JP4203605B2 - 耐熱性吸着シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば空気中に含まれる有機溶剤等の悪臭成分を吸着除去する吸着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、吸着シートとしては、PVA等の有機バインダーおよび有機繊維およびもしくは無機繊維および吸着材を混合抄造してからなる物がある。この吸着シートは、嵩密度が小さく叩解度の高い有機繊維を使用している事とPVA等の有機バインダーを使用している事で吸着材の含有比率を高くする事が可能であり、有機溶剤等の悪臭成分を高吸着除去する事が可能である。しかし、PVA等の有機バインダーを用いると、再生工程等により加熱処理する場合、突発的に吸着シートの温度が300℃程度に上昇した際、吸着シートが熱分解性を示し、シートの着火、燃焼の危険性があり、著しい強度低下を起こすと言う問題、すなわち耐熱性に劣ると言う欠点を有していた。一方、かかる耐熱性の高い吸着シートとしては、無機バインダーおよび無機繊維からなる無機シートを吸着材と無機バインダーの混合スラリー液に含浸し乾燥させてなる無機吸着シートがあり、該吸着シートは熱分解性を示さない無機物にて構成されている事から吸着シート自体の熱分解性は無いが、吸着材の担持性に劣り、シートに必要量の吸着材を含有させる事が困難で、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が低いという問題があった。さらには吸着材の脱落が起こり易く、吸着シートに柔軟性が無いため折り曲げ加工等の2次加工がし難いという問題もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした事情に着目してなされたものであって、シートの吸着材の含有率が高く、脱落が少なく、柔軟性がある高吸着性能の耐熱性吸着シートを得る事である。すなわち、PVA等の抄紙用有機バインダーを使用し吸着シートの吸着材の含有比率を高くしようとすれば該抄紙用有機バインダーにより耐熱性が低くなり、無機物のみからなる無機吸着紙では、耐熱性は高いが吸着材の含有比率を高くする事が困難で吸着材の脱落が多く柔軟性に劣るという問題点を解決する事である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吸着材(A)、有機成分(B)及び無機バインダー(C)を含む吸着シートであって、該吸着シートの空気中、300℃で30分間加熱処理した時の重量減少が1%以下である耐熱性吸着シート及び、吸着材(A)、有機成分(B)及び無機バインダー(C)でシート状物(前駆体シート)を作製したのち、該シート状物を耐熱性有機ポリマー(B−1)の分解温度以下、低温度熱分解性有機ポリマー(B−2)の分解温度以上の温度で熱処理する耐熱性吸着シートの製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における吸着材(A)とは、活性炭素材又はゼオライトであり、活性炭素材の場合は形態は粉末状、もしくは繊維状であり、粉末状では粒径は平均粒径10〜30μmであり、繊維状では平均繊維径10〜30μmである。又、ゼオライトの場合は形態は粉末状であり、粒径は平均粒径で2〜10μmである。ゼオライトは、天然に産出されるゼオライトもあるが、有機溶剤等の悪臭成分を高吸着除去するには、吸着性能の高い人工的に合成された合成ゼオライトが適している。また、合成ゼオライトにおいては、対象とする悪臭成分により、最適なゼオライトの種類を選定する事が可能である。又、活性炭素材では反応性の極めて高い溶剤を吸着した際に反応熱を生じるが、ゼオライトの場合は反応熱が生じ無い。
【0006】
本発明における有機成分(B)は、吸着シート製造時に吸着材(A)を担持し、吸着シート成形後も担持する担体として作用する成分で、パルプ状の有機繊維、ことに融点もしくは熱分解温度が300℃以上の耐熱性に優れた繊維である。該繊維はフィブリル化していることが吸着材(A)の高担持に望ましい。熱分解温度が300℃未満では、吸・脱着操作中に遭遇する高温下で、着火、燃焼、著しい強度低下が避けられない。具体的にはアラミド、メタアラミド、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン等から作られた繊維である。
有機成分(B)は前記耐熱性有機成分(B−1)の他に熱分解温度が300℃未満の物質を含むのが好ましい。該低温度分解性有機成分(B−2)は吸着シート製造時、吸着材(A)を吸着シートに高比率に担持させる作用を有する。該低温度分解性有機成分は最終吸着シートに多量(1%以上)残存すると、高温時に着火、燃焼、著しい強度低下が起こると言う前記耐熱性の点で好ましくない。本発明では低温度分解性有機成分は、予め作製した吸着シート前駆体を高温熱処理することにより炭化物あるいは分解消失せしめ、低温度分解性有機成分の形で吸着シートに対して1%以上含有させないことが重要である。低温度分解性有機成分としては、PVA、澱粉、あるいはポリアクリロニトリル等が上げられるが、PVAが望ましい。
【0007】
本発明で用いられる無機バインダー(C)は、吸着シートの高温下での吸着材(A)と構成繊維分とを定着維持させるのに必須であり、例えば水に可溶であり、バインダーがシートに均一に分散され、熱処理の際、反応、ゲル化等によって硬化し、その硬化の際に吸着材と構成繊維を強固に定着せしめるものである。また熱分解温度が300℃以上であり、反応性の高い有機溶剤により反応熱を生じ、シートの着火、燃焼の原因となる触媒性が低く、吸着材(A)の吸着性能をその被覆により低下させにくい物であることが好ましい。例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ等のリン酸塩系バインダー、ケイ酸ソーダ等のケイ酸塩系バインダーが好ましい。
【0008】
本発明の耐熱性吸着性シートに含まれる吸着材(A)の量は40〜80重量%。吸着性能及び生産性、吸着材の脱落を考慮すると50〜80重量%が好ましい。吸着材(A)の含有量が40%未満では充分な吸着性能が得られず80重量%以上では生産性が悪くなり、吸着材の脱落も多くなる。また吸着シートの柔軟性が不足し加工しにくくなる。本発明の耐熱性吸着シートに含まれる有機成分(B)の量は、吸着シート前駆体(前駆体シート)製造時に用いた有機成分及びその熱酸化物を合わせた量として5〜55重量%である。(B)の含有量が5%未満では吸着材の担持能が不足し、55%以上では吸着材の使用量を少なくしなければならない不都合が生じる。また本発明の耐熱性吸着シートに含まれる無機バインダー成分(C)の量は5〜30重量%である。5重量%未満では吸着材(A)と繊維分の及び繊維同士の定着性が乏しくなり、30%以上になると柔軟性が不足する為好ましくない。
【0009】
本発明の耐熱性吸着シートは、吸着材(A)、有機成分(B)及び無機バインダー(C)でシート状物(前駆体シート)を作製した後、該シート状物を有機成分(B)の耐熱性有機成分の融点もしくは分解温度以下の温度、低温度分解性有機成分の分解温度以上の温度で1〜60分熱処理することにより低温度分解性有機成分を熱酸化分解せしめ、大部分を炭化物もしくは分解消失させることにより製造することができる。
【0010】
本発明の前記シート状物は、例えば吸着材(A)、有機成分(B)及び無機バインダー(C)、必要に応じてガラス繊維、高分子凝集剤を用いて湿式抄紙法で製造することができる。
【0011】
本発明の耐熱性吸着シートの製造に用いられる有機成分(B)は前記アラミド繊維等の耐熱性有機成分(B−1)の他に150〜300℃で熱分解する低温度分解性有機成分(B−2)を用いる事が望ましい。低温度分解性有機成分(B−2)は湿式抄紙時の(A)成分を(B−1)成分に及び(B−1)成分同士を接合させるためのバインダーとして働き、シート状物成形後は最終吸着シート(本発明耐熱性吸着シート)の耐熱性を阻害する成分となるので高温熱処理で炭化物とするか、分解消失せしめ最終吸着シートに残存する熱処理による重量減少に起因する物質を減少させる。
【0012】
前記シート状物の熱処理は加熱オーブン等を用い空気雰囲気中で実施するのが好ましい。熱処理温度は耐熱性有機成分(B−1)の融点もしくは分解温度(T1 ℃)以下好ましくは5〜20℃(T1 −5〜T1 −20℃)、低温度分解成分(B−2)の分解温度(T2 ℃)以上、好ましくは分解温度の100〜200℃以上の温度で処理時間は1〜60分好ましくは1〜30分である。通常350〜400℃で1〜10分である。
【0013】
本発明における耐熱性吸着シートの諸特性の測定方法は次の通りである。
▲1▼耐熱性吸着シートが含有する吸着材(A)の含有量(G)は次式で求める。
G=(Q/q)×100
ここで Qは吸着シートの吸着率(g/g)
qは吸着材自身の吸着率(g/g)
▲2▼吸着性能(吸着率q及びQ)の測定:(JIS−K−1474に準ずる)
吸着試験用U字管に吸着シートを入れ温度25℃±0.5℃に調節した溶剤蒸気吸着性能試験装置(図1に示す)に3000ppmのトルエン混合空気を流し30分間吸着させ、吸着シートの重量増加を測定する。吸着率q及びQは次式で求める。
q及びQ=P/S×100
ここで Pは吸着シートの増量(g)
Sは吸着シートの質量(g)
▲3▼吸着シートの耐熱分解性(熱による重量減少)の測定:絶乾重量{W1 (g)の試料(吸着シート)を300℃±1℃に調節した電気炉中で30分熱処理し、乾燥デシケータ内で冷却後の重量(W2 )を測定し次式で重量減少率(F%)を求める。
F={(W1 −W2 )/(W1 )}×100
▲4▼吸着シート及び吸着材の熱分解開始温度の測定:吸着シートを熱分解性評価装置(図2)のサンプル管内に入れ恒温層内温度を400℃まで10℃/minで昇温する。昇温の際、吸着シートに微量の空気を4.0cm/sec の線速で供給する。その際、吸着シートの温度上昇を測定し、吸着シート温度が恒温層内温度以上になった温度を熱分解開始温度とする。
▲5▼吸着シートの柔軟性:5cm×10cmの吸着シートの両端を持ち、90度に折り曲げた際、シートが割れない物を○、ヒビのはいる物を△、割れる物を×とした。
▲6▼吸着シートからの吸着材の脱落:10cm×10cmの吸着シートを一定の強さで10回たたき、ゼオライトの場合は黒色の紙上に、活性炭の場合は白色の紙上に脱落した吸着材の量で判定し、微量の場合:○、多い場合:×、中程度を△とした。
【0014】
【実施例】
以下の実施例および比較例に基づいて本発明の耐熱性吸着シートについて詳細に説明する。
(実施例1)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと熱分解開始温度400℃以上のパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分:B−1)を0.3gと熱分解性有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分:B−2)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gのシート状物を得た。次にこのシート状物を無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダ20重量%水溶液に含浸し、100℃のエアーにて乾燥させ、ヘキサメタリン酸ソーダを0.15g吸着シートに定着させ前駆体シートを得た。その後、焼成炉にて空気中400℃で約3分間熱処理を行い2.0gの吸着性シートを得た。これにより得られた吸着シートはシート重量に対しゼオライト75.0重量%、ケブラー15.0重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ7.5重量%、PVA0%、PVA炭化物2.5%を含み空気中300℃、30分間の熱処理による重量減量は0%、吸着シートの熱分解開始温度は400℃以上であり、極めて高い耐熱性を有する。また吸着材含有比率が高いために、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が極めて高く、更に、柔軟性にとむ事から折り曲げ加工等の2次加工がし易い特徴を有する。尚吸着材ゼオライトの吸着性能(q)を図1で示される装置で測定した結果は15.0g/gであった。
【0015】
(実施例2)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分)を0.15gとガラス繊維(繊維径6μ×繊維長3mm)を1.5gと熱分解性有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gのシート状物を得た。次にこのシート状物を無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダ20重量%水溶液に含浸し、100℃のエアーにて乾燥させ、ヘキサメタリン酸ソーダを0.15g吸着シートに定着させ前駆体シートを得た。その後、焼成炉にて空気中400℃で約3分間熱処理を行い2.0gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートはシート重量に対しゼオライト75.0重量%、ケブラー7.5重量%、ガラス繊維7.5重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ7.5重量%、PVA0%、PVA炭化物2.5%を含み空気中300℃、30分間の熱処理による乾燥減量は1%、吸着シートの熱分解開始温度は400℃以上であり、極めて高い耐熱性を有する。また吸着材含有比率が高いために、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が極めて高く、更に、柔軟性にとむ事から折り曲げ加工等の2次加工がし易い特徴を有する。
【0016】
(実施例3)
水1000ccに対し吸着材として活性炭素繊維を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分)を0.3gと熱分解性有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gのシート状物を得た。次にこのシート状物を無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダ10重量%水溶液に含浸し、100℃のエアーにて乾燥させ、ヘキサメタリン酸ソーダを0.15g吸着シートに定着させ前駆体シートを得た。その後、焼成炉にて空気中400℃で約3分間熱処理を行い2.0gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートはシート重量に対し活性炭素繊維75.0重量%、ケブラー15.0重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ7.5重量%、PVA0%、PVA炭化物2.5%を含み空気中300℃、30分間の熱処理による減量は0.5%、吸着シートの熱分解開始温度は400℃以上であり、極めて高い耐熱性を有する。また吸着材含有比率が高いために、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が極めて高く、更に、柔軟性にとむ事から折り曲げ加工等の2次加工がし易い特徴を有する。尚吸着材活性炭素繊維の吸着性能(q)を図1で示される装置で測定した結果は50.0g/gであった。
【0017】
(実施例4)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を0.8gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分)を1.0gと熱分解性有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gのシート状物を得た。次にこのシート状物を無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダ20重量%水溶液に含浸し、100℃のエアーにて乾燥させ、ヘキサメタリン酸ソーダを0.15g吸着シートに定着させ前駆体シートを得た。その後、焼成炉にて空気中400℃で約3分間熱処理を行い2.0gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートはシート重量に対しゼオライト40.0重量%、ケブラー50.0重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ7.5重量%、PVA0%、PVA炭化物2.5%を含み空気中300℃、30分間の熱処理による熱処理による重量減量は0%、吸着シートの熱分解開始温度は400℃以上であり、極めて高い耐熱性を有する。更に、柔軟性にとむ事から折り曲げ加工等の2次加工がし易い特徴を有する。
【0018】
(比較例1)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gとパルプ状セルロース繊維(低温度熱分解性有機成分)を0.3gと熱分解性抄紙用有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え、円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gの吸着シートを作製した。これにより得られたシートはシート重量に対し、ゼオライト75重量%、セルロース繊維15重量%、PVA10重量%となり、耐熱性の低い抄紙用有機バインダーとパルプ状セルロース繊維を使用しているため、実施例に比べ熱分解開始温度が低い。
【0019】
(比較例2)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー(耐熱分解性有機成分)を0.3gと抄紙用有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性成分)を0.2g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートは、シート重量に対しゼオライト75重量%、ケブラー15重量%、PVA10重量%であり、耐熱分解性を有するパルプ状有機繊維を使用しているため、比較例1に比べ耐熱分解性が若干向上するが、熱分解開始温度は低い。
【0020】
(比較例3)
無機バインダーであるヘキサメタリン酸ソーダ20重量%水溶液に対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー(耐熱分解性有機成分)を0.3gをミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し0.8gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートは、シート重量に対してゼオライト37.5重量%、ケブラー37.5重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ30重量%となり、耐熱分解性が高い抄紙用無機バインダーを使用する事で熱分解開始温度が高いが、吸着材担持比率が実施例に比べて極めて低く、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が低く、更には、吸着材の脱落が多い。
【0021】
(比較例4)
ガラス繊維でなる坪量15g/m2 の無機シートに無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダと、吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1:3の混合比で混合したスラリー液に含浸し、150℃〜200℃のエアーにて乾燥させ、1.4gの吸着シートを得た。これにより得られた吸着シートは、シート重量に対してゼオライト40重量%、ガラス繊維21.4%、ヘキサメタリン酸ソーダ38.6重量%であり、無機物で構成されたシートに、無機バインダーと吸着材を含浸定着させる事で耐熱性は高いが、実施例に比べ、吸着材の担持比率が極めて低く、有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が低く、吸着材の脱落が多く、折り曲げ加工等の2次加工が難しい。
【0022】
(比較例5)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分)を0.45gと熱分解性抄紙用有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.05g入れ、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、1.8gの吸着シートを作製した。これにより得られたシートはシート重量に対し、ゼオライト72.2重量%、ケブラー25重量%、PVA2.8重量%となり、耐熱性の低い抄紙用有機バインダーを使用しているため、実施例1に比べ耐熱分解性が低い。又、抄紙用有機バインダーの含有量が少ない為、有機溶剤等吸着材担持性が十分ではく悪臭成分の吸着性能は実施例より低くなる。
【0023】
(比較例6)
水1000ccに対し吸着材として13Xゼオライト(ユニオン昭和製)を1.5gと耐熱分解性500℃を有するパルプ状有機繊維であるケブラー繊維(耐熱性有機成分)を0.025gとガラス繊維(繊維径6μ×繊維長3mm)を0.375gと熱分解性有機バインダーとしてPVA(低温度熱分解性有機成分)を0.1g、ミキサーで約3分間撹拌した。次に凝集剤として高分子凝集剤フロクラン(片山化学工業製)を4cc加え円網式湿式抄紙装置を使い、湿式抄紙後乾燥し、2.0gのシート状物を得た。次にこのシート状物を無機バインダーとしてヘキサメタリン酸ソーダ20重量%水溶液に含浸し、100℃のエアーにて乾燥させ、ヘキサメタリン酸ソーダを0.15g吸着シートに定着させ前駆体シートを得た。その後、焼成炉にて空気中400℃で約3分間熱処理を行い1.6gの吸着性シートを得た。これにより得られた吸着シートはシート重量に対しゼオライト51.1重量%、ケブラー2.1重量%、ガラス繊維31.9重量%、ヘキサメタリン酸ソーダ12.8重量%、PVA0%、PVA炭化物2.1%を含み空気中300℃、30分間の熱処理による乾燥減量は0%、吸着シートの熱分解開始温度は400℃以上であり、極めて高い耐熱性を有する。しかし、耐熱性有機繊維の含有量が低い為、吸着材担持比率が低くなり、実施例に比べ有機溶剤等の悪臭成分の吸着性能が低くなる。更に、柔軟性も実施例に比べ悪くなり、折り曲げ加工等の2次加工が実施例に比べ難しい。
実施例1〜4及び比較例1〜6のシートの製造、シートの組成、シートの性能をまとめて表1〜表3に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【発明の効果】
以上、説明した様に本発明の耐熱性吸着シートは、吸着材の含有比率が極めて高く、有機溶剤等の悪臭成分の吸着除去性能が極めて優れている。
また、耐熱性を有する吸着シートであるため、再生工程等により突発的に300℃程度の高温下にさらされた場合でも吸着シートの着火、燃焼、著しい強度低下の恐れがなく、また吸着材としてゼオライトを使用した場合には反応性の極めて高い有機溶剤を吸着した際に生ずる反応熱もなくなり、安全に有機溶剤等の悪臭有害ガスを吸着除去する事ができる。さらに本吸着シートは柔軟性に富む事から、折り曲げ加工等の2次加工がし易いという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の吸着シートの吸着性能を評価する装置を示す。
【図2】図2は本発明のB成分すなわち、耐熱性有機ポリマー(B−1)及び低温度熱分解性有機ポリマー(B−2)の熱分解開始温度を測定する装置である。
【符号の説明】
A1,A2 温度調節用蛇管
B1,B2,B3 共通すり合わせ濾過板付ガス洗浄瓶(250ml)
C 混合瓶(球内径60mm二球連続式)
D 吸着試験用U字管
E 三方コック
F1 溶剤蒸気発生空気用流量計
F2 希釈空気用流量計
N 恒温槽又は恒温水槽
H 余剰ガス出口
I 乾燥空気入口
J 排気口
K1,K2 ガス流量調節コック
L 溶剤
M 恒温槽
N サンプル管
O サンプル
P 熱電対
Q 温度記録計
R 空気
S 排気
Claims (4)
- 吸着材(A)、融点もしくは熱分解温度が300℃以上の有機繊維(B−1)、無機バインダー(C)、及び熱分解温度が150〜300℃のPVA系ポリマー(B−2)でシート状物を作製したのち、熱処理してPVA系ポリマー(B−2)を炭化した炭化物(D)を含む吸着シートであって、有機繊維(B−1)及びPVA系ポリマー(B−2)の炭化物(D)の含まれる量が5〜55重量%であり、該吸着シートの空気中300℃で30分間の加熱処理した時の重量減少が1%以下である耐熱性吸着シート。
- 前記吸着材(A)がゼオライト及び/又は活性炭素材であり吸着シートに含まれる(A)の量が40〜80重量%である請求項1記載の耐熱性吸着シート。
- 前記有機繊維(B−1)がアラミド系ポリマー、ベンズイミダゾール系ポリマー、ベンゾオキサゾール系ポリマー、ポリイミド系ポリマーから選ばれた少なくとも一種のポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性吸着シート。
- 吸着材(A)、有機繊維(B−1)、無機バインダー(C)、及び熱分解温度が150〜300℃のPVA系ポリマー(B−2)でシート状物を作製したのち、該シート状物を有機繊維(B−1)の分解開始温度以下、前記PVA系ポリマー(B−2)の分解開始温度以上の温度で熱処理する請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性吸着シートの製造方法。
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JP25291895A JP4203605B2 (ja) | 1995-09-29 | 1995-09-29 | 耐熱性吸着シート及びその製造方法 |
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JP25291895A JP4203605B2 (ja) | 1995-09-29 | 1995-09-29 | 耐熱性吸着シート及びその製造方法 |
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