JP3142650B2 - メチルノルボルナン‐2,3‐ジカルボン酸無水物の製造法 - Google Patents

メチルノルボルナン‐2,3‐ジカルボン酸無水物の製造法

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JP3142650B2 JP04206128A JP20612892A JP3142650B2 JP 3142650 B2 JP3142650 B2 JP 3142650B2 JP 04206128 A JP04206128 A JP 04206128A JP 20612892 A JP20612892 A JP 20612892A JP 3142650 B2 JP3142650 B2 JP 3142650B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、メチルノルボルナン-
2,3- ジカルボン酸無水物の製造法に関し、さらに詳し
くは、低凝固点、低粘度である液状メチルノルボルナン
-2,3- ジカルボン酸無水物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】メチルノルボルナン-2,3- ジ
カルボン酸無水物(以下、HMeNAと略すことがあ
る)は、エポキシ樹脂硬化剤等として種々の用途に使用
することができる。HMeNAは、1-メチルノルボルネ
ン-2,3- ジカルボン酸無水物及び/または5-メチルノル
ボルネン-2,3- ジカルボン酸無水物(以下、夫々1-Me
NA、5-MeNAと略すことがある)の水素化によって
合成することができる。
【0003】エポキシ樹脂硬化剤は、作業上の見地から
室温で液状であることが好ましいが、上記方法により製
造されるHMeNAは室温で固体である。
【0004】一方、HMeNAは exo体の比率が増加す
ると室温で液状化することが知られており(米国特許第
3,598,749 号明細書)、室温で液状のHMeNAを製造
する方法として、メチルノルボルネン-2,3- ジカルボン
酸無水物(以下、MeNAと略すことがある)のendo体
を exo体に異性化する工程を加えることによって、生成
するHMeNA中の exo体の比率を増すことが考えられ
る。しかし、通常の熱異性化法を用いて得られる程度の
exo体比率では、HMeNAは室温で液状とはならな
い。
【0005】本発明者らは先に、HMeNA及び第二の
酸無水物から成るエポキシ樹脂硬化剤(特開平2-38415
号公報)、並びに、それらに加えて第三の酸無水物を含
有するエポキシ樹脂硬化剤(特開平3-277622号公報)を
提供した。しかしながら、室温で液状の硬化剤を与える
ための、これら第二、第三の成分の組成比には制約があ
る。また、これらの硬化剤は、凝固点、粘度が高すぎる
等の欠点がある。
【0006】本発明は、上記欠点が改善されたHMeN
Aの製造法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、メチルノルボ
ルネン-2,3- ジカルボン酸無水物からメチルノルボルナ
ン-2,3- ジカルボン酸無水物を製造する方法において、
メチルノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物の一部ま
たは全部を酸触媒の存在下にてメチレンノルボルナン-
2,3- ジカルボン酸無水物(以下、MDNAと略すこと
がある)へと異性化し、次いで水素化を行うことを特徴
とする、メチルノルボルナン-2,3- ジカルボン酸無水物
(HMeNA)の製造法を提供する。
【0008】ここで、MDNA自体は新規物質であり、
本発明者らによって特許出願されている(特願平3-3173
08)。この化合物は、次式
【0009】
【化1】 で表され、MeNAを酸の存在下で加熱して異性化する
ことによって調製することができる。
【0010】原料となるMeNA自体は公知であり、市
販もされている。MeNAには、5-MeNA、1-MeN
A等の異性体が存在し、その夫々にエンド(endo)体、エ
キソ(exo) 体の立体異性体が存在するがMDNAの合成
にはそのいずれをも使用することができる。それらの混
合物を用いても良い。
【0011】5-MeNA及び1-MeNAは、例えば次の
ようにして製造することができる。すなわち、1-メチル
シクロペンタジエン(1-MeCPDと略す)及び2-メチ
ルシクロペンタジエン(2-MeCPDと略す)を、無水
マレイン酸と反応させる(ディールス‐アルダー反応)
と、1-MeCPDからは1-MeNAのendo体が、2-Me
CPDからは5-MeNAのendo体が生成する。ここで、
1-MeCPDと2-MeCPDは、メチルシクロペンタジ
エンダイマーの熱分解によって、通常30:70〜60:40の
比率で得られ、この両者を分離することは困難である。
従ってMeCPDを用いる上記反応より、通常は endo-
1-MeNAと endo-5-MeNAとの30:70〜60:40の比
率の混合物が生成する。
【0012】MeNAのMDNAへの異性化の際に、1-
MeNAのendo体は、5-MeNAのexo 体を経由してM
DNAのexo 体を生成し、一方、5-MeNAのendo体
は、直接MDNAのendo体を生成する。また、一部の5-
MeNAのendo体は、MDNAの exo体を生成する。そ
の結果、生じるMDNAは exo体の比率が高くなる。上
記のようなMeCPDと無水マレイン酸とから得られた
MeNAを用い、酸触媒の存在下にて異性化を行って、
exo体の比率が高い、例えば約70%以上であるMDNA
を合成することができる。
【0013】MDNAへの異性化反応は、例えば約 120
〜250 ℃の温度で、MeNAに対して約0.01〜5重量
%、特に約0.02〜3重量%の酸触媒を用いて行うことが
できる。しかしながら、低凝固点かつ低粘度の液状HM
eNAを製造するために、 exo体の比率が高い、例えば
約70%以上であるMDNAを合成することが好ましく、
そのためには 170℃以上、特に 170〜200 ℃の温度で、
MeNAに対して約3重量%以下、特に約0.02〜2重量
%の酸触媒を用いて反応を行うのが、より好ましい。異
性化の際の温度が 170℃以上であれば、exo-MDNA:
endo-MDNAの比は70:30〜90:10程度と、 exo体の
比率がかなり大きくなる。また、酸の量をMeNAに対
して約3重量%以下とすると、生成する exo体の比率を
より高くすることができる。
【0014】異性化反応のために使用する酸に特に制限
はなく、種々の公知の酸を使用することができる。例え
ばベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラ
キシレン-2- スルホン酸等の芳香族スルホン酸、硫酸、
塩酸等の鉱酸、タングストケイ酸、モリブデン酸等のヘ
テロポリ酸、マレイン酸等のカルボン酸、及び塩化アル
ミニウム、フッ化ホウ素等、並びに、シリカ・アルミ
ナ、活性白土、シリカ・マグネシア、アルミナ・ボリ
ア、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライ
ト、モルデナイト、ZSM-5等のH+ 型ゼオライト、及
び固体リン酸、陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒が挙げ
られる。また、無水マレイン酸等の酸無水物は、水分と
反応して酸を生じ得るので、酸の代わりに酸無水物を使
用しても異性化反応が進行することがある。 exo体の比
率が高い、例えば約70%以上であるMDNAを合成する
ためには、芳香族スルホン酸または固体酸触媒を使用す
るのが好ましい。
【0015】加熱による異性化反応は、回分式及び連続
式のいずれで行うこともできる。反応時間は、好ましく
は約30分間〜10時間、特に約1〜5時間である。この反
応は溶媒の使用を必要としないが、任意の溶媒中で行う
こともできる。好ましい溶媒としてはクロルベンゼン、
キシレン、メシチレン、トリエチルベンゼン等が挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0016】MDNAを精製するとすれば、精製法には
特に制限はなく、蒸留、分取クロマトグラフィー等の種
々の公知の方法を使用することができる。
【0017】MDNAの構造は、赤外線吸収スペクトル
(IR)、 1H‐NMR等によって同定することができ
る。例えば当該化合物のIRにおいては、1770〜1780cm
-1及び1850cm-1に無水カルボン酸のC=O伸縮に起因す
るピークが観察される。また、 1H‐NMRにおいて、
δ 4.8〜5.2 にH2 C=C<に起因するピーク(このピ
ークは、出発物質のメチルノルボルネン-2,3- ジカルボ
ン酸無水物では観察されない)が、δ 1.8に−CH2
に起因するピーク4H分(出発物質では2H分)が、δ
2.8〜3.6 にノルボルナン環の三級炭素原子に結合した
プロトンに起因するピークが観察される。ノルボルネン
環の=CH−に起因するピークは観察されない。
【0018】前記のように、原料のMeNAは通常は e
ndo-1-MeNAと endo-5-MeNAとの30:70〜60:40
の比率の混合物として得られるが、それらを分離するこ
とは困難である。endo-1- MeNAと endo-5-MeNA
との混合物を約 170℃以上に加熱すると、endo-1- Me
NAをexo-5-MeNAへと一部を異性化することができ
るが、 exo体へと異性化する endo-5-MeNAは極めて
少ない。従って、上記加熱後の混合物中の exo体の比率
は、出発物質中の1-MeCPDの比率(=endo-1- Me
NAの比率)によって決まり、通常約50%である。こう
した熱異性化後のMeNAに水素化を行っても、得られ
るHMeNAは室温で固体である。一方、本発明に従
い、MeNAの一部または全部を酸触媒の存在下で一旦
MDNAへと異性化してから水素化を行うと、上記のよ
うな熱異性化の施されていないMeNAを原料とした場
合にも、室温にて液状であるHMeNAを製造すること
ができる。
【0019】本発明において、低凝固点かつ低粘度であ
る液状HMeNAを得るために、水素化前のMDNA/
(MeNA+MDNA)の比率がある程度以上であるこ
とが好ましい。その比率は原料として使用したMeNA
中の各異性体の組成比によって異なるが、好ましくは60
〜95重量%、より好ましくは70〜95重量%とする。上記
比率が60重量%未満だと最終生成物のHMeNAが室温
で液状にならないことがあり、95重量%を超えると重質
物が多量に生成するため、経済的でない。上記の比率
は、 1H‐NMR、ガスクロマトグラフィー等によって
検出することができる。
【0020】原料酸無水物を水素化する方法に特に制限
はなく、種々の公知の方法を用いることができる。例え
ば接触水素添加法、ヨウ化水素と赤リンまたはナトリウ
ムとアルコールの組み合わせを用いる方法等が挙げられ
るが、これらに限定されない。好ましい方法は接触水素
添加による水素化であり、これは回分反応、流通連続反
応のいずれによっても良い。接触水素化は通常、水素添
加触媒の存在下、かつ加熱下で、水素と接触させること
によって行う。好ましい触媒としては、パラジウム、ル
テニウム、白金、コバルト、ニッケル等が挙げられる
が、これらに限定されない。担持触媒を使用しても良
く、例えば5重量%の金属パラジウムをアルミナ粉末に
担持したものを触媒として使用することができる。触媒
の使用量に特に制限はないが、好ましくは原料酸無水物
の重量に基づき 0.2〜5重量%程度とする。水素添加反
応時の水素圧は、10〜150 kg/cm2 G、特に20〜100 kg
/cm2G程度とするのが好ましい。温度は、好ましくは
約40〜250 ℃、より好ましくは約50〜200 ℃である。反
応時間は好ましくは1〜15時間、より好ましくは2〜10
時間程度とする。水素添加反応の際に溶媒は必要ではな
いが、溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサ
ン等を使用しても良い。
【0021】上記のようにして水素化した後、好ましく
は触媒及び使用した溶媒等を分離し、HMeNAを精製
する。精製法に特に制限はなく、濾過、蒸留等の種々の
公知の方法を使用することができる。
【0022】本発明の方法により得られるHMeNAは
室温で液状かつ低粘度であるので、エポキシ樹脂硬化剤
としての作業性に優れる。また、本発明の方法により得
られるHMeNAを使用して硬化し得るエポキシ樹脂
は、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物であ
り、例えばビスフェノールAなどの多価フェノールまた
は1,4-ブタンジオールなどの多価アルコールのポリグリ
シジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸など
のポリグリシジルエステル、アミン、アミド及び複素環
式窒素塩基を有する化合物のN‐グリシジル誘導体、脂
環式エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹
脂、オルトクレゾールノボラックエポキシ樹脂などであ
る。硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に
対して、酸無水物基が 0.3〜1.5 モルになるように配合
するのが好ましく、特に 0.7〜1.2 モルになるように配
合するのが好ましい。HMeNAとエポキシ樹脂とを適
宜の手段で混合し、好ましくは50〜230 ℃で硬化させる
ことができる。例えば70〜120 ℃で1〜10時間、続いて
120〜200 ℃で2〜20時間硬化されることが特に好まし
い。尚、HMeNAを配合したエポキシ樹脂組成物をそ
のまま硬化することもできるが、さらに3級アミン、3
級アミン塩、第4アンモニウム塩、イミダゾール、金属
塩などの硬化促進剤を併用すると、硬化時間を短縮する
ことができるので好ましい。また、HMeNAは、他の
一以上の酸無水物と併用することもできる。さらに、慣
用の添加剤、例えばアスファルト、石英粉、雲母、ガラ
ス繊維、繊維素、タルク、粘土、カオリン、ベントナイ
ト、炭酸カルシウム、水和アルミナもしくはアルミニウ
ムのような金属粉などの充填剤、染料もしくは顔料、成
形潤滑剤、難燃剤(三酸化アンチモン、赤燐等)、有機
溶剤(例えばキシレン、トルエン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン等)等と混合して使用する
ことも可能である。
【0023】本発明の方法により得られるHMeNAは
また、それ自体が無色透明である上、それを用いて硬化
したエポキシ樹脂硬化物は無色透明あるいは淡黄色で透
明性が良く、しかも耐熱性及び耐湿性に優れる。従っ
て、耐熱及び耐湿用のオプトエレクトロニクス素材とし
て好適である。また、本発明の方法により得られるHM
eNAは、耐熱性の注型もしくは成形用または塗料、積
層もしくは含浸用ワニスなどの材料としても使用するこ
とができる。
【0024】以下、実施例により本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0025】
【実施例】以下の実施例において、%及び部は、夫々重
量%及び重量部を意味する。
【0026】
【参考実施例】1リットルのナスフラスコにメチルシク
ロペンタジエンダイマー(東京化成株式会社製)500gを
採り、精留器を取り付けて常圧にてナスフラスコを加熱
し、沸点72〜78℃のメチルシクロペンタジエン留分400g
を採取した。
【0027】次に、温度計、還流冷却器及び攪拌機を備
えた2リットルの四ッ口フラスコに、無水マレイン酸
(東京化成株式会社製)490gを採り、そこにベンゼン
(東京化成株式会社製) 500mlを加えた。攪拌下、フラ
スコ内部の温度を20〜30℃に保ち、上記で得られたメチ
ルシクロペンタジエン400gを3時間に亘って導入した。
メチルシクロペンタジエンの添加終了後、さらに内部温
度30℃で1時間攪拌した。ベンゼン等の軽質留分を蒸留
留去した後、5mmHgの減圧下にて減圧蒸留を行い、淡
黄色透明液体845gを得た。該留分は、その赤外吸収スペ
クトル、 1H‐NMRスペクトル、質量分析及びガスク
ロマトグラフ分析の結果から、 endo-1-MeNA45.0%
と endo-5-MeNA55.0%の混合物であることが確認さ
れた。
【0028】
【実施例1】還流冷却器、温度計、攪拌機を備えた 500
mlの四ッ口フラスコに、参考実施例で得られたMeNA
200g と0.4gのパラトルエンスルホン酸(東京化成株式
会社製)を導入し、 180℃で3時間攪拌して反応させ
た。これを減圧蒸留に付し、触媒及び重質物である副生
成物から分離された淡黄色透明液体 190g を得た。この
液体をガスクロマトグラフにより分析したところ、exo-
MDNA65.0%、 endo-MDNA11.1%、exo-5-MeN
A 6.0%、未反応の endo-1-MeNA 5.5%及びendo-5
- MeNA12.4%から成ることが判明した。MDNA/
(MDNA+MeNA)の率は76.1%であり、MDNA
におけるexo-体: endo-体の比率は85:15であった。
【0029】次に、 500mlのオートクレーブ中に、上記
で得られた留分190gとパラジウム触媒(5重量%の金属パ
ラジウムをアルミナ粉末に担持したもの、エヌ・イー・
ケムキャット社製)3.8gを導入し、オートクレーブ内を
水素で置換した後、水素圧50kg/cm2 Gにて80℃に加熱
し、攪拌下で5時間水素添加反応を行った。反応終了
後、減圧濾過によって触媒を除去し、185gの無色透明液
体生成物を得た。
【0030】この液体の赤外吸収スペクトル、 1H‐N
MRスペクトル、中和価、ヨウ素価及び質量分析の結果
を表1及び表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】 表1より、この液体はメチルノルボルナン-2,3- ジカル
ボン酸無水物であると同定された。その凝固点は−15℃
以下、25℃における粘度は 280センチポイズであり、低
凝固点かつ低粘度の液体であった。
【0033】
【応用例】エポキシ樹脂(商品名;エピコート 828、油
化シェル株式会社製) 100部、実施例1で得られたメチ
ルノルボルナン-2,3- ジカルボン酸無水物90部及び硬化
促進剤として2-エチル-4- メチルイミダゾール(四国化
成株式会社製) 0.5部を、室温にて配合した。この配合
物を 100℃にて2時間、引き続いて 150℃にて5時間硬
化反応させて、淡黄色透明の硬化物を得た。
【0034】この硬化物について、JIS K6911に準拠
して、熱変形温度(HDT)を測定したところ、 162℃
であり、この硬化物は耐熱性に優れていることが判明し
た。また、耐湿性について調べるため、70mmφ×2mm厚
の試験片を用い、 122℃、24時間のプレッシャー・クッ
カー・テスト(PCT)後の重量増加率を測定したとこ
ろ、1.38重量%であり、優れた耐湿性を有することが判
明した。
【0035】
【実施例2】パラトルエンスルホン酸の代わりに、乾燥
した粉末状シリカ・アルミナ(商標CS-200M、東洋C
CI製) 1gを使用した以外は、実施例1と同様にして異
性化反応を行って、淡黄色透明液体 192g を得た。この
液体をガスクロマトグラフにより分析したところ、exo-
MDNA52.7%、 endo-MDNA 8.5%、exo-5-MeN
A 7.3%、未反応の endo-1-MeNA 5.4%及び endo-
5-MeNA26.1%から成ることが判明した。MDNA/
(MDNA+MeNA)の率は61.2%であり、MDNA
におけるexo-体: endo-体の比率は86:14であった。
【0036】次に、上記で得られた留分192gを実施例1
と同様にして水素化及び精製操作に付したところ、無色
透明液体 186g が得られた。この液体の中和価は 619、
ヨウ素価は 0.7であった。さらに、この液体の凝固点は
−10℃、25℃における粘度は285 センチポイズを示し
た。
【0037】
【比較例1】参考実施例で得られたメチルノルボルネン
-2,3- ジカルボン酸無水物 200g 、実施例1で使用した
のと同じパラジウム触媒4.0g及び溶媒として1,4-ジオキ
サン200ml をオートクレーブ中に導入し、実施例1と同
じ条件で水素化を行った。反応後、オートクレーブから
生成物を取り出し、触媒を分離して1,4-ジオキサンを留
去したところ、白色の固体が得られた。この固体の中和
価は 620、ヨウ素価は0.5であった。また、その融点は
105℃であった。
【0038】
【比較例2】パラトルエンスルホン酸を使用しなかった
以外は、実施例1と同じ加熱攪拌操作を行い、淡黄色の
透明液体196gを得た。この液体の組成をガスクロマ
トグラフにより分析したところ、exo−5−MeNA
44.3%、endo−1−MeNA14.6%及びe
ndo−5−MeNA41.1%から成る混合物であ
り、MDNAの存在は認められなかった。すなわち、酸
触媒非存在下で加熱すると、原料中のMeNAがexo
−5−MeNAへ異性化すること、しかし、MDNAは
生成しないことが明らかとなった。
【0039】この物質に実施例1と同じ操作により水素
添加を行ったところ、得られた物質は室温で白色の固体
であった。この固体の中和価は 621、ヨウ素価は 0.7で
あった。また、融点を測定したところ、50℃であった。
【0040】上記より、本発明方法に従うと、低凝固点
でかつ低粘度である液状メチルノルボルナン-2,3- ジカ
ルボン酸無水物が得られることが明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上野 廣 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 平5−32653(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 307/93 C08G 59/42 C08K 5/151 C07B 61/00 300 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メチルノルボルネン-2,3- ジカルボン酸
    無水物からメチルノルボルナン-2,3- ジカルボン酸無水
    物を製造する方法において、メチルノルボルネン-2,3-
    ジカルボン酸無水物の一部または全部を酸触媒の存在下
    にてメチレンノルボルナン-2,3- ジカルボン酸無水物へ
    と異性化し、次いで水素化を行うことを特徴とする、メ
    チルノルボルナン-2,3- ジカルボン酸無水物の製造法。
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