JP3107256U - 弾性樹脂床を備えた義歯 - Google Patents

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Abstract

【課題】咀嚼時に人工歯が沈んだり弾性樹脂床が開くことが抑止され安定した咬合が可能であると共に、弾性樹脂床が破切することもない弾性樹脂床を備えた義歯を提供する。
【解決手段】本考案の弾性樹脂床を備えた義歯は、弾性樹脂床内に様々な形態の線状補強材が配されていることを主要な特徴とするものであり、例えば弾性樹脂床を備えた義歯1は、歯頸に被着される弾性樹脂床2と、弾性樹脂床2に植設された人工歯3とを有し、弾性樹脂床2には、中間部4aが維持歯の境界部付近に架橋されると共に、両側部4bが唇側或いは頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された線状補強材4が配されている。
【選択図】図1

Description

本考案は、弾性樹脂床を備えた義歯に関するものである。より詳しくは、食物の咀嚼に際して安定して咬合可能な弾性樹脂床を備えた義歯に関する。
従来より、歯頸に被着される弾性樹脂床と、弾性樹脂床に植設された人工歯とからなる義歯が多用されている。(特開平10−211219号公報参照)
この種の義歯はアクリル樹脂などの硬質樹脂で形成された床に比して柔軟であるため、装着時や咀嚼時の抵抗感や違和感が少なく、また清潔かつ臭いが付着することも少なく、さらに審美性に優れるなどの利点がある。
しかし、弾性樹脂床は、逆に弾性があり過ぎるため、咀嚼時に人工歯が沈んだり、それに伴って弾性樹脂床が唇側、舌側或いは口蓋側にそれぞれ開いて安定した咬合が困難であった。また、弾性樹脂床全体に維持力がなく頻繁に伸縮を繰り返すと破切し易いという欠点があった。
特開平10−211219号公報
そこで、本考案の課題は、咀嚼時に人工歯が沈んだり弾性樹脂床が開くことが抑止され安定した咬合が可能であると共に、弾性樹脂床が破切することもない弾性樹脂床を備えた義歯を提供することにある。
本考案の弾性樹脂床を備えた義歯は、弾性樹脂床内に様々な形態の線状補強材が配されていることを主要な特徴とするものである。
請求項1に記載の考案によれば、線状補強材の中間部が維持歯の境界部付近に架橋されて係止されているため、咀嚼時に義歯全体が沈むことが抑制されて人工歯が沈んだり弾性樹脂床が開くことが抑止される。また、線状補強材の両端部が弾性樹脂床の唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側にそれぞれ埋入されているため、弾性樹脂床が開くことが抑止される。これらの作用により安定した咬合が可能であると共に、弾性樹脂床が破切することが防止される。
請求項2に記載の考案によれば、横方向に延在する延在部が配されるエリアに渡ってより広く、かつ、より強く、弾性樹脂床の開きが抑止される。
請求項3に記載の考案によれば、維持歯の周囲において、より強く弾性樹脂床の開きが抑止される。
請求項4に記載の考案によれば、第2の線状補強材が線状補強材と共働して、上記線状補強材の効果を、弾性樹脂床全体にバランス好く波及させることができると共に、弾性樹脂床の破切をより防止できる。
請求項5に記載の考案によれば、上下方向の咬合力を弾性樹脂床全体に、よりバランス好く三次元的に波及させることができる。
請求項6に記載の考案によれば、第1補強部および第2補強部により、弾性樹脂床が補強されるため、弾性樹脂床が開くことが抑止され、より安定した咬合が可能となる。
請求項7に記載の考案によれば、義歯全体が係止部により維持歯に係止されるため、咀嚼時に義歯全体が沈むことが抑制されて人工歯が沈んだりすることも抑止され、安定した咬合が可能となる。
請求項8に記載の考案によれば、上記各請求項の効果を奏する弾性樹脂床を備えたより良好な義歯を作製できる。
まず、本考案の弾性樹脂床を備えた義歯を、図1ないし図3に示した一実施例を用いて説明する。
図1は、本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の一実施例の斜視図であり、図2は図1に示した弾性樹脂床を備えた義歯を歯茎に装着した状態を示す説明図であり、図3は図1のA−A線断面図である。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯1は、歯頸に被着される弾性樹脂床2と、弾性樹脂床2に植設された人工歯3とを有し、弾性樹脂床2には、装着すると中間部4aが維持歯の境界部付近に架橋されると共に、両側部4bが唇側または頬側と、舌側(下側の歯に対する義歯の場合)或いは口蓋側(上側の歯に対する義歯の場合)とにそれぞれ埋入された線状補強材4が配されていることを特徴とする義歯である。以下、各構成について順次詳述する。
弾性樹脂床2は、歯頸に被着される部位であり、換言すれば、口腔内で隆起する歯茎70に沿って装着される部位であり、図1または図2に示すように、装着時に唇側または頬側に配される唇側頬側床部2aと、舌側或いは口蓋側に配される舌側口蓋側床部2bと、人工歯3を植設すると共に維持歯などの天然歯71を挿入する空孔部2cを備えた登頂床部2dとから構成され、それらが弾性樹脂にて一体成形されている。
弾性樹脂床2を形成する弾性樹脂材料としては、コーポリアミド系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、またはそれらの混合共重合体などが好適に使用される。
弾性樹脂床2には、図1ないし図3に示すように、歯茎70に装着すると、中間部4aが維持歯71の境界部付近に架橋されることとなり、両側部4bが唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された状態となる線状補強材4が配されている。なお、維持歯71の境界部付近とは、維持力を求める天然歯と他の歯との境界近傍を意味する。また、中間部4aと両側部4bは一本の線状補強材4にて形成されており、線状補強材4が屈曲または湾曲されて中間部4aと両側部4bとが構成されている。
このように、義歯1は歯茎70に装着されると、線状補強材4の中間部4aが維持歯71の境界部付近に架橋されて係止されるため、咀嚼時に義歯1全体が沈むことが抑制されて、人工歯3が沈んだり弾性樹脂床2が押圧されて唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側に開くことが抑止される。また、線状補強材4の両側部4bが弾性樹脂床2の唇側または頬側と舌側或いは口蓋側にそれぞれ埋入されているため、これによっても弾性樹脂床2が開くことが抑止される。そして、これらの作用により安定した咬合が可能であると共に、弾性樹脂床2全体に維持力が作用して破切することも防止される。さらに、線状補強材4の中間部4aは維持歯71の境界部付近に架橋されているため、審美性を損ねることもない。なお、この実施例の中間部4aは、弾性樹脂床2内に埋入されているが、中間部が外部に露呈しているものも本考案の範疇に包含される。
線状補強材4としては、歯科用矯正線(例えば、コバルトクローム線など)、歯科用鋳造金属物(例えば、貴金属、チタン合金、コバルトクローム合金、パラジウム合金など)、または、ガラス繊維(例えば、ポリエチレン、エトキシレイテッドビスフェノールおよびメタクリレートを主成分とした帯状のリボン歯科用ガラス繊維など)が好適に使用できる。なお、この実施例では、歯科用矯正線が使用されている。
また、この実施例の線状補強材4の両側部4bは、図1または図2に示すように、装着される歯茎70に沿って横方向に延在する延在部4cを有している。これにより、横方向に延在する延在部4cが配されるエリアに渡ってより広く、かつ、より強く、弾性樹脂床2の開きが抑止される。
つぎに、図4および図5に示した本考案の他の実施例について説明する。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯10は、歯頸に被着される弾性樹脂床12と、弾性樹脂床12に植設された人工歯3とを有し、弾性樹脂床12には、装着すると中間部14aが維持歯71の両境界部付近に架橋され、両側部14bが唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された線状補強材14が環状に配されていると共に、弾性樹脂床12は、装着される歯茎70に沿って平面視で略U字型に形成されており、その舌側或いは口蓋側には、略U字型の第2の線状補強材15が埋入されている。以下、各構成について詳述するが、前述した弾性樹脂床を備えた義歯1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯10と前述した弾性樹脂床を備えた義歯1との第1の相違は、線状補強材14が維持歯71の周囲に環状に配されている点であり、これにより、維持歯71の周囲において、より強く弾性樹脂床の開きが抑止される。
また、この実施例の弾性樹脂床12は、装着される歯茎70に沿って平面視で略U字型に形成されており、舌側或いは口蓋側には、略U字型の第2の線状補強材15が埋入されている。これにより、第2の線状補強材15が線状補強材14と共働して、線状補強材14の効果を、弾性樹脂床12全体にバランス好く波及させることができると共に、弾性樹脂床12の破切をより防止できる。なお、71aは維持歯以外の天然歯である。また、線状補強材14または第2の線状補強材15としては、歯科用矯正線が使用されている。
さらに、図6および図7に示した本考案の他の実施例について説明する。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯20は、歯茎70に被着される弾性樹脂床12と、弾性樹脂床12に植設された人工歯3とを有し、弾性樹脂床12には、中間部14aが維持歯71の両境界部付近に架橋され、両側部14bが唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された線状補強材14が環状に配されていると共に、弾性樹脂床12は、装着される歯茎70に沿って平面視で略U字型に形成されており、その舌側或いは口蓋側には、略U字型の第2の線状補強材21が埋入され、この第2の線状補強材21は、唇側または頬側に向かって波打つように波状に形成されている。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯20と前述した弾性樹脂床を備えた義歯10との相違は、第2の線状補強材21の形態のみであり他は同じである。弾性樹脂床を備えた義歯10と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
この実施例の第2の線状補強材21は、図6に示すように、唇側または頬側に向かって波打つように波状に形成されており、これにより、咬合力(上下方向の力)を弾性樹脂床全体によりバランス好く三次元的に波及させることができる。また、この実施例の第2の線状補強材21は、図7に示すように、縦断面が矩形で扁平体となるように鍛練した金属線にて形成されており、より強固に弾性樹脂床12の弾性力を抑制する。
さらに、図8に示した本考案の他の実施例について説明する。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯30は、歯頸に被着される弾性樹脂床2と、弾性樹脂床2に植設された人工歯3とを有し、弾性樹脂床2には、装着されると維持歯71の側面に沿って横方向に延在する第1補強部31aと、第1補強部31aと一体的に形成され、装着される歯茎70の基端方向に向かって延在する第2補強部31bとから構成された線状補強材31が埋入されている。
この実施例の線状補強材31は、歯科用鋳造金属物にて一体成形されており、第1補強部31aおよび第2補強部31bにより、弾性樹脂床2が補強されるため、弾性樹脂床2が開くことが抑止され、より安定した咬合が可能となる。
また、この実施例の線状補強材31は、第1補強部31aおよび第2補強部31bと一体的に形成され、維持歯71の裂溝72付近に係止可能な係止部31cを有している。この係止部31cにより、義歯30全体が維持歯71に係止されるため、咀嚼時に義歯30が沈むことが抑制されて人工歯3が沈んだりすることが抑止され、安定した咬合が可能となる。なお、第1補強部31aには、多数の貫通孔31dが形成されており、これら貫通孔31d内に弾性樹脂床2を形成する弾性樹脂が侵入して、線状補強材31が弾性樹脂床2内により定着するよう構成されている。また、この実施例の線状補強材31は、唇側または頬側か、舌側或いは口蓋側のいずれかに配されているが、唇側または頬側、および舌側或いは口蓋側の両側に配されたものも本考案の範疇に包含される。
さらに、図9に示した本考案の他の実施例について説明する。
この実施例の弾性樹脂床を備えた義歯40は、線状補強材41が維持歯71の側面に沿って横方向に延在する第1補強部41aと、第1補強部41aと一体的に形成され、装着される歯茎70の基端方向に向かって延在する第2補強部41bと、第1補強部41aおよび第2補強部41bと一体的に形成され、維持歯71の裂溝72付近に係止可能な係止部41cとからなる点で、前述した弾性樹脂床を備えた義歯30と同じタイプのものであるが、両者の相違点は、線状補強材41がガラス繊維で形成されている点と、第2補強部41bが複数本(この実施例では2本)の維持歯71の側面に沿って延在している点である。このように、線状補強材41がガラス繊維にて形成され素材として透明であるため、より審美性に優れたものとなる。また、複数の維持歯71の側面に沿って第2補強部41bが延在することにより、弾性樹脂床2の補強性がより向上する。
本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の一実施例の斜視図である。 図1に示した弾性樹脂床を備えた義歯を歯茎に装着した状態を示す説明図である。 図1のA−A線断面図である。 本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の他の実施例を歯茎に装着した状態を示す平面図である。 図4のB−B線断面図である。 本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の他の実施例を歯茎に装着した状態を示す平面図である。 図6のC−C線断面図である。 本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の他の実施例を歯茎に装着した状態を示す説明図である。 本考案の弾性樹脂床を備えた義歯の他の実施例を歯茎に装着した状態を示す説明図である。
符号の説明
1 弾性樹脂床を備えた義歯
2 弾性樹脂床
3 人工歯
4 線状補強材

Claims (8)

  1. 歯頸に被着される弾性樹脂床と、該弾性樹脂床に植設された人工歯とを有し、前記弾性樹脂床には、中間部が維持歯の境界部付近に架橋されると共に、両側部が唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された線状補強材が配されていることを特徴とする弾性樹脂床を備えた義歯。
  2. 前記線状補強材の両側部は、装着される歯茎に沿って横方向に延在する延在部を有している請求項1に記載の弾性樹脂床を備えた義歯。
  3. 歯頸に被着される弾性樹脂床と、該弾性樹脂床に植設された人工歯とを有し、前記弾性樹脂床には、中間部が維持歯の両境界部付近に架橋されると共に、両側部が唇側または頬側と、舌側或いは口蓋側とにそれぞれ埋入された線状補強材が環状に配されていることを特徴とする弾性樹脂床を備えた義歯。
  4. 前記弾性樹脂床は、装着される歯茎に沿って平面視で略U字型に形成されており、舌側或いは口蓋側には、略U字型の第2の線状補強材が埋入されている請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性樹脂床を備えた義歯。
  5. 歯頸に被着される弾性樹脂床と、該弾性樹脂床に植設された人工歯とを有し、前記弾性樹脂床は、装着される歯茎に沿って平面視で略U字型に形成されており、舌側或いは口蓋側には、略U字型の線状補強材が埋入され、該線状補強材は唇側または頬側に向かって波打つように波状に形成されていることを特徴とする弾性樹脂床を備えた義歯。
  6. 歯頸に被着される弾性樹脂床と、該弾性樹脂床に植設された人工歯とを有し、前記弾性樹脂床には、維持歯の側面に沿って横方向に延在する第1補強部と、該第1補強部と一体的に形成され装着される歯茎の基端方向に向かって延在する第2補強部とから構成される線状補強材が埋入されていることを特徴とする弾性樹脂床を備えた義歯。
  7. 前記線状補強材は、前記第1補強部および第2補強部と一体的に形成され、維持歯の裂溝付近に係止可能な係止部を有している請求項6に記載の弾性樹脂床を備えた義歯。
  8. 前記線状補強材は、金属線、金属鋳造物、或いはガラス繊維のいずれかである請求項1ないし7のいずれかに記載の弾性樹脂床を備えた義歯。
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JP2018110723A (ja) * 2017-01-12 2018-07-19 英雄 中川 部分義歯
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