JP3155808B2 - 硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法 - Google Patents
硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建材、構造材、断熱材
あるいはその他の用途に利用可能な独立気泡型の硬質ポ
リウレタンフォームに関する。 【0002】詳しくは、フロン規制強化に伴いフロン以
外の発泡剤、例えば水などの発泡剤を使用した時に起こ
る発泡後のフォームの収縮あるいは寸法安定性の問題が
解決された硬質ポリウレタンフォームに関する。 【0003】 【従来の技術】一般的に、硬質ポリウレタンフォーム
は、主原料である少なくとも2個のイソシアネート基を
有するポリイソシアネート化合物、および少なくとも2
個の活性水素含有基を有する活性水素化合物と、副原料
である発泡剤、触媒、整泡剤およびその他の添加剤を混
合し発泡硬化して製造され、建材、軽量構造材、保温保
冷用断熱材など種々の産業分野で使用されている。従
来、ポリウレタンの発泡剤としてはトリクロロフルオロ
メタン(以下フロン-11 という)に代表されるハロゲン
化炭化水素化合物(以下フロンと略称する)が使用され
てきたが、この理由は、フロンが適当な沸点を有しかつ
難燃性のため取扱い易く、また、得られたフォームの性
能が良好であるなど、発泡剤として多くの点で優れてい
るからである。しかしながら、フロンは近年、地球オゾ
ン層の破壊の元凶であることから各国において法的に使
用制限ないし禁止されつつある。このため、ウレタン発
泡体製品の製造においては、フロンの一部ないし全部を
他の発泡剤に切り替える必要がでてきた。ところが、フ
ロンの代わりに主要発泡剤として例えば水を多量に使用
して独立気泡型の硬質ポリウレタンフォームを作ろうと
すると、発泡硬化終了後数日間でフォームが異常に収縮
変形するため、製品としての適用性がなくなり場合によ
っては使用不能となる。 【0004】一般的にポリウレタンフォームは、ポリウ
レタン樹脂内に気泡(以下セルという)を内蔵した構造
を有し、そのセルのひとつひとつが独立した「独立気泡
型」か、連続的につながった「連通気泡型」のどちらか
である。もし、セルが連通気泡であれば内部のガスはこ
の気泡を通して容易に外部の空気と徐々に交換されてい
くが、反対にセルが独立気泡であればガスはセル内に残
留しやすい。上記のような異常収縮が起こるメカニズム
は、本発明者らの実験から次のように推定される。すな
わち、水発泡により得られた独立気泡型のセル内には発
泡直後に炭酸ガスが残留するが、元来、炭酸ガスはポリ
ウレタン樹脂との親和性が良くガス透過係数が大きいた
め炭酸ガスはセル内部と大気中の炭酸ガス分圧の差によ
ってセル膜を通して徐々に外部へ透過して排出され、一
方、外部からは透過係数の低い空気は侵入してこないの
で、結局、セル内部は減圧となりフォームは収縮する。
このような独立気泡型のフォームに特有な異常収縮は、
イソシアネートと水の反応の結果生成する炭酸ガス、あ
るいは予めポリオールまたはイソシアネートに溶解させ
た炭酸ガスだけに特有の現象ではなく、他にもポリウレ
タン樹脂を透過しやすい発泡剤であればどんなものでも
起こりうる。あるいはまた、比較的沸点が高い発泡剤の
場合でも、発泡硬化後に自然冷却により発泡剤ガスがセ
ル内部で凝縮液化して内部が減圧になり異常収縮がおこ
ることがある。このように収縮はいずれの場合もセル内
部が減圧となった時に外部から空気が侵入しないために
起こる。 【0005】さて、独立気泡型の硬質ポリウレタンフォ
ームの製造方法におけるこのような異常収縮の解決に関
する方法が記載されている文献・特許の先例は少ない。
特公昭61-29609号公報には、低分子量ポリオール中でエ
チレン性不飽和モノマーを重合させて得られたポリオー
ル(以下ポリマーポリオールという)を使用して、低温
寸法安定性の改良された独立気泡型の硬質ポリウレタン
フォームを製造する方法が記載されている。しかしなが
ら、この方法は、一般的にポリオールの粘度が高くなり
イソシアネートとポリオールの混合が不良となったり、
ベースとなる低分子量ポリオール、モノマーの種類およ
び重合条件をうまく選ばないと生成ポリマーポリオール
中でポリマー分が分離しやすいなどの問題がある。一
方、連通気泡型の硬質ポリウレタンフォームを製造する
方法はいくつか提案されている。例えば、特開昭49-105
899 号公報には石油系油状炭化水素化合物を、特開昭57
-80436号公報には高級脂肪酸の金属塩やアマイド類を、
特開昭63-89519号公報には酸性リン酸エステルの金属塩
を使用する方法が記載されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】独立気泡型の硬質ポリ
ウレタンフォームを製造するに際して、水などのある種
の発泡剤を使用すると、発泡硬化終了後にフォームの異
常収縮を引き起こす。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、フォーム
生成後に異常収縮が起こらず寸法安定性が良好な独立気
泡型の硬質ポリウレタンフォームを見出すべく鋭意検討
した結果、ある種の有機フィラーを添加混合して発泡す
ることにより異常収縮を防止でき、しかも微細かつ均一
なセル状態の維持された新規な硬質ポリウレタンフォー
ムを見出した。すなわち本発明は、(a) 少なくとも2個
のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
を含む成分、および、(b) 少なくとも2個の活性水素含
有基を有する活性水素化合物を含む成分、との少なくと
も2成分と、(c) 収縮防止剤としての1〜30μmの平
均粒径を有するポリエチレン微粉末、を含む組成物を発
泡剤を用いて発泡硬化させて得られる独立気泡型の硬質
ポリウレタンフォームに関する。 【0008】以下に本発明の方法について詳細に説明す
る。本発明で定義する独立気泡型の硬質ポリウレタンフ
ォームとは、セルの独立気泡率(以下独泡率という)が
50%以上の硬質ポリウレタンフォームである。さら
に、本発明で定義する独泡率とは、通常硬質ポリウレタ
ンフォームでよく用いられている測定方法、すなわち、
「空気式見掛け容積測定器」を使用してASTM D-2856 に
記載の方法により測定される見掛け容積率(%)であ
る。 【0009】本発明の方法において使用される成分(c)
のポリエチレン微粉末は、平均粒径が1〜30μmであ
る。粒径がこれより大きくても、また、小さくても収縮
防止の効果はなくなる。その使用量は、請求項第1項記
載のイソシアネート化合物を含む成分(a) および活性水
素化合物を含む成分(b) の総重量100部に対して0.
1〜1.5部であることが好ましい。この量より少ない
と収縮防止効果が弱くなり、反対にこれより多いと独泡
率を50%以上に保つことができなくなる。これらの収
縮防止剤がもたらす収縮防止効果は、上記のような限ら
れた条件の場合にのみ得られる。その特徴は、発泡ガス
と外部空気が徐々に交換するがそれでいてセルの50%
以上は独立気泡であることにある。従ってその収縮防止
の効果は、収縮防止剤の添加によって発泡過程で非常に
微細な空隙が個々のセル膜の中に作られた結果と考えら
れる。 【0010】本発明の方法において使用される発泡剤
は、発泡硬化後にフォームが収縮するような特定の発泡
剤である。代表例としては、例えば、水および炭酸ガス
があるが、それら以外にも、ポリウレタン樹脂との親和
性が良いもの、あるいは高沸点のハロゲン化炭化水素化
合物がある。すなわち、メチレンクロライド、クロロジ
フルオロメタン(以下フロン-22 と略称する)、ジクロ
ロトリフルオロエタン(以下フロン-123と略称する)、
ジクロロフルオロエタン(以下フロン-141と略称す
る)、トリクロロトリフルオロエタン(以下フロン-113
と略称する)、クロロジフルオロエタン(以下フロン-1
42と略称する)などである。しかし、この他にも収縮を
引き起こす発泡剤であれば何であっても良い。これらの
発泡剤は、ある程度以上の使用量であれば収縮の原因に
なるので、上記発泡剤以外に収縮の原因とならない他の
発泡剤(例えばフロン-11 )を併用する場合も本発明の
方法に含まれる。 【0011】本発明の方法において使用される成分(a)
中の少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイ
ソシアネート化合物は、従来より硬質ポリウレタンフォ
ームで通常使用されているものを使用する。具体的に
は、4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネート(以下
4,4'-MDI という)、2,4'- ジフェニルメタンジイソシ
アネート(以下 2,4'-MDI という)、2,4-ジイソシアネ
ートトルエン(以下 2,4-TDIという)、2,6-ジイソシア
ネートトルエン(以下 2,6-TDIという)、およびこれら
の2量体、3量体または多量体、あるいはそれらの混合
物である粗製TDI 、粗製MDI と称されるもの、並びにこ
れらの混合物も含まれる。またポリオールやアミン、メ
ルカプタンなどのイソシアネートと反応する活性水素化
合物と上記イソシアネートとの反応物であるイソシアネ
ートプレポリマーなども含まれる。 【0012】本発明において使用される成分(b) の活性
水素化合物とは、OH基、1級アミノ基、2級アミノ基
およびSH基などの活性水素含有基を少なくとも2個有
する化合物である。具体的には、通常、分子内に水酸基
を2個以上有しかつ水酸基価が200 〜600 mg-KOH/gの低
分子量化合物である。このような化合物は、例えば、開
始剤である低分子量の活性水素化合物にアルキレンオキ
サイドを付加させて得られる。さらに具体的には、例え
ば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロール
プロパン、ペンタエリスリトール、α- メチルグリコシ
ド、ソルビトール、庶糖などのような低分子量のポリオ
ール(開始剤)、あるいは、エチレンジアミン、ジエチ
レントリアミン、ピペラジン、4,4'- ジアミノジフェニ
ルメタン(4,4'-MDA)、2,4'- ジアミノジフェニルメタン
(2,4'-MDA)、2,4-ジアミノトルエン(2,4-TDA) 、2,6-ジ
アミノトルエン(2,6-TDA) などのアミン化合物(開始
剤)に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、
ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加
して得られるポリエーテルポリオールがある。あるい
は、水酸基価が上記の範囲外にある低分子量または高分
子量のポリオールであっても、上記ポリオールに多すぎ
ない量を混合することにより使用可能である。具体的に
は、低分子量ポリオールとしては、上記のポリオールの
開始剤があり、高分子量ポリオールとしては上記のよう
な開始剤にプロピレンオキサイドやエチレンオキサイド
を付加重合して得られる高分子量ポリエーテルポリオー
ルがある。さらにまた、低分子量または高分子量の1級
または2級アミノ基を含有する化合物も上記のポリオー
ルに混合して使用することが可能である。その他、ウレ
タン樹脂の製造で使用しうる低分子量のポリオールであ
ればどんなものでも使用可能である。具体的にはアジピ
ン酸などのジカルボン酸と低分子量グリコールのエステ
ル化により得られるポリエステルポリオール、あるいは
テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテト
ラメチレンエーテルグリコールがある。さらにSH基含
有活性水素化合物として、具体的に、チオグリコール、
あるいはβ−メルカプトプロピオン酸とペンタエリスリ
トールのエステル化により得られるメルカプタンなどが
ある。 【0013】本発明の方法において使用される触媒とし
ては、従来より硬質ポリウレタンフォームで通常使用さ
れているものを使用する。具体的には、トリエチレンジ
アミン、テトラメチルプロパンジアミン、ペンタメチル
ジエチレントリアミンなどの3級アミンや、ジブチルチ
ンジラウレート、スタナスオクトエートなどの金属触
媒、オクチル酸カリウム、酢酸カリウムなどのイソシア
ネートの3量化触媒(イソシアヌレート化触媒)などが
ある。 【0014】本発明の方法において使用される整泡剤と
しては、通常よく使用されている硬質ポリウレタンフォ
ーム用のシリコーン誘導体(アルキレンオキサイド変性
ポリジメチルシロキサンで末端にアルコキシ基または活
性のOH基などを有する)が使用される。また、ポリオ
キシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレン
牛脂アルキルアミン、長鎖脂肪酸アルキロールアマイド
など、いわゆるノニオン系の界面活性剤も整泡剤として
使用可能である。 【0015】本発明の硬質ポリウレタンフォームを製造
する方法としては、従来から硬質フォームの製造で慣用
されているすべての方法が適用可能である。最も簡便な
方法としては、前記ポリオール、触媒、整泡剤、収縮防
止剤および発泡剤を予め混合しておいた混合物(プレミ
ックスレジン)と、有機ポリイソシアネートを6000〜90
00rpm の高速回転ラボスターラーで強力攪拌混合し、特
定容器中で発泡させる方法がある。しかし、実際の生産
方法としては、市販のウレタン用高圧発泡機で上記2液
を衝突混合して型の中に注入する方法である。高圧発泡
機としては例えば丸加化工機(株)社製HK−270な
ど数多くの機械が市販されている。 【0016】本発明の方法で得られる硬質ポリウレタン
フォームは、従来の方法では発泡硬化終了後に異常な収
縮を起こすような発泡剤、例えば水や炭酸ガスを使用し
ても高い独泡率を維持しつつ収縮は起こらない。また、
前述の特許に記載されている石油系油状炭化水素化合物
などを使用するとセルが非常に荒れるが、本発明の方法
では、セル荒れは起こらず本来のきれいなセル状態を維
持できる。 【0017】 【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明す
る。使用原料 ポリオールA;トリエタノールアミンと庶糖にプロピレ
ンオキサイドを付加して得られる水酸基価が370 mg-KOH
/gのポリオール。 ポリオールB;ペンタエリスリトール、グリセリンおよ
びトリエタノールアミンにそれぞれプロピレンオキサイ
ドを付加して得られるポリオールを60:20:20重量比で混
合した水酸基価が388 mg-KOH/gのポリオール。 シリコーン整泡剤;日本ユニカー(株)社製のポリジメ
チルシロキサン誘導体でL-5340。 触媒A;花王(株)製のカオライザーNo-1でN,N,N',N'-
テトラメチルヘキサメチレンジアミン。 触媒B;花王(株)製のカオライザーNo-3でN,N,N',N",
N"- ペンタメチルジエチレントリアミン。 フロン11;三井デュポンフロロケミカル(株)社製のト
リクロロフルオロメタン。フロン123 ;三井デュポンフ
ロロケミカル(株)社製のジクロロトリフルオロエタ
ン。 フロン113 ;三井デュポンフロロケミカル(株)社製の
トリクロロトリフルオロエタン。 コスモネートM-200 ;三井東圧化学(株)社製のポリイ
ソシアネートで、粗製MDI。NCO%=31.0 。 収縮防止剤A;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フロービーズLE-1080 。平均粒径6 μm。 収縮防止剤B;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フローセンUF-1.5。平均粒径10〜20μm。 収縮防止剤C;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フローセンUF-20 。平均粒径20〜30μm。 粗粒PE粉末;三井石油化学(株)製の平均粒径が約20
0 μmのポリエチレン粉末。 【0018】実施例-1〜9 第1表に示されるポリオールレジン原料(グラム単位で
記載)を1リッターのポリプロピレン製カップに入れて混合
後、さらにイソシアネートM-200 をインデックスが110
となるように加え、高速回転ラボスターラーで5000〜70
00rpm で約5秒間高速攪拌混合し、この混合物を立法形
の紙袋がしかれた木製の匡体(20cm ×20cm×20cm) の中
にすばやく入れポリウレタンの発泡を行った。1日後に
生成フォームをスリッターで10cm立法に切断し密度(単
位はKg/ )を調べた。また、ベックマン東芝(株)社
製のベックマン型空気式見掛け比重計を用いてASTM D-2
856 の方法に従って独泡率(単位は%)を調べた。さら
にその後数ヶ月後までフォームの異常収縮の程度を調べ
た。この結果、いずれの実施例でもフォームの異常収縮
は全くみられなかった。 【0019】比較例-1〜4 収縮防止剤を添加せずに実施例と同様の方法でポリウレ
タンの発泡を行った。この結果、いずれもフォーム切断
後3日後から異常収縮が見られ1週間後にはフォームは
約2/3に収縮していた。比較例-5 実施例で使用したPE微粉の代わりに粒径の粗いPE粉
末を使用して実施例と同様の方法でポリウレタンの発泡
を行ったところ3日後から収縮が始まった。 【0020】 【表1】【0021】 【発明の効果】本発明の収縮防止剤を使用することによ
り収縮の起こらない微細なセルの独立気泡型の硬質ポリ
ウレタンフォームを得ることができる。
あるいはその他の用途に利用可能な独立気泡型の硬質ポ
リウレタンフォームに関する。 【0002】詳しくは、フロン規制強化に伴いフロン以
外の発泡剤、例えば水などの発泡剤を使用した時に起こ
る発泡後のフォームの収縮あるいは寸法安定性の問題が
解決された硬質ポリウレタンフォームに関する。 【0003】 【従来の技術】一般的に、硬質ポリウレタンフォーム
は、主原料である少なくとも2個のイソシアネート基を
有するポリイソシアネート化合物、および少なくとも2
個の活性水素含有基を有する活性水素化合物と、副原料
である発泡剤、触媒、整泡剤およびその他の添加剤を混
合し発泡硬化して製造され、建材、軽量構造材、保温保
冷用断熱材など種々の産業分野で使用されている。従
来、ポリウレタンの発泡剤としてはトリクロロフルオロ
メタン(以下フロン-11 という)に代表されるハロゲン
化炭化水素化合物(以下フロンと略称する)が使用され
てきたが、この理由は、フロンが適当な沸点を有しかつ
難燃性のため取扱い易く、また、得られたフォームの性
能が良好であるなど、発泡剤として多くの点で優れてい
るからである。しかしながら、フロンは近年、地球オゾ
ン層の破壊の元凶であることから各国において法的に使
用制限ないし禁止されつつある。このため、ウレタン発
泡体製品の製造においては、フロンの一部ないし全部を
他の発泡剤に切り替える必要がでてきた。ところが、フ
ロンの代わりに主要発泡剤として例えば水を多量に使用
して独立気泡型の硬質ポリウレタンフォームを作ろうと
すると、発泡硬化終了後数日間でフォームが異常に収縮
変形するため、製品としての適用性がなくなり場合によ
っては使用不能となる。 【0004】一般的にポリウレタンフォームは、ポリウ
レタン樹脂内に気泡(以下セルという)を内蔵した構造
を有し、そのセルのひとつひとつが独立した「独立気泡
型」か、連続的につながった「連通気泡型」のどちらか
である。もし、セルが連通気泡であれば内部のガスはこ
の気泡を通して容易に外部の空気と徐々に交換されてい
くが、反対にセルが独立気泡であればガスはセル内に残
留しやすい。上記のような異常収縮が起こるメカニズム
は、本発明者らの実験から次のように推定される。すな
わち、水発泡により得られた独立気泡型のセル内には発
泡直後に炭酸ガスが残留するが、元来、炭酸ガスはポリ
ウレタン樹脂との親和性が良くガス透過係数が大きいた
め炭酸ガスはセル内部と大気中の炭酸ガス分圧の差によ
ってセル膜を通して徐々に外部へ透過して排出され、一
方、外部からは透過係数の低い空気は侵入してこないの
で、結局、セル内部は減圧となりフォームは収縮する。
このような独立気泡型のフォームに特有な異常収縮は、
イソシアネートと水の反応の結果生成する炭酸ガス、あ
るいは予めポリオールまたはイソシアネートに溶解させ
た炭酸ガスだけに特有の現象ではなく、他にもポリウレ
タン樹脂を透過しやすい発泡剤であればどんなものでも
起こりうる。あるいはまた、比較的沸点が高い発泡剤の
場合でも、発泡硬化後に自然冷却により発泡剤ガスがセ
ル内部で凝縮液化して内部が減圧になり異常収縮がおこ
ることがある。このように収縮はいずれの場合もセル内
部が減圧となった時に外部から空気が侵入しないために
起こる。 【0005】さて、独立気泡型の硬質ポリウレタンフォ
ームの製造方法におけるこのような異常収縮の解決に関
する方法が記載されている文献・特許の先例は少ない。
特公昭61-29609号公報には、低分子量ポリオール中でエ
チレン性不飽和モノマーを重合させて得られたポリオー
ル(以下ポリマーポリオールという)を使用して、低温
寸法安定性の改良された独立気泡型の硬質ポリウレタン
フォームを製造する方法が記載されている。しかしなが
ら、この方法は、一般的にポリオールの粘度が高くなり
イソシアネートとポリオールの混合が不良となったり、
ベースとなる低分子量ポリオール、モノマーの種類およ
び重合条件をうまく選ばないと生成ポリマーポリオール
中でポリマー分が分離しやすいなどの問題がある。一
方、連通気泡型の硬質ポリウレタンフォームを製造する
方法はいくつか提案されている。例えば、特開昭49-105
899 号公報には石油系油状炭化水素化合物を、特開昭57
-80436号公報には高級脂肪酸の金属塩やアマイド類を、
特開昭63-89519号公報には酸性リン酸エステルの金属塩
を使用する方法が記載されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】独立気泡型の硬質ポリ
ウレタンフォームを製造するに際して、水などのある種
の発泡剤を使用すると、発泡硬化終了後にフォームの異
常収縮を引き起こす。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、フォーム
生成後に異常収縮が起こらず寸法安定性が良好な独立気
泡型の硬質ポリウレタンフォームを見出すべく鋭意検討
した結果、ある種の有機フィラーを添加混合して発泡す
ることにより異常収縮を防止でき、しかも微細かつ均一
なセル状態の維持された新規な硬質ポリウレタンフォー
ムを見出した。すなわち本発明は、(a) 少なくとも2個
のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
を含む成分、および、(b) 少なくとも2個の活性水素含
有基を有する活性水素化合物を含む成分、との少なくと
も2成分と、(c) 収縮防止剤としての1〜30μmの平
均粒径を有するポリエチレン微粉末、を含む組成物を発
泡剤を用いて発泡硬化させて得られる独立気泡型の硬質
ポリウレタンフォームに関する。 【0008】以下に本発明の方法について詳細に説明す
る。本発明で定義する独立気泡型の硬質ポリウレタンフ
ォームとは、セルの独立気泡率(以下独泡率という)が
50%以上の硬質ポリウレタンフォームである。さら
に、本発明で定義する独泡率とは、通常硬質ポリウレタ
ンフォームでよく用いられている測定方法、すなわち、
「空気式見掛け容積測定器」を使用してASTM D-2856 に
記載の方法により測定される見掛け容積率(%)であ
る。 【0009】本発明の方法において使用される成分(c)
のポリエチレン微粉末は、平均粒径が1〜30μmであ
る。粒径がこれより大きくても、また、小さくても収縮
防止の効果はなくなる。その使用量は、請求項第1項記
載のイソシアネート化合物を含む成分(a) および活性水
素化合物を含む成分(b) の総重量100部に対して0.
1〜1.5部であることが好ましい。この量より少ない
と収縮防止効果が弱くなり、反対にこれより多いと独泡
率を50%以上に保つことができなくなる。これらの収
縮防止剤がもたらす収縮防止効果は、上記のような限ら
れた条件の場合にのみ得られる。その特徴は、発泡ガス
と外部空気が徐々に交換するがそれでいてセルの50%
以上は独立気泡であることにある。従ってその収縮防止
の効果は、収縮防止剤の添加によって発泡過程で非常に
微細な空隙が個々のセル膜の中に作られた結果と考えら
れる。 【0010】本発明の方法において使用される発泡剤
は、発泡硬化後にフォームが収縮するような特定の発泡
剤である。代表例としては、例えば、水および炭酸ガス
があるが、それら以外にも、ポリウレタン樹脂との親和
性が良いもの、あるいは高沸点のハロゲン化炭化水素化
合物がある。すなわち、メチレンクロライド、クロロジ
フルオロメタン(以下フロン-22 と略称する)、ジクロ
ロトリフルオロエタン(以下フロン-123と略称する)、
ジクロロフルオロエタン(以下フロン-141と略称す
る)、トリクロロトリフルオロエタン(以下フロン-113
と略称する)、クロロジフルオロエタン(以下フロン-1
42と略称する)などである。しかし、この他にも収縮を
引き起こす発泡剤であれば何であっても良い。これらの
発泡剤は、ある程度以上の使用量であれば収縮の原因に
なるので、上記発泡剤以外に収縮の原因とならない他の
発泡剤(例えばフロン-11 )を併用する場合も本発明の
方法に含まれる。 【0011】本発明の方法において使用される成分(a)
中の少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイ
ソシアネート化合物は、従来より硬質ポリウレタンフォ
ームで通常使用されているものを使用する。具体的に
は、4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネート(以下
4,4'-MDI という)、2,4'- ジフェニルメタンジイソシ
アネート(以下 2,4'-MDI という)、2,4-ジイソシアネ
ートトルエン(以下 2,4-TDIという)、2,6-ジイソシア
ネートトルエン(以下 2,6-TDIという)、およびこれら
の2量体、3量体または多量体、あるいはそれらの混合
物である粗製TDI 、粗製MDI と称されるもの、並びにこ
れらの混合物も含まれる。またポリオールやアミン、メ
ルカプタンなどのイソシアネートと反応する活性水素化
合物と上記イソシアネートとの反応物であるイソシアネ
ートプレポリマーなども含まれる。 【0012】本発明において使用される成分(b) の活性
水素化合物とは、OH基、1級アミノ基、2級アミノ基
およびSH基などの活性水素含有基を少なくとも2個有
する化合物である。具体的には、通常、分子内に水酸基
を2個以上有しかつ水酸基価が200 〜600 mg-KOH/gの低
分子量化合物である。このような化合物は、例えば、開
始剤である低分子量の活性水素化合物にアルキレンオキ
サイドを付加させて得られる。さらに具体的には、例え
ば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロール
プロパン、ペンタエリスリトール、α- メチルグリコシ
ド、ソルビトール、庶糖などのような低分子量のポリオ
ール(開始剤)、あるいは、エチレンジアミン、ジエチ
レントリアミン、ピペラジン、4,4'- ジアミノジフェニ
ルメタン(4,4'-MDA)、2,4'- ジアミノジフェニルメタン
(2,4'-MDA)、2,4-ジアミノトルエン(2,4-TDA) 、2,6-ジ
アミノトルエン(2,6-TDA) などのアミン化合物(開始
剤)に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、
ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加
して得られるポリエーテルポリオールがある。あるい
は、水酸基価が上記の範囲外にある低分子量または高分
子量のポリオールであっても、上記ポリオールに多すぎ
ない量を混合することにより使用可能である。具体的に
は、低分子量ポリオールとしては、上記のポリオールの
開始剤があり、高分子量ポリオールとしては上記のよう
な開始剤にプロピレンオキサイドやエチレンオキサイド
を付加重合して得られる高分子量ポリエーテルポリオー
ルがある。さらにまた、低分子量または高分子量の1級
または2級アミノ基を含有する化合物も上記のポリオー
ルに混合して使用することが可能である。その他、ウレ
タン樹脂の製造で使用しうる低分子量のポリオールであ
ればどんなものでも使用可能である。具体的にはアジピ
ン酸などのジカルボン酸と低分子量グリコールのエステ
ル化により得られるポリエステルポリオール、あるいは
テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテト
ラメチレンエーテルグリコールがある。さらにSH基含
有活性水素化合物として、具体的に、チオグリコール、
あるいはβ−メルカプトプロピオン酸とペンタエリスリ
トールのエステル化により得られるメルカプタンなどが
ある。 【0013】本発明の方法において使用される触媒とし
ては、従来より硬質ポリウレタンフォームで通常使用さ
れているものを使用する。具体的には、トリエチレンジ
アミン、テトラメチルプロパンジアミン、ペンタメチル
ジエチレントリアミンなどの3級アミンや、ジブチルチ
ンジラウレート、スタナスオクトエートなどの金属触
媒、オクチル酸カリウム、酢酸カリウムなどのイソシア
ネートの3量化触媒(イソシアヌレート化触媒)などが
ある。 【0014】本発明の方法において使用される整泡剤と
しては、通常よく使用されている硬質ポリウレタンフォ
ーム用のシリコーン誘導体(アルキレンオキサイド変性
ポリジメチルシロキサンで末端にアルコキシ基または活
性のOH基などを有する)が使用される。また、ポリオ
キシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレン
牛脂アルキルアミン、長鎖脂肪酸アルキロールアマイド
など、いわゆるノニオン系の界面活性剤も整泡剤として
使用可能である。 【0015】本発明の硬質ポリウレタンフォームを製造
する方法としては、従来から硬質フォームの製造で慣用
されているすべての方法が適用可能である。最も簡便な
方法としては、前記ポリオール、触媒、整泡剤、収縮防
止剤および発泡剤を予め混合しておいた混合物(プレミ
ックスレジン)と、有機ポリイソシアネートを6000〜90
00rpm の高速回転ラボスターラーで強力攪拌混合し、特
定容器中で発泡させる方法がある。しかし、実際の生産
方法としては、市販のウレタン用高圧発泡機で上記2液
を衝突混合して型の中に注入する方法である。高圧発泡
機としては例えば丸加化工機(株)社製HK−270な
ど数多くの機械が市販されている。 【0016】本発明の方法で得られる硬質ポリウレタン
フォームは、従来の方法では発泡硬化終了後に異常な収
縮を起こすような発泡剤、例えば水や炭酸ガスを使用し
ても高い独泡率を維持しつつ収縮は起こらない。また、
前述の特許に記載されている石油系油状炭化水素化合物
などを使用するとセルが非常に荒れるが、本発明の方法
では、セル荒れは起こらず本来のきれいなセル状態を維
持できる。 【0017】 【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明す
る。使用原料 ポリオールA;トリエタノールアミンと庶糖にプロピレ
ンオキサイドを付加して得られる水酸基価が370 mg-KOH
/gのポリオール。 ポリオールB;ペンタエリスリトール、グリセリンおよ
びトリエタノールアミンにそれぞれプロピレンオキサイ
ドを付加して得られるポリオールを60:20:20重量比で混
合した水酸基価が388 mg-KOH/gのポリオール。 シリコーン整泡剤;日本ユニカー(株)社製のポリジメ
チルシロキサン誘導体でL-5340。 触媒A;花王(株)製のカオライザーNo-1でN,N,N',N'-
テトラメチルヘキサメチレンジアミン。 触媒B;花王(株)製のカオライザーNo-3でN,N,N',N",
N"- ペンタメチルジエチレントリアミン。 フロン11;三井デュポンフロロケミカル(株)社製のト
リクロロフルオロメタン。フロン123 ;三井デュポンフ
ロロケミカル(株)社製のジクロロトリフルオロエタ
ン。 フロン113 ;三井デュポンフロロケミカル(株)社製の
トリクロロトリフルオロエタン。 コスモネートM-200 ;三井東圧化学(株)社製のポリイ
ソシアネートで、粗製MDI。NCO%=31.0 。 収縮防止剤A;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フロービーズLE-1080 。平均粒径6 μm。 収縮防止剤B;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フローセンUF-1.5。平均粒径10〜20μm。 収縮防止剤C;住友精化(株)製のポリエチレン微粉で
フローセンUF-20 。平均粒径20〜30μm。 粗粒PE粉末;三井石油化学(株)製の平均粒径が約20
0 μmのポリエチレン粉末。 【0018】実施例-1〜9 第1表に示されるポリオールレジン原料(グラム単位で
記載)を1リッターのポリプロピレン製カップに入れて混合
後、さらにイソシアネートM-200 をインデックスが110
となるように加え、高速回転ラボスターラーで5000〜70
00rpm で約5秒間高速攪拌混合し、この混合物を立法形
の紙袋がしかれた木製の匡体(20cm ×20cm×20cm) の中
にすばやく入れポリウレタンの発泡を行った。1日後に
生成フォームをスリッターで10cm立法に切断し密度(単
位はKg/ )を調べた。また、ベックマン東芝(株)社
製のベックマン型空気式見掛け比重計を用いてASTM D-2
856 の方法に従って独泡率(単位は%)を調べた。さら
にその後数ヶ月後までフォームの異常収縮の程度を調べ
た。この結果、いずれの実施例でもフォームの異常収縮
は全くみられなかった。 【0019】比較例-1〜4 収縮防止剤を添加せずに実施例と同様の方法でポリウレ
タンの発泡を行った。この結果、いずれもフォーム切断
後3日後から異常収縮が見られ1週間後にはフォームは
約2/3に収縮していた。比較例-5 実施例で使用したPE微粉の代わりに粒径の粗いPE粉
末を使用して実施例と同様の方法でポリウレタンの発泡
を行ったところ3日後から収縮が始まった。 【0020】 【表1】【0021】 【発明の効果】本発明の収縮防止剤を使用することによ
り収縮の起こらない微細なセルの独立気泡型の硬質ポリ
ウレタンフォームを得ることができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
C08L 75:04
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08J 9/02
C08L 75/04 - 75/12
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a) 少なくとも2個のイソシアネート基
を有するポリイソシアネート化合物を含む成分、およ
び、(b) 少なくとも2個の活性水素含有基を有する活性
水素化合物を含む成分、との少なくとも2成分と、(c)
収縮防止剤としての1〜30μmの平均粒径を有するポ
リエチレン微粉末、を含む組成物を発泡剤を用いて発泡
硬化させて得られる独立気泡型の硬質ポリウレタンフォ
ーム。 【請求項2】 ポリエチレン微粉末の使用量が上記成分
(a) および(b) の合計重量100部に対して0.1〜
1.5部である請求項第1項記載の硬質ポリウレタンフ
ォーム。 【請求項−3】 発泡剤が、水、炭酸ガス、メチレンク
ロライド、クロロジフルオロメタン、ジクロロトリフル
オロエタン、ジクロロフルオロエタン、トリクロロトリ
フルオロエタン、クロロジフルオロエタンより選ばれた
少なくとも1種類である請求項第1項記載の硬質ポリウ
レタンフォーム。 【請求項4】 成分(b) および/または成分(a) に成分
(c) をあらかじめ混合し、しかる後に成分(a) および成
分(b) を高速攪拌混合した後、特定容器内に注入して発
泡し硬化させることを特徴とする請求項第1項記載の硬
質ポリウレタンフォームの製造方法。 【請求項5】 成分(b) および/または成分(a) に成分
(c) をあらかじめ混合し、しかる後に成分(a) および成
分(b) を高圧発泡機で衝突混合した後、特定容器内に注
入して発泡し硬化させることを特徴とする請求項第1項
記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
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JP05787292A JP3155808B2 (ja) | 1992-03-16 | 1992-03-16 | 硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法 |
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JPH05255466A JPH05255466A (ja) | 1993-10-05 |
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US9447227B2 (en) * | 2013-10-03 | 2016-09-20 | Sabic Global Technologies B.V. | Flexible polyurethane foam and associated method and article |
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1992
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