以下、本考案の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
最初に、本考案に適用される光ディスクを説明する。光ディスクは、DVDやDL(片面2層式)などの情報記録媒体である。
図1は、光ディスクの構成の一例として片面2層式の構成を有するディスク構造を示す部分拡大断面図である。光ディスク1は、第1基板10と第2基板12とを中間層14を介して貼り合わせることで構成される。
第1基板12は、ポリカーボネートなどの透明材料で形成された第1透明基板42を有している。該第1透明基板42の表面には、断面視において凹凸状の第1溝部52が形成されている。第1透明基板42の表面には、第1溝部52の凹凸に沿って第1情報記録層45が形成され、第1情報記録層45上に半透明反射層46が形成されている。
第2基板10は、ポリカーボネートなどの透明材料で形成された第2透明基板40を有し、第2基板10の表面に第2溝部54が形成されている。第2透明基板40には、第2の溝部54に沿って反射層42が形成され、該反射層42上に第2情報記録層43が形成され、第2情報記録層43上にバリア層44が形成されている。
光ディスク1の第1情報記録層45に対して情報を記録する場合は、透明基板42の図中下側の端面42aから第1情報記録層45に向かう方向に記録用のレーザ光Lを照射し、レーザ光Lを第1情報記録層45に結像させて情報(ピット)を記録する。このとき、第1情報記録層45のうち、第1溝部52の凹部に対応した部分に情報が記録される。記録用のレーザ光Lとしては、600nm〜700nm(好ましくは620〜680nm、さらに好ましくは、630〜660nm)の範囲の発振波長を有する半導体レーザビームが用いられる。
第2情報記録層43に対して情報を記録する場合は、第1透明基板42の端面42aから第2情報記録層43に向かう方向に記録用のレーザ光Lを照射し、レーザ光Lを第2情報記録層43に結像させて情報(ピット)を記録する。このとき、第2情報記録層43のうち、第2溝部54の凸部に対応した部分に情報が記録される。
本考案では、第1基板12と第2基板10とを貼り合わせる中間層14としてエネルギ線硬化樹脂を用いており、以下、エネルギ線硬化樹脂14ともいう。
以下、本考案に係る光ディスク製造装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本考案の光ディスク製造装置の概略構成図、図2は図1における要部分解斜視図である。
光ディスク製造装置100は、情報記録媒体として使用されるDVDなどの光ディスクの製造過程で使用される装置であり、第2基板10と、エネルギ線硬化樹脂14が上面内周部12aに塗布された第1基板12とを重ね合わせた後、エネルギ線硬化樹脂14を2枚の基板10、12間の全面に展開させ、エネルギ線である紫外線を照射してエネルギ線硬化樹脂14を硬化させて貼り合せることで光ディスクを製造する。
本考案におけるエネルギ線硬化樹脂14の展開は、第1基板12の上面内周部12aに塗布されたエネルギ線硬化樹脂14を、塗布位置の内周方向および外周方向に展開することにより基板の全面に展開される。上面内周部12aに塗布されたエネルギ線硬化樹脂14の内周方向への展開は吸引装置32による吸引により行われ、外周方向への展開は基板10、12を回転させて遠心力により行われる。
第2基板10および第1基板12は、例えば、ポリカーボネートなどの透明材料で形成された、直径略120mm、厚さ略0.6mmの円盤状部材である。第2基板10および第1基板12の少なくとも一方には記録層が設けられており、該記録層が形成された面側が貼り合わされて光ディスクが製造される。
図2及び図3に示すように、光ディスク製造装置100は、支持台16と、エネルギ線硬化樹脂供給装置18と、エネルギ線照射装置である紫外線照射装置20と、吸引装置32とを備える。
支持台16は略円柱状の形状を有し、回転駆動装置24によって駆動されて軸心Cを中心として回転可能に構成されている。支持台16の上面には、第1基板12を載置するための平坦な支持面16aが形成されている。
また、支持面16aには、軸心Cと同じ軸心を有するセンターピン16bが上方に突出して形成されている。センターピン16bは、上方に向かうに従って次第に細くなるテーパー状になっており、第2基板10および第1基板12の中心に形成されたセンター孔22、22が嵌合して第2基板10および第1基板12の位置決めがなされる。
なお、本実施形態では、第1基板12を支持台に載せて、該第1基板12の上に第2基板10を貼り合わせる手順を例に説明しているが、第2基板10を支持台に載せて、該第2基板10の上に第1基板12を貼り合わせてもよい。
センターピン16bの外周面には、支持面16a上に第2基板10および第1基板12を載置したとき、第2基板10と第1基板12の間に位置する高さに円周方向溝26が形成されている。支持台16には、円周方向溝26に連通する吸引孔28が形成されており、チューブ30を介して真空ポンプなどの吸引装置32に接続されている。吸引装置32は、制御装置34に接続されて吸引圧力や吸引タイミングなどが制御される。
エネルギ線硬化樹脂供給装置18は、第1基板12の上面内周部12aにエネルギ線硬化樹脂14を供給するためのものであって、支持台16に載置された第1基板12の上面内周部12aに対応する位置である供給位置と、支持台16から離間した待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能となっている。
エネルギ線硬化樹脂供給装置18は制御装置34に接続されており、該制御装置34からの指令に基づいて供給位置へ移動し、所定のタイミングでノズル18aからエネルギ線硬化樹脂14を吐出して第1基板12の上面内周部12aに供給する。従って、第1基板12の上面は、上面内周部12aに供給されたエネルギ線硬化樹脂14により内周側と外周側に分けられる。尚、エネルギ線硬化樹脂14は、特に限定されないが、例えば、大日本インキ社製のDAICURE CLEAR SD-640などの紫外線硬化樹脂を用いることができる。
紫外線照射装置20は、エネルギ線硬化樹脂14の硬化に必要な波長帯域(例えば、365nm)の紫外線を照射するためのものであり、支持台16上に載置された第1基板12に向けて紫外線を照射する照射位置と、支持台16から離間した待機位置との間を図示しない移動機構により移動可能となっている。紫外線照射装置20は、センター孔22の縁部22aの近傍に向けて紫外線をスポット照射するように設定されている。
本実施形態の紫外線照射装置20は、内蔵するLED素子から紫外線を照射するLED方式の照射装置であり、エネルギ線硬化樹脂14にスポット状の紫外線を照射して硬化させる。紫外線照射装置20をLED方式の照射装置とすることにより、従来の水銀ランプを用いた照射装置と比較して小型且つ長寿命であり、発生熱量を抑制することができる。紫外線のスポット径は、特に限定されないが、直径3mm乃至8mmである。紫外線照射装置20は制御装置34に接続されており、紫外線の照度、照射タイミング、照射方式(連続照射やステップ照射)などが制御される。
次に、本実施形態の作用を図4および図5に基づいて説明する。図4は基板の貼り合せ工程を説明する工程図、図5は基板の回転、紫外線照射、および吸引のタイミングを示すグラフである。
図4(a)に示すように、支持台16のセンターピン16bに第1基板12のセンター孔22を嵌合させて支持面16a上に第1基板12を位置決めして載置する。そして、図示しない移動機構によりエネルギ線硬化樹脂供給装置18を供給位置へ移動させた後、回転駆動装置24により支持台16をゆっくりと回転させながら、ノズル18aからエネルギ線硬化樹脂14を吐出して第1基板12の上面内周部12aに供給してリング状に塗布する。
このとき、エネルギ線硬化樹脂14は、センター孔22の縁部22aから半径方向に所定距離Aだけ離間した位置(基板中心から35mmから50mmの範囲)に供給されるので、第1基板12の上面は、供給されたエネルギ線硬化樹脂14によって半径方向内側の内周領域12inと、半径方向外側の外周領域12outに分けられる。
エネルギ線硬化樹脂14の塗布位置とセンター孔22との間の内周領域12inには、エネルギ線硬化樹脂14が塗布されていない部分があり、これによりエネルギ線硬化樹脂14がセンター孔22内に流れ出すことはない。
次いで、図4(b)に示すように、第2基板10のセンター孔22をセンターピン16bに嵌合させ、エネルギ線硬化樹脂14を介して第2基板10と第1基板12とを重ね合わせる。第2基板10および第1基板12は、センター孔22がセンターピン16bと嵌合することにより位置決めされるので、精度よく重ね合わせることができる。
第2基板10と第1基板12が重ね合わされた状態で、リング状に塗布された未硬化のエネルギ線硬化樹脂14を、第2基板10と第1基板12間の全面に展開させる。第1基板12の上面内周部12aにリング状に供給されたエネルギ線硬化樹脂14は、第2基板10および第1基板12を回転させることによりエネルギ線硬化樹脂14に作用する遠心力によって半径方向外方の外周領域12outに展開される。しかし、第2基板10および第1基板12を単に回転させるだけでは、リング状に塗布されたエネルギ線硬化樹脂14の内周側の内周領域12inにはエネルギ線硬化樹脂14が展開されず、センター孔22近傍に未塗布部が残ることになり、好ましくない。
そこで、図5に示すように、第2基板10および第1基板12の回転開始時刻t0と同時(時刻t0)に、或いは図に破線で示す回転開始時刻t1に先立って、時刻t0に吸引装置32を作動させて、吸引孔28およびチューブ30を介して第2基板10と第1基板12の間に位置する円周方向溝26から空気を吸引する。これにより、リング状に塗布されたエネルギ線硬化樹脂14の内側が真空となり、エネルギ線硬化樹脂14が半径方向内方(図4(b)矢印I方向)に移動して内周領域12inに展開する。
尚、第2基板10および第1基板12の回転開始と、吸引装置32による吸引開始のタイミングは、エネルギ線硬化樹脂14の粘度、回転の立上がり速度、吸引圧などにより制御装置34が適宜制御する。即ち、第2基板10および第1基板12の回転開始が早過ぎるとエネルギ線硬化樹脂14が内周領域12inに展開される前に外周領域12outに展開してしまい、また吸引開始が早過ぎるとエネルギ線硬化樹脂14が吸引孔28から吸引されてしまうことがないように制御する。
吸引装置32による吸引と同時に、紫外線照射装置20からセンター孔22の縁部22aに向けて紫外線をスポット照射する。これにより、内周領域12inに展開するエネルギ線硬化樹脂14がセンター孔22の縁部22aに達すると紫外線により硬化されて、更なる内周方向への展開が阻止されるので、エネルギ線硬化樹脂14はセンター孔22へはみ出すことなく、また吸引孔28から吸引されることなく、センター孔22の縁部22aまで展開する。
回転数の最大値は、1000rpm〜8000rpmの範囲とし、立ち上げ時間を1秒から10秒の範囲とすることが好ましい。また、吸引圧力を950mbr〜0.0001mbrの範囲とし、スポット径を1Φmm〜8Φmm、紫外線照度を100mW/cm2〜2600mW/cm2の範囲とすることが好ましい。
尚、エネルギ線硬化樹脂14が塗布される最内周位置は、紫外線照射装置20の照射位置を変更することにより任意の位置に設定することができる。紫外線照射装置20の照射位置は、第1基板12及び第2基板10の中心から半径方向に
15mmから23mmの範囲とし、好ましくは、16mmから20mmの範囲とする。また、制御装置34によって吸引装置32の吸引強度や吸引タイミング、第2基板10および第1基板12の回転速度などを適宜制御すれば、更に確実且つ正確に塗布領域を設定することが可能となる。
次いで、図4(c)に示すように、回転駆動装置24を作動させて支持台16と共に第2基板10および第1基板12を回転させると、第2基板10と第1基板12の間にある未硬化のエネルギ線硬化樹脂14は、遠心力により外周方向(矢印O方向)に展開を開始して外周領域12outに塗布される。
そして、図4(d)に示すように、エネルギ線硬化樹脂14が第2基板10と第1基板12間の全面に展開した後、紫外線照射装置20を半径方向に移動させるなど、適宜の紫外線照射装置から紫外線を照射して未硬化のエネルギ線硬化樹脂14を硬化させて第2基板10と第1基板12を貼り合わせる。このとき、余剰のエネルギ線硬化樹脂14aは、第2基板10および第1基板12から径方向外方に排除される。
上記したように、吸引装置32により吸引してリング状に塗布されたエネルギ線硬化樹脂14を内周側に展開し、更に第2基板10および第1基板12を回転させて外周側に展開させるようにしたので、基板の全面に均一にエネルギ線硬化樹脂14を展開することができる。更に、紫外線照射装置20は、センター孔22の縁部22aに向けて紫外線をスポット照射するので、未硬化のエネルギ線硬化樹脂14がセンター孔22の内側にはみ出すことなく、貼り合わせることができる。
本実施形態の光ディスク製造装置100によれば、ディスク基板10、12を回転させて遠心力によりエネルギ線硬化樹脂14を2枚のディスク基板10、12間に展開させる展開方法では展開させることが困難であったエネルギ線硬化樹脂14の供給位置よりも内周側に位置する内周領域12inにも、エネルギ線硬化樹脂14を展開させてディスク基板10、12の全面を貼り合せることができ、高性能の光ディスクを製造することができる。このとき、紫外線照射装置20によってエネルギ線硬化樹脂が第1基板12及び第2基板10との間の内周領域12inで確実に硬化されるため、センター孔22からエネルギ線硬化樹脂がはみ出すことがなく、光ディスクの機能を阻害することを防止でき、また、空気の混入を防止することで外観を損なうことがない。
第1透明基板42及び第2透明基板40としては、従来の光ディスクの基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。 具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
これらの樹脂を用いた場合、射出成形を用いて第1透明基板42及び第2透明基板40を作製することができる。
また、第1透明基板42及び第2透明基板40の厚さは、0.7〜2mmの範囲であり、0.9〜1.6mmの範囲であることが好ましく、1.0〜1.3mmとすることがより好ましい。
また、第1透明基板42に形成される第1溝部52並びに第2透明基板40に形成される第2溝部54のトラックピッチは、上限値が500nm以下であることが好ましく、420nm以下であることがより好ましく、370nm以下であることがさらに好ましく、330nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましく、260nm以上であることが特に好ましい。
第1溝部52及び第2溝部54の幅(半値幅)は、上限値が250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、170nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、23nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましい。
第1溝部52及び第2溝部54の(溝)深さは、上限値が150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。また、下限値は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、28nm以上であることが特に好ましい。
第1溝部52及び第2溝部54の角度は、上限値が80°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましく、60°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることが特に好ましい。また、下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることがさらに好ましい。
なお、第1溝部52及び第2溝部54に関する上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
これら第1溝部52及び第2溝部54の値は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定することができる。
そして、例えば第1溝部52の角度とは、第1溝部52の溝深さをDとした時、溝形成前の第1透明基板42の表面を基準とし、その表面からD/10の深さの傾斜部と、溝の最も深い個所からD/10の高さの傾斜部とを結ぶ直線と、第1透明基板42の面(溝部の底面)とのなす角度である。これは、第2溝部54の角度も同様である。
また、第1及び第2の実施の形態に係る光ディスク10A及び10Bが、再生専用の光ディスクである場合、上記の第1溝部52及び第2溝部54を形成するのと同時に、所定の情報を示すピットが形成される。
なお、第1透明基板42及び第2透明基板40の表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
第1情報記録層45及び第2情報記録層43は、色素を記録物質として含有する色素型とすることが好ましい。第1情報記録層45及び第2情報記録層43に含有される記録物質としては、色素等の有機化合物や相変化金属化合物等が挙げられる。
中でも、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な、色素型の第1情報記録層45及び第2情報記録層43であることが好ましい。色素型の第1情報記録層45及び第2情報記録層43は、記録波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。当該色素としては、シアニン色素、オキソノール色素、金属錯体系色素、アゾ色素、フタロシアニン色素等が挙げられ、中でも、オキソノール色素が好ましい。オキソノール色素を含有させることで長期間にわたり安定した記録再生特性の維持を実現することができる。
ここで、第1情報記録層45及び第2情報記録層43にて使用されるオキソノール色素について説明する。
オキソノール色素の具体例としては、F.M.Harmer著,Heterocyclic Compounds-CyanineDyes and Related Compounds, John&Wiley&Sons, New York, London, 1964年刊に記載のもの等が挙げられる。
オキソノール色素は、該当する活性メチレン化合物とメチン源(メチン染料にメチン基を導入するために用いられる化合物)との縮合反応によって合成することができる。
この種の化合物についての詳細は、特公昭39−22069号公報、同43−3504号公報、同52−38056号公報、同54−38129号公報、同55−10059号公報、同58−35544号公報、特開昭49−99620号公報、同52−92716号公報、同59−16834号公報、同63−316853号公報、同64−40827号公報、並びに英国特許第1133986号明細書、米国特許第3247127号明細書、同4042397号明細書、同4181225号明細書、同5213956号明細書、同5260179号明細書を参照することができる。また、特開昭63−209995号公報、特開平10−309871号公報、特開2002−249674号公報にも記載されている。
オキソノール色素は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。また、既述のオキソノール色素とこれ以外の色素化合物とを併用してもよい。併用する色素は、アゾ色素(金属イオンとの錯体化したものを含む)、ピロメテン色素、シアニン色素等が例として挙げられる。
色素は、熱分解温度が100℃〜350℃の範囲にあるものが好ましい。さらには、150℃〜300℃の範囲にあるものが好ましい。さらには、200℃から300℃の範囲にあるものが好ましい。
第1情報記録層45及び第2情報記録層43に用いる色素(「既述のオキソノール色素」又は「既述のオキソノール色素及びこれと併用する色素」)のアモルファス膜の光学特性上、複素屈折率の係数n(実部:屈性率)、k(虚部:消衰係数)は、好ましくは、2.0≦n≦3.0、0.005≦k≦0.30である。さらに好ましくは、2.1≦n≦2.7、0.01≦k≦0.15である。最も好ましくは、2.15≦n≦2.50、0.03≦k≦0.10である。
第1情報記録層45及び第2情報記録層43には、さらに耐光性を向上させるための種々の褪色防止剤を含有することができる。褪色防止剤の代表例としては、特開平3−224793号公報に記載の一般式(III)、(IV)もしくは(V)で表される金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩や特開平2−300287号公報や特開平2−300288号公報に示されているニトロソ化合物、特開平10−151861号公報に示されているTCNQ誘導体等を挙げることができる。
第1情報記録層45及び第2情報記録層43の形成は、既述のオキソノール色素、さらに所望によりクエンチャ、結合剤等を溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を第1透明基板42の表面及び第2透明基板40の表面に塗布して塗膜を形成したのち、乾燥することにより行うことができる。前記塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;シクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノ−ル、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレンングリコールモノエチルエーテル、プロピレンングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する化合物の溶解性を考慮して単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等の各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
結合剤の例としては、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子を挙げることができる。
第1情報記録層45及び第2情報記録層43の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、既述のオキソノール色素を始めとした色素の量に対して一般に0.01〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液の色素濃度は一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。第1情報記録層45及び第2情報記録層43はそれぞれ単層でも重層でもよい。第1情報記録層45及び第2情報記録層43の層厚は一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは50〜300nmの範囲にある。
次に、半透明反射層46及び反射層48について説明すると、反射層48の材料である光反射性物質は、レーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼であり、特に好ましいものはAgである。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは2種以上の組み合わせで、又は合金として用いてもよい。反射層48は、例えば上記反射性物質を蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングすることにより第1情報記録層45上、第2情報記録層43上及び第2透明基板40上に形成することができる。
そして、半透明反射層46の層厚は、2〜150nmの範囲にあることが好ましい。また、反射層48の層厚は、一般には10〜300nmの範囲にあり、好ましくは50〜200nmの範囲である。
次に、バリア層44は、第2情報記録層43等を物理的及び化学的に保護する目的で設けられる。このバリア層44は、第1透明基板42や第2透明基板40のうち、第1情報記録層45及び第2情報記録層43が設けられていない部分にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けられてもよい。
バリア層44に用いられる材料としては、例えば、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si3N4、ZnO−Ga2O3等の無機物質;熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質;を挙げることができる。
バリア層44は、真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けることができる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を使用する場合には、これらを適当な溶剤に溶解した塗布液を調製したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。バリア層44の層厚は、一般には1nm〜10μmの範囲にある。
次に、中間層14は、上述したように、少なくとも第1情報記録層45と第2情報記録層43との間に設けられる。
中間層14及び接着層48の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、感圧式両面テープ等や、SiO2等の無機材料等が挙げられる。また、これらの材料を単独又は混合してもよいし、一層だけではなく多層膜にして用いてもよい。このような中間層14は、スピンコート法やキャスト法、スパッタ法により形成することができる。中間層14の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜70μmである。
尚、本考案は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
また、本考案においては、DVDなどの光ディスクを貼り合わせるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、貼り合わせて制作される他の形式のディスクにおいても同様に適用することができる。