JP3087888B2 - 酒類の製造方法 - Google Patents

酒類の製造方法

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JP3087888B2
JP3087888B2 JP6034196A JP6034196A JP3087888B2 JP 3087888 B2 JP3087888 B2 JP 3087888B2 JP 6034196 A JP6034196 A JP 6034196A JP 6034196 A JP6034196 A JP 6034196A JP 3087888 B2 JP3087888 B2 JP 3087888B2
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俊郎 大森
泰史 梅本
雅彦 下田
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三和酒類株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性があり、グリセ
ロール生産能、酢酸イソアミルなどのエステル類の生産
能が高いサッカロミセス・セレビシエ(Sacchar
omycescerevisiae)に属する新規醸造
用酵母、すなわち、サッカロミセス・セレビシエH6−
7(生工研菌寄第15349号)を使用する酒類の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】グリセロールは、アルコール発酵の副産
物として生産され、清酒やワインなどの醸造物の香味形
成に重要な役割を果たしている。ところが、焼酎製造に
おいては、グリセロールは高沸点成分であることから得
られる焼酎には含まれない。しかし、焼酎製造において
は、もろみ中のグリセロール濃度を高めると、蒸留時の
もろみ中のエステルの留出率が高まり、その結果酢酸イ
ソアミルとイソアミルアルコールとの比(E/A比)が
向上した香味豊かな焼酎を得ることができる。このよう
に、醸造酒、蒸留酒においても、グリセロールは香味に
影響する重要な成分であることから、グリセロールを高
生産する酵母の開発が行われている。グリセロールを高
生産する株のスクリーニング方法としては、アリルアル
コール耐性株、ピラゾール耐性株などから選別する方法
(特開平4−356180号公報)、高濃度の塩化ナト
リウムに耐性を示す耐塩性株から選別する方法(特開平
7−115956号公報)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した公報に記載さ
れた菌株を使えば、もろみ中のグリセロール濃度を高め
られ、焼酎中のE/A比は増加する。しかしながら、当
該菌株では酢酸イソアミルなどの吟醸香エステルの生産
という点では十分ではない。グリセロールを高生産し、
さらに酢酸イソアミルなどの吟醸香エステル類も高生産
する焼酎酵母が、焼酎の品質向上のために望ましい。し
かし、そういう株は未だ開発されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題を解決すべく、各種実験を介して、鋭意研究を重ね
た。その結果、熱ショック処理を施してスクリーニング
した株、つまり耐熱性株からグリセロール生産能、およ
び酢酸イソアミルなどのエステル類の生産能が高い新規
醸造用酵母サッカロミセス・セレビシエH6−7(生工
研菌寄第15349号)を見い出し、これを用いてアル
コール発酵する場合、グリセロール生産能、および酢酸
イソアミルなどの吟醸香エステル類の生産能が顕著に向
上することがわかった。本発明はこの判明した事実に基
づいたものであり、上述した新規醸造用酵母を用いてア
ルコール発酵を行い、もろみ中のグリセロール濃度およ
び官能的に良好なエステル類の濃度を高め、香味豊かな
酒類の効率的製造を可能にする方法を提供することを目
的とする。
【0005】
【発明の構成・効果】上記目的を達成する本発明の酒類
の製造方法は、本発明者らが発見した新規醸造用酵母の
サッカロミセス・セレビシエH6−7(生工研菌寄第1
5349号)をアルコール発酵用培地に接種してアルコ
ール発酵を行うことを特徴とするものである。本発明に
よれば、従来の酵母を使用したときに比べ、アルコール
発酵後のもろみ中のグリセロールあるいは酢酸イソアミ
ルなどの吟醸香エステル類の濃度が高くなり、香味豊か
な酒類を効率的に得ることができる。本発明においてい
う酒類は、麹、麦芽および/または酵素剤を使用して発
酵工程を介して得られるものを意味し、代表的には例え
ば、焼酎、ウイスキーなどの蒸留酒、清酒、ワイン、ビ
ールなどの醸造酒が挙げられるが、これらに限定される
ものではない。ところで、アルコール発酵の形式には、
ビール、ウイスキー、ワインなどを製造する場合の単発
酵と、清酒、焼酎などを製造する場合の並行複発酵とが
ある。また、仕込み形式には焼酎を製造する場合の2段
仕込み(1次仕込み、2次仕込み)、清酒を製造する場
合の3段仕込み(添仕込み、仲仕込み、留仕込み)、ま
たビール、ウイスキー、ワイン、泡盛などを製造する場
合の1段仕込みなどがある。本発明はこれらのいずれの
場合にあっても適用できて、所望の効果が発揮される。
【0006】本発明により上述した酒類を製造するにつ
いて使用するアルコール発酵の原料には、たとえば、
米、大麦、ライ麦、そば、ヒエ、とうもろこしなどの穀
類をはじめ、甘藷、なつめやしあるいはブドウ、ミカ
ン、リンゴ、スターチなどが挙げられる。これらの原料
は、製造するアルコール飲料の酒類に応じて適宜、選択
使用される。たとえば、清酒を製造する場合には、清酒
の製造に通常使用される原料、代表的には米が使用され
る。焼酎を製造する場合には、焼酎の製造に通常使用さ
れる原料、代表的には、米、大麦、ライ麦、そば、ヒ
エ、とうもろこしが使用される。なおこの場合、適宜の
副原料、たとえば甘藷、なつめやしなどを使用すること
ができる。ワインを製造する場合には、ワインの製造に
通常使用される、ブドウ、ミカン、リンゴなどが使用さ
れる。ウイスキーを製造する場合には、ウイスキーの製
造に通常使用される穀類、代表的には、大麦、とうもろ
こしなどが使用される。ビールを製造する場合には、ビ
ールの製造に通常使用される穀類、代表的には大麦が使
用される。いずれの場合にあっても、穀類を原料に使用
する場合、該穀類は精白してもそのままでもよい。
【0007】ところで、本発明の酒類の製造方法におい
ては、酵素を含む原料を使用することができる。そうし
た原料としては、たとえば清酒、焼酎などの製造におい
て使用される麹、ビール、ウイスキーの製造において使
用される麦芽が挙げられる。前述の酵素を含む原料はい
ずれのものも適宜選択使用できるが、特に白麹菌を用い
る場合、それが酸度が高い麹であっても、本発明の目的
は達成される。また前述の原料の酵素活性が低い場合に
は、糖化酵素を用いることができる。以上のように、本
発明はあらゆる酒類の製造に有効であるが、特に大麦を
使用する酒類、および高濃度のアルコールが生産される
酒類の製造に特に有効である。さらに大麦を用い、かつ
クエン酸を含む麹を使用する場合、従来酵母を使用する
場合との違いが顕著に現れる。
【0008】本発明において使用するサッカロミセス・
セレビシエH6−7は、下述するTTC染色性(1)お
よびD.C.染色性(2)により識別されるものであ
る。すなわち、(1)古川、秋山の方法(古川敏郎、秋
山裕一:農化、37,398(1963))に従ってT
TC染色性試験、すなわち菌体を適当に希釈し(1プレ
ートに約200程度となるよう)、TTC下層培地に3
0℃で2日間プレート培養したコロニーへ、TTC寒天
を溶解後45℃程度にしてから静かに重層し、固まった
後30℃に2〜3時間放置し、コロニーの染色を観察し
たとき、ピンク色を示し、かつ(2)溝口、藤田の方法
(溝口晴彦、藤田栄信:醗工、59,185(198
1))に従って、D.C.染色性試験、すなわち菌体を
適当に希釈し(1プレートに約200程度となるよ
う)、TTC下層培地に30℃で2日間プレート培養し
たコロニーへ、上層用軟寒天を溶解後45℃程度にして
から静かに重層し、固まった後室温に30分放置し、コ
ロニーの染色を観察したとき、茶色を示すことにより識
別される。
【0009】また、本発明により使用するサッカロミセ
ス・セレビシエH6−7は、下述する菌学的性質を有す
る。 (a)YM培地を用い、30℃で2日間培養したときの
菌の形態: 栄養細胞の大きさ:4〜9μm 栄養細胞の形状:卵型 増殖の形態:出芽
【0010】(b)YM寒天平板培地を用い、30℃で
2日間培養したときのコロニーの形態: 形態:円 隆起:凸円状 周縁:円滑 大きさ(直径):2〜3mm 色調:白色で不透明 表面:円滑で光沢あり
【0011】(c)炭素源資化性:グルコース、ガラク
トース、フルクトース、シュクロース、マルトース、マ
ンノース、トレハロース、アラビノース、ラフィノー
ス、エタノール、乳酸、α−メチルジグルコシド、コハ
ク酸、グリセロールは資化する。セロビオース、メリビ
オース、エリスリトール、イノシトール、イヌリン、ラ
クトース、マンニトール、メレジトース、メリビオー
ス、ラムノース、リボース、サリシン、ソルビトール、
スターチ、キシロースは資化しない。
【0012】(d)増殖阻害物質に対する耐性:10p
pmセルレニン存在下の寒天最少培地(2wt.%グル
コース、0.67wt.%イーストナイトロジェンベー
スw/oアミノ酸、2wt.%寒天)でコロニーを形成
しない。12wt.%塩化ナトリウム存在下の寒天最少
培地(2wt.%グルコース、0.67wt.%イース
トナイトロジェンベースw/oアミノ酸、2wt.%寒
天)でコロニーを形成する。
【0013】本発明において使用するサッカロミセス・
セレビシエH6−7は、本発明者らが見い出した新菌株
である。以下に、本発明者らが当該新菌株H6−7を見
い出すに至った経緯を説明する。本発明者らは、耐熱性
を有し、グリセロール生産能および酢酸イソアミルなど
の吟醸香エステル類の生産能が高い菌を分離すべく、B
AW−6株(旧微工研菌寄第12871号)に、以下に
述べるように、熱ショック処理を施した。その結果、該
熱ショック処理で得られた酵母の中からグリセロール生
産に優れ、かつ酢酸イソアミルなどの吟醸香エステル類
の生産に優れ、菌学的性質が従来のBAW−6株から明
白に異なる、従来未知の新規な本発明の酵母菌株を取得
した。
【0014】以下に、本発明の新規菌株を取得するに至
った経緯を述べる。 1.有用株の取得
【実験1】 酵母のグリセロール生産に及ぼす熱ショック処理温度の
影響:本実験は、酵母のグリセロール生産と熱ショック
処理温度との関係を検討する目的で行った。10mlの
YEPD培地(2wt.%グルコース、2wt.%ポリ
ペプトン、1wt.%酵母エキス)において27℃で3
6時間前培養した定常期の焼酎酵母BAW−6(旧微工
研菌寄第12871号)を含む培養液の入った試験管を
4本用意し、それぞれを70℃の恒温槽で35℃,40
℃,45℃,50℃の各所定の温度まで急速に加熱し
た。それぞれの培養液が前記所定の温度に達した時点
で、それぞれの培養液を前記所定の温度に設定した各恒
温槽に移し、撹拌しながら10分間および20分間処理
した後、27℃まで急冷し、それぞれの培養液1mlを
100mlのYEPD培地(10wt.%グルコース、
2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキス)に接
種し、30℃で4日間静置培養を行った。酵母が生産し
たグリセロールは、HPLC法で分析した(大森ら:醸
協、89,817−821(1994))。
【0015】得られた結果を表1に示す。熱ショック処
理は、処理温度が45℃のとき最もグリセロール生産に
対して促進効果があり、次いで処理温度が50℃で効果
があった。処理温度が40℃でも、グリセロール生産量
は10分間処理で5%、20分間処理でおよそ10%増
加した。しかし、有意差検定の結果、40℃での10分
間処理では、有意な差は認められなかった。また、35
℃ではほとんど効果が認められなかった。酢酸イソアミ
ルは、グリセロール生産が最も高かった45℃処理でや
や増加する傾向にあった。しかし、統計学上有意な差は
認められなかった。
【0016】
【実験2】 大麦焼酎もろみに対する熱ショック処理:熱ショック処
理の効果を高めるために、大麦焼酎もろみを用いて実験
を行った。常法により製造した大麦麹120gに水12
0mlを加え、純粋培養した焼酎酵母BAW−6(1×
108cell)を接種し、25℃で5日間発酵させた
大麦焼酎もろみを調製し、さらにガーゼろ過により固形
分を除去したもろみ液部について熱ショック処理を以下
のようにして施した。すなわち45℃で20分間熱処理
し、得られたものをYEPD寒天培地(2wt.%グル
コース、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキ
ス)に適宜希釈して塗布し、30℃で2日間培養した。
その結果、熱ショック処理後の生残率は熱ショック処理
前のおよそ0.1%まで低下した。このように、もろみ
中の酵母の耐熱性は、合成培地で培養した酵母の耐熱性
よりも低下していた。この実験で生残していた30株を
耐熱性株として、それぞれの株を別々にYEPD培地
(2wt.%グルコース、2wt.%ポリペプトン、1
wt.%酵母エキス)2mlに接種し、30℃で前培養
した後、その100μlをそれぞれ別々にカザミノ酸培
地(10wt.%グルコース、1.17wt.%イース
トカーボンベース、0.5wt.%カザミノ酸)10m
lに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵した。酵母が
生産したグリセロールはHPLC法で、酵母が生産した
香気成分はヘッドスペースガス分析法で分析した。
【0017】得られた結果を表2に示した。熱ショック
処理を施すことによって、30株のうち、ほぼ全ての株
が、親株と比べグリセロール生産が増加した。また30
株のうちいくつかの株については、酢酸イソアミル、カ
プロン酸エチルなどの吟醸香エステルの生産量も増加し
た株が得られた。そこで該30株の中からグリセロール
の生産と吟醸香エステルの生産の両者において良好な7
株を分離した。そしてこの7株を次の操作に用いた。す
なわち、常法により製造した大麦麹120gに水120
mlを加えたものを7つ用意し、このそれぞれに先ほど
分離した7株を個々のYEPD培地で純粋培養したもの
を、1×108cellづつ接種し、25℃で5日間発
酵させて、大麦焼酎もろみを調製し、さらにガーゼろ過
により固形分を除去したもろみ液部について再び45℃
で20分間熱ショック処理を行った。
【0018】熱ショック処理した7つのもろみをそれぞ
れ適宜希釈して、別々のYEPD寒天培地(2wt.%
グルコース、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母
エキス)に塗布し、30℃で2日間培養し、供試した7
株のそれぞれ1株につき比較的大きなコロニーを10株
づつ分離した。さらに、分離した株をそれぞれ個々にY
EPD培地(2wt.%グルコース、2wt.%ポリペ
プトン、1wt.%酵母エキス)2mlに接種し、30
℃で前培養した後、その100μlをそれぞれ別々にカ
ザミノ酸培地(10wt.%グルコース、1.17w
t.%イーストカーボンベース、0.5wt.%カザミ
ノ酸)10mlに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵
した。酵母が生産したグリセロールはHPLC法で、酵
母が生産した香気成分はヘッドスペースガス分析法で分
析した。得られた結果を表3乃至表5に示す。表3乃至
表5に示すように、熱ショック処理を2回施すことによ
って分離した70株のうち、酢酸イソアミル、カプロン
酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、およ
びグリセロールの生産量がさらに増加した株が数株得ら
れた。これら数株のうち、前記化合物の生産能および増
殖試験の全てにおいて良好な2株(H6−7,H7−
5)を分離した。
【0019】
【実験3】 H6−7株、H7−5株の形質安定性確認試験:この実
験では、実験2で得られたH6−7株とH7−5株の形
質安定性について調べた。H6−7株とH7−5株をそ
れぞれ別々にYEPD培地(2wt.%グルコース、2
wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキス)2ml
に接種し、30℃で前培養した後、その100μlをそ
れぞれ別々にカザミノ酸培地(2wt.%グルコース、
1.17wt.%イーストカーボンベース、0.5w
t.%カザミノ酸)10mlに植え継ぎ、30℃で4日
間発酵させた。さらに、前記4日目のカザミノ酸培地発
酵液の100μlをそれぞれ別々に新たなカザミノ酸培
地(2wt.%グルコース、1.17wt.%イースト
カーボンベース、0.5wt.%カザミノ酸)10ml
に植え継ぎ、30℃で4日間発酵させた。最終的には、
この植え継ぎ・発酵の操作を8回繰り返し、それぞれの
回において4日目のカザミノ酸培地について分析を行っ
た。酵母が生産したグリセロールはHPLC法で、酵母
が生産した香気成分はヘッドスペースガス分析法で分析
した。得られた8回の結果のうち、1,4および8回目
の結果を図1に示した。図1に示した結果から、H6−
7株、H7−5株の酢酸イソアミルおよびグリセロール
の高生産能の形質は、8代継代培養でも安定的に保持さ
れていることが明らかになった。最終的には、継代培養
後、形質がより安定していたH6−7株を有用な株と判
定し、新菌株として分離した。本菌株は、平成7年12
月15日に工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託
し、生工研菌寄第15349号なる受託番号を得た。
【0020】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を説明する。本
発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものでは
ない。
【0021】
【実施例1】酵母として純粋培養したサッカロミセス・
セレビシエH6−7株(生工研菌寄第15349号)を
用い、原料として大麦(70%精白)を用い、以下に述
べる手法で大麦焼酎を製造した。 酵母の前培養:前記酵母(H6−7株)を、1Lの2w
t.%YEPD培地において、30℃で2日間、前培養
した。 大麦麹の作製:30kgの大麦を40%(W/W)吸水
させ、40分間蒸した後、25℃まで放冷し、大麦1k
gあたり1g量の種麹(焼酎白麹菌)を接種し、38
℃,相対湿度(RH)95%で24時間、32℃,RH
92%で20時間培養して大麦麹を得た。 蒸麦の作製:60kgの大麦を40%(W/W)吸水さ
せ、40分間蒸した後、25℃まで放冷して蒸麦を得
た。 1次仕込みでは、上記大麦麹に前培養した酵母を加え、
さらに水36Lを加えて1次もろみを得た。得られた1
次もろみを5日間発酵(1段目の発酵)に付した。つい
で、2次仕込みでは、1段目の発酵を終えた1次もろみ
に、上記蒸麦と水100Lを加えて2次もろみを得た。
得られた2次もろみを撹拌しながら10日間発酵(2段
目の発酵)に付した。全発酵過程での品温経過は図2に
示すとおりであった。2段目の発酵を終えた2次もろみ
を常法により単式蒸留に付して焼酎を得た。
【0022】
【比較例1】醸造用酵母としてBAW−6を用いた以外
は、実施例1と同様にして製造した発酵終了後の大麦焼
酎もろみを単式蒸留して焼酎を得た。
【0023】
【評価】実施例1および比較例1で得られた焼酎につい
て、エタノール濃度を国税庁所定分析法注解に従い浮ひ
ょう法により、グリセロール濃度をHPLC法により、
香気成分をヘッドスペースガス分析法によりそれぞれ調
べた。焼酎の官能検査は、単式蒸留後の原酒をアルコー
ル度数25%に調整したものを用い、20名のパネラー
による、香り、味、総合について5点評価法(1:優、
3:可、5:不可)で行った。分析の結果を表6に、官
能検査の結果を表7に示した。表6の結果から、親株で
あるBAW−6を用いたものよりもろみ中のグリセロー
ル濃度が1.3倍以上、酢酸イソアミルなどのエステル
類はおよそ1.2倍増加したことが判った。なお、エタ
ノール濃度については、親株と同じであった。また、焼
酎中の酢酸イソアミルなどのエステル類については、親
株使用の場合に比較して1.2〜1.5倍に増加したこ
とが判った。表7に示した官能検査の結果、香り、味、
総合の全てにおいて、H6−7株を用いたものの方が、
良いと評価された。また、パネラーの評価からH6−7
株を用いた場合、BAW−6を用いるよりもさらに香味
豊かな焼酎が得られることが明らかになった。このよう
に、香味豊かになる理由は、H6−7株の酢酸イソアミ
ルなどの香味に良い影響を与えるエステル類の生産量が
多いことに加え、もろみ中のグリセロール濃度と関連す
るものと考えられる。
【0024】
【実施例2】酵母として純粋培養したサッカロミセス・
セレビシエH6−7株(生工研菌寄第15349号)を
用い、原料として精米(70%精白)を用い、以下に述
べる手法で米焼酎を製造した。 酵母の前培養:前記酵母(H6−7株)を、1Lの2w
t.%YEPD培地において、30℃で2日間、前培養
した。 米麹の作製:30kgの大麦を30%(W/W)吸水さ
せ、40分間蒸した後、25℃まで放冷し、米1kgあ
たり1g量の種麹(焼酎白麹菌)を接種し、38℃,相
対湿度(RH)95%で24時間、32℃,RH92%
で20時間培養して米麹を得た。 蒸米の作製:60kgの大麦を30%(W/W)吸水さ
せ、40分間蒸した後、25℃まで放冷して蒸米を得
た。 1次仕込みでは、上記米麹に前培養した酵母を加え、さ
らに水36Lを加えて1次もろみを得た。得られた1次
もろみを5日間発酵(1段目の発酵)に付した。つい
で、2次仕込みでは、1段目の発酵を終えたもろみに、
上記蒸米と水100Lを加えて2次もろみを得た。得ら
れた2次もろみを撹拌しながら10日間発酵(2段目の
発酵)に付した。全発酵過程での品温経過は図2に示す
とおりであった。2段目の発酵を終えた2次もろみを常
法により単式蒸留に付して焼酎を得た。
【0025】
【比較例2】醸造用酵母としてBAW−6を用いた以外
は、実施例2と同様にして製造した発酵終了後の米焼酎
もろみを単式蒸留して焼酎を得た。
【0026】
【評価】実施例2および比較例2で得られた焼酎につい
て、エタノール濃度を国税庁所定分析法注解に従い浮ひ
ょう法により、グリセロール濃度をHPLC法により、
香気成分をヘッドスペースガス分析法によりそれぞれ調
べた。焼酎の官能検査は、単式蒸留後の原酒をアルコー
ル度数25%に調整したものを用い、20名のパネラー
による、香り、味、総合について5点評価法(1:優、
3:可、5:不可)で行った。分析の結果を表8に、官
能検査の結果を表9に示した。表8の結果から、親株で
あるBAW−6を用いたものよりもろみ中のグリセロー
ル濃度が1.3倍以上、酢酸イソアミルなどのエステル
類はおよそ1.2倍増加したことが判った。なお、エタ
ノール濃度については、親株と同じであった。また、焼
酎中の酢酸イソアミルなどのエステル類については、親
株使用の場合に比較して1.2〜1.5倍に増加したこ
とが判った。表9に示した官能検査の結果、香り、味、
総合の全てにおいて、H6−7株を用いたものの方が、
良いと評価された。また、パネラーの評価からH6−7
株を用いた場合、BAW−6を用いるよりもさらに香味
豊かな焼酎が得られることが明らかになった。
【0027】
【実施例3】酵母として純粋培養したサッカロミセス・
セレビシエH6−7株(生工研菌寄第15349号)を
用い、原料として精米(70%精白)を用い、以下に述
べる手法で清酒を製造した。 酵母の前培養:前記酵母(H6−7株)を、10mlの
2wt.%YEPD培地において、30℃で2日間、前
培養した。 蒸米の作製:米(70%精白)を30%(W/W)吸水
させ、40分間蒸した後、25℃まで放冷して蒸米を得
た。 麹米の作製:蒸米1kgあたり1g量の種麹(清酒黄麹
菌)を接種し、32℃,相対湿度95%で21時間、3
5℃,相対湿度92%で8時間、40℃,相対湿度70
%で4時間、42℃,相対湿度40%で12時間培養し
て米麹を得た。添仕込みは蒸米(原料として630
g)、米麹(原料として270g)、および水1080
mlに酵母および腐敗防止のための乳酸5.4mlを用
い、2日間15℃で発酵させた。仲仕込みは、添もろみ
に蒸米(原料米として1400g)、米麹(原料として
400g)、および水2250mlを加え、13℃で1
日間発酵させた。留仕込みは、仲もろみに蒸米(原料米
として1970g)、米麹(原料米として530g)、
および水3430mlを加え、12℃で仕込み、以降1
日ごとに1℃品温を上昇させ、7日目以降は反対に1℃
づつ10℃まで低下させ、20日間発酵させた。これに
より清酒を得た。
【0028】
【比較例3】実施例3において上記酵母H6−7に代え
て焼酎用酵母BAW−6を用いた以外は、実施例3と同
様にして清酒を製造した。
【0029】
【評価】実施例3および比較例3のそれぞれにおいて得
られた清酒について官能検査を行った。該官能検査は、
20名のパネラーによる、香り、味、総合について5点
評価法(1:優、3:可、5:不可)で行った。得られ
た官能検査を表10に示した。表10に示した結果から
次のことが判った。すなわち、香り、味、総合の項目
で、H6−7株を用いた清酒のほうが高い評価を受け
た。また、パネラーの評価からH6−7株を用いた場
合、まろやかで吟醸香のする清酒が得られることが明ら
かになった。以上述べたことからも明らかなように、上
述した新規な醸造用酵母、すなわちサッカロミセス・セ
レビシエH6−7株(生工研菌寄第15349号)を使
用する本発明によれば、従来の焼酎製造法による場合よ
りも香味豊かな焼酎を得ることができる。また、清酒醸
造においてもまろやかで吟醸香のする清酒を得ることが
できることが判った。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
【表8】
【0038】
【表9】
【0039】
【表10】
【0040】
【発明効果の概要】新規な醸造用酵母、すなわち、サッ
カロミセス・セレビシエH6−7(生工研菌寄第153
49号)を使用することにより、従来の蒸留酒製造にお
けるよりも香味豊かな蒸留酒を効率的に製造することが
できる。また、清酒醸造においては、まろやかで吟醸香
のする清酒を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】H6−7株、H7−5株の酢酸イソアミルおよ
びグリセロール高生産能の形質安定性を示すグラフであ
る。
【図2】発酵における品温経過を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12G 1/00 - 3/14 C12C 1/00 - 13/10 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サッカロミセス・セレビシエH6−7
    (生工研菌寄第15349号)を用いてアルコール発酵
    を行うことを特徴とする酒類の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酒類が醸造酒である請求項1に記載
    の酒類の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酒類が蒸留酒である請求項1に記載
    の酒類の製造方法。
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