JP2018110723A - 部分義歯 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、とくに安定した装着状態、製作工程の簡単化、および軽量化を追求した部分義歯に関するものである。【解決手段】 義歯床と、人工歯と、鉤歯に嵌合する嵌合部とを備える、部分義歯であって、嵌合部の一つにおいて、義歯床に、鉤歯を納めるための抜けたスペースを形成するように湾曲したスペース形成湾曲部が設けられ、スペース形成湾曲部には伸線加工された金属のワイヤが配置され、ワイヤは、鉤歯の側面もしくはスペースの側面に対して、スペース形成湾曲部の樹脂(レジン)を介在させて、もしくは、該ワイヤ横断面の外周の少なくとも一部分を該樹脂(レジン)に被覆されて、位置していて、鉤歯の側面もしくはスペースの側面に対して裸で接する部分がない。【選択図】 図2

Description

本発明は、脱着が容易で、嵩張りをそぎ落として快適な装着状態を得ることができる部分義歯であって、とくに安定した装着状態、製作工程の簡単化、および軽量化を追求した部分義歯に関するものである。
部分義歯は、欠損した歯の代わりをする人工歯を含み、顎堤粘膜に密着する義歯床、および残存歯である鉤歯に取り付けられる維持装置等を備える。部分義歯は、つぎの3つの作用を備える必要がある(非特許文献1)。
(A1)咬合圧に抵抗する支持作用
(A2)離脱力に抵抗する維持作用
(A3)義歯に加わる水平的な力に抵抗する把持作用
旧来の部分義歯の問題点は次の1.〜4.に集約される。
1.残存歯である鉤歯に維持および把持のために取り付けられる装置には、その鉤歯を掴んで強く拘束するような金属クラスプが形成されていた。このため、鉤歯に大きな負担がかかり、鉤歯の劣化を早めることがあった。また、強い拘束のため装着感が悪く、部分義歯の使いはじめの時期だけは使用するが、その後、すぐに使用をやめてしまう例が多くみられた。
2.咬合圧に対してレストを設けた場合、鉤歯のトップにレストを収める溝状のレスト窩(か)を歯牙削除により設ける必要がある。この歯牙削除を行うと、冷水痛や歯髄炎を誘発することがある。また、このレスト窩へのレストの嵌め入れに不具合がある場合、義歯床が顎堤粘膜(回復した欠損歯のあとの部分)に十分接触せずに隙間ができる状態となる。顎堤粘膜と義歯床裏面との隙間は、明確に認識することが難しく、隙間があっても義歯が安定して固定されているように見え、装着がその状態で持続される。隙間には食物残渣、粒状物等が入り込み、顎堤粘膜を傷つけ、潰瘍を生じさせることがあった。
3.旧来のクラスプを使用した部分義歯は、金属光沢を有する立体的な金属クラスプが表側に大きく露出することが多い。このため、金属光沢が目立って、とくに前歯部において審美性の点で問題があった。
4.金属光沢が審美性の点で問題があったために、金属クラスプを用いないで鉤歯への強い拘束を無くし、樹脂のみで維持装置を構成したノンクラスプデンチャーが提案された。しかし、鉤歯にきちんと金属部材で嵌合させずに樹脂だけで維持装置を構成しようとすると、残存歯の下方の歯肉部をすっぽり覆うような大きな樹脂のウィングを形成せざるをえない。このため、義歯床が大振り(大型)になり、装着時の不快感が強く、なおかつ維持力が十分でないという課題を有している。
5.上記の問題を克服するために、立体的に拘束する金属クラスプやレストを用いずに、C字形状または半円弧状の鋳造金属アームを鉤歯の根元にあてがうように嵌め合わせる、新しい概念の部分義歯が、本発明と同じ発明者により提案された(特許文献1および2)。この新概念に基づく部分義歯によれば、固定部から両腕状に分岐した左右のC字形状の鋳造金属アームが、鉤歯の根元にあてがうように嵌合される。このため、鉤歯への拘束はほとんどなく、かつ鉤歯に対して傾ける力(横倒しモーメント)はどのような状態でも発生せず、その結果、鉤歯への負担を画期的に減らすことができるようになった。また、金属アームの帯状の面を鉤歯の根元にあてがうように嵌め合わせるため、弱った鉤歯であっても上記のC字形状の鋳造金属によって補強され、活力を取り戻す症例さえも確認されている。このため、鉤歯が1本だけで、その1本がぐらついていても、その鉤歯の根元にあてがい、嵌め合わせることで、その鉤歯を長持ちさせる部分義歯が提供可能となった。また、左右のC字状鋳造金属アームのうち頬側(表側)アームの長さを短くするため、審美的にも優れたものになる。これらのC字状金属アームは連結子(パラタルバー、リンガルバーなど)などと一体的に金属鋳造で製造されていたので、以後の説明では、C字状鋳造金属アームまたは凹面形成金属アーム、などと呼ぶ。
6.本発明者は、上記5.の部分義歯よりもさらに装着の安定性を確保するために、嵌合体に、筒体または指輪体を用い、その筒体または指輪体を鉤歯の根元部に嵌合する部分義歯の提案を行っている(特許文献3、4)。この発明のもとになったコーヌステレスコープ型の部分義歯と比較すると、嵌合体を筒体のように上下に開口を設けるため鉤歯の頂部が露出して咬合調整がしやすく、また鉤歯が生活歯である場合に神経を除去する必要がなく耐久性を大きく改善することができる。また鉤歯に鉤歯被覆体を設ける場合にも、全体ではなく側周面を被覆するので、鉤歯となる残存歯の耐久性を損なうことがない。その上で、嵌合体を筒体とすることで、装着構造の安定性を大きく向上することができる。
7.上記のコーヌステレスコープ型部分義歯を改良した部分義歯に対して、さらに着脱を容易にし、かつ嵩張りをそぎ落として小型化して快適な装着状態を追い求めて、本発明者は、小型化、軽量化の極限を追求した金属を用いた部分義歯(本願発明のプロトタイプ)を既に発明している。
改訂新版オズボーン パーシャルデンチャー 医歯薬出版株式会社、1977年7月、p.166
特許第3928102号公報 WO2006/131969 A1 特開2013−323号公報 特開2013−324号公報
上記のプロトタイプの部分義歯に対して、さらに安定した装着状態を安定して保つことができ、かつ製作工程を簡単化した部分義歯が求められている。本発明は、脱着が容易であって、とくに安定した装着状態、簡単な製作工程、軽量化、を追求した部分義歯に関するものである。
本発明の部分義歯は、義歯床と、人工歯と、鉤歯に嵌合する嵌合部とを備え、該嵌合部は1つまたは2つ以上の鉤歯に嵌合するものであり、その嵌合部が1つまたは複数存在する、部分義歯であって、少なくとも1つの前記嵌合部において(すなわち嵌合部が1つだけの部分義歯ではその嵌合部において)、前記義歯床に、前記鉤歯を納めるための抜けたスペースを形成するように湾曲したスペース形成湾曲部が設けられ、前記スペース形成湾曲部には伸線加工された金属のワイヤが配置され、前記ワイヤは、前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に対して、前記スペース形成湾曲部の樹脂(レジン)を介在させて、もしくは、該ワイヤ横断面の外周の少なくとも一部分を該樹脂(レジン)に被覆されて、位置していて、前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に対して裸で接する部分がないこと、を特徴とする。ここで、ワイヤが配置された嵌合部もしくはスペース形成湾曲部には、鋳造された凹面形成金属アーム(C字状金属アーム)は配置されない。
「スペース形成湾曲部」は、鉤歯を貫通させるための義歯床に設けた孔(およびその周囲)であってもよいし、孔ではなく鉤歯の側周面を取り囲むように配置された部分であってもよい。また、「ワイヤが、前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に対して、スペース形成湾曲部の樹脂(レジン)を介在させて位置する」とは、鉤歯の側面(頬側の歯面および舌側の歯面)に対してレジンを介在させて面している状態をいう。スペースは鉤歯を貫通させる部分なので、スペースの側面とは鉤歯の対応する部分、すなわち鉤歯における側面の部分(鉤歯の舌側歯面と頬側歯面の部分)をいう。「該ワイヤ横断面の外周の少なくとも一部分を該樹脂(レジン)に被覆されて」とは、ワイヤの横断面の外周(変形が小さければほぼ円周)の少なくとも一部分が樹脂に被覆されている状態をさす。「前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に裸で接する部分がない」とは、樹脂に被覆されることなく裸のワイヤが鉤歯の側面もしくはスペースの対応部分に接して(面して)いないことをいう。ワイヤが裸で鉤歯に接する場合にはワイヤと鉤歯側面とは線接触であったものが、上記のワイヤと義歯床のレジンとの関係では、ワイヤは補強材として機能してスペース形成湾曲部の樹脂が面状に鉤歯側面に接触するため、強力な維持力および把持力を安定的に確保することができる。すなわち、鉤歯の側面に直接、面接触するのは樹脂であるが、ワイヤは強力な補強材として樹脂を安定的に補強する。製作手順は、樹脂が鉤歯の側面の凹凸に忠実に沿うように、鉤歯および加工済みのワイヤが配置された鋳型(鉤歯および加工済みワイヤが配置された石膏模型を芯に含む鋳型)内に、樹脂が填入されることでスペース形成湾曲部は形成されるため、上記の面接触は実現される。この(ワイヤ+スペース形成湾曲部の樹脂)による鉤歯側面の豊隆部から根元側にかけての面接触による維持力および把持力の向上は、非常に大きい。このためワイヤが配置された嵌合部において、他に鋳造製のアーム等を省略もしくは軽減することが可能になり、部分義歯の製作工程の簡単化および軽量化にも貢献する。
上記の部分義歯は、嵌合部が1つの場合もあるし、また2つ以上の場合もある。本発明の部分義歯では、ワイヤが配置される嵌合部は、必ず1つは存在する。嵌合部が1つだけの場合は、必然的に、その嵌合部はワイヤが配置された嵌合部である。そのワイヤが配置された嵌合部は、1つだけの場合もあるし、2つ以上存在する部分義歯もある。その他にワイヤが配置されない嵌合部が1つ以上存在する場合もある。また、鉤歯は1本が普通であるが、まれに2本の場合もある。鉤歯が2本の場合は、ワイヤは、鉤歯の頬側においてc字形が端で合わさったダブルc字形(w字形に類似)をとることが多いが、頬側は1本の鉤歯だけに対応してc字形であり、舌側でw字形に類似する場合など、千差万別であり、限定されない。
一般に、嵌合部には、位置合わせ先行嵌合部(「キー部」と呼ぶことがある)の働きと、嵌合完成固定部(「ロック部」と呼ぶことがある)の働きとの二種の働きがあり、嵌合部が2つ以上の場合は各嵌合部が分業してそれぞれの働きを分担する。嵌合部が1つだけの場合は、当然、ワイヤが配置された嵌合部であり、装着するとき、部分義歯の歯牙に対する全体の位置合わせを行ったあと鉤歯の先端側から根元側に嵌合部を押し込むことで装着される。この嵌合部が1つだけの場合、キーの働きとロックの働きとは区別はされず、1つの動き(鉤歯先端から根元側への押し込み動作)で装着は、パチンと完成する。装着されたとき、パチリ、パチンという感触が得られることは、嵌合部が1つだけの場合に限らず、非常に重要なことである。ワイヤおよび義歯床は弾性を有するので、鉤歯の嵌合部(豊隆部の根元側を含む範囲)にカチリと音をたてて収まるように、弾性変形の山を超えて嵌合するように設計される。すなわちワイヤを含むスペース形成凹面部が鉤歯の豊隆部に接しながら安定位置に嵌まるとき、豊隆部は少し出っ張っており部分義歯全体が弾性変形しなければ豊隆部をこすりながらもその嵌合部が通過できないように設計されている。弾性変形をしながら安定位置におさまり弾性変形が開放される時に、パチリ、カチり、コチリなどという感触が得られる。装着後に、食物の咬合などにおいては歯軸に平行に部分義歯に離脱する方向に力がかかる場合があるが、弾性変形して豊隆部から根元側に嵌合された部分は、ワイヤを補強材としたスペース形成凹面部の樹脂の部分が鉤歯の豊隆部の根元側に面接触しているので、豊隆部によって強力にブロックされて十分な維持力および把持力を発揮することができる。鉤歯等に拘束力を及ぼして維持力を得る旧来の部分義歯の場合、咬合時に部分義歯は強い拘束力で姿勢を維持される。しかし、本発明の部分義歯、とくにワイヤが配置された嵌合部が1つだけの部分義歯では、咬合時の状態は少し異なる。鉤歯にかかる拘束力はほとんどなくフリーであり、したがってその反作用がかかる部分義歯にもほとんど拘束力は及ばない。ワイヤ等は離脱する方向への力に対抗して大きな力を生じる。咬合時には部分義歯には意識しないほどの一定しない咬合動作に同期した交互の局所的な動き(傾き等)が生じていて、咬合時に装着時と同じ向きに沿って逆方向に、部分義歯全体に一定の離脱力が一定時間(数秒以下であるが)、部分義歯全体にかかることはないと言ってよい。この傾きは感覚的には非常に小さいものであるが、部分義歯の小さい部分(面)を主体にみれば十分に大きいものである。このため、咬合時の離脱する方向の力に対しては次のような(e1)および(e2)の抗力が生じると考えられる。(e1)ワイヤ補強されたスペース形成湾曲部の面接触の大きな摩擦力。すなわち、装着時の円滑な曲面どうしの一定方向(設計された比較的抵抗の小さいすべり方向)へのすべり接触とは異なる、曲面どうしの食い違い接触に起因する大きな摩擦力。(e2)装着時の設計すべり方向と、全体的に一致しない一定しない方向への離脱しようとする力に抗する、大きな剛性的な抗力(弾性変形しにくい状況に起因する抗力)。これら(e1)および(e2)により、部分義歯は、安定的に緩くかつ快適な装着状態が確保される。(e1)および(e2)において、補強材ワイヤは大きな力を発生する。逆にみれば、離脱させるときには、部分義歯全体に対して、設計された一定方向に一定時間(数秒以下であるが)力をかける必要がある。
ワイヤは、伸線加工または線引き加工された各種合金製の歯科用の金属線であり、断面が丸(円)であり、典型的にはワイヤクラスプ用線材として歯科用に市販されているものであってよい。本発明では、クラスプとしては用いないで、上記のような形態で用いる。すなわちクラスプ(ワイヤクラスプ)ではワイヤは両端が鉤歯に複雑に絡みついて拘束することで維持力等を出すため、ワイヤ両端は鉤歯表面にツタの先端のように終端部も含めて裸で(露出して)鉤歯表面に接触している。本発明では、ワイヤは、面接触するスペース形成凹面部の補強材として機能する。この結果、鋳造金属ではなく線引きしたワイヤという汎用的な金属部材を用いて安定した装着状態を得ることができる。ワイヤの加工については、患者の歯牙の状態に合わせて、ペンチやプライヤによって石膏模型上でワイヤを加工する工程は重要な工程となる。
伸線加工されたワイヤは硬度が高い。そのような高い硬度のワイヤの加工は、技工所においてペンチやプライヤ等を用いた曲げ変形を主体に形状を調整しながら部分義歯の模型上に配置・固定し、そのあと義歯床(蝋またはワックス)に、上記のように完全にまたは部分的に埋め込まれるようにする。なお、本発明のワイヤはどのような製造方法で製造してもよいが、十分硬度を高く、かつペンチやプライヤ等を用いて曲げ加工ができるようにしておかなければならない。通常は、鋳造合金もしくは鍛造した合金片を適当な孔径のダイスを通しながら線引きして、順次、小さい孔径のダイスを通して目的の線径に加工する。この線引きの際に、強烈な加工が加わり、引け巣は圧着され、かつ一方向性集合組織が形成され、粘り強くかつ硬く強じんなワイヤが形成される。このあと、焼き戻しの熱処理を行う場合と、行わない場合とがある。通常、低い温度で焼き戻しを行うが、焼き戻しを行っても通常の比較的低い温度であれば、線引き加工の加工硬化状態が維持され、硬さが維持され変形しにくく、かつ強じん性は一層向上する。高い硬度は、合金における析出物による析出硬化などによって得てもよい。要は、高い硬度とペンチやプライヤ等を用いた曲げ加工性を得ることができればどのような方法で製造してもよい。硬度としては、市販されているワイヤクラスプがもつレベルの硬度を持てばよい。曲げ加工性についても同様である。金属(合金)のワイヤは、部分義歯に用いられる前の素材が汎用的な歯科用の金属ワイヤ(ワイヤクラスプ用ワイヤ)であって円形断面であるが、技工所において加工を加えることで少しの歪みは生じているかもしれない。しかし、部分義歯に組み入れられても、一見してすぐに素材が上記工程で製造されたワイヤ(断面が円形の合金線)であると分かる程度の小さい歪みである。このような合金ワイヤは上記のように歯科のクラスプ用ワイヤ等として市販されており、Co-Cr合金などが一般的である。材質はとくに限定しない。白金加金など特注の金属ワイヤでもよい。ワイヤの直径は上記の歯科用のワイヤであればどのような径でもよいが、好ましい直径は、0.3mm〜1.5mmの範囲である。直径が1.5mmを超えるとその高い硬さのため加工が難しく、かつこのあと出てくる鉤歯とその隣の歯との間にワイヤの頂部を配置する場合、溝の形成が必要になり、その結果、本格的な削合が必要になり、歯牙の耐久性のために好ましくない。直径が0.3mm未満では、変形しやすくなり、維持力向上に寄与が小さくなる。より好ましい直径の範囲は、0.5〜1.1mm程度である。
義歯床には、どのような樹脂(レジン)を用いてもよい。リベースを行って調整を行うことを考慮すると、熱に対して安定な加熱重合レジンを用いるのがよい。リベースは、部分義歯を湯通しして、即時重合レジンまたは常温重合レジンで義歯床の形状、厚み等を調整して患者の歯牙への適応性を高める手法である。通常、85℃程度の湯通しをして、即時重合レジン(常温重合レジン)によって増肉しながら形状の調整を達成する手法(リベース処理)で、患者の口腔に合わせてオンサイトで調整ができるので簡単さと精度に優れている。加熱重合レジンは、上述のように完全にまたは部分的にワイヤを含んで、高い強度および耐久性をもって鉤歯の豊隆部根元側に抱えるように面接触することで、高い維持力を発揮することができる。ただし加熱重合レジンは、リベース処理の処理材(増肉材など)に用いることはできない。本部分義歯は、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)にも、リベース処理を存分に施すことができる点に、特徴の一つを有する。鋳造されたC字状金属アームは鋳造によって鉤歯の歯頸部に形状を合わせた帯状面を有するが、その帯状面の調整はほとんど不可能である(鋳造された金属以外の樹脂部ではリベース処理を自由に行うことは可能)。しかし、本部分義歯では、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)に対しても、制約を受けることなく、加厚や減肉、曲面の形状変更等、が可能であり、調整の幅を大きく向上させることができる。この点についてはこのあと実施の形態において詳しく説明する。義歯床には、このほか、熱可塑性樹脂を用いても良い。熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン(ポリアミド)系樹脂等を用いることができる。また、俗称で、バルプラスト、ルシトーン、ポリカーボネート等に用いられる樹脂を用いてもよい。上記5.における部分義歯では、鋳造製のC字状金属アームもしくは凹面形成金属アームをあてがうように鉤歯の豊隆部を含む根元側に配置していたが、ワイヤで補強した十分な強度をもつ、樹脂を填入することで成形されたスペース形成湾曲部を配置することができる。さらにスペース形成湾曲部の素材を樹脂(ワイヤを補強材として含むがそれ以外の素材は樹脂)とすることで、樹脂は弾性に富み、ワイヤも線に沿った方向以外には弾性に富むため、装着・離脱(嵌合・脱嵌合)の際の嵌合部の軌跡を、鋳造製のC字状アームでは特別な場合以外は不可能であった歯軸に沿う方向の軌跡、をも含めることが可能になった。この結果、この部分義歯の設計の自由度は大きく拡大することになった。
製作方法の一例をあげればつぎのとおりである。まず、患者の残存歯を含めた口腔内の印象を採取して、これをもとに石膏模型を製作する。この口腔模型上において、残存歯のどれを鉤歯にして嵌合部をどのように形成するか設計する。嵌合部を想定しながら蝋もしくはワックスを用いて義歯床を形成する。後から説明する金属連結帯を用いない場合(用いる場合はあとで説明する)、金属部材としては、鉤歯を抜けさせるスペースを囲むスペース形成湾曲部にワイヤを配置するだけである。ワイヤは嵌合部の形状などを設計する段階で、おおよその形を決めておき、模型上で上述のようにプライヤ、ペンチなどでその形に加工する。次いで、石膏模型上に加工したワイヤを暫定固定して(または置いて)、次いで蝋またはワックスで義歯床を形成してゆく。スペース形成湾曲部については、加工したワイヤを含んだ形態で蝋またはワックスの義歯床が形成される。鉤歯のまわり(すなわちスペース形成湾曲部)については、鉤歯の表面に忠実に接するように蝋またはワックスが配置される。次いで蝋またはワックスの義歯床に人工歯が植設される。この状態の口腔模型に義歯床の蝋等の湯道となる管状部を形成しながら全体を石膏等で覆って固める。これを加熱炉で加熱して、蝋またはワックスを溶かして湯道から流し出して、そのあとに義歯床となる原料であるモチ状の樹脂(レジン)を填入し、固化させる。これによって、おおよその部分義歯が形成される。このあと、患者の口腔内で、顎堤粘膜との適合性、人工歯のかみ合わせなどが調整されて完成する。以上は、おおよその製作方法の概要であり、多くの変形や修正があってもよい。ここで、とくに注目すべき点は、義歯床のレジンが鉤歯の表面に忠実に面接触する形で填入され、そのレジンのスペース形成湾曲部に補強材としてワイヤが配置される点である。鉤歯の表面に忠実に面接触する形で鋳込まれたレジンとそれを補強するワイヤという形態は、画期的な形態である。咬合調整、スペース形成湾曲部の内面などについては、歯科医によってリベース等による調整が行われる。
上記の製作方法は、非常に簡単であり、鋳造された合金は用いていない。患者の歯牙の状態に合わせて義歯床となる樹脂を鋳込んで、その補強に加工したワイヤを配置するだけである。金属部材は、曲げ加工は必要であるが、市販の歯科用ワイヤだけである。これによって、部分義歯の製作工程は大幅に簡単化され、製作日数も短縮される。また、金属部品はワイヤだけなので、軽量化され、また小型化も実現される。それでいながら、伸線加工されたワイヤを補強材にした樹脂が鉤歯の豊隆部根元部に面状に嵌合されるので、装着状態を安定して快適に保つことができる。
ワイヤが配置される一つの嵌合部を有する好適な部分義歯の例として次のものがあげられる。1歯または2歯を人工歯とする部分義歯を非常に小型化した上で、快適な装着状態を安定して確保しようとする場合がその例に該当する。この場合は小型化がポイントである。また、13歯欠損で1歯のみ残存歯がありこれを鉤歯とする場合も、その例に該当する。この場合は、1つの歯牙(残存歯)への嵌合で部分義歯の装着状態を安定して保つことがポイントである。前者の場合、従来、1歯欠損または2歯欠損の部分義歯で小型化され、かつ快適な装着状態を安定して確保したものは、なかったといってよい。また、後者の場合、上記の部分義歯では、1歯のみが残存してこれを鉤歯とする場合でも、脱着が容易で、安定して快適な装着状態を得ることができる。前者および後者いずれの場合も、嵌合部は1つだけであり、その嵌合部で(ワイヤ+スペース形成湾曲部の樹脂)が、協業することで堅固な装着状態を保つことが可能になる。
前記ワイヤは、前記鉤歯側面において前記スペース形成湾曲部の樹脂中に内蔵されていてもよい。また、前記スペース形成湾曲部の頬側の上縁が谷状に歯牙根元側に落ち込んでいてその上縁に沿って部分的に露出して位置していてもよい。
スペース形成湾曲部の樹脂中に内蔵されている状態は、ワイヤが義歯床に完全に埋設された状態である。また、前記スペース形成湾曲部の頬側が谷状に歯牙根元側に落ち込んでいる部分の樹脂の上縁に沿って部分的に露出して位置している状態は、当該谷状に落ち込んでいる部分の上縁に、ワイヤの横断面の外周の一部分が樹脂に埋設された状態(樹脂に一部分被覆された状態)である。部分義歯の歯牙の頂面側から見ると、ワイヤの金属光沢が見えるが、ワイヤよりも鉤歯側面に近い部分に、上記の上縁部の樹脂が配置されていて、ワイヤの横断面の外周の一部を被覆している。
ここで、ワイヤの高さ位置としては、鉤歯の豊隆部の根元側に位置する部分を含むが、参照する鉤歯がない部分義歯だけを見て、部分義歯上の鉤歯に隣接する人工歯の高さを参照すれば次のように規定できる(鉤歯そのものではないが)。すなわち、ワイヤは、鉤歯に隣接する部分義歯上の人工歯の頬側または舌側の高さ中央位置より根元側の部分を含む。人工歯の頬側または舌側の高さ中央位置とは、その人工歯の根元を被覆する義歯床の上端の平均高さ(頬側面、舌側面での幅位置について平均化した高さ)と、その人工歯の上端の平均高さ(前記と同じ平均化した高さ)と、の中間位置である。隣接する人工歯が両隣にある場合は、どちらか一方で、上記の条件を満たせばよい。また、頬側または舌側のどちらか一方で上記の条件を満たせばよい。
これによって、鉤歯の豊隆部とその根元側、の高さ範囲に位置する部分にワイヤの部分を配置することで、スペース形成湾曲部の主要部を鉤歯の根元部に嵌合することで、快適な装着状態を保ちながら、咬合時の維持作用および把持作用を十分に確保することができる。従来は、鋳造製のC字状アームもしくは凹面形成金属アームをあてがうように鉤歯の豊隆部を含む根元側に配置していたものを、ワイヤで補強した十分な強度をもつ、樹脂を填入して鉤歯の外面に合わせて製作したスペース形成湾曲部(樹脂)を配置することができる。なお、スペース形成湾曲部は、装着時には、軌跡としては、水平方向にあてがうように鉤歯豊隆部の根元側に嵌合される軌跡はほとんど無いが(通常は、上下方向の軌跡)、装着した後の状態は、あてがわれるように鉤歯豊隆部の根元側に嵌合することになる。その嵌合は鉤歯の歯頸部に限られていて、その嵌合も応力的には緩いまま安定した状態を保つ嵌合である。
前記ワイヤは、前記スペース形成湾曲部において、少なくとも頬側では、V字状、U字状またはJ字状の形状をなしてもよい。ここでスペース形成湾曲部の頬側は、その上縁が谷状に歯牙根元側に落ち込んでいる場合であってもよいし、そのような落ち込みがない場合であってもよい。
これによって、ワイヤの、V字、U字、J字の底部(根元部)に対応する部分は、スペース形成湾曲部を鉤歯の豊隆部の下側を含む範囲を根元側から抱えるように補強して樹脂をその部分に面接触させる。これによって維持力の大幅な向上を簡単な構成で実現することができる。V字状、U字状またはJ字状の形状は、形成するのが容易であり、かつワイヤは固く強靭であるため義歯床内においても維持力の向上に寄与するものである。嵌合部が(ワイヤ+スペース形成湾曲部)という部分を備えるため、脱着時は、すべりが起きやすい一定方向に一定時間、力を加えるため弾性変形は比較的容易で、脱着は容易である。しかし嵌合状態では豊隆部を根元側から抱えるように嵌合しているので咬合時の離脱しようとする方向への力に対して十分大きい抵抗力を発揮することができる。すなわち上述の(e1)および(e2)の力が発揮される。ワイヤは、義歯床内で、ループを形成するようにワイヤの端同士が接続されていてもよいし、両端が、それぞれ端のまま義歯床中で開放端であってもよい。また、この後、述べるように金属連結帯に接続されていてもよい。
前記ワイヤには、前記鉤歯と該鉤歯の隣の歯牙との頂部の境界をわたる、裸の頂部境界部が含まれていてもよい。
ここで、ワイヤが、上記のような露出状態(裸)の頂部境界部を持つとき、その露出する部分は、鉤歯等の頂面と同レベルの高さの頂部を持ち、その同レベル高さの頂部が前記鉤歯とその隣の歯との間の溝部分に部分的に納まるようになる。この場合、装着したとき、その頂部境界部は、鉤歯とその隣の歯との頂部の境界の隙間で、頬側と舌側との間に延在することになる。すなわち、歯牙の厚み方向もしくは奥行方向に沿うように位置することになる。これによって、部分義歯が咬合などによって沈み込むのを防止することができる。旧来、咬合圧による沈下防止にレストなどを設けていたが、レストは自立歯にレスト穽(か)を設けるが、その際に生活歯の場合でも場合によっては、その後の状態によっては神経の除去に至ることもある。このためその自立歯の耐久性を著しく損なうことになる。ワイヤは強じんで固く滑らかで、何よりも細い円形断面なので、鉤歯とその隣の歯との間に少しの間隙があれば、かみ合わせ調整を大きく変更することなく簡単に、配置することができる。これによって咬合圧による沈み込みを非常に簡単な機構で防止することができる。歯の間の溝部分とは、歯牙の頂部の面の縁は丸みを帯びており隣接する歯牙の頂部の間には、ワイヤが部分的に納まる程度の溝ができやすい。自然にできる溝だけの場合もあるし、咬合にクリアランスが無い時は少しのエナメル質を削合する場合もある。
これによって、上記支持作用の向上だけでなくワイヤによる把持力などを向上させることができる。このような作用を得るためには、ワイヤの固さが高いことが必要であり、線引き加工によって加工硬化した歯科用ワイヤは適している。
前記部分義歯の義歯床には金属連結帯が埋設され、前記ワイヤは、該金属連結帯に、端もしくは途中が固定されているか、または固定関係がない、形態であってもよい。
金属連結帯は、部分義歯が長くなる場合、義歯床だけでは破損しやすいので破損防止のために用いる場合が多い。また、嵌合部が2つ以上で、鋳造合金のC字状アームを用いる場合その鋳造合金のC字状アームを固定するのにも金属連結帯は用いられる。ワイヤに加えて金属連結帯を用いる場合、ワイヤの適当な箇所を、この金属連結帯にろう付けもしくはレーザー溶接等で固定することで、その固定部を基点にしてさらに患者の歯牙に適合するように精細な調整変形を加えることができる。ワイヤにおける金属連結帯との接続箇所は、ワイヤの端でもよいし、端より中に入った箇所でもよい。また、ワイヤを、金属連結帯に接続しなくてもよい。なお、金属連結帯は、幹に相当する金属連結帯と枝部とを含むのが普通であるが、明確に枝部があると認めにくい構造の場合もある。金属連結帯は、上顎の部分義歯の場合にパラタルバー、下顎の部分義歯の場合にリンガルバーなどと呼ばれるものに相当しており、大連結子なども金属連結帯に該当する。また枝部は、小連結子等に該当する。金属連結帯はこれらすべてを含むものとする。金属連結帯やその枝部は鋳造製となるので、工数は多くなり、重量も増大する。金属連結帯やその枝部を構成する材料は、製造のし易さ、耐久性などから、通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。
ワイヤに加えて金属連結帯を配置する場合、部分義歯の製作方法の一例はつぎのとおりである。患者の残存歯を含めた口腔内の印象を採取して、これをもとに石膏模型を製作し、口腔模型上において、残存歯のどれを鉤歯にして嵌合部をどのように形成するか設計する、ところまでは金属部材がワイヤだけの場合と共通する。金属連結帯を追加する場合、金属連結帯は鋳造で形成されるので、予め、金属連結帯を鋳造で製作しておく。この金属連結帯には、当該金属連結帯と石膏模型との間のスペーサの役目をするストッパーと呼ばれる突起を設けておく必要がある。金属連結帯を配置して樹脂を填入するとき、樹脂の流れ込みを良くするためである。金属連結帯の製作にあたって、まず石膏模型に板状のワックスを貼り付け、このワックスにストッパーとなる穴をあけておく。この状態の石膏模型にシリコン等を使って型採りをしてその型を使って耐火模型を作製する。次いでワックス等で金属連結帯となる形を形成する。この時点で、ストッパーが形成されることになる穴には、ワックスが充填されている。次に湯道を確保しながら全体を耐火物で被覆し、加熱してワックスを流出させ、その後、そこへ金属連結帯となる合金を鋳造する。これによって、ストッパー付きの金属連結帯が一体鋳造される。金属連結帯を用いるとき、ワイヤを配置しない嵌合部には、このあと説明する枝部とその枝部から延び出る凹面湾曲形成アーム(C字状金属アーム)を配置する場合が多く、この場合、凹面湾曲形成アームと枝部と金属連結帯とを一体的に鋳造する。この方法以外にも一般に常用されている方法であれば、どのような方法で金属連結帯を形成してもよい。形成された金属連結帯または、凹面湾曲形成アームと金属連結帯との一体物、を石膏模型上において、義歯床に対応する部分に蝋またはワックスと重ねながら配置する。また、これより前に、ワイヤが配置される嵌合部におけるワイヤを、嵌合部の設計に合わせて加工しておく。この加工されたワイヤを、金属連結帯にレーザー溶接、電気溶接等で接合し、またワイヤと金属連結帯とに接合がない場合には義歯床に対応する部分に配置し、さらに蝋またはワックスを重ねて義歯床の形を形成する。この状態の口腔模型に対して湯道を形成しながら全体を石膏等で覆って固める。これを加熱炉で加熱して、蝋またはワックスを溶かして湯道から流し出して、そのあとに義歯床となる原料であるモチ状の樹脂(レジン)を填入し、固化させる。このレジンの填入によって、鉤歯の表面に沿ったレジンのスペース形成湾曲部がワイヤを補強材として有しながらできあがる。上記したように、ワイヤが配置されたスペース形成湾曲部は画期的な構造である。このあと細部の細工を行えば、おおよその部分義歯が形成される。このあと、患者の口腔内で、リベース等によって顎堤粘膜との適合性、人工歯のかみ合わせなどが調整されて完成する。金属部材がワイヤだけの場合と比べると、複雑に見えるが、ワイヤが配置される嵌合部は、鋳造製の凹面形成金属アームは配置されないので、その分、簡単であり、また軽量化、小型化が実現される。
前記嵌合部が複数存在して、前記ワイヤが配置されていない嵌合部が存在する場合において、該嵌合部における前記義歯床には前記鉤歯に嵌合するための凹部が設けられ該凹部に鋳造された凹面形成金属アーム(C字状金属アーム)が配置されていてもよい。ここで、凹面形成金属アーム(C字状金属アーム)が配置された嵌合部もしくは凹部には、ワイヤは配置されない。
ワイヤが配置されていない嵌合部が存在するとき、その嵌合部には凹面形成金属アームが配置されて、その嵌合部は位置合わせ嵌合部(キー部)となる。そしてワイヤが配置される嵌合部は、嵌合固定部(ロック部)となる。このロック部は、位置合わせ嵌合部(キー部)を「ずらし支点」として円弧の軌跡を描いて、鉤歯に嵌合する。ずらし支点とは、固定した支点ではなく嵌合時に少しずれながら支点的な機能を有することをいう。このとき上記のワイヤが配置される嵌合部であるロック部は、縦方向の円弧もしくは縦方向そのものと言ってよいくらいの大きな径の縦円弧(ほとんど押し込みといえる軌跡)を経由して嵌合する場合が多い。軌跡は非直線的と考えられるが、厳密かつ詳細な軌跡は不明である。ロック部の嵌合が完了したときカチリ等という感触を得て嵌合する理由については上述のとおりである。キー部を構成する嵌合部には、上記のように鋳造された凹面形成金属アームが配置されて鉤歯の豊隆部もしくはその根元側にあてがって、上記のロック部(ワイヤが配置された嵌合部)を対応する鉤歯の上に配置して全体を嵌合する。このとき凹面形成金属アームは上記のずらし支点的な機能を発揮する。本発明の部分義歯では、キー部とロック部との嵌合時の動作は、感覚的にはほとんど同時である。嵌合部の数については、患者の歯牙欠損の状態や口腔形態に応じて、決めることができる。凹面形成金属アームを構成する材料は、製造のし易さ、耐久性などを決めればよく、通常の歯科用の鋳造合金であれば何でもよい。白金加金、金銀パラジウム合金、コバルトクロム合金、その他の合金等を用いることができる。中でも白金加金が望ましい。
前記凹面形成金属アームは、前記金属連結帯と一体鋳造されて形成されたものであってもよい。
凹面形成金属アームと金属連結帯とを一体鋳造で製作することで、部分義歯に比較的大きな弾性変形能を持たせることができる。かつ、凹面形成金属アームと金属連結帯とを一体成形できるので、これら金属部材が個別に存在してそれらを組み合わせて製作するよりも形状の精度を高めることができる。また、製作時にこれらの金属部材に加工されたワイヤを配置する場合よりも、配置が容易になる。
前記ワイヤが配置される嵌合部のスペース形成湾曲部内、または前記ワイヤが配置されていない嵌合部の凹部内、において、前記金属連結帯に含まれる枝部に、前記鉤歯の外面に沿うような金属面が設けられていてもよい。
これによって、各嵌合部において、鉤歯への嵌合を円滑にして、かつ嵌合を強固にすることができる。この場合、金属面は、義歯床にすこし被覆されている場合が多く、通常はワイヤの埋設深さよりも浅く鉤歯に近い表面に位置する。ただし、金属面の深さもしくは金属面が露出しているか否かは、金属面は、スペース形成湾曲部もしくは凹部における樹脂と協働して鉤歯に作用するので、あまり重要ではない。
本発明によれば、脱着が容易であって、とくに安定した装着状態、簡単な製作工程、軽量化、を実現した部分義歯を得ることができる。
実施の形態1における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 図3の部分義歯の嵌合部Kの拡大図である。 部分義歯を裏面側から見た図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示す図である。 実施の形態2における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 図8の装着した部分義歯を上から見た図である。 部分義歯を示す図である。 部分義歯を裏面側から見た図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示す図であり、(a)は図10と同じ方向から見たときのワイヤ、(b)は鉤歯の側で、やや舌側から見たときのワイヤである。 実施の形態3における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 部分義歯を裏面側から見た図である。 実施の形態3の変形例の部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 実施の形態4における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 図20の部分義歯の嵌合部Kの拡大図である。 図20の部分義歯の嵌合部K1の拡大図である。 図20の部分義歯を、前歯側からやや見上げて、義歯床の裏面が見えるようにして描いた図である 部分義歯に用いられている金属部材を示す図である。 実施の形態5における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示す図である。 嵌合部Kにおける金属部材の拡大図を示し、(a)は図28と同じ方向から見た図、(b)は上下を逆にしてみた図である。 嵌合部K1における金属部材の拡大図を示し、(a)は図28と同じ方向から見た図、(b)は上下を逆にしてみた図である。 実施の形態6における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 図33の部分義歯の嵌合部Kの拡大図である。 図33の部分義歯の嵌合部K1の拡大図であり。(a)は図33と同じ方向から見た図、(b)は上下を逆にしてやや見上げるように見た図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示す図である。 実施の形態7における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を示す図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示す図である。 部分義歯を示す図である。 図39の部分義歯を頬側から見た図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示す図である。 実施の形態8における部分義歯を装着する前の口腔の石膏模型を舌側から見た部分図である。 部分義歯を装着したあとの状態を示し、(a)は舌側から見た図、(b)は頬側から見た図である。 部分義歯を示し、(a)は舌側から見た図、(b)は頬側から見た図である。 部分義歯に用いられている金属部材を示し、(a)は舌側から見た図、(b)は頬側から見た図である。
(実施の形態1)
図1〜図6は、実施の形態1における部分義歯10を説明するための図である。図1は下顎において1本の残存歯L4(左4番)のみが残る、13歯欠損の口腔の石膏模型Mである。残存歯L4には豊隆部Zがあって外側とくに頬側に膨出している。残存歯L4は、顎堤粘膜M5の峰部に立っている。図2は、この1本の残存歯L4を鉤歯Qとして、嵌合部Kが1つの部分義歯10を装着した状態を示す図である。義歯床35は、舌側から頬側へと顎堤粘膜M5の峰を覆って、顎堤粘膜M5全体にわたって位置している。人工歯5は、図示しない上顎の対応する歯牙に合わせて、義歯床35に、その根元を固定されている。なお、本実施の形態も、この後の実施の形態も、その実施の形態の説明に用いる第2番目の図は、とくに断らない限り部分義歯10を石膏模型Mに装着した状態を示すが、この第2番目の図では義歯床35に点々模様が付される。しかし、その後の図では、煩雑になり見にくくなることが多いので、適宜、義歯床35の点々模様は省略している。
図3は、部分義歯10を図2と同じ方向から見た図である。嵌合部Kでは、義歯床35に、鉤歯Q(L4)を貫通させる孔もしくはスペース形成湾曲部35hが設けられ、スペース形成湾曲部35hに囲まれたスペースSを鉤歯Q(L4)が通り抜ける。図4は、この嵌合部Kの拡大図である。嵌合部Kの頬側の義歯床35内においてワイヤwがV字状に湾曲しており、鉤歯Qの豊隆部Zを根元側から抱えるように位置している(図2参照)。図2と合わせて分かるように、ワイヤwを補強材とするスペース形成湾曲部35hの樹脂(レジン)は、鉤歯Qの豊隆部Zの根元側で鉤歯Qに面接触しており、大きな維持力および把持力と把持力を発揮することが分かる。
この部分義歯10には、義歯床35内に金属連結帯(図6参照)が埋設されており、その枝部51が、スペース形成湾曲部35hにおいて透けて見えている。この金属連結帯の枝部51には、窓51hが開けられているが、これは部分義歯10の大体を製作した後に、歯科医が患者の歯牙に合わせて、スペース形成湾曲部51hの内面に即時重合レジンを用いてリベース等を行う調整のときに、当該リベースされた即時重合レジンと、金属連結帯枝部51の外側(舌側)の義歯床35との接着を確保するために設けた窓である。また、鉤歯Q(L4)のやや舌面側の外面に沿うような金属面15が形成されている。この金属面15の部分では上記のリベース等で配置された即時重合レジンが研磨されて、枝部51の金属面15がうっすらと露出するようにされている。この金属面15は、上記のリベース等による即時重合レジンを研削したとき歯牙との位置関係に狂いが生じないように配置されている。維持作用の向上にも寄与している。この金属面15が露出しているかレジンがごく薄く覆っているかは、さして大きな意味はない。なぜならば、金属面15は薄いレジン越しに透けて見えるし、ワイヤwに補強されたレジンが面接触して維持力等を向上させるのと同様に、枝部51の金属面15とレジンとは、協働して面圧を鉤歯Qに及ぼすからである。
図5は、図3に示す部分義歯10を裏面35gの側から見た図である。裏面35gの側から見ると、人工歯5に妨げられずに金属連結帯50の配置が透けて見える。金属連結帯50は義歯床35の全体にわたって配置されている。このような金属連結帯50の配置によって、部分義歯10の義歯床35における破損を防ぐことができる。義歯床裏面35gに沿ってところどころに見える点状のもの50dは、金属連結帯50に設けられた突起物でありストッパーと呼ばれる。ストッパー50dは、部分義歯10の製作時に、金属連結帯50を石膏模型M上に配置して樹脂を填入する際、当該金属連結帯50と石膏模型Mとの隙間を確保して樹脂の流れ込みを良くする。スペース形成湾曲部35hは、頬側で歯牙根元の側を谷とするように落ち込んでおり、ワイヤwはその樹脂の谷の上縁に沿うように位置して頬側においてV字状に湾曲しているが、すべての部分はスペース形成湾曲部35hの上縁のレジン内に埋設されている。このようなスペース形成湾曲部35hの頬側における谷形状およびそれに沿うワイヤwのV字状の形態は、鉤歯Qの頬側で豊隆部Zの根元側から鉤歯Qを抱えるように面接触するために生じる形態である。
部分義歯の出来は、リベース処理の出来不出来に左右されるが、そのリベース処理の場が本部分義歯によって提供され、優秀なリベース処理が施されると、患者にとってこの上ない至福の部分義歯ができあがる。本部分義歯では、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)にも、リベース処理を存分に施すことができる点に、特徴の一つを有する。鋳造されたC字状金属アームは鋳造によって鉤歯の歯頸部に形状を合わせた帯状面を有するが、その帯状面の調整はほとんど不可能である(鋳造された金属以外の樹脂部ではリベース処理を自由に行うことは可能)。しかし、本部分義歯では、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)に対しても、制約を受けることなく、加厚や減肉、曲面の形状変更等、が可能であり、調整の幅を大きく向上させることができる。図4に示す金属連結帯の枝部51に設けた窓51hは、金属連結帯の枝部51を設けた場合に、リベース処理によって調整したスペース形成湾曲部35hの内壁面の形状等を安定して耐久化させるために設けられた構造である。金属連結帯を用いない場合でも、リベース処理を嵌合部の中心に対して広範に施すことができ、この場合、金属連結帯50や枝部51がないので、リベース処理後の内壁面などの形状は、おのずと安定化、耐久化されている。
図1に示す口腔状態の使用者が、図3または図4に示す部分義歯10を、装着するときは次のように行う。まず、鉤歯Q(L4)と嵌合部Kとの位置を合わせ、かつ他の部分も位置を合わせる。次いで、スペース形成湾曲部35hに鉤歯Q(L4)を貫通させるようにして全体を押し込むように移動させると、うまく嵌合したときはカチンという感触が得られる。実際にカチンという音が発生する。位置合わせと装着のコツをつかむと、装着の際に、容易にこのようなカチン音が得られようになる。逆に言えば、カチン音が得られないと、正常な装着が実現していないことを意味する。カチンという感触が得られて嵌合されれば、ワイヤwに補強されたスペース形成湾曲部35hが鉤歯Q(L4)の豊隆部Zの根元側に面接触しているので、安定した装着状態を確保することができる。またスペース形成湾曲部35hにおける金属連結部の枝部51の金属面15も、安定した装着位置への誘導および実現した装着状態の維持に寄与している。この部分義歯10が咬合時に離脱しにくい理由は、上記した(e1)および(e2)の力が働くためである。
図6は、部分義歯10に配置されている金属部材Gを示す図である。見る方向は、図3または図4と同じ方向から見たものである。金属連結帯50と枝部51とは一体的に鋳造されたものである。ワイヤwは両端が金属連結帯50の枝部51に固定されている。ワイヤwを金属連結帯50またはその枝部51に固定することで、部分義歯10の製作においてワイヤwの配置を容易に決めることができ、製作しやすくなる。
本実施の形態の部分義歯10のように、ワイヤwとともに金属連結帯50および、あとの実施の形態で紹介する凹面形成金属アームを含む場合の製作方法はすでに紹介した。凹面形成金属アームの有無は、金属連結帯50と共存してある限り製作工程に大きな影響は及ぼさない。本実施の形態の部分義歯10の製作方法の一例をあげれば次の通りである。まず、予め、図6に示す金属連結帯50(ストッパー50d、枝部51を含む)を鋳造で製作しておく。この鋳造による金属連結帯50の製作には、常用されている鋳造法を用いることができる。まず図1に示す石膏模型M上にワックスを貼り付けて、枝部51などを含む金属連結帯50と石膏模型Mとのスペースとなる部分(主として義歯床の底部となる部分)を形成する。この貼り付けたワックスにストッパー50dが形成される穴をあけておく。この状態の石膏模型にシリコン等を使って型採りをしてその型を使って耐火模型を作製する。その耐火模型上に蝋またはワックスにより金属連結帯50(ストッパー50d、枝部51を含む)となる形を形成する。次いで、全体を耐火物で覆って加熱することで蝋またはワックスを流し出して金属連結帯50の鋳型を作製する。その後、その鋳型に溶融合金を鋳込んで金属連結帯50(枝部51を含む)を形成する。これと前後させて、嵌合部Kの設計に合うようにワイヤwを加工して形状を整える。次いで、石膏模型上で、成形した金属連結帯50に加工成形したワイヤwを、レーザー溶接または電気溶接で固定して金属部材Gの全体の形状を決める。金属連結帯50は、ストッパー50dが石膏模型Mに接触するように、固定されたワイヤwとともに石膏模型M上に配置される。次いで、石膏模型M上でワイヤwと金属連結帯50,51を包み込むように、蝋またはワックスにより義歯床35を形成する。次いで、その蝋またはワックスの義歯床上に人工歯5の根元を植設する。このとき、当然であるが、鉤歯Q(R4)の周りにスペース形成湾曲部35hがワイヤw等を含むように形成される。この状態のもの全体を、湯道を確保しながら石膏で固めたあと、加熱して蝋またはワックスを流し出し、次いで、ここにモチ状の加熱重合レジンもしくはその他のモチ状のレジンを填入して固めて義歯床35を形成する。レジンの填入のとき、鉤歯の表面に沿ったレジンのスペース形成湾曲部(補強のワイヤ内蔵)が形成される。これで、おおよその部分義歯ができる。このあとは患者の歯牙に合わせて、リベース処置により、咬合調整や、脱着を容易にするためのスペース形成湾曲部35hの内面の調整が始まる。
鉤歯Q(L4)に嵌合する部分は、ワイヤwと、レジンのスペース形成湾曲部35hと、そこに含まれるワイヤとで、ほぼ決まる。それゆえ、患者の歯牙との微妙な調整は、レジンのスペース形成湾曲部35hに対して行うことで十分達成することができる。このため、このあとの実施の形態で紹介する、鋳造によって鉤歯に直接接して嵌合する凹面形成金属アームを形成する場合よりも、簡単に調整することができる。また、嵌合部に鋳造されたC字状アームを用いずにワイヤwだけを金属部材とするので、軽量化および小型化が確実に実現される。さらに、歯科用の汎用的なワイヤwを補強材としたレジンのスペース形成湾曲部35hを嵌合部の主要部とするので、製作費用は低く抑えられ、かつ性能的には、脱着性に優れて安定した装着状態を快適に保つことが出来る。
(実施の形態2)
図7〜図12は、実施の形態2における部分義歯を説明するための図である。図7は下顎において、残存歯L1〜5、R1〜7が残る、口腔の石膏模型Mである。鉤歯Qとなる残存歯L5には豊隆部Zがあって外側にとくに頬側に膨出している。残存歯は、すべて顎堤粘膜M5の峰部に立っている。図8は、残存歯L5を鉤歯Qとした、嵌合部Kが1つ設けられた部分義歯10を装着した状態を示す図である。この部分義歯10では義歯床35に、人工歯5が、L6およびL7に植設されている。嵌合部Kにおいて鉤歯Q(L5)のまわりにグルリと義歯床35内にワイヤwが埋設されている(図示せず)。このワイヤwは周囲の義歯床35とくにスペース形成湾曲部のレジンを介在させて鉤歯Qの側面に面している。
図9は、図8における部分義歯10を頂部側から見た拡大図である。嵌合部Kでは、鉤歯Q(L5)の周りの義歯床35内にワイヤwが埋設されているのが、透けて見えている。補強材ワイヤwを含む周囲の義歯床35すなわちスペース形成湾曲部35hが鉤歯Qの豊隆部Zの根元側に面接触の状態で嵌合している。ワイヤwが埋設されている義歯床35には、鉤歯Q(L5)を貫通させる孔によってスペース形成湾曲部35hが形成されている。
図10は、図8と同じ方角から見た部分義歯10を見た図である。嵌合部Kにはスペース形成湾曲部35hを形成する孔が設けられ、鉤歯Q(L5)が抜けるスペースSが形成されている。この場合、ペース形成湾曲部35hは、孔をなかにして形成されている。図10の部分義歯10を、図9に示す状態に装着するには、人工歯L6,L7の部分(鉤歯Q(L5)よりも遠心側の部分)を顎堤粘膜M5の位置に合わせて置いておき、鉤歯Q(L5)の頂部側から嵌合部Kを重点に全体を押し込んでパチンという感触が得られれば、正常な装着が実現する。遠心側から顎堤に押し当てておいて最後に嵌合部Kを重点に全体を鉤歯Q(L5)にパチンと押し込む感じである。非常に簡単で、装着動作そのものが快適でさえある。
図11は、図10に示す部分義歯10を裏面側から見た図である。この図によれば、金属部材はワイヤwのみで、金属連結帯などは用いていないことが分かる。このため、この部分義歯10は非常に軽く、装着時および脱着時の弾性変形が容易であり、力を加える方向、手順などを間違えなければ、装着および脱着は軽やかに行うことができる。それであって、図8に示すように、補強材ワイヤwを含むスペース形成湾曲部35hのレジン(樹脂)が、協働して鉤歯Q(L5)の豊隆部Zの根元側の範囲に面接触の状態で嵌合しているため、咬合時の離脱しようとする方向の力に対しては、上述の(e1)および(e2)の抗力を得て、良好な装着状態を安定して実現することができる。
図12は義歯床のスペース形成湾曲部35hに配置されているワイヤwの全体を示す図であり、(a)は図8もしくは図10と同じ方向から見た図であり、(b)は鉤歯Q(L5)の側で、やや舌側から見た図である。これらの図より、ワイヤwは義歯床35内で閉じていることが分かる。両端を接続することで、変形に対する剛性を高めることができる。金属連結帯などの鋳造金属を用いていないので、ワイヤwだけで剛性を高める狙いがある。
本実施の形態の部分義歯10の製作は、非常に簡単である。 一例をあげればつぎのとおりである。まず、患者の残存歯を含めた口腔内の印象を採取して、これをもとに石膏模型を製作する。この口腔模型上において、残存歯R5を鉤歯にして嵌合部をどのように形成するか設計する。予め、嵌合部の設計に合わせてワイヤをペンチ等で加工しておく。嵌合部の設計に合わせて蝋もしくはワックスを用いて義歯床を形成する。このとき、鉤歯Q(L5)を貫通させるスペースSを囲むスペース形成湾曲部35hに加工されたワイヤを埋設する。加工されたワイヤwは石膏模型上に仮固定しておくのがよい。次いで蝋またはワックスで加工されたワイヤを含むようにして義歯床を形成してゆく。この状態の口腔模型に対して蝋等の湯道を形成しながら全体を石膏等で覆って固める。これを加熱して、蝋またはワックスを溶かして湯道から流し出して、そのあとに義歯床となる原料であるモチ状のレジンを填入し、固化させる。このとき実現される、鉤歯のまわりの補強材ワイヤwを内蔵したスペース形成湾曲部35hの構造はこれまで無かった形態である。このあと、患者の口腔内で、リベース等によって、顎堤粘膜との適合性、人工歯のかみ合わせなどが調整されて完成する。
上記のように、本実施の形態の部分義歯10の製作方法は非常に簡単で、工数が少ない。何よりも鋳造で金属部材を製作しないので、材料費も少ない。さらに、軽量である。しかも、装着および脱着は容易で、かつ補強材ワイヤwを内蔵するスペース形成湾曲部35hのレジンによる鉤歯Qの豊隆部Zの根元側への面接触の嵌合により高い維持力を確保することができる。鋳造で製作される金属部材を含まないので、軽量、小ぶりであり、装着感にも優れている。
(実施の形態3)
図13〜図16は、実施の形態3における部分義歯を説明するための図である。図13は下顎において、残存歯L1〜4、R1〜7が残る、すなわちL5〜7欠損の口腔の石膏模型Mである。鉤歯Qとなる残存歯L4には豊隆部(図示せず)があって頬側に膨出している。残存歯は、すべて顎堤粘膜M5の峰部に立っている。図14は、残存歯L4を鉤歯Qとした、嵌合部Kが1つの部分義歯10を装着した状態を示す図である。この部分義歯10では、鉤歯Q(L4)と該鉤歯の隣の歯牙(L3)との頂部の境界をわたるワイヤの部分、頂部境界部waが裸である。ワイヤのその他の部分wは、すべて義歯床35に埋設されている。頂部境界部waは、義歯床35に埋設することはできないし、また切断することなく連続させておくことで、このあと詳しく説明する支持作用の向上、およびワイヤの強度や剛性を高めることができる。嵌合部Kにおいて鉤歯Q(L4)のまわりにグルリとスペース形成湾曲部35h内にワイヤwが配置されていて、とくに頬側ではV字形であるが、埋設されている部分は図14では図示していない。図示していないこの部分のワイヤwはスペース形成湾曲部35hのレジンを介在させて鉤歯Qの側面に面している形態は、これまでの実施の形態と同様である。
図15は、図14における部分義歯10を同じ方向から見た図である。また図16は部分義歯10を裏面35g側から見た図である。嵌合部Kでは、鉤歯Q(L4)の周りの義歯床のスペース形成湾曲部35h内にワイヤwが埋設されていて、義歯床35から透けて見えている。スペースSは義歯床35に設けたスペース形成湾曲部35hで囲まれているが、このスペース形成湾曲部35hは孔をなかにしているわけではない。義歯床35が、頬側を延びる先と舌側を延びる先どうしが、頂部境界部waによって結ばれている。本実施の形態における部分義歯10は、実施の形態2の部分義歯10と同様に、図16に示すように金属部材はワイヤw,waだけであり、金属連結帯50などは用いていない。このため製作は簡単であり、かつ軽量である。製作方法については、実施の形態2で述べた方法が、そのまま当てはまる。
ワイヤに裸の頂部境界部waがあるとき、その露出する部分は、鉤歯等L4,L3の頂面と同レベルの高さとなる頂部を持ち、その同レベル高さの頂部が鉤歯L4とその隣の歯L3との間の溝部分に部分的に納まるようになる。この場合、装着したとき、その頂部境界部waは、鉤歯K4とその隣の歯L3との頂部の境界の隙間で、頬側と舌側との間に延在することになる。すなわち、歯牙の厚み方向もしくは奥行方向に沿うように位置することになる。これによって、部分義歯10が咬合などによって沈み込むのを防止することもできる。旧来、咬合圧による沈下防止にレストなどを設けていたが、レストは自立歯にレスト穽(か)を設けるが、その際に生活歯の場合、神経を除去する可能性もある。このためその自立歯の耐久性を著しく損なうことになる。ワイヤは強じんで固く滑らかで、何よりも細く円形断面なので、鉤歯とその隣の歯との間に少しの間隙があれば、かみ合わせ調整を大きく変更することなく簡単に、配置することができる。これによって咬合圧による沈み込みを非常に簡単な機構で防止することができる。歯牙L3,L4の頂部の面の縁は丸みを帯びており隣接する歯牙の頂部の間には、ワイヤが部分的に納まる程度の溝ができやすい。自然にできる溝だけの場合もあるし、少しのエナメル質を削合する場合もある。これによって、上記支持作用(咬合圧による沈み込み防止)の向上だけでなくワイヤによる把持力(横ずれ防止)などを向上させることができる。このような作用を得るためには、ワイヤの固さが高いことが必要であり、線引き加工によって加工硬化した歯科用ワイヤは適している。ワイヤwによって補強されたスペース形成湾曲部35hが鉤歯Q(L4)の豊隆部根元側に面接触して高い維持作用と把持作用を確保できることなどは、実施の形態2と同様である。
本実施の形態の部分義歯10は、実施の形態2の部分義歯10と類似した形態であるため、装着の仕方も同じように思えるが、頂部境界部waがあるため微妙に相違する。本実施の形態の部分義歯10では、頂部境界部waを歯牙L3とL4の頂部境界にしっかり配置して、遠心側のL5〜L7を顎堤に当てながら嵌合部Kを重点に全体を鉤歯Q(L4)に押してパチンというまで押し込むのがよい。使用に慣れれば容易に可能な応用範囲の動作である。
(実施の形態3の変形例)
図17は、実施の形態3の変形例の部分義歯10を示す図である。図17に示す部分義歯10は、義歯床35を鉤歯Q(L4)の隣の歯L3の付近で終端させないで、残存歯R3,R4,R5の根元あたりまで延ばしている。この延ばされた義歯床35は残存歯R3,R4,R5の歯頸部付近に水平方向にあてがわれるように嵌合している。いわば義歯床35の側端の凹部が、残存歯R3,R4,R5を鉤歯としている。装着の際、嵌合部Kを鉤歯L4の上で位置合わせをしておき、義歯床35の側端の凹部を残存歯R3,R4,R5の歯頸部付近に水平方向にあてがって嵌合した状態で、嵌合部Kを鉤歯L4に押し込むことで、パチンと装着が実現される。義歯床35の側端部における3つの凹部を嵌合体とみれば、この部分がキーとなり、嵌合部Kがロックとなる。このような構造によって、装着のしっかり感を得ることが可能となる。
(実施の形態4)
図18〜図27は、実施の形態4における部分義歯10を説明するための図である。図18は下顎において3本の残存歯L3,R3,R4が残る、11歯欠損の口腔の石膏模型Mである。残存歯L3,R3,R4にはいずれも豊隆部Zがあって外側とくに頬側に膨出している。これらの残存歯は、顎堤粘膜M5の峰部に立っている。図19は、2つの嵌合部K,K1をもつ部分義歯10を装着した状態を示す図である。残存歯L3を鉤歯Qとする嵌合部Kには、ワイヤwが配置されていて、頬側の上から見るとワイヤwが露出しているように見えるが、ワイヤwの根元側の断面周の一部分がレジンに埋め込められていて、スペース形成湾曲部35hのレジンを介在させて鉤歯Q(L3)の頬側の側面に面している。すなわちレジンを介在させて鉤歯Q(L3)に嵌合力を及ぼしている。嵌合部Kにおいて鉤歯Q(L3)の頬側の義歯床35(スペース形成湾曲35hの頬側)は、谷状に根元側に落ち込んでいて、その上縁に沿ってワイヤwがJ字またはV字形に配置されている。頬側の上方から見るとこのJ字形のワイヤwには金属光沢が見えるが、しかし、スペース形成湾曲部35hの内側から見るとワイヤwは薄いレジンを介在させて鉤歯Q(L3)の頬側面に面していることが分かる。もう1つの嵌合部K1にはワイヤは配置されておらず、図示していない鋳造された凹面形成金属アームが鉤歯Q(R3、R4)の豊隆部の根元側で嵌合力を及ぼしている。嵌合部K1では、鉤歯Qが連続する2本の残存歯R3,R4で形成されている。鉤歯Qとする残存歯の歯牙の状態が1本だけでは不安の場合、もしくは部分義歯全体の装着の安定性などを重視する場合、本実施の形態のように連続する2本で鉤歯Qを構成するのがよい。鉤歯Qが2本以上でも、本実施の形態に示すように、鉤歯Qが1本であると考えて製作が可能となる。それは、装着の際、嵌合の形成において、嵌合部K1を水平方向に鉤歯Q(R3、R4)の歯頸部にあてがっておき、その後、嵌合部Kを鉤歯Q(L2)の上から押し込んでカチンとする操作をするので、嵌合部K1の鉤歯Qが1本でも2本でも大差がないからである。
図20は、部分義歯10を図19と同じ方向から見た図である。嵌合部Kでは、義歯床35に、鉤歯Q(L3)を貫通させる孔もしくはスペース形成湾曲部35hが設けられ、スペース形成湾曲部35hに囲まれたスペースSを鉤歯Q(L3)が通り抜ける。ワイヤwは、上記したとおり嵌合部Kを頬側の上方から見たときには金属光沢が見られるが、部分義歯10を持ち上げて下方からスペース形成湾曲部35をスペースSの側から見ると同じ部分のワイヤwはレジン越しに透けて見えるだけであり、スペースSに面する部分で金属光沢が見えている部分はなく、とくにJ字状のワイヤwの断面周の根元側では確実に厚みをもってレジンが介在している。すなわち嵌合部KのJ字形のワイヤwは、スペースSに面する横断面の外周部分については、レジンが配置されているが、横断面の頬側頂部の外周の部分にはレジンは配置されていない。ワイヤwとレジンの配置のこのような形態において、ワイヤwは、断面周の頬側頂部で金属光沢が出ている部分、および他のレジンに埋設されている部分、合わせて全体でスペース形成湾曲部35hの補強材として機能する。これによって、ワイヤwとスペース形成湾曲部35hのレジンとは、鉤歯Q(L3)の頬側の側面に面状に接触して大きな嵌合力を発揮することができる。裸のワイヤだけが鉤歯の側面に接する場合、線状の接触となるが、ワイヤwとスペース形成湾曲部35のレジンとが協働することで面状の接触が実現するため、大きな嵌合力が生まれる。図21は、図20における嵌合部Kの拡大図である。スペース形成湾曲部35hには、金属連結帯の枝部51が凹面に沿うように配置されていて鉤歯Qに面接触する金属面15が形成されている。この金属面15はレジンの表面に露出していてもよいし、少しレジンに被覆されていてもよい。
図20において、嵌合部K1は、上記のように鉤歯Qには2本の残存歯R3,R4を用いる。この鉤歯Q(R3,R4)には、その豊隆部の根元側に鋳造された凹面形成金属アーム11があてがわれるように嵌合する。図22は、図20に示す嵌合部K1を頬側からやや見上げるように描いた図である。嵌合部K1には、2本の残存歯R3,R4に対応して義歯床35の凹部35kが設けられ、それぞれに凹面形成金属アーム11が配置されている。これら凹面形成金属アーム11は、鉤歯Qのそれぞれの豊隆部根元側にあてがわれるように凹部35kに配置されている。これら凹面形成金属アーム11は、金属連結帯50の枝部51から連続してC字状に延びるように形成されている。
図20に示す部分義歯10を、図19に示すように装着するには、次のように行う。嵌合部K1では2本の鉤歯R3,R4に、連続する2つの凹部35kを、大略、位置合わせしておく。連続する2つの凹部35kはダブルC字状の凹曲面を呈する。このK1の位置合わせは歯牙の頂部から少し押す感じで入れ込んで、止めておく。この動きにフォローする感じで嵌合部Kの位置を対応する鉤歯Q(L3)に上方から(残存歯の頂部から)合わせて、嵌合部KのスペースSに鉤歯Q(L3)を通しながら、念を押す感じで部分義歯全体を最後までカチンというまで押し付ける。これによってきわめて簡単かつ紛れなく装着を行うことができる。離脱は、設計された離脱方向に、部分義歯全体に一定時間、力を加えることで最初に嵌合部Kを抜き、ほぼ同時に嵌合部K1を外す感覚で抜くことができる。咬合時の離脱しにくさは、ワイヤが配置された嵌合部Kにおいては上記(e1)と(e2)の力で保持され、また嵌合部K1においては凹面形成金属アーム11が鉤歯Q(R3,R4)の豊隆部根元側にあてがわれるように嵌合する作用によって確保される。
図23は、図20に示す部分義歯10を、前歯側からやや見上げて、義歯床35の裏面35gが見えるようにして描いた図である。この図より、金属連結帯50が用いられ、その枝部51がワイヤwや凹面形成金属アーム11の固定に活用されていることが分かる。凹面形成金属アーム11は、金属連結帯50,51と一体鋳造によって形成されている。義歯床裏面35gに見える点状面50aは、金属連結帯50,51等を鋳造するときにできた湯道痕である。図24は、この部分義歯10に用いられている金属部材Gを示す図である。金属連結帯50とそこから突き出る枝部51、その枝部51から延びるように2つの凹面形成金属アーム11が形成されている。2つの凹面形成金属アーム11は、鉤歯Qを構成する2つの残存歯R3,R4の豊隆部根元側にあてがわれるように嵌合する。ワイヤwは、頬側でJ字またはV字となる部分が形成され、枝部51にその一端が連結されている。他方の端は鉤歯Q(L3)の隣の歯L2の下を通って別の枝部51に接続されている。
本実施の形態の部分義歯10の特徴は次の点にある。2つの嵌合部K,K1が設けられ、嵌合部Kではスペース形成湾曲部35hの頬側が谷状に根元に落ち込み、ワイヤwがその上縁に沿ってJ字もしくはV字形に配置されている。ワイヤwは、断面周の頬側上方が露出しているが鉤歯の面する周部分はレジンに被覆されている。レジンに完全に埋設されているワイヤの部分も存在し、これら部分と合わせて補強材として機能することで、ワイヤwとスペース形成湾曲部35hのレジンとは鉤歯Q(L3)の豊隆部根元側において頬側側面に面接触して、大きな嵌合力を確保している。一方、嵌合部K1では、2本の残存歯R3,R4を鉤歯Qとしてそれぞれに凹面湾曲形成アーム11があてがわれるように嵌合する。嵌合部K1の装置は大きなものであり、この嵌合部K1に関する限り、製作は従来の方法と同様であり、重量についても同様と考えられる。
本実施の形態の部分義歯10の製作方法は、実施の形態1の部分義歯10の製作方法と同じである。すなわち、ストッパー50d付きの金属連結帯50,その枝部51および凹面形成金属アーム11を一体鋳造して形成し、その枝部51にワイヤwの両端を固定して製作しておく。これを石膏模型に配置して、義歯床35となる部分を蝋またはワックスで、上記の金属部材Gを含むように積層し、そのあと加熱して蝋等を流し出して、モチ状のレジンを填入して固化するという方法である。
(実施の形態5)
図25〜図30は、実施の形態5における上顎に用いる部分義歯10を説明するための図である。残存歯は4歯R6,R7、L6,L7である。図26に示すように、部分義歯10は2つの嵌合部K,K1を有しており、ワイヤ(図示せず)が配置された嵌合部Kは残存歯R6を鉤歯Qとし、ワイヤが配置されていない嵌合部K1は残存歯L6を鉤歯Qとしている。図27は、部分義歯10を図26と同じ方向から見た図である。また、図28は、同じ方向から見た金属部材G(樹脂を除いた残り)を示す図である。
嵌合部Kでは、義歯床35に、鉤歯Q(R6)を貫通させるスペース形成湾曲部35hもしくは孔が設けられ、スペース形成湾曲部35hに囲まれたスペースSを鉤歯Q(R6)が通り抜ける。ワイヤwはすべての部分がスペース形成湾曲部35hのレジン内に含まれている。このワイヤwは、金属連結帯50から出た枝部51に固定されている(詳細な配置はこのあと説明する)。嵌合部Kでは、ワイヤwを補強材としてスペース形成湾曲部35hのレジンが鉤歯Q(R6)の豊隆部根元側に面接触した状態で嵌合する。このため、ワイヤwという簡単明瞭な汎用性の高い金属部材を含むだけで、非常に高い維持力および把持力を得ることができる。
嵌合部K1では、左右の凹面形成金属アーム11が鉤歯Q(L6)の豊隆部の根元側にあてがわれるように嵌合する。凹面形成金属アーム11は、両方とも、金属連結帯50から分かれて延びる枝部51に連続して形成されている。図28から見てとれるように、金属連結帯50および枝部51と、凹面形成金属アーム11とは、一体的に鋳造で製作されている。用いる合金は、上述のとおり歯科用に用いられる鋳造合金であれば何でもよいが、とくに白金加金が好ましい。嵌合部Kにおけるワイヤwは、図29に示すように、枝部51に固定されている。図29(a)は図28と同じ方向から見た図であり、(b)は上下を逆にしてみた図である。図29(a)によれば、舌側のワイヤwは、一方の端は枝部51に固定され、他方の端は金属連結帯50に固定されている。また、頬側のワイヤwは、一方の端は枝部51に固定されているが、他方の端は固定されていないで、スペース形成湾曲部35hの樹脂中に浮いている。
図30に嵌合部K1の凹面形成金属アーム11を示す。図29(a)は図28と同じ方向から見た図であり、(b)は上下を逆にしてみた図である。この図より、凹面形成金属アーム11および金属連結帯50、その枝部51は、一体鋳造で製造するのがよいことが分かる。すなわち、凹面形成金属アーム11および金属連結帯50、その枝部51は、石膏模型M上に、ろう材などによって精密に完成時の形状を形成し、その全体を石膏などで固めた上で加熱して湯道からろう材を流し出して、そこに溶けた合金を鋳込んで固めることで形成される。製作された(凹面形成金属アーム11および金属連結帯50、その枝部51)の嵌合部Kに対応する枝部51に、嵌合部Kに合わせた形状に加工したワイヤwを図29に示すように固定する。このワイヤwを含む金属部材Gを、石膏模型M上に配置して、義歯床35に相当する形状をろう材で形成し、その際に金属部材Gをろう材内に含まれるようにする。次いで、そのろう材上に人工歯5を植設する。このあと、全体を石膏で固めて加熱して湯道からろう材を流し出して、モチ状の樹脂を填入して固化させれば、おおよその部分義歯10が準備される。このあとは患者の口腔内での調整が行われる。
本実施の形態の部分義歯10では、嵌合部K1の凹面形成金属アーム11を鉤歯Q(L6)の最終位置に、舌側から頬側へと移動させ、あてがうように配置しておき(このとき嵌合部Kは鉤歯Q(R6)の上方にきている)、嵌合部K1をずらし支点として、嵌合部Kを含む全体を鉤歯Q(R6)にカチンというまで押し込むことで装着が達成される。嵌合部K1は、嵌合部Kを重点に全体と一緒に押し込むときに、鉤歯Q(L6)への接触位置が変わるので、支点といっても機械装置における支点とは同列に考えることはできない。このためずらし支点と呼んでいる。
(実施の形態6)
図31〜図36は、実施の形態6における部分義歯10を説明するための図である。図31は下顎において3本の残存歯R3,R4,L3が残る、11歯欠損の口腔の石膏模型Mである。いずれの残存歯にも豊隆部があって外側に膨出している。図32は、これらの残存歯を鉤歯Qとして2つの嵌合部K,K1に嵌合されることで装着された部分義歯10を示す図である。ワイヤwが配置された嵌合部Kにおける鉤歯Qには、連続する2本の残存歯R3,R4が用いられている。歯牙の状態によっては連続する2本の歯牙を鉤歯Qとするほうが安定性、耐久性に優れるが、ワイヤwなどの維持装置の構造は少し複雑になる。
図33は、部分義歯10を示す図であり、図34は嵌合部Kの拡大図である。嵌合部Kでは、連続した2本の残存歯R3,R4を鉤歯Qとするため、鉤歯を通すスペースSは、中心がずれた2つの孔がつながった形状となり、スペース形成湾曲部35hおよびワイヤwの全体の形状もそれに合わせた形状になっている。すなわちワイヤwは、頬側ではc字体が2つ繋がったw字状となっている。また、頬側においてワイヤwは、上方から見て金属光沢を発している。しかし、部分義歯10を持ち上げて下方からスペースSの側からスペース形成湾曲部35hの頬側のワイヤwを見ると金属光沢は見えず、ワイヤwの根元側で樹脂がスペースSの側にせり出している。また、嵌合部Kの舌側では、ワイヤwは残存歯R4の舌側のみに沿って残存歯R4の周りで終端していて、残存歯R3のまわりまで延びていない。その終端した位置ではワイヤwは義歯床内に位置している。この部分義歯10では金属連結帯50が用いられ、ワイヤwは、頬側に延びる部分も舌側に延びる部分も、人工歯5(R5)の近心側に金属連結帯50から立つように延びる枝部51に固定されている。ワイヤwの舌側の端は義歯床35内に終端しているが、頬側のワイヤwは連続する2本の鉤歯R4,R3に沿うようにw字状に延在して、その端は、金属連結帯50から延び出す枝部51(人工歯5(R2)人工歯(R1)との間で延び出している)に固定されている。図36は、この部分義歯10における金属部材Gを示す図である。図36を参照することで、この各金属部材間の接続関係が明瞭になる。
図35(a)は、嵌合部K1を図33と同じ方向から見た図である。嵌合部K1では、左右2つの凹面形成金属アーム11が金属連結帯50の2つの枝部51にそれぞれ連結される形で延び出している。また図35(b)は、嵌合部K1を前方から根元側を上にして(図35(a)と上下逆)見た図である。図36から分かるように、嵌合部K1の2つの凹面形成金属アーム11とストッパー50d付き金属連結帯50,51とは一体鋳造するのが、製作が簡単になり好ましい。一体鋳造された、金属連結帯50,51と凹面形成金属アーム11に対して、ワイヤwの頬側と舌側とを固定して、頬側については、2本の鉤歯R3,R4に沿うように加工して成形し、人工歯5(R2)の下側を通してその端を上記の枝部51に固定する。これらの製作工程は、実施の形態1に説明した方法によればよい。
装着時には、嵌合部K1を嵌め合わせてずらし支点とする感覚で、嵌合部Kを重点に全体を2本の鉤歯R3,R4の上方からカチンというまで押し込むようにする。嵌合部Kでは、スペース形成湾曲部35hを介在させてワイヤwが2本の鉤歯R3,R4に面しているので、嵌合によってワイヤwを補強材としてスペース形成湾曲部35hのレジンが面状に豊隆部を含む根元側を抱えるように接するので、大きな嵌合力もしくは維持力および把持力を発揮することができる。また、大きな維持力を得ることができる一方、嵌合部Kは、ワイヤwを含むスペース形成湾曲部35hで構成されているので、軽量で、弾力に富み強じんなので、脱着が容易で、高い耐久性を確保することができる。耐久性の高さは、歯科用ワイヤwは表面が滑らかであり、鋳造部品にように凹凸が生じないことに起因している。
(実施の形態7)
図37〜図41は、実施の形態7における部分義歯を説明するための図である。図37は下顎において、残存歯L1〜5、R1〜7が残る、口腔の石膏模型Mである。左側の奥歯2歯L6、L7が欠損している2歯欠損の症例である。残存歯はすべて顎堤粘膜M5に峰部に沿って位置している。鉤歯Qとなる残存歯L5,L4,L3には豊隆部Z(図示せず)があって頬側に膨出している。この部分義歯10では、異なる2種類の嵌合部K,K1が連続して位置する点に特徴がある。図38は2つの嵌合部KとK1とが連続して位置する部分義歯10を装着した状態を示す図である。ワイヤwが配置される嵌合部Kでは残存歯L5を鉤歯Qとし、また、ワイヤwが配置されない嵌合部K1では残存歯L4、L3を鉤歯Qとする。奥歯の2歯L6,L7の欠損なので、小ぶりの部分義歯10を実現する一方、嵌合状態を強力に維持するために、2つの嵌合部K,K1を連続して設けている。
図39は、図38と同じ方向から見た部分義歯10を示し、また図40はその部分義歯10を頬側のやや上方から見た図である。この部分義歯10では、実施の形態3の部分義歯10と同様に、嵌合部Kでは、鉤歯Q(L5)の周りの義歯床のスペース形成湾曲部35h内にワイヤwが埋設されていて、スペースSは義歯床35に設けたスペース形成湾曲部35hで囲まれているが、このスペース形成湾曲部35hは義歯床35に設けた孔ではない。頂部境界部waによって、義歯床の、頬側の先と舌側の途中とが結ばれていて、義歯床35には孔は設けられていない。裸の頂部境界部waがあるとき、その露出する部分は、嵌合部Kの鉤歯L5とその隣の歯牙L4の頂面と同レベルの高さとなる頂部を持ち、その同レベル高さの頂部が鉤歯L5とその隣の歯L4との間の溝部分に部分的に納まるようになる。この場合、装着したとき、その頂部境界部waは、鉤歯L5とその隣の歯L4との頂部の境界の隙間で、頬側と舌側との間に延在する。これによって、部分義歯10が咬合などによって沈み込むのを防止する作用を得ることができ、結果的に支持作用の向上につながる。
嵌合部K1は、金属部材が少し複雑な構成となっている。嵌合部K1では、鉤歯Qが2本の残存歯L4,L3から構成され、残存歯L4の根元側に嵌合する凹面形成金属アーム11と、そこから先の残存歯L3の根元側に嵌合する凹面形成金属アーム13とが形成されている。両方の凹面形成金属アーム11,13の間にくさび状の稜線17が自然に生じ、その頂面側に丸みをおびた凸面12が形成されている。このくさび状の稜線17およびその目印としての凸面12は、装着の際、まず、くさび状稜線17を残存歯L4,L3の舌側の間に入り込ませ、装着の際のキーの機能を、正確に発揮させるための部分である。この部位において嵌合部K1に2つの鉤歯L4,L3を含ませた理由は、この正確なキーの作用を得るためである。また、このくさび状の稜線17とその上方の凸面12とは、結果的に、部分義歯10の把持力を大きく向上させる。当然のことながらくさび状の稜線17とその上方の凸面12とは、裸のワイヤからなる頂部境界部waの支持作用の向上をさらに高めることになる。旧来、咬合圧による沈下防止にレストなどを設けていた。レストは自立歯にレスト穽(か)を設けるが、その自立歯が生活歯の場合、最悪の場合、神経除去の可能性がある。仮に神経除去をした場合、その自立歯の耐久性は著しく損なわれることになる。残存歯L4,L3の頬側面の間の上方に位置する凸面12を含む部分は、残存歯L4,L3になんら加工を加えることなく、咬合圧による部分義歯10の沈み込みも防ぐことができる。すなわち上記のくさび状の稜線17、凸面12等の個所の主目的は、上記したように、正確なキーの役割を果たすことにあるが、補助的に咬合圧による沈み込みを防ぐことにも貢献する。
本実施の形態の部分義歯10を装着するときは、嵌合部K1をほぼ嵌め合わせておいてここをずれ支点のように思って、嵌合部Kを含む全体を鉤歯Q(L5)の頂部側からカチリというまで押し込む。製作方法については、ストッパー50d付き金属連結帯50,51と嵌合部K1の凹面形成金属アーム11,13とその周り12,17を一体鋳造するので、実施の形態1と同様の方法で製作することができる。
(実施の形態8)
図42〜図45は、実施の形態8における部分義歯を説明するための図である。図42は舌側から見た石膏模型の前歯の部分を示す図である。前歯右1番(R1)と左2番(L2)が欠損している。図43(a)は、部分義歯10を装着した状態を舌側から見た図であり、図43(b)は同じ状態を頬側(前側)から見た図である。ワイヤwが配置された嵌合部Kは鉤歯QをL1とし、嵌合部K1、K2は、それぞれ嵌合部Kの左と右とに位置している。嵌合部K1は鉤歯Q(L3)を有し、嵌合部K2は鉤歯Q(R2)を有している。このあと示すように、嵌合部K1は凹面湾曲アーム11を左右に持つ。嵌合部K2では義歯床35が湾曲した凹部35kが鉤歯Q(R2)根元部に近心側からあてがわれ、かつ金属連結帯50の枝部51がその湾曲面に沿う金属面15を形成する形で鉤歯Q(R2)に嵌合する。
図44(a)は、部分義歯10を図43(a)と同じ方向から見た図であり、図44(b)は同じものを図43(b)と同じ方向から見た図である。ワイヤwが配置された嵌合部Kでは、スペース形成湾曲部35hは義歯床35に開けられた孔であり、スペースSの周囲のスペース形成湾曲部35hの壁内にワイヤwが埋設されている。図45(a)は図44(a)と同じ方向から見た金属部材Gを示す図であり、図45(b)は図44(b)と同じ方向から見た金属部材Gの図である。嵌合部Kのワイヤw、嵌合部K1の左右の凹面形成金属アーム11、嵌合部K2の枝部51における湾曲した凹部35に沿う面15、が小さい空間に集積されている。
本実施の形態における部分義歯10は、差し歯的な小型をきわめた部分義歯10である。この中で、鉤歯Q(L1)にスペース形成湾曲部35hのレジンを介在させて面するワイヤwは、鉤歯Q(L1)の豊隆部を含む根元側に、ワイヤwを補強材としてスペース形成湾曲部35hのレジンが協働して面接触して嵌合することで、大きな維持力を得ることができる。また嵌合部Kの左右の嵌合部K1、K2も、それぞれ鉤歯Q(L3)および鉤歯Q(R2)の根元部に嵌合して、維持力の向上に寄与している。この部分義歯10の装着は、上方から、鉤歯Q(L1)に嵌合部Kを合わせて、また鉤歯Q(L3)に嵌合部K1を、また鉤歯Q(R2)に嵌合部K2を、合わせて、カチンというまで差し込むことで実現する。製作方法については、ストッパー50d付き金属連結帯50,51と凹面形成金属アーム11からなる金属部材を予め作製しておき、そこに加工したワイヤwを固定した上で、義歯床35を作製する、実施の形態1と同じ方法に従えばよい。
<この部分義歯の歴史上の意義>
(1)上記の部分義歯は、患者による装着感の快適性、装着・離脱のしやすさ、および、製作のしやすさを求めて、素材である樹脂および金属の形態を追求した結果、生まれた。この部分義歯は、樹脂によって鉤歯に嵌合するスペース形成湾曲部を形成し、そのスペース形成湾曲部の補強材として歯科用の汎用金属ワイヤ(伸線加工されたワイヤ)を用いた点に特徴がある。この部分義歯の出発点は、鉤歯の根元側に、あてがわれるように嵌め合わせるC字状金属アームによる維持力確保を、樹脂によるスペース形成湾曲部とそこに内蔵されるワイヤに置き換えるという発想である。この発想のもとになる、あてがわれるように嵌め合わせるC字状金属アームによる維持力確保は、すでに説明したように、この部分義歯の発明者が開拓した技術である。知らない者が、表面的に見れば、審美性を重視した樹脂のみのノンクラスプデンチャーの短所(ウィング等が大型になる、重い、装着感が悪い、離脱しやすい(維持力が小さい))を補いながら、ノンクラスプデンチャーと同等の簡単な製作工程で製作できる部分義歯であるというかもしれない。しかし、この部分義歯において、鉤歯の歯頸部にあてがわれるように嵌合されている嵌合部による維持力確保という基本は不変である。スペース形成湾曲部は、装着時には、軌跡としては、水平に最初からあてがうように鉤歯豊隆部の根元側に嵌合される軌跡をとることは稀である(ほとんど無い)が、装着した後の状態は、あてがわれるように鉤歯豊隆部の根元側に嵌合している状態となる。この点だけから見ても、本部分義歯はノンクラスプデンチャーとは考え方の根柢が異なる。ノンクラスプデンチャーは、金属光沢を発する金属製のクラスプを嫌って樹脂だけで(大振りの嵌合部+義歯床)を形成し、不足する維持力や把持力を少しでも増やそうとして歯肉にまで樹脂製ウィングを被せるような形態をとる。鉤歯に対しても頂部を出してあとはすっぽり樹脂製の大振り嵌合部で覆う形態をとる。本部分義歯では、嵌合は、ワイヤが配置された嵌合部でも、凹面形成金属アーム(C字状金属アーム)が配置された嵌合でも、嵌合は、鉤歯の歯頸部に限定される。鉤歯の歯頸部にのみ嵌合することで、十分高い、維持作用、把持作用、支持作用を得ることができるように形成されている。この鉤歯の歯頸部のみへの嵌合によって快適な装着状態が保たれる。したがってノンクラスプデンチャーは本部分義歯とは異質のものであり、比較することは、無意味であるといえる。
(2)上述したようにこの部分義歯の出発点は、鉤歯の根元側に、あてがわれるように嵌め合わせる鋳造製のC字状金属アームの嵌合による維持力確保という考え方である。これに対して、この部分義歯は、ワイヤで補強した十分な強度をもつ、樹脂を填入することで成形されたスペース形成湾曲部を備える。スペース形成湾曲部の素材を樹脂(ワイヤを補強材として含むがそれ以外の素材は樹脂)とすることで、樹脂は弾性に富み、ワイヤも線に沿った方向以外には弾性に富むため、装着・離脱(嵌合・脱嵌合)の際の嵌合部の軌跡として、鋳造製のC字状アームでは特別な場合以外は不可能であった歯軸に沿う方向の軌跡、をも含めることが可能になった。この結果、この部分義歯の設計の自由度は大きく拡大することになった。繰り返しになるが、スペース形成湾曲部は、装着時には、軌跡としては、上記したように、鉤歯の歯軸に沿って上下方向に移動して嵌合することが可能であるが、装着した後の状態は、あてがわれるように鉤歯豊隆部の根元側に嵌合している状態となる。
(3)患者の歯牙の状態に応じて、金属連結帯や凹面形成金属アームなどの鋳造された金属部材と併用して、ワイヤが内蔵された嵌合部Kを配置できることも、実施の形態において数多く示した通りであり、患者にとって好ましいことである(多様性の確保)。
<ワイヤが配置された嵌合部の特徴>
(1)裸のワイヤがそれだけで鉤歯に線接触して嵌合する場合に比べて、ワイヤをスペース形成湾曲部の樹脂内に配置して補強材としたうえで、スペース形成湾曲部を鉤歯豊隆部の根元側に面接触させることによって、格段に維持力および把持力を向上させることができる。装着感についても、ワイヤは、細く、軽いので、部分義歯をかさばらないように、かつ軽量化できる。このため装着感の向上に非常に大きく貢献する。装着・離脱も、ワイヤは鋳造された金属でなく弾力に富むので、適正な手順を踏めば、非常に容易である。
(2)ワイヤを配置する嵌合体のみで部分義歯が形成される場合、製作工程は画期的に簡単化される。金属部材を維持装置に含む部分義歯としては、究極的に簡単化された製作工程となる。製作工程の簡単化という観点からも、ワイヤは究極の金属素材である(「装着安定性、装着快適性、装着・離脱のしやすさ」に資するだけではなく)。
(3)本部分義歯のリベース処理による調整おいて、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)に対して存分にリベース処理を行うことができる。鋳造されたC字状金属アームは、鋳造によって鉤歯の歯頸部に形状を合わせた帯状面を有するが、その帯状面の調整はほとんど不可能である(もちろん鋳造された金属以外の樹脂部はリベース処理を自由に行うことができるが)。しかし、本部分義歯では、鉤歯の歯頸部に嵌合する部分(嵌合の中心をなす部分)に対して、他の樹脂部分を含めて、制約を受けずに加厚や減肉、曲面の形状変更等、が可能であり、調整の幅を大きく向上させることができる。
本発明によれば、脱着が容易であって、安定した装着状態、簡単な製作工程、軽量化、を実現した部分義歯を得ることができる。とくに付言すれば、樹脂によって鉤歯と面接触するスペース形成湾曲部を形成し、そのスペース形成湾曲部を補強する金属素材をワイヤとした結果、得られたものであり、これまでの部分義歯の短所を克服した画期的な部分義歯であるといえる。
10 部分義歯、11 凹面形成金属アーム、12 凸面、13 連続する凹面形成金属アームにおける第2の凹面形成金属アーム、15 金属連結帯の枝部に設けた金属面、17 凹面形成金属アーム境界のくさび状稜、35 義歯床、35g 義歯床の底面(裏面)、35h 義歯床のスペース形成湾曲部、35k ワイヤが配置されない嵌合部における凹部、50 金属連結帯、51 金属連結帯の枝部、51h 枝部に設けられた窓、50d ストッパー、部分義歯内の金属部品、K ワイヤが配置された嵌合部、K1,K2 ワイヤが配置されず凹面形成金属アームが配置された嵌合部、M 患者の口腔の石膏模型、M5 顎堤(粘膜)、Q 鉤歯、S 嵌合部で鉤歯を貫通させる(収容する)スペース、w ワイヤ、wa ワイヤの頂部境界部(裸の部分)、Z 歯牙の豊隆部。

Claims (8)

  1. 義歯床と、人工歯と、鉤歯に嵌合する嵌合部とを備え、該嵌合部は1つまたは2つ以上の鉤歯に嵌合するものであり、その嵌合部が1つまたは複数存在する、部分義歯であって、
    少なくとも1つの前記嵌合部において、
    前記義歯床に、前記鉤歯を納めるための抜けたスペースを形成するように湾曲したスペース形成湾曲部が設けられ、前記スペース形成湾曲部には伸線加工された金属のワイヤが配置され、
    前記ワイヤは、前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に対して、前記スペース形成湾曲部の樹脂(レジン)を介在させて、もしくは、該ワイヤ横断面の外周の少なくとも一部分を該樹脂(レジン)に被覆されて、位置していて、
    前記鉤歯の側面もしくは前記スペースの側面に対して裸で接する部分がないこと、を特徴とする部分義歯。
  2. 前記ワイヤは、前記鉤歯側面において前記スペース形成湾曲部の樹脂中に内蔵されているか、または前記スペース形成湾曲部の頬側の上縁が谷状に歯牙根元側に落ち込んでいてその上縁に沿って部分的に露出して位置していることを特徴とする請求項1に記載の部分義歯。
  3. 前記ワイヤは、前記スペース形成湾曲部において、少なくとも頬側では、V字状、U字状またはJ字状の形状をなすことを特徴とする、請求項1または2に記載の部分義歯。
  4. 前記ワイヤには、前記鉤歯と該鉤歯の隣の歯牙との頂部の境界をわたる、裸の頂部境界部が含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の部分義歯。
  5. 前記部分義歯の義歯床には金属連結帯が埋設され、前記ワイヤは、該金属連結帯に、端もしくは途中が固定されているか、または固定関係がない、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の部分義歯。
  6. 前記嵌合部が複数存在して、前記ワイヤが配置されていない嵌合部が存在する場合において、該嵌合部における前記義歯床には前記鉤歯に嵌合するための凹部が設けられ該凹部に鋳造された凹面形成金属アームが配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部分義歯。
  7. 前記凹面形成金属アームは、前記金属連結帯と一体鋳造されて形成されたものであることを特徴とする、請求項6に記載の部分義歯。
  8. 前記ワイヤが配置される嵌合部のスペース形成湾曲部内、または前記ワイヤが配置されていない嵌合部の凹部内、において、前記金属連結帯の枝部に、前記鉤歯の外面に沿うような金属面が設けられている、ことを特徴とする請求項6または7に記載の部分義歯。
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