JP5543954B2 - クリープ歪の検査方法及び検査装置 - Google Patents
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Description
本発明のクリープ歪検査は、特に高温下で使用されるボルト等の締結部材やパイプ等の配管部材、例えば、火力発電設備のボイラから高中圧段蒸気タービンにかけての配管やバルブ、高中圧段蒸気タービンケーシング、又はガスタービンに使用されるボルト等を対象とする。ここでいう「高温」とは、金属材料がクリープ変形を起こすような温度、例えば絶対温度で0.5Tm(Tm:絶対温度における金属の融点)程度の温度である。具体例を挙げると、例えばフェライト系鋼では371℃以上であり、同材料で構成されたタービン用ボルトのように500℃以上の高温下で使用されるボルトは代表的な適用対象である。なお、ここでいうタービンには、蒸気タービン、ガスタービン、及び高温で運用されるその他のタービンが含まれる。
図3は本発明の一実施の形態に係るクリープ歪の検査方法の主要な手順を示す図である。
手順100には、クリープ歪や破断時間(破断寿命)のデータを取得しておく手順101、手順130でスタッキングボルト1の継続使用の可否判断に用いる使用限界クリープ歪を決定しておく手順102、及びスタッキングボルト1の半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪の関係を設定しておく手順103が含まれる。なお、手順100については、測定の度に予め実行する必要はなく、予めデータを得ていれば取得したデータはその後の測定にも適用できる。また、文献その他から得たデータを手順100で取得するデータとして利用することもできる。したがって、手順100は場合によっては省略することができる。
手順101では、スタッキングボルト1と同じ材料を用いて該材料について温度(材料温度)及び応力(材料にかかる応力)の条件を変えて複数のクリープ試験をしてクリープ歪曲線7(図4参照)や破断時間のデータを取得しておく。この手順で行うクリープ試験はより多くの条件について行うことが好ましく、スタッキングボルト1の使用時間と同等の試験時間のデータが取れれば理想的である。
手順102では、手順101の複数のクリープ試験で得られたクリープ歪のデータの結果(クリープ歪曲線7)を基にスタッキングボルト1の継続使用の可否判断に用いる使用限界クリープ歪εcfを決定しておく。図4に示すように、一般的にクリープ歪曲線7は、クリープ歪速度が低下する一次(遷移)クリープ、クリープ歪速度が一定となる二次(定常)クリープ、そしてクリープ歪速度が増加していく三次(加速)クリープを経て、最終的に破断に至る。蒸気タービンのケーシングやバルブに用いられるボルトの場合、クリープ破断まで至っていなくても、軸方向クリープ歪の増加によって締結力が低下し、蒸気漏れ等の不具合を招来させることがある。特に、三次クリープ域にあるボルトを使用した場合、クリープ歪の加速的な増加によって短期間でボルトが緩む可能性が高い。よって、使用限界クリープ歪εcfは三次クリープ開始時のクリープ歪量(三次クリープ開始歪)、破断時間は三次クリープ開始時間に設定することが好ましい。クリープ歪曲線7における三次クリープ開始点は、図2に示すように二次クリープ域のクリープ歪曲線の傾き10を任意の歪量(一般的には0.2%)だけ上にオフセットして得られる直線9とクリープ歪曲線7との交点のクリープ歪量で定義することができる。
手順103では、スタッキングボルト1の半径方向クリープ歪εcaxと軸方向クリープ歪εcrの関係を設定しておく。
ここで、通常の固体金属における非弾性変形では体積が一定と考えられることから、ポアソン比は0.5と定義される。したがって、スタッキングボルト1については、軸方向クリープ歪εcaxと半径方向のクリープ歪εcrとの間には式(2)の関係が成立する。
よって、半径方向のクリープ歪εcrを測定することで、式(2)から荷重負荷方向(軸方向)のクリープ歪εcaxを算出することができる。
手順110では、スタッキングボルト1の断面に関する寸法(本実施の形態では外径)を測定し、この測定値から半径方向のクリープ歪εcrを求める。具体的には、火力発電所や工場等においてタービンの運転を停止して行う定期点検時等にスタッキングボルト1の外径を測定し、その測定値と未使用時に測定しておいた対応寸法(初期値)とを用いることで、式(3)のようにεcrを求めることができる。
なお、ここではスタッキングボルト1の断面に関する寸法として外径を測定する場合を例示しているが、スタッキングボルト1の外周長を測定し、使用前後のスタッキングボルト1の外周長の値を式(3)に当てはめることによってもεcrは求められる。図2に示したようにスタッキングボルト1にヒータ穴6がある場合には、内径(ヒータ穴6の径)や肉厚(外周面から内周面までの距離)を測定し、使用前後の値を式(3)に当てはめることによってもεcrは求められる。また、寸法の測定方法は、外径や内径を測定する場合にはノギス等を用いることもできるが、肉厚を測定する場合には超音波を用いることもできる。さらに、図6及び図7に示したようなスタッキングボルト1の軸方向への移動が可能な駆動機構を有する測定機(後述)を用いれば、スタッキングボルト1のシャンク部4の外径等を軸方向に連続的に測定することができ、より精度の高い検査をすることができる。
手順120では、予め設定されたスタッキングボルト1の半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪との関係(式(2))を基に、手順110の寸法測定の結果(半径方向クリープ歪εcr)からスタッキングボルト1の軸方向クリープ歪εcaxを演算する。
手順130では、軸方向クリープ歪に対して予め手順102で設定しておいた使用限界クリープ歪εcfと手順120で演算した軸方向クリープ歪εcaxとを比較して検査したスタッキングボルト1の継続使用の可否を判定する。
使用限界クリープ歪εcfは、図5で説明したように、スタッキングボルト1の使用条件から時間・温度パラメータより求められる。検査の結果、寿命を消費しきっていない(例えば、次回運転期間中に寿命消費率Dcが1を超えない)と判断されたスタッキングボルト1は継続使用可能、実質的に寿命を消費しきっている(例えば、次回運転期間中に寿命消費率Dcが1を超える)と判断されたスタッキングボルト1は継続使用不可と判定される。なお、寿命消費率Dcが1を超える場合、図5においては測定結果が関係線11よりも上の領域になる。
図6は本発明の検査方法に用いる検査装置の一構成例をスタッキングボルトの外周面方向から見て表した概略図、図7はスタッキングボルトの軸方向から見て表した概略図である。但し、図6においては制御装置を図示省略している。
本検査方法によれば、タービン運転中にスタッキングボルト1のクリープ歪を連続的に測定する必要はなく、点検等でタービンが停止している時に室温環境下で軸方向クリープ歪が測定可能であり、その測定結果を基に測定したスタッキングボルト1の継続使用の可否を容易に判定することができる。このとき、スタッキングボルト1の部位のうち最も軸方向クリープ歪が顕著なシャンク部4、言い換えればスタッキングボルト1の部位で最も顕著なシャンク部4の半径方向のクリープ歪を測定することで、例えばスタッキングボルト1の材料の硬さからクリープ歪を推定する場合に比べて高精度にスタッキングボルト1の軸方向歪を測定することができる。よって、プラントの安全な運用に寄与することができる。
2 タービンケーシング
4 シャンク部
5 ネジ部
6 ヒータ穴
7 クリープ歪曲線
9 直線
10 傾き
11 関係線
12 ストローク測定器
13 ローラ
14 ロッド
15 フレーム
20 測定装置
30 制御装置
31 第1の記憶手段
32 第2の記憶手段
33 第3の記憶手段
34 演算手段
35 判定手段
36 入出力部
37 操作手段
εcf 使用限界クリープ歪
Claims (10)
- 上下半割れ構造のタービンケーシングのフランジ部を締結するボルトであってヒータ穴を備えた中空構造のスタッキングボルトのクリープ歪の検査方法において、
前記スタッキングボルトを前記タービンケーシングに取り付けたまま前記ヒータ穴の内径寸法を測定する測定手順と、
前記スタッキングボルトの半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪との予め設定された関係を基に前記寸法測定の結果から当該スタッキングボルトの軸方向クリープ歪を演算する歪演算手順と、
軸方向クリープ歪に対して予め設定された使用限界クリープ歪と前記演算した軸方向クリープ歪とを比較して前記スタッキングボルトの継続使用の可否を判定する判定手順と
を有することを特徴とするクリープ歪の検査方法。 - 前記スタッキングボルトと同じ材料を用いて該材料について温度及び応力の条件を変えて複数のクリープ試験をしてクリープ歪及び破断時間のデータを取得しておく手順を有することを特徴とする請求項1のクリープ歪の検査方法。
- 前記破断時間が三次クリープ開始時間であることを特徴とする請求項2のクリープ歪の検査方法。
- 前記複数のクリープ試験で得られたクリープ歪のデータの結果を基に前記スタッキングボルトの継続使用の可否判断に用いる使用限界クリープ歪を決定しておく手順を有することを特徴とする請求項2のクリープ歪の検査方法。
- 前記使用限界クリープ歪が三次クリープ開始時の歪量であることを特徴とする請求項4のクリープ歪の検査方法。
- 前記スタッキングボルトの半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪の関係を設定しておく手順を有することを特徴とする請求項2のクリープ歪の検査方法。
- 前記スタッキングボルトの半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪の関係を有限要素解析により算出することを特徴とする請求項6のクリープ歪の検査方法。
- 前記測定手順において、前記ヒータ穴の内径を当該スタッキングボルトの軸方向に連続的に測定することを特徴とする請求項1のクリープ歪の検査方法。
- 上下半割れ構造のタービンケーシングのフランジ部を締結するボルトであってヒータ穴を備えた中空構造のスタッキングボルトのクリープ歪の検査装置において、
前記スタッキングボルトを前記タービンケーシングに取り付けたまま前記ヒータ穴の内径寸法を測定する測定手段と、
前記スタッキングボルトの半径方向クリープ歪と軸方向クリープ歪との予め設定された関係を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された前記関係を基に前記寸法測定手段による測定結果から当該スタッキングボルトの軸方向クリープ歪を演算する演算手段と、
軸方向クリープ歪に対して予め設定された使用限界クリープ歪を記憶した第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶された前記使用限界クリープ歪と前記演算手段で演算した軸方向クリープ歪とを比較して前記スタッキングボルトの継続使用の可否を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とするクリープ歪の検査装置。 - 前記測定手段は、前記スタッキングボルトの軸方向に移動する移動手段を備えていることを特徴とする請求項9のクリープ歪の検査装置。
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