JP3186777U - 画材用紙 - Google Patents

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雅典 府川
佐藤  進
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Abstract

【課題】水彩絵の具に代表される種々の筆記性に優れた画材用紙を提供する。
【解決手段】440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)に叩解された針葉樹種と広葉樹種の混合パルプで抄紙された原紙の内部に紙力剤、有機系高分子材料と無機系粒子を含有する支持体1を有し、その少なくとも片面2には澱粉によるサイズプレス塗工を有し、当該塗工表面3はキャレンダー処理されており、さらに該表面に凹凸部形状を有する画材用紙であって、平衡水分が6.0〜8.0%であり、JIS P8119(1998)によるベック平滑度20秒以下であり、原紙内部に含有させる有機系高分子材料がアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、澱粉、及びロジン系サイズ剤から成る群から1種以上選択され、そして、無機系粒子が二酸化チタン、タルク、クレー、及び炭酸カルシウムから成る群から1種以上選択されることを特徴とする画材用紙に関する。
【選択図】図3

Description

本考案は、水彩絵の具に代表される種々の筆記性に優れた画材用紙に関する。
現在、水彩画用紙には、フランス製のアルシェ(登録商標)などの用紙が知られている。これらは、絵画技法を多く適用する画材用紙においては、水彩絵の具に代表される絵画において、吸収性や発色性、紙面強度や筆の運び適性、得られる画風の印象等の特性を有するが、反面、高価格なため、利用者が限られている。
愛好者を多く持つアルシェ(登録商標)は、フランスのアルジョウィギンス社製で、コットンパルプ100%を原料とし、比較的手抄きに近い製法(半機械抄き)で製造されているものである。透明水彩といったものに代表される水系の絵画材に適しており、広く使用されている。この特徴としては、紙の内部までゼラチンを浸透させたサイジング処理がされており、紙面強度も強く、発色が良好な点である。製品のラインナップとしては、紙の表面性で荒目、細目、極細目があり、坪量も5種類ほどある。製品形態としては、シート品(平判)とロール品があり、色目はナチュラルホワイトとなっている。なお、水彩画のみでなく、黒鉛筆やコンテ等の絵画具においても適性を有している。
これらのコットンパルプを使用した画材用紙は、独特な風合いを持たせるために、半機械抄きで抄紙、又は、板紙や洋紙を抄紙するような通常の抄紙機とは異なる特別な設備で生産されることもある。コットンパルプの使用によれば、軽くて弾力性に富み、不透明で柔らかく、嵩高なラフなシートが得られる。水彩具の絵画を想定した場合には、相当な量の水分をブラシで供給し、かつ、そのブラシで複数回、紙面上でタッピングしたり、ブラッシングあるいは、スクラッチの動作を行ったりと、紙面においてはかなりの負荷がかかるため、強靭な強度が求められる。それ故にその特性から、コットンパルプの適用は効果的なものとなる。しかしながら、生産性(生産能力、効率を含む)を上げるには、通常の木材パルプを使用し、汎用的な抄紙機で抄紙し、特別で高価な紙料薬品を適用しないことが望まれる。
通常の木材パルプを使用したものとしては、以下のものが挙げられる。
特許文献1では、水性、アルコール性、油性の各マーカーに対する適性、パステル適性、鉛筆適性及び、水彩絵の具適性のいずれも有する画材用紙に関する技術である。特許文献2では、水彩絵の具を使用して油彩画様の重厚かつ立体感を持った仕上がりを得ることができる画用紙についての技術である。そして、特許文献3では、従来のバージンパルプからなる画用紙の品質を上回る古紙再生画用紙を得ることを課題としているが、白色度80%以上のケミカルパルプを主原料とする古紙を50質量%以上配合した用紙であり、用紙の仕上げ密度を0.55〜0.80g/cmと範囲規定し、かつ、仕上白色度を80%以上としたことで、所望の特性が得られるとしている。しかしいずれの用紙であっても、コットンパルプで実現されるような軽くて弾力性に富み、不透明で柔らかく、嵩高なラフな用紙が得られることはなく、コットンパルプと比較して絵画を作成するのに適しているとはいえない。
実用新案公開平5−30198 特許公開2009−61764 特許公開2001−355192
本考案は、水彩絵の具に代表される種々の筆記性に優れた画材用紙を提供することを課題とする。
該課題に対して、鋭意検討の結果、440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)に叩解された針葉樹種と広葉樹種の混合パルプで抄紙された原紙の内部に紙力剤、有機系高分子材料と無機系粒子を含有する支持体を有し、その少なくとも片面には澱粉によるサイズプレス塗工を有し、当該塗工表面はキャレンダー処理されており、さらに該表面に凹凸部形状を有する画材用紙であって、平衡水分が6.0〜8.0%であり、JIS P8119(1998)によるベック平滑度20秒以下であり、原紙内部に含有させる有機系高分子材料がアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、澱粉、及びロジン系サイズ剤から成る群から1種以上選択され、そして、無機系粒子が二酸化チタン、タルク、クレー、及び炭酸カルシウムから成る群から1種以上選択されることを特徴とする種々の筆記性に優れた画材用紙を得ることができた。
本考案の画材用紙は、水彩絵の具に代表される種々の筆記性に優れている。特に、色彩具材の紙面上におけるのりと発色性が良好である。
本考案の画材用紙のX−Y平面図である。 本考案の画材用紙の断面図(片面凹凸形状処理)である。 本考案の画材用紙の断面図(両面凹凸形状処理)である。
次に、本考案を図面にて説明する。図1は、本考案における一実施形態としての
紙面(X−Y平面)概要である。440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)に叩解された針葉樹種と広葉樹種の混合パルプで抄紙された支持体(1)は凹凸部を有する形状処理(3)が施され、表面が、でこぼこしている。この模様により、意外性のあるタッチが生まれたり、水彩画としては、立体的な画風を作り出せる等の利点が生じる。凸凹の粗さや形状には特に規定は無く、任意に形状処理されて構わない。図2は本考案における一実施形態としての断面(Z方向)概要である。支持体1の片面に凹凸の形状処理がなされた場合である。また、図3は、図2において支持体の両面に凹凸の形状処理がなされた場合である。凹凸処理部は、澱粉等による紙力を与える薬品によりサイジング(2,3)され、表面強度が強化されている。また、種々の液体の浸透性を制御し、均一化ならしめている。
本考案の支持体に使用される木材繊維としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を併用する。この併用により、得られるシートの地合いや剛度、平滑や密度等を所望する範囲内に制御が可能となる。針葉樹系のパルプ繊維は、長く剛性があり、シート全体にラフ感を与えるのに必要である。広葉樹系のパルプ繊維は、地合いが整えやすく均質なシートを得るに必要である。これらを組み合わせることで、諸物性のバランスを調整することが可能となる。広葉樹系のパルプ繊維と針葉樹系のパルプ繊維の比としては、質量比で40〜80:60〜20でよく、好ましくは50〜70:50〜30である。広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の化学パルプの他にも、グランドパルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナー砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミメカニカルパルプ、ケミグランドパルプ等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ等の古紙パルプ、または、漂白方法による分類ではECFかTCFパルプを混合してもよい。さらに好ましくは、板紙や洋紙の抄紙で通常的、汎用的に使用の木材パルプを使用すること好ましい。生産性が上がるからである。
本考案で使用するパルプは、シート形成時の均一性(地合い)や繊維間の結合強度、吸水度や、紙面強度等の物性を最適化するために、440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)の範囲内に叩解を行う必要がある。それによりフィブリル化が促進されやすいからである。一般的に、フィブリル化を促進させると、繊維の絡まり合いが強くなり、シートの特性としては、緻密で平滑なものとなる。吸水度は比較的、低くなり、剛度は低くなる。表面強度も強くなる傾向である。反対にあまり促進させないと、繊維の絡み合いが少ない分、各種強度物性や表面強度が劣るようになる。地合いは悪い方向で、全体的にラフな感じのシート形態となる。従って、吸水度は高い傾向である。但し、画材用紙としては、水彩画を想定すると、重ね塗りにおいてはある程度の紙面強度が必要であり、繊細な濃淡を出す場合や様々な色が重なり合い、かつ諧調性が必要となるグラデーション部位を適切に表現するには、ある程度の吸水度がなくてはいけない。ここで、過度な吸水が有る場合には、ブラッシュワークが円滑にいかず、また、繊細な濃淡の絵画が困難になる。また、筆が引っ掛かるような感じが強く、初心者には不向きなアイテムとなってしまう。但し、素直なタッチが出にくくなる分、かすれや筆の引っ掛かりによる偶然性の高い表現が期待できる。反対に、吸水が少ない場合には、これもまた、発色が良好になる分、淡い部分の表現が難しくなってしまう。そして、描かれた絵から受ける印象も立体感や重厚感が無いものになる。但し、タッチの重なりが綺麗に出る。従って、様々な特性のアイテムが有り、それぞれに使用用途による適切なる選択はあるものの、汎用的な画材用紙として、その表面強度や絵の描き易さ、絵画の表現性に優れるようなアイテムとするには、適正なパルプのフリーネスが必要であるが、本考案に関しては、440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)の範囲内に制御する。さらに、好ましくは、450〜550mlの範囲内に制御する。そして、シートにした際に、JIS P8118(1998)による密度が0.70〜0.80g/cmとすることが好ましい。ある程度適正な吸水や意図通りのブラッシュコントロールが達成できるからである。
本考案で使用される抄紙機については、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機にて紙匹を形成し、その後乾燥させた後で得ることができる。ここで、さらなる適切な条件としては、円網抄紙機にて紙匹を形成させることである。これにより、手抄きに似た無配向性に近い状態のシートを得ることが可能であり、絵画でのタッチの感覚も、従来の画材用紙に似たものにさせられる。
本考案で使用し内添させる抄紙薬品については、原紙内部に、紙力剤、有機系高分子材料と無機系粒子を添加させる。さらに、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤、嵩高剤を含む各種界面活性剤等の各種添加剤を1種類以上用いて混合し、適用しても構わない。ここで、紙力剤としては、ポリアクリルアミド及びポリビニルアルコールから成る群から1種類以上選択することができる。特に好ましくは、ポリアクリルアミドである。紙の強度を適切に増強できるからである。紙力剤は、パルプスラリー100質量部に対して0.05〜5質量部配合すればよく、好ましくは0.5〜4質量部配合する。有機系高分子材料としては、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、澱粉、及びロジン系サイズ剤から成る群から1種類以上選択される。紙力などの物理的特性や親疎の改質といった化学的特性を与えることができるからである。無機系粒子二酸化チタン、タルク、クレー、及び炭酸カルシウムから成る群から1種類以上選択される。白色度や不透明度調整などの光学的な物性や、密度調整やシート内部の空隙構造改変といった物理的特性改質等を改善できるからである。
有機系高分子材料と無機系粒子の種類や配合量、比率によって、得られるシートの密度(嵩高さ)や見た目の白色感、水系溶媒の濡れや吸収等が変わってくる。特に、密度に関しては、その後のキャレンダーやエンボス加工といった圧接工程が関わる場合、その操作条件が支配的に影響するが、ある程度の適正範囲を見込んで製品品質を作り上げるとよい。ここで、所望の性能を得るために、有機系高分子材料は、化学的組成、分子量、pH等を、無機系粒子は、化学的組成、結晶系、粒子径、比表面積、光学的特性等を考慮すればよい。また、保有する資材保管タンクや分散設備等を加味し、適宜適切にその種類や形態を選ぶことができる。本考案においては、有機系高分子材料は、パルプスラリー100質量部に対して0.5〜10質量部配合すればよく、好ましくは1〜7質量部配合する。また、無機系粒子は、パルプスラリー100質量部に対して1〜30質量部配合すればよく、好ましくは5〜20質量部配合する。
得られたシート表面には、強度を付与や、各種筆記適性の付与等を目的に、サイズプレス、ゲートロール、サイザーなどの装置を用いて、澱粉、ポリアクリルアマイド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースを塗布しても良い。本考案においては、ハンドリングの容易性(易溶解性)、易離解性(古紙再生性)、易分解性(対環境問題として)、乾燥後に製膜した際の強度特性を鑑みて、澱粉を使用しサイジングを行う。ここで、表面処理を行う液に関しては、所望の性能を得るために、その適用する薬品の種類や濃度を適切に選ばなくてはいけない。場合によっては、表面処理設備の操作条件の変更や調整、原紙の吸収性の制御(例えば、叩解条件変更、広葉樹系/針葉樹系のパルプ種構成比変更、水分調整、ベビープレスに代表されるプレプレスでのニップ圧調整等にて)も行うとよい。これらについては、使用する資材によるところもあり、かつ、保有する抄紙機の特性もあるので、適宜変更することができる。
表面処理を行い、得られたシートに関しては、JIS P8122(2004)によるステキヒトサイズ度300秒以上、かつJAPAN TAPPI No.12(2000)による表面サイズ度5以上、かつJAPAN TAPPI No.1 (2000)による表面強度(ワックス)15以上とすることが好ましい。ステキヒトサイズ度が300秒より小さいと、水彩画の絵の具を吸収する際に裏抜けしやすくなる。表面サイズ度が、15より小さいと、絵画作成の際に、吸液し過ぎて裏抜けしたり、コックリングを助長する原因にもなる。また、絵の具の伸びが不良となり、画風にもしなやかさが欠けやすくなる。そして、紙面上での所謂、筆運びの際に、引っ掛かりが出てくる分、ブラッシュコントロールが困難となり、初級者には扱いづらい媒体となってしまう。
各種サイズ度と紙面の強度に関しては、その制御は前述した通り、表面処理の各種条件変更で行うことができる。本考案においては、紙面強度の改善を図るために、澱粉水溶液をサイズプレスにて紙面に含浸させて、処理を行う。また、これにより、表面サイズ度とステキヒトサイズ度も所望の物性に調整することができる。さらに、紙面での比較的滑らかな筆の運びも達成でき、描きやすい媒体とすることができる。
本考案の画像用紙の平衡水分は6.0〜8.0%と規定されるが、当該平衡水分は、後に示す紙面の凹凸加工の処理前における平衡水分を示す。このような平衡水分を達成するためには、抄紙又はサイジング後に乾燥を行うことが好ましいが、この乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥、常温における減圧乾燥、自然乾燥等、または、それらのコンビネーション等が挙げられるが、本考案においては、特に限定されるものではない。所望の性能発現に支障が無い限り、適宜適切に選ばれて良い。また、保有する設備に合わせて、操作条件や前述の適用資材を変更し、適宜応用しても構わない。ここで、乾燥後のシート水分は、平衡水分で7.0±1.0%の範囲内に制御することで、その後の環境条件によるカールや紙くせの発生を抑え、ギロチン断裁機やスリッター加工による断裁適性をも適正化しえる。従って、併せて、抄紙工程においては、シートに急激な物理的なストレスを与えないように、適正なドローの管理、乾燥温度や勾配の調整、各種テンションロールの操作条件適正化やペーパーワークの見直し等を行えばよい。更には、ストレスの緩和策としての加湿器、デカーラー調整機の操業も、操業効率性や品質面で支障ない限り適用が可能である。適切な水分設定は、後加工での操業性や、カール、寸法不安定、断裁紙粉等による品質のトラブルを回避することが可能となる。
本考案において、サイジングされたシートは、さらにキャレンダー処理を行う。キャレンダー処理により、紙層の極表面を平滑化することができ、かつ紙層の内部の細孔構造を改善でき、紙面の外観が変化することは勿論、絵画の際での吸液や、絵画肌を大きく調整することができる。ここで、紙面の平滑性をJIS P8119(1998)によるベック平滑度20秒以下とする。20秒以上であると、絵画の際での紙面にて、ブラッシュコントロールはやり易くはなるものの、絵画肌が滑らかになり過ぎて、得られる画風が単調で、非立体的で重厚感や迫力間に欠けるものとなってしまう。但し、ここで、シートに有る程度のサイズ性が無いと、画風は申し分ない物ではあるが、絵画の際にウォッシュ、グラデーション、ウェットオンウェット(美術分野ではウェットインウェットが一般的な呼称)で繊細な諧調性や微妙な色の変化を表現できなくなってしまう。それ故に、本考案では、平滑とサイズ性の物性をバランスさせることで、汎用的な画材用紙を得る考案を行ったのである。ここで、該画用紙については、芸術や美術に関わる対象物ではあるが、工業的に均質な生産が可能で、産業上利用価値が高いという点は、本考案で、最重要視しているものである。
本考案においては、抄紙工程を経た後、紙面の凹凸加工を行う。その後、リワインダーによる小巻加工(スリッター加工含む)、オンカッターやオフカッターでの裁断加工等を行うことが好ましい。紙面の凹凸加工は、エンボッサー等により行うことができるが、どのような方法でもよい。例えば、この凹凸の形状を紙面に与える工程は、オンラインでもオフラインでも構わず、保有している設備、所望する物性、生産計画での時間の都合(納期等)等を勘案して、特に支障無いようであれば、適宜適切に選ばれるものである。そして、これにより、紙面への水彩画の具材ののり方が変わってきて、加工前では得られないような水彩画のタッチに変化や、水彩画の重厚感や立体感が期待できるようになる。特に凹凸が強調された表面構造の紙面においては、意外性のあるタッチも可能であり、スクラッチやブラッシング、リフト等の絵画技法を組み合わせることで、迫力の有る画風が得られる。なお、凸部はブラシで擦れる頻度は高くなるものの、前述の通り、澱粉で紙面をサイジングしているため、強度的には実用に耐えるレベルに有る。また、紙面の凹凸により、ブラシと紙面との間に抵抗が生じ、ブラッシュコントロールが困難な感じにはなるものの、澱粉による表面処理により、ある程度の表面平滑性が維持され、液吸収性の制御が効いているため、実用上は問題無いレベルに調整することができる。
本考案の画材用紙については、絵画を作成する反対面にも凹凸加工がされても構わず、更に別機能を付与させる目的で、コロナ処理、生物的腐食処理、化学的腐食処理、塗工層の塗設、ラミネート処理、各種含浸処理等を行っても構わない。また、シート自体では、絵画で支障無い限りにおいて、商品価値を高めるために、着色、香り付け等を行うこともできる。
以下に実施例を挙げて本考案をより具体的に説明するが、勿論、本考案はそれらに限定されるものではない。なお、例中の部、及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
実施例1:
<原紙の作成>
LBKP60部とNBKP40部を混合し、これらを混合叩解し、カナディアンスタンダードフリーネス:C.S.Fで500mlのパルプスラリーを調製した。次に、対絶乾パルプとして、二酸化チタン(商品名:TITONE A−110、堺化学工業社製)5.5部、タルク(商品名:タルクNTH、日本タルク社製)5.5部、澱粉(商品名:ネオタック40T、日本食品化工社製)1.0部、AKD系サイズ剤(商品名:SE2360、星光PMC社製)1.8部、紙力剤(商品名:DS4638、星光PMC社製)1.8部添加し、調製した紙料を円網式抄紙機で抄紙した。シート形成後、澱粉(商品名:SK−20、日本コーンスターチ社製)水溶液をサイズプレス機でシート表面に乾燥固形量で2g/m程度になるよう塗布させた。得られたシートを乾燥させた後、次にマシンキャレンダーでプレス(ニップ圧55kg/cm)し、オフラインの工程で、エンボス加工機により、紙面への凹凸形成を施した。そして、坪量270g/mの製品を得た。エンボス加工機での処理前における平衡水分は7.0%であった。
実施例2:
実施例1において、パルプスラリーのC.S.Fを450mlとなるように叩解条件を変更した以外は実施例1のとおりとした。
実施例3:
実施例1において、パルプスラリーのC.S.Fを550mlとなるように叩解条件を変更した以外は実施例1のとおりとした。
実施例4:
実施例1において、原紙内部に含有させる有機系高分子材料のうち、AKD系サイズ剤をロジン系サイズ剤(商品名:ハーサイズL−50、ハリマ化成社製)に変更した以外は実施例1のとおりとした。
実施例5:
実施例1において、原紙内部に含有させる無機系粒子で、二酸化チタンとタルクに代えて炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123、奥多摩工業社製)とクレー(商品名:KAOCAL、白石カルシウム社製)に変更した以外は実施例1のとおりとした。
実施例6:
実施例1において、マシンキャレンダーのプレス圧を変更し(ニップ圧60kg/cm)、高密度化、高平滑化した以外は実施例1のとおりとした。
実施例7:
実施例1において、マシンキャレンダーのプレス圧を変更し(ニップ圧50kg/cm)、低密度化、低平滑化した以外は実施例1のとおりとした。
実施例8:
実施例1において、エンボス加工機での処理前の平衡水分を6.0%とするように、抄紙工程内の乾燥条件を高温化した以外は実施例1のとおりとした。
実施例9:
実施例1において、エンボス加工機での処理前の平衡水分を8.0%とするように、抄紙工程内の乾燥条件を低温化し以外は実施例1のとおりとした。
比較例1:
実施例1において、使用するパルプを針葉樹種のみとした以外は実施例1のとおりとした。
比較例2:
実施例1において、使用するパルプを広葉樹種のみとした以外は実施例1のとおりとした。
比較例3:
実施例1において、C.S.Fを430mlとした以外は実施例1のとおりとした。
比較例4:
実施例1において、C.S.Fを570mlとした以外は実施例1のとおりとした。
比較例5:
実施例1において、抄紙された原紙内部に有機系高分子材料を無添加とした以外は実施例1のとおりとした。
比較例6:
実施例1において、抄紙された原紙内部に無機系粒子を無添加とした以外は実施例1のとおりとした。
比較例7:
実施例1において、得られたシート両面に澱粉をサイジングしなかった以外は実施例1のとおりとした。
比較例8:
実施例1において、得られたシート両面に澱粉に代えて、ラテックス(商品名:Nipol LX110、日本ゼオン社製)を同量、サイジングした以外は実施例1のとおりとした。
比較例9:
実施例1において、原紙内部に紙力剤に代えてカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンPR、第一工業製薬社製)を同量、含有させた以外は実施例1のとおりとした。
比較例10:
実施例1において、原紙内部にAKD系サイズ剤に代えてカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンPR、第一工業製薬社製)を同量、含有させた以外は実施例1のとおりとした。
比較例11:
実施例1において、原紙内部に二酸化チタンとタルクに代えて合成シリカ(商品名:ミズカシルP−78D、水澤化学工業社製)を同量、含有させた以外は実施例1のとおりとした。
比較例12:
実施例1において、マシンキャレンダーのプレス圧を変更し(ニップ圧70kg/cm)、高密度化、高平滑化した以外は実施例1のとおりとした。
比較例13:
実施例1において、マシンキャレンダーを外し、(ニップ圧0kg/cm)、低密度化、低平滑化した以外は実施例1のとおりとした。
比較例14:
実施例1において、得られたシートに凹凸部を形状処理しなかった以外は実施例1のとおりとした。
比較例15:
実施例1において、エンボス加工機での処理前の平衡水分を5.7%とするように、抄紙工程内の乾燥条件を高温化した以外は実施例1のとおりとした。
比較例16:
実施例1において、エンボス加工機での処理前の平衡水分を8.3%とするように、抄紙工程内の乾燥条件を低温化した以外は実施例1のとおりとした。
比較例17:
実施例1において、円網抄紙機を用いず、手抄きによりシートを形成し、サイズプレスとキャレンダーをラボ機にて処理した。なお、エンボス加工は未処理とした。その他は実施例1のとおりとした。
測定及び評価方法:
得られたシートに関し、後述の通りに各種物性や、画材用紙としての適性を評価することにした。これを実施するにあたり、物性については、JISやJAPAN TAPPIで規定された方法により評価し、それ以外の絵画適性については、ほぼ官能評価によることにした。人間の感覚値の方が、より実際的であり、多くの評価項目を瞬時に総合的に判断できるためである。
物性1:
JIS P8118(1998)に従い、得られたシートの密度を測定した。
物性2:
JIS P8119(1998)に従い、得られたシートのベック平滑度を測定した。
物性3:
JIS P8122(2004)に従い、得られたシートのステキヒトサイズ度を測定した。
物性4:
JAPAN TAPPI No.12(2000)に従い、得られたシートの表面サイズ度を測定した。
物性5:
JAPAN TAPPI No.1 (2000)に従い、得られたシートの表面強度(ワックス)を測定した。
評価1:紙面摩擦
絵の具を水で溶き、ブラシで紙面に塗り付けた際の筆のひっかかりを官能評価した。
○:抵抗が無く、スムーズな筆運びである。
△:やや引っ掛かり感有り。
×:抵抗が強く、思い通りのブラッシュワークができない。
評価2:絵画濃度(発色性)
絵の具を水で溶き、ブラシで紙面に塗った際の画像箇所の色の濃さを官能評価した。
○:濃くて、インパクトが有る。
△:やや薄く、インパクトに欠ける。
×:薄くて、インパクトが無い。
評価3:紙面強度
紙面を水で濡らした後に、指で数回紙面をしごき、自然乾燥後にその箇所での破壊状態を目視評価した。(荷重としごく回数は同水準とした。)
○:擦れに対し、破壊が殆ど無い。
△:擦れに対し、破壊がややある。
×:擦れに対し、破壊が酷い。
評価4:グラデーション
筆記用の毛筆にて墨汁を紙面に文字を筆記した際に、筆が紙面に与える荷重が高い箇所や、筆の移動速度が遅い箇所に対し、荷重が低い箇所や移動速度が速い箇所との筆記画像濃度の視感差を評価した。
○:濃淡が際立ち、筆記部の立体的な深みが感じられる。
△:濃淡がわかりづらく、筆記部の立体感や重厚感が得にくい。
×:濃淡が殆ど無く、筆記部は平面的である。
評価5:コックリング、カール
紙面に大量の水を供給し、自然乾燥させた後の歪みやカールの程度を目視評価した。
○:歪みやカールが再絵画に適切な範囲内にある。
△:歪みやカールが再絵画に若干の支障が出るレベル。
×:歪みやカールが酷く、再絵画に支障が出るレベル。
評価6:黒鉛筆記適性
紙面に鉛筆にて筆記し、その黒鉛ののびが適当であり、適切な抵抗感と筆記濃度が得られるかどうかを焦点に評価を行った。
○:黒鉛ののびが適当で書き味が滑らか。かつ、筆記濃度も高い。
△:黒鉛ののびが若干劣り、書き味もやや低位。または、筆記濃度がやや劣る。
×:黒鉛ののびと書き味が劣る。または、筆記濃度が劣る。
評価7:手肉感
触った感じのラフさやライト感、ソフト感、温かみやクッション性などを、測定機を用いることなく、官能的に瞬時で総合的な評価を行うことにした。
市場品との比較ではあるが、フランス製のアルシェ(登録商標)を意識した比較である。
○:市場に有る画材用紙と似ている。
△:市場に有る画材用紙とは似て非なるものである。
(ラフさ、ライト感、ソフト感、温かみ、クッション性等が一部異なっている)
×:市場に有る画材用紙とは似ずも非なるものである。
(ラフさ、ライト感、ソフト感、温かみ、クッション性等どれも異なっている)
評価8:作業効率性
製品を製造する際の効率(主に作業時間)を評価した。
○:単位面積あるいは、単位質量当たりの製造時間が短く、作業効率が良い。
×:単位面積あるいは、単位質量当たりの製造時間が長く、作業効率が悪い。
Figure 0003186777
上記結果より明らかなように、本考案に係る実施例で得られた画材用紙は、優れた絵画適性を有しており、特に紙面における具材ののりと発色性が良好であった。また、紙面強度が高く、種々の絵画技法にも耐える強靭な画材用紙となった。さらに、シートの外部環境に影響しづらい品質を有していた。なおかつ、特別な資材を適用することなく、比較的簡単な製造方法で画材用紙を製造することも可能であった。
1 支持体
2,3 サイジング領域
3 凹凸形状処理部

Claims (3)

  1. 440〜560mlのC.S.F(カナディアン・スタンダード・フリーネス)に叩解された針葉樹種と広葉樹種の混合パルプで抄紙された原紙の内部に紙力剤、有機系高分子材料と無機系粒子を含有する支持体を有し、その少なくとも片面には澱粉によるサイズプレス塗工を有し、当該塗工表面はキャレンダー処理されており、さらに該表面に凹凸部形状を有する画材用紙であって、平衡水分が6.0〜8.0%であり、JIS P8119(1998)によるベック平滑度20秒以下であり、
    原紙内部に含有させる有機系高分子材料がアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、澱粉、及びロジン系サイズ剤から成る群から1種以上選択され、そして、無機系粒子が二酸化チタン、タルク、クレー、及び炭酸カルシウムから成る群から1種以上選択されることを特徴とする画材用紙。
  2. 紙力剤がポリアクリルアミド及びポリビニルアルコールから成る群から1種類以上選択されることを特徴とする請求項1に記載の画材用紙。
  3. JIS P8118(1998)による密度が0.70〜0.80g/cmの範囲内にあり、かつJIS P8122(2004)によるステキヒトサイズ度300秒以上、かつJAPAN TAPPI No.12(2000)による表面サイズ度5以上、かつJAPAN TAPPI No.1 (2000)による表面強度(ワックス)15以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画材用紙。
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