JP3113453B2 - 電子写真感光体の製法 - Google Patents

電子写真感光体の製法

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JP3113453B2 JP05129545A JP12954593A JP3113453B2 JP 3113453 B2 JP3113453 B2 JP 3113453B2 JP 05129545 A JP05129545 A JP 05129545A JP 12954593 A JP12954593 A JP 12954593A JP 3113453 B2 JP3113453 B2 JP 3113453B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アモルファスシリコン
系光導電層から成る電子写真感光体に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、アモルファスシリコン系光導電層
(以下、アモルファスシリコンをa−Siと略記する)
から成る電子写真感光体が実用化され、その優れた耐磨
耗性や耐熱性、光感度特性、無公害性などによって、製
造量は年々増加の一途をたどっている。
【0003】このa−Si系感光体の基本構成は、図2
に示すように導電性基板1の上にa−Si系光導電層2
を形成し、更に例えばアモルファスシリコンカーバイド
から成る表面層3を積層して表面硬度や電子写真特性の
安定性、耐環境特性などを高めるようにしており、更に
導電性基板1と光導電層2との間にホウ素(B)や酸素
(O)、窒素(N)などを含有するキャリア注入阻止層
4を形成し、帯電能力、残留電位、光感度などを所要特
性に改善している。
【0004】
【従来技術の課題】しかしながら、上記構成のa−Si
系感光体は、セレン(Se)系感光体等の他の種類の感
光体に比べて帯電能力が低く、現像時に十分なコントラ
スト電位が得られないという問題点があった。この問題
点に対する解決策としてa−Si系光導電層2の膜厚を
厚くした場合、帯電能力を高めることはできたが、その
反面、十分な光感度が得られないという問題点があっ
た。
【0005】また、光導電層2の厚みを増すに伴い該層
中を移動するキャリアの移動距離が長くなるため、感光
ドラムの1回転目の画像形成プロセスで光導電層中に生
成したキャリアが、続けて行なわれる2回転目のプロセ
スまでに光導電層から抜けきれずに表面層との界面近傍
などにトラップされてしまい、2回転目の現像時に1回
転目の画像が重畳された形で現れてしまう、いわゆるメ
モリー残像現象が発生するという問題点があった。
【0006】従って本発明の目的は、光導電層を厚くし
て帯電能力を高めた場合に、光感度特性を大幅に改善し
て高いコントラスト電位で使用できると共に、メモリー
残像現象も改善した、優れた電子写真特性を有する電子
写真感光体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の電子写真感光体
の製法は、導電性基板の上にグロー放電分解法により主
としてシリコンからなる50〜80μmの厚みの第1の
a−Si系光導電層を成膜形成し、次いで第1のa−S
i系光導電層の成膜速度に比べ50〜70%低い成膜速
度により主としてシリコンからなる0.1〜10μmの
厚みの第2のa−Si系光導電層を成膜形成すると共
に、第1のa−Si系光導電層に周期律表第IIIa族元素
を0.15〜0.8ppmの範囲内で含有させ、第2の
a−Si系光導電層の周期律表第IIIa族元素の含有量が
その初期値にて第1のa−Si系光導電層の周期律表第
IIIa族元素の含有量に比べ1.0ppm以下の範囲内
(但し、0.5ppmを超える)で大きくして導電性基
板側から膜厚方向にわたって次第に減少させ、その最終
の含有量が第1のa−Si系光導電層の周期律表第IIIa
族元素の含有量と同等もしくはそれ以下になるよう濃度
勾配を設けたことを特徴とする。
【0008】
【作用】一般に使用されている普通紙複写機では、静電
画像形成用の露光光源にハロゲンランプ等を用いるが、
この光源の主成分波長は600〜650nm付近であ
る。この波長の光をa−Si系感光体に照射した場合、
その光はa−Si系光導電層の照射面から0.2〜2μ
mの深さまでの領域でほとんど吸収されて、照射光によ
る電荷すなわち光キャリアの発生が行なわれる。従っ
て、その領域の膜質を良質なものとすれば光感度が向上
することになる。そこで、この光キャリア発生領域につ
いて、本発明者が鋭意研究に努めたところ、光導電層を
構成するSiのダングリングボンド(以下、ダングリン
グボンドをDBと略記する)量が光感度に大きく影響を
及ぼすことを知見し、良質な膜とするための具体的手段
として成膜速度を遅くすることで得られる、構造欠陥の
少ない緻密な膜を用いることが有効であるという結果を
得た。また、このような構造欠陥の少ない膜は、熱励起
による自然発生キャリアも少なくなるため、表面電位の
暗減衰特性も改善され、帯電能率も向上した。
【0009】従って本発明の製法により得られる電子写
真感光体においては、導電性基板の上に形成した50〜
80μmの厚み、好適には55〜70μmの厚みの第1
のa−Si系光導電層の上に、その第1の光導電層を構
成するSiのDB量に比べて30〜80%にまでDB量
を減少させた0.1〜10μmの厚み、好適には1〜6
μmの厚みの第2のa−Si系光導電層を積層したこと
を特徴とする。また、この第2のa−Si系光導電層に
周期律表第IIIa族元素(以下、周期律表第IIIa族元素を
IIIa族元素と略す)を含有させると共に、そのIIIa族元
素の含有量を、導電性基板側から膜厚方向にわたって次
第に減少させたことを特徴とする。これにより、第1の
a−Si系光導電層と、それより低DB量の第2のa−
Si系光導電層とを、それぞれが所定の範囲の厚みを有
するように組み合わせた積層構造と成し、その結果、高
い帯電能力を有しながらも、その第2のa−Si系光導
電層でのキャリアの移動度が向上し、局在電位密度分布
が改善されて高光感度となり、また熱励起による自然発
生キャリアも少ないために、暗減衰も改善され、更に帯
電能率も向上した。また、第1のa−Si系光導電層に
IIIa族元素を0.15〜0.8ppmの範囲内で含有さ
せ、第2のa−Si系光導電層のIIIa族元素の含有量が
その初期値にて第1のa−Si系光導電層のIIIa族元素
の含有量に比べ1.0ppm以下の範囲内(但し、0.
5ppmを超える)で大きくして導電性基板側から膜厚
方向にわたって次第に減少させ、その最終の含有量が第
1のa−Si系光導電層のIIIa族元素の含有量と同等も
しくはそれ以下になるよう濃度勾配を設けたことで、そ
の層のバンドギャップ中のフェルミレベルに傾斜が付
き、それによって、1回転目の画像形成プロセスの除電
工程における低電界下でも、バンドギャップ中の局在準
位にトラップされたキャリアを電界によるドリフトで放
出させることができ、メモリー残像現象も改善できた。
【0010】本発明者が繰り返し実験を行なったとこ
ろ、上記第1のa−Si系光導電層のDB量を5×10
16〜7×1016cm-3に設定した場合には、第2のa−
Si系光導電層のDB量を1×1016〜5×1016cm
-3、好適には2×1016〜4×1016cm-3に設定する
とよいことが判った。
【0011】このようにDB量を変える方法には種々の
手段があるが、例えばグロー放電分解法によりa−Si
系光導電層を成膜するのに際して、ガス流量や高周波電
力を変えることにより成膜速度を変えたり、あるいは水
素(H2)ガスやヘリウム(He)ガスによる希釈を行
なうことにより、第1の光導電層の成膜速度より遅い速
度で成膜する方法などがある。
【0012】本発明の電子写真感光体の製法について
は、グロー放電分解法により上記第1のa−Si系光導
電層と、低DB量の第2のa−Si系光導電層との積層
構造を形成する際に、低い成膜速度によりDB量が減少
するという知見に基づいて、グロー放電分解法により先
ず導電性基板の上に比較的膜厚の大きい第1のa−Si
系光導電層を高速に成膜形成し、次いでその層の上にそ
の成膜速度に比べて低い成膜速度により成膜した良質な
膜質の第2のa−Si系光導電層を比較的薄い膜厚で積
層しているので、全体としての成膜速度を大きく低下さ
せることなく上記の高性能な電子写真感光体が提供でき
た。
【0013】上記各層の成膜速度についての本発明者の
実験によれば、第2のa−Si系光導電層の成膜速度
を、第1のa−Si系光導電層の成膜速度に比べて50
〜70%低下させるとよいことが判った。実際的には第
1のa−Si系光導電層の成膜速度を4〜6μm/時に
設定した場合には、第2のa−Si系光導電層の成膜速
度を2〜3μm/時に設定するとよいことが判った。
【0014】また、上記第1と第2のa−Si系光導電
層を順次積層するに際しては、両層の間での成膜条件、
例えば原料ガスの混合比やガス希釈量、ガス流量、ガス
圧力、高周波電力、成膜温度などを連続的に変化させて
形成するとよく、これによれば両層の接合部が連続的に
形成されて、両層の組成が連続的に変化した接合部とな
る。すると、両層の接合部においていわゆる界面がなく
なり、界面でのキャリアのトラップを減少させると共
に、界面での熱励起キャリアの発生も防止でき、その結
果、メモリー残像現象や暗減衰を更に低減できるという
利点がある。
【0015】また、上記のように第1と第2のa−Si
系光導電層のDB量を設定するに当たり、両層にいずれ
もSiのDB補償用元素として水素が用いられている場
合には、第2のa−Si系光導電層の水素含有量が第1
のa−Si系光導電層の水素含有量に比べて50〜80
%であるようにすればよいことを知見した。
【0016】このようにDB量や水素量を変えた場合に
おいて、上記両層のキャリア移動度や比誘電率を下記の
ように設定すると望ましいことが判った。このキャリア
移動度については、第1のa−Si系光導電層を0.9
×10-5〜1.2×10-5cm2/V・sにしたことに対
して、第2のa−Si系光導電層を1.1×10-5
1.4×10-5cm2/V・sにするとよい。また、比誘
電率εr については、第1のa−Si系光導電層を11
〜12にしたことに対して、第2のa−Si系光導電層
を9〜10にするとよい。
【0017】また本発明の上記構成において、第1と第
2のa−Si系光導電層の両層にIIIa族元素を含有さ
せ、しかも第2のa−Si系光導電層のIIIa族元素含有
量に導電性基板側から膜厚方向にわたって次第に減少さ
せる濃度勾配を設けることで、高い帯電能力を有しなが
らも、その第2のa−Si系光導電層でのキャリアの移
動度が一層向上し、局在電位密度分布が改善されて一段
と高光感度となり、また自然励起キャリアの発生も少な
いために、暗減衰も更に改善され、帯電能率も向上し、
その上にメモリー残像現象も改善できた。このような第
2のa−Si系光導電層のIIIa族元素含有量の濃度勾配
は、第1のa−Si系光導電層に含有させるIIIa族元素
の量や、感光体に必要とされる帯電特性や暗減衰特性、
光感度特性、そしてメモリー残像特性などの諸特性に応
じて、その都度適正な値に調整して設定する。その含有
量の調整範囲としては、第2のa−Si系光導電層のII
Ia族元素含有量の初期値として、第1のa−Si系光導
電層に含有させるIIIa族元素量に対して約2倍の量にな
るような関係とするのが、メモリー残像現象が発生しに
くく、かつIIIa族元素量を増やしたことによる暗減衰の
増加やそれに伴う帯電電位の減少を少なくできるといっ
た点で好ましく、また含有量の最終値は、第1のa−S
i系光導電層と同等またはそれ以下に設定するのが、前
述と同様に、メモリー残像現象が発生しにくく、かつII
Ia族元素量を増やしたことによる暗減衰の増加やそれに
伴う帯電電位の減少を少なくできるといった理由により
好ましい。そして、この第2のa−Si系光導電層にお
けるIIIa族元素含有量の濃度勾配としては、図3の
(a)〜(h)に示したような勾配を設けることが効果
的であることが、本発明者の実験により判明した。
【0018】図3(a)〜(h)は第2のa−Si系光
導電層中におけるIIIa族元素の濃度勾配の例を示す線図
である。各線図の横軸は第2の光導電層の膜厚を表わ
し、Iは第1の光導電層との界面、すなわち第2の光導
電層の導電性基板側を示し、Eは第2の光導電層の表面
側を示す。また、各線図の縦軸はIIIa族元素の含有量を
表わし、Fおよび点線は第1の光導電層における含有量
を示し、Sおよび実線は第2の光導電層における含有量
を示す。
【0019】中でも、Siに対するIIIa族元素の比率
を、第1の光導電層において0.15〜0.8ppmの
範囲内で、好適には0.3〜0.5ppmの範囲内で含
有させた場合に対して、第2の光導電層において1.0
〜0.04ppmの範囲内で傾斜を設けた場合に、上記
の改良特性が優位になることを見出した。このIIIa族元
素としては、B、Al、Ga、In等があり、中でもB
を用いると、Siとの共有結合性に優れて半導体特性を
敏感に変え得る点で好ましい。
【0020】また本発明の電子写真感光体においては、
上記構成に加えて、第2のa−Si系光導電層の上に更
にアモルファスシリコンカーバイド(以下、アモルファ
スシリコンカーバイドをa−SiCと略す)からなる表
面層を積層するとよく、これによれば上記構成の感光体
の帯電特性や耐電圧特性、光感度特性、耐磨耗性、耐環
境性などの諸特性を更に高めて、優れた電子写真特性と
耐久性を兼ね備えたa−Si系感光体を提供することが
できた。
【0021】このa−SiC表面層は、a−Si系光導
電層と同様にして形成されるが、その成膜に当たってグ
ロー放電分解法であれば、C源としてメタンやアセチレ
ン、エチレン、プロパン等の炭化水素系ガスあるいは四
フッ化炭素や四塩化炭素などの炭化ハロゲン系ガス、ジ
メチルシランやトリメチルシラン等のC含有ガスが使用
される。この表面層におけるC量は、組成比をSi1-x
x で表わした時のx値で0.3<x≦1.0、好適に
は0.5≦x≦0.95の範囲がよく、この範囲であれ
ば、表面層に必要な高抵抗率と耐磨耗性が得られる。ま
たa−SiC表面層の厚みは、0.05〜5μm、好適
には0.1〜3μmにすればよく、この範囲であれば、
帯電特性や耐電圧性、耐磨耗性、耐環境性が高められる
と共に、残留電位の上昇が抑制される。
【0022】更に、第2のa−Si系光導電層とa−S
iC表面層との間には、両層の中間のC量組成でC量に
勾配を設けた変化層を設けてもよい。この変化層の厚み
は、0.01〜1μm、好適には0.05〜0.5μm
とするのがよく、これによりa−Si系光導電層で生成
された光キャリアが表面層の表面へ向けてスムーズに走
行できるようになり、光感度の向上や残留電位の低減、
メモリー残像現象の抑制などの効果が、より高められ
る。
【0023】導電性基板と第1のa−Si系光導電層と
の間には、キャリア注入阻止層を設ける。この注入阻止
層は、a−Si層またはa−SiC層のいずれでもよ
く、導電性基板との密着性向上のためにO及び/又はN
等の元素を含有させるとよい。また、注入阻止層と第1
のa−Si系光導電層を共にa−SiC層により形成し
た場合は、第1のa−Si系光導電層に比べてC量を多
くするとよい。
【0024】また注入阻止層には、導電性基板から第1
のa−Si系光導電層へのキャリア(帯電電荷と逆極性
の電荷)の注入を阻止するために不純物元素を含有させ
る。すなわち、負電荷キャリアの注入を阻止するために
はIIIa族元素を1〜10,000ppm、好適には100 〜5,00
0 ppm含有させるとよい。この不純物元素は層厚方向
にわたって勾配を設けてもよく、その場合には層全体の
平均含有量が上記範囲内であればよい。そして、注入阻
止層にIIIa族元素を含有した場合は正極性の帯電が用い
られる。
【0025】上記IIIa族元素としては、BやIn、G
a、Al等があるが、中でもB元素が共有結合性に優れ
て半導体特性を敏感に変え得る点で、その上優れた注入
阻止能並びに光感度が得られるという点で望ましい。ま
たこの注入阻止層の厚みは、0.01〜5μm、好適に
は0.1〜2μmの範囲がよく、これにより、必要な注
入阻止能が確保し易く、しかも残留電位の上昇を抑制す
ることができる。
【0026】また上記注入阻止層には、O及び/又はN
を各元素合計含有量が0.01〜30原子%の範囲内で
含有させると、導電性基板からのキャリア注入を更に一
層阻止できると共に、基板に対する密着力も一段と高め
ることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の電子写真感光体をグロー放電
分解法により製作した場合を例に挙げて説明する。図1
はこの実施例により製作した電子写真感光体の層構成で
あり、図4はこの実施例に用いたグロー放電分解装置で
ある。
【0028】先ず図1においては、導電性基板5の上に
キャリア注入阻止層6と第1のa−Si系光導電層7と
第2のa−Si系光導電層8と表面層9とを順次積層し
た構成であり、本例では導電性基板5をアルミニウム合
金により、キャリア注入阻止層6をa−Si系の層によ
り、表面層9をa−SiC層により形成したものであ
る。しかし、この例に限らず各部材には次の材料を用い
ることができる。
【0029】上記導電性基板5はアルミニウム合金など
の導電性部材、もしくは樹脂やガラスなどの表面に導電
性膜を被覆したものにより構成することができる。
【0030】上記キャリア注入阻止層6はa−Si系材
料を母材にして水素(H)やハロゲン(F、Cl等)等
を含有させ、更にIII 族、 IV族、V族のうち少なくと
も1種の元素を含有させ、また必要によりC、O、Nな
どを含有させることにより構成することができる。
【0031】上記表面層9はa−Si系材料を母材にし
て更にC、O、Nなどを含有させ、必要に応じてHやハ
ロゲン等を含有させることにより構成することができ
る。また、更に必要に応じてIIIa族元素やVa 族元素を
含有させてもよい。
【0032】次に図4のグロー放電分解装置10の構成
を説明する。同図中、11は円筒形状の金属製反応炉、
12は感光体ドラム装着用の円筒形状の導電性基板支持
体、13は基板加熱用ヒーター、14はa−Siの成膜
に用いられる円筒形状のグロー放電用電極板であり、こ
の電極板14にはガス噴出口15が多数形成されてお
り、そして、16は反応炉内部へガスを導入するための
ガス導入口、17はグロー放電に晒されたガスの残余ガ
スを排気するためのガス排出口であり、18は基板支持
体12とグロー放電用電極板14の間でグロー放電を発
生させる高周波電源である。また、この反応炉11は円
筒体11aと、蓋体11bと、底体11cとからなり、
そして、円筒体11aと蓋体11bとの間、並びに円筒
体11aと底体11cとの間にはそれぞれ絶縁性のリン
グ11dを設けており、これによって高周波電源18の
一方の端子は円筒体11aを介してグロー放電用電極板
14と導通しており、他方の端子は蓋体11bや底体1
1cを介して基板支持体12と導通しており、接地され
ている。また、基体5は基体支持体12の顎部12aに
載置され、両者5、12aの周面は相互にゆるやかに接
触して電気的に導通しており、蓋体11bの上に付設し
たモーター19により回転軸20を介して基板支持体1
2が回転駆動され、これに伴って基板5も回転する。
【0033】このグロー放電分解装置10を用いてa−
Si感光体ドラムを作製する場合には、a−Si成膜用
のドラム状基板5を基板支持体12に装着し、a−Si
生成用ガスをガス導入口16より反応炉内部へ導入し、
このガスをガス噴出口15を介して基板面へ噴出し、更
にヒーター13によって基板を所要の温度に設定すると
共に基板支持体12と電極板14との間でグロー放電を
発生させ、更に基板5を回転させることによって基板5
の周面にa−Si膜が成膜される。そして、グロ−放電
分解反応後の残余ガスは、ガス排出口17を介して排出
される。なお、図4中の矢印は、ガス流の方向を示す。
【0034】〔例1〕 本例では、グロー放電分解装置10を用いて表1に示す
成膜条件により、図1の構成のa−Si系感光体Aを製
作した。この感光体Aの第2の光導電層においては、B
含有量には0.6ppmから0.3ppmに減少するよ
うな濃度勾配を設けた。
【0035】
【表1】
【0036】また比較例として、表1の成膜条件の中で
第2のa−Si光導電層を形成しないで、その他の成膜
構成はa−Si系感光体Aと同じにして、a−Si系感
光体Bを製作した。
【0037】かくして得られた各々の感光体A、Bにつ
いて、帯電能力を測定した結果を図5に示す。同図にお
いて、横軸はコロナ帯電によって感光体に与えた表面電
荷量Q(μC/cm2 )を表わし、縦軸は感光体の表面
電位(V)を表わす。また図中のAは感光体Aの結果
を、Bは感光体Bの結果を示す。同図より明らかなよう
に、本発明の感光体Aは感光体Bに比べて同じ表面電荷
量に対してより高い表面電位を示しており、高い帯電能
力が得られた。
【0038】また、各感光体A、Bについて、表面電位
を500Vに帯電させた後に種々の波長の光を照射して
表面電位を500Vから250Vに減衰させ、それに要
した照射光エネルギーの逆数と減衰させた電位差との積
でもって光感度を測定して分光感度特性を求めたとこ
ろ、図6に示すような結果が得られた。
【0039】同様に各感光体A、Bについて、表面電位
を500Vに帯電させた後に種々の波長の光を照射して
表面電位を500Vから50Vに減衰させ、それに要し
た照射光エネルギーの逆数と減衰させた電位差との積で
もって光感度を測定して分光感度特性を求めたところ、
図7に示すような結果が得られた。
【0040】図6および図7において、横軸は照射光の
波長(nm)を表わし、縦軸は照射光エネルギーの逆数
と減衰させた電位差との積(V・cm2/μJ)を表わ
す。この縦軸の値は、大きいほど光感度が高いことを示
す。また各図中のAは感光体Aの結果を、Bは感光体B
の結果を示す。これらの結果から明らかなように、感光
体Aは、成膜速度を低下させて且つB含有量に傾斜を設
けた第2のa−Si光導電層を設けたことにより、それ
がない感光体Bに比べて光感度が顕著に向上したことが
判る。
【0041】〔例2〕 次に本例においては、〔例1〕の感光体Aを製作するに
際して、第2のa−Si光導電層の形成時にB26
ス流量の変化量を増減させてB含有量を変え、この層に
設けたB含有量の傾斜を表2に示したように変化させ
た。そしてその他の構成は感光体Aと同じにして感光体
C〜G,Iを製作し、また比較例として第2のa−Si
光導電層におけるB含有量を一定としてその他の構成は
感光体Aと同じにした感光体Jを製作した。なお、これ
ら感光体C〜G、I、Jの第1のa−Si光導電層のB
/Si比は、0.37ppmに設定した。
【0042】
【表2】
【0043】そして、これらの感光体C〜G、I、Jを
市販の普通紙複写機に搭載して画像評価を行ない、メモ
リー残像現象の比較を行なった。その結果も表2に併せ
て示した。この評価結果において、○は残像が認められ
ず良好であったことを、△は残像がわずかに認められる
が概ね良好であったことを、×は残像が十分に認められ
て不良であったことを表わす。この表の結果より、第2
のa−Si光導電層にB含有量の傾斜を設けた本発明の
感光体においてはメモリー残像現象について良好な結果
を示し、B/Si比が1.0から0.04ppmの範囲
で傾斜を設けるのが良かったことが判る。
【0044】なお、このB/Si比の範囲の最適値は、
基板のサイズやa−Si系光導電層を成膜する反応炉の
形状や特性により幾分異なるものと考えられ、若干の調
整が必要となると考えている。
【0045】
【発明の効果】以上の通り、本発明の電子写真感光体の
製法は、導電性基板の上にグロー放電分解法により主と
してシリコンからなる50〜80μmの厚みの第1のa
−Si系光導電層を成膜形成し、次いで第1のa−Si
系光導電層の成膜速度に比べ50〜70%低い成膜速度
により主としてシリコンからなる0.1〜10μmの厚
みの第2のa−Si系光導電層を成膜形成すると共に、
第1のa−Si系光導電層にIIIa族元素を0.15〜
0.8ppmの範囲内で含有させ、第2のa−Si系光
導電層のIIIa族元素の含有量がその初期値にて第1のa
−Si系光導電層のIIIa族元素の含有量に比べ1.0p
pm以下の範囲内(但し、0.5ppmを超える)で大
きくして導電性基板側から膜厚方向にわたって次第に減
少させ、その最終の含有量が第1のa−Si系光導電層
のIIIa族元素の含有量と同等もしくはそれ以下になるよ
う濃度勾配を設けたことによって、高い帯電能力を有し
ながらも高い光感度が得られ、さらにメモリー残像現象
も改善できた高性能な電子写真感光体を提供することが
できた。
【0046】また、本発明によれば、従来のa−Si感
光体に比べて高い表面電位が得られるので、より大きな
現像コントラスト電位で使用することができ、現像プロ
セス条件の設定がより容易となった。
【0047】さらに、本発明によれば、従来の高速複写
機で広く使用されてきたセレン系感光体と同等の帯電能
力とそれを上回る光感度を有するので、従来のセレン系
感光体を搭載した機種との感光体の置き換えが可能とな
り、人体に有害なセレンや砒素などを使用しない複写機
とすることができる。
【0048】また、本発明の電子写真感光体の製法にお
いては、グロー放電分解法において低い成膜速度ではD
B量が減少するという知見に基づいて、グロー放電分解
法により先ず導電性基板の上に比較的膜厚の大きい第1
のa−Si系光導電層を高速に成膜形成し、次いでその
上にその層の成膜速度に比べて低い成膜速度により成膜
した良質な膜質の第2のa−Si系光導電層を比較的薄
い膜厚で積層しているので、全体としての成膜速度を大
きく低下させることなく上記の高性能な電子写真感光体
が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を示す断面図
である。
【図2】アモルファスシリコン系電子写真感光体の基本
構成を示す断面図である。
【図3】(a)から(h)は本発明の電子写真感光体の
第2の光導電層における周期律表第IIIa族元素の濃度勾
配の例を表わす線図である。
【図4】実施例で用いたグロー放電分解装置の概略構成
図である。
【図5】実施例における電子写真感光体の表面電荷量と
表面電位との関係を示す線図である。
【図6】実施例における電子写真感光体の分光感度特性
を示す線図である。
【図7】実施例における電子写真感光体の分光感度特性
を示す線図である。
【符号の説明】
1、5・・導電性基板 4、6・・キャリア注入阻止層 2・・・・アモルファスシリコン系光導電層 7・・・・第1のアモルファスシリコン系光導電層 8・・・・第2のアモルファスシリコン系光導電層 3、9・・表面層

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性基板の上にグロー放電分解法により
    主としてシリコンからなる50〜80μmの厚みの第1
    のアモルファスシリコン系光導電層を成膜形成し、次い
    で第1のアモルファスシリコン系光導電層の成膜速度に
    比べ50〜70%低い成膜速度により主としてシリコン
    からなる0.1〜10μmの厚みの第2のアモルファス
    シリコン系光導電層を成膜形成すると共に、第1のアモ
    ルファスシリコン系光導電層に周期律表第IIIa族元素を
    0.15〜0.8ppmの範囲内で含有させ、第2のア
    モルファスシリコン系光導電層の周期律表第IIIa族元素
    の含有量がその初期値にて第1のアモルファスシリコン
    系光導電層の周期律表第IIIa族元素の含有量に比べ1.
    0ppm以下の範囲内(但し、0.5ppmを超える)
    で大きくして導電性基板側から膜厚方向にわたって次第
    に減少させ、その最終の含有量が第1のアモルファスシ
    リコン系光導電層の周期律表第IIIa族元素の含有量と同
    等もしくはそれ以下になるよう濃度勾配を設けたことを
    特徴とする電子写真感光体の製法。
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