JP3074261B2 - 抗菌性繊維状活性炭及びその製造方法 - Google Patents

抗菌性繊維状活性炭及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗菌性を有する繊維
状活性炭に関する。
【0002】
【従来の技術】抗菌性活性炭として、活性炭を硝酸銀水
溶液で処理して活性炭に銀を担持させたものが知られて
いる(特公昭52−38666号公報)。このもので
は、活性炭に金属銀の形態で担持されるので金属銀から
の銀イオンの放出量が少ないため抗菌効果が低いという
欠点があって、抗菌効果は実際面では不満足であった。
【0003】抗菌効果を向上改良した技術として特開昭
63−239205号公報が知られている。これは、粒
状体の活性炭と銀ゼオライトと熱融着性繊維とを混合し
加熱により融着結合をする技術である。銀ゼオライトの
使用により抗菌効果が優れると述べられているが、融着
結合部は活性炭表面が被覆されて吸着性が著しく低下す
る。吸着性を損なわないために、融着率を低下させる
と、銀ゼオライトの非融着率が高くなって脱落率が増加
するという欠点がある。
【0004】更に改良技術として特開平7−22298
3号公報が知られている。この公報によれば、銀ゼオラ
イトと炭素質原料、例えばヤシ殻炭を混合してアトマイ
ザーで粉砕し、次いでピッチ、コールタールをバインダ
ーとして加えて、ペレットミルで粉砕して加熱して炭化
している。この技術は粒子状活性炭に適合しても、繊維
状活性炭を得るには繊維形状が破壊されてしまうので不
適当である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】綿花はその繊維の中心
部にルーメンと呼ばれる細孔(繊維の成長時には細胞液
が通っていた箇所)を有しており、従来、繊維状活性炭
の製造に使用されていた再生セルロース繊維(すなわち
レーヨン)に比較して比表面積が高く、この点では活性
炭の原料として再生セルロース繊維よりも適している。
【0006】しかし、従来技術によれば、繊維状活性炭
に木綿を原料とすることは不適当とされていた。すなわ
ち、木綿は炭化することはできるが、炭化したものは弱
く崩れ易く、炭化繊維の形状では実際に使用することは
困難であった。
【0007】更に、従来技術では、繊維状活性炭で抗菌
効果の優れたものを得ることは極めて困難であった。
【0008】一方、我が国では木綿わたを年間80万
ン輸入して紡績に投入しているが、その内5%の4万ト
ンが落綿として紡績工程で脱落している。落綿を再生使
用する工夫もされているが、繊維長の短いものは廃棄さ
れており、その量は落綿量の過半数に及んでおり、資源
の無駄遣いである。また、木綿落綿を繊維状活性炭の原
料として使用しようとしても、通常に使用されている木
綿わたよりも更に強度が低くて粉末状になり易いために
実用の域に至っていない。
【0009】
【発明の目的】本発明の目的は、木綿わたを原料として
使用して、充分実用に供し得る強度を有し且つ抗菌効果
を有する繊維状活性炭を提供することである。
【0010】また、本発明の目的は、輸入資源の有効利
用の面から、抗菌性繊維状活性炭の原料として従来は廃
棄されていた落綿を使用することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、コロイ
ダルシリカ由来の無水珪酸によって銀ゼオライトが木綿
わたを原料とする繊維状活性炭に焼付固着されているこ
とを特徴とする抗菌性繊維状活性炭により前述の目的を
達成した。
【0012】また、本発明によれば、コロイダルシリカ
液に銀ゼオライトを混合し、該混合液を木綿わたに含浸
させ、該木綿わたを150〜300℃に昇温して熱処理
を行い、次いで水蒸気を含有する雰囲気で650〜75
0℃て熱処理を行って賦活することを特徴とする抗菌性
繊維状活性炭の製造方法により前述の目的を達成した。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明では、繊維状活性炭の原料
として木綿わたを使用する。綿であれば通常利用されて
いる繊維長の長いものでもよいが、資源の有効利用の点
から落綿を利用することが好ましい。木綿落綿とは、繊
維長が20mm以下の短いもので紡績工程で落綿として脱
落したものを言いうが、落綿の中でも再生されることな
く廃棄されていたものを利用することが資源の有効利用
のみならず価格の観点からも好ましい。
【0014】木綿落綿を原料とする場合は、通常の木綿
を原料とする場合より強度の弱さは一層深刻であるが、
本発明によればコロイダルシリカを用いて製造すること
により解決できる。
【0015】本発明におけるコロイダルシリカとしては
市販のものを使用することができる。例えば、スノーテ
ックス(日産化学工業株式会社製品)のように無水珪酸
の分散粒子径が10〜20nmの如く微細なものが好まし
い。
【0016】銀ゼオライトは銀を担持したゼオライトで
あり、市販のものを使用することができ、例えばゼオミ
ック(シナネンゼオミック株式会社製品)などがある。
【0017】本発明の抗菌性繊維状活性炭においては、
無水珪酸と銀ゼオライトが木綿繊維に焼付固着してい
る。それぞれの固着量は製造された活性炭において、無
水珪酸が0.5〜5重量%、銀ゼオライトが0.1〜3
重量%とすることが好ましい。無水珪酸が0.5重量%
未満では強度が不十分であり脆くて崩れ易いので好まし
くなく、5重量%を越えると吸着機能の低下を招くので
好ましくない。銀ゼオライトが0.1重量%未満では抗
菌効果が不十分であり、3重量%を越えると抗菌性は向
上するが、銀イオンの濃度が50ppb 以上になるので、
衛生面から好ましくない。
【0018】本発明の抗菌性繊維状活性炭は以下のよう
に製造する。コロイダルシリカ、銀ゼオライトおよび水
を混合した分散液に、木綿わたを浸漬し、木綿わたに分
散液を含浸させる。その後、過剰の分散液を絞りロール
又は遠心脱水等により除去する。次いで濡れた状態の木
綿わたの乾燥を行ってもよいが、次工程で熱処理を行う
ので乾燥させずに木綿わたを炉に直接投入してもよい。
炉に入れて不活性雰囲気でまたは酸素をコントロールし
た状態で150℃〜300℃、好ましくは200℃〜2
50℃に昇温して、その温度で熱処理を行うと30分程
度で木綿わたは炭化される。昇温する際は急激に行うと
繊維が脆くなるので、例えば2〜5℃/分の速度で徐々
に温度を上げていくことが好ましい。不活性雰囲気とし
ては、窒素、炭酸ガス、一酸化炭素等の不活性ガスのほ
か、炭化水素等の燃焼ガス、本発明の熱処理工程で発生
するガスを使用できる。次いで、水蒸気を含有する雰囲
気中で650℃〜750℃で熱処理を行って賦活する。
【0019】
【実施例】
〔実施例1〕スノーテックスST−20(コロイダルシ
リカ液、シリカ固形分20%、粒子径10〜20nm、日
産化学工業株式会社製品)50kgに、ゼオミックAJ−
10N(銀ゼオライト、シナネンゼオミック製品)5k
g、水445kgを配合した混合液に木綿落綿100kgを
30分間浸漬した。次いで遠心脱水により混合液の含浸
率を元の落綿に対して100%の含浸になるように脱水
した(すなわち、脱水後の湿潤した落綿の重量は200
kgである)。次いで、この落綿を炉に入れて都市ガス
加熱により徐々に250℃まで昇温して、そしてこの温
度で30分保った。次いで、水蒸気を含有する雰囲気で
700℃で熱処理を行って賦活をした。
【0020】木綿落綿の投入100kgに対して繊維状活
性炭として35kgが得られた。収率は35%であり、折
れたり粉末状に崩れることはなかった。
【0021】得られた抗菌性繊維状活性炭を電子顕微鏡
で見ると、粒状の無水珪酸は熱処理によりその一部が焼
付いて互いに結合した状態で繊維に固着していることが
分かった。
【0022】得られた抗菌性繊維状活性炭における無水
珪酸と銀ゼオライトの付着量を測定した。まず、高温に
して繊維分を燃焼させて、無水珪酸と銀ゼオライトのみ
とした。次いで、これをフッ化水素酸により無水珪酸と
ゼオライトを溶解させて原子吸光分析器にかけて銀を定
量して、銀ゼオライト量を求めた。その結果、付着量
は、無水珪酸が1.8重量%、銀ゼオライトが0.9重
量%であることが分かった。
【0023】実施例1により得られた繊維状活性炭の吸
着性能は、ヨード吸着量1300mg/g、ベンゼン吸着
量300mg/gであり、優れた吸着性を有していた。
【0024】実施例1の抗菌性繊維状活性炭を抄紙法に
よって目付25g/m2 巾の不織布にした。得られた不
織布は折り曲げても崩れることがなく強力であった。
【0025】この不織布を用いてAATCC L14.
144−1965Tによる細菌の抑制状態を試験した。
大腸菌3.7×105 個を上述の不織布に植菌して18
時間培養した結果、菌数は測定されなくゼロであった。
緑膿菌について1.3×104 個を上述の不織布に植菌
して18時間培養した結果においても菌数は測定され
ず、ゼロであった。
【0026】〔比較例〕木綿落綿にコロイダルシリカ及
び銀ゼオライトを含浸させないで、ブランクとして上記
実施例1と同様の熱処理を行ったところ収率は14%で
あり、得られた活性炭は脆くて崩れ易く、使用に適さな
いものであった。
【0027】〔実施例2〕スノーテックスST−N(コ
ロイダルシリカ液、シリカ固形分20%、粒子径10〜
20nm、日産化学工業株式会社製品)35kgに、ゼオミ
ックAW−1ON(銀ゼオライト、シナネンゼオミック
製品)5kg、水460kgを配合した混合液に木綿落綿1
00kgを浸漬し、30分間放置して落綿に該混合液を充
分浸透させた。次いで、遠心脱水により該液の含浸率を
元の落綿に対して100%の含浸になるように脱水した
(すなわち、脱水後の湿潤した落綿の重量は200kg
である)。次いで、湿潤状態の落綿を炉に入れて都市ガ
ス加熱により200℃に昇温して30分保った。次い
で、水蒸気を含有する雰囲気で750℃で熱処理を行っ
て賦活をした。
【0028】この実施例においては、木綿落綿の投入1
00kgに対して繊維状活性炭として34kgが得られ、収
率は34%であった。得られた繊維状活性炭の強度は大
きく、外力により折れたり粉末状に崩れることはなかっ
た。
【0029】また、この抗菌性繊維状活性炭における無
水珪酸と銀ゼオライトの焼付固着量は、無水珪酸が1.
2重量%、銀ゼオライトが0.8重量%であった。
【0030】実施例2による繊維状活性炭の吸着性能
は、ヨード吸着量1500mg/g、ベンゼン吸着量40
0mg/gであった。
【0031】得られた抗菌性繊維状活性炭を実施例1と
同様に不織布とした。この不織布によりAATCC L
14. 144−1965Tによる細菌の抑制状態を試
験した。大腸菌2.5×104 個をこの不織布に植菌し
て18時間培養した結果、菌数はゼロであった。緑膿菌
について7.3×105 個を該不織布に植菌し18時間
培養した結果においても菌数はゼロであった。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、木綿わたを原料とし
て、強度の優れた抗菌性繊維状活性炭を得ることができ
る。特に、従来廃棄されていた落綿を使用して繊維状活
性炭を得ることができるので、資源の有効利用ができ
る。
【0033】本発明の抗菌性繊維状活性炭は不織布にし
て、浄水用フイルターや果物等の鮮度維持用包装材、そ
の他抗菌性消臭材として広く使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 11/79 D06M 11/00 G (56)参考文献 特開 平7−222983(JP,A) 特開 昭49−61950(JP,A) 特開 昭63−239205(JP,A) 特公 昭49−34589(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/79 C01B 31/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コロイダルシリカ由来の無水珪酸によっ
    て銀ゼオライトが木綿わたを原料とする繊維状活性炭に
    焼付固着されていることを特徴とする抗菌性繊維状活性
    炭。
  2. 【請求項2】 前記抗菌性繊維状活性炭において無水珪
    酸が0.5〜5重量%、銀ゼオライトが0.1〜3重量
    %であることを特徴とする請求項1記載の抗菌性繊維状
    活性炭。
  3. 【請求項3】 前記木綿わたが落綿であることを特徴と
    する請求項1または2記載の抗菌性繊維状活性炭。
  4. 【請求項4】 無水珪酸の粒子径が10〜20nmであ
    ることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載
    の抗菌性繊維状活性炭。
  5. 【請求項5】 コロイダルシリカ液に銀ゼオライトを混
    合し、該混合液を木綿わたに含浸させ、該木綿わたを1
    50〜300℃に昇温して熱処理を行い、次いで水蒸気
    を含有する雰囲気で650〜750℃て熱処理を行って
    賦活することを特徴とする抗菌性繊維状活性炭の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 木綿わたに含浸させるコロイダルシリカ
    液と銀ゼオライトの混合液は、抗菌性繊維状活性炭にお
    ける無水珪酸と銀ゼオライトの固着量が無水珪酸は0.
    5〜5重量%、銀ゼオライトは0.1〜3重量%となる
    ように含浸量を調節することを特徴とする請求項5記載
    の抗菌性繊維状活性炭の製造方法。
  7. 【請求項7】 コロイダルシリカ液に銀ゼオライトを混
    合し、該混合液を木綿わたに含浸させ、不活性雰囲気中
    で前記木綿わたを200〜250℃まで徐々に昇温し、
    前記温度で熱処理を行い、次いで水蒸気を含有する雰囲
    気中で650〜750℃て熱処理を行って賦活すること
    を特徴とする抗菌性繊維状活性炭の製造方法。
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