JP3104286B2 - モールドモータ及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、固定子鉄心を絶縁性樹
脂によりインサート成形してなるモールドモータ及びそ
の製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図５は、従来のモールドモータの構成を
示す断面図である。この図において、Ｓはステータ部、
Ｒはロータ部を示し、また、Ｌは負荷側、Ｎは反負荷側
であることを示している。

【０００３】シャフト５に回転子４が取り付けられてお
り、このシャフト５は回転子４の両端側の位置において
反負荷側軸受７ａ及び負荷側軸受７ｂにより支持されて
いる。これら反負荷側軸受７ａ及び負荷側軸受７ｂは、
それぞれ反負荷側軸受ブラケット２及び負荷側軸受けブ
ラケット６の軸受挿入部８に嵌装されている。

【０００４】回転子４の外側にはマグネットワイヤ１１
が巻回された固定子鉄心１が配設されている。この固定
子鉄心１は、回転子４と対向する個所以外は絶縁性モー
ルド樹脂により形成されたフレーム部材３により覆われ
ている。

【０００５】フレーム部材３の一端側の面及び他端側の
面にはそれぞれ反負荷側いんろう部９ａ及び負荷側いん
ろう部９ｂが形成されており、これらいんろう部９ａ，
９ｂにそれぞれ反負荷側軸受ブラケット２及び負荷側軸
受けブラケット６の端部が圧入されている。そして、固
定子鉄心１と反負荷側軸受ブラケット２及び負荷側軸受
けブラケット６との固着を確実にするために、この圧入
後に更に接着作業やねじ止め作業が行われる。

【０００６】なお、フレーム部材３にはブッシング１３
が取り付けられており、このブッシング１３を通って給
電ケーブル１２がマグネットワイヤ１１に接続されてい
る。固定子鉄心１は積層鋼板により形成されており、回
転子４との対向面には、給電ケーブル１２を介したマグ
ネットワイヤ１１への給電により磁界を発生させる電磁
極が形成されている。回転子４の外周面には、固定子鉄
心１側に形成された電磁極のピッチに対応して隣接部同
士が異極となった薄板状の永久磁石４１が貼付されてい
る。また、負荷側軸受けブラケット６の内端面と負荷側
軸受７ｂとの間にはウエーブワッシャ１４及びシム１５
が介挿され、両者間での摺動が防止されるようになって
いる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、ステータ部
Ｓとロータ部Ｒとの組み付けが終了した後、反負荷側軸
受ブラケット２には回転子４の位置検出を行うためにエ
ンコーダ等の回転検出器が取り付けられることになって
いる。この回転検出器の取り付けを行う際には、固定子
鉄心１側の電磁極と回転検出器側のポールとの間の位置
決めを高精度で行う必要がある。そして、この位置決め
を高精度で行うためには、その前提として、反負荷側軸
受ブラケット２と固定子鉄心１側との固着の際の位置決
めを正確に行い、反負荷側軸受ブラケット２の軸受挿入
部８を基準として、ステータ内径１０及び反負荷側いん
ろう部９ａの同心度や直角度等についての誤差が所定範
囲内の小さなものになるようにしておくことが要求され
る。

【０００８】しかし、図５の構成では、固定子鉄心１を
覆うフレーム部材３に対する反負荷側軸受ブラケット２
の圧入作業、及びその後の接着作業やねじ止め作業を手
作業で行わなければならず、反負荷側軸受ブラケット２
と固定子鉄心１側との位置を目視により確認しながらこ
れらの手作業を行わなければならない。そのため、上記
の誤差を所定範囲内に収めるために、作業員は多くの時
間及び労力を費やさなければならない結果となってい
る。

【０００９】図５の構成は、圧入作業の他に、その後の
接着作業やねじ止め作業などを行わなければならないも
のとなっているため、もともと作業工数が多くかかるも
のであるが、反負荷側軸受ブラケット２と固定子鉄心１
側との固着の際の位置決めを正確に行わなければならな
いために、一層作業性の悪いものとなっている。

【００１０】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あり、反負荷側軸受ブラケットと固定子鉄心側とを固着
する際の位置決めを正確且つ容易に行うことができると
共に、作業工数の低減をも図ることが可能なモールドモ
ータ及びその製造方法を提供することを目的としてい
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段として、請求項１記載の発明は、シャフトに取り
付けられた回転子と、マグネットワイヤが巻回されてい
ると共に、前記回転子との対向部以外の個所が絶縁性モ
ールド樹脂により形成されたフレーム部材により覆わ
れ、前記回転子の外側に配設された固定子鉄心と、前記
回転子の両端側で前記シャフトを回転自在に保持する反
負荷側軸受及び負荷側軸受と、前記反負荷側軸受及び負
荷側軸受をそれぞれ嵌装し、前記フレーム部材の両端部
にそれぞれ固着された反負荷側軸受ブラケット及び負荷
側軸受けブラケットと、を備えたモールドモータにおい
て、前記反負荷側軸受ブラケットと前記フレーム部材の
一端部側との固着は、それぞれに形成されたブラケット
側係合部及びフレーム側係合部との間の相互の係合によ
り行われ、しかも、このフレーム側係合部は絶縁性樹脂
がブラケット側係合部の形状に沿ってモールドされるこ
とにより形成されたものであり、さらに、前記反負荷側
軸受ブラケットの前記ブラケット側係合部から離間した
側の端面、及び前記固定子鉄心の他端部側の端面には、
モールド時の位置決め用金型ピンが挿入されるピン穴が
形成されている、ことを特徴とする。

【００１２】請求項２記載の発明は、シャフトに取り付
けられた回転子と、マグネットワイヤが巻回されている
と共に、前記回転子との対向部以外の個所が絶縁性モー
ルド樹脂により形成されたフレーム部材により覆われ、
前記回転子の外側に配設された固定子鉄心と、前記回転
子の両端側で前記シャフトを回転自在に保持する反負荷
側軸受及び負荷側軸受と、前記反負荷側軸受及び負荷側
軸受をそれぞれ嵌装し、前記フレーム部材の両端部にそ
れぞれ固着された反負荷側軸受ブラケット及び負荷側軸
受けブラケットと、を備えたモールドモータの製造方法
において、係合部が形成され且つこの係合部から離間し
た側の端面にピン穴が形成されている前記反負荷側軸受
ブラケットをモールド金型内に配置すると共に、他端部
側にピン穴が形成されている前記固定子鉄心をその一端
部側が前記反負荷側軸受ブラケットの係合部側の端面に
対向するようにモールド金型内に配置し、前記反負荷側
軸受ブラケット及び前記固定子鉄心の各ピン穴に位置決
め用金型ピンを挿入した状態で、これら反負荷側軸受ブ
ラケット及び固定子鉄心をモールド金型内の所定位置に
位置決めし、その後、モールド金型内に前記絶縁性樹脂
を充填し、前記反負荷側軸受ブラケットの係合部に沿っ
たモールドにより前記フレーム部材側の係合部を形成
し、これにより、前記反負荷側軸受ブラケットと前記フ
レーム部材の一端部側との固着を行う、ことを特徴とす
る。

【００１３】

【作用】上記構成では、反負荷側軸受ブラケットの係合
部と反対側の端面、及び固定子鉄心の他端部側にそれぞ
れピン穴が形成されているので、これらのピン穴に金型
ピンを挿入することができ、したがって、反負荷側軸受
ブラケット及び固定子鉄心をモールド金型内の所定位置
に正確に位置決めすることができる。この状態で、モー
ルド金型内に絶縁性樹脂を充填すると固定子鉄心の周囲
に絶縁性樹脂性のフレーム部材が形成される。このと
き、この絶縁性樹脂は反負荷側軸受ブラケットの係合部
の形状に沿って充填され、樹脂の硬化後にはフレーム部
材側係合部が形成される。これにより、反負荷側軸受ブ
ラケットと固定子鉄心を覆うフレーム部材との固着が行
われるが、この場合の位置決め精度は金型モールドの精
度によって決まるものであり、高精度である。そして、
金型モールドによって、反負荷側軸受ブラケットとフレ
ーム部材との固着は強固且つ正確に行われているので、
従来、行われていた圧入作業、接着作業、ねじ止め作業
等を省略することができる。

【００１４】

【実施例】以下、本発明の実施例を図１乃至図４に基づ
き説明する。但し、図５と同様の構成要素には同一符号
を付して重複した説明を省略する。図１は本実施例に係
るモールドモータの構成を示す断面図である。この図に
おいて、反負荷側軸受ブラケット２にはブラケット側係
合部としての凸部２１及び凹部２２が形成されている。
一方、フレーム部材３側には凸部２１の形状に沿ってフ
レーム側係合部としての凹部が形成されると共に凹部２
２の形状に沿ってフレーム側係合部としての凸部が形成
されている。そして、これらのブラケット側係合部とフ
レーム側係合部とが相互に係合することにより反負荷側
軸受ブラケット２と固定子鉄心１一端部側との固着が行
われている。なお、固定子鉄心１の他端部側と負荷側軸
受けブラケット６との固着は、従来と同様にフレーム部
材３の負荷側いんろう部９ｂに、負荷側軸受けブラケッ
ト６の端部を圧入することにより行われている。また、
反負荷側軸受ブラケット２のブラケット側係合部である
凸部２１及び凹部２２から離間した側の端面にはピン穴
２５が形成されており、更に、固定子鉄心１の他端部側
端面及びフレーム部材３にはピン穴３５が形成されてい
る。これらピン穴２５，３５には、モールド時に位置決
め用金型ピンが挿入される。

【００１５】図３は、図１をＮ側方向から見た平面図で
ある。この図に示すように反負荷側軸受ブラケット２上
のシャフト５よりやや上方の位置にピン穴２５が形成さ
れており、シャフト５のやや下方には２個所のタップ穴
２３，２４が形成されている。これらのタップ穴２３，
２４は、モールドモータの組立後に回転検出器としての
エンコーダを取り付けるためのものである。また、図４
は、図１におけるピン穴３５をクロスする横断面図であ
り、ピン穴３５が固定子鉄心１の上部に形成されてい
る。

【００１６】次に、上記のように構成されるモールドモ
ータの製造方法につき説明する。図２は、モールド時に
おけるモールド金型３０内の反負荷側軸受ブラケット２
及び固定子鉄心１の配置状態を示す断面図である。この
図において、まず、反負荷側軸受ブラケット２の係合部
側端面に固定子鉄心１の一端部側が対向するように、反
負荷側軸受ブラケット２及び固定子鉄心１をモールド金
型３０内に配置する。そして、反負荷側軸受ブラケット
２のピン穴２５に金型ピン３１を挿入すると共に、固定
子鉄心１のピン穴３５に金型ピン３２を挿入した状態
で、これら反負荷側軸受ブラケット２及び固定子鉄心１
をモールド金型３０内の所定位置に位置決めする。この
ときの位置決めは、ピン穴２５，３５に挿入している金
型ピン３１，３２が確実に反負荷側軸受ブラケット２及
び固定子鉄心１を保持しているので、高精度で行うこと
ができる。

【００１７】上記の位置決めが終了した後、モールド金
型３０内に絶縁性樹脂を充填する。これにより、固定子
鉄心１の周囲が絶縁性樹脂により覆われる。また、この
とき反負荷側軸受ブラケット２の係合部の形状に沿って
絶縁性樹脂が充填されるので、樹脂の硬化後にはフレー
ム部材３側の係合部が形成される。そして、モールド金
型３０を駆動し、金型ピン３１，３２をピン穴２５，３
５から抜き取り、フレーム部材３を介して固着された反
負荷側軸受ブラケット２及び固定子鉄心１をモールド金
型３０から取り出す。

【００１８】この後、反負荷側軸受ブラケット２の軸受
挿入部８に反負荷側軸受７ａを装着し、回転子４が取り
付けられたシャフト５の一端側がこの反負荷側軸受７ａ
を挿通するようにする。さらに、負荷側軸受けブラケッ
ト６に装着された負荷側軸受７ｂをシャフト５の他端側
が挿通するようにし、その後、フレーム部材３の負荷側
いんろう部９ｂに負荷側軸受けブラケット６の端部を圧
入する。

【００１９】上記のように、製造されたモールドモータ
では、反負荷側軸受ブラケット２とフレーム部材３の一
端側との固着はそれぞれの係合部同士の係合により行わ
れている。そして、反負荷側軸受ブラケット２の軸受挿
入部８を基準とするステータ内径１０及び反負荷側いん
ろう部９ａの同心度や直角度等についての誤差は、金型
モールドの精度によって決まる。したがって、従来のよ
うに反負荷側軸受ブラケット２と固定子鉄心１との間の
位置決めを手作業により行っていた場合と比べると、上
記の誤差をはるかに小さくすることができる。そのた
め、モールドモータの組立作業終了後にエンコーダ等の
回転検出器を反負荷側軸受ブラケット２に取り付ける際
に、固定子鉄心１側の電磁極と回転検出器側のポールと
の間の位置決めを容易に且つ高精度で行うことができ
る。

【００２０】また、本発明のモールドモータでは、従来
行われていた反負荷側軸受ブラケット２側の圧入作業、
接着作業、及びねじ止め作業等を行う必要がないので、
その分作業工数を低減することができる。

【００２１】さらに、従来のモールドモータでは反負荷
側軸受ブラケット２とフレーム部材３の一端側とはいん
ろう部９ａを利用した嵌合構造となっていたため若干の
隙間が形成されており、高いクリーン度が要求される場
所で使用する場合には、この隙間にシール部材を施して
モータ内部からの発塵を防止する必要があった。しか
し、本発明のモールドモータでは、反負荷側軸受ブラケ
ット２とフレーム部材３の一端部側との間は密封された
状態となるためこのようなシール部材を施すことなく発
塵が防止された結果となっている。

【００２２】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、反負荷
側軸受ブラケットと固定子鉄心側とを固着する際の位置
決めを正確且つ容易に行うことができると共に、作業工
数の低減をも図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係るモールドモータの構成を
示す断面図。

【図２】モールド時におけるモールド金型３０内の反負
荷側軸受ブラケット２及び固定子鉄心１の配置状態を示
す断面図。

【図３】図１をＮ側方向から見た平面図。

【図４】図１におけるピン穴３５をクロスする横断面
図。

【図５】従来のモールドモータの構成を示す断面図。

【符号の説明】

Ｓ ステータ部 Ｒ ロータ部 Ｌ 負荷側 Ｒ 反負荷側 １ 固定子鉄心 ２ 反負荷側軸受ブラケット ３ フレーム ３ 絶縁性モールド樹脂部 ４ 回転子 ５ シャフト ６ 負荷側軸受けブラケット ７ａ 反負荷側軸受 ７ｂ 負荷側軸受 ８ 軸受挿入部 ９ａ 反負荷側いんろう部 ９ｂ 負荷側いんろう部 １０ ステータ内径 １１ マグネットワイヤ １２ 給電ケーブル １３ ブッシング １４ ウエーブワッシャ １５ シム ２１ 凸部 ２２ 凹部 ２３ タップ穴 ２４ タップ穴 ２５ ピン穴 ３０ モールド金型 ３１ 金型ピン ３２ 金型ピン ３５ ピン穴 ４１ 永久磁石

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上 山 顕 治 埼玉県入間市大字上藤沢字下原480番地 株式会社安川電機製作所 東京工場内 (72)発明者 山 田 孝 史 埼玉県入間市大字上藤沢字下原480番地 株式会社安川電機製作所 東京工場内 (56)参考文献 特開 昭55−74054（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−52543（ＪＰ，Ａ) 実開 昭57−14647（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H02K 5/08 H02K 5/15 H02K 15/12 H02K 15/14

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シャフトに取り付けられた回転子と、 マグネットワイヤが巻回されていると共に、前記回転子
   との対向部以外の個所が絶縁性モールド樹脂により形成
   されたフレーム部材により覆われ、前記回転子の外側に
   配設された固定子鉄心と、 前記回転子の両端側で前記シャフトを回転自在に保持す
   る反負荷側軸受及び負荷側軸受と、 前記反負荷側軸受及び負荷側軸受をそれぞれ嵌装し、前
   記フレーム部材の両端部にそれぞれ固着された反負荷側
   軸受ブラケット及び負荷側軸受けブラケットと、 を備えたモールドモータにおいて、 前記反負荷側軸受ブラケットと前記フレーム部材の一端
   部側との固着は、それぞれに形成されたブラケット側係
   合部及びフレーム側係合部との間の相互の係合により行
   われ、しかも、このフレーム側係合部は絶縁性樹脂がブ
   ラケット側係合部の形状に沿ってモールドされることに
   より形成されたものであり、 さらに、前記反負荷側軸受ブラケットの前記ブラケット
   側係合部から離間した側の端面、及び前記固定子鉄心の
   他端部側の端面には、モールド時の位置決め用金型ピン
   が挿入されるピン穴が形成されている、 ことを特徴とするモールドモータ。
2. 【請求項２】シャフトに取り付けられた回転子と、 マグネットワイヤが巻回されていると共に、前記回転子
   との対向部以外の個所が絶縁性モールド樹脂により形成
   されたフレーム部材により覆われ、前記回転子の外側に
   配設された固定子鉄心と、 前記回転子の両端側で前記シャフトを回転自在に保持す
   る反負荷側軸受及び負荷側軸受と、 前記反負荷側軸受及び負荷側軸受をそれぞれ嵌装し、前
   記フレーム部材の両端部にそれぞれ固着された反負荷側
   軸受ブラケット及び負荷側軸受けブラケットと、 を備えたモールドモータの製造方法において、 係合部が形成され且つこの係合部から離間した側の端面
   にピン穴が形成されている前記反負荷側軸受ブラケット
   をモールド金型内に配置すると共に、他端部側にピン穴
   が形成されている前記固定子鉄心をその一端部側が前記
   反負荷側軸受ブラケットの係合部側の端面に対向するよ
   うにモールド金型内に配置し、 前記反負荷側軸受ブラケット及び前記固定子鉄心の各ピ
   ン穴に位置決め用金型ピンを挿入した状態で、これら反
   負荷側軸受ブラケット及び固定子鉄心をモールド金型内
   の所定位置に位置決めし、 その後、モールド金型内に前記絶縁性樹脂を充填し、前
   記反負荷側軸受ブラケットの係合部に沿ったモールドに
   より前記フレーム部材側の係合部を形成し、これによ
   り、前記反負荷側軸受ブラケットと前記フレーム部材の
   一端部側との固着を行う、 ことを特徴とするモールドモータの製造方法。