JP3176869B2 - 新規な醸造用酵母 - Google Patents
新規な醸造用酵母Info
- Publication number
- JP3176869B2 JP3176869B2 JP9795097A JP9795097A JP3176869B2 JP 3176869 B2 JP3176869 B2 JP 3176869B2 JP 9795097 A JP9795097 A JP 9795097A JP 9795097 A JP9795097 A JP 9795097A JP 3176869 B2 JP3176869 B2 JP 3176869B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- yeast
- medium
- bbr
- strain
- cultured
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Alcoholic Beverages (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サッカロミセス・セレ
ビシエ(Saccharomyces cerevis
iae)に属し、もろみ中のグリセロール生産能、およ
びイソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比
(E/A比)が共に高い新規醸造用酵母、すなわち、サ
ッカロミセス・セレビシエBBR−7(生工研菌寄第1
6092号)に関する。
ビシエ(Saccharomyces cerevis
iae)に属し、もろみ中のグリセロール生産能、およ
びイソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比
(E/A比)が共に高い新規醸造用酵母、すなわち、サ
ッカロミセス・セレビシエBBR−7(生工研菌寄第1
6092号)に関する。
【0002】
【従来の技術】グリセロールは、アルコール発酵の副産
物として生産され、清酒やワインなどの醸造物の香味形
成に重要な役割を果たしている。一方、焼酎製造におい
ては、グリセロールは高沸点成分であることから得られ
る焼酎には含まれない。しかし、もろみ中のグリセロー
ル濃度を高めると、蒸留時のもろみ中のエステルの留出
率が高まるため、留出液中のイソアミルアルコールに対
する酢酸イソアミルの比(以下、この比をE/A比と呼
ぶこととする)が向上し、その結果香味豊かな焼酎を得
ることができる。このようにグリセロールは酒類の香味
を左右する成分として重要であるため、近年、グリセロ
ールを高生産する酵母の開発が行われている。グリセロ
ールを高生産する株(酵母)のスクリーニング方法とし
ては、酵母に変異処理を施して、アリルアルコールやピ
ラゾールに耐性を示す株から選別する方法が提案されて
いる(特開平04−356180号公報)。この方法に
より選別された株がグリセロール生産能が高い理由につ
いては、変異処理前の親株と比較して、アルコールデヒ
ドロゲナーゼが一部欠損したことによるものと説明され
ている。なお、呼吸欠損株もグリセロールを高生産する
ことが知られているが、これは同株がグリセロールを資
化できないためと報告されている(大淵ら:醗酵工学、
69,203−209(1991))。
物として生産され、清酒やワインなどの醸造物の香味形
成に重要な役割を果たしている。一方、焼酎製造におい
ては、グリセロールは高沸点成分であることから得られ
る焼酎には含まれない。しかし、もろみ中のグリセロー
ル濃度を高めると、蒸留時のもろみ中のエステルの留出
率が高まるため、留出液中のイソアミルアルコールに対
する酢酸イソアミルの比(以下、この比をE/A比と呼
ぶこととする)が向上し、その結果香味豊かな焼酎を得
ることができる。このようにグリセロールは酒類の香味
を左右する成分として重要であるため、近年、グリセロ
ールを高生産する酵母の開発が行われている。グリセロ
ールを高生産する株(酵母)のスクリーニング方法とし
ては、酵母に変異処理を施して、アリルアルコールやピ
ラゾールに耐性を示す株から選別する方法が提案されて
いる(特開平04−356180号公報)。この方法に
より選別された株がグリセロール生産能が高い理由につ
いては、変異処理前の親株と比較して、アルコールデヒ
ドロゲナーゼが一部欠損したことによるものと説明され
ている。なお、呼吸欠損株もグリセロールを高生産する
ことが知られているが、これは同株がグリセロールを資
化できないためと報告されている(大淵ら:醗酵工学、
69,203−209(1991))。
【0003】本発明者らの一人は他者と共同で、サッカ
ロミセス・セレビシエよりも耐塩性があるチゴサッカロ
ミセス・ルーキシがグリセロールを高生産することか
ら、サッカロミセス・セレビシエの耐塩性を強化した株
はグリセロールを高生産するのではないかと想定し、酵
母(サッカロミセス・セレビシエ)に変異処理を施し、
高濃度の塩化ナトリウムを含む培地を用いてサッカロミ
セス・セレビシエの耐塩性を強化し、その株の中からグ
リセロールを高生産する株(生工研菌寄第13831
号)を得た(特開平7−115956号公報参照)。ま
た、ロイシンのアナログであるトリフルオロロイシンに
対して耐性を示すサッカロミセス・セレビシエに属する
トリフルオロロイシン耐性株が酢酸イソアミルを高生産
し、フェニルアラニンのアナログであるρ−フルオロフ
ェニルアラニンに対して耐性を示すサッカロミセス・セ
レビシエに属するρ−フルオロフェニルアラニン耐性株
が酢酸β−フェネチルを高生産することがこれまでに知
られている(Ashida,S.et al.,Agr
ic.Biol.Chem.,51,2061−206
5(1987);Fukuda,K.et al.,A
gric.Biol.,Chem.,54,269−2
71(1990))。さらに本発明者らは他者と共同
で、これらのサッカロミセス・セレビシエに属するアミ
ノ酸アナログ耐性株がグリセロールも高生産することを
見い出し、先に報告している(Omori,T.et
al.,J.Ferment.Bioeng.,80,
218−222(1995))。
ロミセス・セレビシエよりも耐塩性があるチゴサッカロ
ミセス・ルーキシがグリセロールを高生産することか
ら、サッカロミセス・セレビシエの耐塩性を強化した株
はグリセロールを高生産するのではないかと想定し、酵
母(サッカロミセス・セレビシエ)に変異処理を施し、
高濃度の塩化ナトリウムを含む培地を用いてサッカロミ
セス・セレビシエの耐塩性を強化し、その株の中からグ
リセロールを高生産する株(生工研菌寄第13831
号)を得た(特開平7−115956号公報参照)。ま
た、ロイシンのアナログであるトリフルオロロイシンに
対して耐性を示すサッカロミセス・セレビシエに属する
トリフルオロロイシン耐性株が酢酸イソアミルを高生産
し、フェニルアラニンのアナログであるρ−フルオロフ
ェニルアラニンに対して耐性を示すサッカロミセス・セ
レビシエに属するρ−フルオロフェニルアラニン耐性株
が酢酸β−フェネチルを高生産することがこれまでに知
られている(Ashida,S.et al.,Agr
ic.Biol.Chem.,51,2061−206
5(1987);Fukuda,K.et al.,A
gric.Biol.,Chem.,54,269−2
71(1990))。さらに本発明者らは他者と共同
で、これらのサッカロミセス・セレビシエに属するアミ
ノ酸アナログ耐性株がグリセロールも高生産することを
見い出し、先に報告している(Omori,T.et
al.,J.Ferment.Bioeng.,80,
218−222(1995))。
【0004】ところで、酢酸イソアミルやカプロン酸エ
チルなどのエステル類は、清酒の吟醸香成分を構成する
成分で、酒類にフルーティーな香気を付与する重要な成
分である。また、E/A比は吟醸酒の香りの強さ、官能
評価と相関が高いことが報告されている(吉沢:醸造協
会誌、75,451−457(1980))。特に、清
酒の製造において、このようなフルーティーな吟醸香成
分の含量の高い清酒を製造するために、高精白米の使用
や低温発酵などの手段がとられる。また、近年では吟醸
香成分の改善をもたらす酵母の開発が行われており、特
に酢酸イソアミル高生産性酵母は上述したようにトリフ
ルオロロイシン耐性株から取得できることが知られてい
る。しかしながら、このトリフルオロロイシン耐性株は
確かに酢酸イソアミルの生成量の増加をもたらすが、同
時にイソアミルアルコールも多量に生産してしまう。そ
のため、トリフルオロロイシン耐性株を使用して得られ
る醸造酒は、比較的重いタイプの芳香を有し、香味バラ
ンスが欠けるという欠点をもつ。こうしたことから、イ
ソアミルアルコールを多量に生産させることなくして酢
酸イソアミルのみを高生産させることでE/A比を高く
する手段としてサッカロミセス・セレビシエに属する酢
酸イソアミル低分解性株を用いること(若井ら:醸造協
会誌,84,240−244(1989)、特開平6−
169747号公報)が提案されているが、当該酵母
(すなわち、酢酸イソアミル低分解性株)のグリセロー
ル生産能は親株と同等であり、高生産するものではな
い。こうしたことから、もろみ中のグリセロール生産
能、およびE/A比が共に高い酵母はこれまで未開発で
あり、このような酵母の開発が望まれている。
チルなどのエステル類は、清酒の吟醸香成分を構成する
成分で、酒類にフルーティーな香気を付与する重要な成
分である。また、E/A比は吟醸酒の香りの強さ、官能
評価と相関が高いことが報告されている(吉沢:醸造協
会誌、75,451−457(1980))。特に、清
酒の製造において、このようなフルーティーな吟醸香成
分の含量の高い清酒を製造するために、高精白米の使用
や低温発酵などの手段がとられる。また、近年では吟醸
香成分の改善をもたらす酵母の開発が行われており、特
に酢酸イソアミル高生産性酵母は上述したようにトリフ
ルオロロイシン耐性株から取得できることが知られてい
る。しかしながら、このトリフルオロロイシン耐性株は
確かに酢酸イソアミルの生成量の増加をもたらすが、同
時にイソアミルアルコールも多量に生産してしまう。そ
のため、トリフルオロロイシン耐性株を使用して得られ
る醸造酒は、比較的重いタイプの芳香を有し、香味バラ
ンスが欠けるという欠点をもつ。こうしたことから、イ
ソアミルアルコールを多量に生産させることなくして酢
酸イソアミルのみを高生産させることでE/A比を高く
する手段としてサッカロミセス・セレビシエに属する酢
酸イソアミル低分解性株を用いること(若井ら:醸造協
会誌,84,240−244(1989)、特開平6−
169747号公報)が提案されているが、当該酵母
(すなわち、酢酸イソアミル低分解性株)のグリセロー
ル生産能は親株と同等であり、高生産するものではな
い。こうしたことから、もろみ中のグリセロール生産
能、およびE/A比が共に高い酵母はこれまで未開発で
あり、このような酵母の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したサッカロミセ
ス・セレビシエに属するグリセロール高生産株(生工研
菌寄第13831号)を使えば、もろみ中のグリセロー
ル濃度が高められ、それにより蒸留後の焼酎中のE/A
比は増加する。しかしながら、当該酵母では香りに重要
な影響を与える吟醸香エステルの一つである酢酸イソア
ミルの生産という点では十分ではない。もろみ中のグリ
セロール生産能、およびE/A比が共に高い酵母が、特
に焼酎の品質向上のために望ましい。しかし、そうした
株(酵母)は未だ開発されていない。
ス・セレビシエに属するグリセロール高生産株(生工研
菌寄第13831号)を使えば、もろみ中のグリセロー
ル濃度が高められ、それにより蒸留後の焼酎中のE/A
比は増加する。しかしながら、当該酵母では香りに重要
な影響を与える吟醸香エステルの一つである酢酸イソア
ミルの生産という点では十分ではない。もろみ中のグリ
セロール生産能、およびE/A比が共に高い酵母が、特
に焼酎の品質向上のために望ましい。しかし、そうした
株(酵母)は未だ開発されていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上述の課
題を解決すべく,各種実験を介して,鋭意研究を重ね
た。その結果,もろみ中のグリセロール生産能,及びイ
ソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比(以
下,この比をE/A比と呼ぶこととする)が共に高い酵
母を見いだすに至った。本発明の目的は,tert−ブ
チルヒドロペルオキシドに対して耐性を有し,もろみ中
のグリセロール生産能,及びE/A比が共に高い新規醸
造用酵母を提供することにある。
題を解決すべく,各種実験を介して,鋭意研究を重ね
た。その結果,もろみ中のグリセロール生産能,及びイ
ソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比(以
下,この比をE/A比と呼ぶこととする)が共に高い酵
母を見いだすに至った。本発明の目的は,tert−ブ
チルヒドロペルオキシドに対して耐性を有し,もろみ中
のグリセロール生産能,及びE/A比が共に高い新規醸
造用酵母を提供することにある。
【0007】
【発明の構成・効果】本発明により提供される、ter
t−ブチルヒドロペルオキシドに対して耐性を有し、も
ろみ中のグリセロール生産能、およびイソアミルアルコ
ールに対する酢酸イソアミルの比(以下、この比をE/
A比と呼ぶこととする)が共に高い新規醸造用酵母、す
なわちBBR−7(生工研菌寄第16092号)は、下
述するTTC染色性(1)およびD.C.染色性(2)
により識別されるものである。すなわち、(1)古川、
秋山の方法(古川敏郎、秋山裕一:農化、37,398
−402(1963))に従って、TTC染色性試験、
すなわち菌体を適当に希釈し(1プレートに約200程
度となるよう)、TTC下層培地に30℃で2日間プレ
ート培養したコロニーへ、TTC寒天を溶解後45℃程
度にしてから静かに重層し、固まった後30℃に2〜3
時間放置し、コロニーの染色を観察したとき、炭素源に
グルコースを用いた培地ではピンク色、炭素源にα−メ
チルグルコシドを用いた培地では白色(呈色しない)を
示し、かつ(2)溝口、藤田の方法(溝口晴彦、藤田栄
信:醗工、59,185−188(1981))に従っ
て、D.C.染色性試験、すなわち菌体を適当に希釈し
(1プレートに約200程度となるよう)、TTC下層
培地に30℃で2日間プレート培養したコロニーへ、上
層用軟寒天を溶解後45℃程度にしてから静かに重層
し、固まった後室温に30分放置し、コロニーの染色を
観察したとき、白色(呈色しない)を示すことにより識
別されるサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母
である。
t−ブチルヒドロペルオキシドに対して耐性を有し、も
ろみ中のグリセロール生産能、およびイソアミルアルコ
ールに対する酢酸イソアミルの比(以下、この比をE/
A比と呼ぶこととする)が共に高い新規醸造用酵母、す
なわちBBR−7(生工研菌寄第16092号)は、下
述するTTC染色性(1)およびD.C.染色性(2)
により識別されるものである。すなわち、(1)古川、
秋山の方法(古川敏郎、秋山裕一:農化、37,398
−402(1963))に従って、TTC染色性試験、
すなわち菌体を適当に希釈し(1プレートに約200程
度となるよう)、TTC下層培地に30℃で2日間プレ
ート培養したコロニーへ、TTC寒天を溶解後45℃程
度にしてから静かに重層し、固まった後30℃に2〜3
時間放置し、コロニーの染色を観察したとき、炭素源に
グルコースを用いた培地ではピンク色、炭素源にα−メ
チルグルコシドを用いた培地では白色(呈色しない)を
示し、かつ(2)溝口、藤田の方法(溝口晴彦、藤田栄
信:醗工、59,185−188(1981))に従っ
て、D.C.染色性試験、すなわち菌体を適当に希釈し
(1プレートに約200程度となるよう)、TTC下層
培地に30℃で2日間プレート培養したコロニーへ、上
層用軟寒天を溶解後45℃程度にしてから静かに重層
し、固まった後室温に30分放置し、コロニーの染色を
観察したとき、白色(呈色しない)を示すことにより識
別されるサッカロミセス・セレビシエに属する新規酵母
である。
【0008】また、本発明により提供されるサッカロミ
セス・セレビシエBBR−7は下述する菌学的性質を有
する。 (a)YM培地(1wt.%グルコース、0.5wt.
%ペプトン、0.3wt.%酵母エキス、0.3wt.
%麦芽エキス)を用い、30℃で2日間培養したときの
菌の形態: 栄養細胞の大きさ:4〜9μm 栄養細胞の形状:卵型 増殖の形態:出芽 (b)YM寒天平板培地を用い、30℃で2日間培養し
たときのコロニーの形態: 形態:円 隆起:凸円状 周縁:円滑 大きさ(直径):2〜3mm 色調:白色で不透明 表面:円滑で光沢あり (c)炭素源資化性:グルコース、ガラクトース、フル
クトース、シュクロース、マルトース、マンノース、ト
レハロース、アラビノース、ラフィノース、エタノー
ル、乳酸、α−メチルジグルコシド、コハク酸、グリセ
ロールは資化する。セロビオース、メリビオース、エリ
スリトール、イノシトール、イヌリン、ラクトース、マ
ンニトール、メレジトース、メリビオース、ラムノー
ス、リボース、サリシン、ソルビトール、スターチ、キ
シロースは資化しない。
セス・セレビシエBBR−7は下述する菌学的性質を有
する。 (a)YM培地(1wt.%グルコース、0.5wt.
%ペプトン、0.3wt.%酵母エキス、0.3wt.
%麦芽エキス)を用い、30℃で2日間培養したときの
菌の形態: 栄養細胞の大きさ:4〜9μm 栄養細胞の形状:卵型 増殖の形態:出芽 (b)YM寒天平板培地を用い、30℃で2日間培養し
たときのコロニーの形態: 形態:円 隆起:凸円状 周縁:円滑 大きさ(直径):2〜3mm 色調:白色で不透明 表面:円滑で光沢あり (c)炭素源資化性:グルコース、ガラクトース、フル
クトース、シュクロース、マルトース、マンノース、ト
レハロース、アラビノース、ラフィノース、エタノー
ル、乳酸、α−メチルジグルコシド、コハク酸、グリセ
ロールは資化する。セロビオース、メリビオース、エリ
スリトール、イノシトール、イヌリン、ラクトース、マ
ンニトール、メレジトース、メリビオース、ラムノー
ス、リボース、サリシン、ソルビトール、スターチ、キ
シロースは資化しない。
【0009】以下に、本発明者らが、本発明のサッカロ
ミセス・セレビシエに属する新規酵母BBR−7(生工
研菌寄第16092号)を見い出すに至った経緯を説明
する。以下に述べるように、本発明では、酵母の懸濁液
をtert−ブチルヒドロペルオキシドを2mM/l含
有する培地に塗沫、培養し、生育が観察されたコロニー
を、さらにtert−ブチルヒドロペルオキシドを3m
M/l含有する培地に塗沫、培養した。そして、生育が
観察された少数のコロニーをtert−ブチルヒドロペ
ルオキシド耐性株として選抜し、得られた耐性株の中か
らグリセロール生産に優れ、かつE/A比が高く、菌学
的性質が従来のBAW−6株から明白に異なる、従来未
知の新規な本発明の酵母菌株を取得した。
ミセス・セレビシエに属する新規酵母BBR−7(生工
研菌寄第16092号)を見い出すに至った経緯を説明
する。以下に述べるように、本発明では、酵母の懸濁液
をtert−ブチルヒドロペルオキシドを2mM/l含
有する培地に塗沫、培養し、生育が観察されたコロニー
を、さらにtert−ブチルヒドロペルオキシドを3m
M/l含有する培地に塗沫、培養した。そして、生育が
観察された少数のコロニーをtert−ブチルヒドロペ
ルオキシド耐性株として選抜し、得られた耐性株の中か
らグリセロール生産に優れ、かつE/A比が高く、菌学
的性質が従来のBAW−6株から明白に異なる、従来未
知の新規な本発明の酵母菌株を取得した。
【0010】以下に、本発明の新規酵母を取得するに至
った経緯を述べる。 1.有用株の取得 実験1:BAW−6の変異処理 焼酎酵母BAW−6(旧微工研菌寄第12871号)の
1白金耳を2mlのYPD培地(2wt.%グルコー
ス、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキス)
に接種し、30℃で一晩、振とう培養し、得られた菌体
を含む培養液を、YPD培地10mlに100μl植菌
し、30℃で一晩、振とう培養を行い、対数増殖期(4
〜10×107cell/ml)の細胞を遠心分離によ
り集菌し、同量の滅菌水で2回洗浄した。洗浄した菌体
を、0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)10ml
に懸濁後、EMS(ethyl methanesu
lfonate)0.3mlを添加し、30℃、40分
間緩やかに振とうし変異処理を行った。
った経緯を述べる。 1.有用株の取得 実験1:BAW−6の変異処理 焼酎酵母BAW−6(旧微工研菌寄第12871号)の
1白金耳を2mlのYPD培地(2wt.%グルコー
ス、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキス)
に接種し、30℃で一晩、振とう培養し、得られた菌体
を含む培養液を、YPD培地10mlに100μl植菌
し、30℃で一晩、振とう培養を行い、対数増殖期(4
〜10×107cell/ml)の細胞を遠心分離によ
り集菌し、同量の滅菌水で2回洗浄した。洗浄した菌体
を、0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)10ml
に懸濁後、EMS(ethyl methanesu
lfonate)0.3mlを添加し、30℃、40分
間緩やかに振とうし変異処理を行った。
【0011】実験2:tert−ブチルヒドロペルオキ
シド耐性株の取得 実験1において変異処理した菌体を遠心集菌し、この菌
体を5%チオ硫酸ナトリウム溶液10mlで1回、滅菌
水で2回洗浄後、ついで滅菌水10mlに懸濁した。得
られた懸濁液400μl[(生菌数として約2×107
個を含む。なお、この菌数は、EMS処理により生存率
60%になった菌体10ml懸濁液(2〜5×108c
ell)]をtert−ブチルヒドロペルオキシドを2
mM/1,3mM/l含有する2%YNB寒天平板培地
(2wt.%グルコース、0.67wt.%イースト・
ナイトロジェン・ベースw/oアミノ酸、2wt.%寒
天)に塗抹し、30℃で4日間培養した。その結果te
rt−ブチルヒドロペルオキシド3mM/lの平板培地
では増殖しなかったが、2mM/l濃度の培地では、コ
ロニー250株が分離された。さらにこの250株につ
いて、tert−ブチルヒドロペルオキシドを3mM/
l含有する2%YNB寒天平板培地に塗抹し、30℃で
4日間培養した。その結果BBR−1〜10の計10株
を分離した。以下これらをBBR−1〜10とした。さ
らに、分離した株をそれぞれ個々にYPD培地(2w
t.%グルコース、2wt.%ポリペプトン、1wt.
%酵母エキス)2mlに接種し、30℃で前培養した
後、その100μlをそれぞれ別々にカザミノ酸培地
(10wt.%グルコース、1.17wt.%イースト
・カーボン・ベース、0.5wt.%カザミノ酸)10
mlに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵した。酵母
が生産したグリセロールはHPLC法で、酵母が生産し
た香気成分はヘッドスペースガス分析法で分析した。得
られた結果を表1に示す。表1に示すように、tert
−ブチルヒドロペルオキシドを2mM/l、さらには3
mM/l含有する2%YNB寒天平板培地によって分離
した10株のうち、グリセロール生産量、E/A比が共
に高い2株(BBR−7、BBR−8)を分離した。
シド耐性株の取得 実験1において変異処理した菌体を遠心集菌し、この菌
体を5%チオ硫酸ナトリウム溶液10mlで1回、滅菌
水で2回洗浄後、ついで滅菌水10mlに懸濁した。得
られた懸濁液400μl[(生菌数として約2×107
個を含む。なお、この菌数は、EMS処理により生存率
60%になった菌体10ml懸濁液(2〜5×108c
ell)]をtert−ブチルヒドロペルオキシドを2
mM/1,3mM/l含有する2%YNB寒天平板培地
(2wt.%グルコース、0.67wt.%イースト・
ナイトロジェン・ベースw/oアミノ酸、2wt.%寒
天)に塗抹し、30℃で4日間培養した。その結果te
rt−ブチルヒドロペルオキシド3mM/lの平板培地
では増殖しなかったが、2mM/l濃度の培地では、コ
ロニー250株が分離された。さらにこの250株につ
いて、tert−ブチルヒドロペルオキシドを3mM/
l含有する2%YNB寒天平板培地に塗抹し、30℃で
4日間培養した。その結果BBR−1〜10の計10株
を分離した。以下これらをBBR−1〜10とした。さ
らに、分離した株をそれぞれ個々にYPD培地(2w
t.%グルコース、2wt.%ポリペプトン、1wt.
%酵母エキス)2mlに接種し、30℃で前培養した
後、その100μlをそれぞれ別々にカザミノ酸培地
(10wt.%グルコース、1.17wt.%イースト
・カーボン・ベース、0.5wt.%カザミノ酸)10
mlに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵した。酵母
が生産したグリセロールはHPLC法で、酵母が生産し
た香気成分はヘッドスペースガス分析法で分析した。得
られた結果を表1に示す。表1に示すように、tert
−ブチルヒドロペルオキシドを2mM/l、さらには3
mM/l含有する2%YNB寒天平板培地によって分離
した10株のうち、グリセロール生産量、E/A比が共
に高い2株(BBR−7、BBR−8)を分離した。
【0012】実験3:形質安定性確認試験 この実験は、実験2で得られたBBR−7株とBBR−
8株の形質安定性について調べた。BBR−7株とBB
R−8株をそれぞれ別々にYPD培地(2wt.%グル
コース、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキ
ス)2mlに接種し、30℃で前培養した後、その10
0μlをそれぞれ別々にYPD培地10mlに植え継
ぎ、30℃で2日間発酵させた。さらに、前記2日目の
培養液の100μlをそれぞれ別々に新たなYPD培地
10mlに植え継ぎ、30℃で2日間発酵させた。最終
的には、この植え継ぎ・発酵の操作を10回繰り返し
た。10回目の培養液100μlをそれぞれ別々にカザ
ミノ酸培地(10wt.%グルコース、1.17wt.
%イースト・カーボン・ベース、0.5wt.%カザミ
ノ酸)10mlに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵
した。酵母が生産したグリセロールはHPLC法で、酵
母が生産した香気成分はヘッドスペースガス分析法で分
析した。また、10回目のそれぞれの培養液をtert
−ブチルヒドロペルオキシドを含有する2%YNB寒天
平板培地(2wt.%グルコース、0.67wt.%イ
ースト・ナイトロジェン・ベースw/oアミノ酸、2w
t.%寒天)に接種し、30℃で4日間培養することに
より、tert−ブチルヒドロペルオキシド耐性を観察
した。得られた結果を表2に示す。表2に示すように、
BBR−7株とBBR−8株のグリセロール生産能およ
びE/A比が共に高い形質は、10代継代培養でも安定
的に保持されていることが明らかになった。最終的に
は、継代培養後、形質がより安定していたBBR−7株
を有用な株と判定し、新菌株として分離した。
8株の形質安定性について調べた。BBR−7株とBB
R−8株をそれぞれ別々にYPD培地(2wt.%グル
コース、2wt.%ポリペプトン、1wt.%酵母エキ
ス)2mlに接種し、30℃で前培養した後、その10
0μlをそれぞれ別々にYPD培地10mlに植え継
ぎ、30℃で2日間発酵させた。さらに、前記2日目の
培養液の100μlをそれぞれ別々に新たなYPD培地
10mlに植え継ぎ、30℃で2日間発酵させた。最終
的には、この植え継ぎ・発酵の操作を10回繰り返し
た。10回目の培養液100μlをそれぞれ別々にカザ
ミノ酸培地(10wt.%グルコース、1.17wt.
%イースト・カーボン・ベース、0.5wt.%カザミ
ノ酸)10mlに植え継ぎ、さらに30℃で4日間発酵
した。酵母が生産したグリセロールはHPLC法で、酵
母が生産した香気成分はヘッドスペースガス分析法で分
析した。また、10回目のそれぞれの培養液をtert
−ブチルヒドロペルオキシドを含有する2%YNB寒天
平板培地(2wt.%グルコース、0.67wt.%イ
ースト・ナイトロジェン・ベースw/oアミノ酸、2w
t.%寒天)に接種し、30℃で4日間培養することに
より、tert−ブチルヒドロペルオキシド耐性を観察
した。得られた結果を表2に示す。表2に示すように、
BBR−7株とBBR−8株のグリセロール生産能およ
びE/A比が共に高い形質は、10代継代培養でも安定
的に保持されていることが明らかになった。最終的に
は、継代培養後、形質がより安定していたBBR−7株
を有用な株と判定し、新菌株として分離した。
【0013】2.菌学的性質 上記1において分離した菌株BBR−7が、親菌株のB
AW−6とはもとより、焼酎酵母として公知の鹿児島酵
母(Ko)とも区別されるものであることを見極めるた
め、菌学的性質(形態学的性質および生理学的性質)の
異同について検討した。
AW−6とはもとより、焼酎酵母として公知の鹿児島酵
母(Ko)とも区別されるものであることを見極めるた
め、菌学的性質(形態学的性質および生理学的性質)の
異同について検討した。
【0014】2−(1).形態学的性質 形態学的性質についての観察結果を表3にまとめて示
す。表3から明らかなように、いずれの栄養細胞もその
大きさは4〜9μmで卵型であった。そしてまた、YM
寒天培地上ではいずれの菌株もつやのある白色のコロニ
ーを形成した。
す。表3から明らかなように、いずれの栄養細胞もその
大きさは4〜9μmで卵型であった。そしてまた、YM
寒天培地上ではいずれの菌株もつやのある白色のコロニ
ーを形成した。
【0015】2−(2).生理学的性質 a.炭素源資化性 固体培地を使用するレプリカ法によって試験した。すな
わち、バクト社製炭素源資化テスト用培地1lについ
て、それぞれ1種類づつ炭素化合物(グルコース、ガラ
クトースなど)10gを溶解した寒天平板にそれぞれの
酵母菌体を接種(スタンプ)し、資化性を観察した。表
4に炭素源資化性の結果を示す。BAW−6株およびB
BR−7株との間では違いはなかった。しかしKo株と
の間では違いが認められた。すなわちKo株はエタノー
ルを資化しなかった。
わち、バクト社製炭素源資化テスト用培地1lについ
て、それぞれ1種類づつ炭素化合物(グルコース、ガラ
クトースなど)10gを溶解した寒天平板にそれぞれの
酵母菌体を接種(スタンプ)し、資化性を観察した。表
4に炭素源資化性の結果を示す。BAW−6株およびB
BR−7株との間では違いはなかった。しかしKo株と
の間では違いが認められた。すなわちKo株はエタノー
ルを資化しなかった。
【0016】b.TTC染色性 古川、秋山の方法(古川ら:農化、37,398−40
2(1963))に従って試験した。すなわち、BAW
−6株,Ko株およびBBR−7株のそれぞれの菌体を
適当に希釈し(1プレートに約200程度となるよ
う)、下層培地に30℃で2日間プレート培養したコロ
ニー上へ、TTC寒天を溶解後45℃程度にしてから静
かに重層し、固まった後30℃に2〜3時間放置し、コ
ロニーの染色状況を観察した。表5にTTC染色性の観
察結果を示す。表5の結果から明らかなように、炭素源
にグルコースを用いた培地ではBAW−6株、Ko株、
BBR−7株ともいずれもピンクであった。しかし炭素
源にα−メチルグルコシドを用いた培地ではBAW−6
株およびKo株はピンク色であったが、BBR−7株は
白色(呈色しない)であった。
2(1963))に従って試験した。すなわち、BAW
−6株,Ko株およびBBR−7株のそれぞれの菌体を
適当に希釈し(1プレートに約200程度となるよ
う)、下層培地に30℃で2日間プレート培養したコロ
ニー上へ、TTC寒天を溶解後45℃程度にしてから静
かに重層し、固まった後30℃に2〜3時間放置し、コ
ロニーの染色状況を観察した。表5にTTC染色性の観
察結果を示す。表5の結果から明らかなように、炭素源
にグルコースを用いた培地ではBAW−6株、Ko株、
BBR−7株ともいずれもピンクであった。しかし炭素
源にα−メチルグルコシドを用いた培地ではBAW−6
株およびKo株はピンク色であったが、BBR−7株は
白色(呈色しない)であった。
【0017】c.D.C.染色性 溝口、藤田の方法(溝口ら:醗酵工学、59,185−
188(1981))に従って試験した。すなわち、B
AW−6株,Ko株およびBBR−7株のそれぞれの菌
体を適当に希釈し(1プレートに約200程度となるよ
う)、下層培地に30℃で2日間プレート培養したコロ
ニー上へ、上層用軟寒天を溶解後45℃程度にしてから
静かに重層し、固まった後室温に30分間放置し、コロ
ニーの染色状況を観察した。表6にD.C.染色性の観
察結果を示す。表6の結果から明らかなように、BAW
−6株およびBBR−7株は白色(呈色しない)であっ
たが、Ko株は茶色であった。以上の菌学的性質の観察
結果から、次のことがわかった。すなわち、本菌BBR
−7株は、(a)エタノールの資化性について、Ko株
と異なる;(b)TTC染色性について、BAW−6株
と異なる;(c)D.C.染色性について、Ko株と異
なる。さらに10代にわたる継代培養を行ったところ、
上記(a),(b),(c)の性質は維持された。従っ
て上記(a),(b),(c)の性質はBBR−7株に
特有の確定的な性質であることが分かった。よって、本
菌すなわち、BBR−7株は、従来の酵母から客観的に
区別されるものであることが判明し、本発明者らはこれ
を新規酵母と認定し、この菌株をBBR−7と命名し
た。本菌株は、平成9年2月21日に工業技術院生命工
学工業技術研究所に寄託し、生工研菌寄第16092号
なる受託番号を得た。
188(1981))に従って試験した。すなわち、B
AW−6株,Ko株およびBBR−7株のそれぞれの菌
体を適当に希釈し(1プレートに約200程度となるよ
う)、下層培地に30℃で2日間プレート培養したコロ
ニー上へ、上層用軟寒天を溶解後45℃程度にしてから
静かに重層し、固まった後室温に30分間放置し、コロ
ニーの染色状況を観察した。表6にD.C.染色性の観
察結果を示す。表6の結果から明らかなように、BAW
−6株およびBBR−7株は白色(呈色しない)であっ
たが、Ko株は茶色であった。以上の菌学的性質の観察
結果から、次のことがわかった。すなわち、本菌BBR
−7株は、(a)エタノールの資化性について、Ko株
と異なる;(b)TTC染色性について、BAW−6株
と異なる;(c)D.C.染色性について、Ko株と異
なる。さらに10代にわたる継代培養を行ったところ、
上記(a),(b),(c)の性質は維持された。従っ
て上記(a),(b),(c)の性質はBBR−7株に
特有の確定的な性質であることが分かった。よって、本
菌すなわち、BBR−7株は、従来の酵母から客観的に
区別されるものであることが判明し、本発明者らはこれ
を新規酵母と認定し、この菌株をBBR−7と命名し
た。本菌株は、平成9年2月21日に工業技術院生命工
学工業技術研究所に寄託し、生工研菌寄第16092号
なる受託番号を得た。
【0018】
【使用例】本発明の酵母BBR−7を使用して大麦焼酎
を製造した。原料としては、大麦(70%精白)を用い
た。1次仕込みは以下に述べた方法で製造した大麦麹
(大麦として100g)、水120mlに酵母(酵母数
で1×109個)を用い、5日間発酵させた。また、2
次仕込みは1次仕込みで製造したもろみに水380m
l、蒸麦(大麦として200g)を加え、10日間発酵
させた。大麦麹は、大麦を40%(W/W)吸水させ、
40分間蒸した後、35℃まで放冷し、大麦1kgあた
り1g量の種麹(焼酎白麹菌)を接種し、38℃,相対
湿度(RH)95%で24時間、32℃,RH92%で
20時間で製造した。蒸麦は、大麦を40%(W/W)
吸水させ、40分間蒸した後、25℃まで放冷後、1次
仕込みに加えた。発酵温度は、1次仕込み、2次仕込み
とも25℃とした。かくして大麦焼酎を製造した。
を製造した。原料としては、大麦(70%精白)を用い
た。1次仕込みは以下に述べた方法で製造した大麦麹
(大麦として100g)、水120mlに酵母(酵母数
で1×109個)を用い、5日間発酵させた。また、2
次仕込みは1次仕込みで製造したもろみに水380m
l、蒸麦(大麦として200g)を加え、10日間発酵
させた。大麦麹は、大麦を40%(W/W)吸水させ、
40分間蒸した後、35℃まで放冷し、大麦1kgあた
り1g量の種麹(焼酎白麹菌)を接種し、38℃,相対
湿度(RH)95%で24時間、32℃,RH92%で
20時間で製造した。蒸麦は、大麦を40%(W/W)
吸水させ、40分間蒸した後、25℃まで放冷後、1次
仕込みに加えた。発酵温度は、1次仕込み、2次仕込み
とも25℃とした。かくして大麦焼酎を製造した。
【0019】
【比較例】酵母としてBAW−6を用いた以外は、使用
例と同様にして大麦焼酎を製造した。
例と同様にして大麦焼酎を製造した。
【0020】
【評価】使用例および比較例のそれぞれについての発酵
曲線を図1に示す。図1に示した結果から、本発明酵母
BBR−7の発酵状態はBAW−6株のそれと遜色がな
いことが判った。さらにまた、使用例および比較例のそ
れぞれにおいて得られたもろみのエタノール、グリセロ
ール、およびE/A比を表7に示す。表7の結果から、
親株であるBAW−6を用いたものよりグリセロール濃
度が1.4倍以上、E/A比はおよそ1.2倍増加し、
エタノール濃度は親株(BAW−6株)と同等であるこ
とが判った。以上述べたことからも明らかなように、本
発明の酵母BBR−7は、従来の焼酎酵母であるBAW
−6と比べ、もろみ中のグリセロール生産能、およびE
/A比が共に高いことが判った。
曲線を図1に示す。図1に示した結果から、本発明酵母
BBR−7の発酵状態はBAW−6株のそれと遜色がな
いことが判った。さらにまた、使用例および比較例のそ
れぞれにおいて得られたもろみのエタノール、グリセロ
ール、およびE/A比を表7に示す。表7の結果から、
親株であるBAW−6を用いたものよりグリセロール濃
度が1.4倍以上、E/A比はおよそ1.2倍増加し、
エタノール濃度は親株(BAW−6株)と同等であるこ
とが判った。以上述べたことからも明らかなように、本
発明の酵母BBR−7は、従来の焼酎酵母であるBAW
−6と比べ、もろみ中のグリセロール生産能、およびE
/A比が共に高いことが判った。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
【表7】
【0028】
【発明の効果の概要】上述したように、本発明のサッカ
ロミセス・セレビシエに属する酵母BBR−7(生工研
菌寄第16092号)は、もろみ中のグリセロール生産
能、およびE/A比が共に高い新規な醸造用酵母であ
る。
ロミセス・セレビシエに属する酵母BBR−7(生工研
菌寄第16092号)は、もろみ中のグリセロール生産
能、およびE/A比が共に高い新規な醸造用酵母であ
る。
【図1】使用例および比較例における、25℃の発酵温
度での、大麦焼酎の製造における発酵状態を示す発酵曲
線である。
度での、大麦焼酎の製造における発酵状態を示す発酵曲
線である。
フロントページの続き (72)発明者 下田 雅彦 大分県宇佐市大字山本2231−1 三和酒 類株式会社内 (72)発明者 和田 久継 大分県宇佐市大字山本2231−1 三和酒 類株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/16 - 1/19 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)
Claims (4)
- 【請求項1】焼酎酵母BAW−6株(旧微工研菌寄第12
871号)に変異処理を行い、tert―ブチルヒドロペル
オキシドを含有する選択用培地を用いて選別することに
より得られた、tert―ブチルヒドロペルオキシドに対し
て耐性を有し、もろみ中で改善されたグリセロール生産
能を有し且つ改善されたE/A比(イソアミルアルコール
に対する酢酸イソアミルの比)をもたらす、サッカロミ
セス・セレビシエに属する醸造用酵母BBR-7。 - 【請求項2】下記の菌学的性質を示す請求項1に記載の
醸造用酵母BBR-7。 (1)TTC染色性試験,すなわち菌体を適当に希釈し
(1プレートに約200程度となるよう),TTC下層
培地に30℃で2日間プレート培養したコロニーへ,T
TC寒天を溶解後45℃程度にしてから静かに重層し,
固まった後30℃に2〜3時間放置し,コロニーの染
色を観察したとき,炭素源にグルコースを用いた培地で
はピンク色,炭素源にα−メチルグルコシドを用いた培
地では白色(呈色しない)を示し,且つ(2)D.C.
染色性試験,すなわち菌体を適当に希釈し(1プレート
に約200程度となるよう),TTC下層培地に30℃
で2日間プレート培養したコロニーへ,上層用軟寒天を
溶解後45℃程度にしてから静かに重層し,固まった後
室温に30分放置し,コロニーの染色を観察したとき,
白色(呈色しない)を示す。 - 【請求項3】 下記の菌学的性質を示す請求項1に記載
の醸造用酵母BBR-7。 (a)YM培地(1wt.%グルコース,0.5wt.
%ペプトン,0.3wt.%酵母エキス,0.3wt.
%麦芽エキス)を用い,30℃で2日間培養したときの
菌の形態: 栄養細胞の大きさ:4〜9μm 栄養細胞の形状: 卵型 増殖の形態: 出芽 (b)YM寒天平板培地を用い,30℃で2日間培養し
たときのコロニーの形態: 形態:円 隆起:凸円状 周縁:円滑 大きさ(直径):2〜3mm 色調:白色で不透明 表面:円滑で光沢あり (c)炭素源資化性: グルコース,ガラクトース,フルクトース,シュクロ
ース,マルトース,マンノース,トレハロース,アラビ
ノース,ラフィノース,エタノール,乳酸,αーメチル
ジグルコシド,コハク酸,及びグリセロールは資化す
る。 セロビオース,メリビオース,エリスリトール,
イノシトール,イヌリン,ラクトース,マンニトール,
メレジトース,メリビオース,ラムノース,リボース,
サリシン,ソルビトール,スターチ,及びキシロースは
資化しない。 - 【請求項4】 生工研菌寄第16092号である請求項
1に記載の醸造用酵母BBR-7。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9795097A JP3176869B2 (ja) | 1997-04-02 | 1997-04-02 | 新規な醸造用酵母 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9795097A JP3176869B2 (ja) | 1997-04-02 | 1997-04-02 | 新規な醸造用酵母 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10276768A JPH10276768A (ja) | 1998-10-20 |
JP3176869B2 true JP3176869B2 (ja) | 2001-06-18 |
Family
ID=14205958
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9795097A Expired - Lifetime JP3176869B2 (ja) | 1997-04-02 | 1997-04-02 | 新規な醸造用酵母 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3176869B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5138194B2 (ja) * | 2006-08-30 | 2013-02-06 | 公益財団法人 日本醸造協会 | 新規酵母と当該酵母による酒類の製造方法 |
-
1997
- 1997-04-02 JP JP9795097A patent/JP3176869B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10276768A (ja) | 1998-10-20 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3898652B2 (ja) | チロソール高生産性酵母変異株及び該酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造法 | |
JP3176869B2 (ja) | 新規な醸造用酵母 | |
JP3188407B2 (ja) | 酒類の製造方法 | |
JP3090613B2 (ja) | 蒸留酒の製造方法 | |
JP3896606B2 (ja) | 酵母エキスの製造法 | |
JPH08173147A (ja) | 新規酵母及びその用途 | |
JP2835814B2 (ja) | 酒類の製造方法 | |
JP4177655B2 (ja) | 新規酵母及びそれを用いた清酒の製造法 | |
Nechita et al. | Assessment of the technological performance of some Saccharomyces and non-Saccharomyces indigenous yeast strains | |
JP2916357B2 (ja) | 新規な醸造用酵母 | |
JP3337897B2 (ja) | 新規な醸造用酵母 | |
JP3087888B2 (ja) | 酒類の製造方法 | |
JP4008539B2 (ja) | 有機酸高生産新規酵母及びその用途 | |
JP3176842B2 (ja) | 新規な醸造用酵母 | |
JP3835564B2 (ja) | 新規酵母及びその用途 | |
JP2589264B2 (ja) | 酒類の製造方法 | |
JP3176868B2 (ja) | 酢酸イソアミル高生産酵母の取得方法 | |
JP2545109B2 (ja) | 変異酵母及びその用途 | |
JPH10295365A (ja) | 新規麹菌及びその用途 | |
JP3069689B2 (ja) | 発酵速度を増大させた酵母の育種 | |
JP2663095B2 (ja) | 新規な醸造用酵母 | |
JPH0751053A (ja) | 焼酎醸造用酵母及び当該酵母を用いる焼酎の製造法 | |
JP3010549B2 (ja) | サッカロミセス・セレビシェ及びこれを用いて製造する清酒の製造法 | |
JP2001269165A (ja) | 香気生成バランスのよい酵母並びにこれを用いた飲食品及びその製造法 | |
JP3423043B2 (ja) | 酵母交雑株及びそれを使用するワインの製造法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110406 Year of fee payment: 10 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150406 Year of fee payment: 14 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |