JP3152847B2 - 静電チャック - Google Patents

静電チャック

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造装置等にお
いてウエハを静電的に吸着保持して処理したり、搬送す
るための静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、半導体製造用装置において、シ
リコンウエハ等の半導体を成膜やエッチングするために
はシリコンウエハの平坦度を保ちながら保持する必要が
あるが、このような保持手段としては機械式、真空吸着
式、静電吸着式が提案されている。これらの保持手段の
中で静電的にシリコンウエハを保持することのできる静
電チャックはシリコンウエハの加工を行うに際して要求
される加工面の平坦度や平向度を容易に実現することが
でき、さらにシリコンウエハを真空中で加工処理するこ
とができるため、半導体の製造に際して最も多用されて
いる。
【0003】従来の静電チャックは、電極板の上にアル
ミナ、サファイヤ等からなる絶縁層を形成したもの(特
開昭60ー261377号)、絶縁性基体の上に導電層
を形成しその上に絶縁層を形成したもの(特開平4ー3
4953号)、絶縁性基体内部に導電層を組み込んだも
の(特開昭62ー94953号)などが提案されてい
る。
【0004】近年、半導体素子の集積回路の集積度が向
上するに従い、静電チャックの精度が高度化し、さらに
耐食性、耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れたセラミックス製
静電チャックが要求されるようになってきた。特に窒化
アルミニウムは他のセラミックス材料に比べて耐プラズ
マ性に優れていることから、これを用いた静電チャック
が検討されている。
【0005】一般に絶縁体の体積固有抵抗値は温度が上
昇するに伴い低下する傾向にある。
【0006】例えば窒化アルミニウムの場合には室温で
1016Ω−cmの抵抗値が300℃で1012Ω−cm以
下にまで減少し、残留吸着などの問題が発生して安定し
た動作を得るのは困難であり、使用温度に制限があっ
た。また、室温以下では1016Ω−cm以上の抵抗を有
するため、実用上必要とされる吸着力が得られないなど
の問題があった。
【0007】そこで、特開平2ー160444号には絶
縁層を2層以上積層するとともにそれぞれの層に対応す
る電極層及び電気回路、スイッチングを設けて、室温か
ら400℃までの使用に耐えられるような構造が提案さ
れている。また、特開平4ー300137号には静電チ
ャック内にヒータ、熱電対などの温度検出器を取付け、
外部に制御部を設けて温度変化にともなって電源部を制
御して吸着力を安定させ、使用温度範囲を広げることも
提案されている。さらに、特開平5ー315435号で
は誘電体層を複数の抵抗率の異なる材質で形成し、使用
温度によって電圧印加の切り替えを行う方法が提案され
ている。
【0008】
【発明が解決しようとする問題点】静電チャックの表面
を形成する誘電性絶縁体として、主として窒化アルミニ
ウムやアルミナなどが検討されているが、従来のこれら
の誘電性絶縁体では、室温から高温まで安定した吸着力
を得るには至っておらず、上述のように静電チャックの
構造を変えたり、電気的な制御により使用できる温度範
囲を広げようとする方法では、電気回路も複雑となり、
静電チャック自体の構造が複雑になるために製造工程が
煩雑であり、そのために製品の信頼性が低下したり、コ
ストが高くなるといった欠点があった。
【0009】また、ヒータを内蔵してその温度を検知
し、印加電圧を制御する方法においても静電チャック内
に熱電対などの温度検知器を内蔵するために検知器が故
障すると使用不可能になるという問題があり、またこの
方法においてもセラミック材料の持つ特性は本質的に変
化しないことから、その使用範囲には自ずと限界があっ
た。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、上記問
題点に対して静電チャックの表面を形成するセラミック
抵抗体層について特に静電チャックを構成する材料の観
点から検討を重ねた結果、所定の基体表面に窒化アルミ
ニウム結晶相を主相とするセラミック抵抗体層を形成
し、その抵抗体層中にSiやCなどの周期律表第4b族
元素を所定量含有せしめ、窒化アルミニウム結晶相の格
子定数を特定の範囲に制御することにより、室温(25
℃)において体積固有抵抗が107 〜1013Ω−cmの
抵抗を有するとともに少なくとも0℃から300℃まで
の温度範囲においてその抵抗を安定化できることを見い
だし本発明に至った。
【0011】即ち、本発明の静電チャックは、所定の基
体表面に窒化アルミニウム結晶相を主相とするセラミッ
ク抵抗体層を具備し、該抵抗体層中に周期律表第4b族
元素を0.01〜25原子%の割合で含有し、前記結晶
相における格子定数が窒化アルミニウム単相の格子定数
からa軸で0.004〜0.025オングストローム、
c軸で0.005〜0.050オングストロームだけシ
フトした値であるとともに、常温における体積固有抵抗
が107 〜1013Ω−cmであることを特徴するもので
ある。
【0012】以下、本発明を詳述する。図1に本発明の
静電チャックの一例を示した。図1の静電チャックによ
れば、室温における体積固有抵抗が1014Ω−cm以上
の絶縁体からなる基体1の表面に電圧が印加される電極
層2を有し、さらにその電極層2上にセラミック抵抗体
からなる薄層3(以下、セラミック抵抗体層という。)
が形成されている。セラミック抵抗体層3は、少なくと
もシリコンウエハ4の載置面、あるいは半導体製造装置
内に露出している基体面全体に形成される。また、基体
1内には図1に示すようにヒータ5を内蔵させてもよ
く、さらには冷却媒体の流路を設けて静電チャックを冷
却することも可能である。
【0013】本発明において、セラミック抵抗体層3
は、窒化アルミニウム結晶相を主体とし、周期律表第4
b族元素の原子を0.01〜25原子%の割合で含有す
るものである。この周期律表第4b族元素は窒化アルミ
ニウムに対して導電性を付与するための重要な元素であ
り、この元素量が0.01原子%未満では体積固有抵抗
値を低くするのに十分ではなく、また25原子%を越え
ると窒化アルミニウムとしての特性が変化し、体積固有
抵抗が107 Ω−cm以下となり、静電チャックとして
使用できなくなる。この周期律表第4b族元素として
は、C(炭素)、Si、Ge、Sn、Pbであり、この
中でも特にCおよびSiは安価で且つ成膜の制御が容易
である点で望ましい。
【0014】なお、静電チャックとして特性の点で、こ
のセラミック抵抗体層の抵抗が1×107 Ω−cmより
小さいとリーク電流が大きくなり、1×1013Ω−cm
より大きいと残留吸着力が発生する場合があるため、静
電チャックの使用温度領域、例えば0℃〜300℃での
体積固有抵抗が1×107 Ω−cm〜1×1013Ω−c
mの範囲にあることが必要となる。本発明の静電チャッ
クはこの範囲内で0℃から300℃までがほぼ一定の体
積固有抵抗値を示す。このうち、漏れ電流や電圧印加に
対する応答性を考慮すれば1×108 〜5×1012Ω−
cmが、さらに耐電圧を考慮すると1×109 〜5×1
11Ω−cmが最も望ましい。更に、静電チャックとし
て安定した動作を行なうためには、使用温度領域、例え
ば0℃〜300℃の温度範囲における体積固有抵抗の変
化が3桁以内、好ましくは2桁以内であるのが良い。な
お、−100℃〜300℃においても同様の結果が期待
できる。
【0015】また、本発明によれば、上記周期律表第4
b族元素の添加により、主相である窒化アルミニウム結
晶相の格子定数が変化する。本発明者らの測定によれ
ば、含有される周期律表第4b族元素の種類によって+
側、−側のどちらにシフトするかが変わるが、窒化アル
ミニウム単相の格子定数(測定機器などにより変化する
場合があるが、本発明者らの測定ではa軸3.120
Å,c軸4.994Åであった。)からa軸で0.00
4〜0.025オングストローム、c軸で0.005〜
0.050オングストロームだけ+側または−側にシフ
トした値となるものである。従って、この格子定数が上
記の範囲より小さいレベルでシフトしたり、上記範囲を
越えてシフトする場合には、いずれも所望の電気特性を
得ることは難しいのである。
【0016】上記のように、SiまたはCなどの周期律
表第4b族元素の原子を含有するとともに上記の電気特
性を有するセラミック抵抗体層は、気相合成法によって
容易に作製することができる。具体的な成膜方法として
は、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理
気相合成法(PVD法)や、プラズマCVD、光CV
D、MO(Metal−organic)CVDなどの
化学気相合成法(CVD法)により形成することができ
るが、これらの中でもCVD法がよい。
【0017】例えば、CVD法により前記セラミック抵
抗体層を形成するには、原料ガスとしてN2 ガス、NH
3 ガス、周期律表第4b族元素含有ガス、およびAlC
3ガスを用い、これらのガスの流量比をN2 /AlC
3 =5〜70、周期律表第4b族元素含有ガス/NH
3 =0.001〜3、NH3 /AlCl3 =1〜10と
し、成膜温度を850℃以上の比較的高めに設定するこ
とにより作製することができる。周期律表第4b族元素
含有ガスは、例えばSi源としてはSiCl4、SiH
Cl3 、SiH2 Cl2 、SiH3 Cl、SiH4 、S
2 6 あるいは(CH3 4 Siなどを用いることが
できる。またはC源としてはCH4 、C2 4 、C2
6 、C2 2 、CCl4 、CF4 など、Ge源としては
GeH4、Sn源としてはSnCl4 、Pb源としては
Pb(CH3 4 などを使用することができる。
【0018】一方、セラミック抵抗体層を形成する基体
は、格別限定するものではなく、例えばAl2 3 、A
lON、Si3 4 、AlN、ダイヤモンド、ムライ
ト、ZrO2 などを主とするセラミック材料が挙げられ
るが、これらの中でも半導体製造時の耐プラズマ性に優
れ、前記セラミック抵抗体層との密着性に優れる点で窒
化アルミニウムを主体とする焼結体が最も望ましい。
【0019】さらに、電圧を印加する電極層2は、周知
の金属材料が適用でき、例えば、W、Mo、Mo−M
n、Agのいずれでも使用可能である。また、導電性の
セラミック材料、例えばTiN、SiC、WC、カーボ
ンやSi半導体材料(n型あるいはp型)も電極材料と
して使用できる。その他、電極層2が存在せず、基体自
体が電極能を有する場合もあり、その場合には基体1を
SiC、TiN、WCなどを主体とする導電性セラミッ
クス、W、Moなどの金属単体およびこれらの合金など
により形成すればよい。その場合には導電性基体そのも
のに直接電圧を印加することにより静電気が発生する。
また、絶縁性基体内にヒータを内蔵させる場合のヒータ
用材料としてはMo、W、WC、Mo−Mn、TiC、
TiNなどが用いられる。
【0020】上記のような構成からなる静電チャックに
よりシリコンウエハを静電吸着するには、電極層あるい
は導電性基体におよそ0.2〜2.0kVの電圧を印加
することにより静電吸着を行うことができる。
【0021】
【作用】通常、窒化アルミニウムは体積固有抵抗1014
Ω−cm以上の高絶縁体であるが、その窒化アルミニウ
ム結晶中に珪素または炭素などの周期律表第4b族元素
を固溶させてアルミニウムや窒素を周期律表第4b族元
素で置換させると、半導体化し、すなわち電子の過不足
がおこりこれが導電性に寄与し結晶の導電率を高める作
用となすものと考えられる。またこの抵抗体層は温度に
対する抵抗変化が小さく、例えば0℃から300℃まで
の温度変化に対する抵抗変化が3桁以下と小さい。その
結果、この温度領域におけるウエハの吸着特性が安定化
し、また残留吸着力の発生しない静電チャックが得られ
る。
【0022】また、本発明によれば、静電チャックとし
て格別に複雑な構造をとる必要がなく、本発明の材料を
用いることによって静電チャック自体の構造が簡単にな
り、低コストで広範囲な温度領域における使用を可能と
し、電気回路を含めて組み込まれる装置自体の簡略化も
実現でき、また静電チャックとして信頼性、長期安定性
が保証される。
【0023】
【実施例】 実施例1 窒化アルミニウム質焼結体からなる基体表面に電極層と
してMoとMnからなる合金をメタライズした後、その
電極を含む基体表面に化学気相合成法によってAlN膜
を形成した。AlN膜の成膜は、基体を外熱式によって
900℃に加熱した炉に入れ、窒素ガスを8SLM、ア
ンモニアガスを1SLMに一定にし、周期律表第4b族
元素含有ガスを表1に示す流量に変化させ、炉内圧力を
40torrとした。そして、塩化アルミニウム(Al
Cl4 )を0.3SLMの流量で流して反応を開始し、
400μmの膜厚のセラミック抵抗体層を形成した。得
られた抵抗体層に対して、−100℃、0℃、25℃お
よび300℃における体積固有抵抗を測定した。その結
果は表1に示した。
【0024】そして、気相成長後のセラミック抵抗体層
の表面を表面粗さRaが0.02mmとなるように研磨
した後、電極に400Vの電圧を印加した時の静電チャ
ックとしての25℃での吸着力および30分間電圧印加
し、電圧印加を停止した直後の残留吸着力の有無を真空
中で測定した。さらに、0℃から300℃までの吸着力
の変化において、その変化率が10%以内のものを○、
それ以上のものを×として評価した。
【0025】
【表1】
【0026】表1の結果から明らかなように、抵抗体層
の周期律表第4b族元素量および格子定数は周期律表第
4b族元素含有ガスの流量によって変化し、周期律表第
4b族元素含有ガスを全く導入せず、酸素原子量も不純
物レベルの0.0001原子%の場合(試料No.1)に
は、抵抗値も室温で9×1015Ω−cmの高絶縁性であ
ったが、周期律表第4b族元素含有ガスの流量を徐々に
増加させると、周期律表第4b族元素量が増加するとと
もに室温の体積固有抵抗も低下した。しかし、周期律表
第4b族元素が25原子%を越えると(試料No.11)
体積固有抵抗が107 Ω−cmより低くなりもれ電流が
大きく吸着力の測定もできなかった。
【0027】なお、得られた抵抗体層はX線回折測定か
ら(002)に配向するAlN膜であった。またSiを
多く含有する膜には上記AlN相以外に窒化珪素結晶相
の存在が確認された。
【0028】また、試料No.7の静電チャックの体積固
有抵抗値の温度依存性の測定結果を図2に、また試料N
o.7のAlN膜を用いて図1の静電チャックを構成し、
電極に400Vの電圧を印加した時の吸着力の温度依存
性の測定結果を図3にそれぞれ示した。図2、3から明
らかなように、−100℃から300℃の全温度範囲に
おいて、体積固有抵抗値は7.8×1010〜1.5×1
12Ω・cmの範囲にあり、また吸着力は図3から明ら
かなようにこの温度域で一定であり安定した吸着性を示
した。
【0029】これに対して、AlN膜中にこれらの周期
律表第4b族元素を不純物レベルしか含まない静電チャ
ック(試料No.1)では、測定温度の25℃から300
℃への変化に伴い、体積抵抗は1015Ω−cmから10
11Ω−cmまで急激に変化した。そのため、150℃、
200℃では吸着力が安定化するまでの時間が長く、ま
た残留吸着力が観察された。
【0030】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、静
電チャックの表面に、窒化アルミニウム中の周期律表第
4b族元素量および格子定数を制御し25℃における体
積固有抵抗が107 〜1013Ω−cmの抵抗を有し、且
つ0℃から300℃までの温度による抵抗変化が小さい
セラミック抵抗体層を形成し静電チャックとして用いる
ことにより、半導体製造過程において少なくとも0℃か
ら300℃にわたる温度領域において安定した吸着特性
を有し、残留吸着力がなく吸着力も大きい静電チャック
が得られる。これにより、静電チャックとして優れた信
頼性と長期安定性が得られるとともに、静電チャックの
製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電チャックの構造を示す断面図であ
る。
【図2】実施例において作製したセラミック抵抗体層の
体積抵抗値の温度依存性を示す図である。
【図3】実施例において作製した静電チャックの吸着力
の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 基体 2 電極 3 セラミック抵抗体層 4 シリコンウエハ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/68 B23Q 3/15 H01C 7/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の基体表面に窒化アルミニウム結晶相
    を主相とするセラミック抵抗体層を具備し、該抵抗体層
    中に周期律表第4b族元素を0.01〜25原子%の割
    合で含み、前記結晶相における格子定数が窒化アルミニ
    ウム単相の格子定数からa軸で0.004〜0.025
    オングストローム、c軸で0.005〜0.050オン
    グストロームだけシフトした値であるとともに、常温に
    おける体積固有抵抗が107 〜1013Ω−cmであるこ
    とを特徴する静電チャック。
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