JP3140201B2 - 密閉形電動圧縮機 - Google Patents

密閉形電動圧縮機

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JP3140201B2 JP04243151A JP24315192A JP3140201B2 JP 3140201 B2 JP3140201 B2 JP 3140201B2 JP 04243151 A JP04243151 A JP 04243151A JP 24315192 A JP24315192 A JP 24315192A JP 3140201 B2 JP3140201 B2 JP 3140201B2
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光司 山本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気調和機あるいは冷
蔵庫等に用いる密閉形電動圧縮機に係り、特に、フロン
規制に対応した新冷媒を用いる圧縮機の、シリンダ,ピ
ストン間の往復摺動部の潤滑に好適で、冷凍能力を向上
する密閉形電動圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、環境汚染の問題がクローズアップ
し、特にオゾン層破壊の問題から、塩素系フロンが使用
規制の対象となっている。そこで、フロン規制に対応す
る新冷媒が開発され、例えばHFC134aが冷媒とし
て注目されている。しかし、HFC134aは、従来の
R−12より特性面で改善の余地がある。
【0003】そこで、新冷媒を適用し、新冷媒用冷凍機
油を用いた場合の潤滑性の低下を補う新給油構造、ある
いは、冷媒ガスの過熱防止対策が要請されている。
【0004】まず、摺動部の潤滑に関する従来技術につ
いて図5を参照して説明する。
【0005】図5は、従来の密閉形電動圧縮機の縦断面
図である。
【0006】図5に示す往復動圧縮機は、密閉容器2の
底部に冷凍機油1を貯溜し、電動機部3と、この電動機
上部に回転軸に係るクランク軸4を介して連結する圧縮
機部5とを、クランク軸心を垂直方向に配設して収納し
たもので、前記クランク軸4内に穿孔された給油路4a
の開口部となる下端部4bを冷凍機油1中に浸漬してい
る。
【0007】クランク軸4が回転することにより給油路
4aを上昇した冷凍機油1はクランク軸上端部4cから
圧縮機部5に振り撒かれ、シリンダ6やピストン7およ
び弁座板8や吐出弁板9等の外周壁に降り掛かる。シリ
ンダ6に降り掛かった油の一部はシリンダ外周壁を伝わ
ってシリンダ6内を往復動するピストン入口の面取り部
6aに達し、ピストン7の外形部に降り掛かった油と共
に吸込工程時のシリンダ内外の圧力差によって摺動部の
隙間からピストン7の先端部に向かって進入し、濡れ効
果によって対向するシリンダ内壁6bに油膜を形成せし
め摺動部の給油潤滑を繰り返す。一方、弁座板8Aや吐
出弁板9Aの外周に降り掛かった油は外周壁を伝わっ
て、熱交換しつつ下部の油溜りへ戻る。
【0008】なお、この種の往復動圧縮機として関係す
るものは、例えば、特公平2−59309号公報記載の
ものが挙げられる。
【0009】次に、圧縮機の効率改善に関する他の従来
技術を説明する。
【0010】一般に、密閉形電動圧縮機は、冷蔵庫や空
気調和機等に搭載され、ほとんどの一般家庭に使用され
ており、電気消費量の面から消費電力の少ないものが求
められている。したがって、密閉形電動圧縮機の効率改
善を必要とする。
【0011】従来から使用されている、密閉容器内に圧
縮機本体を弾性的に支持する構造の往復動圧縮機の例を
図14に示す。
【0012】図14は、従来の他の密閉形電動圧縮機の
縦断面図である。
【0013】図14に示す密閉形電動圧縮機51は、冷
凍機油59を貯溜した密閉容器54内に、電動機部53
と圧縮機部52とを、軸心を垂直方向にして配設したも
のである。圧縮機部52は、合成樹脂の吸込マフラー5
5を有し、この吸込マフラー55のガス入口58と密閉
容器54に固定された吸込管56とを密着コイルばね5
7で直接連通したダイレクトサクション方式となってい
る。
【0014】この種の電動圧縮機として関係するものに
は、例えば、特開平1−232186号公報記載のもの
が知られている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の前者
(特公平2−59309号公報記載のもの)は、吸込工
程時のシリンダ内外の圧力差によってシリンダ,ピスト
ン摺動部の隙間から給油潤滑するが、この隙間が大きい
ほどピストン先端への油進入性は良くなる反面、圧縮比
の高い場合、すなわち吐出圧力と吸込圧力との圧力差が
大きい場合、圧縮工程時にこの隙間から圧縮ガスが噴き
出るため、容積効率の低下を来たすとともに油をピスト
ン入り口方向に押し戻しピストン先端部の潤滑油膜形成
を阻害する問題があった。
【0016】本発明に係る第一および第二の発明は、上
記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、
シリンダ,ピストン間の隙間を可能な限り小さく設定し
て容積効率の低下を防止し、かつ、シリンダ,ピストン
間の給油潤滑を充分に行い、しかも大幅な構造変更を伴
うこと無く、加工性および組立性が容易な高効率,高信
頼性を維持した密閉形電動圧縮機を提供することを、第
一の目的とするものである。
【0017】また、上記従来技術の後者(特開平1−2
32186号公報記載のもの)においては、外部冷媒回
路により戻ってくる冷媒ガスを吸込マフラーを介して圧
縮機部のシリンダ内に吸い込むものであるが、吸込マフ
ラーのガス入口が密閉容器の空間に開口していないた
め、圧縮機部のシリンダ内に潤滑油量が減少することに
なる。このため、シリンダ内を往復運動しているピスト
ン側面の潤滑が損なわれることにより、長期的に使われ
るべき、冷蔵庫や空気調和機の寿命が短くなる恐れがあ
った。
【0018】この欠点を補う方法として、別の給油機構
を設けて強制給油を行うことは考えられるが、部品類の
増加が必然となり、部品の費用および組立費用が増加し
製造原価がアップする問題があった。
【0019】さらに、別な従来技術として、例えば、特
公昭61−14358号公報記載の技術があるが、圧縮
機部より飛散している潤滑油の噴霧体を吸い込むことが
できず、同じ問題点があった。
【0020】これら従来技術においては、外部冷媒回路
からの若干の戻り潤滑油が吸込管からシリンダ内に導か
れるが、シリンダおよびピストン隙間の潤滑を行う量と
して不十分であり、かつ、潤滑油は不規則に戻ってくる
ため、この点についても問題があった。
【0021】本発明に係る第三の発明は、上記従来技術
の問題点を解決するためになされたもので、戻り冷媒ガ
スの過熱防止を図って圧縮機の効率を改善するととも
に、シリンダ,ピストン間の間隙部の潤滑を効果的に、
かつ、低コストの手段にて行いうる密閉形電動圧縮機を
提供することを、第二の目的とするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記第一の目的を達成す
るために、本発明の密閉形電動圧縮機に係る第一の発明
の構成は、冷凍機油が内部に貯蔵された密閉容器と、ク
ランク軸を有し前記密閉容器内に前記クランク軸の軸芯
を上下方向にして配設された電動機とを有し、この電動
機上部に前記クランク軸を介して連結されたピストン
と、このピストンが内部を往復動するシリンダと、前記
ピストンと前記シリンダとで形成される室に冷媒が通流
する吸込通路と、この吸込通路を開閉する吸込弁と、前
記室から前記冷媒が流出する吐出通路と、この吐出通路
を開閉する吐出弁とを備える密閉形電動圧縮機におい
て、前記クランク軸の上部に設けられた上部開口を有し
前記冷凍機油を前記圧縮機部の外部に供給する給油手段
と、前記シリンダの頂部に装着された弁座板と、この弁
座板を覆って装着され前記吐出弁が前記吸込通路側から
前記吐出通路側に延在して設けられた吐出弁板と、前記
弁座板の前記吐出弁板側表面に設けられ前記密閉容器内
の空間及び前記吸込通路とを連通する連通路とを備えた
ものである。
【0023】また、上記第一の目的を達成するために、
本発明の密閉形電動圧縮機に係る第二の発明の構成は、
前記クランク軸の上部に設けられた上部開口を有し前記
冷凍機油を前記圧縮機部の外部に供給する給油手段と、
前記シリンダの頂部に装着された弁座板と、この弁座板
を覆って装着され前記吐出弁が前記吸込通路側から前記
吐出通路側に延在して設けられた吐出弁板と、この吐出
弁板に設けられ前記密閉容器内の空間及び前記吸込通路
とを連通する連通路とを備えたものである。
【0024】より詳しくは、前記吐出弁板上に設けられ
た切り抜き部により構成された前記連通路を備えたもの
である。
【0025】また、前記クランク軸の下部に設けられ前
記貯蔵された冷凍機油中に浸漬された下部開口と前記上
部開口とを連通する給油通路を前記クランク軸内に有す
る前記給油手段を備えたものである。
【0026】また、上記第二の目的を達成するために、
本発明の密閉形電動圧縮機に係る第三の発明の構成は、
冷凍機油を貯溜した密閉容器内に、電動機部と、この電
動機部に回転軸を介して連結する圧縮機部とを、回転軸
心を垂直方向にして弾性的に支持してなる密閉形電動圧
縮機において、前記密閉容器に設けてある吸込パイプの
密閉容器内部の突出部に、円筒形の一部に複数の切欠き
穴を有する合成樹脂製カール部材の一端を遊合させ、当
該カール部材の他端を前記圧縮機部に設けてある吸込サ
イレンサの開口部内に挿入したものである。
【0027】より詳しくは、円筒形の合成樹脂製カール
部材の一部に、複数個の切欠き穴を設け、切欠き突出部
を内径側に切り起こしたもの、あるいは、円筒形の合成
樹脂製カール部材の一部表面に突出部を設け、該突出部
の上部側に複数の開口を設けたものである。
【0028】また、密閉容器に設けてある吸込パイプの
密閉容器内部の突出部と圧縮機部の吸込サイレンサとに
設けた円筒形の合成樹脂製カール部材を傾斜させ、切欠
き開口部を、圧縮機の回転軸上部から飛散する潤滑油の
方向に設けたことを特徴とする。
【0029】
【作用】上記技術的手段による働きは次のとおりであ
る。
【0030】第一および第二の発明によれば、クランク
軸上端部から振り撒かれた油が吐出弁板または弁座板外
周に降り掛かり、外周を伝わって流れ落ちる油は吐出弁
板または弁座板の外周と吸込通路とを連通する連通路へ
流れ込み、吸込工程時に吸込通路内を通過してシリンダ
内に流入するガスの流速によって連通路の吸込通路開放
端側が外周入り口端より負圧となるため、連通路内の油
は吸込ガスとともにシリンダ内に噴霧状となって流入す
る。しかして、シリンダ内に吸入された油はシリンダ内
壁に油膜を形成し圧縮工程時にピストン先端部に容易に
進入し給油潤滑することができる。
【0031】第三の発明によれば、吸込パイプと吸込サ
イレンサーとを接続させる合成樹脂製カール部材の一部
に複数の切欠き穴を設けていることにより、圧縮機部の
クランクシャフトの上端から飛散する潤滑油の噴霧体
が、前記切欠き穴から吸入され、シリンダ,ピストン間
の隙間の潤滑を行うことが可能であるため、シリンダと
ピストンとの摩耗を減少させ長寿命化を図ることができ
る。
【0032】また、給油の手段として別部材を用いず、
冷媒通路を形成する合成樹脂製カール部材を兼用して使
用できるため、低価格化を図ることができる。
【0033】
【実施例】以下本発明の各実施例を、各図を参照して説
明する。
【0034】〔実施例 1−1〕 まず、第一の発明の一実施例を図1および図2を参照し
て説明する。
【0035】図1は、本発明の一実施例に係る密閉形電
動圧縮機の圧縮機弁部の要部断面図、図2は、図1の圧
縮機部に組み込む、油導入路を形成した吐出弁板の平面
図である。
【0036】図2に示す吐出弁板9は、これに穿設され
た吸込ガス穴9aと該吐出弁板の外周9bとを連通する
油導入路9cを設けたものである。
【0037】図1に示す密閉形電動圧縮機の圧縮機弁部
は、図5に示した如き往復動圧縮機に図2に示す吐出弁
板9を組み込んだものである。すなわち、図1に示すよ
うに、シリンダ6に、吸込弁板10、弁座板8、吐出弁
板9、バッキング11、ヘッドカバー12をこの順に組
み込み、複数個のボルト(図示せず)で締め付けてい
る。しかして、吐出弁板9には、油導入路9cが外周と
吸込ガス穴間を連通している。
【0038】ここで、図1,2に示す油導入路9cの断
面積は、弁座板の吸込ガス穴8aとの断面積比で0.3
〜2%の大きさとしている。その理由は次のとおりであ
る。
【0039】油導入路9cの断面積が大き過ぎるとガス
吸込穴を通過するガス流速に伴い、油導入路9cの吸込
ガス穴9a側端と外周9b入口端とに生じる圧力差が小
さくなり油の吸込性が低下するとともに、吸込ガスが本
来の吸込サイレンサーを経由せずこの油導入路9cから
直接吸入されることと、吸込弁の作動音が油導入路9c
から洩れることによる騒音アップ等の弊害がある。一
方、油導入路9cの断面積が小さ過ぎると、油導入路か
らの油吸込み抵抗が大きくなり油吸込み性が劣ることに
なる。
【0040】このような構成の密閉形電動圧縮機の作用
を説明する。
【0041】図5に示した従来技術同様、クランク軸4
が回転することにより給油路4aを上昇した冷凍機油1
はクランク軸上端部4cから圧縮機部5に振り撒かれ、
シリンダ6やピストン7および弁座板8や吐出弁板9等
々の外周壁に降り掛かる。
【0042】クランク軸上端部4cから振り撒かれた油
は吐出弁板9の外周9bに降り掛かり、外周9bを伝わ
って流れ落ちる油は油導入路9cを通って吸込ガス穴9
a,8aに達し、吸込工程時、シリンダ6内に噴霧状と
なって吸入される。こうしてシリンダ6内に吸入された
油はシリンダ内壁6bに油膜を形成するとともに圧縮工
程時ピストン先端部7aに容易に給油潤滑される。
【0043】本実施例によれば、シリンダ6,ピストン
7間の隙間を可能な限り小さく設定することができるた
め、容積効率の低下を防止することができる。また、シ
リンダ内を往復摺動するピストン先端部の給油潤滑を充
分行い、しかも大幅な構造変更を伴うことなく、従来よ
り使用している部品の一部に油導入路を形成するのみで
済み、加工性および組立性が容易で、新たな部品追加の
必要もない。このため、コストアップを伴うことのない
高効率,高信頼性を維持した密閉形電動圧縮機を堤供す
ることができる。
【0044】〔実施例 1−2〕次に、第二の発明の一実施例を図3を参照して説明す
【0045】図3は、本発明の一実施例に係る、油導入
路を形成した弁座板の平面図、図4は、図3の弁座板を
組み込んだ圧縮機弁部の要部断面図である。図3中、図
1と同一符号のものは同等部分であるから、その説明を
省略する。
【0046】図3に示す弁座板8は、これに穿設された
吸込ガス穴8aと該弁座板の外周8bとを連通する油導
入路8cを吐出弁板9の組付け側に設けたものである。
【0047】ここで、油導入路8cの断面積は弁座板の
吸込ガス穴8aとの断面積比で1〜2%の大きさとして
いる。その理由は、先に図2に示した吐出弁板9におけ
る油導入路9cの説明と全く同様である。
【0048】この弁座板8をシリンダ6に組み込んだ構
成は図4に示すとおりで、図3,4に示す実施例によれ
ば、図1,2に示した実施例と全く同様な作用効果を得
ることができる。
【0049】第一および第二の発明の各実施例によれ
ば、シリンダ,ピストン間の隙間を可能な限り小さく設
定して容積効率の低下を防止し、かつ、シリンダ,ピス
トン間の給油潤滑を充分に行い、しかも大幅な構造変更
を伴うこと無く、加工性および組立性が容易な高効率,
高信頼性を維持した密閉形電動圧縮機を提供することが
できる。
【0050】特に、フロン規制に対応する新冷媒HFC
134aを採用する場合の冷凍機油の潤滑性の低下を補
う給油構造として好適である。
【0051】次に、第三の発明の各実施例を図6ないし
図13を参照して説明する。
【0052】〔実施例 2−1〕 図6は、本発明の他の実施例に係る密閉形電動圧縮機の
横断面図、図7は、図6の圧縮機におけるカール部材を
示す要部断面図、図8は、図7の合成樹脂カール部材の
断面図、図9は、図8のA−A矢視断面図である。
【0053】図6に示す密閉形電動圧縮機21は、冷凍
機油(図示せず)を貯溜した密閉容器25内に、電動機
部23と、この電動機23にクランク軸28を介して連
結する圧縮機部22とを、軸心を垂直方向にして配設
し、圧縮コイルばね24で弾性的に支持した往復動圧縮
機である。
【0054】圧縮機部22は、シリンダ26、ピストン
27、クランク軸28、およびフレーム36から構成さ
れており、このフレーム36に電動機部23が取り付け
られている。密閉容器25に固定され密閉容器内の空間
32に突出する吸込パイプ29の突出部29aと圧縮機
部の吸込サイレンサ30の開口部とを結んで、合成樹脂
製カール部材31が取り付けられている。
【0055】この合成樹脂製カール部材31の形状なら
びに取り付けの詳細を図7ないし図9に示す。
【0056】合成樹脂製カール部材31は、合成樹脂部
材を螺旋状に巻き上げて円筒形に形成したもので図に示
す31dがカール部である。当該カール部材は螺旋状の
突起部31cを有し、カール部材の一部に複数の切欠き
穴31bを設け、その切欠き突出部を図9に示すごとく
内径側に切り起こして形成されている。
【0057】このような合成樹脂製カール部材31の一
端37を、密閉容器25に固定された吸込パイプ29の
密閉容器内部の突出部29aに遊合させ、他端を吸込サ
イレンサ30の開口部内に挿入している。
【0058】このような構成の装置の作用を説明する。
【0059】シリンダ26内に吸い込まれる冷媒ガス
は、シリンダ26に取り付けられている吸込サイレンサ
30から吸入され、ピストン27の往復運動により圧縮
され、シリンダ26から吐出され、吐出パイプ35を経
て密閉形電動圧縮機21外の冷凍サイクル(図示せず)
に送られる。冷凍サイクルで冷却作用を行なったのち、
冷媒は冷凍サイクルから戻り、吸込パイプ29により密
閉形電動圧縮機21内に導かれる。冷媒は吸込パイプの
突出部29aから合成樹脂製カール部材31内を通過し
吸込サイレンサ30を経てシリンダ26内に再び吸い込
まれる。
【0060】図7に示すように、冷凍サイクルから戻っ
てくる冷媒ガスは、吸込パイプ29から合成樹脂製カー
ル部材31内に流入する。この場合、合成樹脂製カール
部材31は熱伝導が悪いため断熱効果があり、密閉容器
25内において発熱している電動機部23の輻射熱を遮
断すると同時に、圧縮機部22からの熱伝導による加熱
をも遮断するため、冷媒ガスの膨張を防止することがで
き、冷媒の密度が低いままシリンダ26内に吸い込まれ
ることになり、冷媒循環量が低下しない効果がある。
【0061】このとき、合成樹脂製カール部材31の一
部に複数の切欠き穴31bを設けてあるので、前記圧縮
機部22のクランク軸28の上端部より飛散している潤
滑油の噴霧体34が前記切欠き穴31bに降り注ぎ、前
記切欠き穴31bから合成樹脂製カール部材31内部に
入り、戻り冷媒ガスと一緒に吸込サイレンサ30からシ
リンダ26内に吸い込まれる。そして、シリンダ26と
ピストン27との間隙33を潤滑する。また、合成樹脂
製カール部材31の外周上に螺旋状に設けた突起部31
cは給油量アップに寄与する。
【0062】本実施例によれば、密閉容器25に取り付
けてある吸込パイプ29の突出部29aと吸込サイレン
サ30の開口部とを接続する切欠き穴31b付きの合成
樹脂製カール部材31を設けることにより、冷凍サイク
ルよりの戻り冷媒ガスの過熱防止を図ることができ、冷
蔵庫や空気調和機に搭載して使用される密閉形電動圧縮
機21の消費電力量低減のための効率改善を図ることが
できる。また、シリンダ26とピストン27との潤滑改
善が可能となり、長寿命の密閉形電動圧縮機を提供する
ことができる。
【0063】特に、フロン規制に対応する新冷媒HFC
134aを採用する場合の冷凍機油の潤滑性の低下を補
うのに好適である。
【0064】〔実施例 2−2〕 次に、図10は、本発明のさらに他の実施例に係る合成
樹脂製カール部材の断面図、図11は、図10のB−B
矢視断面図である。図中、図8,9と同一符号のものは
同等部分を示す。図10,11の合成樹脂製カール部材
を適用する圧縮機は図6と同じであり、取り付け要領は
図7に示したものに準じる。
【0065】図10,11に示す合成樹脂製カール部材
31Aが、図8,9に示したものと相違するところは、
切欠き穴に代えて突出部31cの上部側に複数の開口に
係る小穴31eを設けたことである。
【0066】切欠き穴に代えて小穴31eを設けたもの
では、多少給油量は低下するが、小出力の密閉形電動圧
縮機には十分実用できる。したがって、本実施例におい
ては、給油量の増減の手段は穴径の変更、数の変更によ
り容易に可能なことから、密閉形電動圧縮機のシリンダ
径、ピストンストローク等の大きさにより最適な組合せ
を選定できる。このため、最もコストの安い手段を選ぶ
ことが容易にできるものである。
【0067】〔実施例 2−3〕 次に、図12は、本発明のさらに他の実施例に係るカー
ル部材の取り付けを示す要部断面図、図13は、図12
の合成樹脂製カール部材の断面図である。図12,13
の合成樹脂製カール部材を適用する圧縮機は図6と同じ
であり、同一部品は同一符号で示す。
【0068】図12に示す実施例は、密閉容器25に取
り付けられている吸込パイプ29と吸込サイレンサ30
の位置関係が比較的離れている場合に好適な構造であ
る。すなわち、吸込パイプ29の密閉容器25内突出部
29bを傾斜させて吸込サイレンサ30の方向に向か
せ、切欠き穴41bを有する合成樹脂製カール部材41
の一方側の開口部を挿入し、他方を吸込サイレンサ30
の開口部に斜めに挿入して取り付けたものである。
【0069】合成樹脂製カール部材41は、螺旋状にカ
ール部41dを巻き上げて円筒形に形成したもので、複
数の切欠き穴41bを有している。
【0070】この複数の切欠き穴41bを上側に向け
て、図12に示すように取り付けることにより、圧縮機
部22のクランク軸上端部から飛散している潤滑油の噴
霧体34を容易に吸い込むことができる。また、切欠き
穴41bの開口方向を潤滑油の飛散してくる方向に合わ
せておくことにより、さらに給油量を増すことができ
る。また、合成樹脂製カール部材41は、カール部41
dが連続して切り離されているため可撓性があり、吸込
パイプ29と吸込サイレンサ30とが振動等により距離
の遠近が生じても、機能を損なうことがない。
【0071】なお、上記第二の発明の各実施例は、先の
第一の発明の各実施例と組み合わせて適用できることは
言うまでもない。
【0072】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明(第
および第二の発明)によれば、シリンダ,ピストン間
の隙間を可能な限り小さく設定して容積効率の低下を防
止し、かつ、シリンダ,ピストン間の給油潤滑を充分に
行い、しかも大幅な構造変更を伴うこと無く、加工性お
よび組立性が容易な高効率,高信頼性を維持した密閉形
電動圧縮機を提供することができる。
【0073】また、本発明(第三の発明)によれば、戻
り冷媒ガスの過熱防止を図って圧縮機の効率を改善する
とともに、シリンダ,ピストン間の間隙部の潤滑を効果
的に、かつ、低コストの手段で行いうる密閉形電動圧縮
機を提供することができる。
【0074】特に、これら第一,第二の発明によれば、
フロン規制に対応する新冷媒HFC134aを採用する
場合の冷凍機油の潤滑性の低下を補う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る密閉形電動圧縮機の圧
縮機弁板部の要部断面図である。
【図2】図1の圧縮機部に組み込む、油導入路を形成し
た吐出弁板の平面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る、油導入路を形成し
た弁座板の平面図である。
【図4】図3の弁座板を組み込んだ圧縮機弁部の要部断
面図である。
【図5】従来の密閉形電動圧縮機の縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る密閉形電動圧縮機の
横断面図である。
【図7】図6の圧縮機におけるカール部材を示す要部断
面図である。
【図8】図7の合成樹脂カール部材の断面図である。
【図9】図8のA−A矢視断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施例に係る合成樹脂製
カール部材の断面図である。
【図11】図10のB−B矢視断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例に係るカール部材
の取り付けを示す要部断面図である。
【図13】図12の合成樹脂製カール部材の断面図であ
る。
【図14】従来の他の密閉形電動圧縮機の縦断面図であ
る。
【符号の説明】
6 シリンダ 7 ピストン 8 弁座板 9 吐出弁板 8a,9a 吸込ガス穴 8b,9b 外周 8c,9c 油導入路 22 圧縮機部 23 電動機部 25 密閉容器 26 シリンダ 27 ピストン 28 クランク軸 29 吸込パイプ 29a,29b 突出部 30 吸込サイレンサ 31,31A,41 合成樹脂製カール部材 31b,41b 切欠き穴 31c 突起部 31d,41d カール部 31e 小穴 34 噴霧体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 瀬下 孝司 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者 山本 光司 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者 松浦 功 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者 小田島 毅 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所栃木工場内 (56)参考文献 実開 昭58−73973(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F04B 39/02 F04B 39/12 101

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷凍機油が内部に貯蔵された密閉容器
    と、クランク軸を有し前記密閉容器内に前記クランク軸
    の軸芯を上下方向にして配設された電動機とを有し、こ
    の電動機上部に前記クランク軸を介して連結されたピス
    トンと、このピストンが内部を往復動するシリンダと、
    前記ピストンと前記シリンダとで形成される室に冷媒が
    通流する吸込通路と、この吸込通路を開閉する吸込弁
    と、前記室から前記冷媒が流出する吐出通路と、この吐
    出通路を開閉する吐出弁とを備える密閉形電動圧縮機に
    おいて前記クランク軸の上部に設けられた上部開口を有し前記
    冷凍機油を前記圧縮機部の外部に供給する給油手段と、
    前記シリンダの頂部に装着された弁座板と、この弁座板
    を覆って装着され前記吐出弁が前記吸込通路側から前記
    吐出通路側に延在して設けられた吐出弁板と、前記弁座
    板の前記吐出弁板側表面に設けられ前記密閉容器内の空
    間及び前記吸込通路とを連通する連通路とを備えた こと
    を特徴とする密閉形電動圧縮機。
  2. 【請求項2】 冷凍機油が内部に貯蔵された密閉容器
    と、クランク軸を有し前記密閉容器内に前記クランク軸
    の軸芯を上下方向にして配設された電動機とを有し、こ
    の電動機上部に前記クランク軸を介して連結されたピス
    トンと、このピストンが内部を往復動するシリンダと、
    前記ピストンと前記シリンダとで形成される室に冷媒が
    通流する吸込通路と、この吸込通路を開閉する吸込弁
    と、前記室から前記冷媒が流出する吐出通路と、この吐
    出通路を開閉する吐出弁とを備える密閉形電動圧縮機に
    おいて前記クランク軸の上部に設けられた上部開口を有し前記
    冷凍機油を前記圧縮機部の外部に供給する給油手段と、
    前記シリンダの頂部に装着された弁座板と、この弁座板
    を覆って装着され前記吐出弁が前記吸込通路側から前記
    吐出通路側に延在して設けられた吐出弁板と、この吐出
    弁板に設けられ前記密閉容器内の空間及び前記吸込通路
    とを連通する連通路とを備えた ことを特徴とする密閉形
    電動圧縮機。
  3. 【請求項3】 前記吐出弁板上に設けられた切り抜き部
    により構成された前記連通路を備えたことを特徴とする
    請求項2に記載の密閉形電動圧縮機。
  4. 【請求項4】 前記クランク軸の下部に設けられ前記貯
    蔵された冷凍機油中に浸漬された下部開口と前記上部開
    口とを連通する給油通路を前記クランク軸内に有する前
    記給油手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3
    のいずれかに記載の密閉形電動圧縮機
  5. 【請求項5】 冷凍機油を貯溜した密閉容器内に、電動
    機部と、この電動機部に回転軸を介して連結する圧縮機
    部とを、回転軸心を垂直方向にして弾性的に支持してな
    る密閉形電動圧縮機において、 前記密閉容器に設けてある吸込パイプの密閉容器内部の
    突出部に、円筒形の一部に複数の切欠き穴を有する合成
    樹脂製カール部材の一端を遊合させ、当該カール部材の
    他端を前記圧縮機部に設けてある吸込サイレンサの開口
    部内に挿入したことを特徴とする密閉形電動圧縮機。
  6. 【請求項6】 密閉容器に設けてある吸込パイプの密閉
    容器内部の突出部に、円筒形の一部に複数の切欠き穴を
    有する合成樹脂製カール部材の一端を遊合させ、当該カ
    ール部材の他端を前記圧縮機部に設けてある吸込サイレ
    ンサの開口部内に挿入したことを特徴とする請求項1記
    載の密閉形電動圧縮機。
  7. 【請求項7】 円筒形の合成樹脂製カール部材の一部
    に、複数個の切欠き穴を設け、切欠き突出部を内径側に
    切り起こしたことを特徴とする請求項5または6記載の
    いずれかの密閉形電動圧縮機。
  8. 【請求項8】 円筒形の合成樹脂製カール部材の一部表
    面に突出部を設け、該突出部の上部側に複数の開口を設
    けたことを特徴とする請求項5または6記載のいずれか
    の密閉形電動圧縮機。
  9. 【請求項9】 密閉容器に設けてある吸込パイプの密閉
    容器内部の突出部と圧縮機部の吸込サイレンサとに設け
    た円筒形の合成樹脂製カール部材を傾斜させたことを特
    徴とする請求項5または6記載のいずれかの密閉形電動
    圧縮機。
  10. 【請求項10】 円筒形の合成樹脂製カール部材の一部
    に、切欠き開口部を、圧縮機の回転軸上部から飛散する
    潤滑油の方向に設けたことを特徴とする請求項9記載の
    密閉形電動圧縮機。
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