JP3146359B2 - 超微粒子酸化マンガン粉体及びその製造方法 - Google Patents

超微粒子酸化マンガン粉体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超微粒子の一次粒
子から成るマンガン酸化物粉体に関するものである。さ
らに詳しくは、本発明は、平均の一次粒子径が50nm
以下の酸化マンガン(MnO2 、Mn2 3 、Mn3
4 等の少なくとも一種類以上を含有)微粒子から成る酸
化マンガン粉体及びその製造方法に関するものである。
本発明の酸化マンガン粉体は、半導体、ハードディス
ク、表示器具等の部品、ガラス等の表面研磨等に用いる
研磨用の粉体として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】従来、製品の表面を滑らかにするために
用いられる研磨用の粉体としては、硬くて安定な化合物
であるダイアモンド、SiC、Al23 、ZrO2
が用いられてきた。しかし、これらの粉体は、硬度が高
すぎるため研磨面にキズをつけやすいこと、研磨後の研
磨面からの除去が困難であること等の問題がある。半導
体、ハードディスク、表示器具等の部品、ガラス等の表
面研磨等に用いるものとしては、高純度のヒュームドシ
リカ等の微粒子粉体や酸化セリウム等の微粉体が利用さ
れているが、これらの研磨粉体にも研磨後の粒子の除去
に問題がある。酸化セリウム粉体を用いたものは研磨速
度が優れているが、純度、面精度の要求を満たすには問
題があり、面精度を高めるには、粒子径を小さくすれば
よいが、粒子径が小さくなると研磨面に付着し易くなる
ためにその除去が困難になると言う問題がある。
【0003】ところで、従来は、研磨用粉体の製造には
機械的方法が適用されてきた。しかし、通常よく行われ
ている機械的粉砕による場合、粒子径が小さくなるほど
粉砕は困難となり、超微粒子まで粉砕することは事実上
不可能である。また、粉砕に伴う不純物の混入が増大す
ると言う欠点もある。このようなことから、化学的純度
が高くて、粒子径の小さい微粒子から成る粉体をつくる
には大変な苦労がいるが、化学的純度が高くて、粒子径
の小さい、粒度分布の揃った粉体をつくるには機械的粉
砕によらない他の方法を確立しなければならない。即
ち、粒子径が小さくなるほど粉砕は困難となり、超微粒
子まで粉砕することは事実上不可能である。また、粉砕
に伴う不純物の混入が増大すると言う欠点もある。従っ
て、機械的粉砕法以外で、化学的純度が高くて、一次粒
子径が超微粒子で、二次粒子径も比較的小さい、ほぐれ
易い粉体を効率よくつくる方法を開発しなければならな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、次のような
課題、即ち、一次粒子径が50nm以下の超微粒子から
成る粉体であること、二次粒子である凝集粒子の径は1
μm以下であること、凝集の強さは余り強くないこと、
比較的柔らかな物質から成る粉体で、研磨後の研磨面か
らの除去が容易であること、安価な粉体であること等の
課題を解決することを目標として鋭意研究を積み重ねた
結果、特定の化学的プロセスにより所望の粉体を製造で
きることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明
は、化学的純度が高くて、一次粒子径が超微粒子で、二
次粒子径も比較的小さい、ほぐれ易い粉体を化学的プロ
セスにより効率よく製造する方法を提供するものであ
る。また、本発明は、上記方法により得られる、平均の
一次粒子径が50nm以下の酸化マンガン(MnO2
Mn23 、Mn34 等の少なくとも一種類以上を含
有)微粒子から成る酸化マンガン粉体を提供するもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)化学的方法により作製して成るマンガン酸化物の
粉体であって、マンガンイオンを含む溶液からアンモニ
ア性アルカリ溶液、過酸化水素溶液等の添加により水酸
化マンガンを生成させた後、この沈殿を母液から分離
し、この沈殿を有機溶剤に分散させた後、120℃以下
で乾燥、粉砕することにより得られる、以下の特性; (1)平均の一次粒子径が50nm以下の超微粒子であ
る、 (2)一次粒子が凝集してできた二次粒子の径が1μm
以下である、 (3)一次粒子同士の凝集でできた二次粒子はほぐれ易
い、 (4)研磨用の超微粒子粉体である、 を有する酸 化マンガン(MnO2 、Mn23 、Mn3
4 等の少なくとも一種類以上を含有)微粒子から成る
ことを特徴とする酸化マンガン粉体。 (2)前記(1)記載の酸化マンガン粉体を製造する方
法であって、マンガンイオンを含む溶液からアンモニア
性アルカリ溶液、過酸化水素溶液等の添加により水酸化
マンガンを生成させた後、この沈殿を母液から分離し、
この沈殿を有機溶剤に分散させた後、120℃以下で乾
燥、粉砕することを特徴とする酸化マンガン粉体の製造
方法。
【0006】
【発明の実施の形態】次に、さらに本発明について詳細
に説明する。本発明は、上記の諸課題を解決するため
に、以下の技術的手段を採用した。本発明では、研磨剤
の物質としては酸化マンガンを利用した。本発明の酸化
マンガン粉体は、酸化マンガン(MnO2 、Mn2
3 、Mn34 等の内の少なくとも一種類以上を含
有)微粒子から成る粉体であり、詳しくは、平均の一次
粒子径が50nm以下の微粒子から成る微粒子粉体であ
り、また、一次粒子が比較的ゆるく凝集してできた凝集
粒子である二次粒子の径が1μm以下である粉体であ
る。本発明は、上記のような特性を有する超微粒子酸化
マンガン粉体をつくって、これを研磨粉として利用しよ
うとするものである。
【0007】前述のように、従来は、研磨用粉体の製造
には機械的方法が適用されてきたが、しかし、通常よく
行われている機械的粉砕による場合、粒子径が小さくな
るほど粉砕は困難となり、超微粒子まで粉砕することは
事実上不可能であり、また、粉砕に伴う不純物の混入が
増大すると言う欠点もある。本発明において、比較的柔
らかい酸化マンガンを研磨用の物質として選んだのは、
研磨のときに研磨面にキズをつけにくいことと、酸化マ
ンガンは容易に研磨面から溶解除去することができるこ
とからである。次に、研磨粉としての必要な特性は一次
粒子径が小さいことである。これは、研磨面の面精度は
粒子径に大きく依存するからである。また、二次粒子径
も同様に面精度に影響を及ぼすためできるだけ小さいほ
うがよいが、少なくとも1μm以下が要求される。研磨
面に当たる粒子の粒子径が小さい方が面精度が向上する
のであるから、二次粒子の粒子径もできるだけ小さいほ
うが望まれるのは当然である。
【0008】しかし、微粒子の凝集は避けることができ
ないのであるから、二次粒子径もできるだけ小さいもの
が望まれることとなる。さらに、二次粒子に望まれるの
は、一次粒子の凝集の結果が二次粒子であるから、一次
粒子同士の凝集の強さができるだけ弱いことである。で
きるだけほぐれ易い二次粒子が望まれるのであるが、ほ
ぐれ易さはその粉体の製造方法に依存するところが非常
に大きいのである。これらのことから、本発明では、従
来の機械的方法によらないで上記したような諸課題に応
えられる粉体の製造法として化学的方法を考えた。
【0009】本発明は、化学的プロセスにより酸化マン
ガン粉体を作製するものであり、マンガンイオンを含有
する溶液にアンモニアアルカリ性溶液、過酸化水素溶液
等を加えることにより沈殿をつくり、この沈殿を母液か
ら分離し、この沈殿を有機溶剤と充分に混合の後、乾燥
し、乾燥後にほぐして粉体とすることを特徴とするもの
である。本発明において、マンガンの出発原料として
は、炭酸マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガンを用い
て、これらを溶解してマンガンイオンを含む溶液とす
る。マンガンイオンを含有する溶液に充分に沈澱の生成
するまでアンモニア溶液を加え、必要により、過酸化水
素溶液を加えるが、これはマンガンイオンを酸化して、
Mn3+、Mn4+等にするためである。アンモニアの添加
で生成してできた沈澱を母液から分離した後、有機溶剤
と充分に混合した後、120℃以下で加熱乾燥する。充
分に乾燥してからほぐして粉体とする。この場合、12
0℃以下の低い温度で処理することが重要であり、これ
により、ほぐれ易い粉体を得ることができる。有機溶剤
としては、アルコール類等の水溶性のものならよい。上
記プロセスにより、一次粒子径が50μm以下の酸化マ
ンガン粒子から成る粉体が得られる。
【0010】本発明は、酸化マンガンの微粒子粉体を研
磨用に利用するものであるが、この粉体は、上記に記述
したように、酸化マンガン(MnO2 、Mn23 、M
3 4 等の内の少なくとも一種類以上を含有)微粒子
から成る粉体であり、詳しくは、平均の一次粒子径が5
0nm以下の微粒子から成る微粒子粉体である。また、
一次粒子が比較的ゆるく凝集してできた凝集粒子である
二次粒子の径が1μm以下である粉体である。酸化マン
ガンの超微粒子粉体は、従来から利用されてきたダイア
モンド粉、アルミナ粉、SiC粉、ZrO2 粉等と比べ
て比較的柔らかいものである。研磨面のキズをできるだ
け避けるには柔らかい粒子の粉体がよいことが知られて
いる。さらに、超微粒子になると、粒子が研磨面と化学
的に結合して分離を繰り返すことにより研磨を促進する
ことが知られている。この現象を化学・機械研磨(Ch
emical Mechanical Polishi
ng)と呼んでいる。このように、酸化マンガンの微粒
子粉体は研磨特性が従来の粉体のものに比べて良い。本
発明では、このような超微粒子から成る酸化マンガンの
粉体をつくるために前項に記載したような化学的手法を
応用した。
【0011】本発明の酸化マンガン粉体の特性を以下に
示す。 (1)化学的純度が高い。 (2)一次粒子径が50nm以下の超微粒子である。 (3)一次粒子の粒子径はほぼ揃っている。 (4)一次粒子が凝集してできた二次粒子の径が1μm
以下である。 (5)一次粒子同士の凝集でできた二次粒子はほぐれ易
い。 上記(1)については、それを裏付ける証拠として、本
発明の方法により作製した酸化マンガン粉体の純度を分
析電子顕微鏡で調べた結果を図1に示す。この図でM
n、O以外のC、Cn、Si等のピークは装置に由来す
るものである。この結果から、本発明の方法による酸化
マンガン粉体の不純物は、0.1%以下と考えられる。
また、上記(2)、(3)、(4)については、後記す
る実施例1に示したように、透過型電子顕微鏡で撮影し
た結果から裏付けられる。即ち、電子顕微鏡写真(図
2)から、50nm以下の粒子が凝集していることが分
かる。また、電子顕微鏡写真(図3)から、凝集粒子の
大きさは明らかに1μm以下であることが分かる。さら
に、上記(5)については、上記電子顕微鏡写真をみる
と一次粒子同士がかなりの隙間を持ちながら凝集してい
ることから、明らかにほぐれ易い粉体であると判断され
る。本発明では、低い温度で乾燥しているので、粒子同
士の結合が弱く、凝集も弱くてほぐれ易いものとなる。
【0012】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体
的に説明するが、以下の実施例は本発明の好適な例を示
すものであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限
定されるものではない。 実施例1 (1)粉体の調製 マンガンイオンを含有する溶液に充分に沈殿の生成する
までアンモニア溶液を加えた後、過酸化水素溶液を加え
て沈殿の色を黒色にした。沈殿を母液から分離の後、エ
タノールを沈殿と同等量以上加えてから充分に撹拌の
後、120℃以下でゆっくり乾燥し、乾燥後は軽くほぐ
して粉体とした。
【0013】(2)結果 一次粒子径10nm以下のMn23 とMn34 の混
合粉体を得た。二次粒子径は、0.5μm以下であっ
た。上記(1)により調製した酸化マンガン粉体を透過
型電子顕微鏡で撮影した写真を図2〜3に示す。
【0014】実施例2 上記実施例1において、過酸化水素溶液とアンモニアを
加える順序を逆にし、以下は同様の手順で粉体を得た。
一次粒子径20nm以下、二次粒子径0.5μm以下の
無定形酸化マンガン粉体を得た。
【0015】実施例3 上記実施例1において、過酸化水素溶液を加えずに以下
は同様に処理して粉体を得た。一次粒子径20nm以
下、二次粒子径0.5μm以下のMn34 の粉体を得
た。
【0016】
【発明の効果】本発明は、平均の一次粒子径が50nm
以下の酸化マンガン(MnO2 、Mn2 3 、Mn3
4 等の少なくとも一種類以上を含有)微粒子から成るこ
とを特徴とする酸化マンガン粉体及びその製造方法に係
るものであり、本発明により、1)研磨用粉体として有
用な超微粒子酸化マンガン粉体を提供することができ
る、2)化学的純度が高くて、粒子径の小さい、粒度分
布の揃った粉体を製造することができる、3)従来の機
械的粉砕法によらない、新しい化学的方法による粉体の
製法を提供することができる、4)上記粉体は、半導
体、ハードディスク、表面器具等の部品、ガラス等の表
面研磨等に用いる研磨用の粉体として有用である、とい
う格別の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分析電子顕微鏡による酸化マンガン中の検出元
素を示す。
【図2】本発明の実施例1の粉体の透過型電子顕微鏡写
真を示す。
【図3】本発明の実施例1の粉体の透過型電子顕微鏡写
真を示す。
フロントページの続き (72)発明者 文 柱 昊 愛知県名古屋市名東区藤森西町508 ロ イヤルハイツ301号 (56)参考文献 特開2000−211923(JP,A) 特開 平10−203826(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 45/02 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学的方法により作製して成るマンガン
    酸化物の粉体であって、マンガンイオンを含む溶液から
    アンモニア性アルカリ溶液、過酸化水素溶液等の添加に
    より水酸化マンガンを生成させた後、この沈殿を母液か
    ら分離し、この沈殿を有機溶剤に分散させた後、120
    ℃以下で乾燥、粉砕することにより得られる、以下の特
    性; (1)平均の一次粒子径が50nm以下の超微粒子であ
    る、 (2)一次粒子が凝集してできた二次粒子の径が1μm
    以下である、 (3)一次粒子同士の凝集でできた二次粒子はほぐれ易
    い、 (4)研磨用の超微粒子粉体である、 を有する 酸化マンガン(MnO2 、Mn23 、Mn3
    4 等の少なくとも一種類以上を含有)微粒子から成る
    ことを特徴とする酸化マンガン粉体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の酸化マンガン粉体を製造
    する方法であって、マンガンイオンを含む溶液からアン
    モニア性アルカリ溶液、過酸化水素溶液等の添加により
    水酸化マンガンを生成させた後、この沈殿を母液から分
    離し、この沈殿を有機溶剤に分散させた後、120℃以
    下で乾燥、粉砕することを特徴とする酸化マンガン粉体
    の製造方法。
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