JP3108609U - 金型構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易かつ少ない作業によって、形成対象品の変更に対応した構造へと変更可能な金型構造を提供する。
【解決手段】第1金型70は第2金型80の方向に向かって突出する凸部71を有し、第2金型は第1金型と接近した際に凸部を内部に収容する凹部81を有し、両金型の両対抗面は凸部の先端面71aを凹部の奥方に当接させた際に所定の間隔を保持し、凹部は第2金型の対抗面に形成された開口から掘下げられた領域である凸部を収容した際に凸部の側面71bと所定の間隔を保持して対抗する壁面および同壁面から凹部の略中心側に向かって同凸部の側面に到達する距離だけ連続する段部とによって区画される開口側領域と、同段部に囲まれた開口から掘下げられた領域である凸部を収容した際に凸部の先端部位の側面と当接する壁面および同先端面と当接する底面とによって区画される奥側領域とからなるとした。
【選択図】図3

Description

本考案は、溶融した樹脂を所定形状の空間内に注入して成形品を製造する際に用いる金型構造に関する。
図5,6は、従来用いていた金型構造10を断面図により示している。金型構造10は、テレビジョンのフロントキャビネットの成形に用いられるものであり、雄型20と雌型30とから構成される。図5(1)に示すように、雄型20の対抗面22の略中央には凸部21が形成されており、雄型20と対面する雌型30の対抗面32には、内部に凸部21を収容可能な凹部31が形成されている。当該構成においては、図5(2)のように、雄型20と雌型30とを接近させ、凸部21の先端面21aと凹部31の底面31aとを当接させると、対抗面22と対抗面32とは所定の間隔を保持して対面するとともに、凸部21の側面21b及び凹部31の壁面31bも所定の間隔を保持して対面する。
このようにして形成された雄型20と雌型30との間の空間に、溶融した高温の樹脂を充填した後、所定温度にまで冷却することで、図5(2)に示したような断面形状のフロントキャビネット40を製造していた。同図のフロントキャビネット40の断面形状は、図1のフロントキャビネット40をB‐B方向に切断した場合の断面形状に対応する。製造されたフロントキャビネット40は、図2に示すように、その内部に液晶パネルなどのディスプレイ装置50を収容する。
また、関連する技術として、プラスチック成形品の外形寸法を大きくすることなく、且つシボ形状を破損せずに成形する製造方法(特許文献1参照。)や、金型の製品とフィルムゲートとの境界部分に凸部を設けておくもの(特許文献2参照。)や、キャビネットの外周部分に強度を向上させる厚肉部を連続して形成する技術(特許文献3参照。)が知られている。
特開平7‐308945号公報 特開平8‐132481号公報 特開平8‐142230号公報
上記金型構造10においては、図から明らかなように、雄型20の凸部21が、キャビネット内部のディスプレイ装置50の表示面51を外部に露出させるための開口42をフロントキャビネット40の前面側に形成せしめる。よって、フロントキャビネット40の前面側縁部41から、開口42を囲むようにして内側に屈折して形成された内向部43は、その先端(パネルタッチ面43a)において、表示面51に略接触する。
ここで、ディスプレイ装置50について、製造メーカが異なるなど複数種類の製品を採用する場合、その表示面51の位置がフロントキャビネット40内部において常に一定位置になるとは限らず、ディスプレイ装置50の種類によっては、表示面51とフロントキャビネット40の前面位置との距離が長かったり短かったりする。この場合、表示面51とパネルタッチ面43aとの間に、許容範囲(例えば、0,2mm)を越える隙間が生じてしまうとテレビジョンは製品検査において不良品扱いとなる。そのため、従来においては、金型構造10に以下のような変更を加えることで、ボス44の長さや内向部43の長さの調節を行って、ディスプレイ装置50の種類にかかわらず表示面51とパネルタッチ面43aとの間に隙間が生じないようにしていた。
ボス44の長さを調節していた場合について説明する。ボス44はフロントキャビネット40内側の複数箇所において形成され、テレビジョンのリア方向に向かって延出する部位であり、通常、リア側のキャビネットに設けられたボスやネジ穴等と対応させてネジ止め等する。よって、各ボス44の長さを調節することでフロントキャビネット40の前面位置と表示面51との距離を調節できる。
しかし、かかる調節を行う場合、各ボス44を長くするには、雌型30に形成された複数のボス成形用穴33を精密に同じ深さだけ削る必要があり、一方、各ボス44を短くするには、各ボス成形用穴33を精密に同じ分だけ埋める(浅くする)必要がある。つまり、従来のように各ボス44の長さを調節する手法では、金型の変更に多くの手間と困難を要していた。さらに、各ボス成形用穴33を埋めるには金型の材料となる金属を溶接する必要があるが、各ボス成形用穴33周辺においては、冷却効率等の観点から他の金型部分よりも熱伝導率が高い材料を用いて金型を構成している場合が多い。そのため、各ボス成形用穴33は、金型強度の低下等の観点から、溶接によって材料を足すには不向きな部位でもあった。
金型構造10を採用する場合の内向部43の長さの調節について説明する。当該調節を行う場合、図6に示したように、凸部21の先端面21aに所定厚さtの金型部材Pを溶接して付け足すとともに、凹部31の底面31aを同厚さt分削っていた(削る前の底面31aの位置を点線で表し、削った後の底面31a´の位置を実線で表す)。つまり、予め凹部31の深さを、表示面51の位置がフロントキャビネット40の前面位置に最も近くなると予測される種類のディスプレイ装置50の表示面位置に対応した距離に設定しておき、内向部43の長さを必要とした場合に、同必要とする長さに対応する厚さの部材を凸部21に付け足し、かつ同長さに対応する距離だけ凹部31を深く削っていた。
すなわち、かかる従来の手法では、溶接作業と削る作業との両方が必要であり金型の変更に要する工数が多かった。また、正確に同じ厚さ分だけ凸部21の側で部材を付け足し、かつ凹部31の側で部材を削ることは困難であり、誤差も生じやすく、10分の1ミリ単位で正確さを要する内向部43の長さの調節の手法としては難易度が高かった。さらに、同誤差等があることで、内向部43周辺に、いわゆる「バリ」と呼ばれる樹脂の不要成形部位が発生しやすく、フロントキャビネット40の品質を低下させていた。
本考案は、上記課題にかんがみてなされたもので、簡易かつ少ない作業によって、成形対象品の変更に対応した構造へと変更可能な金型構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項2の考案は、溶融した樹脂を所定形状の空間内に注入して成形品を製造する際に用いる第1金型と第2金型とからなる金型構造において、第1金型は、第2金型と対向する第1対向面上において第2金型の方向に向かって突出する凸部を有し、第2金型は、第1金型と対向する第2対向面において第1金型と第2金型とを接近させた際に上記凸部を内部に収容する凹部を有し、第1対抗面と第2対抗面とは、上記凸部の先端面を凹部の奥方に当接させた際に所定の間隔を保持し、同凹部は、第2対抗面に形成された開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の側面と所定の間隔を保持して対抗する壁面および同壁面から凹部の略中心側に向かって同凸部の側面に到達する距離だけ連続する段部とによって区画される開口側領域と、同段部に囲まれた開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の先端面の位置から所定距離内にある先端部位の側面と当接する壁面および同先端面と当接する底面とによって区画される奥側領域とからなる構成としてある。
請求項2の考案においては、第1金型は、第2金型と対向する第1対向面上において第2金型の方向に向かって突出する凸部を有し、第2金型は、第1金型と対向する第2対向面において第1金型と第2金型とを接近させた際に上記凸部を内部に収容する凹部を有している。そして、凸部の先端面を凹部の奥方に当接させた場合、第1対抗面と第2対抗面とは所定の間隔を保持して対面する。同時に、凹部の開口側領域の壁面は、凸部の側面と所定の間隔を保持して対抗し、上記段部より奥側の領域である凹部の奥側領域の壁面は、凸部の先端面の位置から所定距離内にある先端部位の側面と当接し、かつ、奥側領域の底面すなわち凹部の底面は、凸部の先端面と当接する。つまり、第1対抗面と第2対抗面との間に形成された空間および、同空間と連続する空間である、凹部の開口側領域の壁面と段部と凸部の側面とに囲まれた空間に溶融した樹脂を注入することで、成形品を製造できる。そして、開口側領域の壁面と段部と凸部の側面とに囲まれた空間によって成形される部位の長さを変更させる必要が生じた場合には、同段部を削ったり埋めたりして第2対抗面からの段部の深さを変化させるだけで、容易かつ正確に同変更に対応することができる。
請求項3の考案は、請求項2に記載の金型構造において、上記凸部の先端面を上記凹部の底面に当接させた状態において、第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間及び上記開口側領域の壁面と上記凸部の側面との間に生じた空間の形状を、ディスプレイ装置のフロントキャビネットの成形に用いる構成としてある。
すなわち、上記金型構造による成形対象品の一例としては、ディスプレイ装置のフロントキャビネットが考えられる。
より具体的には、請求項4の考案は、請求項3に記載の金型構造において、ディスプレイ装置の表示面を外部に露出させるための前面側開口の縁部を上記第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間を利用して成形し、同表示面への接触部位を上記開口側領域の壁面と段部と上記凸部の側面との間に生じた空間を利用して成形する構成としてある。
フロントキャビネットを製造する場合、同キャビネットの前面位置と内部に収容するディスプレイ装置の表示面との距離が常に一定になるとは限らないため、上記接触部位が表示面に略接触するように接触部位の長さを表示面の位置との関係で調節する必要がある。そこで、上記構成のように接触部位を開口側領域の壁面と段部と凸部の側面との間に生じた空間を利用して成形するとすれば、段部を削ったり埋めたりして第2対抗面からの段部の深さを変化させるだけで、容易かつ正確に接触部位の長さを調節することができる。
さらに、請求項5の考案は、請求項3または請求項4のいずれかに記載の金型構造において、上記凹部における段部と底面との段差は、フロントキャビネットの前面位置と同フロントキャビネットに収容可能なディスプレイ装置の表示面位置との距離の最大変動幅に対応している構成としてある。
この場合、予め第2対抗面から段部までの深さを、上記フロントキャビネットに収容する予定の各種ディスプレイ装置の表示面位置とフロントキャビネットの前面位置との各距離のうち最小となる距離(正確には、同最小の距離から第1対抗面と第2対抗面との間の距離を差し引いた距離)に対応させておく。そして、凹部における段部と底面との段差を、フロントキャビネットの前面位置と同フロントキャビネットに収容予定の各ディスプレイ装置の表示面位置との距離の最大変動幅に対応させておけば、接触部位の長さを変更するに際しては段部を削るだけの作業で済む。また、段部を削るにしても凹部の底面より深く削ることは無いため、接触部位を形成するための空間は常に、元々存在する凸部の側面によって区画された状態となる。その結果、従来のように、凸部の先端面に金型部材を付け足すとともに凹部の底面を掘下げた際に凸部と凹部との間に生じやすかった開口内側方向への不要な隙間によって生じていた、バリの発生も抑制することができる。
以上の構成を踏まえたうえで、請求項1の考案は、溶融した樹脂を所定形状の空間内に注入してディスプレイ装置のフロントキャビネットを成形する際に用いる雌型と雄型とからなる金型構造において、雄型は、雌型と対向する第1対向面上において雌型の方向に向かって突出する凸部を有し、雌型は、雄型と対向する第2対向面において雄型と雌型とを接近させた際に上記凸部を内部に収容する凹部を有し、第1対抗面と第2対抗面とは、上記凸部の先端面を凹部の最奥に当接させた際に所定の間隔を保持し、同凹部は、第2対抗面に形成された開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の側面と所定の間隔を保持して対抗する壁面および同壁面から凹部の略中心側に向かって同凸部の側面に到達する距離だけ連続する段部とによって区画される開口側領域と、同段部に囲まれた開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の先端面の位置から所定距離内にある先端部位の側面と当接する壁面および同先端面と当接する底面とによって区画される奥側領域とからなり、上記第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間をフロントキャビネットの部位のうちディスプレイ装置の表示面を外部に露出させるための前面側開口の縁部の成形に利用し、上記開口側領域の壁面と段部と上記凸部の側面との間に生じた空間を同表示面への接触部位の成形に利用し、かつ、上記凹部における段部と底面との段差はフロントキャビネットの前面位置とフロントキャビネットに収容可能なディスプレイ装置の表示面位置との距離の最大変動幅に対応している構成としてある。
このような、より具体的な構成において上述した請求項2〜請求項5の各考案と同様の作用を奏することは言うまでもない。
以上説明したように本考案によれば、第1金型及び第2金型のうち第2金型側における段部の深さを調節するという極めて簡易な行為によって、開口側領域の壁面と段部と凸部の側面とに囲まれた空間によって成形される部位の形状変更に対応することができ、特にテレビジョンのフロントキャビネットの製造に際しては、ディスプレイ装置の表示面との接触部位の長さの変更に容易に対応でき、かつ、高品質な成形品を製造することの可能な金型構造を提供することができる。
図1は、金型構造によって成形したフロントキャビネット40を背面側から示しており、図2は、フロントキャビネット40内にディスプレイ装置50を収容した状態において、図1のA‐A方向に切断した場合の断面図を示している。なお、フロントキャビネット40の後方に配設されて共にテレビジョンの筺体となるリアキャビネットについては図示を省略してある。フロントキャビネット40は、熱可塑性を有する合成樹脂により成形されており、フロントキャビネット40の前面壁を構成する前面側縁部41の略中心には開口42が形成されている。前面側縁部41の上下左右の端部からは、リア側に向かって側壁45が延設されている。
ディスプレイ装置50は、開口42を介して表示面51を外部に露出させた状態で、図示しない所定の固定具によってフロントキャビネット40内に固定・収容されている。ここで、ディスプレイ装置50としては、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルやCRT等、種々の画像表示装置が考えられるが、本実施形態においては、液晶パネルであるとして説明する。
前面側縁部41からは、開口42を囲むようにしてキャビネットの内側に屈折する方向に内向部43(接触部位)が形成されている。かかる構成において、キャビネットの内側を向いた内向部43の先端面であるパネルタッチ面43aは、内部のディスプレイ装置50の表示面51に対して接触しているか或いは、10分の数ミリ程度といった極めて近い間隔で対面している(以下、略接触状態と言う)。また、フロントキャビネット40の内側の複数箇所には、略円柱状のボス44がフロントキャビネット40と一体的に、リア方向に突出するように形成されている。
ここで、上述したようにフロントキャビネット40内に収容するディスプレイ装置50としては、製造メーカが異なるなど複数種類の製品を採用する場合がある。このとき、フロントキャビネット40内部におけるディスプレイ装置50の表示面位置は一定とはならずその種類によって変動してしまうが、テレビジョンを出荷するに際しては、ディスプレイ装置50の種類にかかわらず、表示面51とパネルタッチ面43aとを略接触状態としなければならない。そこで、本実施形態においては、以下に説明する金型構造60を採用することで、フロントキャビネット40の製造に際して、必要とされる内向部43の形状変更に対して容易に対応できるようにした。
図3は、金型構造60の一部を断面図により示している。つまり、金型構造60は、雄型70(第1金型)と雌型80(第2金型)とを組み合わせた状態において両者間に生まれる空間内に溶融した高温の樹脂を充填し、所定温度にまで冷却することで、図1に示す形状のフロントキャビネット40を製造するものであるが、本考案の特徴部分を示すために、金型構造60の一部を示している。同図(2)に示すフロントキャビネット40の断面形状は、図1のフロントキャビネット40をB‐B方向に切断した場合の断面形状に対応する。
金型構造60は、雄型70と雌型80とから構成され、雄型70の雌型80に対抗する対抗面72からは、所定面積の先端面71aを対抗面72よりも突出させることによって形成した凸部71が設けられ、雌型80の雄型70と対面する対抗面82には内部に凸部71を収容可能な凹部81が形成されているという概略構造は、図5に示した従来の金型構造10と同じである。なお、雌型80にも雌型30と同様に、複数のボス成形用穴が設けられているが、図示は省略してある。
本考案にかかる金型構造60の特徴は、雄型70の側においては凸部71が対抗面72から突出する高さを従来より高くし、雌型80の側においては、凹部81の一部を従来より更に深くすることで従来よりも突出させた分の凸部71の部位を接触状態で収容する空間を確保したことにある。具体的には、雄型70と雄型20とを比較した場合、凸部71は、凸部21よりも高さh2だけ、全体的により突出している。また、凹部81は、開口側領域AR1と奥側領域AR2とからなり、開口側領域AR1は、従来の雌型30の凹部31の形状に対応しており、奥側領域AR2が、凸部71の先端面71aから高さh2に対応する距離内にある先端部位を収容する空間となる。
開口側領域AR1は、対抗面82に形成された開口から雌型80の中側に向かって連続する壁面81bと、壁面81bの最奥位置から、対抗面82と略平行に凹部81の略中心側に向かって所定距離連続する段部81cとによって区画される。対抗面82から段部81cまでの深さh1が、従来の雌型30における対抗面32から底面31aまでの深さになる。一方、奥側領域AR2は、段部81cの端から雌型80の中側に向かって連続する壁面81dと、壁面81dの最奥位置となる底面81aとによって区画される。段部81cから底面81aまでの段差は上記h2と同じ距離となる。
かかる構造において、凸部71の先端面71aを凹部81の底面81aに当接させて雄型70と雌型80とを組み合わせると、同図(2)に示すように、凸部71の上記先端部位が、奥方領域AR2の内側に全面的に接触して嵌合した状態で収容される。一方、先端部位以外の凸部71の部位は、側面71bと壁面81bとの間に所定の間隔を維持した状態でほぼ収容される。また、対抗面72と対抗面82との間にも、所定の間隔h3が確保される。この結果、雄型70と雌型80との間に生じた空間に溶融した樹脂を注入することで、対抗面72と対抗面82との間の空間によって前面側縁部41が成形され、壁面81bと段部81cと側面71bとによって囲まれた空間によって内向部43が成形される。
すなわち、金型構造60に何ら変更を加えないでフロントキャビネット40を製造した場合は、フロントキャビネット40の前面位置からパネルタッチ面43aまでの距離は、対抗面72と対抗面82との間隔h3と、対抗面82から段部81cまでの深さh1との和になる。そこで、本実施形態では、このh3+h1の値が、採用予定の各ディスプレイ装置50をフロントキャビネット40内に夫々収容した場合の表示面位置と上記前面位置との各距離のうちの最小距離に対応するように、予め雄型70及び雌型80を設計しておく。また、段部81cと底面81aとの段差h2は、採用予定の各ディスプレイ装置50をフロントキャビネット40内に夫々収容した場合の表示面位置と上記前面位置との各距離のうちの最大距離と最小距離との差分(最大変動幅、例えば2,0mm程度)に対応させておく。
そして、金型構造60に変更を加えずに製造したフロントキャビネット40では表示面51とパネルタッチ面43aとが略接触状態とならない種類のディスプレイ装置50を収容する場合には、段部81cを必要な分削ることで、内向部43の長さを必要な長さとする。
図4は、段部81cを削った場合の金型構造60を示している。
同図においては、削る前の段部81cの位置を点線で示しており、削った後の段部81c´の位置を実線で示している。例えば、ディスプレイ装置50の種類によっては、上記前面位置と表示面51の位置との距離が、上記h3+h1よりも0,5mm長い場合には、段部81cを0,5mmだけ削って掘下げる。すると、内向部43におけるフロントキャビネット40の前面側から背面側への方向の長さも0,5mm長く成形されることになり、製造したフロントキャビネット40内にディスプレイ装置50を収容した場合に、表示面51とパネルタッチ面43aとが確実に略接触状態となる。
このように、本考案にかかる金型構造60を用いれば、雌型80側の段部81cを必要な厚さ分削るという簡易な変更作業のみによって、内向部43のパネルタッチ面43aの位置を変更することが可能となる。そのため、従来の金型構造10において変更作業を行っていた場合と比較して、種々のディスプレイ装置50を採用するために生じる得る表示面51とパネルタッチ面43aとの隙間を容易かつ短時間で解消することができ、テレビジョンが不良品扱いとなることも防げる。また、金型部材を削る作業は、溶接によって金型部材を付け加える作業よりも容易であり、精密さも担保しやすい作業であるため、金型部材を削る行為だけで済む本考案は、緻密な精度を要求されるパネルタッチ面43aの位置調節において極めて有用な金型構造である。
また、パネルタッチ面43aの位置調節を、従来の金型構造10の変更作業によって行った場合、同変更作業後の金型構造10が形成する空間内に樹脂を注入すると、図6の拡大図中に示すように、内向部43にはフロントキャビネット40の開口42の内側に向かって突出する、いわゆる横バリDが形成されやすい。これは、先端面21aに金型部材Pを溶接した際に溶接部分に細かい隙間が発生したり、溶接後の金型部材Pの先端面と、削った後の底面31a´とに誤差が生じて正確に密着せずに両者間に小さな隙間が発生することが多く、かかる隙間に溶融した樹脂が入り込み、上記横バリDを発生させてしまうからである。かかる横バリDは、当然にフロントキャビネット40の品質を低下させ、横バリDを削り取る作業も余分に要してしまう。
しかし、本考案によれば、パネルタッチ面43aの位置調節に際しては金型部材の溶接といった作業は不要である。また、段部81cと底面81aとの段差h2の範囲内でその長さを調整可能な内向部43の開口42側の側面は、常に、凸部71の側面71bの面形状によってその形状が定まる。そのため、上記のような横バリDを発生させる不要な隙間が形成される余地が無く、その結果、横バリDは発生しない。
すなわち、本考案の金型構造60は、内向部43のパネルタッチ面43aの位置変更に対して容易かつ正確に対応可能な構造であるとともに、従来よりも高品質なフロントキャビネット40を製造可能な構造である。
フロントキャビネットの背面図である。 フロントキャビネットおよびディスプレイ装置の断面図である。 本考案にかかる金型構造の一部断面図である。 本考案にかかる金型構造の変更態様を示した一部断面図である。 従来における金型構造の一部断面図である。 従来における金型構造の変更態様を示した一部断面図である。
符号の説明
40…フロントキャビネット
41…前面側縁部
42…開口
43…内向部
43a…パネルタッチ面
50…ディスプレイ装置
51…表示面
60…金型構造
70…雄型
71…凸部
71a…先端面
71b…側面
72,82…対抗面
81…凹部
81a…底面
81b,81d…壁面
81c,81c´…段部
AR1…開口側領域
AR2…奥側領域

Claims (5)

  1. 溶融した樹脂を所定形状の空間内に注入してディスプレイ装置のフロントキャビネットを成形する際に用いる雌型と雄型とからなる金型構造において、
    雄型は、雌型と対向する第1対向面上において雌型の方向に向かって突出する凸部を有し、
    雌型は、雄型と対向する第2対向面において雄型と雌型とを接近させた際に上記凸部を内部に収容する凹部を有し、
    第1対抗面と第2対抗面とは、上記凸部の先端面を凹部の最奥に当接させた際に所定の間隔を保持し、
    同凹部は、第2対抗面に形成された開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の側面と所定の間隔を保持して対抗する壁面および同壁面から凹部の略中心側に向かって同凸部の側面に到達する距離だけ連続する段部とによって区画される開口側領域と、同段部に囲まれた開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の先端面の位置から所定距離内にある先端部位の側面と当接する壁面および同先端面と当接する底面とによって区画される奥側領域とからなり、
    上記第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間をフロントキャビネットの部位のうちディスプレイ装置の表示面を外部に露出させるための前面側開口の縁部の成形に利用し、上記開口側領域の壁面と段部と上記凸部の側面との間に生じた空間を同表示面への接触部位の成形に利用し、かつ、上記凹部における段部と底面との段差はフロントキャビネットの前面位置とフロントキャビネットに収容可能なディスプレイ装置の表示面位置との距離の最大変動幅に対応していることを特徴とする金型構造。
  2. 溶融した樹脂を所定形状の空間内に注入して成形品を製造する際に用いる第1金型と第2金型とからなる金型構造において、
    第1金型は、第2金型と対向する第1対向面上において第2金型の方向に向かって突出する凸部を有し、
    第2金型は、第1金型と対向する第2対向面において第1金型と第2金型とを接近させた際に上記凸部を内部に収容する凹部を有し、
    第1対抗面と第2対抗面とは、上記凸部の先端面を凹部の奥方に当接させた際に所定の間隔を保持し、
    同凹部は、第2対抗面に形成された開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の側面と所定の間隔を保持して対抗する壁面および同壁面から凹部の略中心側に向かって同凸部の側面に到達する距離だけ連続する段部とによって区画される開口側領域と、同段部に囲まれた開口から掘下げられた領域であって、上記凸部を収容した際に凸部の先端面の位置から所定距離内にある先端部位の側面と当接する壁面および同先端面と当接する底面とによって区画される奥側領域とからなることを特徴とする金型構造。
  3. 上記凸部の先端面を上記凹部の底面に当接させた状態において、第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間及び上記開口側領域の壁面と上記凸部の側面との間に生じた空間の形状を、ディスプレイ装置のフロントキャビネットの成形に用いることを特徴とする請求項2に記載の金型構造。
  4. ディスプレイ装置の表示面を外部に露出させるための前面側開口の縁部を上記第1対抗面と第2対抗面との間に生じた空間を利用して成形し、同表示面への接触部位を上記開口側領域の壁面と段部と上記凸部の側面との間に生じた空間を利用して成形することを特徴とする請求項3に記載の金型構造。
  5. 上記凹部における段部と底面との段差は、フロントキャビネットの前面位置と同フロントキャビネットに収容可能なディスプレイ装置の表示面位置との距離の最大変動幅に対応していることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の金型構造。
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