JP3145574B2 - セラミック抵抗体 - Google Patents

セラミック抵抗体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒータ材料、真空管外
囲管や半導体製造装置における帯電除去材料、ウエハ搬
送用アーム、ウエハハンドリング用治具などに適した窒
化アルミニウムを主体とするセラミック抵抗体に関す
る。
【0002】
【従来技術】従来より、絶縁性のセラミックスの電気抵
抗を調整するための方法としては、絶縁性セラミックス
に対して、導電性材料を添加して抵抗値を制御すること
が一般に行われている。例えば、アルミナに対して窒化
チタンを添加して電気抵抗を小さくすることが行われて
いる。
【0003】一方、窒化アルミニウムは、非酸化性セラ
ミックスの1種であり、構造材料や高温材料としての応
用が期待され、最近では耐プラズマに対しても優れた耐
久性を有することが報告されている。よって、この窒化
アルミニウムを静電チャックなど半導体製造装置内の部
品としての応用が考慮されている。しかしながら、この
窒化アルミニウム自体、高絶縁材料であり、室温でも1
16Ω−cm以上の抵抗値を有するために実用化には至
っていないのが現状である。
【0004】このような窒化アルミニウムに対しても、
電気抵抗を小さくする試みが行われている。例えば、窒
化アルミニウムや窒化ホウ素の絶縁性セラミックスに対
してもAlなどの導電性材料を添加して比抵抗を調整す
ることが特開昭56ー4509号に提案されている。ま
た、薄膜状セラミックスにおいては、例えば窒化アルミ
ニウムに金属アルミニウムを分散させて抵抗温度係数の
小さな薄膜抵抗体を得ることも特公昭55ー50364
号に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】一般に、絶縁体の体
積固有抵抗値は温度とともに低下する傾向にあるが、例
えば窒化アルミニウムの場合には室温で1016Ω−cm
から600℃で107 Ω−cm以下まで激減する傾向に
ある。そのため、室温から高温まで使用する場合、安定
した動作をすることができないために、使用することが
できないか、使用温度条件に制限があるなどの問題があ
った。
【0006】また、導電性材料を加えることにより電気
抵抗を制御する方法においては、導電性材料自体の特性
により、絶縁性セラミックスが本来有する特性が損なわ
れるなどの問題があった。例えば、耐食性や耐久性に欠
けたり、窒化アルミニウムの特性が劣化したりした。
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、上記問
題点に対して特に電気抵抗が1014Ω−cm以下のセラ
ミック抵抗体としてその組成および組織の観点から検討
を重ねた結果、例えば化学気相合成法により形成された
窒化アルミニウムを主成分とする絶縁体中に酸素を0.
005〜20原子%含有させ、そして、その酸素を窒化
アルミニウム結晶中に固溶させて窒化アルミニウムの格
子定数を特定の範囲に制御することによって、絶縁層の
体積固有抵抗が1014Ω−cm以下の範囲に調整でき、
かつ温度変化が小さく広い温度域において安定した材料
特性が得られることを見いだし本発明に至った。
【0008】即ち、本発明のセラミック抵抗体は、窒化
アルミニウム結晶相を主体とするセラミック抵抗体であ
って、該抵抗体中に酸素が0.005〜20原子%存在
し、前記結晶相における格子定数がa軸で3.105〜
3.117Å、c軸で4.973〜4.990Åである
とともに、25℃における体積固有抵抗が1014Ω−c
m以下であることを特徴とするものである。
【0009】以下、本発明を詳述する。本発明における
セラミック抵抗体は、窒化アルミニウムを主体とするも
のであるが、組成上、酸素原子を0.005〜20原子
%含有するものである。この酸素量は、窒化アルミニウ
ムに対して導電性を付与するための重要な元素であり、
この酸素量が0.005原子%より少ないと所望の抵抗
が得られず、20原子%を越えると、絶縁体であるAl
ONが生成しやすくなり抵抗制御が難しくなり、また薄
膜においては剥離やクラックが発生しやすくなる。
【0010】また、このセラミック抵抗体は、組織上、
窒化アルミニウム結晶を主体とするものであるが、この
抵抗体中の酸素の一部は窒化アルミニウム結晶中に固溶
するが、この結晶中に固溶しきれない酸素により酸化ア
ルミニウムまたは酸窒化アルミニウムからなる相が12
重量%以下の割合で存在する場合もある。また、窒化ア
ルミニウム結晶は、酸素の固溶により格子定数がa軸で
3.105〜3.117Å、c軸で4.973〜4.9
90Åの範囲にあるもので、窒化アルミニウム単体から
なる結晶の格子定数(a軸3.120Å、c軸4.99
4Å)とは明らかに異なる格子定数を有するものであ
り、言い換えれば、窒化アルミニウム単体の格子定数に
対してa軸で0.003〜0.015Å小さく、c軸で
0.004〜0.021Å小さくなる。
【0011】本発明のセラミック抵抗体は、上記の構成
により25℃において1014Ω−cm以下の体積固有抵
抗を有するもので、その下限値はおよそ10Ω−cmで
ある。しかも、この抵抗体は後述する実施例から明らか
なように、室温から400℃までの温度領域において、
25℃の抵抗値に対する変化が3桁以下の優れた抵抗安
定性を有することも大きな特徴である。
【0012】本発明のセラミック抵抗体を製造する方法
としては、上記の構成を満足する限りにおいて格別その
製法を限定するものではないが、その製造の容易性の点
で、特に気相成長法が好ましく、具体的には、スパッタ
リング、イオンプレーティングなどの物理気相合成法
(PVD法)や、プラズマCVD、光CVD、MO(M
etal−organic)CVDなどの化学気相合成
法(CVD法)により形成されるが、これらの中でもC
VD法がよい。これらの成膜法によれば、酸素を過剰に
固溶させた窒化アルミニウムを合成でき、本発明により
採用される酸素を0.01〜20原子%含有して窒化ア
ルミニウム結晶の格子定数の小さいセラミック抵抗体を
得ることができる。CVD法を用いた具体的な製法とし
ては、原料ガスとしてN2 ガス、NH3 ガス、NO2
よびAlCl3 ガスを用い、これらのガスの流量比をN
2 /AlCl3 =5〜70、NO2 /NH3 =0.00
1〜1、NH3 /AlCl3 =0.1〜10とし、成膜
温度を850℃以上の比較的高めに設定することにより
作製することができる。
【0013】一方、膜を形成する基体としては、あらゆ
るものが使用できるが、具体的にはAl2 3 、AlO
N、Si3 4 、ダイヤモンド、ムライト、ZrO2
W、Mo、Mo−Mn、TiN、SiC、WC、カーボ
ンやSi半導体材料(n型あるいはp型)も挙げられる
が、これらの中でも窒化アルミニウムを主体とする焼結
体が最も望ましい。
【0014】
【作用】通常、窒化アルミニウムは体積固有抵抗1014
Ω−cmを越える高絶縁体であるが、その窒化アルミニ
ウム結晶中に酸素を固溶させて窒素を酸素で置換させる
と、電子が1個過剰となりこれが導電性に寄与し結晶の
導電率を高める作用となすものと考えられる。また、窒
化アルミニウム結晶への酸素の固溶は格子定数の変化に
より判定できる。例えば、酸素を含まない窒化アルミニ
ウムの格子定数はa軸で3.120Å、c軸で4.99
4Åであるが、酸素原子が固溶するに従い、a軸、c軸
とも小さくなる。そして格子定数をa軸で3.105〜
3.117Å、c軸で4.973〜4.990Åにする
と体積固有抵抗を1014Ω−cm以下に制御することが
できる。
【0015】しかも本発明のセラミック抵抗体は温度に
対する抵抗変化が小さく、例えば、一般的窒化アルミニ
ウムの場合、室温(25℃)から400℃までの温度範
囲では1016Ω−cmから1010Ω−cmまで変化する
のに対して、本発明のセラミック抵抗体ではおよそ10
13Ω−cmから1011Ω−cmまでと3桁以下しか変化
しないという特徴を有するものであり、少なくとも室温
から400℃まで安定な抵抗特性を有するものである。
【0016】従って、室温から高温まで安定した抵抗が
必要とされる半導体製造装置中の静電チャックなどの用
途に対しては特に有用性が高いものである。
【0017】
【実施例】
実施例1 窒化アルミニウム質焼結体からなる基体表面に化学気相
合成法によってAlN膜を形成した。AlN膜の成膜
は、基体を外熱式によって900℃に加熱した炉に入
れ、窒素を8SLM、アンモニアを1SLM、0〜0.
5SLMのN2 Oガスを流して圧力を50torrとし
た。さらに、塩化アルミニウム(AlCl3)を0.3
SLMの流量で導入して反応を開始し、450μmの膜
厚の膜を形成した。得られた膜に対してX線回折法でS
i(SRM640b)を標準試料として角度補正を行
い、ピークトップ法により算出した。測定面指数は(1
00)、(002)、(101)、(102)、(11
0)、(103)、(112)、(004)であった。
【0018】
【表1】
【0019】表1の結果から明らかなように、窒化アル
ミニウム中の酸素原子量および格子定数はN2 O流量に
よって変化し、N2 Oを全く導入せず、酸素原子量も不
純物レベルの0.0001原子%の場合には、体積固有
抵抗も9×1015Ω−cmと高絶縁性であったが、N2
Oの流量を徐々に増加させるに伴い、膜中の酸素原子量
が増加するとともに、格子定数も次第に小さくなり、体
積固有抵抗も30Ω−cmまで低下した。
【0020】なお、得られた窒化アルミニウム膜はX線
回折測定から(002)に配向するAlN膜であった。
しかし、透過型電子顕微鏡観察ではアルミナ結晶相が存
在しており、その量はN2 O流量と相関がみられた。ま
た、アルミニウム、酸素および窒素が検出される結晶相
もわずかに見いだされた。
【0021】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、窒
化アルミニウム中の酸素量及び格子定数を制御すること
により、室温における体積固有抵抗が1014Ω−cm以
下で、かつ温度変化の小さな抵抗体を得ることができ
る。したがって、窒化アルミニウムの特性、例えば耐食
性を失うことなく抵抗値を変化できる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−53203(JP,A) 特開 昭63−58706(JP,A) 特開 平4−53202(JP,A) 特開 昭61−100901(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01C 7/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化アルミニウム結晶相を主体とするセラ
    ミック抵抗体であって、該抵抗体中に酸素が0.005
    〜20原子%存在し、前記結晶相における格子定数がa
    軸で3.105〜3.117Å、c軸で4.973〜
    4.990Åであるとともに、25℃における体積固有
    抵抗が1014Ω−cm以下であることを特徴とするセラ
    ミック抵抗体。
  2. 【請求項2】前記抵抗体が化学気相合成法により形成さ
    れたものである請求項1記載のセラミック抵抗体。
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