JP6854580B2 - 人工前歯 - Google Patents

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この発明は、人工前歯に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、有床義歯(全部床義歯、部分床義歯を含む。以下、義歯という。)において、床用レジンの材料に関わらず義歯床との機械的維持が良好で義歯の審美性を確保するのに有用な人工前歯に関するものである。
従来より、アクリル系レジンを用いた人工歯は、天然歯に似た光沢、透明感や色調等が得られやすいこと、成形が容易なこと、アクリル系レジン床と化学的な結合による化学的接着が得られること等から、義歯に多用されている。
しかしながら、化学的接着だけでは、咬合や咀嚼等により発生する大きさや方向の異なる複雑な応力、熱い食物や冷たい食物等との接触による熱膨張、唾液や飲食時の液体等の中の化学成分、食物等の口腔内残渣の分解等により生じた物質等による各種作用等によって、人工歯が義歯床から比較的容易に脱落することになる。
義歯の患者への装着後人工歯が義歯床から短期間で脱落するようでは、歯科医院の信用が損なわれたり、歯科技工士の技能に疑問が持たれることになったりすることから、義歯床からの人工歯の脱落を防止するため、人工歯に種々の改良が積み重ねられている。
本出願人は、義歯床からの人工歯の脱落を防止する試みを提案している。
例えば、特許文献1に示す人工前歯61は、有底の柱状孔62を基底面63から唇側に向けて設けたものである(図10参照)。
特許文献2に示す人工前歯71は、義歯床72に突起状部73を形成させるようなアンダーカットのある有底の維持孔74を基底面75に形成したものである(図11参照)。
特許文献1、特許文献2に記載された人工前歯によれば、義歯床との化学的接着による維持に加え維持孔等へ床用レジンが侵入することによって形成された突起部等によって、人工前歯と義歯床との分離を阻止する機械的な維持が得られ、化学的接着と機械的維持とが相まって、義歯床からの人工前歯の脱落の防止がはかられることになる。
ところで、人工前歯と義歯床がいずれもアクリル系レジンからなるものであっても、人工前歯と義歯床との材質は完全に同一ではなく、弾性率等の機械的性質、熱膨張率などの熱的性質等が相違する。そのため、特許文献1、特許文献2に記載された維持孔等を有する人工前歯を用いた義歯において、咬合や咀嚼等によって発生する応力、または、熱い食物や冷たい食物等との接触や、口腔内体温による人工前歯と義歯床との熱膨張率の差によるパーコレーション現象等が繰り返されることによって、義歯床に埋設された人工前歯の基底面等と義歯床との接着界面部での不連続な界面剥離や隙間が生じ、人工前歯がぐらつき、使用感が低下することになる。このような状態でも、人工前歯の基底面の維持孔等に床用レジンが侵入することで形成された突起部等によって、人工前歯の義歯床からの脱落は一応まぬがれるが、人工前歯の維持孔等は、人工前歯の基底面に設けること等の制約があり、直径等は比較的小さくならざるを得ず、そのため、人工前歯の基底面の維持孔等に床用レジンが侵入することで形成された突起部等による機械的維持を強固にできるまでには至らない。従って、更に咬合、咀嚼等が繰り返されると、突起部等の根元付近に応力が集中し、かかる箇所が比較的短期間で損傷し、義歯床から人工前歯が脱落することになる。
また、特許文献1、特許文献2に記載された人工前歯は、歯肉が僅かに退縮した程度を示す義歯は作製が可能なものの、歯肉が大きく退縮し歯根がかなり露出したような患者に対応した義歯を作製するのには適したものとはいえない。無理に義歯を作製したとしても、例えば、歯肉が大きく退縮した残存歯を有する患者の部分床義歯は、部分床義歯の歯肉の位置とこれに隣在する残存歯の歯肉の位置が上下に大きくズレ、バランスが悪く、審美性上も好ましくない(とりわけ、部分床義歯が前歯部である場合は、開口等した際、部分床義歯の歯肉と残存歯の歯肉がちぐはぐで奇異な印象を与え見栄えが悪くなる。)。図12は、特許文献1に記載された人工前歯61が歯肉が大きく退縮した状態に義歯床65に設けられた義歯66を示す。特許文献2に記載された人工前歯においても同様である。また、このような歯肉が大きく退縮し歯根がかなり露出したような患者に対応した義歯は、人工前歯を維持する能力を十分に確保することができるとはいえず、何かの都合で図12に示すようなモーメント(矢印参照)が働くと、義歯床から容易に脱落することになる。
登録実用新案第3064138号公報 特開2005−66166号公報
ところで、義歯床と人工歯とが異種材料で作製された義歯、例えば、ポリプロピレン、ナイロン等の床用レジンにアクリル系レジンの人工歯を設けた義歯が要望されることがある。ポリプロピレン、ナイロン等は柔軟で強靱なこと等から、部分床義歯における金属クラスプ等の代わりとなる部分も義歯床と一体にこれらの樹脂で形成したもの(ノンクラスプデンチャーという。)は、審美性に悪影響を与える金属が用いられていないことから、会話、歌等を楽しむため等といった審美性が重要視される用途に用いられる。しかしながら、このような床用レジンはアクリル系人工歯と化学的接着が期待できないこと、特許文献1や特許文献2に記載の人工歯では機械的維持が十分とはいえず、人工歯と義歯床が異種材料であっても容易に義歯床から脱落しないような機械的維持が得られる人工歯が希求されている。
この発明の発明者等は、図13に示す人工前歯81を検討した。
図13に示す人工前歯81は、図10に示す人工前歯の唇側に近遠心方向の凹状溝82を追加したものである。
人工前歯81は、図14(a)に示すように、凹状溝82に床用レジンが侵入することで、義歯床83の歯肉縁近傍に帯状に凸状部84が形成される。かかる凸状部84は、人工前歯81の義歯床83との機械的維持に寄与するものの、その近傍周囲よりも肉厚となり、床用レジンに含まれる着色料、疑似毛細血管等による影響が強く、その結果、開口等した際、凸状部が濃色の帯状となって強調され、目立つことになり、義歯としての自然観を阻害し審美性に悪影響を与えることとなる。
一方、図14(b)に示すように、歯肉が退縮した患者用の義歯では、凹状溝82は義歯床83で覆われず露出し、人工前歯81の義歯床83との機械的維持に寄与することはなく、しかも、凹状溝82には別途人工歯用のレジンを築盛して充填する必要がある。このような築盛は、人工前歯との色調の調和等させることが必要であり、熟練を要するとともに煩雑で手間がかかる。
こういったことから、図13に示すような人工前歯81は好ましくない。
この発明は、上記のような実情に鑑み鋭意研究の結果創案されたものであり、床用レジンの材料に関わらず義歯床との機械的維持が良好で、幅広い症例、例えば、歯肉が退縮した患者にとっても義歯の審美性を確保できるようにするのに有用な人工前歯を安価に提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、この発明の人工前歯は、(1)歯冠部から歯根部が所定長さ延設された人工前歯であって、前記歯冠部と歯根部とは少なくとも唇側に歯頸線が形成された歯頸部を介して接続されており、記歯根部の近心および/または遠心側に維持用の唇舌方向に延在する凹状溝が形成されてなることを特徴とする。
この発明において、「人工前歯」とは、上下顎の中切歯、側切歯、犬歯を含むものとして使用している。
(2)前記(1)おいて、前記唇舌方向に延在する凹状溝は、舌側から唇舌境界に至る凹状溝であってもよい。
(3)前記(1)または(2)の人工前歯が上顎用人工前歯であって、前記歯根部は舌側から唇側へ上向きに傾斜した基底面を有することが好ましい。
(4)前記(1)または(2)の人工前歯が下顎用人工前歯であって、前記歯根部は舌側から唇側へ下向きに傾斜した基底面を有することが好ましい。
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、この発明の人工前歯は、歯冠部から所定長さ延設された歯根部の近心および/または遠心側に唇舌方向に延在する凹状溝を有するものであって、凹状溝の位置、幅、深さ等の大きさは前記した従来の人工前歯の維持孔等と比べ制約が少なく、比較的自由に設定できることから、義歯の審美性を損なわない範囲で、義歯床との十分な機械的維持が得られるような凹状溝とすることが容易にでき、義歯床からの人工前歯の脱落を機械的維持だけで確実に防止することができる。
つまり、この発明の人工前歯によれば、その歯根部が義歯床に埋設された義歯は、床用レジンが人工前歯の歯根部の近心および/または遠心側の凹状溝に速やかに充填されることにより形成された凸部と人工前歯の歯根部の凹状溝との係合による機械的維持が得られる。これによって、患者の症例に応じ、歯肉の退縮がないように義歯床に人工前歯が植設された義歯はもちろん、歯肉の退縮が目立つように義歯床に人工前歯が植設された義歯においても義歯床からの人工前歯の脱落が確実に防止される。
このように、この発明の人工前歯によれば、義歯床との機械的維持だけでも人工前歯の脱落が確実に防止できることから、人工前歯と義歯床とが異種材料、すなわち、人工前歯と義歯床とが化学的接着しないような材料、例えば、人工前歯がアクリル系レジン、義歯床がポリプロピレン、ナイロン等の義歯にもこの発明の人工前歯は使用できることになる。
もちろん、人工前歯と義歯床とが化学的接着が可能な材料の場合(例、アクリル系レジンの人工前歯とアクリル系レジンの義歯床)であれば、化学的接着するために有効に機能する表面積が、前記した従来の人工前歯のそれよりも格段に広くなることも加わり、化学的接着と機械的維持とが相まって人工前歯の義歯床からの脱落がさらに確実に防止できることになる。
そして、この発明の人工前歯は、義歯床との機械的維持を得るための凹状溝が歯根部の近心および/または遠心側に唇舌方向に設けられていることから、床用レジンが凹状溝に充填されることにより形成された凸部も唇舌方向に形成されており、凸部における床用レジンに含まれる着色料、疑似毛細血管等による影響は極めて弱くしか現れず、凸部周囲と明確には区別できず、開口等した状態で顔面の正面や斜め前方から観察しても顕在せず、歯肉の退縮が目立たない義歯はもちろん歯肉が退縮した義歯においても、審美性が阻害されることがない。
人工前歯はその形状から歯軸方向が容易に確認できるので、咬合床への人工歯排列において、患者に適した排列が容易に行える。
この発明の人工前歯を得るには、従来より使用されているアクリル系レジン等を成形金型によって成形すればよく、これによって均質な人工前歯を安価に得ることができる。
もちろん、アクリル系レジンに限られるものではなく、他のレジン系(例えば、ポリカーボネート)であってもよく、レジンに限られずジルコニア等のセラミックであってもよい。
レジン系の人工前歯は成形金型によらず、3Dプリンター等によって製造してもよい。
また、ジルコニア等を材料とする人工前歯の場合は、CAD/CAM、3Dプリンター等の製造技術によって製造すればよい。
すなわち、この発明の人工前歯によれば、義歯床からの離脱の恐れがなく、審美性に優れ、患者に適し、しかも患者の幅広い要望に応えることも出来る義歯を容易にかつ安価に提供することが出来ることになる。
この発明の人工前歯の実施の形態の一例を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は側面図、(c)は背面(舌側面)図である。 図1に示す人工前歯を成形するための金型に関する説明図である。 図1に示す人工前歯が義歯床に埋設された状態の一例を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は断面図である。 図1に示す人工前歯を使用した義歯が作業模型に戻された状態を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は斜め側面図である。 図1に示す人工前歯が歯肉の退縮した義歯床に植設された状態の他例を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は断面図である。 図1に示す人工前歯において、歯根部の長さ調節用の表示が設けられた状態を示す側面図である。 この発明の人工前歯の他の実施の形態を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は側面図である。 この発明の人工前歯のさらに他の実施の形態を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は側面図、(c)は背面(舌側面)図である。 比較のための人工前歯であって、(a)は正面(唇側面)図、(b)は側面図、(c)は背面(舌側面)図である。 従来の人工前歯の一例を示し、(a)は背面(舌側面)図、(b)は側面図、(c)は使用例である。 従来の人工前歯の他例を示し、(a)は縦断面図、(b)はその使用例である。 図10に示す人工前歯が歯肉の退縮した義歯床に植設された状態を示す説明図である。 この発明の参考として検討した人工前歯を示し、(a)は正面(唇側面)図、(b)は側面図である。 図13に示す人工前歯が、(a)は退縮していない義歯床に、(b)は退縮した義歯床に植設された状態を示す説明図である。
以下、図面に基づきこの発明を実施するための形態を更に詳細に説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
図1は、この発明の人工前歯の一実施の形態であって、上顎右側の中切歯として示している。
図1に示されるように人工前歯1は、歯冠部2から所定長さ延設された歯根部3を有している。
歯冠部2と歯根部3とは少なくとも唇側に歯頸線4が形成された歯頸部5を介して接続されている。図1に示す人工前歯1の歯頸線4は、近心から唇側を経て遠心に至るものの、舌側には形成されていないが、これに限られるものではない。
歯頸部は、少なくとも唇側に歯頸線を有する幅狭な帯状の領域をいい、一般に、舌側では歯頸線が明確には識別できないことが多い。図1に示す人工前歯1の歯頸線4は唇側では歯冠部2側の隆起等によって識別でき、舌側では殆ど識別できないようになっているが、これに限られるものではない。歯冠部2と歯頸部5とは、色調、材質等によって区別できるようにすることが可能である。同様に、歯頸部5と歯根部3も 、色調、材質等によって区別できるようにすることも可能である。
なお、人工前歯としては、歯頸線、歯頸部を有していないものであってもよい。
図1に示す人工前歯1の歯根部3は、歯冠軸(I−I線参照)と略同一方向に延設されている。ここにおける歯冠軸は、人工前歯を正面(唇側面)からみた歯冠部を2等分する仮想線をいう。なお、歯根部3の延設方向は、これに限られるものではない。
歯根部3は、唇舌境界線を境に唇側面、舌側面はいずれも凸曲面となっている。具体的には、歯根部3は、略円形、楕円形、舌側に一つの頂点があるおにぎり様等の断面形状が採用できる。
歯根部3は、近心または遠心から見て略菱形をしており、その全長(h)の中央部近傍の高さ位置であって、近心および遠心側に義歯床との係合を可能とする維持用の唇舌方向の凹状溝6、6が形成されている。
歯根部3は舌側から唇側へ上向きに傾斜した基底面7を有している。これは、図1に示す人工前歯1は上顎の中切歯であることから、基底面7が舌側から唇側へ上向きに傾斜しているとは人工前歯の使用状態を基準としていることによる。従って、人工前歯が下顎の中切歯では、使用状態を基準とすれば、その歯根部の基底面は舌側から唇側へ下向きに傾斜していることになる。
このように歯根部3が傾斜した基底面7を有していることから、後述するように、歯根部3が義歯床の粘膜面にまで達したり、突出したりすること等がないように人工前歯1を義歯床に植設することができる。
凹状溝6、6は、より具体的には、正面または背面視(唇側または舌側から見た場合)半円弧状で、側面視(近心または遠心から見た場合)長楕円またはトラック状の形状をしている。正面または背面視における凹状溝6、6の半径は0.5〜1.5mm程度が好ましい。
人工前歯1の切縁8から凹状溝6、6の底までの高さは、切縁8から歯頸線4の最凸点までの高さより稍高い位置に設定されているが、これに限られない。
図1に示す人工前歯1は上顎右側の中切歯であるが、上顎左側の中切歯はこれと鏡面対象といえることから詳細な説明は省略する。
その他の人工前歯としての上顎左右の側切歯、上顎左右の犬歯も歯冠部形状等が異なるものの、歯根部、凹状溝等は図1に示した人工前歯と同様であることから説明は省略する。
そして、人工前歯としての下顎左右の中切歯、下顎左右の側切歯、下顎左右の犬歯は歯冠部形状、基底面が舌側から唇側へ下向きに傾斜していること等が異なるものの、歯根部、凹状溝等は図1に示した人工前歯から明らかであることから説明は省略する。
人工前歯は、その種類(上下顎中切歯、上下顎側切歯、上下顎犬歯)、サイズ(例えば、S、M、L)等を勘案して、適宜決定された長さ(h)の歯根部を備えたものが作製され、患者に応じて適宜選択されることになる。通常は、歯根部の長さ(h)は、歯冠部の長さ(例えば、切縁の中央から歯頸線の最凸点までの長さ)の0.5〜1.5倍程度とすることが好ましいが、これに限られるものではない。
人工前歯1が、アクリル系レジンのようなレジンからなる場合は、成形型によって均質な人工前歯を容易にかつ安価に製造することができる。
図1の人工前歯1は、凹状溝6が唇舌方向に設けられていることから、唇舌を境界とするパーティングライン(破線で示す。)を有する図2で示す唇側型9と舌側型10の2つの金型を用い、成形後、唇舌方向に分離することで容易に製造でき、安価でもある。
図2に示す金型は単層の人工前歯用のものとしているが、多層人工前歯、例えば、コア層、デンチン層、エナメル層の3層からなる人工前歯を製造する場合は、必要な数の金型を使用すればよい。
次に、人工前歯、義歯床をいずれもアクリル系レジンとする全部床義歯を製作する一例を以下説明する。
通法に従って作製した作業模型に咬合床を作製する。
次いで、咬合床の蝋堤に人工歯(前歯、臼歯)を排列する。人工前歯は、その排列において、人工前歯の歯軸方向が判別しやすいことから、人工前歯の歯冠部に咬合平面に対し患者に適した近遠心的傾斜および唇舌的傾斜を与える歯科技工操作を容易に行うことができる。なお、近遠心的傾斜は正面視において切縁の中央点と歯頸線の最凸点とを結んだ線分が咬合平面となす角、唇舌的傾斜は側面視において切縁と歯頸線の最凸点とを結んだ線分が咬合平面となす角を意味する。
人工歯排列後、歯肉形成を行い蝋義歯を完成させる。前歯部の歯肉縁の形成において、人工前歯の歯根部があることから、唇側の歯肉縁の位置は、患者の歯肉の退縮の程度に応じ、歯根部の凹状溝が歯肉から露出しないように配慮する必要があるものの、歯頸部近傍の歯根部が一部露出するような位置であっても支障がない。
蝋義歯完成後、蝋義歯を石膏埋没し、流蝋してできた空洞(義歯床陰型)内に、アクリル系モノマーとポリマーを混和することで餅状となった床用レジンを填入する。これにより人工前歯の凹状溝にも餅状レジンが充填された状態となる。なお、餅状レジンには、着色料、疑似毛細血管等が含まれている。
餅状レジンを填入後、所定の条件で重合硬化させる。
重合硬化後、石膏から義歯を取り出し、研磨等を行い義歯を完成させる。
図3に示すように、得られた義歯11は、義歯床12の歯肉縁13が人工前歯1の歯頸線4の近傍、具体的には、歯頸線4を覆う位置にまで達しており、歯根部3は義歯床12に埋設されている。
得られた義歯11においては、人工前歯1の義歯床12に埋設された箇所の全表面(凹状溝6、6を含む。)において人工前歯1と義歯床12とが化学的接着することに加え、凹状溝6、6に充填され重合硬化した餅状レジン(床用レジン)は凸状部14となって凹状溝6に係合する機械的維持が生ずることから、人工前歯1の義歯床12からの脱落が確実に防止されることになる。
図3は、人工前歯1の歯頸部5を含め歯根部3がほぼ義歯床12に埋設され、義歯床12の歯肉縁13が人工前歯1の歯頸線4を覆っている歯肉の退縮がない患者に適した義歯11を示している。歯間空隙には床用レジンが入り込み歯間乳頭15が形成されている。人工前歯1は、歯根部3が義歯床12の粘膜面から突出することなく義歯床12内に植設されている。
図4は、完成した義歯11(総義歯)が上顎の作業模型17に再装着された状態を示している。図4においては下顎の作業模型18、下顎の総義歯19も示されている。
義歯床12には人工前歯1の凹状溝6と係合する凸状部14が唇舌方向に形成されており、凸状部14における床用レジンに含まれる着色料、疑似毛細血管等による影響は極めて弱く、近傍周囲と明確には区別できず、開口等した状態で顔面の正面や斜め前方からの観察でも顕在せず、歯肉の退縮が目立たない義歯はもちろん後述するように歯肉が退縮した義歯においても、審美性が阻害されることがない。
図5に、歯肉の退縮が目立つ患者に対応した部分床義歯等に人工前歯1を使用した例を示す。
図5に示す義歯21は、歯肉縁22が歯根部3の一部が露出するまでに退縮した状態に作製されているものである。義歯21においては、人工前歯1の義歯床23に埋設された箇所の全表面(凹状溝6、6を含む。)において人工前歯1と義歯床23とが化学的接着することに加え、凹状溝6、6に充填され重合硬化した餅状レジン(床用レジン)は凸状部24となって凹状溝6に係合する機械的維持が生ずることから、人工前歯1の義歯床23からの脱落が確実に防止されることになる。また、歯間空隙には床用レジンが入り込み歯間乳頭25が形成されており、人工前歯1の凹状溝6、6は義歯床23から露出することにはならない。
また、顎堤が十分残っている(すなわち、顎堤の高い)患者の場合は、人工前歯を植設する箇所の義歯床の床厚が薄いことから、人工前歯1の歯根部3の一部を削除する等して床厚に適合するように歯根部3の長さを調節すればよく、これによって、歯根部の先端部が義歯床から突出したりすることがないようにできる。
図6は、人工前歯1において、歯根部3の長さを調節しやすいように、歯根部3の表面に削除量の目安としての長さ調節用の表示26、27(中、短長さ)が設けられた状態を示している。もちろん、長さ調節用の表示はこれに限られず、例えば、人工前歯の基底面に平行となるような表示であってもよい。
なお、当然のことながら、顎堤が低い場合は、歯根部の一部を削除する必要はない。
この発明の人工前歯によれば、化学的接着しない床用レジン(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)を義歯床に用いた義歯であっても、義歯床からの人工前歯の脱落を十分防止できることになる。すなわち、床用レジンが人工前歯の凹状溝に充填され凸状部が形成され、凸状部と凹状溝との係合による機械的維持によって人工前歯の脱落が確実に防止できる。
また、人工前歯はアクリル系レジンからなるものとして説明したが、これに限られず、例えば、ポリカーボネート等の他のレジンであってもよく、また、ジルコニア等のセラミックスであってもよい。
人工前歯の製造方法は、金型による成形に限られず、3Dプリンター、CAD/CAM等の製造技術によって製造してもよい。
図1に示す人工前歯においては、歯根部は略円形、楕円形、おにぎり様等の断面形状を採用するとしているが、これに限られるものではない。
人工前歯の切縁から凹状溝までの高さは、図1等に示す高さ位置に限られるものではなく、また、近心の凹状溝までの高さと遠心の凹状溝までの高さが異なっていてもよい。
図1に示す人工前歯においては、近心および遠心に凹状溝を設けたが、これに限られず、近心または遠心だけでもよい。
図1に示す人工前歯においては、凹状溝は半円弧状としたが、これに限られず、例えば、V字状溝、コ字状溝、蟻溝等であってもよい。また、溝以外の各種の凹部、例えば、図7に示す人工前歯31に示されるような、繭型の如き凹部32でもよい。
図1に示す人工前歯においては、歯根部の基底面を傾斜状面としたが、これに限られず、例えば、凹湾曲面等であってもよい。
図8に示す人工前歯41は、舌側から唇舌境界となるパーティングラインに至る凹状溝42、42が形成されたものである。
人工前歯41を用いた義歯は、人工前歯41の凹状溝42、42と係合する義歯床に形成された凸状部が唇側からは見えないことから、より審美性を高めることができる。
その他は、図1に示した人工前歯に関して説明したと同様なことから、詳細な説明は省略する。
図9は、図1に示す人工前歯1と比較するための人工前歯51である。
この人工前歯51は、人工前歯の歯根部52の唇側と舌側に近遠心方向の凹状溝53、53を設けたものである。
人工前歯51の凹状溝53、53に床用レジンが侵入した義歯は、帯状で近遠心方向の凸状部が義歯床の唇側と舌側に形成されることになる(図示せず)。かかる凸状部は、その近傍周囲よりも肉厚となり、床用レジンに含まれる着色料、疑似毛細血管等による影響が強く、凸状部が濃色の帯状となって強調され、目立つことになり、義歯としての自然観を阻害し審美性に悪影響を与えることとなる。より具体的には、患者がこのような義歯を口腔内に装着し、開口等した際、唇側の凸状部が濃色の帯状となって口腔外から見えることになり、鏡等で自身の口元を見ると満足できずむしろ落胆したり、義歯を装着していることが周囲に知られることに心理的抵抗感を抱いたりすることにもなる。また、患者は、義歯の口腔内での使用時以外、例えば、口腔外での清掃作業等で口腔外に取り外した時に、義歯の濃色の帯状となった凸状部を唇側だけでなく舌側も自身で目にすることになり、かかる凸状部を義歯床の唇側と舌側に有する義歯を審美性や商品価値の低いものと評価することになりかねない。
このような人工前歯を用いた義歯を、歯科医師が歯科技工士に製作を指示したり、ひいては患者に提供することは、歯科医師の信頼が損なわれる恐れもあることが考えられ、このような人工歯を採用した義歯の製作を歯科技工士に指示することはもちろん患者に勧めることには躊躇せざるを得ない。
なお、人工前歯51の歯根部52の唇側に設けられた近遠心方向の凹状溝53は、その設置位置によっては、歯肉が退縮した患者用の義歯では、凹状溝53は義歯床で覆われず露出し、人工前歯51の義歯床との機械的維持に寄与することはなく、しかも、凹状溝53には別途人工歯用のレジンを築盛して充填することが必要となる。このような築盛は、人工前歯との色調の調和等させることが必要であり、熟練を要するとともに煩雑で手間がかかることになる。
1 人工前歯
2 歯冠部
3 歯根部
4 歯頸線
5 歯頸部
6 凹状溝

Claims (4)

  1. 歯冠部から歯根部が所定長さ延設された人工前歯であって、
    前記歯冠部と歯根部とは少なくとも唇側に歯頸線が形成された歯頸部を介して接続されており、
    記歯根部の近心および/または遠心側に維持用の唇舌方向に延在する凹状溝が形成されてなることを特徴とする人工前歯。
  2. 前記唇舌方向に延在する凹状溝は、舌側から唇舌境界に至る凹状溝であることを特徴とする請求項1記載の人工前歯。
  3. 請求項1または2記載の人工前歯が上顎用人工前歯であって、前記歯根部は舌側から唇側へ上向きに傾斜した基底面を有することを特徴とする人工前歯。
  4. 請求項1または2記載の人工前歯が下顎用人工前歯であって、前記歯根部は舌側から唇側へ下向きに傾斜した基底面を有することを特徴とする人工前歯。」
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