本考案は、自然薯の栽培容器に関する。
自然薯には天然物と栽培物があり、現在流通する殆どの自然薯は栽培物である。
天然の自然薯は、親芋から栄養分を受け取りながら、毎年新しい芋に生え替わる。春になると、親芋の上端から約5cm以内の位置に一つの突起が生じ、該突起の付け根付近から上方へ向けて一つの新芽が生える。これらは親芋の栄養分を利用して成長し、それぞれ、突起は新芋に、新芽は蔓になる。それに伴って、親芋は栄養分を奪われて徐々に痩せ細り、最終的には消失する。これが毎年繰り返されることによって、次第に大きな芋になっていくことが知られている。
天然の自然薯は、地中深くまで成長し、また障害物があると曲がって複雑な形状となるから、傷付けずに掘り起こして収穫することは、手間の掛かる難しい作業である。また、多くの株が群生することは稀で、天然の自然薯を大量に収穫することは困難である。高品質の天然物を好む需要者は多いものの、その需要に応えられるだけの供給ができないのが現状である。
一方、栽培物の自然薯は、種芋,零余子等を畑に植えて栽培することで得られる。栽培容器を利用することにより、収穫が容易で調理し易い、真直ぐな芋を得ることができることも、栽培の特長である。斯様な栽培容器として、例えば特許文献1には、長尺状の主板部と、主板部の一方の短手側の一部から長手方向へ延在した末広がり状の副板部と、からなる平板を復元可能な可撓性部材により構成し、前記平板を短手方向側へ丸めることによって、主板部で筒状の栽培器本体を形成すると共に、副板部で樋状の受部を形成し、さらに前記栽培器本体の筒径を保持する固定手段を備えていることを特徴とする山芋の栽培器が開示されている。
畑等での栽培は人為的環境で行われるため、病害や虫害がひとたび発生すると蔓延し易く、甚大な被害を蒙る虞がある。特にヤマノイモモザイク病は深刻であって、複数年に亘って栽培を繰り返すと高い確率で発症することが知られている。発症すると大多数の芋を失うだけでなく、次年以降の発症リスクが高まり、栽培を断念せざるを得ない事態に陥ることもある。ヤマノイモモザイク病の発病を抑えて栽培するための試みとして、例えば特許文献2には、ジネンジョの組織を培養してマイクロチューバ付きの培養体を形成し、この培養体からマイクロチューバを分離した後、この分離したマイクロチューバを土壌で栽培することによりジネンジョを製造することを特徴とするジネンジョの製造方法が開示されている。
特開平11−239414号公報
特開2004−57149号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の栽培器は、飽くまでも畑等で栽培を行うためのものであって山野に自生する自然薯には適用できず、高品質の天然物を得ることはできない。
また、冒述の通り自然薯には毎年大きな芋に生え替わる性質があるのに反して、栽培は、コスト等の観点から通常1年以内で行われる。そのため、成長の早い特殊な株,種芋等が多用されるが、特殊な株,種芋等を調達する手間が必要でコストも嵩む上、それによっても1年物の未成熟な芋しか収穫できない。
特許文献2に記載のジネンジョの製造方法は、ヤマノイモモザイクウイルスに感染していないウイルスフリーのマイクロチューバを栽培することによってヤマノイモモザイク病の発症を回避する方法であるが、既にウイルスに汚染された土壌においては感染防止できず、その効果は限定的でしかない。
マイクロチューバを得るために多段階の複雑な培養が必要であって、多大な時間とコストを要するから、マイクロチューバを入手するための費用が嵩む。
ヤマノイモモザイク病以外の病害や虫害に対しても事態は同様であり、人為的環境において栽培を行う限り、病害又は虫害への高額な対策費用が必要であるものの、その効果は限定的であり、常に甚大な被害を蒙る虞を孕んでいる。
これらの問題点に鑑み、本考案は、手間やコストを掛けず簡便に使用でき、1年物ではなく充分に成長した多年物の自然薯を得られる栽培容器を提供することを課題とする。また、山野に自生する自然薯を親芋として用いた栽培(以下、半自然栽培と称する)も可能であって、山野の生態系を利用して病害や虫害のリスクを回避しつつ、高品質の天然物の自然薯を栽培し収穫することのできる栽培容器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本考案の請求項1に記載の自然薯の栽培容器は、周方向に開閉可能な剛性を有する略円筒形状の本体の、長手方向の一端に近い底部に立設された弾性を有する略円筒形状の筒材に、本体内外を通じる挿通孔が設けられてなることを特徴としている。
請求項2に記載の考案は、請求項1に記載の自然薯の栽培容器であって、本体の、挿通孔に近い長手方向の一端において周の一部に連設され、本体から離れるにつれて徐々に幅広く形成された可撓性シート状の蓋を具えたことを特徴としている。
請求項3に記載の考案は、本体の底部を含む内周の少なくとも一部に、本体の長手方向ほぼ全域に亘り、周方向に凹凸を有する波板が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自然薯の栽培容器である。
本考案に係る自然薯の栽培容器を用いると、自然薯の親芋の頂部を、前記挿通孔を通して本体内に導くことにより、突起が本体内で生育するから、充分に成長した多年物の自然薯を得ることができる。前記本体は周方向に開閉可能であるから、地中深くまで掘る作業が不要であって、本体を開くだけで容易に自然薯を収穫できる。
親芋の頂部を挿通孔に通すこと以外に特別な手間が掛からず、また成長の早い特殊な株,種芋等を必ずしも必要としないから、作業が簡便であり、作業時間やコストを要しない。
山野に自生する自然薯に適用して半自然栽培を行うことが可能であり、高品質の、天然物の自然薯を得ることができる。この場合、本体内で新芋が生育するから、地中の障害物のために曲がってしまい複雑な形状となることが回避され、調理し易い真直ぐな形状の新芋を得ることができる。即ち、天然物でありながら、消費者から好まれる真直ぐな形状を持つ、従来に無い自然薯を得ることができる。
半自然栽培の場合、自然薯は生態系中で生育するから、ウイルスや害虫等の異常な増殖が起り難い。畑等の人為的環境下で繰り返し栽培されないから、病害や虫害の蔓延によって、多数の自然薯を同時に失うリスクが回避される。ウイルスフリーのマイクロチューバや、特殊な株,種芋等を用いる必要が無いから、それらを調達する手間やコストが不要である。
請求項2に記載の自然薯の栽培容器によれば、本体の一端を蓋で覆うことができるから、降雨等によって本体内部の土が流出し失われることが回避される。本体と可撓性の蓋との間に隙間を作ることができ、蔓及び根は、前記隙間を通って栽培容器外にまで伸長することができる。新芋の生育に適した環境を維持することができるし、零余子による自然薯の増殖を妨げないから、半自然栽培により適している。
請求項3に記載の自然薯の栽培容器によれば、低い方へ成長する性質を持つ自然薯が、波板の凹みに沿って生育するから、より真直ぐで調理し易い形状の自然薯を得ることが可能である。
以下に、本考案を実施するための最良の形態を、実施例を示す図面を参照して詳細に説明する。尚、本実施例に、本考案は限定されるものではない。
図1は、本考案の実施例を示す斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。
本考案に係る自然薯の栽培容器は、図1及び図2に示される様に、周方向に開閉可能な剛性を有する略円筒形状の本体1の、長手方向の一端に近い底部に立設された弾性を有する略円筒形状の筒材3に、本体内外を通じる挿通孔2が設けられてなる。
本体1は、ポリ塩化ビニルを中空の略円筒形状に形成したもので、内壁の一方の側面には長手方向の一端から他端に至る一条の凹溝1aが設けられている。本体1は、凹溝1aと対向する側面において、空隙が生じない様その一部が重ねられている。
本体1の材質は、開閉可能に形成でき新芋を傷付けずに覆えるものであれば必ずしもポリ塩化ビニルに限定されず、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメタクリル酸エステル,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリアミド,ポリカーボネート,ABS樹脂等の合成樹脂や、防錆処理された金属板の他、竹材や木材等を用いることができる。凡そ6乃至10ヶ月間の自然薯栽培期間中に腐食を起こさない程度の耐腐食性を有する合成樹脂又は竹材が好適であり、安価に入手でき加工し易いポリ塩化ビニル又はポリエチレンが、特に好適に用いられる。市販のポリ塩化ビニル製パイプを、加工して用いても良い。
本体1の形状は、中空で両端が開放された形状であれば略円筒形状でなくとも使用に堪えるが、真直ぐでほぼ円形の断面を持つ、調理し易く見栄え良い形状の芋を得るためには、略円筒形状であることが最も好ましい。
凹溝1aは、本体1の内壁の一方の側面に設けられ、本体1の長手方向の一端から他端に至る略半円柱状に形成されている。ポリ塩化ビニル製の本体1は、凹溝1aを中心に、周方向に開閉可能である。
凹溝1aの形状は、必ずしも略半円柱状に限られず、略半楕円柱状,扇柱状,又は任意多角形の断面を有する角柱状であっても良い。凹稜が存在すると、本体1の開閉が繰り返されることによって、前記凹稜付近において本体1の強度が低下し破損する虞があるから、凹稜を持たない略半円柱状,略半楕円柱状又は扇柱状であることが好ましい。
凹溝1aの数は必ずしも1に限定されず、本体1が容易に開閉でき、内部の新芋を収穫し又は土を出し入れする作業が円滑に行えれば、2以上であっても良い。2以上の凹溝1aが設けられている場合、その位置は必ずしも本体1の内壁の一方の側面である必要は無く、例えば、両側面に一つずつ設けられていても良い。
また、本体1を開閉可能とする手段は必ずしも凹溝を設けることに限られず、例えば、上下に2分割された本体1に蝶番が設けられていても良い。
本体1の、長手方向の一端に近い底部には、弾性を有する略円筒形状の筒材3が立設されていて、その略中央部には、本体内外を通じる一つの挿通孔2が設けられている。筒材3が弾性を有する材質で作成されているから挿通孔2は伸縮可能であり、挿通孔2の内径は、親芋の上端から約5cm程度の位置が通る程度に形成されている。
筒材3は、本実施例においては、厚みが均一な略円筒形状に形成されているが、親芋に密着させることができれば、必ずしも略円筒形状に限定されず、任意形状のものが用いられる。
筒材3の材質としては、親芋を傷付けることを回避しつつ、親芋に密着させることができる、天然ゴム,シリコンゴム,フッ素ゴム,ラテックスフィルム等が好適に用いられる。
筒材3は、本体1に設けられた孔に嵌入されて固定されていても良く、接着剤,ステープル等で結合されていても良い。また、筒材3が、本体1と一体として作成されていても良い。
本体1の、挿通孔2に近い長手方向の一端において、周の一部に、蓋4が接合されて連設されている。
蓋4は可撓性のポリエチレンシートであって、本体1と接合する部分から、本体1から離れるにしたがって徐々に幅広くなる様に形成されている。
蓋4の材質は、可撓性で不透水性のものであれば必ずしもポリエチレンに限られず、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリアミド等の、可撓性の合成樹脂が好適に用いられる。安価に入手でき加工し易い、ポリエチレン又はポリプロピレンが特に好適である。
本実施例において、蓋4の形状は左右対称な凹八角形状であるが、本体1への雨水の浸入を低減できる形状であれば必ずしもこれに限定されず、三角形,四角形等の多角形の他、円形,楕円形等の任意形状のものが用いられる。
蓋4の一端は、本体1の一端付近において、外周の一部に接合されている。接合の方法は特に限定されず、接着剤,粘着テープ,輪状のゴムバンド等、任意の用具で接合されていて良い。また、別々に作成された蓋4と本体1が接合されている必要は無く、両者が一体として作成されていても良い。
蓋4の左右両側端付近には、略円形の固定用孔4a,4aが、左右一つずつ設けられている。叙上の通り、蓋4は降雨等によって本体1内部の土が失われることを回避するためのものであり、剛性を有する棒材や杭等の止着材を、固定用孔4a,4aを通して地面に刺すことにより蓋4は固定される。
固定用孔4aは、必ずしも左右各一つずつ設けられている必要は無く、左右に二つ以上設けられていても良く、また左右何れか一方にのみ設けられていても良い。
固定用孔4aの形状は、蓋4を固定できれば必ずしも略円形に限られず、楕円形状や多角形状等任意の形状であって良い。
本体1の、底部を含む内周の少なくとも一部に、本体1の長手方向ほぼ全域に亘り、周方向に凹凸を有する波板5が接合されて設けられている。
波板5の材質としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメタクリル酸エステル,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ABS樹脂等の剛性を有する合成樹脂や、防錆処理された金属板の他、竹材や木材等を用いることができる。耐腐食性と充分な強度を有し、長期の使用によっても変形し難いポリプロピレン,ポリメタクリル酸エステル,ポリ塩化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,ポリカーボネート,ABS樹脂が好適に用いられ、安価に入手でき加工し易いポリ塩化ビニルが特に好適である。
波板5として、市販の波板を利用することもできる。また、波板5と本体1は一体として作成されていても良い。
本体1の内壁における蓋4が設けられた側の一端付近の下方に本体1を固定するための固定用孔1b,1bが設けられていて、波板5上における前記固定用孔1b,1bと対応する位置には固定用孔5a,5aが、蓋4上における前記固定用孔1b,1bと対応する位置には固定用孔4b,4bが設けられている。これらの固定用孔1b,1b,固定用孔4b,4b及び固定用孔5a,5aは、本体1を固定するための孔であって、剛性を有する棒材や杭等の止着材を、固定用孔1b,固定用孔4b及び固定用孔5aを通して地面に刺すことにより、本体1は固定される。挿通孔2に親芋の頂部が通されることのみによっても栽培容器は地面にほぼ固定された状態となるが、この場合、親芋に負荷が掛かり易く、風雨等による外力が栽培容器に掛かると親芋を傷める虞がある。固定用孔1b,1b,固定用孔4b,4b及び固定用孔5a,5aを用いて栽培容器を固定すると、親芋に過剰な負荷を掛けることが回避される。
固定用孔1b,1b,固定用孔4b,4b及び固定用孔5a,5aは、何れも略円形の孔であるが、本考案を固定できれば必ずしも略円形に限られず、楕円形状や多角形状等任意の形状であって良い。
また、固定用孔1b,4b及び5aは、必ずしも2箇所ずつ設けられている必要は無く、三者が対応する位置に設けられていれば、それぞれ1箇所のみ設けられていても、3箇所以上設けられていても良い。
本体1の左右両側部における上方寄りに、通気孔9,・・・が形成されている。
通気孔9,・・・は、本体1の内部から外部へと通じる貫通孔であって、本体1の長手方向の一端から他端に向けて左右交互に設けられていて、その高さ位置は何れも本体1の下端からほぼ等しい高さとされている。
新芋の正常な生育のためには新芋を土で覆う必要があるが、特に約1mを超す長い新芋を栽培する場合、本体1の通気性が乏しいために新芋の生育に悪影響を及ぼす虞がある。通気孔9,・・・を設けることによって、本体1の通気性が向上するから、より好ましい環境下で、新芋の栽培を行うことが可能となる。
図3は、本考案の別の実施例を示す斜視図である。図4は、本考案の別の実施例における展開図を示す平面図である。
本実施例に係る自然薯の栽培容器は、図3及び図4に示される様に、可撓性シートからなる本体1の、幅狭く形成された長手方向の一方の端部に、本体1から離れるにつれて徐々に幅広く形成された可撓性シート状の蓋4が連設されると共に、本体1の前記端部に近い位置に略円形の挿通孔2が設けられてなる。
本体1はポリエチレンシートを左右対称な凹八角形に裁断したものであって、図4において上部は幅狭くされていて、上端付近には固定用孔1bが設けられている。本体1の左右両側部をそれぞれ対向する側部へ向けて湾曲させ、少なくともその一部を重ね合わせる様にすると、図3に示される様に、長手方向における両端が開放された中空の略円筒形状となる。
本体1の材質は、可撓性のシートであれば必ずしもポリエチレンシートに限定されず、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリアミド等の合成樹脂や、防錆処理された金属板の他、竹材等を用いることができる。凡そ6乃至10ヶ月間の自然薯栽培期間中に腐食を起こさない程度の耐腐食性を有し、変形し難い合成樹脂又は竹材が好適であり、安価に入手でき加工し易いポリエチレン又はポリプロピレンが特に好適に用いられる。市販のポリエチレン製袋又はポリプロピレン製袋を、加工して用いても良い。
本体1の形状は、図4において左右対称な凹八角形であるが、必ずしもこれに限られず、長方形,凸六角形等の任意の多角形状に形成されていても良い。
本体1の長手方向の一端付近には、固定用孔1bが設けられている。剛性を有する棒材や杭等の止着材を、固定用孔1bを通して地面に刺すことによって、本体1は固定される。
後述する挿通孔2に親芋の頂部が通されることによって本考案は地面にほぼ固定された状態となるが、この場合、親芋に負荷が掛かり易く、風雨等による外力が本考案に掛かると親芋を傷める虞がある。固定用孔1bを用いて本考案を固定すると、親芋に過剰な負荷を掛けることが回避できる。
固定用孔1bは、略円形の孔であるが、本考案を固定できれば必ずしも略円形に限られず、楕円形状や多角形状等任意の形状であって良い。
また、固定用孔1bは、必ずしも1箇所のみ設けられている必要は無く、2箇所以上に設けられていても良い。
図3に示される様に、本体1の長手方向の一方の端部付近の底部には、挿通孔2が設けられている。
挿通孔2は、本体1の内外に通じる略円形状の孔であって、その内径は、親芋の上端から5cm程度の位置が通る程度に形成されている。本実施例においては、本体1が可撓性のポリエチレンシートで作成されているから、挿通孔2の縁部は若干の伸縮性を有していて、親芋を傷付けることなく該親芋の頂部に密着させ取り付けることが可能である。
図4において、本体1の長手方向における挿通孔2に近い端部付近には、略凸六角形状のシートからなる蓋4が、本体1と一体に形成され連設されている。本体1を丸め略円筒形としたとき、蓋4は、図3に示される様に、本体1の長手方向の一端における周の一部に連設された状態となる。
本実施例においては、蓋4は本体1と一体に作成されていて素材も同一であるが、別に作成された、本体1と同一又は異種の材質からなる蓋4が、本体1と連設されていても良い。
蓋4の左右両側端部付近には、固定用孔4a,4aが、左右各一つずつ設けられている。
蓋4は、降雨等によって本体1内部の土が失われることを回避するためのものであり、剛性を有する棒材や杭等の止着材を、固定用孔4a,4aを通して地面に刺すことにより蓋4は固定される。
固定用孔4aは、必ずしも左右各一つずつ設けられている必要は無く、左右に二つ以上設けられていても良く、また蓋4を安定に固定できるならば左右何れか一方にのみ設けられていても良い。
その形状は、蓋4を固定できれば必ずしも略円形に限られず、楕円形状や多角形状等任意の形状であって良い。
図3に示される様に、本体1の左右両側部における上方寄りに、通気孔9,・・・が形成されている。通気孔9,・・・は、本体1の長手方向の一端から他端に向けて左右交互に設けられていて、その高さ位置は何れも本体1の下端からほぼ等しい高さとされている。通気孔9,・・・を設けることによって本体1の通気性が向上するから、好ましい環境下で新芋の栽培を行うことが可能となる。
使用例
次いで、本考案の使用例を、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、本考案の使用例を示す側方視断面図である。図6は、図5のP矢視上面図である。
冒述の通り、春になると、地中に生えた親芋の頂部に、将来新芋6となる一つの突起を生じる。該突起が生じる前に、又は該突起が小さな内に、本使用例に係る栽培容器を親芋7に取り付ける。
通常、地表に現れた蔓を目印に自然薯を探すが、親芋の蔓は、春には既に枯れて消失してしまっていて、自然薯の在り処を特定するための目印とすることはできない。したがって、親芋の蔓が残存している前年の秋頃迄に、予め親芋の在り処を特定しておき、杭等で目印を付けておくと良い。
まず、親芋7付近の地面を掘り、親芋7の頂部を露出させる。突起が生じるのは、親芋7の上端から約5cm以内の範囲内に限られるから、該範囲が挿通孔2より上に現れる様にして、実施例1に記載の栽培容器を取り付ける。既に突起が生じている場合には、該突起が挿通孔2よりも上方に現れる様にして、栽培容器を取り付ける。
挿通孔2は伸縮可能であるから、挿通孔2を充分広げて栽培容器を取り付けることにより、親芋7又は突起を傷付けることを回避できる。
また、挿通孔2が伸縮可能であるから、挿通孔2を親芋7に密着させて、栽培容器を取り付けることができる。親芋7と挿通孔2との間に空隙を生じないから、突起(即ち新芋6)が挿通孔2を通って地中へ伸長することを回避し、確実に栽培容器内で新芋6を栽培することができる。
突起(即ち新芋6)は低い方へと生育するから、本体1の挿通孔2が設けられた側の端部が高くなる様にして栽培容器を斜めに載置し、挿通孔2よりも低い側に生育に充分なスペースを確保する。親芋が斜面に存在する場合には斜面に沿って載置すれば良く、また畑等の平らな場所で栽培する場合には、地面を掘ったり盛土をしたりすることによって高さを調整すれば良い。
固定用孔1b,1b,固定用孔4b,4b及び固定用孔5a,5aに止着材10,10を通して、本体1を地面に固定する。
栽培容器中に、新芋6を栽培するのに充分な量の土8を入れ、土8によって、栽培容器内に導かれた親芋7の頂部全てを覆う。また、土8の量は、通気孔9,・・・が塞がれることの無い程度に抑え、通気性を確保する。
土8は、天然の土であっても良く、人工的に作られた培土であっても良い。また、施肥された養分に富む土を用いても良い。
蓋4で、本体1の上方端部付近を覆う。この際、本体1の端部が蓋4で完全に塞がれない様、蓋4と本体1の間、側方に隙間を作る。固定用孔4a,4aに止着材11,11を通して、本体1を覆った状態で、蓋4を地面に固定する。少なくとも蓋4と本体1の間に生じた隙間が見えなくなる程度まで、栽培容器の上端部付近に土8を被せる。
親芋7と新芋6の接合部付近から蔓6aと根6b,・・・が生えるが、挿通孔2以外に内外に通じる部分を持たない栽培容器を用いると、栽培容器が密閉され、蔓6a及び根6b,・・・の伸長する範囲は栽培容器内に限られてしまう。それに対して、本使用例の方法によれば、根6bが前記隙間を通って栽培容器外にまで伸長し、栽培容器内だけでなく栽培容器外の土からも養分を得ることができるから、新芋6は良好に生育する。
また、蔓6aは前記隙間から地上に伸長して零余子を付け、該零余子を介して自然薯は繁殖することができる。常法によって自生の自然薯を掘り起こすと、蔓及び零余子も共に失われるために自然薯が減ってしまう虞があるが、本使用例に記載の方法で半自然栽培を行うと、零余子を介した自然薯の繁殖を妨げず、天然物の自然薯を量産することも可能である。
叙上の様にして栽培容器を親芋7の頂部に取り付け、栽培容器と土8を設置した後、栽培を行い、新芋6を栽培する。半自然栽培においては、生態系中で新芋6が生育するから、特別な対策を採らずともウイルスや害虫の異常な繁殖が抑えられ、病害や虫害の影響を回避することができる。
約6乃至10ヶ月間の栽培の後、新芋6を収穫する。新芋6は栽培容器内で生育していているから、地中深くまで掘り起こす作業が不要であって、本体1を開く簡易な作業のみによって収穫することができる。また、常法によって自生の自然薯を掘り起こすと、山野が荒れて問題となることがあるが、本実施例に記載の方法によれば、掘り起こす作業が不要で山野が荒れることも回避できるから、環境保全にも有効である。
本考案の実施例を示す斜視図である。
図1のA−A断面図である。
本考案の別の実施例を示す斜視図である。
本考案の別の実施例における展開図を示す平面図である。
本考案の使用例を示す側方視断面図である。
図5のP矢視上面図である。
符号の説明
1 本体
1a 凹溝
1b,4a,4b,5a 固定用孔
2 挿通孔
3 筒材
4 蓋
5 波板
6 新芋
6a 蔓
6b 根
7 親芋
8 土
9 通気孔
10,11 止着材