JP6021790B2 - タービンロータの検査方法 - Google Patents

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本発明は、タービンロータの検査方法に関し、特に、タービンロータの内部亀裂を効率良く検査できるタービンロータの検査方法に関する。
従来、タービンロータにおけるタービン翼溝内の応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)の検査は、タービンロータからタービン翼を外した後に行われている。タービンロータの応力腐食割れの検査方法としては、タービン翼溝内を顕微鏡で観察する検査方法や、タービン翼溝のレプリカを採取する検査方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のタービンロータの検査方法では、タービンロータのタービン翼溝内の検査対象領域を研磨具で研磨してエッチングし、研磨面にレプリカフィルムを貼り付けて研磨面の金属組織をレプリカフィルムに転写する。そして、金属組織が転写されたレプリカフィルムを研磨面から剥離して観察することにより、タービン翼溝内の亀裂の発生などを検査する。
特開2011−117873号公報
しかしながら、従来のタービンロータの検査方法においては、タービン翼溝の内部亀裂の発生を検査するためにタービンロータからタービン翼を外す必要があり、検査のための工事期間が長くなり、また検査費用の負担が大きい問題がある。
また、タービンロータからタービン翼を外さずに、タービン翼溝の側面のみを検査する検査方法も提案されている。しかしながら、この検査方法では、タービン翼溝の内部を十分に観察することができない問題がある。このため、タービン翼をタービンロータに装着した状態でタービン翼溝の内部亀裂の発生を検査できるタービンロータの検査方法が望まれている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、タービンロータからタービン翼を外すことなく、タービンロータの内部亀裂の発生を検査できるタービンロータの検査方法を提供することを目的とする。
本発明のタービンロータの検査方法は、タービン翼とタービンロータとの間隔を測定して前記タービンロータにおける検査対象領域を特定する第1ステップと、特定した前記検査対象領域を打音検査して前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定する第2ステップとを含むことを特徴とする。
この方法によれば、タービン翼とタービンロータとの間隔に基づいて検査対象領域を特定し、かつ、特定した検査対象領域の打音検査によってタービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定するので、タービンロータからタービン翼を外すことなく、タービンロータの内部亀裂の発生を検査することが可能となる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第1ステップにおいて、予め測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の第1測定値と、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の第2測定値との差分値に基づいて前記検査対象領域を特定することが好ましい。この方法により、第1測定値と第2測定時の差分値に基づいて検査対象領域を特定するので、検査対象領域の特定の精度が向上する。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第1ステップにおいて、予め測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔に対する検査時に測定した複数箇所の前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の標準偏差に基づいて前記検査対象領域を特定することが好ましい。この方法により、タービンロータにおけるタービン翼との接続部分の圧力分担に応じて変化するタービン翼とタービンロータとの間隔の標準偏差に基づいて検査対象領域を特定できるので、検査対象領域の特定の精度が向上する。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第1ステップにおいて、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の測定値が、予め設定された閾値以上の領域を前記検査対象領域として特定することが好ましい。この方法により、検査時に測定した値を基準として検査対象領域を特定することが可能になるので、検査対象領域を容易に特定することが可能となる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第1ステップにおいて、前記第1測定値が、予め撮像した使用前の前記タービン翼と前記タービンロータとの画像に基づく間隔であり、前記第2測定値が、検査時に撮像した前記タービン翼と前記タービンロータとの画像に基づく間隔であることが好ましい。この方法により、予め撮像した画像と検査時に撮像した画像との対比により検査対象領域を特定できるので、検査対象領域を容易に特定することが可能となる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第1ステップにおいて、前記第1測定値が、予め測定した使用前の前記タービン翼と前記タービンロータとの隙間を透過する透過光の光量であり、前記第2測定値が、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの隙間を透過する透過光の光量であることが好ましい。この方法により、透過光の光量の変化を測定するだけで検査対象領域を特定できるので、タービンロータを暗所に設置した場合であっても、検査対象領域を容易に特定することが可能となる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第2ステップにおいて、前記タービンロータの前記検査対象領域の打音の透過音に基づいて前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定することが好ましい。この方法により、タービンロータを透過する打音の透過音を測定するだけで内部亀裂の発生の有無を判定できるので、内部亀裂の発生を容易に判定することができる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記第2ステップにおいて、前記透過音の周波数変化に基づいて前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定することが好ましい。この方法により、内部亀裂の有無によって変化するタービンロータの透過音の周波数変化に基づいて内部亀裂の発生の有無を判定できるので、内部亀裂の発生を正確に判定することができる。
本発明のタービンロータの検査方法においては、前記検査対象領域が、前記タービンロータのタービン翼溝であることが好ましい。この方法により、連続運転によって応力腐食割れが生じやすいタービン翼溝内の内部亀裂の発生の有無を容易に判定することができる。
本発明によれば、タービン翼をタービンロータから外すことなく、タービン翼溝内の亀裂の発生を容易に検査できるタービンロータの検査方法を実現できる。
図1は、本発明の実施の形態に係るタービンの模式図である。 図2Aは、本発明の実施の形態に係るタービンロータとタービン翼との接続部分の部分拡大図である。 図2Bは、本発明の実施の形態に係るタービンロータとタービン翼との接続部分の部分拡大図である。 図3は、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法のフロー図である。 図4は、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の第1ステップの説明図である。 図5は、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の打音検査の概念図である。 図6は、図5に示した打音検査における透過音の周波数とイナータンスとの関係を示す図である。 図7Aは、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の説明図である。 図7Bは、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の説明図である。 図8Aは、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の説明図である。 図8Bは、本発明の実施の形態に係るタービンロータの検査方法の説明図である。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、また、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
まず、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法に用いられるタービンの概略について簡単に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るタービンの模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係るタービン1は、タービン翼溝(植込部)11a(図1において不図示、図2参照)が設けられたタービンロータ11、及び翼プロファイル部12aと翼根部12bとを有する蒸気タービン翼12を備えたサイドインレット植込型のタービンである。このタービン1においては、タービンロータ11のタービン翼溝11aがタービン翼12の翼根部12bと相補形状を有しており、このタービン翼溝11aに翼根部12bをタービンロータ11の軸方向Xから挿入して固定している。タービンロータ11は、例えば、低圧タービン板材としての3.5NiCrMoV鋼によって形成される。
図2A及び図2Bは、タービンロータとタービン翼との接続部分の部分拡大図である。図2Aにおいては、使用前のタービンロータ11とタービン翼12との接続部分を模式的に示し、図2Bにおいては、所定期間運転後の応力腐食割れが発生したタービンロータ11とタービン翼12との接続部分を模式的に示している。
図2Aに示すように、タービンロータ11のタービン翼溝11aには、タービン翼溝11aの表面からタービンロータ11の周方向Yに向けて窪んだ複数の凹部11bが設けられている。一方、タービン翼12の翼根部12bには、タービン翼溝11aの凹部11bと対応する位置に、翼根部12bの表面からタービンロータ11の周方向Yに向けて突出した凸部12c設けられている。タービン翼12は、このタービンロータ11の凹部11bとタービン翼12の翼根部12bの凸部12cとが係合された状態でタービンロータ11のタービン翼溝11aに固定される。これにより、タービン翼12は、タービン1の運転時のタービンロータ11の回転に伴う遠心力によるタービンロータ11の径方向Zへの移動が規制され、タービンロータ11からの脱落を防ぐことが可能となる。また、本実施の形態に係るタービン1においては、タービン1の製造後、運転開始前には、タービン翼溝11aの内壁とタービン翼12の翼根部12bの表面との間には、略一定の間隔(例えば、0.2mm〜1.5mm)が存在する。
図2Bに示すように、タービンロータ11は、例えば、温度400K程度での所定期間運転後には、腐食ピットの発生、及び腐食ピットの成長を経て、腐食ピットが破壊力学的な限界寸法に達し、応力腐食割れ(SCC)が発生する。この応力腐食割れが生じると、タービンロータ11は、タービン翼溝11aの形状に変化が生じ、タービンロータ11のタービン翼溝11aの内壁とタービン翼12の翼根部12aの表面との間の間隔が変化する。図2Bに示す例では、タービンロータ11におけるタービン翼12との接合部分の近傍に多数の腐食ピット(図2Bのドットパターン参照)が発生している。この腐食ピットが発生した領域は、腐食(コロージョン)が生じてタービンロータ11が減肉する応力腐食割れの初期段階を示している。
また、図2Bに示す例では、図2Aに示した運転開始前のタービンロータ11と比較して、タービン翼溝11aの内壁と翼根部12aの表面との間隔が広がった凹部11cが存在する。また、タービンロータ11の径方向Zにおいて凹部11cと対向する位置には、タービン翼溝11aの内壁と翼根部12aの表面との間隔がなくなって詰まった凹部11dが存在する。このようなタービン翼溝11aの内壁と翼根部12aの表面との間隔が変化した凹部11c、11dでは、タービンロータ11に応力腐食割れによる内部亀裂が生じやすくなる。そこで、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法においては、タービンロータ11とタービン翼12との間隔の変化を測定することにより、タービンロータ11における応力腐食割れに基づく内部亀裂の発生を検査する。
次に、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法について詳細に説明する。本実施の形態に係るタービンロータの検査方法は、タービン翼12とタービンロータ11との間隔を測定してタービンロータ11における検査対象領域を特定する第1ステップと、特定したタービンロータ11の検査対象領域を打音検査してタービンロータ11の内部亀裂の発生の有無を判定する第2ステップとを含む。以下、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法の各工程について説明する。
図3は、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法のフロー図である。図3に示すように、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法においては、検査開始後、まず、作業者は、タービンロータ11の任意の部分のタービン翼12とタービンロータ11との間隔を測定する(ステップST1)。そして、作業者は、測定した間隔が所定の閾値未満である場合(ステップST2:No)には、タービンロータ11の他の部分の測定を行う。また、作業者は、測定した間隔が所定の閾値以上である場合(ステップST2:Yes)には、測定した領域を検査対象領域として特定し、検査対象領域内の特定点を打音検査する(ステップST3)。
そして、作業者は、打音検査で特定点の打音に異常がない場合(ステップST4:No)は、検査対象領域内の他の特定点を打音検査する。また、作業者は、打音検査で特定点に異常がある場合(ステップST4:Yes)には、打音検査した特定点の近傍に内部亀裂が存在すると判定して検査を終了する(ステップST5)。その後、作業者は、必要に応じて、内部亀裂が存在する部分のタービン翼12をタービンロータ11から取り外して顕微鏡検査及びレプリカ採取法などにより、より詳細にタービンロータ11の内部亀裂の検査を行う。
図4は、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法の第1ステップの説明図である。図4においては、所定期間運転後のタービンロータ11とタービン翼12との接続部分を模式的に示している。図4に示す例では、特定点P2における運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との間隔の第1測定値に対し、所定期間運転後の第2測定値が大きくなっている。このため、この場合には、第1測定値と第2測定値との差分値が所定値以上となる特定点P2を含む所定範囲の領域に内部亀裂11eが発生している可能性があり、この所定範囲の領域を検査対象領域A1として特定する。このように検査対象領域A1を特定することにより、検査対象領域A1の特定の精度が向上する。
また、第1ステップにおいては、予め測定したタービン翼12とタービンロータ11との間隔に対して、タービンロータ11の検査時にタービンロータ11とタービン翼12との間隔を複数箇所測定し、複数箇所の測定値に対する運転開始前のタービンロータ11とタービン翼12との間隔の標準偏差と対比して検査対象領域A1を特定してもよい。例えば、図4に示す例では、特定点P3及びP4では、運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との間隔に対する変化が小さいのに対し、特定点P1では、タービンロータ11とタービン翼12との間隔が小さくなり、特定点P2では、タービンロータ11とタービン翼12との間隔が大きくなっている。このため、特定点P1及びP2の測定値がタービンロータ11とタービン翼12との間隔の標準偏差より大きくずれることとなる。この場合、特定点P1及びP2を含む所定範囲の領域に内部亀裂11eが発生している可能性があり、この特定点P1及びP2を含む所定範囲の領域を検査対象領域A1として特定する。このように検査対象領域A1を特定することにより、検査対象領域A1の特定の精度が向上する。
また、第1ステップにおいては、タービンロータ11の検査時に測定したタービン翼12とタービンロータ11との間隔の測定値が、予め設定された閾値以上の領域を検査対象領域A1として特定してもよい。例えば、図4に示す例では、運転開始前(図2A参照)には、タービンロータ11とタービン翼12との間隔が所定範囲(例えば、0.2mm〜1.5mm)であったのに対し、特定点P2においては、運転開始前と比較してタービンロータ11とタービン翼12との間隔が大きくなっている。この場合には、タービンロータ11とタービン翼12との間隔の閾値を、例えば、1.5mmにしていることにより、この特定点P2を含む所定範囲の領域を検査対象領域A1として特定する。このように検査対象領域を特定することにより、検査時に測定した値を基準として検査対象領域A1を特定することが可能になるので、検査対象領域A1を容易に特定することが可能となる。
さらに、第1ステップにおいては、予め撮像した使用前のタービン翼12とタービンロータ11との写真などの画像に基づく間隔を第1測定値とし、タービンロータ11の検査時に撮像したタービン翼12とタービンロータ11との写真などの画像に基づく間隔を第2測定値としてもよい。例えば、図4に示す例では、運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との接続部分の写真などの画像を撮像しておき、図4に示す所定期間運転後のタービンロータ11とタービン翼12との接続部分の写真などの画像と対比する。これにより、特定点P1近傍では、タービンロータ11とタービン翼12との間隔が狭くなり、特定点P2近傍では、タービンロータ11とタービン翼12との間隔が大きくなっていることが分かる。このため、この場合には、この特定点P1及びP2を含む所定範囲の領域を検査対象領域A1として特定する。このように検査対象領域A1を特定することにより、予め撮像した画像と検査時に撮像した画像との対比により検査対象領域A1を特定できるので、検査対象領域A1を容易に特定することが可能となる。
また、第1ステップにおいては、予め測定した使用前のタービン翼12とタービンロータ11との隙間を透過する透過光の光量を第1測定値とし、タービンロータ11の検査時に測定したタービン翼12とタービンロータ11との隙間を透過する透過光の光量を第2測定値としてもよい。例えば、図4に示す例では、特定点P1における運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との隙間を透過する透過光の光量に対し、図4に示す所定期間運転後の特定点P1におけるタービンロータ11とタービン翼12との隙間を透過する透過光の光量は減少する。また、特定点P2における運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との隙間を透過する透過光の光量に対し、図4に示す所定期間運転後の特定点P2におけるタービンロータ11とタービン翼12との隙間を透過する透過光の光量は増大する。このように検査対象領域A1を特定することにより、透過光の光量の変化を測定するだけで検査対象領域A1を特定できるので、タービンロータ11を暗所に設置した場合であっても、検査対象領域A1を容易に特定することが可能となる。
さらに、第1ステップにおいては、タービン翼12とタービンロータ11との隙間に気体及び液体などの流体を流し、流体の流量に基づいて検査対象領域A1を特定してもよい。例えば、図4に示す例では、特定点P1における運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との隙間を流れる流体の流量に対し、図4に示す所定期間運転後の特定点P1におけるタービンロータ11とタービン翼12との隙間を流れる流体の流量は低下する。また、特定点P2における運転開始前(図2A参照)のタービンロータ11とタービン翼12との隙間を流れる流体の流量に対し、図4に示す所定期間運転後の特定点P2におけるタービンロータ11とタービン翼12との隙間を流れる流体の流量は増大する。このように検査対象領域A1を特定することにより、タービン翼12とタービンロータ11との隙間を流れる流体の流量を測定するだけで検査対象領域A1を特定できるので、タービンロータ11を暗所に設置した場合であっても、検査対象領域A1を容易に特定することが可能となる。
なお、第1ステップにおける検査対象領域A1の特定方法としては、上述した実施の形態のほか、タービンロータ11とタービン翼12との間の間隔の変化量(例えば、隙間の縦幅、横幅、翼根の厚さ)に基づいてタービン翼溝11a部の圧力分担に基づいて検査対象領域A1を特定することもできる。また、隙間ゲージを用いてタービンロータ11とタービン翼12との間の隙間の大きさを測定する方法などを用いて検査対象領域A1を特定してもよい。これらの測定結果から、応力腐食割れの初期、応力腐食割れの成長及び進展、応力腐食割れの評価が可能となる。
次に、図5及び図6を参照して本実施の形態に係るタービンロータの検査方法における第2ステップについて詳細に説明する。図5は、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法の打音検査の概念図であり、図6は、図5に示した打音検査における透過音の周波数とイナータンス(出力)との関係を示す図である。
図5に示すように、本実施の形態においては、第2ステップの打音検査では、タービンロータ11の一方の面をハンマーなどで叩き、タービンロータ11の一方の面側から他方の面側に透過する透過音を集音する。ここで、図5の上段に示す亀裂が存在しない非損傷領域A2においては、タービンロータ11の一方の面側からの打音による音波w1〜w3がタービンロータ11内部を伝搬してタービンロータ11の他方の面側に透過する。この透過音の波形は、図6の実線に示すように、所定の周波数にイナータンスのピークPk1を有する形状となる。
これに対して、図5の下段に示す内部亀裂11eが存在する損傷領域A3においては、タービンロータ11内部を伝搬する音波w1〜w3のうち、内部亀裂11eを透過する音波w1の一部が内部亀裂11eによって吸収されて音波w4となる。このため、損傷領域A3における透過音の波形は、図6の点線に示すように、非損傷領域A2と同一の周波数をイナータンスのピークとする第1のピークPk1と、第1のピークPk1より低周波数側に新たなイナータンスの第2のピークPk2が発生する。また、損傷領域A3における透過音の波形は、非損傷領域A2における波形と比較して小さくなる。したがって、第2ステップにおいては、第1ステップにおいて特定した検査対象領域A1内を打音検査して透過音を集音して得られる透過音の波形を対比することにより、タービンロータ11にタービン翼12を装着した状態でも、内部亀裂11eの発生の有無を精度よく特定することが可能となる。
次に、図7A〜図8Bを参照して本実施の形態に係るタービンロータの検査方法の第2ステップについて具体的に説明する。図7A〜図8Bは、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法の説明図である。なお、図7A及び図8Bにおいては、図4に示したタービンロータ11の検査対象領域A1の側面図を模式的に示し、説明の便宜上、タービン翼12を省略して示している。
図7A及び図7Bに示すように、第2ステップにおいては、第1ステップにおいて特定したタービンロータ11の検査対象領域A1内の特定点P1〜P4を、打音部21によって叩いて生じる透過音を集音部22によって集音する。ここで、図7Aに示すように、検査対象領域A1内の内部亀裂11eから離れた特定点P1(特定点P4も同様)においては、図5に示した非損傷領域A2における透過音と同様に、内部亀裂11eによる打音の音波の吸収は少ない。このため、特定点P1における打音検査の波形は、図8Aに示すように、3つの周波数においてイナータンスのピークPk3〜Pk5を有する形状となる。
これに対して、図7Bに示すように、検査対象領域A1内の内部亀裂11eの近傍の特定点P2(特定点P3も同様)においては、図5に示した損傷領域A3における透過音と同様に、内部亀裂11eによる打音の音波の吸収が特定点P1及びP4に対して大きくなる。このため、特定点P2における打音検査の波形は、図8Bに示すように、図8Aに示した周波数のそれぞれのピークがそれぞれ低周波数側にシフトし、3つのピークPk3〜Pk5がピークPk6〜Pk8に変化すると共に、全体的に波形が小さくなる。したがって、第2ステップにおいては、検査対象領域A1内の複数の特定点P1〜P4を順次打音検査することにより、内部亀裂11eの発生個箇所を特定することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態に係るタービンロータの検査方法によれば、タービン翼12とタービンロータ11との間隔に基づいて検査対象領域A1を特定し、かつ、特定した検査対象領域A1の打音検査によってタービンロータ11の内部亀裂11eの発生の有無を判定するので、タービンロータ11からタービン翼12を外すことなく、タービンロータ11の内部亀裂11eの発生を検査することが可能となる。これにより、内部亀裂11eの発生の有無を検査するために、タービンロータ11におけるタービン翼12を外す箇所を特定することができるので、タービンロータ11の検査工事期間の短縮と検査制度を向上させることが可能となる。
なお、上述した実施の形態においては、タービンロータ11のタービン翼溝11aの内部亀裂11eを検査する例について説明したが、本発明は、タービン翼溝11aの内部亀裂11eの検査に限定されず、タービンロータ11の各部分の内部亀裂11eの検査方法として適用可能である。
1 タービン
11 タービンロータ
11a タービン翼溝
11b〜11d 凹部
11e 内部亀裂
12 タービン翼
12a 翼プロファイル部
12b 翼根部
12c 凸部
21 打音部
22 集音部
A1 検査対象領域
A2 非損傷領域
A3 損傷領域
P1〜P4 特定点

Claims (9)

  1. タービン翼とタービンロータとの間隔を測定して前記タービンロータにおける検査対象領域を特定する第1ステップと、特定した前記検査対象領域を打音検査して前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定する第2ステップとを含むことを特徴とする、タービンロータの検査方法。
  2. 前記第1ステップにおいて、予め測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の第1測定値と、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の第2測定値との差分値に基づいて前記検査対象領域を特定する、請求項1に記載のタービンロータの検査方法。
  3. 前記第1ステップにおいて、予め測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔に対する検査時に測定した複数箇所の前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の標準偏差に基づいて前記検査対象領域を特定する、請求項1に記載のタービンロータの検査方法。
  4. 前記第1ステップにおいて、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの間隔の測定値が、予め設定した閾値以上となる領域を前記検査対象領域として特定する、請求項1に記載のタービンロータの検査方法。
  5. 前記第1ステップにおいて、前記第1測定値が、予め撮像した前記タービン翼と前記タービンロータとの画像に基づく間隔であり、前記第2測定値が、検査時に撮像した前記タービン翼と前記タービンロータとの画像に基づく間隔である、請求項2に記載のタービンロータの検査方法。
  6. 前記第1ステップにおいて、前記第1測定値が、予め測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの隙間を透過する透過光の光量であり、前記第2測定値が、検査時に測定した前記タービン翼と前記タービンロータとの隙間を透過する透過光の光量である、請求項2に記載のタービンロータの検査方法。
  7. 前記第2ステップにおいて、前記タービンロータの前記検査対象領域の打音の透過音に基づいて前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタービンロータの検査方法。
  8. 前記第2ステップにおいて、前記透過音の周波数変化に基づいて前記タービンロータの内部亀裂の発生の有無を判定する、請求項7に記載のタービンロータの検査方法。
  9. 前記検査対象領域が、前記タービンロータのタービン翼溝である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のタービンロータの検査方法。
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