JP3134052B2 - 食品包装用ポリエステル組成物及びその成形品 - Google Patents

食品包装用ポリエステル組成物及びその成形品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、ボト
ル、フィルム、シートといった食品包装材料の製造に適
したポリエステル組成物、特に、優れた透明感が得られ
ると共に加熱結晶化、ヒートセットといった耐熱処理に
要する時間を短くすることのできる、耐熱性食品包装材
の製造に適したポリエステル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ポリエ
チレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、ジ
ュース、ミネラルウォーター、ウーロン茶等の清涼飲料
用或いは清酒、ワイン、食用油用のボトルとして幅広く
使用されているが、こうした食品用ボトルでは、ガラス
状の透明感が品質上必要不可欠であり、この透明感を得
るためには、プリフォームとして非晶状態のものを得る
ことが決め手となる。
【0003】また、ミネラルウォーターやウーロン茶等
のボトルのように、80℃以上に高温殺菌された状態で
内容物が充填される食品用ボトルでは、上述した透明感
に加えて耐熱性が要求されており、口部の加熱結晶化や
胴部のヒートセットによってボトルの耐熱性を向上させ
ている。
【0004】以上のように、耐熱ボトルの製造に使用さ
れるポリエステルには、外観の透明性を得るには低結晶
特性が必要となりかつ、耐熱特性には高結晶特性が生産
上有利となりそれぞれ相反する特性が要求される。
【0005】ところで、ポリエステルの製造には、現在
ゲルマニウム化合物或いはアンチモン化合物が重合触媒
として用いられている。
【0006】重合触媒としてゲルマニウム化合物を用い
て得られたポリエステルは結晶性が低く、ボトルの透明
感を得るのに有利になるが、逆に結晶化速度が遅いこと
から口部の加熱結晶化或いは胴部ヒートセット等の耐熱
処理工程が非常に律速となり、耐熱ボトルの生産性が悪
いといった問題点がある。
【0007】このため、再生品を数%以上混合すること
によって結晶化速度を大きくすることも考えられるが、
このようにして得られた成形品は、粘度が低くなるため
成形品の強度不足を生じると共に、成形品中のアセトア
ルデヒド含有量が大きくなって内容物の風味に支障をき
たす等の欠点がある。さらに、ゲルマニウム化合物は高
価であることから、得られたポリエステルの価格が高く
なるといった問題もある。
【0008】一方、アンチモン化合物は廉価であるた
め、アンチモン化合物を重合触媒として用いたポリエス
テルはコストメリットが大きいものの、ポリマー中に金
属残渣が残るため、得られたポリエステルの結晶化が進
み透明感が得られず、成形品の外観に支障をきたすとい
った問題がある。
【0009】このようなポリエステルの重合触媒により
おこる様々な問題に対し、特開昭58ー47023号公
報においてゲルマニウム触媒とアンチモン触媒を混合添
加することによりポリエステルの結晶化を抑制するとい
うことが示されているが、この方法の場合もアンチモン
金属残渣の発生は抑えられず、十分な透明感を得るに至
っていない。
【0010】そこで、この発明の課題は、低コストで、
優れた透明感が得られると共に加熱結晶化速度を大きく
することで生産効率を高めることのできる、耐熱性食品
包装材の製造に適したポリエステル組成物及びその成形
品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明は、テレフタル酸と少なくとも一種のアル
キレングリコール成分から直接重合法によって製造され
るポリエステル組成物において、アンチモン化合物と、
ゲルマニウム化合物と、マグネシウム化合物、マンガン
化合物、コバルト化合物、チタン化合物のうち少なくと
も1種類以上の金属化合物と、リン化合物とを含み、前
記各化合物が、下式を満足することを特徴とする食品包
装用ポリエステル組成物を提供するものである。
【0012】 0<Sb≦2.0 0<Ge≦1.0 0.1<M≦3.0 0.2≦M/P≦1.0 (上記式中、Sbは、ポリマー10g中に含まれるア
ンチモン化合物のアンチモン金属元素のモル数、Ge
は、ポリマー10g中に含まれるゲルマニウム化合物
のゲルマニウム金属元素のモル数、Mは、ポリマー10
g中に含まれるマグネシウム化合物、マンガン化合
物、コバルト化合物、チタン化合物のうち少なくとも1
種類以上の金属化合物の金属元素のモル数、Pは、ポリ
マー10g中に含まれるリン化合物のリン元素のモル
数を示す。)
【0013】このポリエステル組成物は、上述したよう
に、テレフタル酸と少なくとも一種のアルキレングリコ
ール成分から直接重合法によって製造されるが、エステ
ル化反応、重縮合反応等の条件は公知の条件を採用する
ことができる。
【0014】また、このポリエステル組成物を製造する
に際して、前記アンチモン化合物、ゲルマニウム化合
物、マグネシウム化合物等の金属化合物、リン化合物を
添加する時期は、特に限定されないが、重縮合反応前の
任意の時点にこれらの化合物を添加することが好まし
い。
【0015】本発明において用いられる酸成分として、
テレフタル酸を単独で使用してもよいが、ナフタレンジ
カルボン酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、
アントラセンジカルボン酸等の2種類以上をテレフタル
酸と併用することもできる。
【0016】また、本発明において用いられるグリコー
ル成分としては、エチレングリコールの他にジエチレン
グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ト
リメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネ
オペンチルグリコール等の2種類以上を併用してもよ
い。
【0017】また、本発明で用いられるゲルマニウム化
合物としては、二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウ
ム、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられ、ゲルマニウム
化合物のポリマー中の含有量は、ポリマー106 g中に
含まれるゲルマニウム化合物のゲルマニウム元素分が
1.0モル以下であることが望ましく、好ましくは0.
8モル〜0.05モル、更に好ましくは0.6モル〜
0.05モルである。なお、ポリマー106 g中に含ま
れるゲルマニウム化合物が、ゲルマニウム元素分で1.
0モルを超えると、成形品再加熱時の結晶化速度が遅
く、また得られる樹脂のコストも高くなる。
【0018】また、本発明で用いられるアンチモン化合
物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、五酸
化アンチモン等が挙げられ、アンチモン化合物のポリマ
ー中の含有量は、ポリマー106 g中に含まれるアンチ
モン化合物のアンチモン元素分が2.0モル以下である
ことが望ましく、好ましくは1.5モル〜0.05モ
ル、更に好ましくは1.0モル〜0.05モルである。
なお、ポリマー106 g中に含まれるアンチモン化合物
が、アンチモン元素分で2.0モルを超えると、得られ
たポリマー中に金属残渣が残り、樹脂の結晶性を促進す
るため、透明なボトルや成形品が得られなくなる。
【0019】また、本発明で用いられるマグネシウム化
合物・マンガン化合物・コバルト化合物・チタン化合物
等の金属化合物は、その酸化物、塩化物、炭酸塩、カル
ボン酸塩、酢酸塩等であり、特に限定されない。そし
て、これらの金属化合物のポリマー中の含有量は、得ら
れたポリマー106 g中に含まれる金属化合物の金属元
素分で0.1〜3.0モルの範囲が望ましく、好ましく
は0.2〜2.0モル、更に好ましくは0.3〜1.5
モルの範囲である。なお、ポリマー106 g中に含まれ
る金属化合物が0.1モル以下であると、得られたポリ
マー中に金属残渣が残り結晶性が大きくなる。また3.
0モルを超えるとポリマーの黄変や耐熱性不良をおこす
おそれがある。
【0020】また、本発明で用いられるリン化合物とし
ては、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェ
ニルリン酸、リン酸等が挙げられ、このリン化合物のポ
リマー中の含有量は、得られたポリマー106 g中に含
まれる前記金属化合物とリン化合物との金属モル比M/
Pが0.2〜1.0であることが望ましく、好ましくは
0.3〜0.8、更に好ましくは0.35〜0.7の範
囲である。なお、この金属モル比M/Pが0.2より小
さい場合は、得られたポリマー中に微粒子が生成し、樹
脂の白濁をおこすおそれがある。また、この金属モル比
M/Pが1.0を超えた場合は、成形品のアセトアルデ
ヒド含有量が高くなり、内容物の風味を損ねるおそれが
ある。
【0021】なお、このポリエステル組成物を製造する
に際し、通常用いられる各種添加剤、例えば、酸化防止
剤、帯電防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、滑剤等を
添加することは、何ら差し支えない。
【0022】また、このポリエステル組成物を窒素ガス
雰囲気下または真空中にて固相重合し、フェノール:テ
トラクロロエタン=6:4の粘度溶剤で20℃で測定し
て求めた固有粘度が0.5〜1.2のものが、食品用ボ
トル等の耐熱性食品包装材料として望ましい。
【0023】このポリエステル組成物は、例えば、延伸
ブロー成形法等によって作られる食品用ボトルのような
食品包装用の成形品の材料として使用することができ、
特に、口部の加熱結晶化や胴部のヒートセット等の耐熱
処理が施される耐熱ボトルの材料として適している。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】(実施例1〜5)テレフタル酸100部と
エチレングリコール49.7部を常法によりエステル化
反応させた後、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモ
ン、酢酸マグネシウム、及びトリメチルリン酸を、表1
のごとく添加し、常法により重縮合反応させて固有粘度
0.55のポリエステル組成物を得た。その後、常法に
より固相重合し、固有粘度0.75のポリエステル組成
物を得た。
【0026】(実施例6〜8)実施例1〜5で使用した
酢酸マグネシウムを、それぞれ酢酸マンガン、酢酸コバ
ルト、テトラブチルチタネートに変えて表1に示すごと
く添加し、実施例1〜5と同様の方法でポリエステル組
成物を製造した。
【0027】(比較例1〜4)二酸化ゲルマニウム、三
酸化アンチモン、酢酸マグネシウム及びトリメチルリン
酸を、表1のごとく添加し、実施例1〜5と同様の方法
でポリエステル組成物を製造した。
【0028】(比較例5)二酸化ゲルマニウム及びトリ
メチルリン酸のみを表1のごとく添加し、実施例1と同
様の方法でポリエステル組成物を製造した。
【0029】(比較例6)酢酸マグネシウムを添加せず
に、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモン及びトリメ
チルリン酸を、表1のごとく添加し、実施例1〜5と同
様の方法でポリエステル組成物を製造した。
【0030】(比較例7)三酸化アンチモン及びトリメ
チルリン酸のみを、表1のごとく添加し、実施例1〜5
と同様の方法でポリエステル組成物を製造した。
【0031】(比較例8)比較例7に更に酢酸マグネシ
ウムを表1のごとく添加し、実施例1〜5と同様の方法
でポリエステル組成物を製造した。
【0032】そして、実施例1〜8及び比較例1〜8の
それぞれについて、発熱結晶化温度(DSC)及びアセ
トアルデヒド量を、以下に示す測定方法によって測定
し、その結果を表1に示すと共に、樹脂コストについて
も併せて表1に示した。
【0033】(DSC測定法)プリフォーム成形品(非
晶成形品)を測定サンプルとし、示差熱分析測定(PE
RKIN−ELMER社DSC7RS)にて50℃から
300℃まで10℃/minにて昇温した際の発熱結晶
化温度をTc1、溶融状態にあるポリエステルを300℃
から再度50℃まで10℃/minにて降温した際の発
熱結晶化温度をTc2とした。
【0034】(アセトアルデヒド測定方法) (1)試料作成 試料2gを液体窒素を満たしたフリーザーミルにセット
して粉砕し、その粉砕試料を試料ビンに入れ密栓後冷凍
庫に保存する。
【0035】(2)ガスクロマトグラフィー分析 ガラスウールを詰めたガラスインサートに試料20mg
を入れ精秤する。そして、ガスクロマトグラフィーイン
ジェクションポートにガラスインサートを挿入して5分
間保持した後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所
製)にてアセトアルデヒド量を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】Tc1は、非晶成形品を昇温したときに結晶
化する温度であり、例えば、耐熱ボトルのような成形品
の口部の加熱結晶化や胴部のヒートセットに関連し、こ
の値が小さい程その結晶化速度が大きくなって耐熱処理
に要する時間が短くなる。一方、Tc2は、溶融状態から
冷却し固化する際の結晶化温度であり、例えば、ボトル
を形成する際のプリフォームの透明性に関連し、この値
が小さい程プリフォーム形成時の結晶化速度が小さくな
って成形品の透明感が得られる。
【0038】従って、本目的である耐熱性食品包装材料
に適応する特性としては、Tc1が137℃〜146℃、
Tc2が176℃以下であることが望ましく、また、プリ
フォーム中のアセトアルデヒド量が10ppm以下であ
りかつ、樹脂コストが安価であることが望ましい。
【0039】表1からわかるように、実施例1〜8は、
Tc1、Tc2共に本目的に適応した数値を示し良好な結果
であると共に、成形品の低アセトアルデヒド性にも優れ
た結果であった。
【0040】一方、比較例1ではTc1値が高く耐熱ボト
ル等の生産律速のおそれがあるのみでなく、樹脂のコス
トも高くメリットは小さい。また、比較例2、3では成
型品のアセトアルデヒド量が高く、飲料用ボトル等には
不適切である。また、比較例4に関しては、樹脂が白濁
し、不良であった。
【0041】また、比較例5では、Tc1が高く、耐熱処
理工程に支障をきたすと共に樹脂コストも高くなった。
比較例6では、Tc1は低いが、Tc2は高くなって透明性
の点で問題があり、ボトル用途には不適切であった。比
較例7では、Tc1は極めて低いが、Tc2は極めて高くな
り、比較例6のものと同様に、ボトル用途には適さなか
った。比較例8では、比較例7と同様に、Tc1が極めて
低くボトル白化を引き起こすレベルであり、本目的に適
さなかった。
【0042】通常のポリエステル組成物では、Tc1が低
ければTc2が高く、逆にTc1が高ければTc2が低いとい
った具合に、それぞれの昇温・降温時の結晶化速度は関
連性を持っているが、本発明品は、この関連性を崩すこ
とによって、プリフォーム形成時の透明性に優れ、しか
も口部や胴部のヒートセット時の結晶化速度を大きくす
るという、ボトル形成での優位性を持たせることができ
る。
【0043】さらに、添加する各種化合物の比率を変え
ることによって、Tc1、Tc2値をコントロールすること
ができ、例えば、食品用ボトルについていえば、プリフ
ォームの透明性を十分なレベルに保ちながら、口部の結
晶化速度をその目的に応じて大きくしたり、小さくした
りすることもできる。
【0044】
【発明の効果】以上のように、この発明のポリエステル
組成物は、高価なゲルマニウム化合物の使用量を最小限
に抑えており、しかも透明性に優れていると共に耐熱処
理として行われる再加熱時の結晶化速度が速いため、コ
スト、品質及び生産性の面において、耐熱性食品包装材
料として極めて有利な特性を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−53541(JP,A) 特開 昭55−115426(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91 C08L 67/00 - 67/03

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テレフタル酸と少なくとも一種のアルキ
    レングリコール成分から直接重合法によって製造される
    ポリエステル組成物において、 アンチモン化合物と、 ゲルマニウム化合物と、 マグネシウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合
    物、チタン化合物のうち少なくとも1種類以上の金属化
    合物と、 リン化合物とを含み、 前記各化合物が、下式 0<Sb≦2.0 0<Ge≦1.0 0.1<M≦3.0 0.2≦M/P≦1.0 (上記式中、Sbは、ポリマー10g中に含まれるア
    ンチモン化合物のアンチモン金属元素のモル数、Ge
    は、ポリマー10g中に含まれるゲルマニウム化合物
    のゲルマニウム金属元素のモル数、Mは、ポリマー10
    g中に含まれるマグネシウム化合物、マンガン化合
    物、コバルト化合物、チタン化合物のうち少なくとも1
    種類以上の金属化合物の金属元素のモル数、Pは、ポリ
    マー10g中に含まれるリン化合物のリン元素のモル
    数を示す。)を満足することを特徴とする食品包装用ポ
    リエステル組成物。
  2. 【請求項2】 窒素ガス雰囲気下或いは真空中にて固相
    重合し、固有粘度が0.5〜1.2である請求項1記
    載の食品包装用ポリエステル組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の食品包装用ポリエ
    ステル組成物からなる食品包装用成形品。
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