JP3202838B2 - クロム−モリブデン鋼のクリープ損傷計測法 - Google Patents

クロム−モリブデン鋼のクリープ損傷計測法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、クロム−モリブデン
鋼のクリープ損傷計測法に関し、従来クリープ損傷を測
定することが難しいとされたクリープ損傷の初期ないし
中期の計測をもクロムとモリブデンの重量比の変化を用
いてできるようにしたのもである。
【0002】
【従来の技術】クロム−モリブデン鋼は耐熱鋼の一つで
あり、高温環境や高温高圧環境下で使用される火力発電
プラントのボイラ部材などに用いられており、このよう
な環境下で長期間使用すると、クリープ損傷やクリープ
疲労損傷などの経年劣化損傷が生じる。
【0003】このためクロムーモリブデン鋼を長期間安
全に使用するためには、これまでに受けたクリープ損傷
を計測する必要があり、これによって寿命や余寿命を予
測する必要がある。特に、高度成長期に建設され設計寿
命を迎えつつある発電プラントを、近年の電力需要の高
まりや新規発電プラントの立地困難のために、その寿命
を延伸して電力の安定供給を図ろうとする場合には、一
層寿命や余寿命の予測が重要となる。
【0004】従来、ボイラ部材の損傷は、実機の設計条
件や運転履歴などに基づいて、応力解析を行って推定し
たり、伝熱管のように実機から抜き取った管で試験片を
作り、実験室で加速試験を行って推定することが行われ
ていた。
【0005】しかし、これらの方法は、損傷計測精度が
低いとか、実機からのサンプリングができない部材には
適用できないなどの問題があり、高精度の非破壊損傷計
測法の開発が必要になってきた。
【0006】このためクロムーモリブデン鋼についての
非破壊損傷計測法も開発されつつあり、クリープ損傷を
計測する方法もいくつか提案されている。
【0007】その一つに金属の微細組織の変形を観察す
ることで、クリープ損傷を知る方法があり、例えばボイ
ド計測法や結晶粒変形率計測法などがある。
【0008】ボイド計測法では、金属の微細組織を電子
顕微鏡や光学顕微鏡で観察し、クリープ損傷によって結
晶粒に微細な空孔(ボイド)が発生することを利用して
クリープ損傷を知る方法である。
【0009】また、結晶粒変形率計測法では、クリープ
損傷によって変形された結晶粒の長軸方向の長さと短軸
方向の長さの比率を変形率として求め、この変形率を利
用してクリープ損傷を知る方法である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のボイ
ド計測法や結晶粒変形率計測法によってクリープ損傷を
知るためには、被計測試料に微細な空孔や結晶粒の変形
が生じる状態とならねばならず、このような状態が生じ
るのが、クリープ損傷の後期であり、クリープ損傷の初
期段階や中期段階を知ることができないという問題があ
る。
【0011】この発明はかかる従来技術の課題に鑑みて
なされたもので、クリープ損傷の初期や中期の段階から
クリープ損傷を知ることができるクロム−モリブデン鋼
のクリープ損傷計測法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明の請求項1記載のクロム−モリブデン鋼の
クリープ損傷計測法は、クロムーモリブデン鋼のクリー
プ損傷を計測するに際し、被計測部から採取した試料を
電気分解して炭化物を分離し、得られた炭化物を溶解し
たのち化学的または物理的分析法によりクロムとモリブ
デンとの重量比を求め、予め求めておいた同一組成材料
の既知のクリープ損傷に対するクロムとモリブデンとの
重量比の関係を求めたマップと比較して前記試料のクリ
ープ損傷を求めるようにしたことを特徴とするものであ
る。
【0013】また、この発明の請求項2記載のクロムー
モリブデン鋼のクリープ損傷計測法は、請求項1記載の
クリープ損傷に対するクロムとモリブデンとの重量比の
関係のマップを作成する場合に、クリープ破断が生じる
ときのラーソンミラーパラメータと応力との関係と、既
知のクリープ損傷に対するラーソンミラーパラメータと
クロムとモリブデンとの重量比との関係を求めることを
特徴とするものである。
【0014】さらに、この発明の請求項3記載のクロム
−モリブデン鋼のクリープ損傷計測法は、請求項2記載
のラーソンミラーパラメータに対する2つの関係を用い
て、クリープ寿命比に対するクロムとモリブデンとの重
量比の関係を温度および応力をパラメータとしてマップ
を作成することを特徴とするものである。
【0015】
【作用】この発明の請求項1記載のクロム−モリブデン
鋼のクリープ損傷計測法によれば、クリープ損傷を受け
たクロム−モリブデン鋼の被計測試料では、初期の段階
からクロムとモリブデンの重量比が変化することが分か
り、しかも、このクロム−モリブデンの重量比とクリー
プ損傷との間に一定の関係があることが実験的に得られ
たことから、予め既知のクリープ損傷に対して同一組成
のクロムーモリブデン鋼についてその材料のクロム−モ
リブデンの重量比との関係のマップを求めておき、これ
と実際の被計測試料の計測結果とを比較することで、ク
リープ損傷を知ることができるようにしている。
【0016】また、請求項2記載のクロム−モリブデン
鋼のクリープ損傷計測法によれば、既知のクリープ損傷
に対するクロムーモリブデンの重量比の関係のマップを
作る場合に、クリープ破断が生じるときのラーソンミラ
ーパラメータとクロム−モリブデンの重量比の関係と、
既知のクリープ損傷に対するラーソンミラーパラメータ
とクロム−モリブデンの重量比との関係を求めるように
しており、これらの関係から得たマップでクリープ損傷
を知ることができるようにしている。
【0017】さらに、請求項3記載のクロム−モリブデ
ン鋼のクリープ損傷計測法によれば、請求項2で求めた
ラーソンミラーパラメータに対する2つの関係から、ク
リープ寿命比に対するクロム−モリブデンの重量比との
関係を温度および応力をパラメータとして作ってマップ
とするようにしており、一層簡単にクリープ損傷を求め
ることができるようにしている。
【0018】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面を参照しな
がら詳細に説明する。この発明のクロム−モリブデン鋼
のクリープ損傷計測法は、次の〜の3つの構成要素
からなり、予め求めてあるマップを利用することによっ
てクリープ損傷を知るものである。 :クリープ損傷を測定しようとする実機から微小サン
プルを採取し、電気分解によりクロム−モリブデン鋼中
の炭化物を分離すること。 :この分離された炭化物を溶解処理した後、化学的ま
たは物理的分析法でクロムの重量とモリブデンの重量を
計測すること。 :予め求めておいた同一組成のクロム−モリブデン鋼
のクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr とクリープ損
傷との関係を示すマップと、微小サンプルのクロム−モ
リブデン重量比Mo /Cr とを比較してクリープ損傷を
知ること。
【0019】なお、ここでのクリープ損傷とは、超音波
探傷などで検出可能な1mm程度のき裂が発生するまでの
過程を主として対象にしている。
【0020】すなわち、実験室的に異なるクリープ損傷
を与えたクロムーモリブデン鋼の試験片について、鉄は
溶けるが、炭化物が溶けない程度の電位で電気分解し、
炭化物を分離した後、これを分析してクロムとモリブデ
ンの重量を求めたところ、クリープ損傷とクロム−モリ
ブデンの重量比Mo /Cr との間に一定の関係があるこ
とが分かった。
【0021】そこで、この実機から採取した微小サンプ
ルのクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr を計測する
ことによって、予め実験室で求めたマップからクリープ
損傷を知ることができる。
【0022】このようなクロム−モリブデン鋼の炭素化
物の組成は、熱時効の程度によって変化することは、一
部の文献に発表され既に知られているが、クリープ損傷
の初期の段階での変化については明らかにされていない
だけでなく、しかもクリープ損傷との間に一定の関係が
あることまでは、全く見出だされていない。
【0023】しかし、この発明では、クリープ損傷の初
期からクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr との間に
は一定の関係があることを見出したのである。
【0024】次に、このクリープ損傷計測法で必要なク
ロム−モリブデンの重量比Mo /Cr の測定手順につい
て、図2により説明する。実機からは、診断すべき部分
の健全性を損なわない程度の微小サンプル、たとえば、
3.5×3.5×1mm程度のものを放電加工で採取す
る。この放電加工による採取では、たとえば採取する微
小サンプルの周囲にサンプル厚さより僅かに深い溝を加
工した後、溝の中に入れた電極で溝で囲まれた中央部を
1mmの厚さに切断することによって行う。
【0025】また、実験室で用いる試験片は、実機のよ
うに削り取る必要がないので、微小にする必要はなく、
クリープ損傷を与えることができる適宜の大きさで作成
するようにすれば良い。
【0026】こうして採取した微小サンプルまたは予め
既知のクリープ損傷を与えた試験片は、電気分解により
炭化物の分離を行う。この電気分解では、試料を陽極と
し、白金電極を陰極とし、鉄は溶けるが、炭化物が溶け
ない程度の電位として行う。
【0027】次に、ろ過によって炭化物だけを採取した
のち、この炭化物を酸で溶解し、高周波プラズマによる
発光分析によってクロムの重量およびモリブデンの重量
を測定する。こうして得られたクロムの重量およびモリ
ブデンの重量から、クロム−モリブデンの重量比Mo /
Cr が求められる。
【0028】次に、この発明のクリープ損傷計測法で必
要となるマップ(寿命検定曲線)の作成原理について、
図3により説明する。まず、試験片に加える応力および
温度を変え、それぞれの応力および温度に対するクリー
プによる破断が生じるまでの時間tr を測定する。
【0029】この測定結果から、図3(a)に示すよう
に、応力σに対するラーソンミラーパラメータP(LM
P)の関係としてクリープ破断曲線を求める。
【0030】なお、ラーソンミラーパラメータPは、次
式で表わされる。 P=[T( ℃) +273]・[20+log tr(h)] ここで、Tは温度である。
【0031】図4は、2.25Cr −1Mo 鋼を用い、
温度を630℃として試験片に加える応力σを変えてク
リープ破断が生じる時間tr を測定して求めたクリープ
破断曲線である。この図4から明らかなように、クリー
プ破断が生じるときには、ラーソンミラーパラメータP
(LMP)と応力σとの間には、一定の関係があること
が分かる。なお、このクリープ破断が生じる場合の実験
においても、既に説明した方法により、それぞれの場合
についてクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr を求め
ておく。
【0032】次に、試験片に加える応力σおよび温度T
を変え、それぞれの応力σおよび温度Tに対してクリー
プ応力負荷時間t(h )を変えた試験片を作り、これら
既知のクリープ損傷の試験片について、クロム−モリブ
デンの重量比Mo /Cr を求める。
【0033】そして、試験片に加えたクリープ応力負荷
時間tと温度TからラーソンミラーパラメータP(LM
P)を演算で求めてクロム−モリブデンの重量比Mo /
Crとの関係を図3(b)のように求める。
【0034】図5は、2.25Cr −1Mo 鋼を用い、
温度を630℃として試験片に加える応力σおよびクリ
ープ応力負荷時間tを変え、これら試験片のクロム−モ
リブデンの重量比Mo /Cr を求めてラーソンミラーパ
ラメータP(LMP)を演算し、クロム−モリブデンの
重量比Mo /Cr との関係を示したものである。
【0035】このクロム−モリブデンの重量比Mo /C
r とラーソンミラーパラメータPとの関係を表わす図5
から明らかなように、ラーソンミラーパラメータP(L
MP)とクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr との間
には、一定の関係があることが分かり、しかも試験片に
加えた応力σとは、無関係であることもわかる。
【0036】こうしてこれらクリープ破断曲線およびク
ロム−モリブデンの重量比Mo /Cr とラーソンミラー
パラメータPとの関係が求められると、図3(c)に示
すように、クリープ寿命比t/tr に対するクロム−モ
リブデンの重量比Mo /Crの関係を温度Tおよび応力
σをパラメータとして表した寿命検定曲線を求めること
ができ、たとえば温度Tを一定にした寿命検定曲線を各
温度ごとに作ることができる。
【0037】すなわち、図3(a)のクリープ破断曲線
で応力を、たとえばσ1 ,σ2 ,σ3 としてクリープ破
断が生じるときのラーソンミラーパラメータP1 ,P2
,P3 を求める。
【0038】次に、求めたラーソンミラーパラメータP
1 ,P2 ,P3 のときのクロム−モリブデンの重量比M
o /Cr を、図3(b)に示すクロム−モリブデンの重
量比Mo /Cr とラーソンミラーパラメータPとの関係
から求めて(Mo /Cr )1,(Mo /Cr )2 ,(Mo
/Cr )3 とする。
【0039】これらから、クリープ破断が生じたとき
(クリープ寿命比が1のとき)のクロム−モリブデン重
量比Mo /Cr の関係を図3(c)のように求めること
ができる。
【0040】同様にして、図3(a)および図3(b)
の関係から、クリープ寿命比t/tr が小さい場合の各
点を演算で求めてプロットすることで図3(c)の関係
を求めることができる。
【0041】たとえば温度Tを630℃とした場合につ
いて、応力を決めると、図3(a)からラーソンミラー
パラメータPが求められ、これによりクリープ破断時間
trが演算で求められる。
【0042】一方、このクリープ破断時間tr に対して
寿命比t/tr を定めて(クリープ応力負荷時間tを定
めることに相当)、そのときのラーソンミラーパラメー
タPを既に定めた温度Tとから演算し、この値から図3
(b)によってクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr
を読取り、これを図3(c)上にプロットすることで、
図3(c)に示すグラフの途中の点をプロットすること
ができる。
【0043】さらに、温度Tを変えたクリープ寿命曲線
を求める場合にも、図3(a)で応力σを定めたときの
ラーソンミラパラメータPの値から求められるクリープ
破断時間tr が変わることになり、これに基づいて、上
記と同様に、クリープ応力負荷時間tを定めて図3
(b)を用いることで異なる温度Tに対する応力をパラ
メータPする寿命検定曲線を得ることができる。
【0044】こうして温度Tごとに応力σをパラメータ
としてクリープ寿命比t/tr に対するクロム−モリブ
デン重量比Mo /Cr の関係で示すクリープ寿命曲線を
得ることができる。
【0045】そこで、2.25Cr −1Mo 鋼を用い、
温度Tを630℃とした場合の図4に示したクリープ破
断曲線と図5に示したクロム−モリブデンの重量比Mo
/Cr とラーソンミラーパラメータとの関係から、2.
25Cr −1Mo 鋼の温度Tを630℃とした場合のク
リープ寿命曲線を求めると、図1に示す各曲線を求める
ことができる。なお、この図1上の各記号は、実験値を
示すものであるこれら図3(c)およびその具体例を示
す図1では、いずれも応力σをパラメータとして表示し
てあり、クロム−モリブデンの重量比Mo /Cr が応力
σと無関係であるとする図3(b)およびその具体例を
示す図5と矛盾するかのように見えるが、図3(c)お
よび図1では、横軸にクリープ寿命比t/tr を取って
いるので、各実験値のクリープ応力負荷時間tやクリー
プ破断時間tr の絶対値が異なることから応力に依存す
るかのように表示されるだけである。こうして温度ごと
にクリープ寿命検定曲線を求めてマップとすることで、
これらを利用してクリープ損傷を知ることができる。
【0046】次に、クリープ損傷の関係のマップを利用
した具体的なクリープ損傷の求め方について説明する。
まず、実機から診断すべき部分の健全性を損なわない程
度の微小サンプルを採取してクロム−モリブデンの重量
比Mo /Cr を計測する。
【0047】そして、実機の運転状態から、上記マップ
を利用するために必要な診断すべき部分の応力σと、温
度Tまたはクリープ応力負荷時間tのいずれかを推定す
る。
【0048】この場合の推定には、設計条件を用いた
り、日常の温度や圧力の測定値、あるいは運転時間など
の運転履歴を用いる。
【0049】そこで、 応力σと温度Tを用いる場合
には、図3(c)や図1に示す、この温度Tのクリープ
寿命検定曲線を用い、計測したクロム−モリブデンの重
量比Mo /Cr を縦軸にとり、この場合の応力σと交差
する点を下に降ろして直接クリープ寿命比t/tr を読
み取ることができる。
【0050】次に、 応力σとクリープ応力負荷時間
tとを用いる場合には、図3(b)や図5に示す、温度
には無関係のクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr と
ラーソンミラーパラメータPとの関係から、計測したク
ロム−モリブデンの重量比Mo /Cr を縦軸にとり、こ
の値と曲線と交差する点を下に降ろしてラーソンミラー
パラメータPを読み取る。そして、このラーソンミラー
パラメータPとクリープ応力負荷時間tから、この場合
の温度Tを演算で求める。
【0051】こうして温度Tが分かれば、上記の場合
と同様にして図3(c)または図1の温度Tのときのク
リープ寿命検定曲線を用い、計測したクロム−モリブデ
ンの重量比Mo /Cr を縦軸にとり、この場合の応力σ
と交差する点を下に降ろして直接クリープ寿命比t/t
r を読み取ることができる。
【0052】なお、図3(c)や図1を用いること無
く、図3(a)や図4を用いてクリープ破断時間tr を
求めて演算でクリープ寿命比t/tr を求めても良い
(なお、この演算を予め行い、図表にしたのが図3
(c)であり、図1である。)。
【0053】以上のように、クロム−モリブデン鋼のク
ロム−モリブデンの重量比Mo /Cr とクリープ寿命比
t/tr との関係を求めてマップを作っておくことで、
クリープ損傷の初期や中期からクリープ損傷を知ること
ができる。また、このクリープ損傷計測法では、微小サ
ンプルを採取してクロム−モリブデンの重量比Mo /C
r を求めるだけで良く、簡単であり、再現性も高い。
【0054】なお、上記実施例では、2.25Cr −1
Mo 鋼を具体例として説明したが、この材料の溶接熱影
響部についても同様の実験を行い、各実験値は異るもの
の、クリープ寿命曲線を用いてクリープ損傷を計測でき
ることを確認している。
【0055】さらに、この2.25Cr −1Mo 鋼に限
らず、他の組成のクロム−モリブデン鋼についても、同
様の手法でクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr を用
いてマップからクリープ損傷を計測でき、クリープが生
じるクロム−モリブデン鋼に広く適用できる。また、こ
の発明の要旨を変更しない範囲で各構成要素に変更を加
えるようにしても良い。
【0056】
【発明の効果】以上、一実施例とともに具体的に説明し
たようにこの発明の請求項1記載のクロム−モリブデン
鋼のクリープ損傷計測法によれば、クリープ損傷を受け
たクロム−モリブデン鋼の被計測試料では、初期の段階
からクロムとモリブデンの重量比Mo /Cr が変化する
ことが分かり、しかも、このクロム−モリブデンの重量
比Mo /Cr とクリープ損傷との間に一定の関係がある
ことが実験的に得られたので、予め既知のクリープ損傷
に対して同一組成のクロムーモリブデン鋼についてその
材料のクロム−モリブデンの重量比Mo /Cr との関係
のマップを求めておき、これと実際の被計測試料の計測
結果とを比較することで、クリープ損傷を初期の段階や
中期の段階でも知ることができる。さらに、計測が簡単
であり、再現性も高く、母材部分だけでなく、溶接熱影
響部についても同様の計測法を適用することができる。
【0057】また、請求項2記載のクロム−モリブデン
鋼のクリープ損傷計測法によれば、既知のクリープ損傷
に対するクロムーモリブデンの重量比Mo /Cr の関係
のマップを作る場合に、クリープ破断が生じるときのラ
ーソンミラーパラメータとクロム−モリブデンの重量比
Mo /Cr の関係と、既知のクリープ損傷に対するラー
ソンミラーパラメータとクロム−モリブデンの重量比M
o /Cr との関係を求めるようにしたので、これらの関
係から得たマップでクリープ損傷を簡単に知ることがで
きる。
【0058】さらに、請求項3記載のクロム−モリブデ
ン鋼のクリープ損傷計測法によれば、請求項2で求めた
ラーソンミラーパラメータに対する2つの関係から、ク
リープ寿命比に対するクロム−モリブデンの重量比Mo
/Cr との関係を温度および応力をパラメータとして作
ってマップとするようにしたので、一層簡単にクリープ
損傷を求めることができる。
【0059】また、いずれのクロム−モリブデン鋼のク
リープ損傷計測法においても、クロム−モリブデンの重
量比Mo /Cr の変化がクリープ損傷の初期の段階から
明確に表れるので、従来計測の困難であった初期のクリ
ープ損傷を計測できるようになり、これにより、使用中
の材料のクリープ損傷を初期状態から随時計測し、クリ
ープ損傷後期になったことを知った場合に、この部材を
交換するなどすれば、クリープ損傷による破断事故を未
然に防止することができるとともに、設計寿命に近づい
ているボイラの寿命延長を行う場合にも、安全性の確保
が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のクロム−モリブデン鋼のクリープ損
傷計測法の一実施例にかかるクリープ寿命検定曲線の一
例のグラフである。
【図2】この発明のクロム−モリブデン鋼のクリープ損
傷計測法の一実施例にかかるクロム−モリブデンの重量
比Mo /Cr の測定手順の説明図である。
【図3】この発明のクロム−モリブデン鋼のクリープ損
傷計測法の一実施例にかかるクリープ寿命検定曲線の作
成原理の説明図である。
【図4】この発明のクロム−モリブデン鋼のクリープ損
傷計測法の一実施例にかかるクリープ破断曲線の一例の
グラフである。
【図5】この発明のクロム−モリブデン鋼のクリープ損
傷計測法の一実施例にかかるクロム−モリブデンの重量
比Mo /Cr とラーソンミラーパラメータとの関係の一
例のグラフである。
【符号の説明】
Mo /Cr クロム−モリブデンの重量比 σ 応力 P,LMP ラーソンミラーパラメータ T 温度 t クリープ応力負荷時間 tr 破断時間 t/tr クリープ寿命比
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野中 勇 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社 技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/20 G01N 3/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムーモリブデン鋼のクリープ損傷を
    計測するに際し、被計測部から採取した試料を電気分解
    して炭化物を分離し、得られた炭化物を溶解したのち化
    学的または物理的分析法によりクロムとモリブデンとの
    重量比を求め、予め求めておいた同一組成材料の既知の
    クリープ損傷に対するクロムとモリブデンとの重量比の
    関係を求めたマップと比較して前記試料のクリープ損傷
    を求めるようにしたことを特徴とするクロムーモリブデ
    ン鋼のクリープ損傷計測法。
  2. 【請求項2】 前記クリープ損傷に対するクロムとモリ
    ブデンとの重量比の関係のマップを作成する場合に、ク
    リープ破断が生じるときのラーソンミラーパラメータと
    応力との関係と、既知のクリープ損傷に対するラーソン
    ミラーパラメータとクロムとモリブデンとの重量比との
    関係を求めることを特徴とする請求項1記載のクロム−
    モリブデン鋼のクリープ損傷計測法。
  3. 【請求項3】 前記ラーソンミラーパラメータに対する
    2つの関係を用いてクリープ寿命比に対するクロムとモ
    リブデンとの重量比の関係を温度および応力をパラメー
    タとしてマップを作成することを特徴とする請求項2記
    載のクロム−モリブデン鋼のクリープ損傷計測法。
JP13904693A 1993-05-17 1993-05-17 クロム−モリブデン鋼のクリープ損傷計測法 Expired - Lifetime JP3202838B2 (ja)

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