JP2004244731A - 紡績糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】ストレッチ性、ストレッチバック性及び均斉性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現できる潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸を提供する。
【解決手段】潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸であって、該短繊維が固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であり、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上、I係数またはL係数が1.1〜2.2であることを特徴とする紡績糸。
【選択図】 なし
【解決手段】潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸であって、該短繊維が固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であり、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上、I係数またはL係数が1.1〜2.2であることを特徴とする紡績糸。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸に関する。
より詳細には、本発明はストレッチ性、ストレッチバック性及び均斉性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現することができる潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、衣料用や資材用の織物、編物においては、より大きなストレッチ性やストレッチバック性が求められるようになってきている。従来、紡績糸に大きなストレッチ性やストレッチバック性を持たせるには、スパンデックス等の弾性糸を芯に入れたCSY(コアスパンヤーン)が良く知られている。しかしながら、スパンデックスは、塩素等の薬品による脆化が大きく、染色堅牢度が低く、寸法安定性も低い等の問題がある。またCSYの製造時や後加工工程において、芯糸であるスパンデックスが切れること(即ちコア切れ)が起き易く、更にスパンデックスを正確に芯に入れることが技術的に難しい。スパンデックスが外に飛び出した糸は製造上のロスになるために、歩留まりが低下して製造コストが高くなる。これらの問題があることから、スパンデックスを使わないストレッチ性に優れた紡績糸が望まれている。
【0003】
本発明者らは、特許文献1において、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維を含有する紡績糸を提案した。この紡績糸は、長期の形態安定性や耐久性に優れ、またポリエチレンテレフタレート短繊維やナイロン短繊維を含有した従来の紡績糸に比べると確かにストレッチ性やストレッチバック性に優れた紡績糸であったが、スパンデックス等の弾性糸や合成繊維の仮撚糸を使ったCSYや精紡交撚糸に比べるとストレッチ性は依然不十分であった。
また、特許文献1の実施例20には、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを偏芯鞘芯型に複合した短繊維を用いた紡績糸を提案している。しかしながら、この短繊維は良好な可紡性を確保するために偏芯の度合いを小さくしていたため、染色後の捲縮発現が不十分でストレッチ性も満足の行くものではなかった。さらに、短繊維の製造工程においてスタッファボックスによる押し込み捲縮加工を行わなかったため、糸の均斉性や品質においても満足できるものではなかった。
【0004】
一方、特許文献2の実施例には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートをサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合した短繊維を用い、羊毛と混紡した混紡糸が開示されている。しかしながら、用いる短繊維としては、フィラメントよりも低捲縮のものがスフには好適であるとして、ボイル後の捲縮発現量が比較的小さい短繊維を用いているため、この紡績糸は羊毛調の風合いと嵩高性を特徴とはしているが、最近の衣料用や資材用の織物、編物に要求されるような高いストレッチ性は実現できないものであった。
さらに、特許文献3には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートからなり、特定の熱的性質を有するサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型の潜在捲縮性複合短繊維を55wt%以上含有する紡績糸が開示されている。また、複合短繊維を製造する際は、スタッファボックス等で機械捲縮を付与することが好ましいとしている。
【0005】
本発明者らの研究によれば、可紡性に優れ、均斉性や糸品質が良好な紡績糸を得るためには、潜在捲縮性複合短繊維のらせん状の潜在捲縮を発現させずに、適正な二次元的形態の機械捲縮を付与することが重要である。そのためには、該短繊維の製造工程における熱処理条件とスタッファボックスの加工条件を適正範囲に設定する必要がある。
特許文献3では、熱処理条件やスタッファボックスの加工条件については何ら記載がなく、可紡性や紡績糸の均斉性、糸品質に問題があった。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第02/31241号パンフレット
【特許文献2】
特公昭43−19108号公報
【特許文献3】
特開2000−328382号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ストレッチ性、ストレッチバック性及び均斉性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現することができる潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維を特定量含有し、特定の物性を有する紡績糸とすることにより、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸であって、該短繊維が固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であり、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上、I係数またはL係数が1.1〜2.2であることを特徴とする紡績糸、
(2)熱水処理後の伸長率及び弾性回復率が、以下の式(a)及び式(b)を満足することを特徴とする(1)に記載の紡績糸、
伸長率(%)≧0.1X+20 ・・・(a)
弾性回復率(%)≧0.1X+80 ・・・(b)
但し、Xは紡績糸中の潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維の含有率(wt%)
(3)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維と他の繊維との複合紡績糸であって、該短繊維の含有率が20wt%以上50wt%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の紡績糸、
(4)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維が、固有粘度差が0.05〜0.3(dl/g)である2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された短繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の紡績糸、
である。
【0009】
なお、本発明における伸長率(%)、弾性回復率(%)、I係数またはL係数、固有粘度は次の方法で測定したものである。
(1)伸長率、弾性回復率:
紡績糸を無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥する。乾燥させた紡績糸1本に1.764×10−3cN/dtexの初荷重を加えて、つかみ間隔をL0 =20cmにした定速伸長型引張試験機に装着する。引張速度を1分間あたりつかみ間隔の50%(10cm/分)として一定荷重F0 =0.1cN/dtexまで引き伸ばし、このときの伸びL1 (cm)を読み取る。そのまま1分間放置後、同じ速度で元の長さまで戻し、3分間放置後、再び同じ速度で初荷重の加わる点L2 (cm)まで引き伸ばす。
次の式によって伸長率(%)を求める。
伸長率(%)=L1 /L0 ×100
弾性回復率(%)=(L1 −L2 )/L1 ×100
なお、試験回数は5回とし、その平均値を求めた。
【0010】
(2)I係数、L係数:
ウースタむら試験機でU%(糸の単位長さ当たり重量の平均偏差率)を測定し、構成本数の大小によってI係数及びL係数をそれぞれ下記式(c)、(d)で求める。
構成本数が64本以下の場合
I係数=U%×(構成本数)1/2/80 ・・・(c)
構成本数が64本を超える場合
L係数=U%×(構成本数)1/3/40 ・・・(d)
ここで構成本数とは、紡績糸の断面内にある短繊維の平均本数のことをいい、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)/短繊維の平均繊度(dtex)で求められる。繊度の異なる短繊維を混紡している場合、例えば繊度D1 dtexの短繊維を混率W1 %、繊度D2 dtexの短繊維をW2 %混紡している場合は、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)×(W1 /100)/D1 +紡績糸の繊度(dtex)×(W2 /100)/D2 で求められる。
【0011】
(3)固有粘度:
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはポリマー濃度(g/100ml)である。
なお、固有粘度の異なる二種以上のポリマーを用いた複合短繊維の場合は、複合短繊維を構成するそれぞれのポリマーの固有粘度を測定することは困難であるので、該繊維の紡糸条件と同じ条件でそれぞれのポリマーを単独で紡糸し、得られたそれぞれの糸を用いて測定した固有粘度を、複合短繊維を構成する繊維の固有粘度とした。
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の紡績糸は、紡績糸を構成する短繊維として固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維(以下、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と言う)を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸である。すなわち、本発明の紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維100%からなる紡績糸であってもよく、また、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と他の短繊維が混紡され、該複合短繊維が少なくとも10wt%以上含有された紡績糸であってもよい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を10wt%以上含有することにより、ストレッチ性及びストレッチバック性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現できる紡績糸が得られる。
【0013】
本発明の紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維100%の場合において最もストレッチ性、ストレッチバック性が良好に発現できるが、一方、該複合短繊維は他の繊維との複合紡績糸において更に優れた特徴を発現できる。すなわち、該複合短繊維と他の繊維とを複合紡績することによって、複合する相手繊維の風合いを充分に活かしながら、ストレッチ性及びストレッチバック性の機能性を付加できる。
複合紡績糸においては、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が10wt%以上70wt%以下であることが好ましく、相手繊維の風合いをより有効に活かすためには20wt%以上50wt%以下であることがさらに好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が10wt%以上であれば、得られる紡績糸は熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上を満足し、充分なストレッチ性とストレッチバック性を持った紡績糸となる。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が70wt%以下であれば、混紡する相手繊維の風合いを充分に発現できる紡績糸が得られる。
【0014】
ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と混紡する相手繊維としては特に限定されるものではなく、目的とする商品の要求特性に合わせた糸構成とすればよい。混紡する相手繊維としては、例えば、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート等の化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ナイロン系繊維等の合成繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)などのいずれであってもよい。
複合紡績糸における複合方法は特に限定されるものではなく、混打綿あるいはカード工程で原綿を混綿する方法、練条工程やミキシングギル工程でスライバーを重ね合わせて複合する方法、精紡工程で粗糸あるいはスライバーを複数本供給して精紡交撚(サイロスパン)を行う方法等が適用できる。
【0015】
より具体的には、例えば、綿とポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸の場合は、綿紡方式の紡績工程において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維(繊維長38mmが好ましい)100wt%でカードを通過させてスライバーとし、次の練条工程で綿のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。また、ウールや麻(リネン、ラミー)とポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸の場合には、梳毛紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート繊維(繊維長64mm以上のバイアスカットが好ましい)100wt%でローラーカードを通過させてスライバーとした後、ミキサー(ミキシングギルやポーキュパインローラーを備えたボビナー)でウールや麻のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。さらに紡毛方式の紡績工程において、カシミヤやラムズウールとポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸を製造する場合には、原綿の調合時に混合した後にローラーカードに仕掛けるのが好ましい。
【0016】
本発明の紡績糸は、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上である。より好ましくは、熱水処理後の伸長率が20%以上、弾性回復率が80%以上である。さらには、熱水処理後の伸長率及び弾性回復率が前記式(a)及び式(b)を満足することがより好ましい。
熱水処理後の伸長率が10%以上であると、従来の短繊維100%からなる紡績糸では得られなかったような極めてストレッチ性に優れた紡績糸となり、該紡績糸を用いた織物や編物は、着圧感が小さく、運動追従性に優れたストレッチ性に優れた織編物になる。
【0017】
また、弾性回復率が70%以上であると、充分なストレッチバック性が得られ、該紡績糸を用いた織編物は衣服としてのフィット感に優れ、長期間の着用や繰り返しの洗濯によっても型崩れや寸法変化の少ない、形態安定性の優れたものになる。
なお、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維に代えて、一種類のポリマーからなるポリエステル短繊維(ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)や、ポリトリメチレンテレフタレートを含有しない潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維を用いた紡績糸では、熱水処理後の伸長率と弾性回復率が同時に本発明を満足することはできない。
【0018】
本発明の紡績糸は、その均斉度を表す指標であるI係数またはL係数が1.1〜2.2の範囲内であることが好ましく、1.1〜2.0の範囲内であることがより好ましい。I係数またはL係数が上記の範囲内であると、むらの少ない均斉度の優れた紡績糸が得られ、高品位な織編物が得られる。I係数またはL係数が1.1未満の紡績糸は製造困難である。
紡績糸の均斉度を表す場合には、ウースタむら試験機で測定されるU%で表すのが一般的である。しかしながら、U%は紡績糸の太さ(繊度)や該紡績糸を構成する短繊維の太さ(繊度)によって大きく変化する。そこで、紡績糸や短繊維の繊度の影響を少なくするために、理論的均斉度Ulimに対する比であるI係数またはL係数で均斉度を表すのが好ましい。該係数は、紡績糸を構成する短繊維の平均本数、すなわち構成本数の大小によって、それぞれ前記式(c)、(d)で求める。
【0019】
本発明の紡績糸は、破断伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。破断伸度がこの範囲であると、編み立て時や製織時の糸切れが少なく、製編織性が良好で、ストレッチ性に優れた布帛が得られる。
本発明の紡績糸は、強伸度積が15cN・%/dtex以上であることが好ましく、20cN・%/dtex以上100cN・%/dtexであることがより好ましい。強伸度積が15cN・%/dtex以上であるとタフネスが高い糸になり、瞬間的に高い応力を受けた時の耐破断性が高くなったり、繰返し応力を受けた時の強伸度低下が小さくなったり等の効果があり、スポーツ用の衣料等に最適な耐衝撃性や耐久性の高い布帛が得られる。
【0020】
本発明の紡績糸の撚数は、メートル番手換算の撚り係数α(α=撚数(T/m)/(メートル番手0.5))が60〜120の範囲となるように、繊維長に応じて適宜設定すれば良い。
本発明の紡績糸は、単糸繊度が、通常0.1dtex以上10.0dtex以下であることが好ましく、紡績糸を衣料用途に用いる場合には1.0dtex以上6.0dtex以下がより好ましい。
【0021】
短繊維の繊維長は約30mm〜約160mmの範囲内で、用途や紡績方式、複合相手素材の繊維長等に応じて選べば良い。可紡性が良く品質の良好な紡績糸を得るためには、過長繊維割合(設定繊維長よりも長い繊維長を持つ単繊維の含有割合)が0.5%以下であることが好ましい。本発明の紡績糸に用いられるポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは20〜30cN/dtex、さらに好ましくは20〜27cN/dtexである。なお、初期引張抵抗度が10cN/dtex未満のものは現状では製造困難である。
【0022】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、その単糸の断面が長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状が丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
本発明の紡績糸に用いる潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維は、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であることに特徴がある。2種類のポリトリメチレンテレフタレート成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。
【0023】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、0.1〜0.35(dl/g)がより好ましく、0.15〜0.3(dl/g)がさらに好ましい。例えば、高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、0.85〜1.0(dl/g)がより好ましく、0.9〜1.0(dl/g)がさらに好ましい。
また、本発明の複合短繊維の平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)が好ましく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。さらに0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、特に0.9〜1.1(dl/g)が好ましい。
【0024】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレートの特徴として、ポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合短繊維においては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又は例えばテレフタル酸ジメチルなどのその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に縮合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合してもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたりしても良い。
【0026】
添加することができる第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で用いることもできる。
【0027】
さらにポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等の改質剤を添加して含有させていてもよい。
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、例えば上記の各種特許文献に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法や、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等により長繊維を得る。
【0028】
得られた長繊維を連続的に束にするか、あるいは一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にしてトウを形成し、紡績用の油剤を付与する。一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にする場合は、長繊維用の仕上げ油剤が付与されているため、該油剤を除去した後に紡績用の油剤を付与するのが好ましい。なお、溶融紡糸した未延伸糸を束にしてトウを形成した後に延伸しても良いが、均一な短繊維を得るには延伸後にトウを形成するのが好ましい。
溶融紡糸において、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもできる。この場合には自然延伸倍率以下の倍率で延伸した後に、後述する熱セット加工及び捲縮加工を施すのが好ましい。また、あらかじめ短繊維に切断せずにトウの状態で紡績工程に投入し、トウ牽切機により切断して短繊維となし、紡績糸としてもよい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、ポリエチレンテレフタレート短繊維等と比較して繊維間摩擦力が高いという特有の問題があり、適正な紡績用油剤を適正量付与することで良好な紡績性と紡績糸の高い均斉度を確保できる。
【0029】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短単繊維に付与する油剤は、制電性を付与すると共に繊維間摩擦力を下げて開繊性を向上させ、一方で集束性を付与し、更に繊維対金属摩擦力を下げて開繊工程における繊維の損傷を防ぐことを主な目的としている。油剤としては、制電剤としてよく使用されるアニオン界面活性剤、好ましくはアルキル燐酸エステル塩を主成分とする油剤を用いるのが好ましい。更に好ましくは、アルキル基の平均炭素数が8〜18のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする油剤であり、アルキル基の平均炭素数が10〜15のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする油剤が最も好ましい。
【0030】
アルキル燐酸エステル塩の具体例としては、ラウリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数12)、セチル燐酸エステルカリウム塩(同16)、ステアリル燐酸エステルカリウム塩(同18)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。アルキル燐酸エステル塩の含有率は50〜100wt%が好ましく、70〜90wt%がより好ましい。
更に他の油剤成分として、平滑性を向上させ繊維の損傷を防ぐ目的から、動植物油、鉱物油、脂肪酸エステル系化合物、または脂肪族の高級アルコールあるいは多価アルコールの脂肪酸エステルの酸化エチレン、酸化プロピレン等からなる非イオン活性剤を、50%以下、好ましくは10〜30wt%含有しても良い。
紡績用油剤の付着量は、0.05〜0.5%omfが好ましく、0.07〜0.35%omfがより好ましく、0.08〜0.2%omfがさらに好ましい。
【0031】
油剤の選択が適切で、付着量が上記の範囲内であると、可紡性に優れ、均斉度の高い紡績糸が得られる。しかし、油剤の付着量が多すぎると、カード工程でシリンダーに巻き付いたり、練条工程や粗紡工程、精紡工程等のローラードラフト工程においてトップローラー(ゴムローラー)への巻き付きが発生しやすくなったりする。逆に油剤の付着量が少なすぎると、開繊工程で短繊維の損傷が起きやすくなったり、前記ローラードラフト工程において静電気の発生が過多になり、ボトムローラー(金属ローラー)への巻き付きが発生しやすくなったりする。油剤の影響は特に精紡工程において顕著であり、トップローラーやボトムローラーへの短繊維の巻き付きは、糸切れの増加を招くとともに、糸の均斉性も低下させる。
【0032】
油剤を付与したトウは、次に乾燥工程で乾燥させるが、このとき緊張状態で乾燥を行うか、あるいは弛緩状態で乾燥させた後、緊張熱セットを行って、見かけ上の捲縮(顕在捲縮)を極力抑制することが好ましい。乾燥あるいは熱セットを弛緩状態で行うと、それまで潜在化していた捲縮が発現するが、その捲縮はらせん状の捲縮形態であるため、紡績用短繊維としては不適な捲縮形態の短繊維となる。
すなわち、らせん状の捲縮形態を有する短繊維は、特にカード工程において短繊維がシリンダー表面上を跳ねるような現象が見られ、可紡性が低下する。また、均斉なカードウェブを得ることが困難であり、更に後工程の練条、粗紡、精紡工程でのローラードラフトにおいて、らせん状の捲縮形態を有する短繊維は均一なドラフトを行うことが困難であるため、得られる紡績糸の均斉度が低下する。
【0033】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、潜在捲縮の捲縮率が大きく捲縮数も多いことに特徴があるため、弛緩状態での乾燥や熱処理は過大な捲縮を発現させることになり、紡績工程において開繊性が低下してネップやスラブが多くなり、糸の均斉度も低下して糸U%が悪化し糸品質が低下しやすい。
従って、本発明においては、潜在捲縮性ポリエステル短繊維が本来潜在的に持っているらせん状の捲縮を極力発現させずに、紡績工程性能を満足するために二次元的形態の捲縮を押し込み捲縮等の方法によって付与することが好ましい。
緊張状態での乾燥あるいは緊張熱セット工程においては、延伸倍率を1.0〜1.2倍とするのが好ましく、1.0〜1.1倍がより好ましい。温度は80〜180℃が好ましく、85〜160℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。熱処理時間は10秒〜10分が好ましく、30秒〜5分がより好ましい。
【0034】
延伸倍率や温度が高すぎる場合は、トウ中の単繊維が切れて工程性能が低下したり、紡績糸になった後の熱処理による捲縮の発現が小さくなって充分なストレッチ性が得られにくくなったりする。延伸倍率や温度が低すぎる場合や熱処理時間が短すぎる場合には、コイル状の顕在捲縮を充分に抑制することができず、可紡性や糸の均斉度が低下する。熱処理時間が長すぎるのは経済的に好ましくない。
緊張状態での乾燥あるいは緊張熱セット工程上がりのトウは、捲縮数が3個/25mm以下が好ましく、1個/25mm以下がより好ましく、0個/25mmが最も好ましい。
乾燥あるいは熱セット工程によって顕在捲縮を極力抑制されたトウは続いて、紡績の工程性能を良好にするために捲縮加工によって捲縮を付与することが必要である。捲縮加工の方法としては特に限定されるものではないが、生産性、捲縮形態の良好さからスタッファボックスを用いた押込み捲縮加工方法が好ましい。
【0035】
らせん状の捲縮を発現させずに、二次元的形態の捲縮を付与するためには、押込み捲縮加工における加熱温度をあまり上げないことが好ましい。加熱温度が高すぎると、らせん状の捲縮が顕在化して可紡性や糸の均斉度が低下する。加熱温度は、トウの表面温度が前工程の乾燥あるいは熱セット工程での処理温度以下になるように設定することが好ましく、トウの表面温度が80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。
紡績工程における短繊維の開繊性、可紡性を良好にするためには、紡績投入前の顕在化している捲縮数、捲縮率を適正な範囲に設定することが必要である。例えば、顕在捲縮の捲縮数は3〜30個/25mmが好ましく、5〜20個/25mmがより好ましい。また、顕在捲縮の捲縮率は2〜30%が好ましく、4〜25%がより好ましい。
【0036】
また、繊維長が短いほど上記範囲内で捲縮数は多く、捲縮率は大きくする方が好ましい。より具体的には、繊維長38mm(綿紡方式)の場合には捲縮数は16±2個/25mm、捲縮率は18±3%、繊維長51mm(合繊紡方式)の場合には捲縮数は12±2個/25mm、捲縮率は15±3%、繊維長64mm以上のバイアスカット(梳毛紡方式)の場合には捲縮数は8±2個/25mm、捲縮率は12±3%とするのが好ましい。また、紡毛方式(繊維長51mm等長)の場合は捲縮数18±2個/25mm、捲縮率は20±3%の範囲が好ましい。また、高速度タイプのカードに仕掛ける場合は、捲縮が伸ばされ易くなるため、捲縮率を上記範囲よりも2〜5%大きくするのが好ましい。
捲縮数や捲縮率が上記範囲内であると、カード工程において集束カレンダーローラーでウェブが垂れ落ちることや、コイラーカレンダーローラーでスライバー切れが発生したりすること等がなく、カード通過性が良好であり、また、開繊性が良好でネップやスラブが少なく、可紡性に優れ、均斉度の高い紡績糸が得られる。
【0037】
本発明の紡績糸が高いストレッチ性を有するためには、紡績糸を製造した後の染色等の熱処理工程において、それまで潜在化していたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の捲縮が大きく発現することが重要である。即ち、本発明においては、紡績工程投入前のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維又はトウを熱水処理した後の捲縮数、捲縮率が大きいことに特徴がある。具体的には、無荷重で熱水処理した後の捲縮数は20個/25mm以上が好ましく、25個/25mm以上がより好ましく、30個/25mm以上がさらに好ましい。同様に捲縮率は25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上がさらに好ましい。
また、無荷重で熱水処理した後の捲縮数(個/25mm)と捲縮率(%)の積が500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。
【0038】
本発明の紡績糸を製造する方法は特に限定されるものではなく、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の繊維長に応じて、通常の綿紡方式(繊維長32mm、38mm、44mm)、合繊紡方式(繊維長51mm、64mm、76mm)、梳毛紡方式(繊維長は64mm以上のバイアスカット)、トウ紡績法(トウを使用)等の紡績方法を適用すればよい。また、精紡方法も特に限定されるものではなく、リング精紡法、ローター式オープンエンド精紡法、フリクション式オープンエンド精紡法、エアジェット精紡法、ホロースピンドル精紡法(ラッピング精紡法)、セルフツイスト精紡法等を適用すればよいが、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維のソフトさを活かした汎用性のある紡績糸を得るためにはリング精紡法が好ましい。また、紡毛方式の場合にはミュール精紡機を用いるのが好ましい。
本発明の紡績糸は、本発明の目的を損なわない範囲で各種フィラメント糸との複合紡績糸、例えば、コアスパンヤーン、精紡交撚糸、ラッピングヤーン、各種意匠糸としてもよい。また、必要に応じて双糸加工や追撚加工を施しても良い。また、本発明の紡績糸と他の紡績糸、各種フィラメント糸、加工糸等と交撚したり、インターレース交絡や流体攪乱加工を行ったりして複合糸としてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例と比較例とを対比して具体的に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における評価は以下の方法で行った。
(1)捲縮数、捲縮率
JIS−L−1015(化学繊維ステープル試験方法)の捲縮数試験方法、及び、捲縮率試験方法により測定した。測定は、紡績投入前の短繊維又はトウの顕在化している捲縮数及び捲縮率を測定するとともに、それらを無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥したものについても捲縮数及び捲縮率の測定を行い、単繊維10本の測定値の平均値を求めた。
【0040】
(2)工程通過性(可紡性)
実施例及び比較例に用いた短繊維、各50kgを紡績工程に投入し、カード通過性を評価するとともに、精紡工程での糸切れ性を評価した。
カード通過性は紡出速度100m/分の条件でカード(綿紡、合繊紡方式ではフラットカード、梳毛紡方式ではローラーカード)に仕掛け、シリンダーへの巻き付き、集束カレンダーにおけるウェブの垂れ、スライバー切れ等を評価した。
精紡工程での糸切れ性は、精紡機1台(400錘)で紡績糸50kgを連続生産したときの糸切れ数を数え、精紡機1台、1時間当たりの糸切れ数を算出して評価した。
【0041】
(3)糸むら
JIS−L−1095、一般紡績糸試験方法の糸むら試験方法(B法)により、平均太さに対する太むら、細むら、ネップをそれぞれ測定し、糸長1000m当たりの個数を求めた。測定には欠点個数表示装置付糸むら試験機(計測器株式会社製KET−80B)を用い、太むらは平均太さ+50%、細むらは平均太さ−50%、ネップは平均太さ+200%の条件で測定した。
【0042】
(4)破断強度、破断伸度、初期引張抵抗度
紡績糸を無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した。JIS−L−1095、一般紡績糸の試験方法に定める初荷重を加え、定速伸長型引張試験機のつかみ間隔を30cm、引張速度を1分間あたりつかみ間隔の100%として引張試験を行い、破断強度(cN/dtex)、破断伸度(%)=破断時の伸びのつかみ間隔に対する比を求める。また、描いた荷重−伸び曲線から原点の近くで伸びの変化に対する荷重変化の最大点を求め、接線の傾きから初期引張抵抗度(cN/dtex)を求める。試験回数は20回とし、その平均値を求めた。
【0043】
【実施例1】
固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/48fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.92、低粘度側が[η]=0.68であった。
【0044】
得られた延伸糸200本を束にしてトウとし、精錬工程にて長繊維用の仕上げ剤を除去した後、ラウリル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする紡績用油剤を0.1%omf付与し、スチーム処理工程で110℃の条件で熱処理を行った。続いて熱延伸ロール工程において、ロール表面温度105℃(トウ表面温度92℃)、延伸倍率1.05倍、熱セット時間30秒の条件で乾熱延伸処理(緊張熱セット)を行った。乾熱延伸処理後のトウは、捲縮数が0.5個/25mmであった。
続いて、スタッファボックスを用いてトウ表面温度55℃の条件で押込み捲縮加工を行い、ECカッターを用いて繊維長38mmの長さに切断してポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数は16.6個/25mm、顕在捲縮率は17.5%であった。また、98℃×30分の熱水処理をしてみたところ、捲縮数は41.2個/25mm、捲縮率は45.1%であった。
【0045】
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維をそのまま、通常の綿紡方式の紡績工程に投入し、リング精紡機で紡績糸を製造し、70℃×15分の条件で真空セッターを用いて撚り止めセットを行った。得られた紡績糸の番手はメートル番手で1/52.3Nm(191.2dtex)、撚り係数αは114.6(撚数829T/m)、U%は12.8%、L係数は1.54(構成本数は112本)であった。
得られた紡績糸を綛に巻き、バルキー噴射染色機を用いて常圧で熱水処理を行った。得られた熱水処理糸の強度、伸度、初期引張抵抗度、伸長率、弾性回復率の測定結果をまとめて表1に示す。
【0046】
【実施例2】
実施例1と同様にして、単糸繊度2.2dtex、繊維長64〜89mmバイアスカットのポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数は9.4個/25mm、顕在捲縮率は13.2%、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数は38.6個/25mm、捲縮率は42.3%であった。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を通常の梳毛紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
【0047】
【実施例3】
実施例1で用いたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を33wt%、コーマ綿を67wt%の割合でカード投入前の工程で混紡し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
【0048】
【実施例4】
実施例2で用いたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維からなるカード上がりスライバーを30wt%、単糸繊度1.0dtexのアクリル繊維(旭化成商標カシミロン)のトウをトウ牽切機に通して得られたスライバーを70wt%の割合で、ミキシングギル工程で混紡し、実施例2と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、実施例3と同様にして30インチ(76.2cm)、22ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
実施例1〜4はいずれも可紡性が良好で、得られた紡績糸はいずれも均斉でストレッチ性が極めて大きく、ストレッチバック性も優れていた。また、実施例3及び実施例4の紡績糸で作成した丸編地は、相手素材である綿、アクリルの風合いが十分に発現しており、かつ低応力で大きく伸び、ストレッチ性が極めて良好であるとともにストレッチバック性も優れた編地であった。
【0049】
【表1】
【0050】
次に、潜在捲縮特性及び熱水処理後の捲縮特性の違いによる糸品質、ストレッチ性の差を実施例及び比較例によって説明する。
【実施例5〜7、比較例1〜2】
実施例2において、乾熱延伸処理及び押込み捲縮加工の条件を変えて、単糸繊度2.2dtex、繊維長64〜89mmバイアスカットのポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維をそれぞれ製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表2に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を用い、実施例4と同様にしてアクリル繊維との混紡糸を製造し、熱水処理糸及び丸編地を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表2に示す。
【0051】
実施例5〜6はいずれも可紡性が良好で、得られた紡績糸はいずれも均斉でストレッチ性が大きく、ストレッチバック性も優れていた。
実施例7は、乾熱延伸処理がやや不十分なため、紡績工程投入前の顕在捲縮の捲縮数及び捲縮率がやや大きかった。そのため、カード工程でウォーカーやストリッパーへの巻き付いきが時々見られ、可紡性はやや不良であった。また、開繊性もやや不十分で、得られた紡績糸はネップがやや多く、I係数もやや大きく均斉度がやや低いものであった。
実施例4〜7を比較すると、熱処理後の捲縮数及び捲縮率が大きいほど熱水処理糸のストレッチ性は大きくなる傾向が見られた。
【0052】
比較例1は、可紡性は良好であるが、乾熱延伸処理の条件が適正でないため熱処理後の捲縮数及び捲縮率が小さくなりすぎ、そのため熱水処理糸の伸長率が小さくストレッチ性は不十分であった。
比較例2は、乾熱延伸処理が不十分なため、紡績工程投入前の顕在捲縮の捲縮数及び捲縮率が過大で、かつその捲縮形態はらせん状の捲縮と押込み捲縮加工による2次元的な捲縮形態が混合された形態であった。そのため、カード工程で短繊維がシリンダー表面上を跳ねたり、ウォーカーやストリッパーに巻き付いたりする現象が見られ、可紡性は不良であった。また、開繊性も不十分で、得られた紡績糸はネップが多く、I係数も2.2を超え、均斉度が低いものであった。
【0053】
【表2】
【0054】
次に、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率の違いによるストレッチ性の差を実施例及び比較例によって説明する。
【実施例8〜11、比較例3】
実施例4において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維とアクリル繊維との混率を変えた以外は、実施例2と同様にして混紡糸を製造し、熱水処理糸及び丸編地を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表3に示す。
実施例8〜11および比較例3を比較すると、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率が多いほど、染糸の伸長率および弾性回復率が高くなる結果となった。特に比較例3のようにポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率が10wt%を下回ると、熱水処理糸の伸長率が大きく低下し、ストレッチ性は不十分であった。
【0055】
【表3】
【0056】
【実施例12】
実施例1において、単繊維断面が中空形状をなすような紡口を用いた以外は実施例1と同様にして、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmの中空断面形状のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表4に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を通常の合繊紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性を表4に示す。
実施例12は可紡性が良好で、得られた紡績糸は均斉でストレッチ性が極めて大きく、ストレッチバック性も優れていた。作成した丸編地は低応力で大きく伸び、ストレッチ性が極めて良好であるとともにストレッチバック性も優れたものであった。また、中空断面の単繊維を使用しているために、その丸編地は軽量感に富んだ編地であった。
【0057】
【比較例4】
1種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、通常の丸断面紡口を用いた以外は実施例1と同様にして84dtex/48fのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントの固有粘度は[η]=0.70であった。
得られたマルチフィラメントを用い、実施例1と同様にして単糸繊度1.7dtex、繊維長38mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表4に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維を通常の綿紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性を表4に示す。
得られた紡績糸及び丸編地は、ストレッチ性、ストレッチバック性ともに小さいものであった。
【0058】
【表4】
【0059】
【発明の効果】
本発明の紡績糸は、従来の紡績糸では得られない高いストレッチ性、ストレッチバック性を備え、かつ均斉性に優れた紡績糸である。また、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と他の繊維との複合紡績糸では、複合する相手素材の風合いを充分に活かしながら、高いストレッチ性、ストレッチバック性を付加できる。
本発明の紡績糸は、タイツ、ソックス、スポーツウェア等のジャージー、弾性糸のカバリング糸、アウター用織編物、肌着等の衣料や、タオル、バスマット、カーペット等のインテリア、寝装具、ミシン糸、カーシート、椅子張り地等の資材、テープ類、口ゴム等の衣料資材に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸に関する。
より詳細には、本発明はストレッチ性、ストレッチバック性及び均斉性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現することができる潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、衣料用や資材用の織物、編物においては、より大きなストレッチ性やストレッチバック性が求められるようになってきている。従来、紡績糸に大きなストレッチ性やストレッチバック性を持たせるには、スパンデックス等の弾性糸を芯に入れたCSY(コアスパンヤーン)が良く知られている。しかしながら、スパンデックスは、塩素等の薬品による脆化が大きく、染色堅牢度が低く、寸法安定性も低い等の問題がある。またCSYの製造時や後加工工程において、芯糸であるスパンデックスが切れること(即ちコア切れ)が起き易く、更にスパンデックスを正確に芯に入れることが技術的に難しい。スパンデックスが外に飛び出した糸は製造上のロスになるために、歩留まりが低下して製造コストが高くなる。これらの問題があることから、スパンデックスを使わないストレッチ性に優れた紡績糸が望まれている。
【0003】
本発明者らは、特許文献1において、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維を含有する紡績糸を提案した。この紡績糸は、長期の形態安定性や耐久性に優れ、またポリエチレンテレフタレート短繊維やナイロン短繊維を含有した従来の紡績糸に比べると確かにストレッチ性やストレッチバック性に優れた紡績糸であったが、スパンデックス等の弾性糸や合成繊維の仮撚糸を使ったCSYや精紡交撚糸に比べるとストレッチ性は依然不十分であった。
また、特許文献1の実施例20には、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを偏芯鞘芯型に複合した短繊維を用いた紡績糸を提案している。しかしながら、この短繊維は良好な可紡性を確保するために偏芯の度合いを小さくしていたため、染色後の捲縮発現が不十分でストレッチ性も満足の行くものではなかった。さらに、短繊維の製造工程においてスタッファボックスによる押し込み捲縮加工を行わなかったため、糸の均斉性や品質においても満足できるものではなかった。
【0004】
一方、特許文献2の実施例には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートをサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合した短繊維を用い、羊毛と混紡した混紡糸が開示されている。しかしながら、用いる短繊維としては、フィラメントよりも低捲縮のものがスフには好適であるとして、ボイル後の捲縮発現量が比較的小さい短繊維を用いているため、この紡績糸は羊毛調の風合いと嵩高性を特徴とはしているが、最近の衣料用や資材用の織物、編物に要求されるような高いストレッチ性は実現できないものであった。
さらに、特許文献3には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートからなり、特定の熱的性質を有するサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型の潜在捲縮性複合短繊維を55wt%以上含有する紡績糸が開示されている。また、複合短繊維を製造する際は、スタッファボックス等で機械捲縮を付与することが好ましいとしている。
【0005】
本発明者らの研究によれば、可紡性に優れ、均斉性や糸品質が良好な紡績糸を得るためには、潜在捲縮性複合短繊維のらせん状の潜在捲縮を発現させずに、適正な二次元的形態の機械捲縮を付与することが重要である。そのためには、該短繊維の製造工程における熱処理条件とスタッファボックスの加工条件を適正範囲に設定する必要がある。
特許文献3では、熱処理条件やスタッファボックスの加工条件については何ら記載がなく、可紡性や紡績糸の均斉性、糸品質に問題があった。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第02/31241号パンフレット
【特許文献2】
特公昭43−19108号公報
【特許文献3】
特開2000−328382号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ストレッチ性、ストレッチバック性及び均斉性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現することができる潜在捲縮発現性ポリエステル紡績糸を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維を特定量含有し、特定の物性を有する紡績糸とすることにより、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸であって、該短繊維が固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であり、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上、I係数またはL係数が1.1〜2.2であることを特徴とする紡績糸、
(2)熱水処理後の伸長率及び弾性回復率が、以下の式(a)及び式(b)を満足することを特徴とする(1)に記載の紡績糸、
伸長率(%)≧0.1X+20 ・・・(a)
弾性回復率(%)≧0.1X+80 ・・・(b)
但し、Xは紡績糸中の潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維の含有率(wt%)
(3)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維と他の繊維との複合紡績糸であって、該短繊維の含有率が20wt%以上50wt%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の紡績糸、
(4)潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維が、固有粘度差が0.05〜0.3(dl/g)である2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された短繊維であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の紡績糸、
である。
【0009】
なお、本発明における伸長率(%)、弾性回復率(%)、I係数またはL係数、固有粘度は次の方法で測定したものである。
(1)伸長率、弾性回復率:
紡績糸を無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥する。乾燥させた紡績糸1本に1.764×10−3cN/dtexの初荷重を加えて、つかみ間隔をL0 =20cmにした定速伸長型引張試験機に装着する。引張速度を1分間あたりつかみ間隔の50%(10cm/分)として一定荷重F0 =0.1cN/dtexまで引き伸ばし、このときの伸びL1 (cm)を読み取る。そのまま1分間放置後、同じ速度で元の長さまで戻し、3分間放置後、再び同じ速度で初荷重の加わる点L2 (cm)まで引き伸ばす。
次の式によって伸長率(%)を求める。
伸長率(%)=L1 /L0 ×100
弾性回復率(%)=(L1 −L2 )/L1 ×100
なお、試験回数は5回とし、その平均値を求めた。
【0010】
(2)I係数、L係数:
ウースタむら試験機でU%(糸の単位長さ当たり重量の平均偏差率)を測定し、構成本数の大小によってI係数及びL係数をそれぞれ下記式(c)、(d)で求める。
構成本数が64本以下の場合
I係数=U%×(構成本数)1/2/80 ・・・(c)
構成本数が64本を超える場合
L係数=U%×(構成本数)1/3/40 ・・・(d)
ここで構成本数とは、紡績糸の断面内にある短繊維の平均本数のことをいい、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)/短繊維の平均繊度(dtex)で求められる。繊度の異なる短繊維を混紡している場合、例えば繊度D1 dtexの短繊維を混率W1 %、繊度D2 dtexの短繊維をW2 %混紡している場合は、構成本数=紡績糸の繊度(dtex)×(W1 /100)/D1 +紡績糸の繊度(dtex)×(W2 /100)/D2 で求められる。
【0011】
(3)固有粘度:
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはポリマー濃度(g/100ml)である。
なお、固有粘度の異なる二種以上のポリマーを用いた複合短繊維の場合は、複合短繊維を構成するそれぞれのポリマーの固有粘度を測定することは困難であるので、該繊維の紡糸条件と同じ条件でそれぞれのポリマーを単独で紡糸し、得られたそれぞれの糸を用いて測定した固有粘度を、複合短繊維を構成する繊維の固有粘度とした。
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の紡績糸は、紡績糸を構成する短繊維として固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維(以下、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と言う)を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸である。すなわち、本発明の紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維100%からなる紡績糸であってもよく、また、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と他の短繊維が混紡され、該複合短繊維が少なくとも10wt%以上含有された紡績糸であってもよい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を10wt%以上含有することにより、ストレッチ性及びストレッチバック性に優れ、複合する相手素材の風合いを活かした織編物を実現できる紡績糸が得られる。
【0013】
本発明の紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維100%の場合において最もストレッチ性、ストレッチバック性が良好に発現できるが、一方、該複合短繊維は他の繊維との複合紡績糸において更に優れた特徴を発現できる。すなわち、該複合短繊維と他の繊維とを複合紡績することによって、複合する相手繊維の風合いを充分に活かしながら、ストレッチ性及びストレッチバック性の機能性を付加できる。
複合紡績糸においては、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が10wt%以上70wt%以下であることが好ましく、相手繊維の風合いをより有効に活かすためには20wt%以上50wt%以下であることがさらに好ましい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が10wt%以上であれば、得られる紡績糸は熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上を満足し、充分なストレッチ性とストレッチバック性を持った紡績糸となる。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の含有率が70wt%以下であれば、混紡する相手繊維の風合いを充分に発現できる紡績糸が得られる。
【0014】
ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と混紡する相手繊維としては特に限定されるものではなく、目的とする商品の要求特性に合わせた糸構成とすればよい。混紡する相手繊維としては、例えば、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート等の化学繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ナイロン系繊維等の合成繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)などのいずれであってもよい。
複合紡績糸における複合方法は特に限定されるものではなく、混打綿あるいはカード工程で原綿を混綿する方法、練条工程やミキシングギル工程でスライバーを重ね合わせて複合する方法、精紡工程で粗糸あるいはスライバーを複数本供給して精紡交撚(サイロスパン)を行う方法等が適用できる。
【0015】
より具体的には、例えば、綿とポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸の場合は、綿紡方式の紡績工程において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維(繊維長38mmが好ましい)100wt%でカードを通過させてスライバーとし、次の練条工程で綿のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。また、ウールや麻(リネン、ラミー)とポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸の場合には、梳毛紡方式の紡績工程においてポリトリメチレンテレフタレート繊維(繊維長64mm以上のバイアスカットが好ましい)100wt%でローラーカードを通過させてスライバーとした後、ミキサー(ミキシングギルやポーキュパインローラーを備えたボビナー)でウールや麻のスライバーと引き揃えて複合するのが好ましい。さらに紡毛方式の紡績工程において、カシミヤやラムズウールとポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維との複合紡績糸を製造する場合には、原綿の調合時に混合した後にローラーカードに仕掛けるのが好ましい。
【0016】
本発明の紡績糸は、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上である。より好ましくは、熱水処理後の伸長率が20%以上、弾性回復率が80%以上である。さらには、熱水処理後の伸長率及び弾性回復率が前記式(a)及び式(b)を満足することがより好ましい。
熱水処理後の伸長率が10%以上であると、従来の短繊維100%からなる紡績糸では得られなかったような極めてストレッチ性に優れた紡績糸となり、該紡績糸を用いた織物や編物は、着圧感が小さく、運動追従性に優れたストレッチ性に優れた織編物になる。
【0017】
また、弾性回復率が70%以上であると、充分なストレッチバック性が得られ、該紡績糸を用いた織編物は衣服としてのフィット感に優れ、長期間の着用や繰り返しの洗濯によっても型崩れや寸法変化の少ない、形態安定性の優れたものになる。
なお、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維に代えて、一種類のポリマーからなるポリエステル短繊維(ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)や、ポリトリメチレンテレフタレートを含有しない潜在捲縮発現性ポリエステル複合短繊維を用いた紡績糸では、熱水処理後の伸長率と弾性回復率が同時に本発明を満足することはできない。
【0018】
本発明の紡績糸は、その均斉度を表す指標であるI係数またはL係数が1.1〜2.2の範囲内であることが好ましく、1.1〜2.0の範囲内であることがより好ましい。I係数またはL係数が上記の範囲内であると、むらの少ない均斉度の優れた紡績糸が得られ、高品位な織編物が得られる。I係数またはL係数が1.1未満の紡績糸は製造困難である。
紡績糸の均斉度を表す場合には、ウースタむら試験機で測定されるU%で表すのが一般的である。しかしながら、U%は紡績糸の太さ(繊度)や該紡績糸を構成する短繊維の太さ(繊度)によって大きく変化する。そこで、紡績糸や短繊維の繊度の影響を少なくするために、理論的均斉度Ulimに対する比であるI係数またはL係数で均斉度を表すのが好ましい。該係数は、紡績糸を構成する短繊維の平均本数、すなわち構成本数の大小によって、それぞれ前記式(c)、(d)で求める。
【0019】
本発明の紡績糸は、破断伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。破断伸度がこの範囲であると、編み立て時や製織時の糸切れが少なく、製編織性が良好で、ストレッチ性に優れた布帛が得られる。
本発明の紡績糸は、強伸度積が15cN・%/dtex以上であることが好ましく、20cN・%/dtex以上100cN・%/dtexであることがより好ましい。強伸度積が15cN・%/dtex以上であるとタフネスが高い糸になり、瞬間的に高い応力を受けた時の耐破断性が高くなったり、繰返し応力を受けた時の強伸度低下が小さくなったり等の効果があり、スポーツ用の衣料等に最適な耐衝撃性や耐久性の高い布帛が得られる。
【0020】
本発明の紡績糸の撚数は、メートル番手換算の撚り係数α(α=撚数(T/m)/(メートル番手0.5))が60〜120の範囲となるように、繊維長に応じて適宜設定すれば良い。
本発明の紡績糸は、単糸繊度が、通常0.1dtex以上10.0dtex以下であることが好ましく、紡績糸を衣料用途に用いる場合には1.0dtex以上6.0dtex以下がより好ましい。
【0021】
短繊維の繊維長は約30mm〜約160mmの範囲内で、用途や紡績方式、複合相手素材の繊維長等に応じて選べば良い。可紡性が良く品質の良好な紡績糸を得るためには、過長繊維割合(設定繊維長よりも長い繊維長を持つ単繊維の含有割合)が0.5%以下であることが好ましい。本発明の紡績糸に用いられるポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは20〜30cN/dtex、さらに好ましくは20〜27cN/dtexである。なお、初期引張抵抗度が10cN/dtex未満のものは現状では製造困難である。
【0022】
本発明に用いられるポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、その単糸の断面が長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状が丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
本発明の紡績糸に用いる潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維は、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であることに特徴がある。2種類のポリトリメチレンテレフタレート成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。
【0023】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、0.1〜0.35(dl/g)がより好ましく、0.15〜0.3(dl/g)がさらに好ましい。例えば、高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、0.85〜1.0(dl/g)がより好ましく、0.9〜1.0(dl/g)がさらに好ましい。
また、本発明の複合短繊維の平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)が好ましく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。さらに0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、特に0.9〜1.1(dl/g)が好ましい。
【0024】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレートの特徴として、ポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合短繊維においては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又は例えばテレフタル酸ジメチルなどのその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に縮合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合してもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたりしても良い。
【0026】
添加することができる第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で用いることもできる。
【0027】
さらにポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等の改質剤を添加して含有させていてもよい。
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸については、例えば上記の各種特許文献に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法や、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等により長繊維を得る。
【0028】
得られた長繊維を連続的に束にするか、あるいは一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にしてトウを形成し、紡績用の油剤を付与する。一度パッケージに巻き取った長繊維を再度解舒して束にする場合は、長繊維用の仕上げ油剤が付与されているため、該油剤を除去した後に紡績用の油剤を付与するのが好ましい。なお、溶融紡糸した未延伸糸を束にしてトウを形成した後に延伸しても良いが、均一な短繊維を得るには延伸後にトウを形成するのが好ましい。
溶融紡糸において、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもできる。この場合には自然延伸倍率以下の倍率で延伸した後に、後述する熱セット加工及び捲縮加工を施すのが好ましい。また、あらかじめ短繊維に切断せずにトウの状態で紡績工程に投入し、トウ牽切機により切断して短繊維となし、紡績糸としてもよい。ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、ポリエチレンテレフタレート短繊維等と比較して繊維間摩擦力が高いという特有の問題があり、適正な紡績用油剤を適正量付与することで良好な紡績性と紡績糸の高い均斉度を確保できる。
【0029】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短単繊維に付与する油剤は、制電性を付与すると共に繊維間摩擦力を下げて開繊性を向上させ、一方で集束性を付与し、更に繊維対金属摩擦力を下げて開繊工程における繊維の損傷を防ぐことを主な目的としている。油剤としては、制電剤としてよく使用されるアニオン界面活性剤、好ましくはアルキル燐酸エステル塩を主成分とする油剤を用いるのが好ましい。更に好ましくは、アルキル基の平均炭素数が8〜18のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする油剤であり、アルキル基の平均炭素数が10〜15のアルキル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする油剤が最も好ましい。
【0030】
アルキル燐酸エステル塩の具体例としては、ラウリル燐酸エステルカリウム塩(平均炭素数12)、セチル燐酸エステルカリウム塩(同16)、ステアリル燐酸エステルカリウム塩(同18)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。アルキル燐酸エステル塩の含有率は50〜100wt%が好ましく、70〜90wt%がより好ましい。
更に他の油剤成分として、平滑性を向上させ繊維の損傷を防ぐ目的から、動植物油、鉱物油、脂肪酸エステル系化合物、または脂肪族の高級アルコールあるいは多価アルコールの脂肪酸エステルの酸化エチレン、酸化プロピレン等からなる非イオン活性剤を、50%以下、好ましくは10〜30wt%含有しても良い。
紡績用油剤の付着量は、0.05〜0.5%omfが好ましく、0.07〜0.35%omfがより好ましく、0.08〜0.2%omfがさらに好ましい。
【0031】
油剤の選択が適切で、付着量が上記の範囲内であると、可紡性に優れ、均斉度の高い紡績糸が得られる。しかし、油剤の付着量が多すぎると、カード工程でシリンダーに巻き付いたり、練条工程や粗紡工程、精紡工程等のローラードラフト工程においてトップローラー(ゴムローラー)への巻き付きが発生しやすくなったりする。逆に油剤の付着量が少なすぎると、開繊工程で短繊維の損傷が起きやすくなったり、前記ローラードラフト工程において静電気の発生が過多になり、ボトムローラー(金属ローラー)への巻き付きが発生しやすくなったりする。油剤の影響は特に精紡工程において顕著であり、トップローラーやボトムローラーへの短繊維の巻き付きは、糸切れの増加を招くとともに、糸の均斉性も低下させる。
【0032】
油剤を付与したトウは、次に乾燥工程で乾燥させるが、このとき緊張状態で乾燥を行うか、あるいは弛緩状態で乾燥させた後、緊張熱セットを行って、見かけ上の捲縮(顕在捲縮)を極力抑制することが好ましい。乾燥あるいは熱セットを弛緩状態で行うと、それまで潜在化していた捲縮が発現するが、その捲縮はらせん状の捲縮形態であるため、紡績用短繊維としては不適な捲縮形態の短繊維となる。
すなわち、らせん状の捲縮形態を有する短繊維は、特にカード工程において短繊維がシリンダー表面上を跳ねるような現象が見られ、可紡性が低下する。また、均斉なカードウェブを得ることが困難であり、更に後工程の練条、粗紡、精紡工程でのローラードラフトにおいて、らせん状の捲縮形態を有する短繊維は均一なドラフトを行うことが困難であるため、得られる紡績糸の均斉度が低下する。
【0033】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維は、潜在捲縮の捲縮率が大きく捲縮数も多いことに特徴があるため、弛緩状態での乾燥や熱処理は過大な捲縮を発現させることになり、紡績工程において開繊性が低下してネップやスラブが多くなり、糸の均斉度も低下して糸U%が悪化し糸品質が低下しやすい。
従って、本発明においては、潜在捲縮性ポリエステル短繊維が本来潜在的に持っているらせん状の捲縮を極力発現させずに、紡績工程性能を満足するために二次元的形態の捲縮を押し込み捲縮等の方法によって付与することが好ましい。
緊張状態での乾燥あるいは緊張熱セット工程においては、延伸倍率を1.0〜1.2倍とするのが好ましく、1.0〜1.1倍がより好ましい。温度は80〜180℃が好ましく、85〜160℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。熱処理時間は10秒〜10分が好ましく、30秒〜5分がより好ましい。
【0034】
延伸倍率や温度が高すぎる場合は、トウ中の単繊維が切れて工程性能が低下したり、紡績糸になった後の熱処理による捲縮の発現が小さくなって充分なストレッチ性が得られにくくなったりする。延伸倍率や温度が低すぎる場合や熱処理時間が短すぎる場合には、コイル状の顕在捲縮を充分に抑制することができず、可紡性や糸の均斉度が低下する。熱処理時間が長すぎるのは経済的に好ましくない。
緊張状態での乾燥あるいは緊張熱セット工程上がりのトウは、捲縮数が3個/25mm以下が好ましく、1個/25mm以下がより好ましく、0個/25mmが最も好ましい。
乾燥あるいは熱セット工程によって顕在捲縮を極力抑制されたトウは続いて、紡績の工程性能を良好にするために捲縮加工によって捲縮を付与することが必要である。捲縮加工の方法としては特に限定されるものではないが、生産性、捲縮形態の良好さからスタッファボックスを用いた押込み捲縮加工方法が好ましい。
【0035】
らせん状の捲縮を発現させずに、二次元的形態の捲縮を付与するためには、押込み捲縮加工における加熱温度をあまり上げないことが好ましい。加熱温度が高すぎると、らせん状の捲縮が顕在化して可紡性や糸の均斉度が低下する。加熱温度は、トウの表面温度が前工程の乾燥あるいは熱セット工程での処理温度以下になるように設定することが好ましく、トウの表面温度が80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましく、60℃以下が特に好ましい。
紡績工程における短繊維の開繊性、可紡性を良好にするためには、紡績投入前の顕在化している捲縮数、捲縮率を適正な範囲に設定することが必要である。例えば、顕在捲縮の捲縮数は3〜30個/25mmが好ましく、5〜20個/25mmがより好ましい。また、顕在捲縮の捲縮率は2〜30%が好ましく、4〜25%がより好ましい。
【0036】
また、繊維長が短いほど上記範囲内で捲縮数は多く、捲縮率は大きくする方が好ましい。より具体的には、繊維長38mm(綿紡方式)の場合には捲縮数は16±2個/25mm、捲縮率は18±3%、繊維長51mm(合繊紡方式)の場合には捲縮数は12±2個/25mm、捲縮率は15±3%、繊維長64mm以上のバイアスカット(梳毛紡方式)の場合には捲縮数は8±2個/25mm、捲縮率は12±3%とするのが好ましい。また、紡毛方式(繊維長51mm等長)の場合は捲縮数18±2個/25mm、捲縮率は20±3%の範囲が好ましい。また、高速度タイプのカードに仕掛ける場合は、捲縮が伸ばされ易くなるため、捲縮率を上記範囲よりも2〜5%大きくするのが好ましい。
捲縮数や捲縮率が上記範囲内であると、カード工程において集束カレンダーローラーでウェブが垂れ落ちることや、コイラーカレンダーローラーでスライバー切れが発生したりすること等がなく、カード通過性が良好であり、また、開繊性が良好でネップやスラブが少なく、可紡性に優れ、均斉度の高い紡績糸が得られる。
【0037】
本発明の紡績糸が高いストレッチ性を有するためには、紡績糸を製造した後の染色等の熱処理工程において、それまで潜在化していたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の捲縮が大きく発現することが重要である。即ち、本発明においては、紡績工程投入前のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維又はトウを熱水処理した後の捲縮数、捲縮率が大きいことに特徴がある。具体的には、無荷重で熱水処理した後の捲縮数は20個/25mm以上が好ましく、25個/25mm以上がより好ましく、30個/25mm以上がさらに好ましい。同様に捲縮率は25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上がさらに好ましい。
また、無荷重で熱水処理した後の捲縮数(個/25mm)と捲縮率(%)の積が500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましい。
【0038】
本発明の紡績糸を製造する方法は特に限定されるものではなく、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の繊維長に応じて、通常の綿紡方式(繊維長32mm、38mm、44mm)、合繊紡方式(繊維長51mm、64mm、76mm)、梳毛紡方式(繊維長は64mm以上のバイアスカット)、トウ紡績法(トウを使用)等の紡績方法を適用すればよい。また、精紡方法も特に限定されるものではなく、リング精紡法、ローター式オープンエンド精紡法、フリクション式オープンエンド精紡法、エアジェット精紡法、ホロースピンドル精紡法(ラッピング精紡法)、セルフツイスト精紡法等を適用すればよいが、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維のソフトさを活かした汎用性のある紡績糸を得るためにはリング精紡法が好ましい。また、紡毛方式の場合にはミュール精紡機を用いるのが好ましい。
本発明の紡績糸は、本発明の目的を損なわない範囲で各種フィラメント糸との複合紡績糸、例えば、コアスパンヤーン、精紡交撚糸、ラッピングヤーン、各種意匠糸としてもよい。また、必要に応じて双糸加工や追撚加工を施しても良い。また、本発明の紡績糸と他の紡績糸、各種フィラメント糸、加工糸等と交撚したり、インターレース交絡や流体攪乱加工を行ったりして複合糸としてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例と比較例とを対比して具体的に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における評価は以下の方法で行った。
(1)捲縮数、捲縮率
JIS−L−1015(化学繊維ステープル試験方法)の捲縮数試験方法、及び、捲縮率試験方法により測定した。測定は、紡績投入前の短繊維又はトウの顕在化している捲縮数及び捲縮率を測定するとともに、それらを無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥したものについても捲縮数及び捲縮率の測定を行い、単繊維10本の測定値の平均値を求めた。
【0040】
(2)工程通過性(可紡性)
実施例及び比較例に用いた短繊維、各50kgを紡績工程に投入し、カード通過性を評価するとともに、精紡工程での糸切れ性を評価した。
カード通過性は紡出速度100m/分の条件でカード(綿紡、合繊紡方式ではフラットカード、梳毛紡方式ではローラーカード)に仕掛け、シリンダーへの巻き付き、集束カレンダーにおけるウェブの垂れ、スライバー切れ等を評価した。
精紡工程での糸切れ性は、精紡機1台(400錘)で紡績糸50kgを連続生産したときの糸切れ数を数え、精紡機1台、1時間当たりの糸切れ数を算出して評価した。
【0041】
(3)糸むら
JIS−L−1095、一般紡績糸試験方法の糸むら試験方法(B法)により、平均太さに対する太むら、細むら、ネップをそれぞれ測定し、糸長1000m当たりの個数を求めた。測定には欠点個数表示装置付糸むら試験機(計測器株式会社製KET−80B)を用い、太むらは平均太さ+50%、細むらは平均太さ−50%、ネップは平均太さ+200%の条件で測定した。
【0042】
(4)破断強度、破断伸度、初期引張抵抗度
紡績糸を無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した。JIS−L−1095、一般紡績糸の試験方法に定める初荷重を加え、定速伸長型引張試験機のつかみ間隔を30cm、引張速度を1分間あたりつかみ間隔の100%として引張試験を行い、破断強度(cN/dtex)、破断伸度(%)=破断時の伸びのつかみ間隔に対する比を求める。また、描いた荷重−伸び曲線から原点の近くで伸びの変化に対する荷重変化の最大点を求め、接線の傾きから初期引張抵抗度(cN/dtex)を求める。試験回数は20回とし、その平均値を求めた。
【0043】
【実施例1】
固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/48fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.92、低粘度側が[η]=0.68であった。
【0044】
得られた延伸糸200本を束にしてトウとし、精錬工程にて長繊維用の仕上げ剤を除去した後、ラウリル燐酸エステルカリウム塩を主成分とする紡績用油剤を0.1%omf付与し、スチーム処理工程で110℃の条件で熱処理を行った。続いて熱延伸ロール工程において、ロール表面温度105℃(トウ表面温度92℃)、延伸倍率1.05倍、熱セット時間30秒の条件で乾熱延伸処理(緊張熱セット)を行った。乾熱延伸処理後のトウは、捲縮数が0.5個/25mmであった。
続いて、スタッファボックスを用いてトウ表面温度55℃の条件で押込み捲縮加工を行い、ECカッターを用いて繊維長38mmの長さに切断してポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を得た。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数は16.6個/25mm、顕在捲縮率は17.5%であった。また、98℃×30分の熱水処理をしてみたところ、捲縮数は41.2個/25mm、捲縮率は45.1%であった。
【0045】
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維をそのまま、通常の綿紡方式の紡績工程に投入し、リング精紡機で紡績糸を製造し、70℃×15分の条件で真空セッターを用いて撚り止めセットを行った。得られた紡績糸の番手はメートル番手で1/52.3Nm(191.2dtex)、撚り係数αは114.6(撚数829T/m)、U%は12.8%、L係数は1.54(構成本数は112本)であった。
得られた紡績糸を綛に巻き、バルキー噴射染色機を用いて常圧で熱水処理を行った。得られた熱水処理糸の強度、伸度、初期引張抵抗度、伸長率、弾性回復率の測定結果をまとめて表1に示す。
【0046】
【実施例2】
実施例1と同様にして、単糸繊度2.2dtex、繊維長64〜89mmバイアスカットのポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数は9.4個/25mm、顕在捲縮率は13.2%、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数は38.6個/25mm、捲縮率は42.3%であった。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を通常の梳毛紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
【0047】
【実施例3】
実施例1で用いたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を33wt%、コーマ綿を67wt%の割合でカード投入前の工程で混紡し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
【0048】
【実施例4】
実施例2で用いたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維からなるカード上がりスライバーを30wt%、単糸繊度1.0dtexのアクリル繊維(旭化成商標カシミロン)のトウをトウ牽切機に通して得られたスライバーを70wt%の割合で、ミキシングギル工程で混紡し、実施例2と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、実施例3と同様にして30インチ(76.2cm)、22ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表1に示す。
実施例1〜4はいずれも可紡性が良好で、得られた紡績糸はいずれも均斉でストレッチ性が極めて大きく、ストレッチバック性も優れていた。また、実施例3及び実施例4の紡績糸で作成した丸編地は、相手素材である綿、アクリルの風合いが十分に発現しており、かつ低応力で大きく伸び、ストレッチ性が極めて良好であるとともにストレッチバック性も優れた編地であった。
【0049】
【表1】
【0050】
次に、潜在捲縮特性及び熱水処理後の捲縮特性の違いによる糸品質、ストレッチ性の差を実施例及び比較例によって説明する。
【実施例5〜7、比較例1〜2】
実施例2において、乾熱延伸処理及び押込み捲縮加工の条件を変えて、単糸繊度2.2dtex、繊維長64〜89mmバイアスカットのポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維をそれぞれ製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表2に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を用い、実施例4と同様にしてアクリル繊維との混紡糸を製造し、熱水処理糸及び丸編地を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表2に示す。
【0051】
実施例5〜6はいずれも可紡性が良好で、得られた紡績糸はいずれも均斉でストレッチ性が大きく、ストレッチバック性も優れていた。
実施例7は、乾熱延伸処理がやや不十分なため、紡績工程投入前の顕在捲縮の捲縮数及び捲縮率がやや大きかった。そのため、カード工程でウォーカーやストリッパーへの巻き付いきが時々見られ、可紡性はやや不良であった。また、開繊性もやや不十分で、得られた紡績糸はネップがやや多く、I係数もやや大きく均斉度がやや低いものであった。
実施例4〜7を比較すると、熱処理後の捲縮数及び捲縮率が大きいほど熱水処理糸のストレッチ性は大きくなる傾向が見られた。
【0052】
比較例1は、可紡性は良好であるが、乾熱延伸処理の条件が適正でないため熱処理後の捲縮数及び捲縮率が小さくなりすぎ、そのため熱水処理糸の伸長率が小さくストレッチ性は不十分であった。
比較例2は、乾熱延伸処理が不十分なため、紡績工程投入前の顕在捲縮の捲縮数及び捲縮率が過大で、かつその捲縮形態はらせん状の捲縮と押込み捲縮加工による2次元的な捲縮形態が混合された形態であった。そのため、カード工程で短繊維がシリンダー表面上を跳ねたり、ウォーカーやストリッパーに巻き付いたりする現象が見られ、可紡性は不良であった。また、開繊性も不十分で、得られた紡績糸はネップが多く、I係数も2.2を超え、均斉度が低いものであった。
【0053】
【表2】
【0054】
次に、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率の違いによるストレッチ性の差を実施例及び比較例によって説明する。
【実施例8〜11、比較例3】
実施例4において、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維とアクリル繊維との混率を変えた以外は、実施例2と同様にして混紡糸を製造し、熱水処理糸及び丸編地を得た。熱水処理後の紡績糸の物性をまとめて表3に示す。
実施例8〜11および比較例3を比較すると、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率が多いほど、染糸の伸長率および弾性回復率が高くなる結果となった。特に比較例3のようにポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の混率が10wt%を下回ると、熱水処理糸の伸長率が大きく低下し、ストレッチ性は不十分であった。
【0055】
【表3】
【0056】
【実施例12】
実施例1において、単繊維断面が中空形状をなすような紡口を用いた以外は実施例1と同様にして、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmの中空断面形状のポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表4に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維を通常の合繊紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性を表4に示す。
実施例12は可紡性が良好で、得られた紡績糸は均斉でストレッチ性が極めて大きく、ストレッチバック性も優れていた。作成した丸編地は低応力で大きく伸び、ストレッチ性が極めて良好であるとともにストレッチバック性も優れたものであった。また、中空断面の単繊維を使用しているために、その丸編地は軽量感に富んだ編地であった。
【0057】
【比較例4】
1種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、通常の丸断面紡口を用いた以外は実施例1と同様にして84dtex/48fのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントの固有粘度は[η]=0.70であった。
得られたマルチフィラメントを用い、実施例1と同様にして単糸繊度1.7dtex、繊維長38mmのポリトリメチレンテレフタレート短繊維を製造した。得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維の顕在捲縮数、顕在捲縮率、98℃×30分の熱水処理後の捲縮数及び捲縮率をそれぞれ表4に示す。
得られたポリトリメチレンテレフタレート短繊維を通常の綿紡方式の紡績工程に投入し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造し、熱水処理糸を得た。また、得られた熱水処理糸を用いて、30インチ(76.2cm)、18ゲージの丸編機で天竺組織の丸編地を作成した。熱水処理後の紡績糸の物性を表4に示す。
得られた紡績糸及び丸編地は、ストレッチ性、ストレッチバック性ともに小さいものであった。
【0058】
【表4】
【0059】
【発明の効果】
本発明の紡績糸は、従来の紡績糸では得られない高いストレッチ性、ストレッチバック性を備え、かつ均斉性に優れた紡績糸である。また、ポリトリメチレンテレフタレート複合短繊維と他の繊維との複合紡績糸では、複合する相手素材の風合いを充分に活かしながら、高いストレッチ性、ストレッチバック性を付加できる。
本発明の紡績糸は、タイツ、ソックス、スポーツウェア等のジャージー、弾性糸のカバリング糸、アウター用織編物、肌着等の衣料や、タオル、バスマット、カーペット等のインテリア、寝装具、ミシン糸、カーシート、椅子張り地等の資材、テープ類、口ゴム等の衣料資材に有用である。
Claims (4)
- 潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維を少なくとも10wt%以上含有する紡績糸であって、該短繊維が固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる複合短繊維であり、熱水処理後の伸長率が10%以上、弾性回復率が70%以上、I係数またはL係数が1.1〜2.2であることを特徴とする紡績糸。
- 熱水処理後の伸長率及び弾性回復率が、以下の式(a)及び式(b)を満足することを特徴とする請求項1に記載の紡績糸。
伸長率(%)≧0.1X+20 ・・・(a)
弾性回復率(%)≧0.1X+80 ・・・(b)
但し、Xは紡績糸中の潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維の含有率(wt%) - 潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維と他の繊維との複合紡績糸であって、該短繊維の含有率が20wt%以上50wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紡績糸。
- 潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維が、固有粘度差が0.05〜0.3(dl/g)である2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された短繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紡績糸。
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WO2016110536A1 (de) * | 2015-01-09 | 2016-07-14 | Oerlikon Textile Gmbh & Co. Kg | Verfahren und vorrichtung zur qualitätsüberwachung einer vielzahl von schmelzgesponnenen fasersträngen eines faserkabels |
KR101905634B1 (ko) * | 2017-11-17 | 2018-10-08 | 김미경 | 경량 복합 방적사의 제조방법 |
KR20220021478A (ko) * | 2019-12-29 | 2022-02-22 | 지앙수 헝리 케미컬 파이버 컴퍼니 리미티드 | 편성용 복합 권축 섬유 및 그 제조 방법 |
-
2003
- 2003-02-10 JP JP2003032428A patent/JP2004244731A/ja active Pending
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KR102516295B1 (ko) | 2019-12-29 | 2023-03-30 | 지앙수 헝리 케미컬 파이버 컴퍼니 리미티드 | 편성용 복합 권축 섬유 및 그 제조 방법 |
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