JP2004225173A - パイル織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】明瞭な畝を形成することができ、特にコール天として好適であるなパイル織物を提供する。
【解決手段】(1) パイル糸が紡績糸であるパイル織物であって、該紡績糸がポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含むパイル織物。(2) 前記パイル織物がコール天であるパイル織物。(3) 前記パイル織物を構成する地組織がポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むパイル織物。(4) 前記ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であるパイル織物。(5) 前記パイル織物の緯糸方向および/または経糸方向のストレッチ率が10%以上で、伸長回復率が80%以上であるパイル織物。
【選択図】 なし
【解決手段】(1) パイル糸が紡績糸であるパイル織物であって、該紡績糸がポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含むパイル織物。(2) 前記パイル織物がコール天であるパイル織物。(3) 前記パイル織物を構成する地組織がポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むパイル織物。(4) 前記ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であるパイル織物。(5) 前記パイル織物の緯糸方向および/または経糸方向のストレッチ率が10%以上で、伸長回復率が80%以上であるパイル織物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパイル織物に関し、さらに詳しくはパイル糸としてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸を用いた、特にコール天として好適なパイル織物に関する。
【0001】
【従来の技術】
従来より、パイル糸に紡績糸を用いたパイル織物は、コール天に代表されるようにその独特な外観と風合いから各種のアウターに展開されている。しかし、パイル糸が紡績糸であることも相まってパイル糸の先端が開繊し、コール天独特の明瞭な畝が得られないという欠点があった。
一方、パイルの倒れ(形状の変化)を防止してシルキー調のソフト風合いを有するパイル布帛を得るため、または深い色合いで高級感のあるパイル布帛を得るため、パイル糸にポリトリメチレンテレフタレート繊維マルチフィラメント糸を用いることが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2等を参照)。しかし、これらのパイル布帛では、パイル糸として紡績糸を用いることについては何ら言及されていない。
【0002】
【特許文献1】
特開平11−93050号公報
【特許文献2】
特開平11−269740号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決し、明瞭な畝を形成することができるパイル織物を提供することにある。
【0004】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、パイル織物のパイル糸としてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下の通りである。
【0005】
(1)パイル糸が紡績糸であるパイル織物であって、該紡績糸がポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含むことを特徴とするパイル織物。
(2)前記パイル織物がコール天であることを特徴とする(1)に記載のパイル織物。
(3)前記パイル織物を構成する経糸および/または緯糸がポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載のパイル織物。
(4)前記ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパイル織物。
(5)前記パイル織物の緯糸方向および/または経糸方向のストレッチ率が10%以上で、伸長回復率が80%以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパイル織物。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、パイル織物のパイル糸には、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸が用いられる。このような構成とすることにより、特に明瞭な畝を有するコール天が得られる。
このような紡績糸としては、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維100%からなる紡績糸、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と他の短繊維を混紡した複合紡績糸などが用いられる。複合紡績糸のポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の含有量は、後述するように伸長回復性、ストレッチ性、ストレッチバック性、長期着用時の形態安定性などの点から、15重量%以上とすることが好ましい。
【0007】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸または例えばテレフタル酸ジメチルなどのその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に縮合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合してもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は50重量%以上が好ましい。
【0009】
添加することができる第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で用いることもできる。
さらにポリトリメチレンテレフタレートには、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等の改質剤を添加して含有させていてもよい。
【0010】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、一種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる短繊維でもよく、また少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維でもよい。
潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維とは、例えばサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型などのように、少なくとも二種のポリエステル成分が接合されたもので、熱処理によって捲縮を発現する繊維をいう。二種のポリエステル成分の複合比や接合面形状には特に限定されないが、一般的には複合重量比は70/30〜30/70の範囲内にあり、また直線または曲線形状の接合面を有する。また単糸繊度は0.5〜10dtexのものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0011】
上記潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維としては、例えば特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−40537号公報、特開2001−81640号公報等に開示された、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的または偏芯的に配置したサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合紡糸を用いることができる。サイドバイサイド型の場合には二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が1.00〜2.00の範囲にあるものが好ましく、偏芯芯鞘型の場合には鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比が3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0012】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートが好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートを配置するのが好ましい。
なお、ポリトリメチレンテレフタレート(PPT)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。またポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。さらにポリブチレンテレフタレート(PBT)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0013】
また、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、特に0.10〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択されるのが好ましい。なお、低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.00(dl/g)、さらに0.90〜1.00(dl/g)がよい。
また、この複合繊維自体の固有粘度、すなわち平均固有粘度は、0.70〜1.20(dl/g)がよく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.90〜1.10(dl/g)がよい。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0014】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、例えば次のような方法で得ることができる。まず、固有粘度0.40〜1.90、好ましくは0.70〜1.20のポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸して1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延伸する方法、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等により長繊維を得る。得られた長繊維を連続的に束にするか、または一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にしてトウを形成し、紡績用の油剤を付与し、必要に応じて熱処理を行った後、捲縮加工を施して捲縮を付与し、所定の長さに切断して短繊維を得る。一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にする場合は、長繊維用の仕上げ油剤が付与されているため、該油剤を除去した後に紡績用の油剤を付与するのが好ましい。なお、溶融紡糸した未延伸糸を束にしてトウを形成した後に延伸してもよいが、均一な短繊維を得るには延伸後にトウを形成するのが好ましい。
【0015】
溶融紡糸において、2000m/分以上、好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもできる。この場合には自然延伸倍率以下の倍率で延伸した後に、捲縮加工を施すのが好ましい。また、あらかじめ短繊維に切断せずにトウの状態で紡績工程に投入し、トウ牽切機により切断して短繊維となし、紡績糸としてもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、ポリエチレンテレフタレート系短繊維等と比較して繊維間摩擦力が高いという特有の問題があり、適正な紡績用油剤を適正量付与することで良好な紡績性と紡績糸の高い均斉度を確保できる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維への油剤の付与は、制電性を付与すると共に繊維間摩擦力を下げて開繊性を向上させ、一方で集束性を付与し、さらに繊維対金属摩擦力を下げて開繊工程における繊維の損傷を防ぐことを主な目的としている。
【0016】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維に使用する油剤としては、制電剤として使用されるアニオン界面活性剤、特にアルキル燐酸エステル塩を主成分とするものが好ましい。さらに好ましい油剤は、アルキル基の平均炭素数が8〜18のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とするものであり、アルキル基の平均炭素数が10〜15のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とするものが最も好ましい。
アルキル燐酸エステル塩の具体例としては、ラウリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数12)、セチル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数16)、ステアリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数18)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。アルキル燐酸エステル塩の含有率は50〜100重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
さらに油剤には、平滑性を向上させ繊維の損傷を防ぐ目的から、動植物油、鉱物油、脂肪酸エステル系化合物、または脂肪族の高級アルコールもしくは多価アルコールの脂肪酸エステルの酸化エチレン、酸化プロピレン等からなる非イオン活性剤を、50重量%以下、好ましくは10〜30重量%の範囲で含有していてもよい。
【0017】
紡績用油剤の付着量は、0.05〜0.5%omfが好ましく、0.1〜0.35%omfがより好ましく、0.1〜0.2%omfがさらに好ましい。油剤の付着量が多すぎると、カード工程でシリンダーに巻き付いたり、練条工程や粗紡工程、精紡工程等のローラードラフト工程においてトップローラー(ゴムローラー)への巻き付きが発生しやすくなる。また油剤の付着量が少なすぎると、開繊工程で短繊維の損傷が起きやすく、前記ローラードラフト工程において静電気の発生が過多になり、ボトムローラー(金属ローラー)への巻き付きが発生しやすくなる。油剤の影響は特に精紡工程において顕著であり、トップローラーやボトムローラーへの短繊維の巻き付きは糸切れの増加につながるとともに、糸の均整性も悪化させる場合がある。
【0018】
捲縮加工の方法としては特に限定されるものではないが、生産性、捲縮形態の良好さからスタッファボックスを用いた押込み捲縮加工方法が好ましい。紡績工程における短繊維の開繊性、工程通過性を良好にするためには、捲縮数(JIS−L−1015 けん縮数試験方法による)は3〜30個/25mmが好ましく、5〜20個/25mmがより好ましい。また捲縮率(JIS−L−1015 けん縮率試験方法による)は2〜30%が好ましく、4〜25%がより好ましい。また、繊維長が短いほど上記範囲内で捲縮数が多く、捲縮率を大きくする方が好ましい。より具体的には、繊維長38mm(綿紡方式)の場合には捲縮数は16±2個/25mm、捲縮率は18±3%、繊維長51mm(合繊紡方式)の場合には捲縮数は12±2個/25mm、捲縮率は15±3%、繊維長64mm以上のバイアスカット(梳毛紡方式)の場合には捲縮数は8±2個/25mm、捲縮率は12±3%とするのが好ましい。また、紡毛方式(繊維長51mm等長)の場合は捲縮数18±2個/25mm、捲縮率は20±3%の範囲が好ましい。また、高速度タイプのカードに仕掛ける場合は、捲縮が伸ばされ易くなるため、捲縮率を上記範囲よりも2〜5%大きくするのが好ましい。
【0019】
捲縮数や捲縮率が小さすぎると、カード工程において集束カレンダーローラーでウェブが垂れ落ちたり、コイラーカレンダーローラーでスライバー切れが発生したりする等、カード通過性が低下する場合がある。また捲縮数や捲縮率が大きすぎると、開繊性が低下してネップやスラブが多くなり、糸の均斉度も低下して糸U%(ウースタむら試験機で測定される糸の単位長さ当たり重量の平均偏差係数)が悪化し糸品質が低下し易くなる。
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維に付与する油剤の種類や付着量が前記したものと大きく異なる場合や、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の捲縮数や捲縮率が上記範囲から大きく逸脱する場合は、可紡性が低下するばかりでなく、得られる紡績糸の均斉度が低下し易くなる。
【0020】
紡績糸の均斉度を表す場合には、ウースタむら試験機で測定したU%(糸の単位長さ当たり重量の平均偏差率)で表すのが一般的であるが、U%は、紡績糸の太さ(繊度)や該紡績糸を構成する短繊維の太さ(繊度)によって大きく変化する。そこで、紡績糸や短繊維の繊度の影響を少なくするために、紡績糸を構成する短繊維の平均本数、すなわち構成本数の大小によってI係数またはL係数を下記式で求め、これらの数値を糸の均斉度を表す指標とする方法が採用されている(日本繊維機械学会:「むらの理論と実際」、1965)。
構成本数が64本以下の場合
I係数=U%×(構成本数)1/2 /80 … 式(b)
構成本数が64本を超える場合
L係数=U%×(構成本数)1/3 /40 … 式(c)
【0021】
ここで構成本数とは、紡績糸の断面内にある短繊維の平均本数のことをいい、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)/短繊維の平均繊度(dtex)で求められる。繊度の異なる短繊維を混紡している場合、例えば繊度D1 dtexの短繊維を混率W1 %、繊度D2 dtexの短繊維をW2 %混紡している場合は、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)×(W1 /100)/D1 +紡績糸の繊度(dtex)×(W2 /100)/D2 で求められる。
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸のI係数またはL係数は1.0〜2.5の範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の単糸の断面は長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面が丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
また、単糸繊度は0.1〜10.0dtexの範囲が好ましく、紡績糸を衣料用途に用いる場合には1.0〜6.0dtexの範囲がより好ましい。短繊維の繊維長は約30mm〜約160mmの範囲内で、用途や紡績方式、複合相手素材の繊維長等に応じて選べばよい。可紡性が良く品質の良好な紡績糸を得るためには過長繊維割合(設定繊維長よりも長い繊維長を持つ短繊維の含有割合)を0.5%以下とするのが好ましい。
【0023】
さらにポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の初期引張抵抗度は10〜30cN/dtexであると好ましく、特に20〜30cN/dtex、さらに20〜27cN/dtexがよい。なお、10cN/dtex未満のものは製造困難である。
得られたポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を用いて紡績糸を製造する方法には特に限定されるものではなく、短繊維の繊維長に応じて通常の綿紡方式(繊維長32mm、38mm、44mm)、合繊紡方式(繊維長51mm、64mm、76mm)、梳毛紡方式(繊維長は64mm以上のバイアスカット)、トウ紡績法(トウを使用)等の紡績方法を適用すればよい。また、精紡方法も特に限定されるものではなく、リング精紡法、ローター式オープンエンド精紡法、フリクション式オープンエンド精紡法、エアジェット精紡法、ホロースピンドル精紡法(ラッピング精紡法)、セルフツイスト精紡法等を適用すればよいが、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維のソフトさを活かした汎用性のある紡績糸を得るためにはリング精紡法が好ましい。また、紡毛方式の場合にはミュール精紡機を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明において、パイル糸として用いられる紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維100%からなるものでもよいが、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と他の繊維とを複合紡績することにより、複合する相手繊維の風合いを充分に活かしながら、形態安定性等の機能性を付加できる。そのためには、複合紡績糸においてはポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の含有率を15〜70重量%の範囲にすることが好ましく、相手繊維の風合いをより活かすためには20〜40重量%の範囲とするのがより好ましい。
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と混紡する相手繊維としては特に限定されるものではなく、目的とする商品の要求特性に合わせた糸構成とすればよく、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート等の化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、アクリル、ナイロン等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種または異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)のいずれであってもよい。
【0026】
複合紡績糸の複合方法も特に限定されるものではなく、混打綿またはカード工程で原綿を混綿する方法、練条工程やミキシングギル工程でスライバーを重ね合わせて複合する方法、精紡工程で粗糸またはスライバーを複数本供給して精紡交撚(サイロスパン)を行う方法等が挙げられる。例えば、綿とポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸の場合は、綿紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(繊維長38mmが好ましい)100%でカードを通過させてスライバーとし、次の練条工程で綿のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。また、ウールや麻(リネン、ラミー)とポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸の場合には、梳毛紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(繊維長64mm以上のバイアスカット)100%でローラーカードを通過させてスライバーとした後、ミキサー(ミキシングギルやポーキュパインローラーを備えたボビナー)でウールや麻のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。さらに紡毛方式の紡績工程においてカシミヤやラムズウールとポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸を製造する場合には、原綿の調合時に混合した後にローラーカードに仕掛けるのが好ましい。
【0027】
本発明の紡績糸は、本発明の目的を損なわない範囲で各種フィラメント糸との複合紡績糸、例えば、コアスパンヤーン、精紡交撚糸、ラッピングヤーン、各種意匠糸としてもよい。
また紡績糸の撚数は、メートル番手換算の撚り係数α(α=撚数(T/m)/(メートル番手)0.5 )が60〜120の範囲となるように、繊維長に応じて適宜設定すればよいが、紡績糸としての強度を充分確保できる範囲内で撚数はなるべく低く設定した方がストレッチ性が高くなるので好ましい。
また紡績糸は、必要に応じて双糸加工や追撚加工を施してもよい。また本発明の紡績糸と他の紡績糸、各種フィラメント糸、加工糸等と交撚し、またインターレース交絡や流体攪乱加工を行って複合糸としてもよい。
【0028】
本発明におけるパイル織物は、上記した紡績糸をパイル糸として用いられる。またパイル織物の地糸を構成する糸条としては、用途等に応じて各種繊維糸条を用いることができるが、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚糸(1ヒーターおよび2ヒーター仮撚糸)およびこの仮撚糸の追撚糸(仮撚方向と逆方向に追燃したものが好ましい)、上記した少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維(長繊維でも短繊維でもよいが、長繊維が好ましく、さらに長繊維の加撚糸や仮撚糸、この仮撚糸の追撚糸(仮撚方向と順方向または逆方向に追撚りしたもの))等を用いることによりストレッチ性を有するパイル織物が得られるので好ましい。
【0029】
例えば、経糸方向にストレッチ性を付与する場合には経糸に、緯糸方向にストレッチ性を付与する場合には緯糸に、経糸および緯糸方向にストレッチ性を付与する2ウェイストレッチ織物の場合には経糸および緯糸に、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を用いればよく、目的に応じて任意に選択することができる。
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を織物の緯糸に用いた場合は、緯糸方向のストレッチ率が10%以上、好ましくは12〜65%、より好ましくは15〜60%のものが得られる。また潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を織物の経糸に用いた場合は経糸方向のストレッチ率が10%以上、好ましくは12〜50%、より好ましくは15〜50%のものが得られる。10%以上のストレッチ率を有するパイル織物は、例えば衣料分野において着用快適性に優れた衣料を提供することができる。またパイル織物の伸長回復率は好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0030】
本発明のパイル織物は公知の製造法により得ることができる。パイル織物はパイル(ループパイルまたはカットパイル)が地組織から出て織物の片面または両面を覆ったものであり、組織としては緯パイル組織と経パイル組織のいずれでもよく、常法により作製すればよい。緯パイル織物としては、別珍、コール天など、経パイル織物としてはベルベット、タオルなどが挙げられる。
パイル織物の加工方法は、常法に従って生機を精練・リラックス処理して幅入れと収縮を発現させた後、染色を行い、仕上げ処理を兼ねたファイナルセットを行う方法が採用できる。精練・リラックス処理に使用する装置としては特に限定されることなく、液流染色機、連続染色機、U型ソフサーなどを用いることができる。
【0031】
染色については、染色装置も特に限定されず、液流染色機等を用いることができる。染色後、必要に応じて柔軟剤、撥水剤などを付与し、ファイナルセットを行う。仕上げ処理剤は特に限定されず、通常用いられる柔軟剤、撥水剤、制電剤などの使用が可能である。特に、風合を柔軟に仕上げたい場合は、アルキルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等からなるシリコーン系の柔軟剤で仕上げ加工するとよい。
なお、経糸方向にストレッチを付与する場合には経糸方向に追い込み加工することが好ましく、加工生地の経方向の残留収縮を小さく抑えるために最終工程に至る迄、低張力で管理することが好ましい。 本発明のパイル織物は、衣料用途はもちろんのこと、カーシート、椅子張り地などの資材分野にも適したものである。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価は以下の方法により測定した。
(1) 固有粘度:固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したPTT糸またはPET糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0033】
(2) 捲縮数、捲縮率:JIS−L−1015 化学繊維ステープル試験方法 けん縮数試験方法およびけん縮率試験方法により測定する。
(3) パイル織物のストレッチ率(%):島津製作所製の引張試験機を用い、つかみ幅2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で試料を横方向に伸長させたときの4.9N/cmの応力下での伸び(%)をストレッチ率とした。
(4) パイル織物の伸長回復率(%):島津製作所製の引張試験機を用い、つかみ幅2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で試料を横方向に伸長させ、4.9N/cmの応力下まで伸長させた。その後、再び同じ速度で除重しながら戻し、応力がゼロになったときの伸度を残留伸度(B)とし、伸長回復率を以下の式に従って求めた。
伸長回復率=(10−B)/10×100(%)
(5) パイル織物の外観:目視により外観、特に畝の明瞭さを判定した。
【0034】
実施例1
[η]=0.92のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で紡糸して未延伸糸を得た。次いでホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して84dtex/36fの延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度および初期引張抵抗度は、各々3.5cN/dtex、45%および25.3cN/dtexであった。得られた延伸糸200本を束にし、精錬工程にて長繊維用の仕上げ剤を除去した後、ラウリル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする紡績用油剤を0.1%omf付与し、スチーム処理工程で110℃の条件で熱処理をした後、スタッファボックスを用いて95℃の条件で押込み捲縮加工を行い、ECカッターを用いて繊維長51mmの長さに切断してポリトリメチレンテレフタレート短繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮数は11.9個/25mm、捲縮率は12.3%であった。
このポリトリメチレンテレフタレート短繊維を通常の合繊紡方式の紡績工程に投入し、リング精紡機で紡績糸を製造し、80℃×15分の条件で真空セッターを用いて撚り止めセットを行った。得られた紡績糸の番手はメートル番手で1/51.5Nm(194.2dtex)、撚り係数αは95.3(撚数684T/m)、U%は14.7%、L係数は1.61(構成本数は84.4本)であった。
【0035】
得られた紡績糸をパイル糸に用いて緯パイル織物であるコール天を常法により製織し、染色仕上げた。
なお、この緯パイル織物の地組織の経糸には、綿番手で30番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(30/70)混紡糸を用いた。
また緯糸には、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント(この固有粘度は高粘度側が[η]=0.92、低粘度側が[η]=0.70)を得、この複合マルチフィラメントのS方向1000T/m追撚糸2本をZ方向に800T/mで合燃したものを用いた。
得られたコール天は、畝が極めてシャープで明瞭であり、また、緯糸方向のストレッチ率が18%、伸長回復率が96%と高度なストレッチ回復性を有した風合いの柔らかいものであった。
【0036】
比較例1
実施例1において、パイル糸にポリエチレンテレフタレート繊維100%の紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様に製織し、染色仕上げたコール天を評価した結果、実施例1と比べ、畝の巾が広くシャープさに欠けたものであった。
【0037】
実施例2
実施例1と同様にして、単糸繊度1.4dtex、繊維長38mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮数は16.4個/25mm、捲縮率は15.8%であった。
このポリトリメチレンテレフタレート短繊維を65重量%、コーマ綿を35重量%の割合で練条工程にてスライバー混紡し、通常の綿紡方式の紡績工程で、綿番手で20番手の紡績糸を製造した。
実施例1において、パイル糸に上記の紡績糸を用い、地組織の経糸には、綿番手で16番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(30/70)紡績糸を、緯糸には、167dtex/72fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを用いた以外は、実施例1と同様に製織し、染色仕上げたコール天を評価した結果、実施例1と同様に、畝がシャープで明瞭であった。
【0038】
比較例2
実施例2において、パイル糸に綿番手で23番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(35/65)混紡糸を用いた以外は、実施例2同様に製織し、仕上げたコール天を評価した結果、実施例2対比、畝の巾が広くシャープさに欠けたものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明のパイル織物は、パイル糸としてリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸が用いられているため、特にコール天として好適な明瞭な畝を形成することができる。
本発明はパイル織物に関し、さらに詳しくはパイル糸としてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸を用いた、特にコール天として好適なパイル織物に関する。
【0001】
【従来の技術】
従来より、パイル糸に紡績糸を用いたパイル織物は、コール天に代表されるようにその独特な外観と風合いから各種のアウターに展開されている。しかし、パイル糸が紡績糸であることも相まってパイル糸の先端が開繊し、コール天独特の明瞭な畝が得られないという欠点があった。
一方、パイルの倒れ(形状の変化)を防止してシルキー調のソフト風合いを有するパイル布帛を得るため、または深い色合いで高級感のあるパイル布帛を得るため、パイル糸にポリトリメチレンテレフタレート繊維マルチフィラメント糸を用いることが提案されている(例えば特許文献1、特許文献2等を参照)。しかし、これらのパイル布帛では、パイル糸として紡績糸を用いることについては何ら言及されていない。
【0002】
【特許文献1】
特開平11−93050号公報
【特許文献2】
特開平11−269740号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決し、明瞭な畝を形成することができるパイル織物を提供することにある。
【0004】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、パイル織物のパイル糸としてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下の通りである。
【0005】
(1)パイル糸が紡績糸であるパイル織物であって、該紡績糸がポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含むことを特徴とするパイル織物。
(2)前記パイル織物がコール天であることを特徴とする(1)に記載のパイル織物。
(3)前記パイル織物を構成する経糸および/または緯糸がポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載のパイル織物。
(4)前記ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパイル織物。
(5)前記パイル織物の緯糸方向および/または経糸方向のストレッチ率が10%以上で、伸長回復率が80%以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパイル織物。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、パイル織物のパイル糸には、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸が用いられる。このような構成とすることにより、特に明瞭な畝を有するコール天が得られる。
このような紡績糸としては、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維100%からなる紡績糸、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と他の短繊維を混紡した複合紡績糸などが用いられる。複合紡績糸のポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の含有量は、後述するように伸長回復性、ストレッチ性、ストレッチバック性、長期着用時の形態安定性などの点から、15重量%以上とすることが好ましい。
【0007】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸または例えばテレフタル酸ジメチルなどのその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に縮合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合してもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は50重量%以上が好ましい。
【0009】
添加することができる第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で用いることもできる。
さらにポリトリメチレンテレフタレートには、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等の改質剤を添加して含有させていてもよい。
【0010】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、一種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる短繊維でもよく、また少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維でもよい。
潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維とは、例えばサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型などのように、少なくとも二種のポリエステル成分が接合されたもので、熱処理によって捲縮を発現する繊維をいう。二種のポリエステル成分の複合比や接合面形状には特に限定されないが、一般的には複合重量比は70/30〜30/70の範囲内にあり、また直線または曲線形状の接合面を有する。また単糸繊度は0.5〜10dtexのものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0011】
上記潜在捲縮発現性ポリエステル系短繊維としては、例えば特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−40537号公報、特開2001−81640号公報等に開示された、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的または偏芯的に配置したサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合紡糸を用いることができる。サイドバイサイド型の場合には二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が1.00〜2.00の範囲にあるものが好ましく、偏芯芯鞘型の場合には鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比が3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0012】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートが好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートを配置するのが好ましい。
なお、ポリトリメチレンテレフタレート(PPT)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。またポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。さらにポリブチレンテレフタレート(PBT)は、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
【0013】
また、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、特に0.10〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択されるのが好ましい。なお、低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.00(dl/g)、さらに0.90〜1.00(dl/g)がよい。
また、この複合繊維自体の固有粘度、すなわち平均固有粘度は、0.70〜1.20(dl/g)がよく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.90〜1.10(dl/g)がよい。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0014】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、例えば次のような方法で得ることができる。まず、固有粘度0.40〜1.90、好ましくは0.70〜1.20のポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸して1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延伸する方法、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等により長繊維を得る。得られた長繊維を連続的に束にするか、または一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にしてトウを形成し、紡績用の油剤を付与し、必要に応じて熱処理を行った後、捲縮加工を施して捲縮を付与し、所定の長さに切断して短繊維を得る。一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にする場合は、長繊維用の仕上げ油剤が付与されているため、該油剤を除去した後に紡績用の油剤を付与するのが好ましい。なお、溶融紡糸した未延伸糸を束にしてトウを形成した後に延伸してもよいが、均一な短繊維を得るには延伸後にトウを形成するのが好ましい。
【0015】
溶融紡糸において、2000m/分以上、好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもできる。この場合には自然延伸倍率以下の倍率で延伸した後に、捲縮加工を施すのが好ましい。また、あらかじめ短繊維に切断せずにトウの状態で紡績工程に投入し、トウ牽切機により切断して短繊維となし、紡績糸としてもよい。
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維は、ポリエチレンテレフタレート系短繊維等と比較して繊維間摩擦力が高いという特有の問題があり、適正な紡績用油剤を適正量付与することで良好な紡績性と紡績糸の高い均斉度を確保できる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維への油剤の付与は、制電性を付与すると共に繊維間摩擦力を下げて開繊性を向上させ、一方で集束性を付与し、さらに繊維対金属摩擦力を下げて開繊工程における繊維の損傷を防ぐことを主な目的としている。
【0016】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維に使用する油剤としては、制電剤として使用されるアニオン界面活性剤、特にアルキル燐酸エステル塩を主成分とするものが好ましい。さらに好ましい油剤は、アルキル基の平均炭素数が8〜18のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とするものであり、アルキル基の平均炭素数が10〜15のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とするものが最も好ましい。
アルキル燐酸エステル塩の具体例としては、ラウリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数12)、セチル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数16)、ステアリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数18)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。アルキル燐酸エステル塩の含有率は50〜100重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
さらに油剤には、平滑性を向上させ繊維の損傷を防ぐ目的から、動植物油、鉱物油、脂肪酸エステル系化合物、または脂肪族の高級アルコールもしくは多価アルコールの脂肪酸エステルの酸化エチレン、酸化プロピレン等からなる非イオン活性剤を、50重量%以下、好ましくは10〜30重量%の範囲で含有していてもよい。
【0017】
紡績用油剤の付着量は、0.05〜0.5%omfが好ましく、0.1〜0.35%omfがより好ましく、0.1〜0.2%omfがさらに好ましい。油剤の付着量が多すぎると、カード工程でシリンダーに巻き付いたり、練条工程や粗紡工程、精紡工程等のローラードラフト工程においてトップローラー(ゴムローラー)への巻き付きが発生しやすくなる。また油剤の付着量が少なすぎると、開繊工程で短繊維の損傷が起きやすく、前記ローラードラフト工程において静電気の発生が過多になり、ボトムローラー(金属ローラー)への巻き付きが発生しやすくなる。油剤の影響は特に精紡工程において顕著であり、トップローラーやボトムローラーへの短繊維の巻き付きは糸切れの増加につながるとともに、糸の均整性も悪化させる場合がある。
【0018】
捲縮加工の方法としては特に限定されるものではないが、生産性、捲縮形態の良好さからスタッファボックスを用いた押込み捲縮加工方法が好ましい。紡績工程における短繊維の開繊性、工程通過性を良好にするためには、捲縮数(JIS−L−1015 けん縮数試験方法による)は3〜30個/25mmが好ましく、5〜20個/25mmがより好ましい。また捲縮率(JIS−L−1015 けん縮率試験方法による)は2〜30%が好ましく、4〜25%がより好ましい。また、繊維長が短いほど上記範囲内で捲縮数が多く、捲縮率を大きくする方が好ましい。より具体的には、繊維長38mm(綿紡方式)の場合には捲縮数は16±2個/25mm、捲縮率は18±3%、繊維長51mm(合繊紡方式)の場合には捲縮数は12±2個/25mm、捲縮率は15±3%、繊維長64mm以上のバイアスカット(梳毛紡方式)の場合には捲縮数は8±2個/25mm、捲縮率は12±3%とするのが好ましい。また、紡毛方式(繊維長51mm等長)の場合は捲縮数18±2個/25mm、捲縮率は20±3%の範囲が好ましい。また、高速度タイプのカードに仕掛ける場合は、捲縮が伸ばされ易くなるため、捲縮率を上記範囲よりも2〜5%大きくするのが好ましい。
【0019】
捲縮数や捲縮率が小さすぎると、カード工程において集束カレンダーローラーでウェブが垂れ落ちたり、コイラーカレンダーローラーでスライバー切れが発生したりする等、カード通過性が低下する場合がある。また捲縮数や捲縮率が大きすぎると、開繊性が低下してネップやスラブが多くなり、糸の均斉度も低下して糸U%(ウースタむら試験機で測定される糸の単位長さ当たり重量の平均偏差係数)が悪化し糸品質が低下し易くなる。
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維に付与する油剤の種類や付着量が前記したものと大きく異なる場合や、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の捲縮数や捲縮率が上記範囲から大きく逸脱する場合は、可紡性が低下するばかりでなく、得られる紡績糸の均斉度が低下し易くなる。
【0020】
紡績糸の均斉度を表す場合には、ウースタむら試験機で測定したU%(糸の単位長さ当たり重量の平均偏差率)で表すのが一般的であるが、U%は、紡績糸の太さ(繊度)や該紡績糸を構成する短繊維の太さ(繊度)によって大きく変化する。そこで、紡績糸や短繊維の繊度の影響を少なくするために、紡績糸を構成する短繊維の平均本数、すなわち構成本数の大小によってI係数またはL係数を下記式で求め、これらの数値を糸の均斉度を表す指標とする方法が採用されている(日本繊維機械学会:「むらの理論と実際」、1965)。
構成本数が64本以下の場合
I係数=U%×(構成本数)1/2 /80 … 式(b)
構成本数が64本を超える場合
L係数=U%×(構成本数)1/3 /40 … 式(c)
【0021】
ここで構成本数とは、紡績糸の断面内にある短繊維の平均本数のことをいい、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)/短繊維の平均繊度(dtex)で求められる。繊度の異なる短繊維を混紡している場合、例えば繊度D1 dtexの短繊維を混率W1 %、繊度D2 dtexの短繊維をW2 %混紡している場合は、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)×(W1 /100)/D1 +紡績糸の繊度(dtex)×(W2 /100)/D2 で求められる。
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸のI係数またはL係数は1.0〜2.5の範囲内にあることが好ましく、1.0〜2.0の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の単糸の断面は長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面が丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
また、単糸繊度は0.1〜10.0dtexの範囲が好ましく、紡績糸を衣料用途に用いる場合には1.0〜6.0dtexの範囲がより好ましい。短繊維の繊維長は約30mm〜約160mmの範囲内で、用途や紡績方式、複合相手素材の繊維長等に応じて選べばよい。可紡性が良く品質の良好な紡績糸を得るためには過長繊維割合(設定繊維長よりも長い繊維長を持つ短繊維の含有割合)を0.5%以下とするのが好ましい。
【0023】
さらにポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の初期引張抵抗度は10〜30cN/dtexであると好ましく、特に20〜30cN/dtex、さらに20〜27cN/dtexがよい。なお、10cN/dtex未満のものは製造困難である。
得られたポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を用いて紡績糸を製造する方法には特に限定されるものではなく、短繊維の繊維長に応じて通常の綿紡方式(繊維長32mm、38mm、44mm)、合繊紡方式(繊維長51mm、64mm、76mm)、梳毛紡方式(繊維長は64mm以上のバイアスカット)、トウ紡績法(トウを使用)等の紡績方法を適用すればよい。また、精紡方法も特に限定されるものではなく、リング精紡法、ローター式オープンエンド精紡法、フリクション式オープンエンド精紡法、エアジェット精紡法、ホロースピンドル精紡法(ラッピング精紡法)、セルフツイスト精紡法等を適用すればよいが、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維のソフトさを活かした汎用性のある紡績糸を得るためにはリング精紡法が好ましい。また、紡毛方式の場合にはミュール精紡機を用いるのが好ましい。
【0024】
本発明において、パイル糸として用いられる紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維100%からなるものでもよいが、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と他の繊維とを複合紡績することにより、複合する相手繊維の風合いを充分に活かしながら、形態安定性等の機能性を付加できる。そのためには、複合紡績糸においてはポリトリメチレンテレフタレート系短繊維の含有率を15〜70重量%の範囲にすることが好ましく、相手繊維の風合いをより活かすためには20〜40重量%の範囲とするのがより好ましい。
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維と混紡する相手繊維としては特に限定されるものではなく、目的とする商品の要求特性に合わせた糸構成とすればよく、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート等の化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、アクリル、ナイロン等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種または異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)のいずれであってもよい。
【0026】
複合紡績糸の複合方法も特に限定されるものではなく、混打綿またはカード工程で原綿を混綿する方法、練条工程やミキシングギル工程でスライバーを重ね合わせて複合する方法、精紡工程で粗糸またはスライバーを複数本供給して精紡交撚(サイロスパン)を行う方法等が挙げられる。例えば、綿とポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸の場合は、綿紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(繊維長38mmが好ましい)100%でカードを通過させてスライバーとし、次の練条工程で綿のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。また、ウールや麻(リネン、ラミー)とポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸の場合には、梳毛紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(繊維長64mm以上のバイアスカット)100%でローラーカードを通過させてスライバーとした後、ミキサー(ミキシングギルやポーキュパインローラーを備えたボビナー)でウールや麻のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。さらに紡毛方式の紡績工程においてカシミヤやラムズウールとポリトリメチレンテレフタレート系短繊維との複合紡績糸を製造する場合には、原綿の調合時に混合した後にローラーカードに仕掛けるのが好ましい。
【0027】
本発明の紡績糸は、本発明の目的を損なわない範囲で各種フィラメント糸との複合紡績糸、例えば、コアスパンヤーン、精紡交撚糸、ラッピングヤーン、各種意匠糸としてもよい。
また紡績糸の撚数は、メートル番手換算の撚り係数α(α=撚数(T/m)/(メートル番手)0.5 )が60〜120の範囲となるように、繊維長に応じて適宜設定すればよいが、紡績糸としての強度を充分確保できる範囲内で撚数はなるべく低く設定した方がストレッチ性が高くなるので好ましい。
また紡績糸は、必要に応じて双糸加工や追撚加工を施してもよい。また本発明の紡績糸と他の紡績糸、各種フィラメント糸、加工糸等と交撚し、またインターレース交絡や流体攪乱加工を行って複合糸としてもよい。
【0028】
本発明におけるパイル織物は、上記した紡績糸をパイル糸として用いられる。またパイル織物の地糸を構成する糸条としては、用途等に応じて各種繊維糸条を用いることができるが、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚糸(1ヒーターおよび2ヒーター仮撚糸)およびこの仮撚糸の追撚糸(仮撚方向と逆方向に追燃したものが好ましい)、上記した少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維(長繊維でも短繊維でもよいが、長繊維が好ましく、さらに長繊維の加撚糸や仮撚糸、この仮撚糸の追撚糸(仮撚方向と順方向または逆方向に追撚りしたもの))等を用いることによりストレッチ性を有するパイル織物が得られるので好ましい。
【0029】
例えば、経糸方向にストレッチ性を付与する場合には経糸に、緯糸方向にストレッチ性を付与する場合には緯糸に、経糸および緯糸方向にストレッチ性を付与する2ウェイストレッチ織物の場合には経糸および緯糸に、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を用いればよく、目的に応じて任意に選択することができる。
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を織物の緯糸に用いた場合は、緯糸方向のストレッチ率が10%以上、好ましくは12〜65%、より好ましくは15〜60%のものが得られる。また潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維を織物の経糸に用いた場合は経糸方向のストレッチ率が10%以上、好ましくは12〜50%、より好ましくは15〜50%のものが得られる。10%以上のストレッチ率を有するパイル織物は、例えば衣料分野において着用快適性に優れた衣料を提供することができる。またパイル織物の伸長回復率は好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0030】
本発明のパイル織物は公知の製造法により得ることができる。パイル織物はパイル(ループパイルまたはカットパイル)が地組織から出て織物の片面または両面を覆ったものであり、組織としては緯パイル組織と経パイル組織のいずれでもよく、常法により作製すればよい。緯パイル織物としては、別珍、コール天など、経パイル織物としてはベルベット、タオルなどが挙げられる。
パイル織物の加工方法は、常法に従って生機を精練・リラックス処理して幅入れと収縮を発現させた後、染色を行い、仕上げ処理を兼ねたファイナルセットを行う方法が採用できる。精練・リラックス処理に使用する装置としては特に限定されることなく、液流染色機、連続染色機、U型ソフサーなどを用いることができる。
【0031】
染色については、染色装置も特に限定されず、液流染色機等を用いることができる。染色後、必要に応じて柔軟剤、撥水剤などを付与し、ファイナルセットを行う。仕上げ処理剤は特に限定されず、通常用いられる柔軟剤、撥水剤、制電剤などの使用が可能である。特に、風合を柔軟に仕上げたい場合は、アルキルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等からなるシリコーン系の柔軟剤で仕上げ加工するとよい。
なお、経糸方向にストレッチを付与する場合には経糸方向に追い込み加工することが好ましく、加工生地の経方向の残留収縮を小さく抑えるために最終工程に至る迄、低張力で管理することが好ましい。 本発明のパイル織物は、衣料用途はもちろんのこと、カーシート、椅子張り地などの資材分野にも適したものである。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価は以下の方法により測定した。
(1) 固有粘度:固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したPTT糸またはPET糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0033】
(2) 捲縮数、捲縮率:JIS−L−1015 化学繊維ステープル試験方法 けん縮数試験方法およびけん縮率試験方法により測定する。
(3) パイル織物のストレッチ率(%):島津製作所製の引張試験機を用い、つかみ幅2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で試料を横方向に伸長させたときの4.9N/cmの応力下での伸び(%)をストレッチ率とした。
(4) パイル織物の伸長回復率(%):島津製作所製の引張試験機を用い、つかみ幅2.5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で試料を横方向に伸長させ、4.9N/cmの応力下まで伸長させた。その後、再び同じ速度で除重しながら戻し、応力がゼロになったときの伸度を残留伸度(B)とし、伸長回復率を以下の式に従って求めた。
伸長回復率=(10−B)/10×100(%)
(5) パイル織物の外観:目視により外観、特に畝の明瞭さを判定した。
【0034】
実施例1
[η]=0.92のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で紡糸して未延伸糸を得た。次いでホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して84dtex/36fの延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度および初期引張抵抗度は、各々3.5cN/dtex、45%および25.3cN/dtexであった。得られた延伸糸200本を束にし、精錬工程にて長繊維用の仕上げ剤を除去した後、ラウリル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする紡績用油剤を0.1%omf付与し、スチーム処理工程で110℃の条件で熱処理をした後、スタッファボックスを用いて95℃の条件で押込み捲縮加工を行い、ECカッターを用いて繊維長51mmの長さに切断してポリトリメチレンテレフタレート短繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮数は11.9個/25mm、捲縮率は12.3%であった。
このポリトリメチレンテレフタレート短繊維を通常の合繊紡方式の紡績工程に投入し、リング精紡機で紡績糸を製造し、80℃×15分の条件で真空セッターを用いて撚り止めセットを行った。得られた紡績糸の番手はメートル番手で1/51.5Nm(194.2dtex)、撚り係数αは95.3(撚数684T/m)、U%は14.7%、L係数は1.61(構成本数は84.4本)であった。
【0035】
得られた紡績糸をパイル糸に用いて緯パイル織物であるコール天を常法により製織し、染色仕上げた。
なお、この緯パイル織物の地組織の経糸には、綿番手で30番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(30/70)混紡糸を用いた。
また緯糸には、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント(この固有粘度は高粘度側が[η]=0.92、低粘度側が[η]=0.70)を得、この複合マルチフィラメントのS方向1000T/m追撚糸2本をZ方向に800T/mで合燃したものを用いた。
得られたコール天は、畝が極めてシャープで明瞭であり、また、緯糸方向のストレッチ率が18%、伸長回復率が96%と高度なストレッチ回復性を有した風合いの柔らかいものであった。
【0036】
比較例1
実施例1において、パイル糸にポリエチレンテレフタレート繊維100%の紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様に製織し、染色仕上げたコール天を評価した結果、実施例1と比べ、畝の巾が広くシャープさに欠けたものであった。
【0037】
実施例2
実施例1と同様にして、単糸繊度1.4dtex、繊維長38mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の捲縮数は16.4個/25mm、捲縮率は15.8%であった。
このポリトリメチレンテレフタレート短繊維を65重量%、コーマ綿を35重量%の割合で練条工程にてスライバー混紡し、通常の綿紡方式の紡績工程で、綿番手で20番手の紡績糸を製造した。
実施例1において、パイル糸に上記の紡績糸を用い、地組織の経糸には、綿番手で16番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(30/70)紡績糸を、緯糸には、167dtex/72fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを用いた以外は、実施例1と同様に製織し、染色仕上げたコール天を評価した結果、実施例1と同様に、畝がシャープで明瞭であった。
【0038】
比較例2
実施例2において、パイル糸に綿番手で23番手の綿/ポリエチレンテレフタレート(35/65)混紡糸を用いた以外は、実施例2同様に製織し、仕上げたコール天を評価した結果、実施例2対比、畝の巾が広くシャープさに欠けたものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明のパイル織物は、パイル糸としてリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含む紡績糸が用いられているため、特にコール天として好適な明瞭な畝を形成することができる。
Claims (5)
- パイル糸が紡績糸であるパイル織物であって、該紡績糸がポリトリメチレンテレフタレート系短繊維を含むことを特徴とするパイル織物。
- 前記パイル織物がコール天であることを特徴とする請求項1に記載のパイル織物。
- 前記パイル織物を構成する経糸および/または緯糸がポリトリメチレンテレフタレート系繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のパイル織物。
- 前記ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成された潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイル織物。
- 前記パイル織物の緯糸方向および/または経糸方向のストレッチ率が10%以上で、伸長回復率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパイル織物。
【0001】
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JP2007119938A (ja) * | 2005-10-26 | 2007-05-17 | Toyobo Co Ltd | 接着芯地用織物、及びその製造方法、並びに接着芯地 |
JP2014113235A (ja) * | 2012-12-07 | 2014-06-26 | Tetsumasa Suda | シートカバー |
CN112779630A (zh) * | 2021-01-09 | 2021-05-11 | 刘宝银 | 一种拉伸率较高的纤维及其制备方法 |
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2003
- 2003-01-20 JP JP2003010936A patent/JP2004225173A/ja active Pending
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