JP3176848B2 - 耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装金属板 - Google Patents

耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装金属板

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐ブロッキング性
と加工性に優れる塗装金属板に関する。本発明の塗装金
属板は、家電用途や内装建材に好適であり、さらには器
物用外板としても利用可能である。
【0002】
【従来の技術】塗装を施した金属板の形態の一つとし
て、塗装金属板の市場拡大が昨今激しくなっている。そ
の特徴の一つに、連続コイルでの大量生産による価格の
低減化がある。しかしその出荷形態である連続コイルの
欠点として、ブロッキングの問題がある。ブロッキング
とは、板の表裏が長時間、倉庫などの高温・高湿の環境
下で加圧されることにより、塗膜表面に圧着による柄模
様が出たり、板同士が剥がれにくくなる現象のことであ
る。そこで従来は、塗膜のガラス転移温度(Tg)の高
い樹脂を用いたり、高Tgの樹脂をブレンドして、塗膜
表面の温度依存性を高め、ブロッキング対策としてい
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Tgの
高温化は加工性の低下を招き、実使用上での不具合とな
る。そこで本発明では、高Tg樹脂を塗膜全体に分散さ
せるのではなく、半溶融の形にして塗膜中に局在させる
ことにより、耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装金
属板を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成した本
発明の耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装金属板
は、金属板の少なくとも片面上に、化成処理層、下塗り
被覆層を設け、ポリエステル樹脂と硬化剤と、ガラス転
移温度がポリエステル樹脂のそれよりも20℃以上高
く、且つ塗膜焼成時にポリエステル樹脂とは完全な相溶
状態とならないポリエステルビーズとを含む塗料組成物
を塗布、焼き付けた上塗り被覆層を設けたことを特徴と
する。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、本発明の塗装金属板に用いる金属板として
は、たとえば鋼板、アルミ板、ステンレス板、チタン
板、銅板等が挙げられる。このうち鋼板の例として、冷
延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき
鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミ合金めっ
き鋼板、アルミめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケ
ルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっ
き鋼板等が挙げられる。
【0006】上記金属板の上には化成処理層を設ける。
化成処理層としては、クロメート処理、リン酸亜鉛処
理、複合酸化被膜処理等があり、これらを単独または組
み合わせる。これらの条件は適宜選択すればよい。化成
処理層の上には下塗り被覆層を設ける。下塗り被覆層に
用いる下塗り塗料としては、ポリエステル系、アクリル
系、ウレタン系、エポキシ系や、それぞれの変性系や混
合系など、通常溶剤系塗料に使用されるものであれば特
に限定はしない。また、必須ではないが、色顔料、防錆
顔料、体質顔料、表面修飾した金属粉やガラス粉、分散
剤、レベリング剤、ワックス、骨材、フッ素樹脂ビー
ズ、チタン酸カリウムウイスカー等の添加剤や、希釈溶
剤等を含有させても良い。
【0007】下塗り被覆層の膜厚は特に限定しないが、
2μm以上15μm未満が塗装金属板として一般的であ
る。塗布したあと、150℃以上300℃未満で焼き付
け、硬化乾燥させる。焼き付け温度は、150℃未満で
は塗膜の形成が不十分であり、300℃以上では樹脂成
分の熱劣化が起こり塗膜密着性の低下などから製品とし
て適さない。
【0008】下塗り被覆層の塗布方法や、硬化乾燥方法
は、一般的な溶剤系塗料を用いる場合の塗装、焼付方法
を利用できる。一例として、塗布方法としては、ロール
コーター、ローラーカーテンコーター、カーテンフロー
コーター、静電塗装機、ハケ、ブレードコーター、ダイ
コーター等が利用できる。硬化乾燥方法としては、熱風
炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー
線硬化炉、常温放置等が利用できる。
【0009】下塗り被覆層を設けた上記金属板の上に、
上塗り被覆層を設ける。上塗り被覆層は、樹脂と硬化剤
と、所定のポリエステルビーズとを含んだ塗料組成物に
より形成される。また、必須ではないが、色顔料、色染
料、体質顔料、防錆顔料、表面修飾した金属粉やガラス
粉、分散剤、レベリング剤、ワックス、骨材、フッ素樹
脂ビーズ、チタン酸カリウムウイスカー等の添加剤や、
希釈溶剤等を含有させても良い。
【0010】樹脂としては、高分子化したポリエステル
系樹脂か、その変性体及び複数のポリエステル樹脂を混
合したものであって、通常溶剤系塗料用に使用されるポ
リエステル系樹脂であれば特に限定はしない。なお、樹
脂のTgは特に限定はしないが、Tgが5〜40℃の樹
脂を用いた場合、常温下での加工性が良好であり、特殊
な温度での加工を前提としていない一般的な用途に適し
た塗装金属板を得ることができる。
【0011】上記の樹脂との反応により熱硬化性の樹脂
被膜層を形成させるために使用する硬化剤としては、メ
ラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミ
ノ樹脂、あるいはイソシナネート化合物及びそのブロッ
ク体が好適である。これら硬化剤と樹脂の乾燥塗膜中で
の重量比は、樹脂と硬化剤の総量100重量部に対し
て、硬化剤が5〜30重量部が好ましい。これは、硬化
剤が5重量部以下では、密着性、耐食性が十分発揮され
ず、30重量部以上では加工性、耐薬品性が低下するた
めである。
【0012】さらに、ポリエステルビーズは本発明にお
いて耐ブロッキング性を向上させる必須成分である。こ
のポリエステルビーズとしては、分子量・粒径ともに特
に限定はしないが、平均分子量が1000〜5000、
平均粒径が40μm程度、最大粒径が70μm以下のも
のが好適である。また成膜時にポリエステル樹脂と完全
に相溶や分散せず、塗膜中に局在化することが耐ブロッ
キング性と加工性を両立させることが必須である。その
目安として、ポリエステル樹脂とポリエステルビーズの
それぞれの溶解性パラメータの値(以下、SPと略す)
が離れている場合、成膜時にポリエステルビーズが分散
せずに、局在化しやすい傾向がある。
【0013】ここでSP値とは、分子間力や溶解力、溶
媒効果を表す熱力学的パラメータであり、液体のモル蒸
発エンタルピーをΔHA V 、そのモル容をVA 、熱力学
定数をR、絶対温度をTとしたときに、(ΔHA V −R
T)1/2 A -1/2で表すことができる(参照:学会出版
センター編、大瀧仁志、田中元治、舟橋重信、「溶液反
応の化学」117頁)。特にこのSPの値の差の絶対値
が1.5以上でポリエステル樹脂とポリエステルビーズ
の相互分散が阻害され、ポリエステルビーズを局在化さ
せることができる。
【0014】また、ポリエステルビーズの含有量は特に
限定しないが、乾燥塗膜中に重量比で5〜20重量部含
まれていることが好適である。5部未満では耐ブロッキ
ング性が向上せず、20部以上では成膜後ビーズが塗膜
表面から剥離する現象が起きる。また使用するポリエス
テルビーズのTgは、ポリエステル樹脂のTgよりも2
0℃以上高くすることが必須である。これはTgが20
℃以上高くないと耐ブロッキング性が向上しないためで
ある。またポリエステルビーズが結晶性を有し、その結
晶化の変異点温度が65℃以上である場合には、より一
層の耐ブロッキングを向上させる効果が大きく好適であ
る。
【0015】上塗り被覆層の膜厚は特に限定しないが、
5μm以上20μm未満が塗装金属板として一般的であ
る。膜厚が5μm未満だと色による隠蔽力が不足した
り、耐食性や耐薬品性に劣り不適である。また、膜厚が
20μm以上だと加工性が低下し、やはり不適となる。
上塗り塗料を塗布後、150℃以上300℃未満で焼き
付けて硬化乾燥させる。焼き付け温度は、150℃未満
では塗膜の形成が不十分であり、300℃以上では樹脂
成分の熱劣化が起こり塗膜密着性の低下などから製品と
して適さない。上塗り被覆層の塗布方法や硬化乾燥方法
は、下塗り被覆層の場合と同様な方法を利用することが
できる。
【0016】
【実施例】本発明の塗装金属板の実施例について説明す
る。アルカリ脱脂後クロメート処理した溶融亜鉛めっき
鋼板を基材として用いた。下塗り塗料として、ウレタン
系塗料(FLC641)を用い、乾燥膜厚が4μmとな
るようにバーコーターを用いて塗布し、高周波誘導加熱
法によって、215℃で焼き付けた。次いで、上塗り塗
料として、高分子化ポリエステル樹脂100部に対し
て、メラミン樹脂硬化剤20部で構成される塗料(FL
C3501:Tg=17℃、またはFLC3510:T
g=40℃)を用い、ポリエステルビーズとして変性ポ
リエステルビーズ(A:Tg=45℃で結晶性有り(変
異点67℃)、B:Tg=27℃で結晶性無し、C:T
g=38℃で結晶性無し)を、表1に示すように種々の
量を含ませて塗布した。塗布は、バーコーターを用いて
乾燥塗膜換算で15μmとなるようにし、その後高周波
誘導加熱法によって、230℃で焼き付けた。
【0017】以上のようにして得られた塗装板の耐ブロ
ッキング性を以下の方法で評価した。試験は、塗膜の表
裏を重ね合わせてホットプレス機を用いて50℃雰囲気
下、荷重50kg/cm2 で24時間静置したのちに剥
離テストを行い、塗膜の剥離に要する荷重と、剥離後の
表面塗膜の外観を評価した。剥離荷重が小さいものほど
耐ブロッキングは良好であり、測定限度以下(荷重の表
示が0gで数値的判読が実質上行えない状況)を合格と
した。
【0018】塗膜外観の評点は、◎:跡残り無し、△:
やや跡残りあり、×:跡残りあり、であり、◎を合格と
した。また、加工性の評価としては、20℃の板温下で
の2T曲げを行い、塗膜表面の亀裂や剥離の状態を20
倍ルーペで観測した。その際の評点は、◎:亀裂剥離無
し、△:やや亀裂剥離あり、×:著しい亀裂剥離あり、
であり、◎を合格とした。表1に評価結果を示す。表1
より明らかなように、本発明による塗膜構成とすること
により、耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装金属板
を得ることができる。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】本発明の塗装金属板は、上塗り被覆中の
ポリエステル樹脂に対して特定の性状を有するポリエス
テルビーズを含ませるので、耐ブロッキング性と加工性
に優れる。従って本発明の塗装金属板は長時間コイル状
態で保管されていたとしても、まき直し時に異常な表面
欠陥を生むことなく家電用に広く適用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−52421(JP,A) 特開 平5−301071(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05D 1/00 - 7/26 B32B 15/08,27/36

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板の少なくとも片面上に、化成処理
    層、下塗り被覆層を設け、ポリエステル樹脂と硬化剤
    と、ガラス転移温度がポリエステル樹脂のそれよりも2
    0℃以上高く、且つ塗膜焼成時にポリエステル樹脂とは
    完全な相溶状態とならないポリエステルビーズとを含む
    塗料組成物を塗布、焼き付けた上塗り被覆層を設けたこ
    とを特徴とする耐ブロッキング性と加工性に優れた塗装
    金属板。
  2. 【請求項2】 上塗り被覆層中に含まれるポリエステル
    ビーズが結晶性を有し、その変異点の温度が65℃以上
    であることを特徴とする請求項1記載の塗装金属板。
  3. 【請求項3】 上塗り被覆層中に含まれるポリエステル
    ビーズの溶解性パラメータが、ポリエステル樹脂のそれ
    と1.5以上異なることを特徴とする請求項1または2
    記載の塗装金属板。
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