潜在的な沸
    水収縮差が付与されている 請求項1または2記載の長短
    複合糸。
  4. 【請求項4】 複合糸全体としては以下のU%式で特定
    されるような均斉感を呈する請求項1,2または3記載
    の長短複合糸。 U・N1/2 ≦104 [U;実測Uパーセント(%)、N;複合糸の任意断面
    における構成繊維本数(本)]、
  5. 【請求項5】 長繊維(A),短繊維(B)が共にポリ
    エステル繊維である請求項1,2,3,4または5記載
    の長短複合糸。
  6. 【請求項6】 以下の(i)〜(iii)の要件を同時に
    満足する請求項1,2,3,4または5記載の長短複合
    糸。 (i)6≧dA≧3 [dA;長繊維Aの単繊維デニール] (ii)dB<0.8 [dB;長繊維Bの単繊維デニール] (iii)1.5≧DA/DB≧0.25 [DA;長繊維Aの全デニール、DB;短繊維Bの全デニ
    ール]
  7. 【請求項7】 太デニールで高伸度のフィラメントと細
    デニールで低伸度のフィラメントとからなる紡糸混繊糸
    を高々2倍以下の牽切比で牽切工程に通して、高伸度フ
    ィラメントと低伸度フィラメントとの中間の伸度領域で
    伸張牽切することによって低伸度のフィラメントのみを
    牽切する際に、牽切伸張倍率を高伸度フィラメントの一
    次降伏点以上で切断伸度の80%以下とし、かつ牽切中の
    混繊糸の側面の少くとも一部に表面が滑らかな面状のガ
    イドを押し当てることを特徴とする長短複合糸の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 牽切長が50cm以下である請求項7記載
    の長短複合糸の製造方法。
  9. 【請求項9】 牽切域で、牽切中の紡糸混繊糸条を屈曲
    させて擦過作用を与える請求項7または8記載の長短複
    合糸の製造方法。
  10. 【請求項10】 紡糸混繊糸を曲率半径が10以下のガ
    イドに160°以下の屈曲角度で屈曲させる請求項9記
    載の長短複合糸の製造方法。
  11. 【請求項11】 紡糸混繊糸が、静電防止能を有しかつ
    室温で固状を呈する化合物が紡糸油剤として付着され、
    さらに10ケ/m以下の軽度の交絡が付与されている請
    求項7記載の長短複合糸の製造方法。
  12. 【請求項12】 紡糸混繊糸中の細デニールフィラメン
    トの断面がマルチローバル形状である請求項7または9
    記載の長短複合加工糸の製造方法。
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