JP3184408B2 - 溶接構造物 - Google Patents

溶接構造物

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JP3184408B2
JP3184408B2 JP22808194A JP22808194A JP3184408B2 JP 3184408 B2 JP3184408 B2 JP 3184408B2 JP 22808194 A JP22808194 A JP 22808194A JP 22808194 A JP22808194 A JP 22808194A JP 3184408 B2 JP3184408 B2 JP 3184408B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2つの部材を溶接して
構成される溶接構造物に係わり、特に、未溶着部を残し
て溶接された溶接構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の溶接構造物に関する公知
技術として、例えば以下のものがある。 特開昭62−114773号公報 この公知技術は、例えば、2つの板材の長手方向端部近
傍を互いに重ね合わせ、未溶着部を残しつつ溶接する溶
接構造において、溶接される2つの板材の端部の板幅方
向両端2箇所の上面(又は下面)に、板幅方向中央部に
向けて板厚とほぼ等しい深さの空間開先部を切削し、ま
たそれぞれこれら2箇所の空間開先部の間には滑らかな
4分の1円弧湾曲線を含む浅い凹面形状の空間溝を形成
する。そして、一方の空間開先部と空間溝との間、及び
他方の空間開先部と空間溝との間の両板材には、タッチ
エリアを残しつつ先細り形状の2つの突条部を形成し、
2つの板材の2つの突条部どうしを未溶接部(ギャッ
プ)を挟んで突き合わせ、この状態で空間開先部を溶接
充填するものである。
【0003】特開昭61−95796号公報 この公知技術は、未溶着部を残して2つの部材を溶接す
る溶接継手構造において、溶接される領域にI字状当接
部と腹面とから構成される溶接溝が形成され、またその
溶接溝の下方には、一方の部材の舌片状突起と他方の部
材の凹みとの嵌着により空所が形成される。この状態で
溶接溝内を溶接充填した後、舌片状突起と凹みとの間に
設けられた未溶接部(ギャップ)によって両部材の収縮
を調整するものである。
【0004】特開昭56−168996号公報 この公知技術は、未溶着部を残してロッド本体とロッド
先端部材とを溶接する溶接継手において、ロッド先端部
材をロッド本体の凹み部分に差し込んで組み立てると
き、ロッド先端部材の片面開先部の下方領域にある環状
溝及び小径部とロッド本体の大径部とで環状空洞部を形
成し、この環状空洞部の外周面にリング状裏当金を嵌着
した状態で開先部の溶接充填を行うことにより、片面開
先溶接部の応力集中を低減して切り欠きをなくすととも
に、片面開先溶接部に溶接欠陥が発生するのを防止し、
これらによってクラックの発生を確実に防止するもので
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
知技術においては、以下の問題点が存在する。すなわ
ち、公知技術において例えば板材の溶接を実施した場
合、溶接後の冷却によって空間開先部に充填された溶接
ビートが収縮すると、まず両方の部材の互いに向かい合
う突条部どうしが接近し未溶接部(ギャップ)がなくな
って接触し、その後さらに溶接ビートが収縮しようとす
るので、2つの突条部の接触部分、及びタッチエリアの
溶接ビートとの境界面付近に高い応力集中が発生する。
また溶接がすべて完了し構造物として使用する際に、両
板材を離す方向への引張負荷及び曲げモーメントがはた
らくと、未溶接部(ギャップ)が亀裂の役割を果たし、
溶接ビートの未溶着部側及びタッチエリア側付近に高い
応力集中が発生する。そしてこのとき空間溝の4分の1
円弧湾曲部のRが小さくなるほど、応力集中の度合いが
高くなる。また、空間溝を加工するために板厚のうちの
かなりの部分を切削していることから、溶接後の板材全
体の剛性、特に曲げ剛性が著しく低下する。よって、こ
れらの応力集中や曲げ剛性の低下から、溶接構造物の強
度が低下するという問題点があった。
【0006】また、公知技術においては、溶接溝の下
方に設けられた空所によって上記冷却時・使用時におけ
る応力集中は一応緩和される。しかしながら、溶接ビー
トの空所との接触点である裏波止端と、空所の端部であ
る半円弧状部分との距離が比較的短いので、溶接時にお
ける溶接ビートの溶け込み具合等により裏波止端の位置
が移動して半円弧状部分と直接接触し、この部分に応力
が集中する可能性がある。また溶接部分を側断面でみた
ときに、一方の部材の舌片状突起と他方の部材の凹みと
の間の未溶接部が、溶接ビートの下方領域になく、溶接
ビートの下方領域よりも水平方向外側にある。したがっ
て、溶接完了後に構造物として見た場合に、極めて剛性
が弱くなる舌片状突起部分及びその周辺部が、溶接ビー
ト下方領域より広い範囲にわたって存在することとな
り、構造物として剛性が極めて弱くなるという問題点が
ある。また、他方の部材の凹みの形状は、舌片状突起の
形に合わせてあることから側断面が矩形状になるコーナ
ー部を有しており、応力集中で生じた亀裂から繰り返し
荷重で疲労破壊がおきやすいという問題点もある。
【0007】さらに、公知技術においては、中心軸を
備えたロッド先端部材をロッドに設けられた略円筒形の
穴に挿入・固定して溶接する構造であるが、ロッドの中
心軸から一方側の半分(例えば上半分)のみの構造を考
えれば、上記及びと同様に例えば板材どうしの溶接
構造として考えることができる。このように考えた場
合、公知技術同様、片面開先部下方に設けられた環状
空洞部によって上記冷却時・使用時における応力集中は
緩和されることとなる。そしてこのとき裏波止端と、環
状空洞部の端部である半円弧状部分との距離は比較的長
く、また環状空洞部には裏当金が嵌着されてこれら2つ
の間の距離を確保するので、応力集中は確実に防止され
る。しかしながら、ロッド本体に挿入されたロッド先端
部材の先端とロッド本体壁面との間にはギャップがあっ
て未溶接部を形成しており、この未溶接部は、溶接ビー
ト及び環状空洞部の下方領域にはなくロッド先端部材の
軸方向にかなりずれた位置に配置されている。したがっ
て、板材どうしの溶接等に本公知例の構造を適用した場
合、上記同様、ロッド先端部材のうち極めて剛性が弱
くなる、環状空洞部下方領域及びその下方領域から軸方
向先端への領域並びにその周辺部が、きわめて広い範囲
にわたって存在することとなり、構造物としての剛性が
極めて弱くなるという問題点がある。また、上記同
様、ロッドに設けられたロッド先端部材が挿入される孔
の形状は、ロッド先端部材の形状と同様の形状となって
いることから、ロッド先端部材の上下方向に振動負荷が
作用した場合に孔のコーナー部に応力集中で亀裂が生
じ、この亀裂から繰り返し荷重で疲労破壊がおきやすい
という問題点もある。
【0008】本発明の目的は、構造物全体の剛性低下を
抑え、かつ疲労破壊を発生させることなく、溶接後の冷
却時、及び使用中引張負荷・曲げモーメントが作用した
時における応力集中を確実に低減できる溶接構造物を提
供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、凹状面を切り欠き加工した端面を
備えた2つの母材を、前記凹状面どうしが対向し1つの
空洞部を形成するように突き合わせ、この突き合わせた
2つの母材の端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介
し対向する未溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方
側から溶接ビートを充填することにより前記2つの母材
を突き合わせ溶接した溶接構造物において、前記空洞部
は、それぞれ断面形状が略半円弧形状の両端部を備えて
おり、かつその空洞部の壁面は、前記溶接ビートの前記
空洞部壁面との接点である裏波止端と前記略半円弧形状
の両端部先端との距離をL、前記2つの母材の板厚をt
としたとき、0.3≦L/t<0.5となるように構成
されており、前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口
し、他端が前記2つの母材の表面に開口する空間を形成
していることを特徴とする溶接構造物が提供される。
【0010】
【0011】
【0012】また上記目的を達成するために、本発明に
よれば、凹状面を切り欠き加工した端面を備えた2つの
母材を、前記凹状面どうしが対向し1つの空洞部を形成
するように突き合わせ、この突き合わせた2つの母材の
端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介し対向する未
溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方側から溶接ビ
ートを充填することにより前記2つの母材を突き合わせ
溶接した溶接構造物において、前記空洞部は、それぞれ
断面形状が略半円弧形状の両端部を備えており、かつそ
の空洞部の壁面は、前記溶接ビートの前記空洞部壁面と
の接点である裏波止端と前記略半円弧形状の両端部先端
との距離をL、前記2つの母材の板厚をtとしたとき、
0.3≦L/t<0.5となるように構成されており、
前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口し、他端が前
記2つの母材の表面に開口する空間を形成し、前記裏波
止端での前記溶接ビートと前記空洞部壁面とのなす角度
は、90度より大きいことを特徴とする溶接構造物が提
供される。
【0013】さらに上記目的を達成するために、本発明
によれば、凹状面を切り欠き加工した端面を備えた2つ
の母材を、前記凹状面どうしが対向し1つの空洞部を形
成するように突き合わせ、この突き合わせた2つの母材
の端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介し対向する
未溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方側から溶接
ビートを充填することにより前記2つの母材を突き合わ
せ溶接した溶接構造物において、前記空洞部は、それぞ
れ断面形状が略半円弧形状の両端部を備えており、かつ
その空洞部の壁面は、前記溶接ビートの前記空洞部壁面
との接点である裏波止端と前記略半円弧形状の両端部先
端との距離をL、前記2つの母材の板厚をtとしたと
き、0.3≦L/t<0.5となるように構成されてお
り、前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口し、他端
が前記2つの母材の表面に開口する空間を形成し、前記
未溶着部一端の空洞部への開口部分は、前記溶接ビート
の軸線上から前記2つの母材のうちいずれか一方側へず
れた位置に配置されていることを特徴とする溶接構造物
が提供される。
【0014】さらに好ましくは、前記溶接構造物におい
て、前記空洞部は、該空洞部の前記他方側壁面と前記2
つの部材の該他方側表面との間の肉厚が、前記裏波止端
から両端部に向かうほど減少する傾斜部を有することを
特徴とする溶接構造物が提供される。
【0015】また好ましくは、前記溶接構造物におい
て、前記空洞部は、該空洞部の前記一方側壁面と前記2
つの部材の該一方側表面との間の肉厚が、前記裏波止端
から両端部に向かって一定である平行部をさらに有する
ことを特徴とする溶接構造物が提供される。
【0016】
【作用】以上のように構成した本発明においては、2つ
の母材の端面を突き合わせ対向する凹状面どうしで1つ
の空洞部を形成し、一方側は間隙を介し対向する未溶着
部として残しつつ、他方側から溶接ビートを充填し突き
合わせ溶接を行う。そしてこの溶接時において、空洞部
の壁面を、予め、裏波止端と略半円弧形状の両端部先端
との距離L、2つの母材の板厚tについて0.3≦L/
t<0.5となるように構成しておくことにより、裏波
止端と空洞部両端部との間の距離を一定以上確保し接触
を防止することができるので、従来のように溶接ビート
の溶け込み具合等によって裏波止端と空洞部両端部とが
接触することがない。したがって、溶接時の昇温・降温
の温度履歴を受けた時や使用中に引張負荷・曲げモーメ
ントが作用した時における応力集中を確実に低減するこ
とができる。また従来、未溶着部が空洞部の両端部の一
方側(上方又は下方側)領域からかなりずれた位置に存
在しており、これによって、剛性の弱い領域は、空洞部
の両端部間距離よりも長い距離から一方側の広い領域と
なるので、構造物全体としての剛性が非常に低下してい
た。しかし、本発明においては、溶接後において、空洞
部の他方側領域は溶接ビートを介し強固に固定される一
方、未溶着部が一端が空洞部に開口し他端が2つの母材
の表面に開口する空間として残されることにより、空洞
部の両端部間から一方側の領域のみが剛性の弱い領域と
なる。すなわち従来よりも剛性の弱い領域を縮小するこ
とができるので、その分構造物全体としての剛性の低下
を低減することができる。また従来のように、未溶着部
にコーナー部が存在しないので、繰り返し荷重による疲
労破壊を招くことがない。
【0017】た、裏波止端での溶接ビートと空洞部壁
面とのなす角度が90度より大きいことにより、90度
より小さいすなわち鋭角の場合のように応力集中の低減
が不十分となることがない。
【0018】さらに、未溶着部一端の空洞部への開口部
分が、溶接ビートの軸線上から2つの母材のうちいずれ
か一方側へずれた位置に配置されていることにより、溶
接時に主として溶接ビートの軸線上に沿って飛ぶアーク
が、未溶着部を介して、反対側の2つの母材の表面に飛
散するのを防止することができる。
【0019】また、空洞部に備えられた傾斜部におい
て、空洞部壁面と2つの母材の表面との間の肉厚が裏波
止端から両端部に向かうほど減少する傾斜構成となって
いることにより、溶接された2つの母材に引張応力がは
たらいた場合、荷重は裏波止端に垂直な方向から作用す
るのでなく傾斜に沿って斜めに作用するので、傾斜して
いない場合(例えば水平構成)よりも荷重が小さくなり
応力も分散される。
【0020】さらに、溶接構造物において、空洞部は、
空洞部の一方側壁面と2つの部材の一方側表面との間の
肉厚が、裏波止端から両端部に向かって一定である平行
部をさらに有することにより、荷重低減作用のある傾斜
部と平行部との両方を備えた空洞部を実現できる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1〜図16により
説明する。本発明の第1の実施例を図1〜図8により説
明する。本実施例による溶接構造物及びその溶接前の状
態を図1及び図2に示す。本実施例の溶接構造物100
は図1に示されるものであり、図2の状態から溶接され
ることによって図1の状態となる。図1及び図2におい
て、溶接構造物100は、それぞれ端面に凹状面1B,
2Bを機械加工によって形成した母材1,2を、凹状面
1B,2Bどうしが対向して1つの空洞部5を形成する
ように突き合わせ、この突き合わせた2つの母材1,2
の端面のうち空洞部5の一方側(図示上側)端面1A,
2Aは間隙を介し対向する未溶着部9を形成するように
残しつつ、空洞部5の他方側(図示下側)から溶接ビー
ト3を充填することにより、2つの母材1,2を突き合
わせ溶接したものである。
【0022】凹状面1B,2Bはそれぞれ、母材1,2の
端面における板厚方向(図示上下方向)中間部を切り欠
いて形成されており、側断面形状が略半円弧状である半
円弧部6を備えている。凹状面1B,2Bが対向して形
成される空洞部5において、溶接ビート3の空洞部5壁
面との接点である裏波止端4と、半円弧部6の先端7と
の距離Lは、2つの母材1,2の板厚tとの比L/tが
0.4となっており、このことが、空洞部5の両端部で
ある半円弧部6,6と溶接ビート3の溶接時における接
触を防止する接触防止手段の役割を果たしている(後
述)。また裏波止端4での溶接ビート3と空洞部5壁面
とのなす角度θは90度より大きくなっており、これに
よってθが鋭角の場合のように、応力集中を助長するこ
とがないように構成されている。
【0023】未溶着部9は、一端(図示下端)が空洞部
5に開口し、他端(図示上端)が2つの母材1,2の表
面(図示上側の表面)に開口する空間を形成している。
またこのときの未溶着部9一端の空洞部5への開口部分
9aは、溶接ビート3の軸線p上から母材1側(図示左
方)へ距離xだけずれた位置に配置されている。これに
よって、突き合わせ溶接時に主として溶接ビート3の軸
線p上に沿って飛ぶアークが、未溶着部9を介し母材
1,2の反対側(図示上側)表面へ飛散するを防止する
ことができる。なお母材1側でなく母材2側(図示右
方)へずれていてもよく、この場合も同様の効果を得
る。
【0024】次に、本実施例の作用を図3〜図8を用い
て説明する。まず、本実施例の作用を説明するための第
1の比較例を図3に示す。図3において、本比較例によ
る溶接構造物110は、特開昭62−114773号公
報に開示されているものであり、2つの板材111,1
12が、その長手方向(図中想像線で示す左手前と右奥
相互方向)端部111A,112A近傍を互いに重ね合
わせ、未溶着部119A,119Bを残しつつ溶接され
た構造である。すなわち溶接構造物110は、板材11
1,112の端部111A,112Aの板幅方向(図中上
下方向)両端2箇所に、板幅方向(図示上下方向)中央
部に向けて板厚Tとほぼ等しい深さの空間開先部111
B,112B及び111C,112Cが切削され、これら
空間開先部111B,112B及び111C,112Cに
溶接ビート113a,bが充填されることにより溶接さ
れたものである。
【0025】空間開先部111B,112B及び111
C,112Cに充填された溶接ビート113a,bの間に
は、滑らかな4分の1円弧湾曲部115a,bを含む浅
い凹面形状の切削溝115が溶接前に予め切削加工され
ている。そして一方(図示上方)の空間開先部111
B,112Bと切削溝115との間の両板材111,11
2には、それぞれ、タッチエリア118を残しつつ先細
り形状の2つの突条部111D,112Dが形成され、
この突条部111D,112Dどうしが未溶接部119
Aを挟んで突き合わせられている。他方(図示下方)の
空間開先部111C,112Cと切削溝115との間に
ついても同様に突条部111E,112Eが設けられて
いる。そしてこのように突き合わされた状態で空間開先
部111B,112B及び111C,112Cに溶接ビー
ト113a及び113bが溶接充填されている。
【0026】しかしながら、この第1の比較例による溶
接構造物110においては、溶接後の冷却によって溶接
ビート113a,bが収縮すると、まず向かい合う突条
部111D,112D若しくは111E,112Eどうし
が接近し未溶接部9のギャップがなくなって接触する。
そしてその後さらに溶接ビート113a,bが収縮しよ
うとするので、2つの突条部111D,112D若しく
は111E,112Eの接触部分、及びタッチエリア1
18の溶接ビート113a,bとの境界面付近に高い応
力集中が発生する。また溶接がすべて完了し構造物とし
て使用する際に、2つの板材111,112を離す方向
(図示左右方向等)への引張負荷及び曲げモーメントが
はたらくと、未溶接部119A,Bが亀裂の役割を果た
し、溶接ビート103a,bの未溶着部119A,B側及
びタッチエリア118側付近に高い応力集中が発生す
る。なおこのとき切削溝115の4分の1円弧湾曲部1
15a,bのRが小さいほど応力集中の度合いが高い。
また、切削溝115を加工するために板厚のうちのかな
りの部分を切削していることから、溶接後の板材全体の
剛性、特に曲げ剛性が著しく低下する。よって、これら
の応力集中や曲げ剛性の低下から、溶接構造物110の
強度が低下する。また研削加工の時間も長くなって加工
費が高くなる。
【0027】次に、本実施例の第2の比較例を図4に示
す。図4において、本比較例による溶接構造物120
は、特開昭55−48491号公報に開示のものに類似
の構造であり、2つの板材121,122の長手方向
(図中想像線で示す左手前と右奥相互方向)端部121
A,122A近傍を互いに重ね合わせ、未溶着部129
を残しつつ溶接された構造である。すなわち溶接構造物
120は、溶接される2つの板材121,122の端部
121A,122Aの板幅方向(図中上下方向)両端2
箇所に、板幅方向(図示上下方向)中央部に向けて空間
開先部121B,122B及び121C,122Cが切削
され、これら空間開先部121B,122B及び121
C,122Cに溶接ビート123a,bが充填されること
により溶接されたものである。
【0028】一方(図示上方)の空間開先部121B,
122Bと未溶接部129との間、及び他方(図示下
方)の空間開先部121C,122Cと未溶接部129
との間には、それぞれストップホール124a,124
bが設けられている。
【0029】この第2の比較例による溶接構造物120
においては、溶接後の冷却によって溶接ビート123
a,bが収縮する場合や、構造物として使用中に2つの
板材121,122を離す方向(図示左右方向等)への
引張負荷や曲げモーメントがはたらいた場合にも、スト
ップホール124a,bによって応力集中はある程度緩
和される。また第1の比較例のように母材111,11
2を大きく切削しないので、溶接後の板材全体の剛性の
低下は抑えられる。しかしながら、このストップホール
124a,bそれぞれの両端部128a,b及び128
c,dと、溶接ビート13a,bの裏波止端127a,
b及びc,dとの距離が比較的短く、溶接時における溶
接ビート113a,bの溶け込み具合等により裏波止端
127a〜dの位置がより外側に移動して両端部128
a〜dと直接接触し、この部分に応力が集中する可能性
がある。このとき仮に図示のように裏波止端127a〜
dと両端部128a〜dとの距離が確保されたとして
も、このストップホール124a,bと溶接ビート11
3a,bとが裏波止端127a〜dでなす角度θが鋭角
となるので、その分ある程度の応力が集中し、応力集中
の低減が不十分となる。
【0030】さらに、本実施例の第3の比較例を図5
(a)(b)に示す。図5(a)は本比較例の溶接構造
物130の側断面図であり、図5(b)は、溶接前に2
つの母材を突き合わせた状態を示す側断面図である。図
5(a)(b)において、本比較例による溶接構造物1
30は、特開昭61−95796号公報に開示されてい
るものであり、2つの母材131,132を溶接した溶
接継手構造において、溶接される領域にI字状当接部1
38と腹面135とで溶接溝133が形成され、またそ
の溶接溝133の下方には、母材131の舌片状突起1
34と母材132の凹み136との嵌着により空所13
7が形成される。なおこのとき当接面134Aと当接面
136Aとの間にはギャップがあいており、未溶着部1
39を形成している。この状態で溶接溝133内に溶接
ビート133aを溶接充填した後、未溶接部139によ
って両母材131,132の収縮を調整する。
【0031】この第3の比較例による溶接構造物130
においては、溶接後の冷却によって溶接ビート133a
が収縮する場合や、構造物として使用中に2つの母材1
31,132を離す方向(図示左右方向等)への引張負
荷や曲げモーメントがはたらいた場合にも、溶接ビート
133aの下方に設けられた空所137によって応力集
中は一応緩和される。しかしながら、上記第2の比較例
同様、溶接ビート133aの空所137との接触点であ
る裏波止端133bと、空所137の端部である半円弧
状部分137aとの距離が比較的短いので、溶接時にお
ける溶接ビート133aの溶け込み具合等により裏波止
端133bの位置が移動して半円弧状部分137aと直
接接触し、この部分に応力が集中する可能性がある。ま
た、図5(a)において、母材131の舌片状突起13
4と母材132の凹み136との間の未溶接部139
が、溶接ビート133aの下方領域になく、溶接ビート
133aの下方領域よりも水平方向外側(図示右側)に
ずれている。したがって、溶接完了後に構造物として見
た場合に、極めて剛性が弱くなる舌片状突起部分134
及びその周辺部からなる領域(図5(a)中一点鎖線で
囲んで示す領域A)が、溶接ビート133a下方領域よ
り広い範囲にわたって存在することとなり、構造物とし
て剛性が極めて弱くなる。また、母材132の凹み13
6の形状は、舌片状突起134の形に合わせてあること
から、当接面136Aは側断面が矩形状になるコーナー
部を有しており、この領域(図中Bで示す)に応力が集
中して亀裂が生じ、ここから繰り返し荷重で疲労破壊が
おきやすい。
【0032】またさらに、本実施例の第4の比較例を図
6(a)(b)に示す。図6(a)は本比較例の溶接構
造物140の側断面図であり、図6(b)は、溶接前の
状態を示す側断面図である。図6(a)(b)におい
て、本比較例による溶接構造物140は、特開昭56−
168996号公報に開示されているものであり、ロッ
ド本体141とロッド先端部材142とを溶接する溶接
継手において、ロッド先端部材142をロッド本体14
1の凹み部分の大径部141aに差し込んで組み立てる
とき、ロッド先端部材142の片面開先部142aの下
方領域にある環状溝142b及び小径部142cとロッ
ド本体141の大径部141aとで環状空洞部143を
形成し、この環状空洞部143の外周面にリング状裏当
金144を嵌着した状態で開先部142aの溶接充填を
行い、その後溶接表面を機械加工で平滑曲面に仕上げ
る。なおこのとき、ロッド先端部材142の軸部142
d先端とロッド本体141の凹み部分の小径部141b
端部との間にはギャップがあいており、未溶着部145
を形成している。そしてこのような溶接を行うことによ
り、片面開先溶接部の応力集中を低減して切り欠きの発
生をなくすとともに、溶接欠陥が発生するのを防止し、
これらによってクラックの発生を確実に防止するもので
ある。
【0033】この第4の比較例による溶接構造物140
においては、中心軸qを備えたロッド先端部材142を
ロッド141に設けられた小径部141bに挿入・固定
して溶接する構造であるが、ロッド141の中心軸qか
ら一方側の半分(例えば図示上半分)のみの構造を考え
れば、上記第1〜第3の比較例と同様に例えば板材どう
しの溶接構造に適用することができる。このように考え
た場合、第3の比較例同様、ロッド先端部材142の環
状溝142b及び小径部142cとロッド本体141の
大径部141aとで形成される環状空洞部143によ
り、溶接後冷却時及び使用時における応力集中は緩和さ
れることとなる。また溶接ビート146の裏波止端14
6aと、環状空洞部143の端部である半円弧状部分1
43aとの距離は比較的長く、また環状空洞部143に
は裏当金144が嵌着されてこれら2つの間の距離を確
保する接触防止手段としてはたらくので、応力集中は確
実に防止される。しかしながら、ロッド本体141に挿
入されたロッド先端部材142の軸部142d先端とロ
ッド本体141小径部141b端部との間の未溶接部1
45は、溶接ビート146及び環状空洞部143の下方
領域にはなくロッド先端部材142の軸方向(図示左方
向)にかなりずれた位置に配置されている。したがっ
て、板材どうしの溶接等に本比較例の構造を適用した場
合、上記第3の比較例同様、環状空洞部143下方領域
及びその領域からロッド先端部材142軸部142dへ
の領域並びにその周辺部(図6(a)中一点鎖線で囲ん
で示す領域C)が極めて剛性が弱くなる領域となる。す
なわちこのような剛性の弱い部分が溶接ビート146下
方領域よりきわめて広い範囲にわたって存在することと
なり、構造物としての剛性が極めて弱くなる。また、上
記第3の比較例同様、ロッド141に設けられたロッド
先端部材142が挿入される小径部141bの形状がロ
ッド先端部材142軸部142dの形状と同様の形状と
なっていることから、特に、ロッド先端部材142の上
下方向に振動負荷が作用した場合に、小径部141bの
コーナー部領域(図中Dで示す)に応力が集中して亀裂
が生じ、ここから繰り返し荷重で疲労破壊がおきやす
い。
【0034】これに対し、図1に示す本実施例の溶接構
造物100においては、2つの母材1,2の端面を突き
合わせ対向する凹状面1B,2Bどうしで1つの空洞部
5を形成し、一方側(図示上側)は間隙を介し対向する
未溶着部9として残しつつ、他方側(図示下側)から溶
接ビート3を充填し突き合わせ溶接を行う。そしてこの
溶接時に、空洞部5壁面における裏波止端4と半円弧部
6の先端7との距離Lと、2つの母材1,2との板厚t
との比L/t=0.4に確保することにより、裏波止端
4と半円弧部6,6との接触を防止するので、溶接ビー
ト3の溶け込み具合等によって裏波止端4と半円弧部
6,6とが接触することがない。したがって、溶接時の
昇温・降温の温度履歴を受けた時や使用中に引張負荷・
曲げモーメントが作用した時における応力集中を確実に
低減することができる。なおこのとき、裏波止端4での
溶接ビート3と空洞部5壁面とのなす角度θが90度よ
り大きいことにより、90度より小さい第2の比較例の
ように応力集中の低減が不十分となることがない。ま
た、溶接後において、空洞部5の他方側(図示上側)領
域は溶接ビート3を介し強固に固定される一方、未溶着
部9は一端が空洞部5に開口し他端が2つの母材1,2
の表面に開口する空間として残される。すなわち空洞部
5の両端部である半円弧部6,6間から一方側(図示上
側)の領域(図1中一点鎖線で囲んで示す領域E)のみ
が剛性の弱い領域となる。よって上記第3の比較例にお
ける領域A(図5(a)参照)や第4の比較例における
領域C(図6(a))よりも剛性の弱い領域を縮小する
ことができるので、その分構造物全体としての剛性を向
上し、剛性低下を低減することができる。また第3の比
較例における当接面16Aのコーナー部領域B(図5
(a)参照)や、第4の比較例における小径部141b
のコーナー部領域D(図6(a)参照)のような箇所が
存在しないので、繰り返し荷重による疲労破壊を招くこ
とがない。
【0035】以上の本実施例の作用のうち、空洞部5壁
面における裏波止端4と半円弧部6の先端7との距離L
と、2つの母材1,2との板厚tとの比L/tを確保す
ることが、裏波止端4と空洞部5の半円弧部6,6との
接触を防止する接触防止手段として、応力集中を確実に
防止する役割を果たすことについて、さらに具体的に説
明する。本願発明者等は、裏波止端4から半円弧部6の
先端7までの距離Lと2つの母材1,2の板厚tの比L
/tの値と、応力集中の度合いを示す応力集中係数との
関係を検討した結果、図7に示す結果を得た。図7は、
図1に示した溶接構造物100と同様に、溝奥に半円弧
部6を備えた凹状面1B,2Bを端面に備えた板厚3m
mの母材1,2を凹状面1B,2Bどうしが対向して1つ
の空洞部5を形成するように突き合わせ溶接した溶接構
造物について、裏波止端4と半円弧部端7との距離を0
mm(直接接触している場合)〜1.5mmに変化させ
(すなわちL/t=0〜0.5まで変化させ)、それぞ
れの状態で引張負荷を板長手方向に作用させた場合の裏
波止端4と半円弧部端7付近の応力集中係数σmax/σo
を弾性有限要素法で解析した結果を表したものである。
図7において、裏波止端4および半円弧部端7付近の応
力集中係数σmax/σoは、裏波止端4と半円弧部端7が
直接接触しているL/t=0では約27.5であるが、
L/tが0から増加するとともに急激に低下しL/t=
0.1で3割以上低下して約17となり、以降はL/t
が増加してもほとんど変わらないことがわかる。
【0036】図7より、L/t≧0.1とすれば、応力
集中を十分に低減できることがわかる。しかしながら、
このL/tの値を小さめ(例えば0.15)にとると、
溶接時における溶接ビートの溶け込み具合等により裏波
止端4の位置がより半円弧部7に移動して裏波止端4と
半円弧部7とが直接接触しこの部分に応力が集中する可
能性がある。そこで、本願発明者等は、実際の溶接加工
上の誤差を考慮し余裕をみてL/t≧0.3とするのが
適当であり、この範囲において裏波止端4と半円弧部
6,6との接触を防止する接触防止手段としての役割を
確実に果たすと判断した。
【0037】ところで、以上のように、応力集中を確実
に防止するための接触防止手段としてはL/t≧0.3
の範囲が適当であるが、逆にこのL/tの値が大きすぎ
ると、溶接構造物100の剛性に悪影響を与えることが
わかった。本願発明者等は、裏波止端4から半円弧部6
の先端7までの距離Lと2つの母材1,2の板厚tの比
L/tの値と、曲げ剛性の強さを示す曲げコンプライア
ンスとの関係を検討した結果、図8に示す結果を得た。
【0038】図8は、上記同様に、溝奥に半円弧部6を
備えた凹状面1B,2Bを端面に備えた板厚3mmの母
材1,2を凹状面1B,2Bどうしが対向して1つの空洞
部5を形成するように突き合わせ溶接した溶接構造物に
ついて、裏波止端4と半円弧部端7との距離を0mm
(直接接触している場合)〜1.5mmに変化させ(す
なわちL/t=0〜0.5まで変化させ)、それぞれの
状態で母材1,2両端に集中荷重を作用させた場合の3
点曲げの解析を行った結果を表したものである。図8に
おいて、裏波止端4および半円弧部端7付近の曲げコン
プライアンスλは、裏波止端4と半円弧部端7が直接接
触しているL/t=0で約0.075[mm/N]であ
り、L/tが0から増加するとともにほぼ一定の割合で
増加しL/t=0.6で約0.12[mm/N]となる。
すなわち、L/tが増加するほど曲げ剛性が低下してい
くのがわかる。
【0039】図8によれば、曲げコンプライアンスλの
値が増加するほど変形が大きくなり、溶接構造物におい
てより高い応力が生じ降伏する恐れも生じることにな
る。ここで本願発明者等は、特に、曲げコンプライアン
スλの値が、L/t=0のときの1.5倍以上になると
座屈などの問題が生じてくることに着目し、ここを境界
としてλ<0.1125(=0.075×1.5)となる
L/t<0.5を許容範囲と判断した。
【0040】以上の考察により、曲げ剛性の低下を抑え
つつ、裏波止端4と半円弧部6,6との接触を防止し応
力集中を確実に防止するには、0.3≦L/t<0.5と
することが有効であることがわかった。本実施例の溶接
構造物100においては、前述したように、空洞部5壁
面における裏波止端4と半円弧部6の先端7との距離L
と、2つの母材1,2の板厚tとの比L/t=0.4であ
る。したがって、曲げ剛性の低下を抑えつつ、溶接時に
おける裏波止端4と半円弧部6との接触を確実に防止し
応力集中を確実に防止することができる。
【0041】以上のように構成した本実施例によれば、
溶接ビート3の空洞部5壁面との接点である裏波止端4
から半円弧部6の先端7までの距離Lと2つの母材1,
2の板厚tとの比L/tが0.4となっており、溶接時
に裏波止端4と空洞部5半円弧部6とが接触するのを確
実に防止するので、溶接時の昇温・降温の温度履歴を受
けた時や使用中に引張負荷・曲げモーメントが作用した
時における応力集中を確実に低減することができる。ま
た溶接後において、未溶着部9は下端が空洞部5に開口
し上端が2つの母材1,2表面に開口する空間として残
され、空洞部5の半円弧部6,6間の上方領域Eのみが
剛性の弱い領域となるので、構造物全体としての剛性の
低下を低減することができ、また繰り返し荷重による疲
労破壊を招くことがない。また、未溶着部9下端の空洞
部5への開口部分が、溶接ビート3の軸線p上から母材
1側へ距離xだけずれた位置に配置されているので、溶
接時に飛ぶアークが、反対側(図示上側)の母材1,2
の表面に飛散するのを防止することができる。よって例
えば、内部が気密構造である外壁を大気側から溶接する
場合等、アークが内部に侵入して内部に配置された精密
機器等に支障を与えるのを防止できる。
【0042】なお、上記実施例においては、溶接ビート
3の空洞部5壁面との接点である裏波止端4から半円弧
部6の先端7までのの距離Lと2つの母材1,2の板厚
tとの比L/tが0.4になっていることが、空洞部5
の両端部である半円弧部6,6と溶接ビート3の溶接時
における接触を防止する接触防止手段の役割を果たして
いたが、これに限られず、他の接触防止手段の構成も考
えられる。この変形例を図9により説明する。図1に示
した第1の実施例の溶接構造物100と共通の部材は同
一の符号を付す。図9において、本変形例の溶接構造物
150が第1の実施例の溶接構造物100と異なる点
は、半円弧部6,6と溶接ビート3との接触防止手段と
して、2つの裏当て金具8,8が空洞部5に挿入されて
いることである。この裏当て金具8は、2つの母材1,
2と異なる材料(例えば母材1,2がアルミニウムの場
合にはSUS等)で構成されており、その外周が空洞部
5半円弧部6の内壁に嵌着されている。その他の構成は
第1の実施例の溶接構造物100とほぼ同様である。
【0043】本変形例によれば、溶接時に溶接ビート3
が溶け込んできても裏当て金具8のところでブロックさ
れて、溶け込み過剰を防止することができる。すなわ
ち、半円弧部6,6と溶接ビート3との接触防止手段の
役割を果たすことができる。したがって、本変形例によ
っても、第1の実施例と同様の効果を得る。
【0044】本発明の第2の実施例を図10及び図11
により説明する。本実施例は、空洞部5の形状が異なる
溶接構造物の実施例である。本実施例による溶接構造物
の側面図を図10に示す。第1の実施例の溶接構造物1
00及び変形例の溶接構造物150と同等の部材には同
一の符号を付す。図10において、本実施例の溶接構造
物200が、第1の実施例の溶接構造物100と異なる
点は、空洞部5が、中心部から左右両方に向かって図示
下方に傾斜した傾斜構造となっており、すなわち空洞部
5の下側壁面と母材1,2の下側表面との間の肉厚sが
裏波止端4から空洞部5両端の半円弧部6,6に向かう
ほど減少していることと、この空洞部5に上記第1の実
施例の変形例で説明したのと同様の裏当て金具8,8が
接触防止手段として挿入されていることである。その他
の構造は第1の実施例と同様である。
【0045】本実施例によっても、第1の実施例と同様
の効果を得られる。これに加え、溶接された2つの母材
1,2に図示のように引張応力Pがはたらいた場合、荷
重は裏波止端4に垂直な方向から作用するのでなく、空
洞部5の傾斜に沿って斜めに作用するので、空洞部5が
傾斜していない場合(例えば第1の実施例のような水平
構成等)よりも荷重が小さくなり応力も分散されるの
で、応力集中がさらに確実に防止されるという効果もあ
る。
【0046】なお、上記実施例において、空洞部5の両
端部である半円弧部6,6と溶接ビート3の溶接時にお
ける接触を防止する接触防止手段として、第1の実施例
の変形例同様、裏当て金具8,8を用いたが、これを設
けずに、裏波止端4と半円弧部6,6との距離を十分に
確保する別の手段でも良い。この場合も同様の効果を得
る。
【0047】また、上記実施例では空洞部5のすべての
部分が傾斜構造となっていたが、一部非傾斜部分を設け
ても良い。この変形例を図11により説明する。本変形
例の溶接構造物210の側面図を図11に示す。第2の
実施例の溶接構造物200と同等の部材には同一の符号
を付す。図11において、本変形例の溶接構造物210
が、第2の実施例の溶接構造物200と異なる点は、空
洞部5が、空洞部5下側壁面と母材1,2の下側表面と
の間の肉厚sが裏波止端4から空洞部5両端の半円弧部
6,6に向かうほど減少している傾斜部5aと、肉厚s
が一定である平行部5bとを有することである。その他
の構造は、第2の実施例と同様である。本変形例によっ
ても、第2の実施例と同様の効果を得る。
【0048】本発明の第3の実施例を図12〜図16に
より説明する。本実施例は、上記第1の実施例で説明し
た溶接構造物100の構成を、その他各種の溶接構造物
に応用した場合の実施例である。第1の実施例と同等の
部材には同一の符号を付す。まず、図12に示す溶接構
造物310は、片側突合せ溶接で加工した第1の実施例
による溶接構造物100の構造を、両側突合せ溶接に適
用した場合の実施例である。このとき、溶接構造物31
0においては、第1の実施例の溶接構造物100のよう
に溶接時にアークが逆側へ飛散するおそれはないので、
未溶着部9はそれぞれの溶接ビート3の軸線p上に位置
させている。
【0049】次に、図13に示す溶接構造物320は、
溶接構造物100の構造を、管溶接へ適用した場合の実
施例である。すなわち、溶接構造物100を管の一方側
壁面と他方側壁面とにおいてそれぞれ形成したものであ
る。このとき、管の肉厚が薄い場合には、溶接ビート3
からのアークが管内部に付着し、内部欠陥となるおそれ
があるので、溶接構造物100と同様、未溶着部9はそ
れぞれの溶接ビート3の軸線pから母材1側あるいは母
材2側へずらして配置されることとなる。
【0050】次に、図14に示す溶接構造物330は、
溶接構造物100の構造を、埋め込み溶接へ適用した場
合の実施例である。この構造は、一般に、一方が大気
中、他方が真空中にある場合等両側の環境が異なり他方
からの溶接が不可能な場合、又は溶接ビート3の反対側
に精密機械が収容され極めてわずかなアークの飛散も許
されない場合等に用いられる。よって、この場合も上記
溶接構造物320同様、未溶着部9はそれぞれの溶接ビ
ート3の軸線pから母材1側あるいは母材2側へずらし
て配置される。
【0051】次に、図15及び図16に示す溶接構造物
340,350はともに、溶接構造物100の構造をT
字溶接へ適用した場合の実施例である。溶接構造物34
0はT字片側溶接構造物であって、前述した図14の溶
接構造物330の構造をT字溶接に取り入れたものであ
る。また溶接構造物350はT字両側溶接構造物であっ
て、前述した図12の溶接構造物310の構造をT字溶
接に取り入れたものである。
【0052】以上の溶接構造物310〜350によって
も、第1の実施例の溶接構造物100と同様の効果を得
ることができる。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、溶接時に、裏波止端と
空洞部両端部との間の距離を一定以上確保し裏波止端と
空洞部両端部との接触を防止するので、溶接時の昇温・
降温の温度履歴を受けた時や使用中に引張負荷・曲げモ
ーメントが作用した時における応力集中を確実に低減す
ることができる。また溶接後において、空洞部の他方側
領域は溶接ビートを介し強固に固定される一方、未溶着
部が一端が空洞部に開口し他端が2つの母材の表面に開
口する空間として残され、空洞部の両端部間から一方側
の領域のみが剛性の弱い領域となるので、構造物全体と
しての剛性の低下を低減することができ、また繰り返し
荷重による疲労破壊を招くことがない。
【0054】また、未溶着部一端の空洞部への開口部分
が、溶接ビートの軸線上から2つの母材のうちいずれか
一方側へずれた位置に配置されているので、溶接時に飛
ぶアークが、反対側の2つの母材の表面に飛散するのを
防止することができる。よって例えば、内部が気密構造
である外壁を大気側から溶接する場合等、アークが内部
に侵入して内部に配置された精密機器等に支障を与える
のを防止できる。さらに、空洞部壁面と2つの母材の表
面との間の肉厚が裏波止端から両端部に向かうほど減少
する傾斜構成となっているので、傾斜していない場合
(例えば水平構成)よりも荷重が小さくなり応力も分散
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例による溶接構造物の側面
図である。
【図2】図1に示す溶接構造物の溶接前の状態を示す側
面図である。
【図3】第1の比較例による溶接構造物の側面図であ
る。
【図4】第2の比較例による溶接構造物の側面図であ
る。
【図5】第3の比較例による溶接構造物の側断面図であ
る。
【図6】第4の比較例による溶接構造物の側断面図であ
る。
【図7】裏波止端から半円弧部の先端までの距離と2つ
の母材の板厚の比と、応力集中係数との関係を示した図
である。
【図8】裏波止端から半円弧部の先端までの距離と2つ
の母材の板厚の比と、曲げコンプライアンスとの関係を
示した図である。
【図9】本発明の第1の実施例の変形例による溶接構造
物の側面図である。
【図10】本発明の第2の実施例による溶接構造物の側
面図である。
【図11】本発明の第2の実施例の変形例による溶接構
造物の側面図である。
【図12】本発明の第3の実施例による溶接構造物の1
つの側面図である。
【図13】本発明の第3の実施例による溶接構造物の1
つの断面図である。
【図14】本発明の第3の実施例による溶接構造物の1
つの側面図である。
【図15】本発明の第3の実施例による溶接構造物の1
つの側面図である。
【図16】本発明の第3の実施例による溶接構造物の1
つの側面図である。
【符号の説明】
1 母材 1A 端面 1B 凹状面 2 母材 2A 端面 2B 凹状面 3 溶接ビート 4 裏波止端 5 空洞部 5a 傾斜部 5b 平行部 6 半円弧部(両端部) 7 先端 8 裏当て金具 9 未溶着部 9a 開口部 100 溶接構造物 150 溶接構造物 200 溶接構造物 210 溶接構造物 310 両側突合せ溶接による溶接構造物 320 管溶接による溶接構造物 330 埋め込み溶接による溶接構造物 340 T字片側溶接による溶接構造物 350 T字両側溶接による溶接構造物 L 裏波止端から半円弧部先端までの距離 p 溶接ビートの軸線 s 空洞部の下側壁面と母材の下側表面との間の肉厚 t 母材の板厚 θ 裏波止端での溶接ビートと空洞部壁面とのなす角度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−95796(JP,A) 特開 昭63−163070(JP,A) 特開 昭62−248584(JP,A) 特開 平2−55680(JP,A) 特開 昭51−151237(JP,A) 特開 昭57−31492(JP,A) 実開 平3−70861(JP,U) 特公 昭56−32073(JP,B2) 実公 昭57−9038(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/00 B23K 9/02 B23K 31/00 B23K 33/00 B23K 37/06

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】凹状面を切り欠き加工した端面を備えた2
    つの母材を、前記凹状面どうしが対向し1つの空洞部を
    形成するように突き合わせ、この突き合わせた2つの母
    材の端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介し対向す
    る未溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方側から溶
    接ビートを充填することにより前記2つの母材を突き合
    わせ溶接した溶接構造物において、 前記空洞部は、それぞれ断面形状が略半円弧形状の両端
    部を備えており、かつその空洞部の壁面は、前記溶接ビ
    ートの前記空洞部壁面との接点である裏波止端と前記略
    半円弧形状の両端部先端との距離をL、前記2つの母材
    の板厚をtとしたとき、0.3≦L/t<0.5となる
    ように構成されており、 前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口し、他端が前
    記2つの母材の表面に開口する空間を形成していること
    を特徴とする溶接構造物。
  2. 【請求項2】凹状面を切り欠き加工した端面を備えた2
    つの母材を、前記凹状面どうしが対向し1つの空洞部を
    形成するように突き合わせ、この突き合わせた2つの母
    材の端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介し対向す
    る未溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方側から溶
    接ビートを充填することにより前記2つの母材を突き合
    わせ溶接した溶接構造物において、 前記空洞部は、それぞれ断面形状が略半円弧形状の両端
    部を備えており、かつその空洞部の壁面は、前記溶接ビ
    ートの前記空洞部壁面との接点である裏波止端と前記略
    半円弧形状の両端部先端との距離をL、前記2つの母材
    の板厚をtとしたとき、0.3≦L/t<0.5となる
    ように構成されており、 前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口し、他端が前
    記2つの母材の表面に開口する空間を形成し、 前記裏波止端での前記溶接ビートと前記空洞部壁面との
    なす角度は、90度より大きいことを特徴とする溶接構
    造物。
  3. 【請求項3】凹状面を切り欠き加工した端面を備えた2
    つの母材を、前記凹状面どうしが対 向し1つの空洞部を
    形成するように突き合わせ、この突き合わせた2つの母
    材の端面のうち前記空洞部の一方側は間隙を介し対向す
    る未溶着部として残しつつ、前記空洞部の他方側から溶
    接ビートを充填することにより前記2つの母材を突き合
    わせ溶接した溶接構造物において、 前記空洞部は、それぞれ断面形状が略半円弧形状の両端
    部を備えており、かつその空洞部の壁面は、前記溶接ビ
    ートの前記空洞部壁面との接点である裏波止端と前記略
    半円弧形状の両端部先端との距離をL、前記2つの母材
    の板厚をtとしたとき、0.3≦L/t<0.5となる
    ように構成されており、 前記未溶着部は、一端が前記空洞部に開口し、他端が前
    記2つの母材の表面に開口する空間を形成し、 前記未溶着部一端の空洞部への開口部分は、前記溶接ビ
    ートの軸線上から前記2つの母材のうちいずれか一方側
    へずれた位置に配置されていることを特徴とする溶接構
    造物。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項記載の溶接構
    造物において、前記空洞部は、該空洞部の前記他方側壁
    面と前記2つの部材の該他方側表面との間の肉厚が、前
    記裏波止端から両端部に向かうほど減少する傾斜部を有
    することを特徴とする溶接構造物。
  5. 【請求項5】請求項記載の溶接構造物において、前記
    空洞部は、該空洞部の前記一方側壁面と前記2つの部材
    の該一方側表面との間の肉厚が、前記裏波止端から両端
    部に向かって一定である平行部をさらに有することを特
    徴とする溶接構造物。
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