JP3210656B2 - ポリアセタール樹脂組成物及び摺動部材 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物及び摺動部材

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、選れた摩擦・摩耗特性を有し、かつ摺動時
の摺動音(きしみ音)が発生しないポリアセタール樹脂
組成物に関するものである。
〔従来の技術とその課題〕
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械的性質
を有し、耐摩擦・摩耗特性、耐薬品性、耐熱性、電気特
性等に優れるため、自動車、電気・電子製品等の分野で
広く利用されている。しかし、かかる分野における要求
特性は次第に高度化しつつあり、その一例として一般物
性と共に摺動特性の一層の向上が望まれている。かかる
摺動特性とは、摩擦係数、比摩耗量は勿論であるが、こ
れらの他に、摺動音(きしみ音)が重要な特定として取
り上げられている。
斯かる摺動音を含む摺動特性を改善する目的で、ポリ
アセタール樹脂にフッ素樹脂やポリオレフィン系の樹脂
の添加、また脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイ
ル、各種鉱油などの潤滑油の添加が行われている。
フッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂の添加は、摺動音
を含む摺動特性をある程度改善するが、これらの趣旨は
ポリアセタール樹脂との相溶性に乏しいため、成形品表
面に剥離を生じさせたり、成形金型に析出物を発生させ
易い。
また潤滑油の添加は、摩擦係数や比摩耗量の低減には
効果があるが、摺動音の改善には不十分であり、更に押
出あるいは成形加工時の困難さ、或いは使用時の滲み出
し等の種々の難点がある。
斯かる如く、従来より公知の方法は、摺動特性、成形
加工品、その他の実用性の見地から未だ十分でなく、こ
れらの諸性質を改良した材料が望まれている。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは良好な一般物性を有するとともに、特に
優れた摺動特性を持つポリアセタール樹脂組成物の開発
について鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に
特定のグラフト共重合体と特定の潤滑剤を添加すること
により、摺動音(きしみ音)が著しく改善され、摩擦・
摩耗特性及び成形性その他の一般物性に優れたポリアセ
タール樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到
達した。
即ち本発明は、 (A)ポリアセタール樹脂100重量部に (B)ポリエチレン(a)と、アクリロニトリル−スチ
レン共重合体(b)とが、分岐又は架橋構造的に化学結
合したグラフト共重合体0.5〜40重量部 (C)全炭素数12以上の脂肪酸、アルコール及び脂肪酸
エステルからなる群より選択される1種以上の潤滑剤0.
1〜20重量部〔対(A+B)成分100重量部〕 を配合した摩擦、摩耗特性、特に摺動音を大幅に改良せ
しめたポリアセタール樹脂組成物並びにこれら組成物よ
りなる摺動部材を提供するものである。
以下本発明の構成について詳しく説明する。
まず、本発明に用いられる(A)ポリアセタール樹脂
としては、ポリアセタールホモポリマー及び主鎖の大部
分がオキシメチレン連鎖よりなるポリアセタールコポリ
マーのいずれも使用できる。また、ポリアセタールを公
知の方法で架橋或いはグラフト共重合して変性させたも
のも基体樹脂として使用でき、また重合度等も成形可能
な限り特に制限はない。
次に本発明で(B)成分として用いるグラフト共重合
体とは、ポリエチレン(a)と、アクリロニトリル−ス
チレン共重合体(b)とが、分岐又は架橋構造的に化学
結合したグラフト共重合体である。
本発明の特徴とするグラフト共重合体(B)とは、主
鎖部分を構成する前記の(a)のポリエチレンと(b)
のアクリロニトリル−スチレン共重合体が単独で用いら
れるのではなく、性質の異なった(a)の重合体と
(b)の重合体が少なくとも一点で化学結合した分岐又
は架橋構造を有するグラフト共重合体である点にその特
徴を有し、後述の如くかかるグラフト構造を有すること
によって単に(a)又は(b)の単独配合にては得られ
ない顕著な効果を得るのである。
かかる(a)セグメント及び(b)セグメントよりな
るグラフト共重合体の調製法は特に限定されるものでは
ないが、通常よく知られたラジカル反応によって容易に
調製できる。例えば、重合体(a)と、(b)を構成す
るモノマーにラジカル触媒を加えて混練してグラフト化
する方法、或いは重合体(a)又は(b)の何れかに過
酸化物等のラジカル触媒を加えてフリーラジカルを生成
させ、これを他の成分ポリマーと溶融混練する方法等に
よってグラフト共重合体(B)が調製される。ここで
(B)成分のグラフト共重合体を構成するための(a)
と(b)の割合は95:5〜5:95、好ましくは80:20〜20:8
0、更に好ましくは60:40〜40:60である。
また、(B)成分の(A)成分100重量部に対する量
は0.5〜40重量部、好ましくは1〜30重量部である。
(B)成分が少なすぎると本発明の目的とする摺動特
性、特に摺動音の改良効果が得られず、多すぎると剛性
等の機械的性質を阻害するため好ましくない。
本発明の組成物はこのままで用いても良好な物性を有
し、特に摺動特性、成形加工性等に顕著な効果を有する
ものであるが、更に前記(A)〜(B)成分に加えて
(C)潤滑剤を併用することにより、更に一層の効果を
得ることができる。
ここで(C)成分の潤滑剤とは、全炭素数12以上の脂
肪酸、アルコール及び脂肪酸エステルからなる群より選
択される1種以上の化合物である。
具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン
酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン
酸等の脂肪酸;ヘキシルアルコール、オクチルアルコー
ル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニ
ルアルコール、グリコール類、グリセリン、ポリグリセ
ロール、ペンタエリスリトール等のアルコール;及び前
記脂肪酸とアルコールからなるステアリルステアレー
ト、ベヘニルベヘネート、ペンタエリスリトールトリス
テアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレー
ト、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘ
ネート等の脂肪酸エステルであり、取扱いの容易さ、加
工性、摩擦・摩耗特性、機械的性質等総合的にみると、
全炭素数20以上の脂肪酸エステルが特に好ましく使用で
きる。
本発明において、かかる潤滑剤の添加量は、0.1〜20
重量部〔対(A)+(B)成分100重量部〕である。0.1
重量部未満では潤滑剤本来の効果が発揮され難く、また
逆に20重量部より多い量では基体であるポリアセタール
の性質が損なわれるため好ましくない。
本発明の特徴及び効果は、前述した如く、ポリアセタ
ール樹脂(A)に特定のグラフト共重合体(B)及び潤
滑剤(C)を添加することにより、特に摺動音及び摩擦
・摩耗特性が大幅に改良されることにあり、(B)、
(C)成分の相乗効果により摺動特性のみならず一般物
性にも顕著な効果が認められる。
その理由の一つとしてこのグラフト共重合体(B)
は、潤滑剤(C)の担体として(A)及び(C)に適度
の相溶性をもたらす媒介作用を有するものと解される。
脂肪酸エステル等の潤滑剤は、摺動特性の改善の目的で
一般的に使用されるが、単独では必要な摺動特性を得る
に十分な量を均一に添加することが困難であり、添加剤
の混練時に押出機のスクリュー上で樹脂の滑りの原因と
なり、サージング現象を生じたり、ベント孔より未溶融
樹脂がベントアップする等の問題を生じ、均一な組成物
の調製自体が困難であるのみならず、成形時においても
くい込み不良、可塑化不良等の問題を生じ、更に使用時
においては成形品表面に多量の潤滑剤の滲み出し(ブリ
ード)等を生ずる。
しかるにグラフト共重合体(B)を存在せしめること
により、上記の如き潤滑剤単独による欠点が解消され、
それのみならず、グラフト共重合体(B)と潤滑剤
(C)が共存することは、摺動特性に対し顕著な相乗効
果を呈する。
本発明の組成物は、更に公知の各種安定剤を添加して
安定性を補強することができる。また、目的とする用途
に応じてその物性を改善するために、更に公知の各種の
添加剤を配合し得る。
添加剤の例を示せば、各種の着色剤、離型剤(前記の
潤滑剤以外)、核剤、帯電防止剤、その他の界面活性
剤、異種ポリマー(前記のグラフト共重合体以外)等で
ある。
また、本発明の目的とする組成物の性能を大幅に低下
させない範囲内であれば、無機・有機・金属等の繊維
状、粉粒状、板状の充填剤を1種又は2種混合使用する
こともできる。
次に本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製
法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製
される。例えば、各成分を混合した後、一軸又は二軸の
押出機により練込み押出ししてペレットを調製する方
法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調
製し、そのペレットを所定量混合(稀釈)する方法等、
何れも使用できる。
また、斯かる組成物の調製において、基体であるポリ
アセタール樹脂(A)又はグラフト共重合体(B)の一
部又は全部を粉砕し、これとその他の成分を混合した
後、押出等を行うことは添加物の分散性を良くする上で
好ましい方法である。
又、潤滑剤(C)として液体状のものを用いる場合、
予め潤滑剤(C)をグラフト共重合体(B)と混合し、
含浸させた後、これをポリアセタール樹脂と混練し、押
出等を行う方法も組成物の調製を容易にし、加工性及び
摺動性改善の点で好ましい方法である。
〔実 施 例〕
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、
本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜2及び比較例1〜10 第1表の如く、(A)成分としてポリアセタール樹脂
(ポリプラスチック(株)製、商品名ジュラコン)、
(B)成分として本発明のグラフト共重合体及び(C)
成分として各種潤滑剤を第1表に示す割合で混合した
後、二軸押出機により溶融混練し、ペレット状の組成物
を調製した。次いでこのペレットを用いて射出成形によ
り試験片を作成し、評価を行った。結果を第1表に示
す。
また比較のため、(B)成分であるグラフト共重合体
を配合しない組成物、(B)成分の代わりに(a)成分
又は(b)成分を各々単独で使用したもの、(C)潤滑
剤のみを単独に使用したもの、(a)成分と潤滑剤を併
用したもの等についても同様にして評価した。結果を併
せて第1表に示す。
尚、評価項目及び評価方法は下記の通りである。
・押出加工性(組成物ペレット調製時所見); 内径30mmベント付二軸押出機を使用して押出を行い押
出状況を観察した。押出中のスクリューへのくい込み状
況、ベントアップ、ストランドの発泡状態、サージング
現象等を目視観察にて総合的に5段階で評価した。
・成形品表面状態; 評価用試験片(50mm×50mm×1mm:センターピンゲート
方式)を成形して、その表面の剥離状況を5段階で評価
した。
・摺動音特性; 鈴木式摩擦・摩耗試験機を用い、加圧下(3.5kg/c
m2)、線速度50mm/sec、接触面積2.0cm2で、同じ材料同
志を10時間摺動させる間のきしみ音の発生状況を騒音計
を用い相対的に評価した。
・摩擦係数、比摩耗量; 鈴木式摩擦・摩耗試験機を用い、加圧下(0.6kg/c
m2)、線速度150mm/sec、接触面積2.0cm2で、相手材を
一般のポリアセタール樹脂(ポリプラスチック(株)
製、商品名ジュラコン)とし、動摩擦係数、比摩耗量を
測定した。
尚、ここで(B)成分及びその構成成分(a)、
(b)として用いた物質は次の通りであり、第1表にお
いては略号で表示した。
(a)PE:ポリエチレン (b)AN/S:アクリロニトリル−スチレン共重合体 (B)PE−g−AN/S:PE(50)とアクリロニトリル−ス
チレン共重合体(50)とのグラフト共重合体 〔発明の効果〕 以上の説明及び実施例により明らかなように、ポリア
セタール樹脂(A)に特定のグラフト共重合体(B)及
び特定の潤滑剤(C)を含有してなる本発明のポリアセ
タール樹脂組成物は、グラフト共重合体を構成する成分
であるポリエチレン(a)、アクリロニトリル−スチレ
ン共重合体(b)を各単独で配合したもの、或いは従来
より同じ目的で用いられている各種潤滑油等を添加した
ものに比べ、摺動特性、特に摺動音(きしみ音)が飛躍
的に改善され、摺動部材用として好ましいものである。
また、本発明の組成物は、従来よりとかくこの種の材
料の問題となっていた押出、成形加工上の難点が改善さ
れ、しかも成分の分離、滲み出し等の難点も改良されて
いる。
本発明の摺動部材組成物は、上記の如き摺動材として
の優れた性質を有するが故に、オーディオ、ビデオ関係
部品、例えばVTR、8ミリビデオ等のギヤ、カム、レバ
ー、クラッチ、ガイドローラ、ガイドポール等の摺動部
材及び前記部材と摺動するシャーシ、プレート等に好適
である。この他、繊維機械、カメラ、ラジオ、ファクシ
ミリ、コンピューター等の各種のOA機器等の機構部品、
摺動部材等に好適に用いられる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−87550(JP,A) 特開 昭59−204652(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)ポリアセタール樹脂100重量部に (B)ポリエチレン(a)と、アクリロニトリル−スチ
    レン共重合体(b)とが、分岐又は架橋構造的に化学結
    合したグラフト共重合体0.5〜40重量部 (C)全炭素数12以上の脂肪酸、アルコール及び脂肪酸
    エステルからなる群より選択される1種以上の潤滑剤0.
    1〜20重量部〔対(A+B)成分100重量部〕 を含有せしめてなるポリアセタール樹脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物
    よりなる摺動部材。
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