JP3197289B2 - 導電性ポリオレフィン樹脂成形物およびその製造方法 - Google Patents

導電性ポリオレフィン樹脂成形物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は導電性のポリオレフィン
樹脂成形物に関する。詳しくは、架橋した導電性のポリ
オレフィン樹脂成形物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィンの成形物に導電性カーボ
ンを混合することで導電性を付与することは広く行われ
ており、導電性のポリオレフィン成形物は種々の用途に
利用されており中でも発熱体としての利用が近来行われ
始めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらポリオレ
フィンは比較的融点が低く、高温での使用には耐えない
という問題がありこれに対しては、架橋することが考え
られるが、水架橋では架橋後の成形物の導電性が劣ると
いう問題があり、また通常のポリオレフィンでは放射線
照射によって充分な架橋度を得るためには線量を増加さ
せる必要があるという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決した耐熱性に優れた導電性のポリオレフィン樹脂成
形物について鋭意探索し本発明を完成した。
【0005】即ち本発明は、下記一般式(化3)
【化3】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12の炭
化水素残基。)で表されるアルケニルシランとオレフィ
ンの共重合体と導電性カーボンの混合物を成形した後、
放射線を照射してなる成形物であって沸騰キシレン不溶
分が導電性カーボンの含量より多い導電性ポリオレフィ
ン樹脂成形物であり、また本発明は、アルケニルシラ
ンとオレフィンの共重合体と導電性カーボンの混合物を
成形した後、放射線を照射することを特徴とする導電性
ポリオレフィン樹脂成形物の製造方法である。
【0006】本発明の成形物について、その製造方法の
一例を示すことで詳しく説明する。本発明においてアル
ケニルシランとオレフィンの共重合体は通常オレフィン
とアルケニルシランを遷移金属触媒と有機金属化合物か
らなるいわゆるチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合す
ることで製造でき例えば、米国特許第3,223,686号にそ
の例が開示されている。さらにポリオレフィンをパーオ
キサイドなどのラジカル重合開始剤の存在下にアルケニ
ルシランと加熱処理することによってグラフト重合して
得たグラフト共重合体であっても良い。
【0007】アルケニルシランとしては少なくとも一つ
のSi-H結合を有するものが好ましく用いられ、下記一般
式(化)で表される化合物、
【0008】
【化4】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12の炭
化水素残基。)が用いられ、具体的にはビニルシラン、
アリルシラン、ブテニルシラン、ペンテニルシラン、あ
るいはこれらのモノマーの一部のSi-H結合のHがクロル
で置換された化合物などが例示できる。
【0009】またオレフィンとしては下記一般式(化
)で示される化合物、
【0010】
【化5】 (式中Rは水素または炭素数1〜12の炭化水素残基。)
が例示でき、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン
-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、2-メチルペンテン、ヘプ
テン-1、オクテン-1などのα−オレフィンの他にスチレ
ンまたはその誘導体も例示される。
【0011】本発明においてオレフィンとアルケニルシ
ランの共重合体は、上記米国特許に記載された、TiCl3
とトリエチルアルミニウムからなる触媒も使用できるが
より好ましくはその後開発された種々の高活性でポリオ
レフィンを与える触媒が利用される。
【0012】重合法としても不活性溶媒を使用する溶媒
法の他に塊状重合法、気相重合法も採用できる。
【0013】ここで遷移金属化合物と有機金属化合物か
らなる触媒としては、遷移金属化合物としてはハロゲン
化チタンが、有機金属化合物としては有機アルミニウム
化合物が好ましく用いられる。
【0014】例えば四塩化チタンを金属アルミニウム、
水素或いは有機アルミニウムで還元して得た三塩化チタ
ンを電子供与性化合物で変性処理したものと有機アルミ
ニウム化合物、さらに必要に応じ含酸素有機化合物など
の電子供与性化合物からなる触媒系、或いはハロゲン化
マグネシウム等の担体或いはそれらを電子供与性化合物
で処理したものにハロゲン化チタンを担持して得た遷移
金属化合物触媒と有機アルミニウム化合物、必要に応じ
含酸素有機化合物などの電子供与性化合物からなる触媒
系、あるいは塩化マグネシウムとアルコールの反応物を
炭化水素溶媒中に溶解し、ついで四塩化チタンなどの沈
澱剤で処理することで炭化水素溶媒に不溶化し、必要に
応じエステル、エーテルなどの電子供与性の化合物で処
理し、ついでハロゲン化チタンで処理する方法などによ
って得られる遷移金属化合物触媒と有機アルミニウム化
合物、必要に応じ含酸素有機化合物などの電子供与性化
合物からなる触媒系等が例示される(例えば、以下の文
献に種々の例が記載されている。Ziegler-Natta Cataly
sts and Polymerization by John Boor Jr(Academic Pr
ess),Journal of Macromorecular Science Reviews in
Macromolecular Chemistry and Physics,C24(3) 355-38
5(1984) 、同C25(1) 578-597(1985)) 。
【0015】あるいは炭化水素溶剤に可溶な遷移金属触
媒とアルミノキサンからなる触媒を用いて重合すること
もできる。
【0016】ここで電子供与性化合物としては通常エー
テル、エステル、オルソエステル、アルコキシ硅素化合
物などの含酸素化合物が好ましく例示でき、さらにアル
コール、アルデヒド、水なども使用可能である。
【0017】有機アルミニウム化合物としては、トリア
ルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライ
ド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルア
ルミニウムジハライドが使用でき、アルキル基としては
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル
基などが例示され、ハライドとしては塩素、臭素、沃素
が例示される。また上記有機アルミニウムと水または結
晶水とを反応することで得られるオリゴマー〜ポリマー
であるアルミノキサンも利用できる。
【0018】ここでアルケニルシランとオレフィンの重
合割合としては特に制限は無いが、ポリオレフィンと混
合して用いる場合には、通常アルケニルシランが 0.001
〜30モル%程度、好ましくは0.1 〜10モル%である。ま
た単独で用いる場合には0.0001〜1 モル%程度である。
【0019】重合体の分子量としては特に制限はない
が、混合して物性の向上を計ろうとする場合にはポリオ
レフィンの分子量と同程度あるいはそれ以下とするのが
好ましい。
【0020】場合によっては、アルケニルシランを含有
する他はポリオレフィンと同様の重合(組成、分子量
等) を行って用いても良く、例えば、ブロック共重合を
行って、前段のみあるいは後段のみにアルケニルシラン
を共重合してもよい。好ましい分子量としては135 ℃の
テトラリン溶液で測定した極限粘度が0.1 〜10程度であ
る。
【0021】ポリオレフィン(例えば、下記のような混
合して用いるポリオレフィンが使用できる。)にアルケ
ニルシランをグラフト重合して得たグラフト共重合体も
本発明の目的に使用可能であり、その場合、ポリオレフ
ィンにアルケニルシランをグラフトする方法としては特
に制限はなく、通常のグラフト共重合に用いる方法及び
条件が利用でき、通常は用いるポリオレフィンとアルケ
ニルシランの存在下にラジカル開始剤の分解温度以上に
加熱することで簡単にグラフト共重合することができ
る。
【0022】本発明において必要に応じ上記共重合体と
混合して用いるポリオレフィンとしては上記一般式(化
2)で示されるオレフィン、具体的にはエチレン、プロ
ピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、2-メチル
ペンテン、ヘプテン-1、オクテン-1などのα−オレフィ
ンあるいは、スチレンまたはその誘導体の単独重合体、
相互のランダム共重合体、或いは、始めにオレフィン単
独、或いは少量の他のオレフィンと共重合し、ついで2
種以上のオレフィンを共重合することによって製造され
る所謂ブロック共重合体などが例示される。
【0023】特に単独では架橋しにくいポリプロピレン
などのポリ−α−オレフィンまたはその共重合体を用い
ると効果的である。これらのポリオレフィンの製造法に
ついては既に公知であり種々の銘柄のものが市場で入手
可能である。
【0024】またアルケニルシランを用いない他は上記
オレフィンとアルケニルシランの共重合体の製造法と同
様に行うことでも製造可能である。
【0025】本発明において導電性カーボンとは、混合
することで高い導電性を付与することが可能な炭素質の
物質であれば良く、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラ
ック、炭素繊維等があるが、ファーネスブラック、アセ
チレンブラックなどのカーボンブラックが好ましい。そ
の使用割合としては全成形物中5 〜90wt% 、好ましくは
10〜80wt% である。これ以下では導電性が劣り、これ以
上では物性が劣る。
【0026】本発明において沸騰キシレン不溶分とは、
成形物を400 メッシュの金網にいれ沸騰キシレンで12時
間抽出した時の抽出残分を示し、成形物の架橋の程度を
示す。その含量は使用した導電性のカーボンの量より多
く、成形物の30重量%以上、特に50重量%以上であるの
が好ましい。
【0027】本発明においてはさらに別の添加剤、例え
ば、安定剤、フィラーなど公知の種々の添加剤を用いる
こともできる。
【0028】本発明においては後述の放射線を照射する
に先立ち、アルケニルシランとオレフィンの共重合体、
導電性カーボンと必要に応じポリオレフィンあるいは添
加剤などを混合し組成物とし、ついでシートあるいはフ
イルム状に成形され、次いで放射線が照射される。
【0029】本発明において、放射線としてはγ線、電
子線、X線、加速イオンなどが例示できるが、特に透過
性の大きいγ線、X線が好ましく利用でき、電子線を用
いる場合には成形物を薄くして照射することが好まし
い。照射の際の線量としては0.1 〜50Mrad、通常1 〜10
Mrad程度で充分である。
【0030】成形物中のアルケニルシラン含量としては
共重合体中のアルケニルシラン含量にもよるが、通常成
形物中の共重合体の割合は0.1wt%以上であり、成形物中
のアルケニルシランが0.0001wt%以上存在するようにす
るのが好ましい。また成形性、あるいは高価なアルケニ
ルシランの使用量を削減するという点からは、5.0wt%以
下で充分であり、好ましくは成形物中のアルケニルシラ
ンとしては0.1 〜2.0wt%程度である。
【0031】
【実施例】以下に実施例を示しさらに本発明を説明す
る。
【0032】実施例1 直径12mmの鋼球9kgの入った内容積4リットルの粉砕用
ポットを4個装備した振動ミルを用意する。各ポットに
窒素雰囲気下で塩化マグネシウム 300g、テトラエトキ
シシラン60mlおよびα, α, α−トリクロロトルエン45
mlを入れ、40時間粉砕した。こうして得た共粉砕物 300
gを5リットルのフラスコに入れ、四塩化チタン 1.5リ
ットルおよびトルエン 1.5リットルを加え、 100℃で30
分間撹拌処理し、次いで上澄液を除いた。再び四塩化チ
タン1.5リットルおよびトルエン1.5 リットルを加え、1
00 ℃で30分間撹拌処理し、次いで上澄液を除いた。そ
の後固形分をn-ヘキサンで繰り返し洗浄して遷移金属触
媒スラリーを得た。一部をサンプリングしてチタン分を
分析したところチタン分は 1.9wt%であった。
【0033】内容積 5リットルのオートクレーブに窒素
雰囲気下トルエン40ml、上記遷移金属触媒100 mg、ジエ
チルアルミニウムクロライド 0.128ml、p-トルイル酸メ
チル0.06mlおよびトリエチルアルミニウム0.20mlを入
れ、プロピレン1.5 kg、ビニルシラン40gを加え、水素
1Nリットル圧入した後、75℃で2時間重合した。重合後
未反応のプロピレンをパージし、パウダーを取り出し、
濾過乾燥して180 gのパウダーを得た。
【0034】135 ℃のテトラリン溶液で測定した極限粘
度(以下ηと略記する)、示差熱分析装置を用い10℃/
min で昇温或いは降温することで融点及び結晶化温度を
最大ピーク温度として測定したところ、得られたパウダ
ーは、ηが1.72dl/gであり、融点153 ℃、結晶化温度
118℃である結晶性のプロピレン共重合体であった。
尚、元素分析によればビニルシラン単位を 1.2wt%含有
していた。
【0035】得られた共重合体400gに、ケッチェンブラ
ックインターナショナル(株)製ファーネスブラック(
商品名ケッチェンブラックEC)100gを加え、2,6−ジ
−t−ブチル−4−メチルフェノール1.0gを加え良く混
合したものを20mmの押出機で250 ℃で造粒した。次いで
厚さ1mm のシートに射出成形した。
【0036】このシートに室温で750keVの電子線を3 Mr
ad照射し、沸騰キシレンで12時間抽出したところ不溶分
は85.1wt%であり200 ℃で変形しなかった。これに対し
電子線を照射する前のシートは変形した。比抵抗は照射
前の2.9×104Ω・cmに対し、照射後2.5×104Ω・cmと殆
ど変化はなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明の成形物は耐熱性に優れた導電性
成形物として利用可能であり工業的に極めて価値があ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01B 1/20 H01B 1/20 C //(C08F 210/00 230:08) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 - 7/18 C08F 10/00 - 10/14 C08F 210/00 - 210/18 C08K 3/00 - 13/08 C08L 1/00 - 101/16 H01B 1/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(化1) 【化1】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12の炭
    化水素残基。)で表されるアルケニルシランとオレフィ
    ンの共重合体と導電性カーボンの混合物を成形した後、
    放射線を照射してなる成形物であって沸騰キシレン不溶
    分が導電性カーボンの含量より多い導電性ポリオレフィ
    ン樹脂成形物。
  2. 【請求項2】 下記一般式(化2) 【化2】 (式中nは0〜12、pは1〜3、Rは炭素数1〜12の炭
    化水素残基。)で表されるアルケニルシランとオレフィ
    ンの共重合体と導電性カーボンの混合物を成形した後、
    放射線を照射することを特徴とする導電性ポリオレフィ
    ン樹脂成形物の製造方法。
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