JP6126962B2 - 溶接部材の寿命評価方法 - Google Patents
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Description
このようにして、精度の良い損傷率を取得することによって、溶接部材の寿命を精度良く評価することが可能となる。また、本発明の溶接部材の寿命評価方法は、メタル温度を実測するのではなく、硬度の変化を評価することにより寿命を評価しているので、溶接部材を実測することが困難な場合でも適用することができる。
また、溶接部材が高温環境で使用されているときの溶接熱影響部における温度を取得することができる。また、溶接熱影響部は、高温環境における硬度の変化量が比較的大きいので、精度良く溶接部材のメタル温度を推定することが可能である。
また、軟化パラメータは、温度と時間との関数であり、具体的には、溶接部材が高温環境に置かれる際の温度と、高温環境に置かれる時間との関数である。
また、クリープ評価パラメータも、温度と時間との関数であり、具体的には、溶接部材が高温環境に置かれる際の温度と、高温かつ所定の応力が負荷された状態において溶接部材が破断するまでの時間との関数である。
この場合、溶接部材の溶接熱影響部のボイド量を検出するボイド量検出工程と、予め求めたボイド量と損傷率との関係に基づいて、前記ボイド量検出工程によって検出したボイド量から第二損傷率を取得する第二損傷率算出工程と、を有する第二クリープ損傷度診断を備えているので、第一クリープ損傷度診断と併せて、複数の評価手法による損傷率を取得し、溶接部材の寿命を評価することができ、寿命評価の精度をさらに高めることができる。
溶接部材の寿命を評価する場合、溶接部材の材質や付与される応力等の違いにより、硬度の変化量又はボイドの変化量が小さくなり、低損傷領域での損傷評価の精度が低くなることがあるが、この場合、第一損傷率及び第二損傷率のうち、損傷率の大きい方を用いて寿命評価を行う構成とされているので、低損傷域における寿命評価の精度を向上させることができる。また、このように複数の評価による損傷率のうち損傷率の大きい方を用いて寿命評価を行うことにより、溶接部材を使用する上で、より安全側の判断をすることができる。
この溶接継手の外表面に予め設けられた評価用溶接金属部の初期硬度を、所定の硬度に予め調整しておくことによって、高温環境における溶接継手部の温度をより精度良く推定することができる。例えば、溶接継手は、焼きなましなどの処理をされて溶接時よりも硬度を低下させた上で使用されるが、評価用溶接金属部の強度を、焼きなましされた溶接継手よりも高めに設定することにより、高温環境に置ける硬度の変化量を大きくすることができ、メタル温度の推定精度を向上させることができる。
前記溶接部材は、翼を有する複数のロータが溶接継手によって溶接されたタービンロータであり、
隣接する前記翼の間隙における前記ロータに設けられた硬度測定用の試験体の硬度を検出する硬度検出工程と、
予め求めた硬度変化と軟化パラメータとの関係に基づいて、前記硬度検出工程によって検出した硬度から前記特定箇所のメタル温度を取得する温度推定工程と、
予め求めた応力とクリープ評価パラメータとの関係に基づいて、前記溶接部材の設計応力及び前記温度推定工程によって取得した前記メタル温度から推定破断時間を取得する破断時間推定工程と、
累計使用時間を前記推定破断時間で除した値を第一損傷率として取得する第一損傷率算出工程と、を有する第一クリープ損傷度診断を備えるものであってもよい。
この場合、隣接する翼の間隙におけるロータに設けられた硬度測定用の試験体を上述の特定箇所として設定することにより、上述のようにして精度の良いメタル温度を取得することができる。
また、タービンロータは、低損傷領域において、硬度変化やボイド量の変化が小さくなる場合があるが、上述の第一損傷率及び第二損傷率を評価することによって、低損傷域における寿命評価の精度を向上させることができる。
以下に、本発明の実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法について添付した図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法が評価の対象とするタービンロータ10(溶接部材)について説明する。タービンロータ10は、図1に示すように、翼(図示なし)を有する複数のロータ11(母材)が溶接継手12(溶接金属部)によって溶接されることによって構成されている。図1に示すように、一対のロータ11、11(母材)の溶接部においては、ロータ11と溶接継手12との接合界面において、ロータ11側に溶接熱影響部13(HAZ部)が形成されている。
また、溶接継手12(溶接金属部)の材質は、母材と同様の素材であり、例えば低合金鋼、高クロム鋼、Ni基超合金などで構成されている。
このように、高温かつ応力が負荷された状態で使用されるタービンロータ10には、クリープによる損傷が生じる。本実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法は、このクリープによる損傷が生じたタービンロータ10(溶接部材)の寿命を評価するためのものである。
第一実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法は、第一クリープ損傷度診断S10と、第二クリープ損傷度診断S20とを備え、これらの結果によって、タービンロータ10(溶接部材)の寿命を把握するものである。
第一クリープ損傷度診断S10において、まず、硬度検出工程S11が行われる。硬度検出工程S11は、タービンロータ10の運転前後の硬度を測定して、硬度を検出(把握)する工程であり、本実施形態では、図1のAに示す破線上におけるビッカース硬度を測定している。ここで、タービンロータ10の運転前後の硬度とは、タービンロータ10が使用される前の硬度と、タービンロータ10が運転されてクリープ損傷が生じた後の硬度とを意味している。
次いで、温度推定工程S12が行われる。この温度推定工程S12は、タービンロータ10が運転されているときのタービンロータ10のメタル温度を把握する工程である。ここで、メタル温度とは、雰囲気温度ではなく、タービンロータ10の温度のことを意味している。
具体的には、温度推定工程S12は、予め求めた硬度変化と、温度と時間の関数である軟化パラメータとの関係(図4において曲線C)に基づいて、前述の硬度検出工程S11によって検出した硬度から前記特定箇所のメタル温度を取得する工程である。なお、軟化パラメータは、LMP(Larson−Miller Parameter)にて表現され、一般的に、LMP=T*(logt+α)(T:温度、t:時間、α:定数)、によって表される。ここで、定数αは、例えば20とすれば良い。
次に、破断時間推定工程S13が行われる。破断時間推定工程S13では、予め求めた応力と、クリープ評価パラメータとして時間と温度との関数であるLMP(Larson−Miller Parameter)との関係(図5において曲線D)に基づいて、前記溶接部材の設計応力及び前記温度推定工程S12によって取得したメタル温度から推定破断時間を取得する工程である。
破断時間の推定方法を具体的に説明すると、タービンロータ10の設計応力Y2を、曲線Dに対応させて、クリープ評価パラメータの値X2を求め、このX2の値とクリープ評価パラメータとの関係、温度推定工程S12で得られたメタル温度T1の関係から推定破断時間を取得する。
次に、第一損傷率算出工程S14が行われる。この第一損傷率算出工程S14は、累計使用時間を前記推定破断時間で除した値を第一損傷率として取得する工程である。この第一損傷率は、タービンロータ10が運転されたことによって損傷を受けたときのタービンロータ10のクリープ損傷率である。
以上のようにして、第一損傷率が算出される。
第二クリープ損傷度診断S20では、まずボイド量検出工程S21が行われる。このボイド量検出工程S21は、タービンロータ10の溶接熱影響部13の組織調査を行い、ボイド量を検出する工程である。ボイド量として具体的には、例えばボイドの個数密度やボイドの面積率などが挙げられ、本実施形態では、ボイド量として、ボイドの個数密度を検出する。
ボイドの評価方法は、例えばレプリカ法を用いることができる。レプリカ法は、所定の処理を施して現出させた測定対象箇所の表面の金属組織に対応する凹凸をフィルムに転写し、この転写した凹凸を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などを用いて組織観察する方法であり、例えば観察されたクリープボイドを所定の面積当たりのボイドの個数として測定できる。
次に、第二損傷率算出工程S22が行われる。この第二損傷率算出工程S22は、予め求めたボイド量と損傷率(図6において示す曲線E)との関係に基づいて、ボイド量検出工程S21によって検出したボイド量から第二損傷率を取得する工程である。
曲線Eは、例えば実験室において、寿命評価の対象となるタービンロータ10と同様の溶接部を有するものを試験片として、クリープ試験を行い、ボイド個数密度を測定することによって予め取得しておけばよい。
第二損傷率の算出方法を具体的に説明すると、ボイド量検出工程S21で求められたボイドの個数密度Y3を、曲線Eに対応させることによって第二損傷率X3が算出される。
上述のようにして、本実施形態であるタービンロータ10(溶接部材)の寿命評価方法が完了する。
さらに、第一クリープ損傷度診断S10は、予め求めた応力と軟化パラメータとの関係に基づいて、タービンロータ10の設計応力及び前述のメタル温度から推定破断時間を取得する破断時間推定工程S13とを有しているので、精度の良い推定破断時間を取得することができる。そして、第一クリープ損傷度診断S10は、タービンロータ10の累計使用時間を前述のようにして求めた推定破断時間で除し、この値を第一損傷率として取得する第一損傷率算出工程S14を有しているので、クリープ損傷率である第一損傷率を取得することができる。
このようにして、精度の良い損傷率を取得することによって、タービンロータ10(溶接部材)の寿命を精度良く評価することが可能となる。
次に、本発明の第二実施形態に係る溶接部材の評価方法について説明する。第二実施形態において、第一実施形態で説明した溶接部材の評価方法と同様の構成のものについては、同一の符号を付して記載し、詳細な説明を省略する。
第二実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法は、第一クリープ損傷度診断S110と、第二クリープ損傷度診断S20とを備え、これらの結果によって、タービンロータ110(溶接部材)の寿命を把握するものである。なお、第二クリープ損傷度診断S20は、第一実施形態で説明したものと同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
第一クリープ損傷度診断S110において、まず、硬度検出工程S111が行われる。硬度検出工程S111は、タービンロータ110の運転前後の硬度を測定して、硬度を検出(把握)する工程であり、本実施形態では、図7のFに示す破線上におけるビッカース硬度を測定している。
この測定結果の一例を図9に示す。なお、図9に示される硬度の測定結果は、タービンロータ110の運転前における硬度の測定結果である。第二実施形態では、温度推定工程S12において、タービンロータ110の評価用溶接金属部114の硬度を用いて温度推定を行う。図9に示されるように、評価用溶接金属部114においては、溶接継手12よりも硬度が高くなっている。
上述のようにして、本実施形態である溶接部材(タービンロータ110)の寿命評価方法が完了する。
次に、本発明の第三実施形態に係る溶接部材の評価方法について説明する。第三実施形態において、第一実施形態で説明した溶接部材の評価方法と同様の構成のものについては、同一の符号を付して記載し、詳細な説明を省略する。
第三実施形態に係る溶接部材の寿命評価方法は、第一クリープ損傷度診断S210と、第二クリープ損傷度診断S20とを備え、これらの結果によって、タービンロータ(溶接部材)の寿命を把握するものである。なお、第二クリープ損傷度診断S20は、第一実施形態で説明したものと同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
第一クリープ損傷度診断S210において、まず、硬度検出工程S211が行われる。硬度検出工程S211は、運転前後のタービンロータの硬度を測定して、硬度を検出(把握)する工程であり、第三実施形態では、予め設けられた硬度測定用の試験体の硬度変化を取得する。
次いで、温度推定工程S12、破断時間推定工程S13、第一損傷率算出工程S14が順に行われ、第一損傷率が算出される。
上述のようにして、本実施形態である溶接部材(タービンロータ)の寿命評価方法が完了する。
また、溶接部材の寿命評価方法は、第一損傷率及び第二損傷率を算出し、損傷率の大きい方を用いて寿命を評価する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、所定の基準に応じて、どちらかの損傷率を選択して寿命を評価する構成としても良い。
11 ロータ
12 溶接継手(溶接金属部)
13 溶接熱影響部
114 評価用溶接金属部
S10、S110、S210 第一クリープ損傷度診断
S11、S111、S211 硬度検出工程
S12 温度推定工程
S13 破断時間推定工程
S14 第一損傷率算出工程
S20 第二クリープ損傷度診断
S21 ボイド量検出工程
S22 第二損傷率算出工程
Claims (5)
- 一対の母材とこれらを接続する溶接継手とを有し、高温かつ応力が負荷された状態で使用される溶接部材の寿命評価方法であって、
前記溶接部材の溶接熱影響部の硬度を検出する硬度検出工程と、
予め求めた硬度変化と軟化パラメータとの関係に基づいて、前記硬度検出工程によって検出した硬度から前記特定箇所のメタル温度を取得する温度推定工程と、
予め求めた応力とクリープ評価パラメータとの関係に基づいて、前記溶接部材の設計応力及び前記温度推定工程によって取得した前記メタル温度から推定破断時間を取得する破断時間推定工程と、
累計使用時間を前記推定破断時間で除した値を第一損傷率として取得する第一損傷率算出工程と、を有する第一クリープ損傷度診断を備えることを特徴とする溶接部材の寿命評価方法。 - 一対の母材とこれらを接続する溶接継手とを有し、高温かつ応力が負荷された状態で使用される溶接部材の寿命評価方法であって、
前記溶接部材における前記溶接継手の外表面に予め設けられた評価用溶接金属部の硬度を検出する硬度検出工程と、
予め求めた硬度変化と軟化パラメータとの関係に基づいて、前記硬度検出工程によって検出した硬度から前記特定箇所のメタル温度を取得する温度推定工程と、
予め求めた応力とクリープ評価パラメータとの関係に基づいて、前記溶接部材の設計応力及び前記温度推定工程によって取得した前記メタル温度から推定破断時間を取得する破断時間推定工程と、
累計使用時間を前記推定破断時間で除した値を第一損傷率として取得する第一損傷率算出工程と、を有する第一クリープ損傷度診断を備えることを特徴とする溶接部材の寿命評価方法。 - 一対の母材とこれらを接続する溶接継手とを有し、高温かつ応力が負荷された状態で使用される溶接部材の寿命評価方法であって、
前記溶接部材は、翼を有する複数のロータが溶接継手によって溶接されたタービンロータであり、
隣接する前記翼の間隙における前記ロータに設けられた硬度測定用の試験体の硬度を検出する硬度検出工程と、
予め求めた硬度変化と軟化パラメータとの関係に基づいて、前記硬度検出工程によって検出した硬度から前記特定箇所のメタル温度を取得する温度推定工程と、
予め求めた応力とクリープ評価パラメータとの関係に基づいて、前記溶接部材の設計応力及び前記温度推定工程によって取得した前記メタル温度から推定破断時間を取得する破断時間推定工程と、
累計使用時間を前記推定破断時間で除した値を第一損傷率として取得する第一損傷率算出工程と、を有する第一クリープ損傷度診断を備えることを特徴とする溶接部材の寿命評価方法。 - 前記溶接部材における溶接熱影響部の組織調査を行い、ボイド量を検出するボイド量検出工程と、
予め求めたボイド量と損傷率との関係に基づいて、前記ボイド量検出工程によって検出したボイド量から求めた前記損傷率を、第二損傷率として取得する第二損傷率算出工程と、を有する第二クリープ損傷度診断を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の溶接部材の寿命評価方法。 - 前記第一損傷率及び前記第二損傷率のうち、損傷率の大きい方を用いて寿命評価を行うことを特徴とする請求項4に記載の溶接部材の寿命評価方法。
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