JP3164320B2 - 水性分散液およびその製造法 - Google Patents

水性分散液およびその製造法

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JP3164320B2 JP5420592A JP5420592A JP3164320B2 JP 3164320 B2 JP3164320 B2 JP 3164320B2 JP 5420592 A JP5420592 A JP 5420592A JP 5420592 A JP5420592 A JP 5420592A JP 3164320 B2 JP3164320 B2 JP 3164320B2
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明正 青山
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寿昭 佐藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エチレン−ビニルアル
コール系共重合体の水性分散液のおよびその製造法に関
し、特に小粒子径で分散安定性さらには造膜性に優れた
水性分散液およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エチレン−ビニルエステル系特に酢酸ビ
ニル共重合体をけん化したエチレン−ビニルアルコール
共重合体(EVOHと略記する)は、酸素等のガスバリ
ヤー性や耐油・耐薬品性に優れているため、包装材料素
材や、プラスチック成形物、金属表面、紙、木材等の保
護被覆用材料として注目されている。
【0003】特に内容物の酸化防止あるいは香りの保持
が必要とされる食品包装用のフイルム、シート、積層
物、中空容器等においては高度のガスバリヤー性が要求
されている。また軟質塩化ビニルからなる塩ビ壁紙、塩
ビレザー、シート等では可塑剤のブリードを防止する被
覆材が要求されている。そこでガスバリヤー性、保香
性、および耐油・耐薬品性に優れたEVOHを外層ある
いは中間層に設けることによってこれらの要求性能を高
度に満たすことが広く実施されている。
【0004】一般にEVOH層を形成する方法として
は、溶融押出あるいは射出成形による方法やEVOHフ
イルムをラミネートする方法等が広く実施されている。
一方EVOHの溶液や水性乳化分散液を塗布し乾燥する
方法が提案されている。この方法は比較的膜厚の薄い皮
膜が形成できること、中空容器等の複雑な形状のものに
も容易に皮膜形成できることなどから注目される。
【0005】しかしながらEVOH溶液を塗布する方法
では基本的に高い濃度の溶液が粘度の関係から使用困難
なこと、溶媒がジメチルスルホキシド等の有機溶媒や多
量のアルコールと水との混合溶媒のため、皮膜形成過程
において有機溶媒の揮散による作業環境の悪化および有
機溶媒の回収のための装置が必要になるなど経済的にも
不利なこと等の問題がある。これに対しEVOH水性分
散液を塗布する方法は溶媒が水系で、上記の作業環境や
経済性の点から有利と考えられ期待される。
【0006】EVOHの水性分散液としては通常のEV
OHを通常の界面活性剤あるいは通常の高分子保護コロ
イド例えばポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセ
ルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルア
ルコール等の共存下分散させたものが、特開昭54−1
01844、特開昭56−61430等で知られてい
る。しかしながら本発明者らの検討によるとこれら公知
の方法で得られたEVOHの水性分散液は分散安定性が
不十分で造膜性も不良であり塗布用として実用が困難で
ある。
【0007】また特開昭54−101844にはアクリ
ル酸やアクリル酸アミドなどのビニルモノマーをエチレ
ン−酢酸ビニルと三元共重合し、けん化して得た、いわ
ゆるランダムに共重合されたランダム共重合体のEVO
Hを通常の界面活性剤を分散安定剤として分散されるこ
とが示されている。
【0008】しかしながら本発明者らの検討によると単
純な三元ランダム共重合EVOHでは分散安定性の向上
は認められず、実用的な分散液は得られなかった。中で
はイオン性基を含有するアクリル酸等を共重合した場合
はそのイオン性基により分散安定性は改善されるが、イ
オン性基がランダムに含有されているため、その含量を
多くしないと分散安定性が十分に達成できず、そうする
とEVOHの結晶性が低下し、構造の乱れが大となりガ
スバリヤー性能が大巾に低下し形成皮膜のバリヤー性が
低くなるなどの欠点があり実用的でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、貯蔵あるい
は使用時の安定性が著しく改善された分散安定性の優れ
た、さらには造膜性にも優れたEVOH系水性分散液お
よびその製造法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、EVOHに
対し特定量のポリビニルアルコール成分(以下PVA成
分と略記する。)がブロック状あるいはグラフト状に結
合された水に不溶性の特定のEVOH系ブロックあるい
はグラフト共重合体を用い自己分散することによって達
成される。
【0011】本発明の最大の特徴はEVOH系水性分散
液の貯蔵あるいは使用時の安定性が著しく改善され分散
安定性に優れ、さらには造膜性にも優れることにある。
元々粒子径の小さいものが得られる上に、分散安定性
が優れ貯蔵あるいは使用時の粒子の凝集による粒子径の
顕著な増大が殆どないため、粒子径の小さいことも大き
な特徴である。この特徴に加えて本発明のEVOH系水
性分散液は造膜性が良好でより薄い皮膜が塗布でき、よ
り低温で成膜し乾燥した皮膜がバリヤー性に優れる。そ
のためより低温で乾燥できる利点がある。
【0012】その理由はよくわからないが、EVOH成
分にPVA成分がブロック状あるいはグラフト状に結合
されている効果によると考えられる。そのPVA成分が
粒子安定化に有効に作用し、またランダム共重合とは異
なりPVA成分がEVOH成分の結晶性をあまり乱さな
いこと、さらには成膜時の分散粒子の融着にも有効に作
用していることが高バリヤー性に寄与しているものと思
われる。
【0013】本発明で使用されるEVOHはPVA成分
(B)がブロック状あるいはグラフト状にエチレン含量
が15〜65モル%、けん化度が90モル%(本発明で
言うけん化度はビニルエステル単位のけん化度を意味す
る。)以上のエチレン−ビニルエステル系共重合体けん
化物成分(A)と結合され、かつ常温で水に不溶性のエ
チレン−ビニルアルコール系ブロックあるいはグラフト
共重合体(以下PVA変性EVOHと総称し、後にブロ
ツク体およびグラフト体をつけて区分する)を包含する
もので、その製造方法等に制限はない。常温で水に不溶
性とは濃度1%で30℃の水に1日溶解した時の不溶解
分が50%以上のものを言う。不溶解分は高い方が好ま
しく、80%以上さらに好ましくは90%以上が望まし
い。
【0014】PVA変性EVOHのEVOH成分(A)
はエチレンと酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビ
ニル、安息香酸ビニル、三フッ化酢酸ビニル、ピバリン
酸ビニル等のビニルエステル、特に酢酸ビニルとを共重
合けん化することにより得られるエチレン−ビニルアル
コール共重合体で、エチレン含量が15〜65モル%、
ビニルエステル単位のけん化度が90モル%以上のもの
である必要がある。15モル%未満では水性分散液の安
定性が不良となりまた65モル%を越えるものはガスバ
リヤー性能が不良となり不適当である。
【0015】水性乳化分散液の安定性とガスバリヤー性
能の点からはエチレン含量は20〜50モル%が好まし
い。またけん化度は90モル%未満になるとのガスバリ
ヤー性が不十分になるので90モル%以上のものを使用
する事が望ましい。けん化度は高い方がバリヤー性能が
高く、望ましくは95モル%以上さらには97モル%以
上が好ましい。
【0016】EVOH成分の重合度は用途に応じて選択
されるが、極端に低いものは生成皮膜の強度が低く好ま
しくないので、通常500以上好ましくは700以上の
ものが使用される。重合度の高いものを水性分散液とし
て使用することは有利であり、通常重合度5000程度
のものまでは使用できる。また必要に応じてエチレンお
よびビニルエステル以外の共重合可能なモノマーを5モ
ル%以下共重合していてもよい。
【0017】PVA成分(B)はビニルエステル特に酢
酸ビニルモノマーを重合し、けん化したポリマー成分
で、けん化度が50モル%以上のものを包含する。けん
化度は好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モ
ル%以上が望ましい。けん化度が50%未満のものは分
散安定化効果が低く不適当である。成分(B)の含有量
は成分(A)100重量部に対して1〜50重量部であ
る必要がある。1重量部未満では水性分散安定性が低く
使用できないし、50重量部よりも多量になると水への
溶解性が大きくなり過ぎて分散安定性が低下するととも
に、形成皮膜の吸水性が大きく湿潤時の性能特にガスバ
リヤー性が低下し不適当である。
【0018】PVA成分にはイオン性基成分を含有させ
ることができる。安定性の点からはイオン性基成分を共
重合等により導入したイオン性PVA変性EVOHが好
ましい。イオン性基を導入することによりPVA成分の
量を少なくすることができ、それによってガスバリヤー
性をより向上させることができる。該PVA成分中のイ
オン性基成分含量は50モル%以下が好ましく、望まし
くは20モル%以下、さらには10モル%以下が好まし
い。下限値は0.5モル%が望ましく、さらには1モル
%が望ましい。
【0019】イオン性基は水中で解離し、イオン性を示
す基、即ちアニオン性基、カチオン性基、両性基を包含
する。中ではアニオン性基、とくにスルホン酸アニオン
性基が好ましい。
【0020】PVA変性EVOHの構造に関しては、い
わゆるブロックあるいはグラフト共重合体であれば特に
制約はなく、以下に模式的に示したジブロック体、トリ
ブロツク体あるいはそれ以上のマルチブロック体、また
EVOH成分(A)にPVA成分(B)がグラフトされ
たグラフト体あるいはPVA成分(B)にEVOH成分
(A)がグラフトされたグラフト体等が挙げられる。ま
たいわゆる星形のものでも良い。
【0021】(a) PVA変性EVOHブロック体
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】(b)PVA変性EVOHグラフト体 oEVOH成分(A)にPVA成分(B)がグラフトさ
れたもの。
【0026】
【化4】 oPVA成分(B)にEVOH成分(A)がグラフトさ
れたもの。
【0027】
【化5】
【0028】PVA変性EVOHの製造方法に制約はな
いが、その例を示すと次のようなものが挙げられる。
【0029】(イ)PVA変性EVOHブロック体 (i)末端にチオール基を有するPVAの存在下に、エ
チレン−ビニルエステル特に酢酸ビニルをラジカル共重
合することにより、PVAポリマーとエチレン−ビニル
エステルコポリマーとのブロツク共重合体を得、次いで
ビニルエステル単位をけん化してビニルアルコール単位
にすることにより、PVAとEVOHとがSを介して結
合したブロック共重合体を得ることができる。
【0030】末端にチオール基を有するPVAはチオ酢
酸のごときチオカルボン酸存在下にビニルエステルモノ
マー特に酢酸ビニルを重合して末端にチオエステル基を
有する該ビニルエステルポリマーを合成し、ついでその
末端チオエステル基を分解してチオール基に変換すると
ともに、ビニルエステル単位をけん化することにより合
成できる。
【0031】(ii)逆にチオ酢酸のごときチオカルボン
酸存在下にエチレン−ビニルエステルをラジカル共重合
し、次いでけん化することにより得られる末端にチオー
ル基を有するEVOH共存下に、ビニルエステルモノマ
ーをラジカル重合することにより、該ビニルエステルポ
リマーとEVOHとがSを介して結合したブロック共重
合体を得ることができる。
【0032】(iii)チオ酢酸のごときチオカルボン酸
存在下にビニルエステルを重合して得られる末端にチオ
酢酸エステル基を有する該エステル重合体を、アンモニ
ア等の弱塩基でけん化することにより末端のチオ酢酸エ
ステル基を優先的にけん化分解して、末端にチオール基
を有する該ビニルエステルポリマーを得る。次いでこの
ポリマー共存下にエチレン−ビニルエステルを共重合
し、得られたビニルエステルポリマーとエチレン−ビニ
ルエステルコポリマーとがSを介して結合したブロック
共重合体をけん化することにより、PVA成分とEVO
H成分とがSを介して結合したブロック共重合が得られ
る。ビニルエステルとエチレン−ビニルエステルの重合
の順序を逆にすることも可能である。
【0033】(iv)ポリパーオキシド例えばポリフタロ
パーオキシドを重合開始剤に用いてエチレンとビニルエ
ステルをラジカル共重合する。次いで得られたパーオキ
シド基を分子内に含有するエチレン−ビニルエステル共
重合体をポリマー開始剤としてビニルエステルモノマー
と接触させて加熱ラジカル重合することによりエチレン
−ビニルエステルコポリマーとビニルエステルポリマー
とのブロック共重合体が得られる。このブロック共重合
体を常法によりビニルエステル単位をけん化してビニル
アルコール単位に変換することによりPVA変性EVO
Hブロック体を得ることができる。
【0034】(v)有機ジスルフィド特にテトラエチル
チウラムジスルフィドを開始剤または連鎖移動剤として
ビニルエステルモノマーを重合し、末端にR2NC(S)S-基
(Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)を有する
ビニルエステルポリマーを合成する。次にこのポリマー
を重合開始剤として光照射重合によりエチレンとビニル
エステルとを共重合することによりビニルエステルポリ
マーとエチレン−ビニルエステルとのブロック共重合体
が得られる。このブロック共重合体を常法によりけん化
してビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換
することによりPVA変性EVOHブロック体を得るこ
とができる。
【0035】(ロ)PVA変性EVOHグラフト体 (a)EVOHに通常の方法、すなわち放射線あるいは
紫外線照射法による方法や過酸化物を共存させる方法等
によりビニルエステルモノマーを重合し、次いでけん化
することにより、EVOHにPVAポリマーがグラフト
されたPVA変性EVOHグラフト体が得られる。
【0036】(b)PVAを含むマクロモノマーとエチ
レンおよびビニルエステルモノマーとをラジカル共重合
する方法、あるいはポリビニルエステルを含むマクロモ
ノマーとエチレン及びビニルエステルモノマーを共重合
し、次いでけん化してビニルエステル単位をビニルアル
コールに変換することにより、EVOHにPVAポリマ
ーがグラフトしたPVA変性EVOHグラフト体が得ら
れる。またPVAとEVOHおよびエチレンおよびビニ
ルエステルとビニルエステルを置き換えることによりP
VA成分にEVOH成分がグラフトしたものが得られ
る。
【0037】このように種々の方法によりPVA変性E
VOHは製造できるが、ブロックあるいはグラフトタイ
プのPVA変性EVOHの生成効率(ブロックあるいは
グラフト効率)は理論的には100%ではなく、各々の
ホモポリマーであるPVAポリマーとEVOHが副生す
る。
【0038】その効率は高い方が好ましいが、副生する
ホモポリマーを厳密に分別区別することが通常困難な事
が多く、またEVOHは分散ポリマーとして利用可能で
あり、PVAポリマーもあまり多量でなければ必ずしも
そのホモポリマーを除去することは必要ではないので、
ホモポリマーが含まれた物をそのまま分散させることが
できる。
【0039】従って、本発明のPVA変性EVOHはそ
の製造時に副生しているPVA成分とEVOHのホモポ
リマーをも包含したブロックあるいはグラフト反応生成
物全体を包含するもので、本発明で言うPVA成分のブ
ロックあるいはグラフト量はEVOH成分の重量に対す
るホモポリマーをも包含した見掛けのブロックあるいは
グラフト成分の重量%を意味するものである。
【0040】しかしながらホモポリマー殊にPVA成分
のホモポリマーの含量は少ない方が好ましく、必要に応
じて除去することは差し支えない。その観点から効率の
高い好ましい製法は(i)、(ii)、(b)が挙げられ
る。
【0041】PVA成分を形成するビニルエステルモノ
マーとしては、重合してけん化することによりビニルア
ルコールに変換できるものが使用できる。例えばギ酸ビ
ニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビ
ニル、安息香酸ビニル、三フッ化酢酸ビニル、等のビニ
ルエステル類が挙げられる。
【0042】PVA成分中にイオン性基を含有する成分
を共重合(ランダム、グラフト、ブロック)あるいは後
反応等の種々の方法で導入することができる。共重合の
方法が簡便で好ましいが、イオン性成分を形成するビニ
ルモノマーとしてはイオン性官能基あるいはイオン性に
変換可能な基を有するラジカル単独あるいは共重合可能
なものが使用出来る。その例を次に例示する。
【0043】oアニオン性基を形成するモノマー 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナ
トリウムのごときアクリアミド系スルホン酸塩モノマ
ー、スチレンスルホン酸カリウムのごときスチレン系ス
ルホン酸塩モノマー、アリルスルホン酸ナトリウムのご
ときアリル系スルホン酸塩モノマーまたビニルスルホン
酸ナトリウムのごときビニルスルホン酸塩モノマー、さ
らにはこれらの酸モノマー等が挙げられる。又これらの
スルホン酸のエステルも重合後エステルをその塩あるい
はその酸に変換することにより使用可能である。
【0044】カルボン酸アニオンモノマーとしてはアク
リル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、
フマル酸などのモノ、ジ、ポリカルボン酸系ビニルモノ
マーやそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられ
る。またこれらのエステル類も重合後エステル基を塩基
に変換することができ、使用可能である。
【0045】oカチオン性基を形成するモノマー アミノプロピルアクリルアミドあるいはメタクリルアミ
ドのごときアミノ基含有(メタ)アクリルアミド系モノ
マー、アミノエチルアクリレートあるいはメタクリレー
トのごときアミノ基含有(メタ)アクリレートあるいは
その塩が重合性も良好で好ましい。特ににその第4級塩
がポリマーの着色も少なく好ましい。例えばトリメチル
アクリルアミドプロピルアンモニウムクロリドやトリエ
チルメタクロイルエチルアンモニウムブロミド等であ
る。
【0046】これらのモノマーは単独で使用することも
また併用することも可能である。また他のイオン性基を
含有しないモノマーを本発明の効果を大幅に損なわない
範囲で共重合することも可能である。
【0047】PVA変性EVOHを分散させる方法には
制限はなく、公知の方法が使用可能である。
【0048】例えばPVA変性EVOHの溶液を非溶剤
である水と撹拌下に接触させて該EVOH粒子を好まし
くは3μ以下、さらに好ましくは2μ以下、最適には1
μ以下の微粒子として析出させ、次いで溶媒を除去する
ことにより水性分散液を得ることができる。
【0049】水性分散液の固形分濃度は製造条件および
使用用途等により適宜決められるが、高濃度でしかも安
定な分散液の得られることが本発明の特徴である。固形
分濃度としては好ましくは10%以上、さらに好ましく
は15%以上、最適には20%以上である。固形分濃度
の上限には特に制限はないが、あまり高濃度になりすぎ
ると水性分散液の放置安定性がやや不良になる場合があ
るので、通常60重量%以下が好ましく、さらに好まし
くは50重量%以下、最適には40重量%以下である。
【0050】溶媒としては、例えばメタノール、エタノ
ール、、プロパノール、ブタノール等の1価アルコー
ル、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2
価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、フェノ
ール、クレゾール等のフェノール類、エチレンジアミ
ン、トリメチレンジアミン等のアミン類、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリド
ン等、あるいはこれらの含水物等が単独あるいは2種以
上混合されて使用できる。特に好ましい溶媒系はアルコ
ール−水系の混合溶媒、例えば水−メタノール、水−ノ
ルマルプロパノール、水−イソプロパノール等である。
【0051】溶媒系の有機溶媒は蒸発法、抽出法あるい
は透析法等の適宜な方法で除去することができる。除去
の程度は高いことが望ましいが、経済性との兼合いで小
割合の有機溶媒を残存させることは可能である。
【0052】また別の方法として、高温では溶解するが
低温にすると不溶になる溶媒系にPVA変性EVOHを
加熱溶解した溶液を冷却することにより、微粒子を析出
分散させる方法も採用できる。しかる後その溶媒を水と
置換することにより水性分散液とすることができる。
【0053】高温で溶解し低温では析出する溶媒系とし
ては先に示した溶媒のうちアルコール類の単独あるいは
水との混合溶媒等が使用出来る。
【0054】さらに別の方法として、PVA変性EVO
Hの溶液を非溶媒と接触させるかあるいは冷却すること
により該EVOHを析出分散させた粒子を濾別し、その
粒子を水中に分散させる方法も可能である。
【0055】本発明の方法で得られた水性分散液は優れ
たガスバリヤー性の皮膜を形成する塗布材料として有用
であるが、その優れた力学的性能や化学的性能を生かし
て、他の用途例えば粉霧乾燥して微粒子粉末にしたり、
また塗料や接着剤のバインダーやビヒクルなど広範囲に
利用できる。
【0056】本発明の水性分散液には、粘度を低下させ
る目的で、電解質(水酸化ナトリウム、塩化ナトリウ
ム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム
などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、塩化カ
ルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カル
シウムなどのアルカリ土金属化合物、その他の電解質)
を、0.01〜0.5重量%(対ポリマー)配合しても
よい。配合は分散質のEVOHを微粒子化する前でも後
でもよい。また本発明の水性分散液には必要に応じて本
発明の目的達成を妨げない範囲で通常の界面活性剤や保
護コロイドを添加することは可能である。また他の樹脂
の水性分散液、光あるいは熱等の安定剤、顔料、滑剤、
防黴剤あるいは造膜助剤などを添加することもできる。
【0057】以下に実施例により具体的に本発明を説明
するが、実施例のみに限定されるものではない。また実
施例中の部は特に指定しないかぎり重量部を示し、混合
溶媒の割合も重量比を示す。
【0058】
【実施例】
実施例1 製造方法例(ロ)−(a)の方法により、エチレン含量
33モル%、けん化度99.6モル%、重合度1000
のEVOH100部に対し、過硫酸カリを触媒として酢
酸ビニルをグラフト重合し、次いでけん化して得たけん
化度96モル%のポリビニルアルコール成分が10部グ
ラフトされたPVA変性EVOHグラフト体(水不溶解
分95%)50部をメタノール200部および水200
部の混合溶媒中に添加し65℃で加熱溶解した。
【0059】この溶液を撹拌下に室温まで冷却したとこ
ろ、安定に分散し均一な分散液がえられた。平均粒子径
は1.0μであった。次いでこの分散液を撹拌下に減圧
蒸発させメタノールを留去した。メタノール留去過程で
も粒子の凝集はほとんどみられず安定で、平均粒子径が
1.0μ、固形分濃度24%の水性分散液を得た。また
放置安定性も良好で、40℃で30日の放置試験でも凝
集はほとんど認められなかった。
【0060】一方比較のために、PVA成分をグラフト
していない元の通常のEVOHのみで乳化分散した場
合、またこれに通常のノニオン界面活性剤のノニルフェ
ニルエーテルのエチレンオキシド付加物、アニオン界面
活性剤のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ある
いは高分子保護コロイドとしてけん化度98モル%、重
合度500のポリビニルアルコールを分散安定剤として
使用し、実施例1と同じ条件で乳化分散を試みたが、い
ずれの場合も加熱溶解した溶液を撹拌下に冷却し粒子が
析出する段階で凝集してしまい、分散液は得られなかっ
た。
【0061】このように本発明のPVA変性EVOHグ
ラフト体を用いるとグラフトされたPVA成分が分散安
定化に格別の効果を示し安定な水性分散液が得られるこ
とがわかる。そして、この水性分散液を二軸延伸ポリプ
ロピレンフイルムのプライマー処理面に塗布して室温で
乾燥したところきれいに造膜し連続塗布膜が形成でき造
膜性に優れることが解った。更に得られた形成皮膜を1
05℃で加熱して十分に乾燥したものの酸素バリヤー性
能を測定したところ酸素透過量が3.0cc/m2.2
4hr・atm(膜厚4μ)(20℃、0%RH)で、
食品包装材として優れた性能を示した。(酸素透過量の
単位は以下同一単位で示す。)
【0062】実施例2 製造方法例(ロ)−(a)の方法により、過硫酸アンモ
ンを触媒として、エチレン含量44モル%、けん化度9
9.6モル%、重合度900のEVOH100部に対
し、けん化度99モル%のPVA成分が15部グラフト
されたPVA変性EVOHグラフト体(水不溶解分92
%)50部を、水/イソプロパノール=40/60混合
溶媒の溶液500部と混合し、撹拌下に70℃に加熱溶
解した。
【0063】次いで該溶液を撹拌下に室温まで冷却した
ところ、粒子径0.8μの安定な分散液を得た。この分
散液を25℃で減圧蒸発させてイソプロパノールを留去
することにより、固形分濃度21%、平均粒子径0.8
μの安定な水性分散液を得た。この水性分散液を実施例
1と同様に塗布乾燥した皮膜(膜厚4μ)の酸素透過量
は6.0で優れていた。
【0064】実施例3 合成方法例(ロ)−(b)の方法により、アクリルアミ
ド型の重合度50のポリ酢酸ビニルのマクロモノマー
{平均構造式CH2=CHCONHCH2CH2S(-CH2CH(OCOCH3)-)50
とエチレンおよび酢酸ビニルとを三元共重合し、次いで
けん化して合成したエチレン含量50モル%、けん化度
98モル%、重合度700のEVOH100部にけん化
度99.4モル%のPVA成分9部がグラフトしたタイ
プのPVA変性EVOHグラフト体(水不溶解分96
%)100部を、イソプロパノール/水=60/40の
混合溶媒500部中に加熱溶解した。この溶液を20℃
に冷却した水200部中に5000rpmで高速撹拌し
ながら滴下したところ均一に分散し安定な分散液を得
た。平均粒子径は0.8μであった。
【0065】次いでこの分散液を20℃で減圧蒸発させ
イソプロパノールを蒸発留去し固形分濃度22%の水性
分散液を得た。この水性分散液の平均粒子径は0.8μ
で減圧蒸発処理による粒子の肥大化はほとんどなく、安
定な水性分散液が得られた。この水性分散液を実施例1
と同様に塗布乾燥した皮膜(膜厚4μ)の酸素透過量は
5で優れていた。
【0066】実施例4 製造方法例(イ)−(i)の方法により、エチレン含量
25モル%、けん化度99.5モル%、重合度900の
EVOH100部に対し、8部のけん化度99.5モル
%のPVA成分がブロック共重合されたPVA変性EV
OHブロック体(水不溶解分97%)100部を、メタ
ノール/水=50/50の混合溶媒900部と混合し7
0℃に加熱溶解した。
【0067】その後撹拌下に室温まで冷却すると粒子が
析出分散した。平均粒子径は0.9μであった。この分
散液を減圧蒸発させることによりメタノールを蒸発留去
し安定な水性分散液を得た。固形分濃度は20%で平均
粒子径は0.9μであった。この水性分散液は40℃で
30日放置しても沈降も粒子の肥大化もほとんど認めら
れず安定性が良好であった。この水性分散液を実施例1
と同様に塗布乾燥した皮膜(膜厚4μ)の酸素透過量は
2.8で優れていた。
【0068】実施例5 製造方法例(イ)−(ii)の方法により、エチレン含量
35モル%、けん化度99.4モル%、重合度1000
のEVOH100部に対し、けん化度99.4モル%の
PVA成分7部がブロック共重合されたPVA変性EV
OHブロック体(水不溶解分98%)100部を、メタ
ノール/水=50/50の混合溶媒900部と混合し7
0℃に加熱溶解した。
【0069】その後撹拌下に室温まで冷却すると粒子が
析出分散した。平均粒子径は0.9μであった。この分
散液を減圧蒸発させることによりメタノールを蒸発留去
し安定な水性分散液を得た。固形分濃度は22%で平均
粒子径は0.9μであった。この水性分散液は40℃で
30日放置しても沈降も粒子の肥大化もほとんど認めら
れず安定性が良好であった。この水性分散液を実施例1
と同様に塗布乾燥して得た皮膜(膜厚4μ)の酸素透過
量は2.7で優れていた。
【0070】実施例6 製造方法例(イ)−(i)の方法により、エチレン含量
38モル%、けん化度99.3モル%、重合度1000
のEVOH100部に対し、2−アクリルアミド−2−
メチルプロパンスルホン酸ナトリウムを3モル%共重合
したけん化度99.3モル%のPVA成分5部がブロッ
ク共重合されたPVA変性EVOHブロック体(水不溶
解分)100部を、メタノール/水=50/50の混合
溶媒800部中に70℃に加熱溶解した。
【0071】次いでこの溶液を撹拌下に室温まで冷却し
たところ安定な分散液を得た。この分散液を室温で減圧
蒸発してメタノールを留去することにより、固形分濃度
25%、平均粒子径0.7μの水性分散液が得られた。
この水性分散液を実施例1と同様に塗布乾燥した皮膜
(膜厚4μ)の酸素透過量は2.5で優れていた。
【0072】実施例7 製造方法例(イ)−(i)の方法により、Sを介してエ
チレン含量38モル%、けん化度99.2モル%、重合
度900のEVOH100部に対して、トリメチルアク
リルアミドプロピルアンモニウムクロリドが4モル%共
重合されたけん化度99.2モル%のPVA成分が5部
ブロック共重合されたPVA変性EVOHブロック体
(水不溶解分96%)100部を用いる以外は、実施例
6と同一条件で分散、メタノール留去することにより、
固形分濃度23%、平均粒子径0.8μの安定な水性分
散液を得た。この水性分散液を実施例1と同様に塗布乾
燥した皮膜(膜厚4μ)の酸素透過量は2.6で優れて
いた。
【0073】実施例8 製造方法例(ロ)−(a)の方法により、過硫酸カリを
触媒として、エチレン含量50モル%、けん化度99.
4モル%、重合度1000のEVOH100部に対し、
けん化度99モル%のPVA成分が20%グラフトされ
たPVA変性EVOH(水不溶解分96%)100部を
エタノール/水=65/35の混合溶媒1000部中に
75℃に加熱溶解した。この溶液を、ノニオン界面活性
剤のポリオキシエチレン(31)ノニルフェニルエーテ
ル(HLB値17.2)を0.5%含有し15℃に冷却
された水100部中に5000rpmの高速撹拌下に滴
下したところ、安定な分散液を得た。平均粒子径は0.
8μであった。
【0074】次いでこの分散液を15℃で減圧蒸発させ
エタノールを蒸発留去して固形分濃度21%の水性分散
液を得た。この水性分散液の平均粒子径は0.8μで減
圧蒸発処理による粒子の肥大化はほとんどなく、安定な
水性分散液が得られた。この水性分散液を実施例1と同
様に塗布乾燥した皮膜(膜厚4μ)の酸素透過量は3.
4で食品包装用としては良好なものであった。
【0075】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のPVA
変性EVOHグラフトあるいはブロック体を分散するこ
とにより、粒子径の小さい貯蔵あるいは使用時の安定性
に優れた高固形分濃度の水性分散液が得られ、さらには
造膜性に優れるためより低い温度でも塗布成膜できる利
点があり、塗布乾燥により優れたガスバリヤー性、保香
性および耐油・耐薬品性を示す薄い皮膜を形成できる有
用な塗布剤として利用できる、工業的価値の高いもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08L 53/00 (72)発明者 廣藤 俐 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (72)発明者 田中 偉業 大阪市北区梅田1丁目12番39号 株式会 社クラレ内 審査官 佐藤 邦彦 (56)参考文献 特開 平5−140239(JP,A) 特開 昭54−101844(JP,A) 特開 平4−225008(JP,A) 特開 昭56−61430(JP,A) 特開 昭63−270714(JP,A) 特開 平4−88042(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 261/02 C08F 293/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレン含量15〜65モル%のエチレ
    ン−ビニルアルコール系共重合体成分と該共重合体成分
    100重量部に対して1〜50重量部のポリビニルアル
    コール成分とがブロック状あるいはグラフト状に結合さ
    れ、かつ常温で水に不溶性の共重合体の水性分散液。
  2. 【請求項2】 エチレン含量15〜65モル%のエチレ
    ン−ビニルアルコール系共重合体成分と該共重合体成分
    100重量部に対して1〜50重量部のポリビニルアル
    コール成分とがブロック状あるいはグラフト状に結合さ
    れ、かつ常温で水に不溶性の共重合体を分散することを
    特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体の水
    性分散液の製造法。
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JP2020037192A (ja) * 2018-08-31 2020-03-12 東ソー株式会社 多層射出成形体
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