JP3138364B2 - 防汚塗料組成物 - Google Patents

防汚塗料組成物

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JP3138364B2 JP05174176A JP17417693A JP3138364B2 JP 3138364 B2 JP3138364 B2 JP 3138364B2 JP 05174176 A JP05174176 A JP 05174176A JP 17417693 A JP17417693 A JP 17417693A JP 3138364 B2 JP3138364 B2 JP 3138364B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、海水中において加水分
解するポリエステルを、多価カルボン酸及び/又はその
酸無水物を介してビニル共重合体にグラフト化させた樹
脂をビヒクル成分とする防汚塗料組成物に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】海水面よりも下にある船舶の底部外板、
海洋構造物、魚網などの表面には、各種海中生物が付着
するため、船舶においては効率のよい運航が妨げられ、
海洋構造物及び魚網においては、耐用年数が著しく短く
なるなどの問題が生じるので、その対策として各種防汚
剤を配合した水中防汚塗料組成物が使用されている。従
来から使用されている代表的な防汚塗料として、海水に
不溶性のビニル系樹脂、アルキド樹脂、塩化ゴムなどの
樹脂と海水に溶解性のロジンとからなるビヒクル成分に
防汚剤を配合した不溶解マトリックス型防汚塗料、及び
海水中で徐々に加水分解するトリオルガノ錫含有モノマ
ーを構成成分とする共重合体をビヒクル成分とし、必要
に応じて防汚剤を配合した溶解マトリックス型防汚塗料
などがある。しかし、海水中にロジンとともに防汚剤が
溶出し、防汚効果を発揮する前記不溶解マトリックス型
防汚塗料は、長期間安定した防汚効果が期待できないう
え、ロジンや防汚剤が溶出した後、海水に不溶性の樹脂
成分が塗膜として残り、スケルトン構造を形成するの
で、特に船舶に適用した場合、海水と塗布面の摩擦抵抗
が増大し速度低下、燃費増大などが生じる欠点があっ
た。一方、前記溶解マトリックス型防汚塗料は、防汚効
果はあるが、安全衛生上及び環境保全上の問題点があっ
た。
【0003】また、最近、前記両塗料の中間的タイプと
して有機錫含有樹脂を使用しない、加水分解型ポリエス
テル樹脂と水不溶性樹脂とをビヒクル成分とする防汚塗
料が開発されている(特公平3−46501号公報、特
開平4−23020号公報等)。この防汚塗料は、乳酸
などのオキシ酸の単独縮合物と水不溶性樹脂とをビヒク
ル成分とし、有機錫を含んでいないため、安全衛生上、
環境保全上優れた塗料であるが、水不溶性樹脂を併用し
ているため前記不溶解マトリックス型防汚塗料と同様
に、海水に不溶性の樹脂成分が塗膜として残り、スケル
トン構造を形成するという欠点があった。そこでオキシ
酸の単独縮合物のみをビヒクル成分とする防汚塗料も考
えられていたが、該縮合物は、分子量を数万以上のレベ
ルで高分子量化するとクロロホルムなどの特殊な有機溶
剤にしか溶解せず、通常の塗料用有機溶剤に溶解しない
ので、塗料化及び塗装作業性に欠点があり、一方、分子
量を1万以下に低分子量化すると通常の塗料用有機溶剤
に溶解するが、海水中における加水分解速度が大きす
ぎ、そのうえ加水分解速度が調整できないので、長期防
汚効果が得られないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これまで述
べたような従来の防汚塗料の欠点を克服し、海水面より
も下にある船舶の底部外板、海洋構造物、魚網などの表
面に、各種海中生物が付着するのを効果的に、長期間防
止できるとともに、安全衛生及び環境保全上も優れてい
る塗料組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な現状を克服するため研究を行った結果、有機錫を含有
せず、かつ加水分解速度のコントロールが可能な、特定
の加水分解型ポリエステルをビニル共重合体に多価カル
ボン酸及び/又はその酸無水物を介してグラフト化させ
た樹脂をビヒクル成分として使用することにより、長期
防汚性を有し、また安全衛生及び環境保全上に優れ、さ
らに塗料として安定性のよい塗料組成物が得られるとい
う知見を得て本発明を完成したものである。すなわち本
発明は、(イ)オキシ酸及び/又はその縮合物、(ロ)
ヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸及び/又はそ
の酸無水物及び(ハ)多価アルコールとを、前記(イ)
と(ハ)中の総ヒドロキシル基と前記(イ)と(ロ)中
の総カルボキシル基との当量比が(1/0.9〜1.1)と
なる割合にて反応せしめた加水分解型ポリエステル
(A)を、ヒドロキシル基及び/又はグリシジル基を持
つ重合性不飽和モノマーを少なくとも10モル%以上構
成成分として含むビニル共重合体(B)に、多価カルボ
ン酸及び/又はその酸無水物(C)を介してグラフト化
せしめて得られる樹脂で、かつ該樹脂中の遊離カルボキ
シル基をブロック化剤にてブロック化せしめ、酸価20
以下とした樹脂をビヒクル成分とする防汚塗料組成物を
提供する。以下本発明を詳細に説明する。
【0006】まず加水分解型ポリエステル(A)につい
て説明する。本発明で用いるオキシ酸(イ)は、分子中
にヒドロキシル基とカルボキシル基を有する化合物であ
って、具体的な例を挙げると、乳酸、グリコール酸、2
−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒド
ロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒ
ドロキシ−2−メチル酪酸、ヒドロアクリル酸、10−
ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン
酸、リシノール酸、モノヒドロキシアルキルフタル酸、
リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、マンデル酸、2−ヒ
ドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシグ
ルタル酸、サリチル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキ
シフェニル酢酸などであって、これらを単独で、又は二
種以上の混合物として使用できる。またこれらオキシ酸
の自己縮合物もオキシ酸と同様に使用することができ
る。なお、この縮合物の重量平均分子量は、5,000以
下とするのが好ましく、また、必要により、前記オキシ
酸の二量体及び三量体のような分子量の小さな縮合物も
用いることができる。
【0007】本発明で用いるヒドロキシル基を含まない
多価カルボン酸又はその酸無水物(ロ)は、通常、ポリ
エステルの製造に用いられるものであれば適宜選択して
使用することができる。具体的な例として挙げることが
できるものには、蓚酸、コハク酸、無水コハク酸、アジ
ピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの直鎖多塩基
酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタ
ル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル
酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタ
ル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリ
ット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族多塩基酸;マ
レイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸な
どの不飽和多塩基酸等がある。なお、必要に応じて安息
香酸、p−t−ブチル安息香酸、各種動植物油脂肪酸の
ような一塩基酸を分子量調整剤として用いることもでき
る。本発明で用いる多価アルコール(ハ)は、ポリエス
テルの製造に通常用いる多価アルコールから適宜選択し
て使用することができる。具体的な例を挙げると、エチ
レングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタ
ンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレング
リコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリ
コール等のグリコール類、水素化ビスフェノールA、ビ
スフェノールジヒドロキシプロピルエーテル、グリセリ
ン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、
ペンタエリスリトールなどがある。本発明の加水分解型
ポリエステル(A)は、前述の(イ)オキシ酸及び/又
はその縮合物、(ロ)ヒドロキシル基を含まない多価カ
ルボン酸及び/又はその酸無水物、及び(ハ)多価アル
コールを触媒の存在もしくは不存在下に脱水しつつ、1
80〜230℃の温度下で、加熱反応させることにより
得ることができる。また、この加水分解型ポリエステル
の製法は、前記方法に限定されるものではなく、例え
ば、ヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸と多価ア
ルコールとを予め反応させ、プレポリマー化し、それと
オキシ酸及び/又はその縮合物を反応させる方法であっ
てもよい。
【0008】なお、この加水分解型ポリエステル(A)
を製造する際、(イ)オキシ酸及び/又はその縮合物、
(ロ)ヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸及び/
又はその酸無水物、及び(ハ)多価アルコールの合計重
量に対し、(イ)オキシ酸及び/又はその縮合物の割合
を10〜95重量%、特に15〜90重量%とするのが
好ましく、さらに(イ)オキシ酸及び/又はその縮合
物、及び(ハ)多価アルコール中の総ヒドロキシル基
と、(イ)オキシ酸及び/又はその縮合物、並びに
(ロ)ヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸及び/
又はその酸無水物中の総カルボキシル基との当量比が
(1/0.9〜1.1)とするのが好ましい。なお、当量比
が、前記範囲よりカルボキシル基が過剰になると後述す
るビニル共重合体へのグラフト化率が減少し、一方、カ
ルボキシル基が少な過ぎると加水分解後の樹脂側鎖末端
がヒドロキシル基となりやすく、いずれも好ましくな
い。加水分解型ポリエステル(A)は、重量平均分子量
(以下Mw という) が200〜50,000、好ましくは
500〜10,000とするのが適当である。このように
して得られた加水分解型ポリエステル(A)は、前述の
通りビニル共重合体に多価カルボン酸及び/又はその酸
無水物を介して、ビニル共重合体(B)にグラフト化さ
せる。このようにして調製した樹脂は、グラフト化した
ポリエステル主鎖中にオキシ酸又はその縮合物(イ)の
エステル結合を含むので、弱酸性もしくは弱アルカリ性
環境下では前記エステル結合部位で加水分解を受け、本
体の樹脂側に遊離カルボキシル基を常に残すので水に可
溶であるという特徴を有するのである。
【0009】次に本発明のビニル共重合体(B)につい
て説明する。ビニル共重合体(B)は、これに加水分解
型ポリエステル(A)を多価カルボン酸及び/又はその
酸無水物(C)を介してグラフト化させるため、多価カ
ルボン酸中のカルボキシル基と反応するヒドロキシル基
及び/又はグリシジル基を有するものである。したがっ
て、このビニル共重合体(B)を製造する場合、ヒドロ
キシル基及び/又はグリシジル基を持つ重合性不飽和モ
ノマーを少なくとも構成成分として含む重合性不飽和モ
ノマー混合物を、例えばラジカル重合開始剤の存在下で
80〜180℃で2〜10時間反応させる。前記ヒドロ
キシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレー
ト、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート
などが代表的なものとして挙げられる。
【0010】前記グリシジル基含有重合性不飽和モノマ
ーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチル
グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエ
ーテル、アリールグリシジルエーテル、3,4−エポキ
シシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが代
表的なものとして挙げられる。本発明のビニル共重合体
(B)は、このようなヒドロキシル基及び/又はグリシ
ジル基を持つ重合性不飽和モノマーと下記に代表される
重合性不飽和モノマーの1種もしくは2種以上からなる
混合物との共重合体である。後者の重合性不飽和モノマ
ーを挙げると、例えば、メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレ
ート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウ
リル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エス
テル;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノ
マー;パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレー
ト、プロピルパーフルオロオクタンスルホンアミドエチ
ル(メタ)アクリレート、フッ化ビニル、フッ化ビニリ
デン等の含フッ素ビニルモノマー;ジエチル(メタ)ア
クリルアミド、(メタ)アクリルアミド等の含窒素ビニ
ルモノマー;ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエー
テル等のビニルエーテルモノマー;酢酸ビニル、安息香
酸ビニル等のビニルエステル;その他(メタ)アクリル
酸クロライド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)
アクリロニトリル、γ−(メタ)アクリロキシアルキル
トリメトキシシラン等のである。
【0011】なおヒドロキシル基及び/又はグリシジル
基を持つ重合性不飽和モノマーは、少なくとも10モル
%以上、好ましくは15〜60モル%とするのが適当で
ある。10モル%未満になると加水分解性が不十分とな
り、また塗膜から加水分解型ポリエステルが加水分解し
た後の残存ビニル共重合体の溶解性が悪くなり、そのた
め防汚塗料としての機能が十分発揮出来ないので好まし
くない。またビニル共重合体(B)のMw は1,000〜
100,000、好ましくは5,000〜30,000とする
のが適当である。次に本発明の多価カルボン酸及び/又
はその酸無水物(C)について説明する。多価カルボン
酸及び/又はその酸無水物(C)は、加水分解型ポリエ
ステル(A)をビニル共重合体(B)にグラフト化する
ための橋かけ的機能を有するものである。すなわち多価
カルボン酸及び/又はその酸無水物(C)は、加水分解
型ポリエステル(A)中のヒドロキシル基と、またビニ
ル共重合体(B)中のヒドロキシル基及び/又はグリシ
ジル基と反応することにより、加水分解型ポリエステル
(A)がビニル共重合体(B)に多価カルボン酸及び/
又はその酸無水物(C)を介してグラフト化されるので
ある。多価カルボン酸及び/又はその酸無水物(C)と
しては、加水分解型ポリエステル(A)の製造に使用す
るヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸及び/又は
その酸無水物(ロ)と同様なものが使用可能である。
【0012】このような加水分解型ポリエステル
(A)、ビニル共重合体(B)、多価カルボン酸及び/
又は酸無水物(C)とから得られる樹脂は、(A)と
(B)と(C)とを同時に反応させる方法、(A)と
(C)とを反応させた後、(B)を反応させる方法、
(B)と(C)とを反応させた後(A)を反応させる方
法のいずれの方法からも製造することが可能である。通
常前記方法で、80〜220℃で、5〜15時間反応さ
せるのが適当である。なお、加水分解型ポリエステル
(A)を多価カルボン酸(C)を介してビニル共重合体
(B)にグラフト化させる割合は、ビニル共重合体
(B)中の水酸基及び/又はグリシジル基の10〜10
0%、好ましくは15〜80%とするのが適当である。
この範囲で加水分解型ポリエステル(A)が適当数グラ
フト化され、長期防汚性が発揮できるようになる。
【0013】このようにして得られた樹脂は、遊離カル
ボキシル基を有しているので、そのまま防汚塗料のビヒ
クル成分として使用すると後述する亜酸化銅などの金属
系防汚剤と反応し、ゲル化しやすくなり、塗料の貯蔵安
定性が悪くなる。それ故本発明で使用するビヒクル成分
は、前記樹脂の遊離カルボキシル基の少なくとも一部を
メタノール、エタノール、ブチルアルコール等のヒドロ
キシル基含有化合物;アリルグリシジルエーテル、ブチ
ルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等
のグリシジル基含有化合物;イソシアン酸メチル、イソ
シアン酸エチル、ヘキサメチレンジイソシアネート等の
イソシアネート基含有化合物;(ジ)エチルアミン、
(ジ)イソプロピルアミン等のアミノ基含有化合物など
のブロック化剤にてブロック化し、酸価20以下、好ま
しくは5以下にしたものを使用するのが好ましい。
【0014】なお、遊離カルボキシル基をブロック化剤
にてブロック化する場合、前述の通り、ビニル共重合体
(B)に多価カルボン酸及び/又はその酸無水物(C)
を介して加水分解型ポリエステル(A)をグラフト化し
た樹脂の遊離カルボキシル基に対し、ブロック化しても
よい。また、グラフト化する前の加水分解型ポリエステ
ル(A)の遊離カルボキシル基に対し、ブロック化し、
しかる後多価カルボン酸及び/又はその酸無水物(C)
を介してビニル共重合体(B)にグラフト化してもよ
い。このようにして遊離カルボキシル基をブロック化せ
しめて得られた樹脂は、ポリエステル中にオキシ酸又は
その縮合物のエステル結合を含むので、エステル結合部
位で加水分解を受け、水に可溶であるとともに該ポリエ
ステルをビニル共重合体にグラフト化せしめているので
ポリエステルが加水分解した後の残った塗膜に新たに防
汚塗料を塗り重ねた時の密着性、すなわちリコート性に
優れているという特徴を有するのである。
【0015】この樹脂に、溶媒としてトルエン、キシレ
ンなどの芳香族系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸
ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、
ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、ジオキサ
ン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒等を用い
て、所望の樹脂濃度に希釈し、防汚塗料のビヒクル成分
として使用する。本発明の防汚塗料組成物は、前記樹脂
をビヒクル成分とし、さらに必要に応じて、公知の防汚
剤、着色顔料、体質顔料、ロジン、炭素数5〜18の1
価有機酸の銅化合物、溶剤、可塑剤並びに発泡防止剤、
沈降防止剤、レベリング剤などの各種添加剤を配合する
ことができる。本発明において必要に応じて使用する防
汚剤は、特に制限する必要はないが、例として挙げる
と、亜酸化銅、塩基性炭酸銅、チオシアン銅、水酸化
銅、ロダン第一銅、マンガニーズエチレンビスジチオカ
ーバメート、ジンクジメチルジチオカーバメート、2−
メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピ
ルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラク
ロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルクロロフェ
ニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、
4,5−ジクロロ−2−N−オクチル−3(2H)イソ
チアゾロン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタ
ルイミド、N,N−ジメチル−N′−フェニル(N−フ
ルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラメチ
ルチウラムジサルファイド、2,4,6−トリクロロフ
ェニルマレイミド、2−ピリジンチオール−1−オキシ
ド亜鉛塩などがあり、これらを単独で又は混合して使用
することができる。
【0016】また、本発明において必要に応じて使用す
る溶剤は、前述の樹脂の溶媒と同様のものである。また
本発明において必要に応じて使用する着色顔料、体質顔
料、可塑剤、各種添加剤等は、通常の防汚塗料に使用さ
れているものと同じものである。本発明の防汚塗料組成
物を調製する場合、前記樹脂15〜50重量%、好まし
くは20〜30重量%、溶剤(溶媒)20〜70重量
%、好ましくは30〜50重量%、防汚剤0〜45重量
%、好ましくは20〜40重量%を加えて調製するのが
適当である。本発明の防汚塗料組成物は、前記樹脂及び
その他の成分を、ボールミル、ディスパーなどの通常の
塗料製造装置で、一括又は分割混合分散することによ
り、混合分散して調製する。このように調製した本発明
の防汚塗料組成物は、そのまま、または溶剤で粘度調整
した後、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、ロ
ーラー塗装、刷毛塗りなどにより、船舶や海洋構造物等
に、乾燥後に約30μm〜300μm 、好ましくは80
〜200μm の膜厚になるように適用するのが好まし
い。
【0017】
【発明の効果】本発明により、有機錫含有樹脂をビヒク
ル成分とする溶解マトリックス型防汚塗料とほぼ同等の
長期防汚性を有し、塗膜の加水分解速度のコントロール
も可能であり、かつ有機錫含有樹脂を含んでいないので
安全衛生上及び環境保全上の問題も少ない画期的な防汚
塗料が得られた。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明する。なお、実施例中「部」及び「%」は重量を基
準として示す。 <加水分解型ポリエステル(A)−1の調製>フラスコ
中に乳酸を仕込み、180℃で6時間加熱反応させ、オ
キシ酸縮合物を調製した。該オキシ酸縮合物を150
部、エチレングリコールを62部、無水フタル酸を14
8部フラスコ中に仕込み、220℃で10時間加熱反応
させ、Mw 4,000のポリエステル(A)−1を調製し
た。なお、オキシ酸縮合物とエチレングリコール中の総
ヒドロキシル基とオキシ酸縮合物と無水フタル酸中の総
カルボキシル基との当量比は1/1である。また前記反
応において生成する水は除去しながら反応させた。
【0019】<加水分解型ポリエステル(A)−2の調
製>フラスコ中にリンゴ酸を仕込み、200℃で8時間
加熱反応させ、オキシ酸縮合物を調製した。該オキシ酸
縮合物を45部、プロピレングリコールを76部、無水
フタル酸を148部フラスコ中に仕込み、220℃で1
4時間加熱反応させ、Mw 6,000のポリエステル
(A)−2を調製した。なお、オキシ酸縮合物とプロピ
レングリコール中の総ヒドロキシル基とオキシ酸縮合物
と無水フタル酸中の総カルボキシル基との当量比は1/
1.1である。また前記反応において生成する水は除去し
ながら反応させた。
【0020】<加水分解型ポリエステル(A)−3の調
製>フラスコ中に乳酸を250部、エチレングリコール
を62部、アジピン酸を146部仕込み、180℃で1
0時間加熱反応させ、Mw 3,000のポリエステル
(A)−3を調製した。なお、オキシ酸とエチレングリ
コール中の総ヒドロキシル基とオキシ酸とアジピン酸中
の総カルボキシル基との当量比は1/1である。また前
記反応において生成する水は除去しながら反応させた。 <ポリエステル(A)−4の調製>フラスコ中に無水フ
タル酸を74部、アジピン酸を73部、エチレングリコ
ールを62部仕込み、200℃で12時間加熱反応さ
せ、Mw 6,000のポリエステル(A)−4を調製し
た。なお、エチレングリコール中のヒドロキシル基と無
水フタル酸とアジピン酸中の総カルボキシル基との当量
比は1/1である。なお前記反応において生成する水は
除去しながら反応させた。
【0021】<ビニル共重合体ワニス(B)−1の調製
>フラスコ中にキシレンを200部仕込み、100℃に
昇温した後、グリシジルメタクリレート40部、エチル
アクリレート100部、メチルメタクリレート60部、
アゾビスイソブチロニトリル3部からなる混合物を3時
間かけて滴下し、さらに5時間反応させ、Mw 8000
のビニル共重合体ワニス(B)−1を調製した。なお前
記全モノマー中のグリシジルメタクリレートの量は15
モル%である。 <ビニル共重合体ワニス(B)−2の調製>フラスコ中
にキシレンを200部仕込み、100℃に昇温した後、
ヒドロキシエチルメタクリレート60部、n−ブチルア
クリレート40部、エチルアクリレート100部、アゾ
ビスイソブチロニトリル5部からなる混合物を3時間か
けて滴下し、さらに5時間反応させ、Mw 6000のビ
ニル共重合体ワニス(B)−2を調製した。なお前記全
モノマー中のヒドロキシエチルメタクリレートの量は、
26モル%である。
【0022】<ビニル共重合体ワニス(B)−3の調製
>フラスコ中にキシレンを200部仕込み、100℃の
昇温した後、グリシジルメタクリレート80部、n−ブ
チルアクリレート30部、エチルメタクリレート90
部、アゾビスイソブチロニトリル2部からなる混合物を
3時間かけて滴下し、さらに5時間反応させ、Mw 10
000のビニル共重合体ワニス(B)−3を調製した。
なお前記全モノマー中のグリシジルメタクリレートの量
は、35モル%である。 <ビニル共重合体ワニス(B)−4の調製>フラスコ中
にキシレンを200部仕込み、110℃に昇温した後、
グリシジルメタクリレート14部、エチルアクリレート
120部、メチルメタクリレート66部、アゾビスブチ
ロニトリル5部からなる混合物を3時間かけて滴下し、
さらに5時間反応させ、Mw 6000のビニル共重合体
ワニス(B)−4を調製した。なお前記全モノマー中の
グリシジルメタクリレートの量は、5モル%である。
【0023】<樹脂ビヒクルIの調製>フラスコ中に加
水分解型ポリエステル(A)−1を510部、ブタノー
ルを74部仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら
8時間反応させた。次いでアジピン酸を73部加え、1
80℃、5時間反応させた。次いでビニル共重合体ワニ
ス(B)−1を1420部加え、200℃で10時間反
応させ、Mw 18000、酸価10の樹脂ビヒクルIを
調製した。 <樹脂ビヒクルIIの調製>フラスコ中に加水分解型ポリ
エステル(A)−1を510部、ヘキサノールを102
部仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら8時間反
応させた。次いでコハク酸を118部加え、180℃、
5時間反応させた。次いでビニル共重合体ワニス(B)
−2を876部加え、200℃で12時間反応させ、M
w 28000、酸価13の樹脂ビヒクルIIを調製した。 <樹脂ビヒクルIII の調製>フラスコ中に加水分解型ポ
リエステル(A)−2を701部、ブタノールを74部
仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら8時間反応
させた。次いでアジピン酸を73部加え、180℃で5
時間反応させた。次いでビニル共重合体ワニス(B)−
3を710部加え、200℃で12時間反応させ、Mw
37000、酸価16の樹脂ビヒクルIII を調製した。
【0024】<樹脂ビヒクルIVの調製>フラスコ中に加
水分解型ポリエステル(A)−3を534部、ブタノー
ルを74部仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら
8時間反応させた。次いで無水フタル酸を148部加
え、180℃で5時間反応させた。次いでビニル共重合
体ワニス(B)−1を1420部加え、200℃で10
時間反応させ、Mw 20000、酸価9の樹脂ビヒクル
IVを調製した。 <樹脂ビヒクルVの調製>フラスコ中に加水分解型ポリ
エステル(A)−2を701部、ヘキサノールを102
部仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら8時間反
応させた。次いでアジピン酸を73部加え、180℃、
5時間反応させた。次いでビニル共重合体ワニス(B)
−1を1420部加え、200℃で10時間反応させ、
Mw 21000、酸価10の樹脂ビヒクルVを調製し
た。
【0025】<樹脂ビヒクルVIの調製>フラスコ中に加
水分解型ポリエステル(A)−1を510部、ビニル共
重合体ワニス(B)−1を1420部仕込み、200℃
で10時間反応させ、Mw 14000、酸価7の樹脂ビ
ヒクルVIを調製した。 <樹脂ビヒクルVII の調製>フラスコ中に加水分解型ポ
リエステル(A)−1を510部、ブタノールを74部
仕込み、170℃に昇温し、水除去しながら8時間反応
させた。次いでアジピン酸を73部加え、180℃で5
時間反応させた。次いでビニル共重合体ワニス(B)−
4を2004部加え、200℃で10時間反応させ、M
w 14000、酸価8の樹脂ビヒクルVII を調製した。
【0026】<樹脂ビヒクルVIIIの調製>フラスコ中に
加水分解型ポリエステル(A)−4を801部、ブタノ
ールを74部仕込み、170℃に昇温し、水除去しなが
ら8時間反応させた。次いでアジピン酸を73部加え、
180℃で5時間反応させた。次いでビニル共重合体ワ
ニス(B)−1を1420部加え、200℃で10時間
反応させ、Mw 19000、酸価12の樹脂ビヒクルVI
IIを調製した。 〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕表1及び2に示した
組成物を混練分散し、実施例1〜5及び比較例1〜5の
防汚塗料を製造した。これら各防汚塗料を、防錆塗料を
塗布した鋼板に乾燥膜厚150μmになるようエアスプ
レー塗装し、乾燥させた。得られた試験板について、防
汚性試験及び膜厚減少測定試験を行なったところ、それ
ぞれ表3、及び表4に示す結果が得られた。なお、試験
は、次の方法に基づいて行なった。
【0027】<防汚性試験法>三重県鳥羽市鳥羽湾にお
いて、試験板を海中に沈め、塗膜外観を観察した。 評価基準 5:試験板に付着物が認められない。 4:試験板に薄いスライムの付着が認められる。 3:試験板に厚いスライムの付着が認められる。 2:大型動植物の付着が少し認められる。 1:大型動植物の付着が多く認められる。 <膜厚減少測定試験法>試験板を周速15ノットのロー
タに取付け、海中で回転を行ない、3ケ月毎に膜厚減少
の程度を測定した。なお、表4中の数値は、マイクロメ
ーターにより測定した初期膜厚と3ケ月毎に測定した膜
厚の差(単位:μm)である。 <塗料貯蔵安定性試験法>50℃恒温槽で6ケ月保存
し、粘度の増減を測定した。 評価基準 ○:初期粘度に比較し、5%以内の増減 △: 〃 10% 〃 ×: 〃 10%越える増減
【0028】
【表1】 表 1 防汚塗料の組成 (単位:部) ─────────────────────────────────── 組 成 実 施 例 1 2 3 4 5 樹脂ビヒクルの種類 I II III IV V 〃 の量 45 45 45 45 45 塩素化パラフィン 3 亜酸化銅 35 35 30 30 30 ジンクジメチルチオカーバメート 5 5 5 タルク 5 5 2 5 5 弁柄 3 3 3 3 3 キシレン 10 10 10 10 10 メチルイソブチルケトン 2 2 2 2 2 ───────────────────────────────────
【0029】
【表2】 表 2 防汚塗料の組成 (単位:部) ─────────────────────────────────── 組 成 比 較 例 1 2 3 4 5 樹脂ビヒクルの種類 VI VII VIII 〃 の量 45 45 45 ロジン 15 塩化ビニル樹脂 20 有機錫メタクリレート共重合体 注1) 45 塩素化パラフィン 5 亜酸化銅 35 35 35 35 35 ジンクジメチルチオカーバメート 5 タルク 5 5 5 2 5 弁柄 3 3 3 3 3 キシレン 10 10 10 15 12 メチルイソブチルケトン 2 2 2 ─────────────────────────────────── 注1)トリブチル錫メタクリレート/メチルメタクリレート(65/35) 共重合体
【0030】
【表3】 表 3 防汚性試験結果 ────────────────────────────── 浸 漬 月 数 3 6 9 12 18 24 30 36 実 1 5 5 5 5 5 5 5 5 2 5 5 5 5 5 5 5 4 施 3 5 5 5 5 5 5 5 4 4 5 5 5 5 5 5 5 4 例 5 5 5 5 5 5 5 5 4 比 1 4 3 3 2 2 ハクリ − − 2 4 4 3 3 2 1 1 1 較 3 3 3 2 1 1 1 1 1 4 4 4 3 2 1 1 1 1 例 5 5 5 5 5 5 5 5 5
【0031】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新田 朋久 栃木県那須郡西那須野町下永田3−1172 −4 (56)参考文献 特開 昭53−71192(JP,A) 特開 昭63−297465(JP,A) 特開 平4−149256(JP,A) 特開 平4−264135(JP,A) 特開 平4−283278(JP,A) 特公 平7−122036(JP,B2) 欧州特許出願公開617096(EP,A 2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 5/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (イ)オキシ酸及び/又はその縮合物、
    (ロ)ヒドロキシル基を含まない多価カルボン酸及び/
    又はその酸無水物並びに(ハ)多価アルコールとを、前
    記(イ)と(ハ)中の総ヒドロキシル基と前記(イ)と
    (ロ)中の総カルボキシル基との当量比が(1/0.9〜
    1.1)となる割合にて反応せしめた加水分解型ポリエス
    テル(A)を、ヒドロキシル基及び/又はグリシジル基
    を持つ重合性不飽和モノマーを少なくとも10モル%以
    上構成成分として含むビニル共重合体(B)に、多価カ
    ルボン酸及び/又はその酸無水物(C)を介してグラフ
    ト化せしめて得られる樹脂で、かつ該樹脂中の遊離カル
    ボキシル基をブロック化剤にてブロック化せしめ、酸価
    20以下とした樹脂をビヒクル成分とする防汚塗料組成
    物。
  2. 【請求項2】 加水分解型ポリエステル(A)は、前記
    (イ)、(ロ)および(ハ)の合計重量に対し、前記
    (イ)を10〜95重量%含む割合で反応せしめたもの
    である請求項1記載の防汚塗料組成物。
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