JP3106082B2 - インクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットヘッド

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JP3106082B2
JP3106082B2 JP2767595A JP2767595A JP3106082B2 JP 3106082 B2 JP3106082 B2 JP 3106082B2 JP 2767595 A JP2767595 A JP 2767595A JP 2767595 A JP2767595 A JP 2767595A JP 3106082 B2 JP3106082 B2 JP 3106082B2
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文人 小松
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、連続的に噴出されたイ
ンクを切断してインク滴を形成し、このインク滴の飛跡
を制御して印字を行う連続噴射式のインクジェットヘッ
ドに関する。
【0002】
【従来の技術】連続噴射式インクジェットヘッドは、従
来、図11に示すように、加圧したインクをノズル10
1から連続的に噴出させ、これに超音波振動を与えて粒
子化する一方、このインク滴102を荷電電極103で
帯電させてから偏向電極104においてインクの飛跡を
制御し、必要なインク滴を紙面に付着させる方式のもの
が一般的である。この荷電量制御形におけるインク滴の
発生方法としてはピエゾ素子などの電歪素子を用いた加
圧振動型が一般的である。尚、図中の符号105はガタ
ー、106は記録紙である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このピ
エゾ素子を用いた連続噴射式インクジェットヘッドは、
振動音の発生や吐出圧力の不均一性が問題となることが
ある。特に、ヘッドを動かさずに紙などの記録媒体の全
幅に一度に印字可能なフルライン型のヘッドを構成しよ
うとする場合、紙幅に相当する大きさの圧電振動子を必
要とするため、振動音が無視できない程度に大きくなり
騒音と成りかねない問題を含んでいる上に、吐出圧力の
不均一性の影響も大きくなり無視できなくなる虞があ
る。このため、従来の連続噴射式インクジェットヘッド
では、フルライン型ヘッドの実現が難しく、ヘッドを紙
幅方向に往復運動させる分だけ印刷速度を速くできない
問題を有している。
【0004】また、他の印字方式、例えばバブルジェッ
ト型のヘッドによってフルライン型ヘッドを構成する場
合においても、ヘッド幅が広くなるほど発熱体の耐久性
やバブル発生の信頼性が低くなり、歩留まりが悪くなる
問題がある。
【0005】一方、インクジェットヘッドを製造する場
合、特に回転ドラムの熱膨張を防いで常に正確な印刷を
確保する必要があるが、このときであっても製造コスト
の上昇を抑える必要がある。また、ハウジングの形状
を、種々の部材を取り付け易いものにしたいとの要請も
ある。
【0006】本発明は、上述の各問題点を解決するため
になされたもので、インク滴を形成する上で信頼性が高
く且つ騒音などの発生の虞も少ない連続噴射式のインク
ジェットヘッドを提供することを目的とする。また、熱
膨張に起因して印刷文字が変形するのを防止すると共
に、回転ドラムの製造コストを低減してインクジェット
ヘッドの製造コストを抑えることができ、さらに、ハウ
ジングに部材を取り付け易い連続噴射式のインクジェッ
トヘッドを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明は、ハウジング内に回転ドラムを
収容すると共に、該回転ドラムの外周面に螺旋状に並ん
で設けられた複数のインク噴出孔から当該回転ドラム内
のインクを遠心力により糸状に連続噴出させ、ハウジン
グに設けられたスリット機構に噴出インクの一部を通過
させて記録媒体に向けて進むインク滴を次々に形成し、
当該インク滴の飛跡を制御して記録に必要なインク滴を
記録媒体上に付着させると共に、記録に不要なインク滴
をガターで回収し再使用するインクジェットヘッドであ
って、回転ドラムは、外周面に内部空間に通じる螺旋状
溝が形成された円筒部材と、この円筒部材を被覆し、螺
旋状溝に通じる複数のインク噴出孔が形成されたノズル
パイプと、円筒部材内に配置されてこれと一体的に回転
し、円筒部材内に供給されたインクを遠心力で螺旋状溝
に移動させるドラムコアを備えて構成したものである。
【0008】また、請求項2記載の発明は、ハウジング
内に回転ドラムを収容すると共に、該回転ドラムの外周
面に螺旋状に並んで設けられた複数のインク噴出孔から
当該回転ドラム内のインクを遠心力により糸状に連続噴
出させ、ハウジングに設けられたスリット機構に噴出イ
ンクの一部を通過させて記録媒体に向けて進むインク滴
を次々に形成し、当該インク滴の飛跡を制御して記録に
必要なインク滴を記録媒体上に付着させると共に、記録
に不要なインク滴をガターで回収し再使用するインクジ
ェットヘッドであって、ハウジングを角パイプで形成し
たことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】したがって、請求項1記載のインクジェットヘ
ッドでは、回転ドラム内に供給されたインクがドラムコ
アに押されて高速回転し、その遠心力で径方向外側に勢
い良く移動して円筒部材の螺旋状溝に流入する。そし
て、この螺旋状溝に流入したインクは、円筒部材の高速
回転によって発生する遠心力でノズルパイプの各インク
噴出孔から糸状に連続的に噴射する。このインクは回転
ドラムの回転に伴ってこの回転方向へ移動するが、スリ
ット機構を横切る瞬間に、インクの流れの一部がスリッ
ト機構を通過してハウジングの外方に飛び出し、記録媒
体に向けて進むインク滴になる。一方、このインク滴以
外のインク、即ち、各インク噴出孔から噴出した大部分
のインクであってハウジングの内面に衝突したインク
は、記録に不要なインクとして回収され再使用される。
そして、記録媒体に向けて飛び出たインク滴は、帯電電
極による帯電と制御電極による制御によって必要に応じ
て偏向され、その飛跡が変えられる。そして、記録に不
要なインク滴はガターで回収され、記録に必要なインク
滴は記録媒体表面に付着する。
【0010】インクジェットヘッドを長時間作動し続け
ると回転ドラムの温度が上昇するが、ノズルパイプを熱
膨張し難い部材で形成することで印刷文字の変形防止が
図られ、また、円筒部材及びドラムコアを加工容易な部
材で形成することで回転ドラムの製造が容易になる。
【0011】また、請求項2記載のインクジェットヘッ
ドでは、ハウジングを角パイプで構成している。したが
って、他の構成部材、例えばスリット機構を開閉するア
クチュエータ等が簡単に取り付けられる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の構成を図面に示す実施例に基
づいて詳細に説明する。
【0013】図1及び図2は、本発明をフルライン型の
インクジェットヘッドとして構成した実施例を示す。こ
のインクジェットヘッド1は、インク滴発生部及びイン
ク滴制御部より構成されている。
【0014】インク滴発生部は、糸状に連続噴出するイ
ンクの流れを切断することにより記録媒体に向けて飛び
出るインク滴を発生させると共に、記録に不要なインク
を回収するもので、ハウジング2と、このハウジング2
内に回転自在に収容される回転ドラム3と、回転ドラム
3の下方に配置されるスリット機構4より構成されてい
る。
【0015】回転ドラム3は、ステンレス製の円筒部材
である厚肉パイプ5と、この厚肉パイプ5を被覆するノ
ズルパイプ6と、厚肉パイプ5内に収容されるドラムコ
ア7より構成されている。厚肉パイプ5の外周面には、
図3に示すように、螺旋状の溝5aが形成されている。
この螺旋状の溝(以下、螺旋溝と称す)5aと厚肉パイ
プ5の内部空間とは、径方向に穿孔される複数の連通孔
5bによって連通されている。この螺旋溝5aは、回転
ドラム3の1回転で1ピッチ分の印字、描画が可能とな
るように回転ドラム3の端から端まで連続して形成され
ている。
【0016】また、ノズルパイプ6としては、広がりの
無い細い糸状にインクを噴出できるインク噴出孔6aを
形成可能とするため、極薄例えば40ミクロン程度の厚
みのニッケル製パイプを採用している。そして、例えば
35ミクロン程度のインク噴出孔6aが所定ピッチ、例
えば、300DPI(ドット・パー・インチ)に相当す
る軸方向ピッチpで厚肉パイプ5の螺旋溝5aと同じリ
ードとなるように穿孔されている。このような構成のノ
ズルパイプ6は、例えば電鋳法によって製造され、レー
ザ加工などによって孔が開けられる。また、場合によっ
ては薄膜材を丸めて溶接し研削によってシーム部分を除
去するようにして得ることもできる。したがって、厚肉
パイプ5にノズルパイプ6を被せ、螺旋溝5aとインク
噴出孔6aとが一致するように位置決めしてから接着な
いし圧入などで固着することにより、厚肉パイプ5内の
インクを各インク噴出孔6aから噴出させることができ
る。なお、接着剤を使用してノズルパイプ6を厚肉パイ
プ5に固着する場合には、厚肉パイプ5の外周面に接着
剤だまり用溝5cを形成することが望ましい。
【0017】ドラムコア7は、円筒7aと、この円筒7
a内を放射状に画する隔壁7bと、各隔壁7b間を仕切
る仕切板7cより構成され、例えばアルミニウムを押し
出し加工することで製造される。各隔壁7bは、円筒7
a内を周方向に、例えば4つの空間に画している。そし
て、これら4つの空間の各々は、仕切板7cで更に2分
割されている。各仕切板7cは、円筒7aの内周面に形
成されている。
【0018】なお、ドラムコア7の円筒7aは、例えば
軸方向の2箇所で全周に亘り切り欠かれている。したが
って、各切欠7d,7dは、円筒7aを長さ方向に3分
割されている。但し、このドラムコア7は一体成形され
ているので、各切欠7dにより円筒7aが分離すること
はない。各切欠7dは、円筒7aの長さ方向に所定の距
離をおいて設けられている。また、放射状を成す各隔壁
7bの一側の中心部分には、インク供給孔7eが設けら
れている。したがって、このインク供給孔7eからドラ
ムコア7内の各空間内に流入したインクは、各隔壁7b
及び各仕切板7cで押されてこの回転ドラム3と一体と
なって高速回転し、その遠心力で各切欠7dから勢い良
く噴出し、更に、厚肉パイプ5の各連通孔5b及び螺旋
溝5aを通ってノズルパイプ6の各インク噴出孔6aか
ら糸状に連続噴射する。なお、ドラムコア7の円筒7a
を必ずしも3分割する必要はなく、円筒7aの長さ等に
応じて2分割或いは4以上に分割する構成としても良
い。
【0019】また、厚肉パイプ5及びドラムコア7の両
側の開口は、軸部8a,9aを有する端板8,9により
塞がれている。一側の端板8にはインク供給孔8aが穿
孔されており、このインク供給孔8aはドラムコア7の
インク供給孔7eに通じている。また、他方の端板9と
ドラムコア7との間には、皿ばね10が設けられてい
る。この皿ばね10は、ドラムコア7を一側の端板8に
押しつけて各端板8,9とドラムコア7とを一体回転さ
せると共に、ドラムコア7と厚肉パイプ5との材質の違
いに起因した熱膨張量の違いを吸収するものである。
【0020】各端板8,9の軸部8a,9aは、軸受部
材、例えばボールベアリング11を介してハウジング2
に回転可能に支持されている。各ボールベアリング11
の側面はシート状のシール部材で覆われており、各ボー
ルベアリング11の隙間を液密にシールしてインクの漏
洩を防止している。また、一側の端板8とボールベアリ
ング11との間には、コイルスプリング12が配置され
ており、回転ドラム3は他側のボールベアリング11に
向けて予圧されている。これにより、予圧をかけながら
各ボールベアリング11を適切に使用することができ、
また、回転ドラム3を後述する記録紙の幅方向に位置決
めできる。
【0021】このように構成された回転ドラム3は、プ
ーリ15、ベルト16及びプーリ14を介して駆動用モ
ータ13に接続されている。なお、図中符号17は、回
転ドラム3と一体的に回転するロータリエンコーダ、符
号18は、ロータリエンコーダ17のゼロ位置を検出す
るフォトセンサである。
【0022】ハウジング2は、回転ドラム3を収容する
角パイプ19と、この角パイプ19の両端を液密に閉塞
する一対の端板60,61と、回転ドラム3を支持する
一対の支持壁20,21より構成されている。角パイプ
19は、回転ドラム3を所定の間隔をあけて囲繞し、回
転ドラム3の各インク噴出孔6aから糸状に連続噴射す
るインクを受けとめてその底部に一時的に貯留する。こ
の角パイプ19の内周面には、例えば、モルトプレーン
等の透液性部材(図示省略)がライニングとして施され
ており、これにより、各インク噴出孔6aから噴出する
インクが角パイプ19の内周面に衝突した際に霧化する
のを防止している。また、モルトプレーン等に付着した
インクはその自重によって流下し底部に集められる。こ
の角パイプ19の底面には、スリット機構4を取り付け
る為の細長い矩形状の切欠19aが形成されている。
【0023】各支持壁20,21は、それらの上側半部
で角パイプ19を支持しながらこの角パイプ19を所定
の高さに配置している。そして、各支持壁20,21の
上側半部には軸孔20a,21aが設けられており、ベ
アリング11,11を介して回転ドラム3を回転自在に
支持している。
【0024】一方、各支持壁20,21の下側半部に
は、第1窓20b,21b及び第2窓20c,21cが
設けられている。第1窓20b,21bは、角パイプ1
9の底面に対向する位置に形成され、角パイプ19の底
部に溜まったインクを回収できる。また、第2窓20
c,21cは、後述するガター21に対向する位置に形
成され、ガター39で回収されたインクを回収できる。
【0025】各支持壁20,21の外側面は、インク流
路23〜27を規定する側蓋28,29で覆われてい
る。一側の支持壁20を覆う側蓋28には、図4に示す
ように、支持壁20との間の空間を3つのインク流路2
3,24,25に画する隔壁28aと、第1流路23に
通じるインク供給ポート28b及び全ての流路23,2
4,25に通じるインク回収ポート28cが設けられて
いる。インク供給ポート28bは、支持壁20の軸孔2
0aに通じている。したがって、インク供給ポート28
bから側蓋28内に流入したインクは、支持壁20の軸
孔20a、端板8及びドラムコア7の各インク供給孔8
a,7eを通って回転ドラム3内に流入する一方、回転
ドラム3内に流入できずに軸孔20aから溢れてしまっ
た余剰分のインクは、第1流路23を通ってインク回収
ポート28cへと落下する。また、第2流路24は第1
窓20bに通じており、したがって、角パイプ19で回
収されたインクは、第1窓20bから第2流路24を通
ってインク回収ポート28cへと落下する。更に、第3
流路25は第2窓20cに通じており、したがって、ガ
ター39で回収されたインクは、第2窓20cから第3
流路25を通ってインク回収ポート28cへと落下す
る。
【0026】また、他側の支持壁21を覆う側蓋29に
は、図5に示すように、支持壁21との間の空間を第4
流路26及び第5流路27に画する隔壁29aと、各流
路26,27に通じるインク回収ポート29bが設けら
れている。第4流路26は支持壁21の第1窓21bに
通じており、したがって、角パイプ19で回収されたイ
ンクは、第1窓21bから第4流路26を通ってインク
回収ポート29bへと落下する。また、第5流路27は
第2窓21cに通じており、したがって、ガター39で
回収されたインクは、第2窓21cから第5流路27を
通ってインク回収ポート29bへと落下する。
【0027】なお、インク回収用の第1窓20b,21
b及び第2窓20c,21cを、両側の支持壁20,2
1にそれぞれ形成することにより、インクジェットヘッ
ド1を傾斜して設置した場合でも何れか一方の支持壁の
第1及び第2窓を通じてインクをスムーズに回収するこ
とができる。
【0028】スリット機構4は、回転ドラム3から糸状
に噴出されるインクを切断してインク滴を形成するもの
で、一対のナイフエッジ30,31より構成されてい
る。各ナイフエッジ30,31は、これらの基端側を角
パイプ19の下面に固着される共に、角パイプ19の底
面の切欠19aから角パイプ19内に侵入し、回転ドラ
ム3に向けて突出している。各ナイフエッジ30,31
は、回転ドラム3と略同じ長さの範囲に亘って設けら
れ、且つ、回転ドラム3と平行に配置されている。各ナ
イフエッジ30,31は、所定の間隔をあけて向かい合
わせに配置され、したがって、各ナイフエッジ30,3
1間にはスリット32が形成される。全てのインク噴出
孔6aより糸状に連続噴出したインク46は、各ナイフ
エッジ30,31で切断され、スリット32を通過する
インク滴47が次々に形成される。このスリット32の
幅は適宜値に設定されており、所望の粒径のインク滴を
形成することができる。
【0029】ここで、回転ドラム3から糸状に噴出する
インクは、遠心力と回転ドラム3の回転力との合成方向
に飛び出すため、各ナイフエッジ30,31を回転ドラ
ム3の回転中心の真下に設置した場合には、各ナイフエ
ッジ30,31に対してインク及びインク滴の飛跡(図
1中点線で示している)が大きく斜交する関係となる。
このため、単純な形状のナイフエッジ30,31ではそ
の腹部分(ハウジング2の外部となるナイフエッジ3
0,31の内側の斜面の部分)にインク滴が接触して霧
化する虞がある。そこで、本実施例の場合、一対のナイ
フエッジ30,31は、回転ドラム3の中心よりも回転
方向の手前側にずらして配置されている。この場合、ナ
イフエッジ30,31の形状が単純であっても、ナイフ
エッジ30,31の間を通過する際のインク滴の飛跡が
ナイフエッジ30,31の腹部分と非平衡でかつ接触し
ない角度となり、インク滴の霧化防止策を講じる必要が
ない。
【0030】また、各ナイフエッジ30,31は、これ
らの背面(ハウジング2の内側となる斜面の部分)と角
パイプ19との間に不要インクを貯留する空間を形成す
るように設けられている。これらの空間は僅かに負圧と
することが好ましく、各空間を負圧にした場合には、ス
リット32から回転ドラム3側へ空気が引き込まれてス
リット32の周辺に付着する不要のインクが角パイプ1
9内に吸い込まれ、記録紙側へ落ちないようにできる。
【0031】また、各ナイフエッジ30,31の先端
は、回転ドラム3の回転方向の手前側のナイフエッジ3
0に比べて、奥側のナイフエッジ31の方が低い位置に
配置されている。このように各ナイフエッジ30,31
の先端を上下方向にずらして配置することで、インク滴
の表面張力によってスリット32が詰まるのを防止でき
る。
【0032】インク滴制御部は、各ナイフエッジ30,
31間のスリット32を通り抜けたインク滴のうち、必
要なインク滴だけを用紙に衝突させるべくインク滴の飛
跡を偏向させるものである。このインク滴制御部は、帯
電電極33、偏向電極34及びガター39等より構成さ
れている。
【0033】帯電電極33及び偏向電極34は、図6及
び図8に示すように、折り曲げ可能なプラスチックシー
ト35,36に形成され、フレキシブルプリント配線基
板を構成している。即ち、非導電性で可撓性のポリイミ
ド樹脂より成る各シート35,36内には、銅箔より構
成される帯電電極33と偏向電極34とがインク滴の飛
跡方向に並んで形成されている。各シート35,36
は、回転ドラム3の長さとほぼ同じ長さに形成されてい
る。図6に示す一方のプラスチックシート35では、帯
電電極33aはこのシートのほぼ全長に亘って形成され
ているが、偏向電極34aは複数に分割されている。即
ち、このプラスチックシート35については、回転ドラ
ム3に形成された各インク噴出孔6aの1リード毎に1
枚の偏向電極34aが形成されている。一方、図8に示
す他方のプラスチックシート36に形成された帯電電極
33b及び偏向電極34bは、このシート36のほぼ全
長に亘って形成されている。そして、これらの帯電電極
33a,33b及び偏向電極34a,34bは、図7及
び図9に示すように、各プラスチックシート35,36
の樹脂層内に形成されている。
【0034】各フレキシブルプリント配線基板35,3
6は、各ナイフエッジ30,31の腹部分に固着された
絶縁体63,64に接着されている。したがって、各帯
電電極33a,33b同士及び各偏向電極34a,34
b同士は、スリット32を挟んで向かいあっている。そ
して、他方のフレキシブルプリント配線基板36の両端
部に形成されているアーム36a,36bは湾曲されて
スリット32の両脇部分を跨ぎ、一方のフレキシブルプ
リント配線基板35の両端部に形成されたアーム35
a,35cに接続されている。これにより、各フレキシ
ブルプリント配線基板35,36の帯電電極33a,3
3bは、各アーム35a,36aに形成された電極を通
じて電気的に接続され、グランドに対して電圧が印加さ
れインク滴47に所定の電荷を与えることができる。同
様に、他方のフレキシブルプリント配線基板36の偏向
電極34bは各アーム35c,36bに形成された電極
を通じて一方のフレキシブルプリント配線基板35のア
ーム35cに形成された電極65に電気的に接続され、
いわゆるグランド側電極になっている。これに対し、一
方のフレキシブルプリント配線基板35に形成された各
偏向電極34aは、それぞれ独立の電極となっている。
各偏向電極34aは各リード毎に設けられているので、
各電極34aは、1リード毎にインク滴を制御できる。
なお、スリット32を跨ぐ各アーム36a,36bは、
スリット32の両脇部分に配置されているので、インク
滴の通過を妨げることはない。
【0035】なお、図7及び図9中符号56は、各フレ
キシブルプリント配線基板35,36を絶縁体63,6
4に固着する粘着剤である。また、本実施例において
は、各ナイフエッジ30,31の形状は比較的単純なも
のに設定されているが、たとえ複雑な形状に設定されて
いる場合でも、これらの形状に対応するように各フレキ
シブルプリント配線基板35,36は変形し、したがっ
て、各フレキシブルプリント配線基板35,36はナイ
フエッジ30,31の腹部分に良好に固着される。さら
に、各フレキシブルプリント配線基板35,36は薄肉
に成形されている。したがって、回転ドラム3に対して
各ナイフエッジ30,31の先端の陰に隠れてインク滴
の飛跡に干渉することなく、スリット32を通り抜けた
インク滴はこれら各フレキシブルプリント配線基板3
5,36の間を通過する。
【0036】ガター39は、樋状を成している。このガ
ター39はナイフエッジ31の下面に固着され、受けと
めたインク滴を支持壁20の第2窓20c又は支持壁2
1の第2窓21cに向けて流している。
【0037】なお、このインクジェットヘッド1では、
非作動時には各ナイフエッジ30,31間のスリット3
2を閉塞し、ハウジング2内のインクの乾燥を防止す
る。この乾燥防止機構は、例えば角パイプ19の側面に
回転自在に取り付けられ、先端をガター39の近傍に位
置させるアームプレート37と、アームプレート37の
先端部分を被覆し、ガター39に接触してスリット32
を閉塞する閉塞部材38と、インクジェットヘッド1の
作動時にアームプレート37を動かしてスリット32を
露出させるアクチュエータ等より構成されている。閉塞
部材38は、例えば発泡性の材料で構成されている。ア
クチュエータとしては、図示はしないが、例えばソレノ
イドを使用する。このソレノイドは、角パイプ19の上
面に取り付けられる。ソレノイド及びアームプレート3
7は、角パイプ19に取り付けられているので、円筒形
状のパイプに取り付ける場合に比べてこれらを固定し易
い。なお、ソレノイドに代えて流体圧シリンダを利用し
たアクチュエータを使用しても良い。
【0038】また、図4及び図5中符号40は、インク
ジェットヘッド1の下方に記録紙を供給する給紙用ロー
ラである。この給紙用ローラ40は、回転ドラム3によ
る印字に連動して回転され、錘ローラ41とともに記録
紙を挟みながらこの記録紙を回転ドラム3の下方に供給
するものである。給紙用ローラ40及び錘ローラ41で
供給された記録紙22は、給紙用台66の上を滑りなが
ら移動する。錘ローラ41は、フレーム42に形成され
たU字状切欠42a内に落とされて、記録紙の進み方向
に拘束されている。なお、給紙用ローラ40は、図10
に示すように、ウォームホイール44及びウォーム45
を備える回転力伝達手段を介してステッピングモータ4
3に接続されている。ステッピングモータ43は、イン
クジェットヘッド1の作動に連動して作動する。
【0039】以上のように構成されているインクジェッ
トヘッド1は次のようにしてインク滴を形成し、印字作
動する。
【0040】先ず駆動用モータ13を立ち上げ、印字開
始に備える。このとき、回転ドラム3の回転が所定回転
数に達する前には、遠心力よりも回転力の影響の方が大
きく、インク滴の飛跡が通常印刷時とは異なる場合があ
る。そこで、回転ドラム3の回転数が所定回転数に達す
るまでは、画信号とは無関係に、インク滴を帯電電極3
3で帯電させて偏向電極34でガター39へ確実に衝突
して回収されるように制御することが好ましい。
【0041】そして、回転ドラム3が所定回転数に達し
た後、印字動作に入る。このとき、インク供給ポート2
8bから供給されたインクは、各インク供給孔8a,7
eを通って回転ドラム3内に流入し、さらに、回転ドラ
ム3の高速回転によって発生する遠心力で各インク噴出
孔6aから連続して糸状に噴出する。このとき、噴出し
たインクは飛行させるのに十分な初速度が与えられ、あ
たかも回転ドラム3の回転に伴って回転方向へ移動す
る。そして、このインクは、一対のナイフエッジ30,
31を横切る瞬間にスリット32で切断され、スリット
32を通過する時間分の長さのインクがインク滴として
スリット32からハウジング2の外方に飛び出す。
【0042】また、ナイフエッジ30,31を通過する
瞬間を除いた領域、即ちナイフエッジ30,31を通過
した後再びナイフエッジに到達する以前の領域では、回
転ドラム3から糸状に噴出するインクは回転ドラム3を
囲繞するハウジング2の内周面に衝突して不要なインク
として角パイプ19の底部に溜まり、そして、第1窓2
0b又は21bより第2流路24又は第4流路26を通
ってインク回収ポート28c又は29bへと落下し、さ
らに、図示しないタンクへと回収された後、再使用され
る。
【0043】一方、スリット32から飛び出たインク滴
は、帯電電極33a,33bによる帯電と偏向電極34
a,34bによる制御によって必要に応じて偏向され、
その飛跡が変えられる。この場合、偏向電極34は、フ
ォトセンサ18がロータリエンコーダ17のゼロ位置を
検出した後所定のタイミングでインク滴の偏向を開始す
る。そして、記録に必要なインク滴は、ガター39の横
を通り抜けて記録紙に付着する。回転ドラム3には多数
のインク噴出孔6aが設けられており、回転ドラム3の
端のものから順番に次々にインク滴が形成される。イン
ク滴は、各帯電電極33a,33b間を通過して帯電さ
れた後、同一リード毎に同一の偏向電極34bで飛跡制
御される。したがって、実際にインク滴の飛跡制御を行
う電極34は、インク滴が形成される位置の移動に伴い
1リード分毎に隣の電極34に移動する。回転ドラム3
は、1回転毎に1リード分の印字を行う。
【0044】そして、記録に不要なインク滴はガター3
9で受けとめられ、このガター39を伝わって各第2窓
20c又は21cから第3流路25又は第5流路27を
通ってインク回収ポート28c,29bに向けて落下す
る。この後、インクは、各インク回収ポート28c,2
9bからタンクへと回収された後、再使用される。
【0045】尚、上述の実施例は本発明の好適な実施の
一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の
要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能であ
る。例えば、ナイフエッジ30,31、帯電電極33、
偏向電極34及びガター39を、回転ドラム3の中心真
下に鉛直線上に配置しても良い。この場合には、ナイフ
エッジ30,31の腹部分の角度を開くことによってイ
ンク滴の霧化を防止するようにしても良い。
【0046】また、回転ドラム3のノズルパイプ6に形
成されるインク噴出孔6aは、本実施例の場合、1条の
螺旋を構成するように穿孔されていいるが、場合によっ
ては2条以上の螺旋を構成するようにしても良い。例え
ば、2条の螺旋を形成する場合には、1回転で2ライン
分の印字が可能になる。
【0047】また、本実施例の場合、インク噴射孔6a
が形成する螺旋の1リード毎に偏向電極34aを設け、
各偏向電極34aを各リード毎に独立して制御している
が、これに特に限定されるものではなく、例えば複数の
リードをまとめて同一の偏向電極34で制御する構成と
しても良い。
【0048】また、本実施例では、インク噴出孔6aを
螺旋状に連続的に形成している場合について主に説明し
たが、これに特に限定されるものではなく螺旋状に不連
続に形成しても良いし、また、1リード分毎に異なる螺
旋状に形成しても良い。例えば、複数条の螺旋を想定
し、円周の1/4(1/4リード)に亘って第1の螺旋
にインク噴出孔を形成し、次の1/4は隣る第2の螺旋
に沿ってインク噴出孔を形成し、さらに次の1/4を第
3の螺旋に沿って形成し、さらに最後の1/4を第4の
螺旋に沿ってインク噴出孔を形成するようにしても良
い。また、1つの螺旋の1リード分の領域の全域にイン
ク噴出孔を等間隔で配置しなくとも、一部分にだけまと
めてインク噴出孔を形成するようにしても良い。
【0049】また、一対のナイフエッジ30,31に代
えて、矩形断面の仕切板等を使用しても良い。
【0050】さらに、本実施例ではフルライン型のヘッ
ドに適用した例について説明したが、これに特に限定さ
れるものではなく、記録紙の幅方向にヘッドを往復移動
させることによって1ライン分の印刷を行うタイプのヘ
ッドとして構成することも可能である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のインクジ
ェットヘッドでは、ハウジング内に回転ドラムを収容す
ると共に、該回転ドラムの外周面に螺旋状に並んで設け
られた複数のインク噴出孔から当該回転ドラム内のイン
クを遠心力により糸状に連続噴出させ、前記ハウジング
に設けられたスリット機構に前記噴出インクの一部を通
過させて記録媒体に向けて進むインク滴を次々に形成
し、当該インク滴の飛跡を制御して記録に必要なインク
滴を前記記録媒体上に付着させると共に、記録に不要な
インク滴を回収し再使用するので、回転ドラムを高速回
転させるだけで振動なしにインク滴を連続的に形成する
ことが可能になる。したがって、記録媒体の幅に対応さ
せて回転ドラム等を長く形成するだけでフルライン型の
ヘッドを構成することができる。
【0052】さらに、請求項1記載のインクジェットヘ
ッドでは、ノズルパイプを熱膨張し難い部材で形成する
ことで、回転ドラムの温度が上昇した場合でも熱膨張に
起因した印刷文字の変形を防ぐことができ、長時間使用
し続けても常に適正な印刷文字を得ることができる。ま
た、印刷文字の精度には影響しない円筒部材やドラムコ
アを加工容易な部材で形成することができ、回転ドラム
の製造が容易になってそのコストを低減することができ
る。このため、インクジェットヘッドを安価に製造する
ことができる。また、請求項2記載のインクジェットヘ
ッドでは、角パイプを備えてハウジングを構成している
ので、このハウジングに構成部材を容易に固定すること
ができ、インクジェットヘッドの設計を容易にすること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットヘッドの横断
面図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの縦断面図であ
る。
【図3】図1のインクジェットヘッドの回転ドラムの一
部を切り欠いた斜視図である。
【図4】図2中矢線IV−IVに沿うインクジェットヘ
ッドの断面図である。
【図5】図2中矢線V−Vに沿うインクジェットヘッド
の断面図である。
【図6】図1のインクジェットヘッドの電極を示し、一
側に配置されるフレキシブルプリント配線基板を展開し
た状態の正面図である。
【図7】図6の矢線VII−VIIに沿うフレキシブル
プリント配線基板の断面図である。
【図8】図1のインクジェットヘッドの電極を示し、他
側に配置されるフレキシブルプリント配線基板を展開し
た状態の正面図である。
【図9】図8の矢線IX−IXに沿うフレキシブルプリ
ント配線基板の断面図である。
【図10】図1のインクジェットヘッドと各駆動用モー
タのレイアウトを示す平面図である。
【図11】従来の連続噴射式インクジェットヘッドの原
理図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド 2 ハウジング 3 回転ドラム 4 スリット機構 5 厚肉パイプ 6 ノズルパイプ 6a インク噴出孔 7 ドラムコア 19 角パイプ 30,31 ナイフエッジ 32 スリット 33 帯電電極 34 偏向電極 39 ガター 46 噴出インク 47 インク滴

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハウジング内に回転ドラムを収容すると
    共に、該回転ドラムの外周面に螺旋状に並んで設けられ
    た複数のインク噴出孔から当該回転ドラム内のインクを
    遠心力により糸状に連続噴出させ、前記ハウジングに設
    けられたスリット機構に前記噴出インクの一部を通過さ
    せて記録媒体に向けて進むインク滴を次々に形成し、当
    該インク滴の飛跡を制御して記録に必要なインク滴を前
    記記録媒体上に付着させると共に、記録に不要なインク
    滴をガターで回収し再使用するインクジェットヘッドで
    あって、前記回転ドラムは、外周面に内部空間に通じる
    螺旋状溝が形成された円筒部材と、この円筒部材を被覆
    し、螺旋状溝に通じる前記複数のインク噴出孔が形成さ
    れたノズルパイプと、円筒部材内に配置されてこれと一
    体的に回転し、円筒部材内に供給されたインクを遠心力
    で螺旋状溝に移動させるドラムコアを備えることを特徴
    とするを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 ハウジング内に回転ドラムを収容すると
    共に、該回転ドラムの外周面に螺旋状に並んで設けられ
    た複数のインク噴出孔から当該回転ドラム内のインクを
    遠心力により糸状に連続噴出させ、前記ハウジングに設
    けられたスリット機構に前記噴出インクの一部を通過さ
    せて記録媒体に向けて進むインク滴を次々に形成し、当
    該インク滴の飛跡を制御して記録に必要なインク滴を前
    記記録媒体上に付着させると共に、記録に不要なインク
    滴をガターで回収し再使用するインクジェットヘッドで
    あって、前記ハウジングを角パイプで形成したことを特
    徴とするインクジェットヘッド。
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