JP3097311B2 - 透明ガスバリア性フィルム - Google Patents

透明ガスバリア性フィルム

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JP3097311B2 JP04145949A JP14594992A JP3097311B2 JP 3097311 B2 JP3097311 B2 JP 3097311B2 JP 04145949 A JP04145949 A JP 04145949A JP 14594992 A JP14594992 A JP 14594992A JP 3097311 B2 JP3097311 B2 JP 3097311B2
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aluminum oxide
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸素および水蒸気の遮
断性に優れた透明ガスバリア性フィルムに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】食品や薬品を長期間保存するためには、
腐敗や変質を促進する外気からの酸素や水蒸気の侵入を
遮断する効果を持った、いわゆるガスバリア性に優れた
包装を行なう必要がある。この目的に使用されるガスバ
リア性に優れたフィルム包装材料に、近年特に内容物の
状態を確認できる透明性が要求される傾向が強くなって
いる。
【0003】金属酸化物を高分子樹脂フィルム基材上に
形成したものがガスバリア性と透明性に優れていること
は従来よりよく知られている。これらの中で特に酸化珪
素を高分子樹脂フィルム上に形成したものが特公昭53
−12953号公報により、酸化アルミニウムを高分子
樹脂フィルム基材上に形成したものが特公昭62−17
9935号公報により知られている。
【0004】ところで酸化珪素薄膜は、例えば独LEY
BOLD社のT.G.KrugらがBarrier P
ack Conference(London, Ma
y21 and 22, 1990)で発表したもの
や、雑誌「コンバーテック」1990.6 30〜36
ページ(海保恵亮氏著)にあるように、高いガスバリア
性(酸素透過率2cc/m2 ・day以下、水蒸気透過
率2g/m2 ・day以下)を確保するためには50n
m程度の膜厚が必要とされる。さらに完全酸化膜のSi
2 という組成ではガスバリア性が発現しないために酸
素が欠損した組成すなわち、SiOX (X <2.0)と
いう組成の薄膜が形成される。従って透明ではあるが、
短波長側での吸収が大きくなり蒸着膜に黄色い着色があ
り、中に食品を入れた場合、変質の状況が分かりにく
い、あるいは変質していないにもかかわらず変質してい
るように見えるといった問題がある。また膜厚が大きい
ために薄い基材のフィルムを用いた場合、カールしやす
く、このためにハンドリング性が悪くなり乱暴に扱うと
蒸着膜にクラック(割れ)が入りガスバリア性が低下す
るという問題もある。
【0005】一方アルミニウムの酸化膜は無色透明で、
ある程度のガスバリア性を発現することができる。しか
し雑誌「ジャパンフードサイエンス」1990.12
58〜63ページ(渡邊英男氏著)にあるように酸化珪
素薄膜並のガスバリア性を発現することは不可能であっ
た。また同様のアルミニウムの酸化膜の応用として、特
開昭62−220330号公報に、電子材料の包装材料
として、アルミニウムの金属成分が1から15重量%含
有されたアルミニウムの不完全酸化膜を高分子樹脂フィ
ルム基材上に形成し、制電性とガスバリア性を備えたフ
ィルムが開示されている。しかし膜全体に最低で1重量
%のアルミニウム金属が存在することで、光線透過率が
かなり低下することが述べられており、透明性の点で問
題があった。また、該フィルムは、制電性(すなわち導
電性)を有するために、マイクロ波の透過率が低く、包
装材料として使用し内容物を包装したまま電子レンジで
加熱する場合に、加熱できないという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述のような
問題点を解決することを目的とする。すなわち本発明
は、特に透明性が高く、ガスバリア性に優れ、かつ従来
の透明ガスバリア性フィルムがもっていた着色や電子レ
ンジ加熱性といった欠点を解消したフィルムを提供する
ことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、高分子樹脂フ
ィルム基材の少なくとも片面にアルミニウム酸化膜が形
成されてなるフィルムであって、該アルミニウム酸化膜
の全膜厚が6nm以上であり、かつアルミニウムの金属
成分が含有されてなる不完全酸化層が該アルミニウム酸
化膜の内部にのみ少なくとも1層存在し、該アルミニウ
ム酸化膜全体中のアルミニウム金属成分含有量が0.5
%・nm〜10%・nmの範囲であることを特徴とする
透明ガスバリア性フィルムである。
【0008】高分子樹脂フィルムとしては特に限定され
ないが、代表的なものとして、ポリエチレン、ポリプロ
ピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−
2、6−ナフタレートなどのポリエステル、ナイロン
6、ナイロン12などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、
ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポ
リスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリ
ル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ
フェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリイミ
ド、ポリアミドイミド、セルロース、酢酸セルロースな
どおよび、これらの共重合体や、他の有機物との共重合
体などを例示することができる。透明性、ガスバリア性
などの点で、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエ
ステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレ
フィンが好ましく、ポリエチレンテレフタレート系がよ
り好ましい。
【0009】これらの高分子樹脂フィルムは熱可塑性樹
脂の場合、未延伸、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよ
いが、寸法安定性や機械特性およびガスバリア性の安定
性の点から二軸延伸されたものが好ましい。また高分子
樹脂フィルム内には食品衛生上問題にならなければ公知
の添加剤、例えば帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、着色
防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤などが添加され
ていてもよい。
【0010】本発明に用いる高分子樹脂フィルムは透明
であることが好ましく、光線透過率が好ましくは40%
以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは8
0%以上である。また蒸着に先立ち、フィルム上に公知
の表面処理、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理や
コーティングによるアンカーコート処理が施されてもよ
い。
【0011】さらに本発明に用いる高分子樹脂フィルム
のアルミニウム酸化膜を形成する表面は平滑であること
が好ましい。中心線平均粗さで0.5μm以下が好まし
く、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは
0.05μm以下である。この理由としてフィルム表面
上に大きな突起が存在すると、ガスバリア性蒸着膜が均
一に形成されないためである。
【0012】高分子樹脂フィルムの厚みは特に限定され
るものではないが、包装材料として5μm〜500μm
の範囲が好ましい。
【0013】本発明の透明ガスバリア性フィルムにおい
て、高分子樹脂フィルム上に形成されるアルミニウムの
酸化膜の全膜厚は6nm以上である必要がある。全膜厚
が6nm未満であるとガスバリア性能が満足できない。
またアルミニウムの酸化膜の全膜厚は50nm未満であ
ることが好ましい。この理由としては、酸化珪素蒸着膜
のところで述べたように全膜厚が大きいとカールが発生
しやすく、加工時にガスバリア性が急激に低下するなど
の問題が起こりうる場合がある。生産性の点からも全膜
厚は小さい方が好ましく、より好ましくは全膜厚は30
nm未満である。
【0014】本発明の透明ガスバリア性フィルムにおい
ては、アルミニウムの金属成分が含有されてなる不完全
酸化層が該アルミニウム酸化膜の内部にのみ少なくとも
1層存在する。該金属成分を含む不完全酸化層がアルミ
ニウム酸化膜の内部に存在せず、アルミニウム酸化膜全
体が完全酸化膜で構成されたものでは優れたガスバリア
性を得ることは困難である。一方、アルミニウム酸化膜
全体が不完全酸化膜からなり、アルミニウムの金属成分
が認められるものにおいては、光線透過率が低いものと
なりやすく好ましくない。
【0015】ここで、アルミニウム酸化膜中のアルミニ
ウムの金属成分含有の有無および程度は、表面感度の非
常に高い分析手法であるX線光電子分光法(以下XPS
と言うことがある)分析によるAl2pスペクトルによ
って判別することができる。すなわち、該スペクトルが
酸化されたアルミニウムによるピーク(Al(II
I))以外に金属成分の存在を示すAl(0)ピークを
有するとき、アルミニウムの金属成分が含有されている
ことがわかる。また、アルミニウム酸化膜の内部にのみ
アルミニウムの金属成分が含有されていることを確認す
るには、該XPS分析をアルミニウム酸化膜の表面から
行なうだけでなく、アルミニウム酸化膜を表面から少し
ずつイオンエッチングしながらXPS分析を行い、アル
ミニウム酸化膜の深さ方向に沿ったAl2pスペクトル
の変化(以下デプスプロファイルと言う)を追う必要が
ある。すなわち、「アルミニウム酸化膜の内部にのみア
ルミニウムの金属成分が含有されている」とは、表面か
らのXPS分析ではAl(0)ピークが認められず、デ
プスプロファイルの途中でAl(0)ピークが認めら
れ、高分子樹脂フィルム基材との界面近傍では再びAl
(0)ピークが認められなくなることを意味する。
【0016】アルミニウム酸化膜の内部のアルミニウム
の金属成分の含有量は、以下の定義により特定される。
すなわち、XPS分析によるAl2pスペクトルのデプ
スプロファイルをとった場合、アルミニウム酸化膜表面
と高分子樹脂フィルム基材との界面は上述のようにAl
(III)のみで完全酸化膜であることを示すが、内部
にAl(III)のスペクトル以外にAl(0)の金属
成分の存在を示すスペクトルが得られる。図1にこのA
l(III)とAl(0)のスペクトルの1例を示す。
1がAl(III)によるピークであり2が金属成分の
存在を示すAl(0)ピークである。表面からの深さd
(nm単位)におけるスペクトルのピーク分割を行な
い、Al(III)とAl(0)のピーク面積をそれぞ
れに帰属するアルミニウム原子の相対数に換算した値を
各々N3 (d)、N0 (d)とし、その深さにおけるア
ルミニウムの金属成分の存在割合M(d)(単位%)を
100×N0 (d)/(N3 (d)+N0 (d))で定
義する。横軸に表面からの深さd(nm単位)、縦軸に
その深さでのアルミニウムの金属成分の存在割合M
(d)(%単位)を取ったグラフを描く。このようにし
て得られたM(d)のデプスプロファイルの1例を図2
に示す。4がM(d)であり、3は(100−M
(d))、すなわちAl(III)に帰属されるアルミ
ニウムのプロファイルである。5は高分子樹脂フィルム
基材の炭素成分である。ここでM(d)の深さd方向の
積分(d=0からd=アルミニウム酸化膜の全厚み)を
取ると%・nmの単位を持つ値が得られる。この値はア
ルミニウム酸化膜中に存在するアルミニウム金属量に対
応し、アルミニウム金属成分含有量と定義する。本発明
の透明ガスバリア性フィルムにおいては、アルミニウム
金属成分含有量の値は0.5%・nm〜10%・nmが
好ましく、より好ましくは1%・nm〜10%・nmで
ある。0.5%・nmよりも少ないとガスバリア性が不
十分であり、10%・nmよりも多いと光線透過率が低
下し、目的とする透明かつ、優れたガスバリア性を有す
るフィルムを得ることができない。さらに高いガスバリ
ア性を得るためには1%・nm〜10%・nmがより好
ましい。
【0017】またアルミニウム酸化膜部分の透明性は、
550nmの波長における高分子樹脂フィルム基材の光
線透過率に対するアルミニウム酸化膜を設けた後の高分
子樹脂フィルムの光線透過率の割合(これを比光線透過
率と定義する。)で示される。本発明の透明ガスバリア
性フィルムにおいては内容物の状態を確認しやすくする
ために、この比光線透過率の値が90%以上であること
が好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0018】本発明の透明ガスバリア性フィルムは、酸
素透過率が2cc/m2 ・day以下(より好ましくは
1cc/m2 ・day以下)、かつ水蒸気透過率が2g
/m2 ・day以下(より好ましくは1g/m2 ・da
y以下)であることが好ましい。
【0019】本発明の透明ガスバリア性フィルムのアル
ミニウム酸化膜の内部には少なくとも1層のアルミニウ
ムの金属成分を含有する層が存在するが、該層は2層以
上存在してもよい。該層の層数は、図2のような横軸に
表面からの深さd(nm単位)、縦軸にその深さでのア
ルミニウムの金属成分の存在割合M(d)(%単位)を
取ったグラフにおいてM(d)の分布の形によって判断
することができる。
【0020】次に、本発明の透明ガスバリア性フィルム
を製造する方法について述べる。
【0021】本発明に用いる高分子樹脂フィルム基材を
得る手段は、既知の任意の方法が適用可能である。
【0022】本発明におけるアルミニウムの酸化膜を形
成するための方法は、酸素雰囲気下での反応性蒸着によ
る。酸素雰囲気とは酸素ガス単独あるいは酸素ガスを不
活性ガスで希釈したものを真空蒸着機中に必要量導入し
たものをいう。不活性ガスとはArやHeなどの希ガス
ならびに窒素ガスおよびこれらの混合ガスを指す。反応
性蒸着とはこういった酸素雰囲気下でアルミニウムを蒸
発源から蒸発させ、高分子樹脂フィルム基材近傍で酸化
反応を起こさせ、アルミニウムの酸化物を高分子樹脂フ
ィルム基材上に形成する手法である。このための蒸発源
としては抵抗加熱方式のボート形式や、輻射あるいは高
周波加熱によるルツボ形式や、電子ビーム加熱による方
式などがあるが、特に限定されない。
【0023】本発明の構成のアルミニウムの酸化膜を形
成するためには高分子樹脂フィルム基材上に蒸着される
アルミニウム蒸気のビーム強度と高分子樹脂フィルム基
材近傍の酸素分圧の関係が重要である。
【0024】図3にフィルム状の基材上に連続的に蒸着
を行なう場合の蒸発源とフィルムの位置関係の一般的な
ものを示す。蒸発源6の上方に配置された冷却ドラム7
を回転させ、高分子樹脂フィルム8をこのドラムに供給
する形をとる。一般に蒸発源からのアルミニウム蒸気の
ビーム強度の最も強い蒸発源の直上を中心に開口部を持
つ防着板9が設けられ、この開口部から高分子樹脂フィ
ルム基材上に蒸着が行なわれる。ここで開口部を大きく
とった場合の開口部位置10、11、12を考えた場
合、11が最もアルミニウム蒸気のビーム強度が強く、
10、12は弱い。
【0025】ここに防着板9より上の空間にのみ、該空
間内で均一でかつ10および12の近傍のアルミニウム
蒸気のビーム強度に対してはアルミニウムを完全に酸化
できるが11の近傍のアルミニウム蒸気のビーム強度に
対してはアルミニウムを十分には酸化できない程度の酸
素分圧を与えた場合、10および12の近傍すなわち蒸
着初期および蒸着最後に酸素が十分供給された完全酸化
層が形成され、11の中心部では酸素が不十分な不完全
酸化層が形成される。図4はこの場合の位置10、1
1、12のアルミニウム蒸気強度と酸素分圧の関係を説
明するものである。一般に知られているように蒸発源の
法線方向からの角度θ方向の蒸気の強度はcosn θに
比例(n は一般に2〜4の値)するためアルミニウム蒸
気強度は図4に示すような分布を取る。
【0026】防着板9より下の空間も含めて全体に均一
な酸素分圧を与える方法、すなわち防着板上下の部分に
均等に酸素雰囲気が導入される場合では、本発明のよう
な構成を有するアルミニウム酸化膜を得ることが極めて
困難となる。この理由は以下のとおりである。すなわち
上述のように防着板上の蒸着部分の酸素分圧を目的とす
る値にしようとすると、蒸発源部分の酸素分圧が同時に
上昇し、蒸発源のアルミニウム溶融体表面に酸化皮膜が
形成されやすくなる。アルミニウム溶融体表面に酸化皮
膜が形成されるとアルミニウム蒸発速度が急激に減少す
る。このためアルミニウム蒸気強度が全体的に減少し
て、形成される膜の酸化の程度が大きくなる。また同時
にアルミニウム蒸発速度が減少することによりアルミニ
ウムの酸化膜形成で消費される酸素が減少し酸素分圧が
上昇することも酸化の程度を大きくする原因である。こ
の結果として内部にアルミニウム金属成分を含有した層
を有するアルミニウム酸化膜を安定して形成することが
困難となる。
【0027】図5に示すように開口部位置近傍より酸素
雰囲気を15の方向から導入した場合は図6に示すよう
に10、11、12の方向に酸素分圧が下がるため、酸
素が不十分な層が形成される位置は12の側にシフトす
る。従って比較的表面に近いところに金属成分が含有さ
れた層が形成される。また、10、12近傍の両方から
酸素雰囲気を導入した場合も中心部に金属を含有した層
が形成されることは容易に推定できる。
【0028】いずれにせよ、本発明の透明ガスバリア性
フィルムを得るためには酸素雰囲気を蒸着部分近く(高
分子樹脂フィルム基材近傍)に導入することが肝要であ
る。また図5の様に酸素が消費される領域を囲むこと
は、上述のアルミニウム蒸気のビーム強度と酸素分圧の
関係を正確に制御し、また酸素を効率よく利用し、必要
以上に排気ポンプに負荷をかけないためにも重要であ
る。
【0029】なお、従来公知の特開昭62−22033
0号公報においてアルミニウムの酸化膜にアルミニウム
の金属成分が1から15重量%含まれたものは、蒸着表
面のXPS分析でアルミニウムの金属成分が1重量%以
上認められることから、少なくとも表面に金属成分が認
められない本発明の構成とは本質的に異なる。
【0030】
【特性の測定方法および効果の評価方法】本発明の特性
値は以下の測定法による。
【0031】(1)全膜厚 透過型電子顕微鏡による断面観察で校正した蛍光X線分
光法によるアルミニウムのピーク強度で全膜厚を決定し
た。蛍光X線分光はセイコー電子製SEA2001によ
り行なった。これら蛍光X線分光を行なったサンプルの
いくつかを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−1
200EX)により、超薄切片法により蒸着膜の断面を
切り出し観察し、蛍光X線のアルミニウムのピークの強
度と、実際の全膜厚がよい比例関係にあることを確認し
た。
【0032】(2)アルミニウム金属成分含有量 X線光電子分光装置(SSI社 SSX−100)を用
い、X線源AlKα、X線出力10kV−10mA、光
電子の脱出角度をサンプル表面の法線に対して55度の
角度で測定した。デプスプロファイル測定のためのエッ
チングはArイオンを用い、加速電圧3kV、試料電流
10.3μAで行なった。計算方法は既に述べたとおり
である。
【0033】(3)水蒸気透過率 水蒸気透過率測定装置(ハネウェル(株)製、W82
5)を用いて40℃、100%RHの条件で測定した。
【0034】(4)酸素透過率 ASTM D−3985に準じて、酸素透過率測定装置
(モダンコントロール社製、OX−TRAN100)を
用いて20℃、0%RHの条件で測定した。
【0035】(5)比光線透過率 分光光度計(日立製作所(株)、自記分光光度計323
型)により、550nmの波長における高分子樹脂フィ
ルム基材の光線透過率に対するアルミニウム酸化膜を設
けた後の高分子樹脂フィルムの光線透過率の割合を比光
線透過率とした。
【0036】
【実施例】本発明を実施例により説明する。
【0037】実施例1〜5、比較例1〜2 図3に示した蒸着部分の構成でサンプルを作成した。蒸
発源は電子ビーム加熱による方式であり、アルミナ製ル
ツボに99.99%のアルミニウム金属を装填して蒸着
した。フィルムは東レ(株)製ポリエチレンテレフタレ
ート(以下PETという。)フィルム“ルミラー”P6
0(12μm)を用いた。ロール状で巻き出しロールか
ら冷却ドラム上に送膜し蒸発源直上で蒸着が行なわれ
る。酸素雰囲気として100%酸素を巻き出し側から導
入した。冷却ドラムは冷水により約20℃に冷却した。
蒸着の手順は以下のとおりである。フィルムおよび蒸着
用アルミニウムを連続蒸着機にセットし、真空排気を行
なう。到達圧力5×10−5Torr以下になったらフ
ィルムを走行させ、電子ビーム蒸発源に電力を投入しア
ルミニウムの蒸着を開始する。インラインの光線透過率
計および抵抗率計を用いて、目的とする蒸発速度になる
ように蒸発源の電力を調整した後、酸素ガスをマスフロ
ーコントローラを通して導入する。フィルム走行速度を
低速(例えば1m/min)にし、酸素を導入するにし
たがってインラインでモニタしている光線透過率が上が
ってくることを確認し、あらかじめ定めた光線透過率に
なるように酸素導入量を調整する。フィルム走行速度を
上げて目的とする全膜厚になるようにし、サンプルを得
た。
【0038】表1にこのように作成した実施例1〜5と
比較例1〜2、原反PETフィルムの特性をまとめた。
これらのサンプルはすべてXPS分析のデプスプロファ
イルによりアルミニウム酸化膜の表面とPETフィルム
との界面では完全酸化膜が形成されていることを確認し
た。
【0039】
【表1】 実施例、比較例ともに比光線透過率は95%以上である
が、膜厚が6nm以下であるとガスバリア性が十分では
ない。
【0040】実施例6〜10、比較例3〜7 表2にアルミニウムの金属成分含有量を変えた場合の実
施例と比較例を示す。同様にいずれのサンプルもXPS
分析のデプスプロファイルによりアルミニウム酸化膜の
表面とPETフィルムとの界面では完全酸化膜が形成さ
れていることを確認した。
【0041】
【表2】 XPS分析のデプスプロファイルによりアルミニウム金
属の存在する層のアルミニウム含有量が極めて小さい場
合あるいは、アルミニウム金属が全く認められない場
合、全膜厚の大小にかかわらず比光線透過率は非常に高
く透明であるが、ガスバリア性は十分ではない。また比
較例6、7で示すように全膜厚の大小にかかわらず、ア
ルミニウム金属含有量が10%・nmを越えると、ガス
バリア性は良好であるが、比光線透過率が急激に下が
り、褐色の着色が顕著になり好ましくい。
【0042】比較例8〜9 蒸着時に酸素を導入せず、アルミニウム金属のみを蒸着
した場合の結果を表3に示す。この場合、アルミニウム
酸化膜の表面とPETフィルムとの界面にもアルミニウ
ム金属成分が認められるが、同様にしてアルミニウム金
属成分含有量を求めることはできる。
【0043】
【表3】 全膜厚の大小にかかわらず、ガスバリア性は不十分であ
り、かつ比光線透過率も低い。
【0044】
【発明の効果】本発明の透明ガスバリア性フィルムは、
以上のような構成としたため、光線透過率が高く、かつ
酸素および水蒸気に対するガスバリア性が高いという特
長を持つ。また、黄色味を帯びた着色もなく、実用上十
分な加工適性を有する。
【0045】この透明ガスバリア性フィルムは、長期保
存が必要な食品や薬品の包装材料として広く用いること
ができる。また食品をレトルトやボイルによる殺菌を行
なって長期保存できるいわゆるレトルトパウチやスタン
ディングパウチといった包装形態にも使用することがで
きる。さらに光線透過率が高いために、内容物の状態を
確認したいという要求に対応できる。また本発明のフィ
ルムはマイクロ波の透過率が高いために、包装状態でそ
のまま電子レンジにかけて内容物を調理するといった要
求にも応えることができる。
【0046】本発明の透明ガスバリア性フィルムは、単
独でも用いることができるが、さらに、印刷を施した
り、アルミニウム酸化膜の上から保護層などをコーティ
ングしたり、他のフィルムと積層したり、あるいはこれ
らを組み合わせたりするなど、さらに加工して用いるこ
ともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム金属成分を含む不完全酸化層のX
PS分析のスペクトルの一例である。
【図2】アルミニウム金属成分を膜の内部にのみ1層有
する蒸着膜のアルミニウム金属成分と完全酸化成分の組
成比のデプスプロファイルの一例である。
【図3】フィルム状基材上に蒸着を行なう連続蒸着機の
蒸着部分の概略図である。
【図4】図3の場合のアルミ蒸気強度と酸素分圧の関係
を示す。
【図5】図3と同様フィルム状基材上に蒸着を行なう連
続蒸着機の蒸着部分であるが、反応性蒸着を行なうため
のガス導入をフィルム巻き出し側から行なう場合の概略
図である。
【図6】図5の場合のアルミ蒸気強度と酸素分圧の関係
を示す。
【符号の説明】
1:XPS分析のアルミニウム酸化成分Al(III)
によるスペクトル 2:XPS分析のアルミニウム金属成分Al(0)によ
るスペクトル 3:Al(III)の組成比のプロファイル 4:Al(0)の組成比のプロファイル 5:原反PETフィルム中の炭素成分のプロファイル 6:蒸発源 7:冷却ドラム 8:フィルム 9:防着板 10:蒸着位置 11:同上 12:同上 13:ドラム回転方向 14:アルミニウム蒸気 15:酸素導入経路 16:蒸着部分を囲った場合の防着板
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−305972(JP,A) 特開 昭62−103359(JP,A) 特開 平5−339704(JP,A) 特開 平5−338073(JP,A) 特表 昭58−500031(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C08J 7/04 - 7/06 C23C 14/00 - 14/58

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子樹脂フィルム基材の少なくとも片
    面にアルミニウム酸化膜が形成されてなるフィルムであ
    って、該アルミニウム酸化膜の全膜厚が6nm以上であ
    り、かつアルミニウムの金属成分が含有されてなる不完
    全酸化層が該アルミニウム酸化膜の内部にのみ少なくと
    も1層存在し、該アルミニウム酸化膜全体中のアルミニ
    ウム金属成分含有量が0.5%・nm〜10%・nmの
    範囲であることを特徴とする透明ガスバリア性フィル
    ム。
  2. 【請求項2】 550nmの波長における比光線透過率
    が90%以上であり、かつ酸素透過率が2cc/m2
    day以下で、かつ水蒸気透過率が2g/m2・day
    以下であることを特徴とする請求項1記載の透明ガスバ
    リア性フィルム。
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