JP3109753B2 - 高剛性ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents

高剛性ポリアセタール樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な高剛性ポリアセタ
ール樹脂組成物、さらに詳しくは、ポリアセタール樹脂
とポリアミド樹脂とを樹脂成分とする優れた高温剛性と
摺動性とを合わせもつ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリアセタール樹脂は、強度特
性、耐疲労性、自己潤滑性などの物性が優れたエンジニ
アリング樹脂として、例えば自動車、機械、電気・電子
分野などの多くの分野において幅広く用いられている。
一方、ポリアミド樹脂は耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性、柔
軟性などに優れたエンジニアリング樹脂として、前記ポ
リアセタール樹脂と同様に自動車、機械、電気・電子分
野などの多くの分野において広く用いられている。
【0003】ところで、近年これらのエンジニアリング
樹脂に対する要求特性が高度化し、単一の樹脂では対応
が困難となってきたため、例えばポリアセタール樹脂と
ポリオレフィン樹脂とのポリマーアロイが注目されてい
る。
【0004】しかしながら、ポリアセタール樹脂とポリ
アミド樹脂とのポリマーアロイについては、そのモルフ
ォロジーをコントロールする方法が知られていないた
め、両者の特性を十分に生かしたものは、これまで得ら
れていなかった。
【0005】例えば、ポリアセタール樹脂とポリアミド
樹脂とのブレンド物については、ポリアセタール樹脂5
容量%以上とポリアミド樹脂95容量%以下の組成物1
00重量部に、無機粉末1〜40重量部を加えたポリア
セタール樹脂組成物や(特開昭63−34377号公
報)、ポリアセタール樹脂90重量%以上とポリアミド
樹脂(4,6‐ナイロン)0.01〜10重量%から成
る最大粒径10μmのポリアミドがポリアセタール樹脂
中に分散しているポリアセタール樹脂組成物(特公平2
−11625号公報)などが知られている。
【0006】前者は、ポリオキシメチレンを金属の代替
として、耐腐食性に優れた合成樹脂製ニードルバルブを
作製する際の材料に用いる場合に、該ポリオキシメチレ
ンと溶融温度が近似したブレンド可能な樹脂の1例とし
て、ポリアミド樹脂を配合したものであり、また後者
は、ポリオキシメチレンの熱安定性を向上させるため
に、高融点を有し、かつ成形機スクリューや金型で析出
しないような特定のポリアミド樹脂を熱安定剤として配
合したものである。
【0007】したがって、これらは、高温剛性と摺動性
とを合わせもつ組成物としては程遠いものである。
【0008】他方、高温剛性を高めるために、ポリアセ
タール樹脂をガラス繊維などの充てん剤によって強化す
ることはよく知られている。しかしながら、ポリアセタ
ール樹脂とガラス繊維などの充てん剤とは、その界面で
のぬれが小さいため、接着性が極めて悪く、十分に満足
しうる補強効果が得られない。
【0009】また、このような充てん剤による強化は、
ポリアセタール樹脂本来の特性である摺動性を著しく低
下させるという欠点を伴う。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、ポリアセタール樹脂とポリアミド樹脂と
を樹脂成分とし、かつ優れた高温剛性と摺動性とを合わ
せもつ樹脂組成物を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは優れた高温
剛性と摺動性とを合わせもつ、ポリアセタール樹脂とポ
リアミド樹脂とを樹脂成分とする樹脂組成物を開発すべ
く鋭意研究を重ねた結果、ポリアセタール樹脂、特定の
ポリアミド樹脂、分散剤及び充てん剤をそれぞれ特定の
割合で含有させ、かつ該ポリアミド樹脂ドメインを特定
の形状で、ポリアセタール樹脂のマトリックス中に分散
させることにより、前記目的を達成しうることを見出
し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明は、(A)ポリアセター
ル樹脂90〜50重量%と(B)融点230℃以下のポ
リアミド樹脂10〜50重量%とから成る樹脂成分に対
し、その100重量部当り、(C)分散剤0.05〜2
0重量部及び(D)充てん剤5〜40重量部を配合して
成る樹脂組成物であって、該ポリアミド樹脂のドメイン
が最大粒径0.03〜10μm、最大アスペクト比2以
下でポリアセタール樹脂のマトリックス中に分散してい
ることを特徴とする高剛性ポリアセタール樹脂組成物を
提供するものである。
【0013】本発明組成物において、(A)成分として
用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単独
重合体であってもよいし、オキシメチレン共重合体であ
ってもよい。該オキシメチレン単独重合体は、ホルムア
ルデヒド又はその三量体(トリオキサン)や四量体(テ
トラオキサン)などの環状オリゴマーを重合して得られ
る実質上オキシメチレン単位−〔CHO〕−から成る
ものである。
【0014】一方、オキシメチレン共重合体は、オキシ
メチレン単位から成る連鎖中にオキシアルキレン単位が
ランダムに導入された構造を有する重合体であって、オ
キシメチレン共重合体中の該オキシアルキレン単位の含
有量は、オキシメチレン単位100モル当り、好ましく
は0.05〜50モル、より好ましくは0.1〜20モ
ルの範囲で選ばれる。
【0015】該オキシアルキレン単位としては、例えば
オキシエチレン単位、直鎖又は分枝状のオキシプロピレ
ン単位、直鎖又は分枝状のオキシブチレン単位、オキシ
フェニルエチレン単位などが挙げられ、これらは1種導
入されていてもよいし、2種以上導入されていてもよ
い。これらのオキシアルキレン単位の中で、特にオキシ
エチレン単位−〔(CHO〕−及び直鎖状オキシ
ブチレン単位(オキシテトラメチレン単位−〔(C
O〕−がポリアセタール樹脂の物性を向上させ
る点から好適である。
【0016】前記オキシメチレン共重合体は、ホルムア
ルデヒド又はトリオキサン、テトラオキサンなどのホル
ムアルデヒド環状オリゴマーと、エチレンオキシド、プ
ロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、1,3‐ジオ
キソラン、グリコールのホルマール、ジグリコールのホ
ルマールなどの環状エーテルとを共重合させることによ
り得られる。なお、主鎖の50モル%以上がオキシメチ
レン単位から成り、その他の部分がオキシメチレン以外
の単位から成るオキシメチレンブロック共重合体も本発
明でいうオキシメチレン共重合体に包含される。
【0017】本発明組成物においては、前記ポリアセタ
ール樹脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせ
て用いてもよい。
【0018】本発明組成物において、(B)成分として
用いられるポリアミド樹脂は融点が230℃以下のもの
であって、このようなものとしては、例えばナイロン1
1、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン610、ナイ
ロン612、さらにはこれらのナイロンの共重合体や、
分子鎖中に炭素数1〜10の鎖状アルキレンオキシド単
位0.1〜50重量%を含有するポリアミド樹脂、分子
鎖中に炭素数1〜10の鎖状アルキルエステル単位0.
1〜50重量%を含有するポリアミド樹脂、主鎖のアミ
ド結合の水素を一部アルコキシメチル基、例えばメトキ
シメチル基で置換したポリアミド樹脂及びこれらのポリ
アミドの共重合体などが挙げられる。これらのポリアミ
ド樹脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。
【0019】本発明組成物における前記(A)成分のポ
リアセタール樹脂と(B)成分のポリアミド樹脂との使
用割合は、合計重量に基づき、ポリアセタール樹脂90
〜50重量%でポリアミド樹脂が10〜50重量%、好
ましくはポリアセタール樹脂が90〜60重量%でポリ
アミド樹脂が10〜40重量%、より好ましくはポリア
セタール樹脂が90〜70重量%でポリアミド樹脂が1
0〜30重量%になるように選ぶことが必要である。
【0020】ポリアセタール樹脂の使用量が50重量%
未満では得られる組成物はポリアセタール樹脂の特性が
十分に発揮されず、本発明の目的が達せられないし、9
0重量%を超えるとポリアミド樹脂の特性が十分に発揮
されなくなり、本発明の目的が達せられない。
【0021】本発明組成物において、(C)成分として
用いられる分散剤としては、例えば一般式
【化5】 〔式中のR1ないしR6は、それぞれ水素原子、炭素数1
〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜3
0のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2m
OR7(R7は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、mは1〜
4の整数)であり、それらは同一であってもよいし、異
なっていてもよいが、その少なくとも1つは−(C
2m−OR7である〕で表わされるメラミン誘導体、
一般式
【0022】
【化6】 〔式中のR8ないしR11は、それぞれ水素原子、炭素数
1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
30のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2n
−OR12(R12は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、nは
1〜4の整数)であり、それらは同一であってもよい
し、異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−
(CH2n−OR12である〕で表わされる尿素誘導体、
一般式
【0023】
【化7】 〔式中のR13及びR14は、それぞれ水素原子、炭素数1
〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜3
0のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2p
OR16(R16は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、pは1
〜4の整数)であり、それらは同一であってもよいし、
異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−(CH
2p−OR16であり、R15は、水素原子、炭素数1〜3
0の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜30の
シクロアルキル基又はアリール基である〕で表わされる
アミノギ酸誘導体、一般式
【0024】
【化8】 〔式中のR17ないしR20は、それぞれ水素原子、炭素数
1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
30のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2q
−OR22(R22は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、qは
1〜4の整数)であり、それらは同一であってもよい
し、異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−
(CH2q−OR22であり、R21は、水素原子、炭素数
1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
30のシクロアルキル基又はアリール基である〕で表わ
されるグアニジン誘導体などが挙げられる。
【0025】前記一般式(I)で表わされるメラミン誘
導体としては、例えばモノメトキシメチルメラミン、ジ
メトキシメチルメラミン、トリメトキシメチルメラミ
ン、テトラメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメ
チルメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン及びこれ
らの化合物のメトキシ基の一部又は全部が、エトキシ
基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキ
シ基、イソブトキシ基、t‐ブトキシ基及びペンチルオ
キシ基などの中から選ばれた少なくとも1種で置換され
た化合物などが挙げられる。
【0026】前記一般式(II)で表わされる尿素誘導
体としては、例えばN‐メトキシメチル尿素、N,N‐
ジメトキシメチル尿素、N,N′‐ジメトキシメチル尿
素、N‐メトキシメチル‐N′‐メチル尿素、N,N‐
ジメトキシメチル‐N′,N′‐ジメチル尿素、N,
N,N′‐トリメトキシメチル尿素、N,N‐ジメトキ
シメチル‐N′‐エチル尿素及びこれらの化合物のメト
キシ基の一部又は全部が、エトキシ基、n‐プロポキシ
基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、イソブトキシ
基、sec‐ブトキシ基、t‐ブトキシ基及びペンチル
オキシ基などの中から選ばれた少なくとも1種で置換さ
れた化合物などが挙げられる。
【0027】前記一般式(III)で表わされるアミノ
ギ酸誘導体としては、例えばN,N‐ジメトキシメチル
アミノギ酸、N‐メトキシメチルアミノギ酸、N‐メト
キシメチルアミノギ酸メチル、N‐メトキシメチルアミ
ノギ酸エチル及びこれらの化合物のメトキシ基の一部又
は全部が、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポ
キシ基、n‐ブトキシ基、イソブトキシ基、sec‐ブ
トキシ基、t‐ブトキシ基及びペンチルオキシ基などの
中から選ばれた少なくとも1種で置換された化合物など
が挙げられる。
【0028】さらに、前記一般式(IV)で表わされる
グアニジン誘導体としては、例えばモノメトキシメチル
グアニジン、ジメトキシメチルグアニジン、トリメトキ
シメチルグアニジン、テトラメトキシメチルグアニジン
及びこれらの化合物のメトキシ基の一部又は全部が、エ
トキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐
ブトキシ基、イソブトキシ基、sec‐ブトキシ基、t
‐ブトキシ基及びペンチルオキシ基などの中から選ばれ
た少なくとも1種で置換された化合物などが挙げられ
る。
【0029】前記化合物におけるN‐アルコキシアルキ
ル基中のアルキレン基の炭素数は1〜4であるが、1及
び2が好ましく、特に1が好適である。
【0030】また、ヘキサメチレンジイソシアネート
(HMDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジ
イソシアネート(MDI)、フェニレンジイソシアネー
ト、トリレンジイソシアネート(TDI)及びこれらを
カルボジイミド変性したもの、アルコール変性したも
の、二量体、三量体、四量体などの多量体などのイソシ
アネート化合物、あるいは、無水マレイン酸残基を1分
子中に2個以上含む化合物などのアルコール性水酸基と
反応する官能基を1分子中に2個以上含む化合物もすべ
て含まれる。
【0031】該分散剤のN‐アルコキシアルキル基を有
する化合物の中で、ヘキサアルコキシメチルメラミン、
テトラアルコキシメチル尿素、N‐アルコキシメチルア
ミノギ酸メチル、テトラアルコキシメチルグアニジンが
好ましく、特にヘキサメトキシメチルメラミン、テトラ
メトキシメチル尿素、N‐メトキシメチルアミノギ酸メ
チル、テトラメトキシメチルグアニジンが好適である。
【0032】これらの分散剤は1種用いてもよいし、2
種以上を組み合わせて用いてもよく、またその配合量
は、前記(A)成分のポリアセタール樹脂と(B)成分
のポリアミド樹脂との合計量100重量部当り、0.0
5〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より
好ましくは0.2〜5重量部の範囲で選ばれる。この量
が0.05重量部未満ではポリアミド樹脂がポリアセタ
ール樹脂のマトリックス中に粒子状のドメインとして分
散せず、十分な摺動性が得られないし、20重量部を超
えると組成物の熱安定性が著しく低下し、溶融混練が困
難となる。
【0033】ポリアセタール樹脂とポリアミド樹脂との
2成分から成る組成物のモルフォロジーを透過型電子顕
微鏡で観察した結果を図7及び図8に示す。図7及び図
8は、後述する比較例1の組成から充てん剤を除いた組
成物から成る厚さ100nm切片の透過型電子顕微鏡写
真図であって、倍率がそれぞれ1000倍及び5000
倍の場合である。分散剤を含まないポリアセタール樹脂
とポリアミド樹脂との組成物においては、ポリアミド樹
脂が粒子状のドメインとなって分散せず、線状となって
いる。
【0034】本発明のポリアセタール樹脂組成物におい
ては、ポリアミド樹脂のドメインが、最大粒径0.03
〜10μm、好ましくは0.05〜8μmの範囲にあ
り、かつ最大アスペクト比が2以下、好ましくは1.8
以下の形状でポリアセタール樹脂のマトリックス中に分
散していることが必要である。
【0035】ここでいう最大粒径とは、充てん剤を含ま
ない樹脂成分を100nmの厚さの超薄切片に調製し、
それを透過型電子顕微鏡でそのモルフォロジーを観察し
たときの、ポリアセタール樹脂中のポリアミド樹脂の最
大の粒径の長さをいう。すなわちどの切片を切ってもこ
れより大きい粒径のポリアミド樹脂のドメインはないと
いうものの大きさを示している。
【0036】また、ここでいう最大アスペクト比とは、
ポリアミド樹脂のドメインの最大径と最小径の比の最大
値をいう。
【0037】前記モルフォロジーの例を図5及び図6に
示す。図5及び図6は、本発明組成物から、充てん剤を
除いて、モルフォロジーの状態を観察しやすいようにし
た厚さ100nm切片の透過型電子顕微鏡写真図であっ
て、倍率がそれぞれ1000倍及び5000倍のもので
ある。これらの図から、ポリアセタール樹脂のマトリッ
クス中に、ポリアミド樹脂のドメインが、特定の大きさ
の粒子状となって分散している状態が観察される。充て
ん剤を添加しても、樹脂のモルフォロジーは基本的には
変らないが、ポリアミド樹脂が一部充てん剤を被覆する
ように集まる様子が観察される。
【0038】本発明組成物において、(D)成分として
用いられる充てん剤としてはシリカ、カーボンブラッ
ク、タルク、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、チタ
ン酸カリウムウィスカー、カーボンウィスカー、クレ
ー、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブ
ラック、有機繊維などが挙げられる。これらの中でガラ
ス繊維、板状タルク、柱状ウオラストナイト、針状炭酸
カルシウム、ガラスビーズ、チタン酸カリウムウィスカ
ー、カーボンウィスカーが好ましく、特にガラス繊維が
好適である。
【0039】該ガラス繊維は、繊維長が0.1〜10m
m、好ましくは0.3〜8.0mm、より好ましくは
0.5〜7.0mmの範囲にあり、かつ繊維径が0.1
〜50μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは
6〜15μmの範囲にあるものが好適である。また、こ
のガラス繊維としては、例えばEガラスやAガラスなど
が挙げられるが、これらの中でEガラスが好ましい。
【0040】さらに、該ガラス繊維は無処理のまま用い
てもよいし、表面処理剤で表面処理したのち用いてもよ
い。該表面処理剤としては、例えばアルコキシシラン、
シラザン、クロロシラン、アミノシラン、グリシドシラ
ンなどのシラン系カップリング剤や、チタネート系カッ
プリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ウレタン
系処理剤などが挙げられるが、これらの中で特にアミノ
シランが好適である。この表面処理は、ガラス繊維以外
の他の充てん剤に対しても有効である。
【0041】これらの充てん剤は1種用いてもよいし、
2種以上を組み合わせて用いてもよく、またその配合量
は、前記(A)成分のポリアセタール樹脂と(B)成分
のポリアミド樹脂との合計量100重量部当り、5〜4
0重量部、好ましくは7〜35重量部、より好ましくは
10〜30重量部の範囲で選ばれる。この量が5重量部
未満では高温剛性及び摺動性の向上効果が十分に発揮さ
れないし、40重量部を超えると熱安定性が著しく低下
し、溶融混練が困難となる。
【0042】本発明のポリアセタール樹脂組成物には、
所望に応じ、通常熱可塑性樹脂に添加される添加成分、
例えば酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、
潤滑剤、難燃剤、顔料などの添加剤を含有させることが
できる。
【0043】本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製
方法については特に制限はなく、従来熱可塑性樹脂組成
物の調製に慣用されている方法を用いることができる。
例えば、前記の(A)、(B)、(C)、(D)成分及
び必要に応じて用いられる各種添加成分を、バンバリー
ミキサー、ロール混練機、押出機、ボールミル、高速か
くはん機、シェイカーなどの通常樹脂溶融体の混練に用
いられている公知の装置を用いて溶融混練することによ
り、調製することができる。これらの混練装置の中で、
酸素の遮断や、作業環境、作業能率などの点から押出機
が最適である。この押出機の種類としては、1軸、2
軸、ベント付、ノーベントタイプなどがあるが、いずれ
の押出機によっても、本発明組成物を調製することがで
きる。
【0044】本発明組成物を調製する際の押出条件につ
いては、熱可塑性樹脂組成物の調製に通常用いられてい
る条件であればよく、特に制限はないが、最高樹脂温度
が210℃以上、好ましくは220℃以上で、かつ溶融
混練時間が0.2分以上、好ましくは0.5分以上の条
件が望ましい。最高樹脂温度が210℃未満や溶融混練
時間が0.2分未満では所望の高温剛性や摺動性を有す
る組成物が得られにくい。
【0045】本発明における最高樹脂温度とは、溶融混
練機がニーダー、ロールミルなどのバッチ式混練機の場
合は、系内に取り付けられた温度計により感知された、
一定条件で溶融混練した際の平衡樹脂温度のことを指
し、一方、溶融混練機が押出機の場合は、一定条件で溶
融混練した際の押出機から出た直後の樹脂の平衡温度の
ことをいう。
【0046】また、溶融混練時間とは、樹脂温度が前記
最高樹脂温度に達してからの混練時間をいう。特に溶融
混練機が押出機の場合は、最高樹脂温度に達した状態で
の平均滞留時間を示している。この平均滞留時間は、平
衡樹脂温度での押出し途中で、黒顔料(アセチレンブラ
ック)を原料フィード口に5重量%添加してから、ダイ
より出た樹脂の色が最も濃くなるまでの時間である。
【0047】本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポ
リアセタール樹脂が通常使用されている摺動部材や精密
部材などの材料として、また、ポリアミド樹脂が通常使
用されている摺動部材、衝撃部材、複合部材などの材料
として用いることができる。具体的には、ギア、軸受
け、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラ
ー、ネジ、給水部品、玩具部品、ファン、フィルム、テ
グス、パイプ、フィラメント、チューブ、さらにはフィ
ラー類で強化した精密複合材料などの素材として好適に
用いられる。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、優れた高温剛性と摺動
性とを合わせもち、かつ、良好な色調を有するポリアセ
タール樹脂組成物が得られる。
【0049】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。
【0050】なお、組成物の各特性は次のようにして求
めた。 (1)曲げ強度、曲げ弾性率 ASTM D‐790に準拠し、試験環境温度23℃と
80℃で行った。ここで、曲げ試験片は、溶融混練され
た組成物をシリンダー温度200℃に設定された成形機
にて、ASTM D‐790に準拠して成形した(金型
温度70℃、冷却時間20秒)。
【0051】(2)摩擦試験 JIS K‐7218に準拠して平均摩擦係数を求め
た。
【0052】(3)最大粒径及び最大アスペクト比 充てん剤を含まない樹脂成分で100nmの厚さの超薄
切片を調製し、それを透過型電子顕微鏡でそのモルフォ
ロジーを観察した。ポリアセタール樹脂中のポリアミド
樹脂のドメインの最大の粒径の長さを最大粒径とし、ま
た、ポリアミド樹脂のドメインの最大径と最小径の比の
最大値を最大アスペクト比とした。
【0053】また、樹脂成分及び充てん剤として、次に
示すものを用いた。 (1)オキシメチレン単独重合体 メルトインデックス9.9g/10分[ASTM D‐
1238‐57T(E条件)]の両末端アセチル化した
ホルムアルデヒドの重合体
【0054】(2)オキシメチレン共重合体 メルトインデックス10.0g/10分[ASTM D
‐1238‐57T(E条件)]のトリオキサン97重
量%とエチレンオキシド3重量%との共重合により得ら
れた共重合体
【0055】(3)ナイロン12 メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]、融点178℃の
ナイロン12
【0056】(4)ナイロン6 メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]、融点220℃の
ナイロン6
【0057】(5)ナイロン610 メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]、融点215℃の
ナイロン610
【0058】(6)ボリエーテルアミド メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]の融点160℃の
ナイロン12 75重量%とテトラヒドロフラン25重
量%との共重合体
【0059】(7)ボリエステルアミド メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]の融点165℃の
ナイロン12 75重量%とγ‐ラクトン25重量%と
の共重合体
【0060】(8)ナイロン66 メルトインデックス8.0g/10分[ASTM D‐
1238(235℃、1kg荷重)]、融点265℃の
ナイロン66
【0061】(9)ガラス繊維 アミノシラン0.3重量%で表面処理した長さ3mm、
直径13μmのガラス繊維
【0062】(10)板状タルク アミノシラン0.3重量%で表面処理した板状タルク
【0063】実施例1〜9 表1に示す種類と量のポリアセタール樹脂とポリアミド
樹脂と分散剤と充てん剤とを溶融混練してペレット化
し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物について、
曲げ試験及び摩擦試験を行った。その結果を表1に示
す。また、実施例2の組成物の成形体破断面の反射型電
子顕微鏡(SEM)写真を図1及び図2に、該組成物か
ら充てん剤を除いた組成物から成る厚さ100nmの切
片の透過型電子顕微鏡写真を図5及び図6に示す。さら
に、実施例1及び実施例8については、スラスト摩耗試
験を、JIS K‐7218に従った装置を用い、相手
材は自材、面圧2kg/cm、線速度6cm/se
c、走行距離50kmの条件で行ったのち、摩耗量を測
定した。その結果、実施例1は5.0×10−6g/
m、実施例8は5.6×10−6g/mであった。
【表1】
【0064】比較例1〜7 表2に示す種類と量のポリアセタール樹脂とポリアミド
樹脂と分散剤と充てん剤とを溶融混練してペレット化
し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物について、
曲げ試験及び摩擦試験を行った。その結果を表2に示
す。また、比較例6の組成物の成形体破断面のSEM写
真を図3と図4に、比較例1の組成物から充てん剤を除
いた組成物から成る厚さ100nm切片の透過型電子顕
微鏡写真を図7及び図8に示す。さらに、比較例1、2
及び4については、実施例1、8と同様にしてスラスト
摩耗試験を行ったのち、摩耗量を測定した。その結果、
実施例1が摩耗量5.0×10−6g/mであるのに対
し、分散剤を配合していない比較例1、分散剤にメラミ
ンを使用した比較例4は、それぞれ7.2×10−4
/m及び6.8×10−4g/mであり、明らかに摩耗
量が多い。また、実施例8が摩耗量5.6×10−6
/mであるのに対し、分散剤を配合していない比較例2
は7.8×10−4g/mであり、明らかに摩耗量が多
い。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2の組成物の成形体破断面の粒子構造
を示す反射型電子顕微鏡写真図。
【図2】 実施例2の組成物の成形体破断面の粒子構造
を示す反射型電子顕微鏡写真図。
【図3】 比較例6の組成物の成形体破断面の粒子構造
を示す反射型電子顕微鏡写真図。
【図4】 比較例6の組成物の成形体破断面の粒子構造
を示す反射型電子顕微鏡写真図。
【図5】 実施例2の組成物から充てん剤を除いた組成
物から成る切片の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真
図。
【図6】 実施例2の組成物から充てん剤を除いた組成
物から成る切片の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真
図。
【図7】 比較例1の組成物から充てん剤を除いた組成
物から成る切片の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真
図。
【図8】 比較例1の組成物から充てん剤を除いた組成
物から成る切片の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 59/00 - 59/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリアセタール樹脂90〜50重
    量%と(B)融点230℃以下のポリアミド樹脂10〜
    50重量%とから成る樹脂成分に対し、その100重量
    部当り、(C)分散剤0.05〜20重量部及び(D)
    充てん剤5〜40重量部を配合して成る樹脂組成物であ
    って、該ポリアミド樹脂のドメインが最大粒径0.03
    〜10μm、最大アスペクト比2以下でポリアセタール
    樹脂のマトリックス中に分散していることを特徴とする
    高剛性ポリアセタール樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 樹脂成分が(A)ポリアセタール樹脂9
    0〜70重量%と(B)融点230℃以下のポリアミド
    樹脂10〜30重量%とから成る請求項1記載の高剛性
    ポリアセタール樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 (B)成分のポリアミド樹脂がナイロン
    11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン610、ナ
    イロン612、これらのナイロンの共重合体、分子鎖中
    に炭素数1〜10の鎖状アルキレンオキシド単位0.1
    〜50重量%を含有するポリアミド樹脂、分子鎖中に炭
    素数1〜10の鎖状アルキルエステル単位0.1〜50
    重量%を含有するポリアミド樹脂、主鎖のアミド結合の
    水素を一部アルコキシメチル基で置換したポリアミド樹
    脂及びこれらポリアミドの共重合体の中から選ばれた少
    なくとも1種である請求項1又は2記載の高剛性ポリア
    セタール樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 (C)成分の分散剤が、一般式 【化1】 〔式中のR1ないしR6は、それぞれ水素原子、炭素数1
    〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜3
    0のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2m
    OR7(R7は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、mは1〜
    4の整数)であり、それらは同一であってもよいし、異
    なっていてもよいが、その少なくとも1つは−(C
    2m−OR7である〕で表わされるメラミン誘導体、
    一般式 【化2】 〔式中のR8ないしR11は、それぞれ水素原子、炭素数
    1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
    30のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2n
    −OR12(R12は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、nは
    1〜4の整数)であり、それらは同一であってもよい
    し、異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−
    (CH2n−OR12である〕で表わされる尿素誘導体、
    一般式 【化3】 〔式中のR13及びR14は、それぞれ水素原子、炭素数1
    〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜3
    0のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2p
    OR16(R16は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、pは1
    〜4の整数)であり、それらは同一であってもよいし、
    異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−(CH
    2p−OR16であり、R15は、水素原子、炭素数1〜3
    0の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜30の
    シクロアルキル基又はアリール基である〕で表わされる
    アミノギ酸誘導体、及び一般式 【化4】 〔式中のR17ないしR20は、それぞれ水素原子、炭素数
    1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
    30のシクロアルキル基、アリール基又は−(CH2q
    −OR22(R22は炭素数1〜5の鎖状アルキル基、qは
    1〜4の整数)であり、それらは同一であってもよい
    し、異なっていてもよいが、その少なくとも1つは−
    (CH2q−OR22であり、R21は、水素原子、炭素数
    1〜30の鎖状若しくは分枝状アルキル基、炭素数3〜
    30のシクロアルキル基又はアリール基である〕で表わ
    されるグアニジン誘導体の中から選ばれた少なくとも1
    種である請求項1、2又は3記載の高剛性ポリアセター
    ル樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 (D)成分の充てん剤がガラス繊維、板
    状タルク、柱状ウオラストナイト、針状炭酸カルシウ
    ム、ガラスビーズ、チタン酸カリウムウィスカー及びカ
    ーボンウィスカーの中から選ばれた少なくとも1種であ
    る請求項1ないし4のいずれかに記載の高剛性ポリアセ
    タール樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 (D)成分の充てん剤が繊維長0.5〜
    7mmで繊維径6〜15μmのEガラスからなるガラス
    繊維である請求項1ないし4のいずれかに記載の高剛性
    ポリアセタール樹脂組成物。
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