JP3132094B2 - 単結晶の製造方法および単結晶製造装置 - Google Patents

単結晶の製造方法および単結晶製造装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸素中あるいは大気雰
囲気中において、白金または白金を基とする合金からな
る白金(Pt)基金属製ルツボ等の金属容器に保持され
た融液から育成される単結晶の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ファラデー効果を利用した光アイソレー
タ、光サーキュレータ、及び光スイッチ等の磁気光学素
子用として適したビスマス(Bi)置換磁性ガーネット
単結晶は、一般的に液相エピタキシャル(以後LPEと
略す)法により育成されている。 光アイソレータは、
コネクター、スイッチなどの光学部品からの反射戻り光
を遮断し、半導体レーザを安定に発振させるために用い
られているが、需要の増大に伴い小型化が急速に進展し
ている。この小型化のためには、アイソレータの主要部
品であるファラデー回転子を小型化することが必須の条
件となる。ファラデー回転子は、入射偏光面を所定量
(例えば45度)回転させる働きを有するが、その回転
のためには所定の長さが必要となる。この長さは、ファ
ラデー回転子を構成する材料のファラデー回転係数の大
・小に比例することから、ファラデー回転子をより小型
化するためには、ファラデー回転係数の大きな材料を選
択する必要がある。ファラデー回転係数が大きな材料と
して、Biを固溶した、いわゆるBi置換磁性ガ−ネッ
トが一般に知られているが(例えば特開昭64-27212号公
報等参照)、この材料においては、上記のファラデー回
転係数はBiの置換量に比例して増加する(「Thin
Solid Films」114(1984),P6
9〜107等参照)。しかし、ガ−ネット結晶に対する
Biの偏析係数は極めて小さいために、その置換量を増
すことは非常に難しい。LPE法におけるBi多量置換
の方法は、成分系及び融液組成の最適化、あるいはLP
E条件の最適化(過冷却度(飽和温度−膜成長温度)の
増大、及び膜成長温度の低温化等)、等が提案されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、LPE条件の
最適化を図り、膜成長温度を低温化するに伴い、結晶育
成用融液の保持容器であるPt基金属製ルツボが、融液
中に溶出することが分かった。磁気光学素子の場合、融
液中に溶出したPtが膜中に混入すると光吸収が増大す
ることが知られている(「日本応用磁気学会」,VO
L.10,No.2,(1986)P.161参照)。
また、Ptは膜欠陥の一因となり(「J,Magn,S
oc,Jpn」VOL.11,SI(1987)P.3
47)、欠陥部は、光学特性が劣化することが知られて
いる(「日本応用磁気学会」,VOL.10,No.
2,(1986)P.147参照)。ところで、Pt基
金属製ルツボの溶出は、Bi置換磁性ガ−ネット単結晶
特有の問題ではなく、例えばブリッジマン法を用いて育
成されるフェライト単結晶においても同様であり、この
溶出防止のため種々の提案がなされている(例えば特開
昭62-176993号公報、特開平02-59495号公報等参照)。
したがって、上記Pt基金属製ルツボの溶出は極めて重
大な問題である。この問題となる単結晶の用途として
は、磁気光学素子、マイクロ波素子、磁気ヘッド等に用
いられるフェライト単結晶などが有り、ルツボ等の金属
容器からのPt等の溶出は不純物として混入して特性を
劣化させる問題点があった。また、Ptを核とした膜欠
陥だけではなく、ルツボ寿命の短縮、素子歩留りの低
下、更に原価増大等の問題点もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
解決するために、Pt基金属製ルツボ等の金属容器に充
填した酸化物原料を加熱溶融した溶融液から、単結晶を
固化成長させる方法において、電極を溶融液に浸漬し、
該金属容器と溶融液に浸漬した電極との間の電流を概略
ゼロに保つことを特徴とする単結晶の製造方法を提供す
るものである。本発明者等は、ルツボ溶融に及ぼす要因
を種々検討した結果、ルツボの溶融量と融液中の電流値
の間には関係があることを見いだし本発明に到った。な
お、本発明において、金属容器とはPt基等のいわゆる
金属製の容器に限定されるものではなく、一部セラミッ
ク等でコーティングされた金属容器も含む。本発明者
は、ルツボの溶融現象に電気化学的作用が寄与している
ものと考え、融液中に挿入した電極とルツボ間の電流を
測定した。なお、融液中に挿入した電極を測定器の正の
端子に、ルツボ側を負の端子に各々接続した。検討に用
いた融液は、ビスマス置換ガ−ネット膜育成用のもので
あり、保持時間は約10hrとした。保持終了後融液を
廃棄し、保持前後のルツボの重量差を測定した。融液中
の電流値とルツボの溶融量(重量の増減)との関係は表
1に示すようになった。
【表1】 表1から分かるように電流値が約0.1mA以下の時、
重量の増減もほぼゼロとなることが分かる。表1から、
ルツボ溶融時は正の電流が流れその値が大きくなるほど
ルツボ溶融が進行することが伺い知れる。そこで、図1
に示すような回路を構成し、ルツボと融液中に浸漬した
電極間の電流を概略零になるように制御するようにした
ところ、ルツボの溶融を防止できることが判明し、本発
明に至った。次に、本発明で使用できる電流制御装置を
含む単結晶製造装置について、より詳細に説明する。図
2〜図7は、本発明に係る電流制御に関わる回路の一例
である。図中における抵抗6の抵抗値をRs,抵抗7の
抵抗値をRa,抵抗8と抵抗12の抵抗値をRf,抵抗
11と抵抗13の抵抗値をRi,電極とルツボ間に流れ
る電流をIo,制御信号5の電圧値をViとする。図2
において、電流Ioは抵抗6(Rs)で検出され、検出
電圧Io・Rsは増幅器4の反転入力端子に入力され
る。増幅器4の非反転入力端子には制御信号5(Vi)
が入力されると、電流IoはIo=Vi/Rsに制御さ
れる。Ioを微少な値に制御するには、制御信号5とし
て微少な電圧を入力すればよい。具体的には、実際の増
幅器が固有に持つオフセット電圧を制御信号として用
い、このオフセット電圧を所定の調整方法(例えば、オ
ペアンプに設置されたトリマー抵抗の調整)により調整
することにより、電流Ioを制御することができる。図
3は位相補償を施した例であり、電流IoはIo=Vi
/Rsに制御される。位相制御することにより、発振が
起こりにくく、安定した単結晶の育成が可能となる。図
4は、利得を大きくする例であり、電流IoはIo=V
i(1+Rf/Ri)/Rsに制御される(但し、Rs
《Rf,Rs《Ri)。一般的には、利得を大きくする
ことは、本発明における電流をほぼゼロに制御する目的
からは好ましくないのであるが、反面応答速度が向上す
るため、用途に依っては利得を大きくすることもある。
図5は、オペアンプの+端子を接地した反転増幅の例で
あり、電流IoはIo=−ViRf/RsRiに制御さ
れる(但し、Rs《Rf,Rs《Ri)。この回路によ
ると動作が安定するため、安定した単結晶の育成が可能
となる。図6は、ルツボを接地した例であり、電流Io
は、Io=ViRf/RsRiに制御される(但し、R
s《Rf,Rs《Ri)。この回路構成を採ると、オペ
アンプ周辺の回路は一纏めにする事ができ、ルツボとオ
ペアンプを接続する配線を短くすることができるので、
ノイズ等による誘導を受けにくく安定した単結晶の育成
が可能となる。図7は、電極とルツボ間の電位差を制御
して電流制御する例であり、この電位差をVoとする
と、Vo=Viに制御される。この場合、予めVoとI
oの間の相関をセットしておくことにより、Voにより
Ioも制御できるので、前述した用に制御信号5として
増幅器のオフセット電圧を用いればIoを微少な値に制
御できる。以上、オペアンプ(演算増幅器)を用いた例
を示したが、必ずしもオペアンプに依らなくとも電流制
御できる手段ならば、本発明において限定されるもので
はない。
【0005】
【実施例】以下、本発明を実施例に従い説明する。 (実施例1)磁気光学素子を用途とした原料成分とし
て、Bi23、Tb47、Gd23、Fe23、Pb
O、及びB23を各々約206.7、0.9、0.8、
35.6、198.0、及び7.9g秤量・混合し、約
100ccのPtルツボに充填した。そのルツボを大気
中の育成炉内に設置し、約1100℃で均一化した後約
795℃に降温保持した。その融液中に電極を挿入して
その電極とルツボ間の電流値を測定しながら、その時の
電流値が零になるように制御して、約41hr保持し
た。その後、ルツボの溶融量を測定した結果、約0.1
3gの減少であった。 (比較例1)磁気光学素子を用途とした原料成分とし
て、Bi23、Tb47、Gd23、Fe23、Pb
O、及びB23を各々約206.7、0.9、0.8、
35.6、198.0、及び7.9g秤量・混合し、約
100ccのPtルツボに充填した。そのルツボを大気
中の育成炉内に設置し、約1100℃で均一化した後約
795℃に降温し、約41hr保持した。その後、ルツ
ボの溶融量を測定した結果、約1.30gも減少した。
【0006】(実施例2)マイクロ波素子を用途とした
原料成分として、Y23、Fe23、PbO、及びB2
3を各々約7.1、100.0、1365.6、及び
27.3g秤量・混合し、約500ccのPtルツボに
充填した。そのルツボを大気中の育成炉内に設置し、約
1200℃で均一化した後約890℃に降温保持した。
その融液中に電極を挿入してその電極とルツボ間の電流
値を測定しながら、その時の電流値が零になるように制
御して、約42hr保持した。その後、ルツボの溶融量
を測定した結果、約0.09gの減少であった。更に、
ルツボをアルゴン雰囲気の育成炉内に設置して同様に測
定したところ、ルツボの溶融量は約0.04gの減少し
かなく、雰囲気を不活性ガスにすることによってその相
乗効果で本発明が更に有効に作用することが分かる。 (比較例2)マイクロ波素子を用途とした原料成分とし
て、Y23、Fe23、PbO、及びB23を各々約
7.1、100.0、1365.6、及び27.3g秤
量・混合し、約500ccのPtルツボに充填した。そ
のルツボを大気中の育成炉内に設置し、約1200℃で
均一化した後約890℃に降温し、約42hr保持し
た。その後、ルツボの溶融量を測定した結果、約1.7
1gも減少した。
【0007】(実施例3)フェライト単結晶育成用の原
料成分として、MnCO3、ZnO、及びFe23を各
々約348、239、及び1413g秤量・混合し、約
1200〜1300℃で仮焼・解砕した後、800cc
のPtルツボに充填した。そのルツボを大気中の育成炉
内に設置し、約1650℃で保持した。その融液中に電
極を挿入してブリッジマン法で、その電極とルツボ間の
電流値を測定しながら、その時の電流値が零になるよう
に制御して、約32hr保持した。その後、ルツボの溶
融量を測定した結果、約0.04gの減少であった。ま
た、このようにして得られた単結晶を磁気ヘッドに用い
たところ、従来法で育成した単結晶を用いた場合よりも
ノイズの少ない良好な出力信号が得られた。 (比較例3)フェライト単結晶育成用の原料成分とし
て、MnCO3、ZnO、及びFe23を各々約34
8、239、及び1413g秤量・混合し、約1200
〜1300℃で仮焼・粉砕した後、800ccのPtル
ツボに充填した。そのルツボを大気中の育成炉内に設置
し、約1650℃で32hr保持した。その後、ルツボ
の溶融量を測定した結果、約1.92gの減少であっ
た。
【0008】(実施例4)磁気光学素子を用途とした原
料成分として、Bi23、Tb47、Gd23、Fe2
3、PbO、及びB23を各々約1378.3、6.
0、5.3、237.4、1320.3、52.7g秤
量・混合し、約700ccのPtルツボに充填した。そ
のルツボを大気中の育成炉内に設置し、約1100℃で
均一化した後約795℃に降温保持した。その融液中に
電極を挿入してその電極とルツボ間の電流値を測定しな
がら、その時の電流値が零になるように制御して、約3
7hr膜育成した。膜厚約505μmの膜表面を50〜
1000倍の光学顕微鏡を用いて観察した結果、欠陥密
度が約2ケ/cm2であった。 (比較例4)磁気光学素子を用途とした原料成分とし
て、Bi23、Tb47、Gd23、Fe23、Pb
O、及びB23を各々約1378.3、6.0、5.
3、237.4、1320.3、52.7g秤量・混合
し、約700ccのPtルツボに充填した。そのルツボ
を大気中の育成炉内に設置し、約1100℃で均一化し
た後約795℃で約37hr膜育成した。膜厚約507
μmの膜表面を50〜1000倍の光学顕微鏡を用いて
観察した結果、欠陥密度が約823ケ/cm2もあっ
た。
【0009】
【発明の効果】本発明により、Ptルツボの溶融が顕著
に抑制されるため、融液中の浮遊Ptが減少してPtを
核とした膜欠陥が低減する、またルツボ寿命が伸張す
る、等素子歩留りの向上、更に原価低減に大きく寄与す
ることから実用的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電流制御の原理を示す回路図であ
る。
【図2】本発明に係る電流制御に関わる回路の一実施例
を示す図である。
【図3】本発明に係る電流制御に関わる回路の別の実施
例を示す図である。
【図4】本発明に係る電流制御に関わる回路の別の実施
例を示す図である。
【図5】本発明に係る電流制御に関わる回路の別の実施
例を示す図である。
【図6】本発明に係る電流制御に関わる回路の別の実施
例を示す図である。
【図7】本発明に係る電流制御に関わる回路の別の実施
例を示す図である。
【符号の説明】
1 ルツボ 2 電極 3 融液 4 増幅器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−113780(JP,A) 特開 平4−132697(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物原料を加熱溶融した溶融液を金属
    容器に充填し、前記溶融液に電極を接触もしくは浸漬
    し、前記電極と前記金属容器の間の電流を略ゼロに保っ
    て単結晶を固化成長させることを特徴とする単結晶の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記金属容器が白金基金属製ルツボであ
    ることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記電流が0.1mA以下であることを
    特徴とする請求項1または2に記載の単結晶の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 液相エピタキシアルを用いることを特徴
    とする請求項1ないし3のいづれかの項に記載の単結晶
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 ブリッジマン法を用いることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいづれかの項に記載の単結晶の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 融液界面近傍の雰囲気を不活性ガスで置
    換するか、電極の周辺を不活性ガスで覆うことを特徴と
    する請求項1ないし4のいづれかの項に記載の単結晶の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 酸化物原料を加熱溶融した溶融液を保持
    する為の金属容器と、前記溶融液に接触もしくは浸漬さ
    れる電極と、前記電極と前記金属容器との間に挿入接続
    された電流制御装置とでなることを特徴とする単結晶製
    造装置。
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