JP3199101B2 - タンタル固体電解コンデンサ素子の製造方法 - Google Patents

タンタル固体電解コンデンサ素子の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はタンタル固体電解コンデ
ンサ素子の製造方法に関し、さらに詳しく言えば、耐熱
特性を良好とし得るタンタル固体電解コンデンサ素子の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1にはタンタル固体電解コンデンサ素
子の一部分を拡大した断面図が示されている。これによ
ると、同コンデンサ素子はタンタル粉末を焼結してなる
焼結ペレット1を備え、まず、この焼結ペレット1の表
面にTaよりなる化成皮膜2が形成される。
【0003】そして、化成皮膜2上に固体電解質として
の二酸化マンガン層3が形成され、さらに同二酸化マン
ガン層3上に陰極引き出し層としてのカーボン層4と銀
層5とが順次形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】カーボン層4は、二酸
化マンガン層3が形成された焼結ペレット1をグラファ
イト懸濁水溶液内に浸漬し、引き上げて所定温度で焼成
することにより形成されるが、従来ではそのグラファイ
トに粒子の大きさが0.3〜2μm程度の鱗片状のもの
が使用されている。
【0005】これに対して、二酸化マンガン層3の表面
はそのほとんどが0.5μm以下の凹凸となっているた
め、グラファイトがその凹凸表面に完全に入り込めず、
カーボン層4の二酸化マンガン層3に対する密着性が十
分とは言えない。
【0006】したがって、ハンダ付け時に加えられる熱
ストレスにより、二酸化マンガン層3とカーボン層4と
の間で剥離が生じやすく、これが原因で損失角の正接
(tanδ)およびインピーダンスZの増加を招いてい
た。
【0007】本発明は、上記従来の欠点を解決するため
になされたもので、その目的は、ハンダ付け時の熱スト
レスに対してもほとんど特性劣化が生じない安定した特
性を有するタンタル固体電解コンデンサ素子の製造方法
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、タンタル焼結ペレットに化成皮膜を形成
し、同化成被膜上に固体電解質としての二酸化マンガン
層を形成した後、同二酸化マンガン層上にカーボン層お
よび銀層を順次形成してなるタンタル固体電解コンデン
サの製造方法において、上記二酸化マンガン層を形成し
た後の上記焼結ペレットを、平均粒径が0.28μm
カーボンブラックを1〜10wt%含む懸濁水溶液内に
浸漬し、引き上げて所定温度で焼成することにより上記
カーボン層を形成することを特徴としている。
【0009】記懸濁水溶液内の上記カーボンブラック
含有量1wt%未満であると、カーボンブラックが少
なすぎて二酸化マンガン層との密着性が改善されず、他
方、10wt%を超えると、乾燥収縮時にカーボン層に
割れが発生しやすくなる。
【0010】また、乾燥後の密着力を高めるには、上記
懸濁水溶液内にポリビニルアルコール(PVA)などの
水溶性接着剤を0.1〜2wt%を混合するとよい。
0.1wt%未満の場合には、接着効果が認められず、
これに対して、接着剤を2wt%を超えて添加すると、
その分抵抗値が増えることになり好ましくない。
【0011】
【作用】二酸化マンガン層の表面の凹凸が0.5μm以
下であるのに対して、ここで使用されるカーボンブラッ
クの粒子径は0.1〜0.5μm(平均粒径約0.28
μm)であり、その凹凸内に超微細なカーボンブラック
が入り込むことにより、二酸化マンガン層とカーボン層
とが緊密に密着し、その密着性が高められる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例とその比較例について
説明する。なお、各例とも、タンタル焼結ペレットのサ
イズは1mm立方体であり、また、カーボン層を除い
て、化成皮膜、二酸化マンガン層および銀層を形成する
条件は同一とした。
【0013】《実施例1》二酸化マンガン層を形成した
後のタンタル焼結ペレットを下記組成のカーボンブラッ
ク懸濁水溶液内に浸漬し、引き上げて180℃にて焼成
し、カーボン層を形成した。 カーボンブラック(平均粒径約0.28μm) 5.0wt%、 バインダー(PVA) 1.6wt%、 グリコール(粘度調節剤) 1.0wt% 消泡剤 0.003wt% 水(残部) 92.397wt%
【0014】そして、銀層を形成した後、端子付けを行
ない、樹脂モールドにより樹脂外装体を形成した。この
ようにして、定格6.3V10μFのタンタル固体電解
コンデンサを50個作製し、100kHz時のインピー
ダンスZ(Ω)と、120kHz時のtanδ(%)に
ついて、その初期特性および260℃10秒間加熱後の
耐熱特性を測定したところ、次のような結果が得られ
た。 インピーダンスZ(Ω); 初期特性 最小値0.9Ω 最大値1.3Ω 平均値1.1Ω 加熱後の特性 最小値1.0Ω 最大値1.3Ω 平均値1.15Ω tanδ(%); 初期特性 最小値1.8% 最大値2.3% 平均値2.0% 加熱後の特性 最小値1.8% 最大値2.4% 平均値2.1%
【0015】《実施例2》二酸化マンガン層を形成した
後のタンタル焼結ペレットを下記組成のカーボンブラッ
ク懸濁水溶液内に浸漬し、引き上げて180℃にて焼成
し、カーボン層を形成した。 カーボンブラック(平均粒径約0.28μm) 1.0wt%、 バインダー(PVA) 0.1wt%、 グリコール(粘度調節剤) 0.8wt% 水(残部) 98.1wt%
【0016】以後、実施例1と同様にして、同定格のタ
ンタル固体電解コンデンサを50個作製し、100kH
z時のインピーダンスZ(Ω)と、120kHz時のt
anδ(%)について、その初期特性および260℃1
0秒間加熱後の耐熱特性を測定したところ、次のような
結果が得られた。 インピーダンスZ(Ω); 初期特性 最小値1.7Ω 最大値2.3Ω 平均値1.9Ω 加熱後の特性 最小値1.7Ω 最大値2.4Ω 平均値2.0Ω tanδ(%); 初期特性 最小値2.7% 最大値3.5% 平均値3.0% 加熱後の特性 最小値2.8% 最大値3.6% 平均値3.2%
【0017】《実施例3》二酸化マンガン層を形成した
後のタンタル焼結ペレットを下記組成のカーボンブラッ
ク懸濁水溶液内に浸漬し、引き上げて180℃にて焼成
し、カーボン層を形成した。 カーボンブラック(平均粒径約0.28μm) 8.0wt%、 バインダー(メチルセルロース) 1.8wt%、 グリコール(粘度調節剤) 1.2wt% 消泡剤 0.005wt% 水(残部) 88.995wt%
【0018】以後、実施例1と同様にして、同定格のタ
ンタル固体電解コンデンサを50個作製し、100kH
z時のインピーダンスZ(Ω)と、120kHz時のt
anδ(%)について、その初期特性および260℃1
0秒間加熱後の耐熱特性を測定したところ、次のような
結果が得られた。 インピーダンスZ(Ω); 初期特性 最小値1.2Ω 最大値1.7Ω 平均値1.5Ω 加熱後の特性 最小値1.5Ω 最大値2.8Ω 平均値2.0Ω tanδ(%); 初期特性 最小値1.8% 最大値2.7% 平均値2.3% 加熱後の特性 最小値2.1% 最大値4.0% 平均値3.2%
【0019】《実施例4》二酸化マンガン層を形成した
後のタンタル焼結ペレットを下記組成のカーボンブラッ
ク懸濁水溶液内に浸漬し、引き上げて180℃にて焼成
し、カーボン層を形成した。 カーボンブラック(平均粒径約0.28μm)10.0wt%、 バインダー(ポリアクリロニトリル 2.0wt%、 水(残部) 88.0wt%
【0020】以後、実施例1と同様にして、同定格のタ
ンタル固体電解コンデンサを50個作製し、100kH
z時のインピーダンスZ(Ω)と、120kHz時のt
anδ(%)について、その初期特性および260℃1
0秒間加熱後の耐熱特性を測定したところ、次のような
結果が得られた。 インピーダンスZ(Ω); 初期特性 最小値0.98Ω 最大値1.3Ω 平均値1.1Ω 加熱後の特性 最小値0.98Ω 最大値3.0Ω 平均値1.8Ω tanδ(%); 初期特性 最小値1.8% 最大値2.4% 平均値2.0% 加熱後の特性 最小値1.9% 最大値4.0% 平均値2.7%
【0021】〈比較例〉二酸化マンガン層を形成した後
のタンタル焼結ペレットを下記組成のグラファイト懸濁
水溶液内に浸漬し、引き上げて180℃にて焼成し、カ
ーボン層を形成した。 グラファイト(粒径約0.3〜2μmのもの) 1.0wt%、 水(残部) 99.0wt%
【0022】以後、実施例1と同様にして、同定格のタ
ンタル固体電解コンデンサを50個作製し、100kH
z時のインピーダンスZ(Ω)と、120kHz時のt
anδ(%)について、その初期特性および260℃1
0秒間加熱後の耐熱特性を測定したところ、次のような
結果が得られた。 インピーダンスZ(Ω); 初期特性 最小値1.5Ω 最大値2.5Ω 平均値1.8Ω 加熱後の特性 最小値2.0Ω 最大値3.6Ω 平均値2.6Ω tanδ(%); 初期特性 最小値2.0% 最大値3.2% 平均値2.55% 加熱後の特性 最小値2/5% 最大値4.2% 平均値3.5%
【0023】このように、初期特性と加熱後の特性とを
比較して分かるように、本発明によれば、優れた耐熱特
性が得られる。これは、二酸化マンガン層とカーボン層
とが緊密に密着していることよにる。参考までに、上記
実施例1〜4および比較例におけるインピーダンス特
性、tanδ特性の推移状態を図2に示す。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
次のような効果が奏される。すなわち、二酸化マンガン
層を形成した後の焼結ペレットを、平均粒子径が0.2
8μmのカーボンブラックを1〜10wt%含む懸濁水
溶液内に浸漬し、引き上げて所定温度で焼成することに
よりカーボン層を形成するようにした請求項1に記載の
発明によれば、ハンダ付け時に加えられる熱ストレスに
よっても特性が劣化しない安定した耐熱特性を有するタ
ンタル固体電解コンデンサが提供される。
【0025】また、懸濁水溶液内にポリビニルアルコー
ルなどの水溶性接着剤を0.1〜2wt%混合した請求
項2に記載の発明によれば、乾燥後においても二酸化マ
ンガン層とカーボン層の密着性がより長期にわたって維
持され、耐熱特性の安定した長寿命のタンタル固体電解
コンデンサが提供される。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】タンタル固体電解コンデンサ素子の一部拡大断
面図。
【図2】本発明による実施例と比較例のインピーダンス
およびtanδの初期特性と加熱後の特性の推移を示し
たグラフ。
【符号の説明】
1 タンタル焼結ペレット 2 化成皮膜 3 二酸化マンガン層 4 カーボン層 5 銀層
フロントページの続き (72)発明者 青木 智則 福島県石川郡石川町字当町145番地 エ ルナー福島株式会社石川工場内 (56)参考文献 特開 昭50−127163(JP,A) 特開 平3−3220(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 9/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンタル焼結ペレットに化成皮膜を形成
    し、同化成被膜上に固体電解質としての二酸化マンガン
    層を形成した後、同二酸化マンガン層上にカーボン層お
    よび銀層を順次形成してなるタンタル固体電解コンデン
    サの製造方法において、上記二酸化マンガン層を形成し
    た後の上記焼結ペレットを、平均粒径が0.28μm
    カーボンブラックを1〜10wt%含む懸濁水溶液内に
    浸漬し、引き上げて所定温度で焼成することにより上記
    カーボン層を形成することを特徴とするタンタル固体電
    解コンデンサ素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記懸濁水溶液内に、ポリビニルアルコ
    ールなどの水溶性接着剤が0.1〜2wt%混合される
    ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル固体電解コ
    ンデンサ素子の製造方法。
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