JP3073937B2 - シェル型針状ころ軸受の製造方法 - Google Patents
シェル型針状ころ軸受の製造方法Info
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Description
軸受の製造方法に関し、殊に製造工程の簡略化を図ると
共に、該軸受を構成する各要素の強度を向上することに
よって全体としての寿命の向上を図ったシェル型針状こ
ろ軸受を製造することのできる方法に関するものであ
る。
な形状を示す概略断面図であり、図中1はシェル型外
輪、2は針状ころ(ニードル)、3は保持器を夫々示
す。図示する様にシェル型外輪1は、円筒状体の軸方向
両端縁部1a,1bが半径方向内方に折り曲げられて鍔
とされ、このシェル型外輪1の内側には、全周に亘って
針状ころ2が複数配置される。また保持器3は円筒状に
形成されてシェル型外輪1の内側に挿入される。この保
持器3には円周方向に等間隔を置いて軸方向に延びる窓
孔4が複数穿設されており、この窓孔4の夫々に前記針
状ころ2が嵌挿されて回転自在に支持されるように構成
されている。
を支持する構成を示したけれども、保持器3を設けず
に、シェル型外輪1の両端縁部1a,1bを軸心方向の
内方側に更に折り曲げた状態で針状ころ2を支持する総
ころタイプのシェル型針状ころ軸受も知られている。
2が線接触によって荷重を受ける構成であるので、衝撃
や高荷重に耐えることができる。こうしたシェル型針状
ころ軸受は、具体的には、トランスミッションやABS
ポンプ等、様々な用途の軸受として有用である。
ついて、図面を用いて説明する。まず図2(a)に示す
様に、シェル型外輪1の一方側の端縁部1aだけを半径
方向内方に折り曲げて鍔とし、他方側の端縁部1bは折
り曲げずに解放した形状に成形した後、浸炭処理後焼入
れ・焼戻しし、所定の硬度を付与する。その後、他方側
の端縁部1bの近傍は、後工程での折り曲げ加工の為に
焼鈍処理によって軟化させておく。
の窓孔4の夫々に針状ころ2を嵌挿した状態でシェル型
外輪1の一方側の端縁部1aの内側に保持器3が挿入さ
れる。そして最終的に、図2(c)に示す様に、シェル
型外輪1の他方側の端縁部1bを半径方向内方に折り曲
げて鍔としてシェル型針状ころ軸受の完成品とする。
ろ2は標準的な焼き入れ・焼き戻しが予め施されてお
り、組込まれるときに既に所定の強度が付与されてい
る。またこの針状ころ2の素材としては、例えば高炭素
クロム軸受鋼の1種であるSUJ軸受鋼(JIS:G4
805 SUJ)が一般的に用いられ、最終的に表面か
ら内部にかけて漸減またはほぼ一定になる傾向で残留オ
ーステナイトが形成されており、その量は最大でも15
容量%であるのが一般的である。その結果、針状ころ2
の表面硬さは、ビッカース硬度(Hv)で700〜75
0程度である。
CM415等の肌焼鋼が用いられる。また保持器3の素
材としては、通常の冷延鋼板(例えば、SPCC)が用
いられ、軟窒化や浸炭窒化処理等の処理により強度を向
上させている。
においては、シェル型外輪1、針状ころ2および保持器
3の夫々の要素は、軸受に組立てる前に予め別々に熱処
理が施されるものであり、それだけ工程数が多くなるの
で、その工程数をより簡略化することが望まれている。
また従来の方法では、後述する様にシェル型外輪1の両
鍔における硬度の不均一が発生するので、シェル型針状
ころ軸受の装置への方向性(即ち、シェル型外輪1の方
向性)をも考慮する必要がある。更に、上記した製造手
順で製造すると、シェル型外輪1における熱履歴が多く
なって、このシェル型外輪1の両端縁部1a,1bおよ
び中央部の夫々の外径がばらつき、或はこれらの外径の
真円度が悪くなるという問題が生じる。
状ころ軸受においては、次に示すような問題もある。即
ち、シェル型外輪1における端縁部1b側は、前記図2
(c)の工程で焼鈍されるので、シェル型外輪1の硬度
が部分的に低下し、硬度の不均一が発生することにな
る。またシェル型針状ころ軸受は、硬質の異物が入り込
む環境で使用されることも多く、従来方法によって得ら
れたシェル型針状ころ軸受では強度的に不十分であり、
異物を噛み込んで長寿命が得られない場合がある。こう
した諸般の事情から、過酷な条件下で使用される軸受と
しての寿命を更に高めることが望まれていた。
たものであって、その目的は、従来のものよりも強度の
向上を図り、異物が入り込む環境においても長寿命が実
現でき、またシェル型外輪外径における真円度が良好な
シェル型針状ころ軸受を、比較的簡易な工程で製造する
ことのできる方法を提供することにある。
のできた本発明方法とは、円筒状体の軸方向両端縁を半
径方向内方に折り曲げて鍔としたシェル型外輪の内周
に、複数の針状ころを配置したシェル型針状ころ軸受を
製造するに当たり、一方の端縁部のみを半径方向内方に
折り曲げて鍔としたシェル型外輪を未焼入れの状態で組
立ての際に所定の形状に成形した後、焼入れ・焼戻し済
または未焼入れの針状ころを組込み、しかる後前記シェ
ル型外輪の他方の端縁部を半径方向内方に折り曲げて鍔
とすることによって軸受を組立て、引き続き組立てた該
軸受に対して浸炭窒化処理し、更に焼入れ・焼戻しを施
す点に要旨を有するシェル型針状ころ軸受の製造方法で
ある。
回転自在に支持する保持器を備えたシェル型針状ころ軸
受を製造する場合にも適用できるものであり、この場合
には保持器は軟窒化処理等の熱処理が施されずに組込ま
れ、組込まれた後に浸炭窒化処理や焼入れ・焼戻し等の
熱処理が施されることになる。
るべく、様々な角度から検討した。その結果、上記した
手順でシェル型針状ころ軸受を製造する様にすれば、こ
れまで組込まれるまでに必要とされていた各要素の熱処
理ができるだけ省略できて工程が簡略化され、しかも長
寿命且つ真円度を良好にしたシェル型針状ころ軸受が得
られるることを見出し、本発明を完成した。
1、2を参照しつつ説明する。まず一方側の端縁部1a
のみを半径方向内方に折り曲げて鍔としたシェル型外輪
1を、未焼入れの状態で組立ての際の所定形状に成形し
て前記図2(a)に示した形状とする。即ち、前記図2
(a)に示した段階では、シェル型外輪1は未焼入れの
ままとしておく。
複数の針状ころ2を、保持器3の窓孔4(前記図1)に
嵌挿した状態でシェル型外輪1の前記一方の端縁部1a
の内側に該保持器3を挿入して図2(b)に示した状態
とする。しかる後シェル型外輪1の他方の端縁部1bを
半径方向内方に折り曲げて鍔として軸受を組立て、前記
図2(c)に示した状態とする。引き続き該組立てた軸
受に対して浸炭窒化処理後焼入れ・焼戻しを施して製品
とする。
を製造するに当たっては、一方の端縁部1aのみを半径
方向内方に折り曲げて鍔とした段階では、シェル型外
輪、針状ころおよび保持器のいずれも焼入れ・焼戻し等
の熱処理を施さないことを基本的な構成とするものであ
り、その後これらの要素によって軸受を組立ててから、
浸炭窒化処理し、その後焼入れ・焼戻しを施すものであ
る。
むタイプのシェル型針状ころ軸受について説明したが、
保持器3を持たない総ころタイプのシェル型針状ころ軸
受にも本発明は有用であり、この場合の製造手順は保持
器3を組込まない以外は、上記と同じである。
とも前記シェル型外輪および針状ころ(保持器を備えた
ものにあっては該保持器も)を、一斉にしかも一度の熱
処理を施すだけで所定の強度を付与することができるの
で、強度付与の為の熱処理工程が簡略化されることにな
る。またシェル型外輪に対して部分的な焼なまし処理を
施さなくても軸受の組立てができるので、シェル型外輪
における両端縁部の硬度の均一化が達成される。更に、
シェル型針状ころ軸受の装置への方向性をも考慮する必
要もなくなる。
すれば、上述の如く針状ころは組込みの際に予め熱処理
を施さない方が良いが、組込みの際に予め熱処理(即
ち、ずぶ焼入れ)を施しておいても良い。こうした構成
を採用すれば、製造工程がそれだけ増加することになる
が、その一方でその後実施される浸炭窒化処理によって
更なる強度向上を達成ができるという利点がある。但
し、針状ころに対して予め熱処理を施したとしても、シ
ェル型外輪および保持器を別々に熱処理していた従来の
方法と比べてに製造工程は簡略化されたものとなる。シ
ェル型針状ころ軸受の従来の製造工程の詳細を図3(ブ
ロック図)に、本発明の製造工程の詳細を図4(ブロッ
ク図)に夫々示す。
造することによって、該軸受に下記に示す様な具体的な
特性を付与することができる。次に、これらの特性につ
いて更に詳細に説明する。
理による窒素富化層が形成され、且つ該窒素富化層の残
留オーステナイト量が20容量%以上と多く形成するこ
とができる。これによって異物混入潤滑条件下において
もシェル型針状ころ軸受を長寿命とすることが可能であ
る。これは、転走面に高硬度の異物を噛み込むと、従来
の針状ころ軸受であれば、圧痕周辺で応力集中源となる
のであるが、多量に存在する残留オーステナイトの塑性
変形によってこうした応力集中が緩和され、長寿命にで
きるからである。
成されているので、表層の硬度は従来品と比べて高くな
っており、高硬度の異物を噛み込みによっても圧痕が生
成しにくく、前記残留オーステナイトの効果と共にシェ
ル型針状ころ軸受の長寿命化に寄与する。これらの効果
を得る為には、少なくとも表層部の残留オーステナイト
量は20容量%以上とする必要があるが、本発明のシェ
ル型針状ころ軸受はこうした要件を満足するものとな
る。尚窒素富化層は、具体的には厚みを0.1mm以上
のものとすることができる。また針状ころの表面硬さ
は、Hv750以上とすることができる。
ころの内部硬さも表面硬さと同程度に高めることがで
き、針状ころ全体の強度を向上させることができる。従
って、過酷な使用条件、例えば高荷重の条件で使用され
る場合であっても十分にその高荷重を支持し、所定の寿
命を満足することができる。
の様に局部的に硬度が低下した部分が存在せず、その表
層部には浸炭窒化処理による窒素富化層が形成されたも
のとなり、且つ該窒素富化層の残留オーステナイト量を
25容量%以上のものとすることができ、針状ころの場
合と同様の理由によってシェル型外輪としての強度を高
めて長寿命とすることができる。またシェル型外輪の窒
素富化層は、具体的には厚みが0.05mm以上とする
ことができる。
く、異物を噛み込んだ際の影響が大きいので、生成され
た残留オーステナイトがその効果を発揮する為には、少
なくとも25容量%以上であるが、本発明方法によって
得られるシェル型針状ころ軸受によれば、こうした要求
をも満足させることができる。
この保持器についても、その表層部に窒素富化層が形成
されたものとすることができ、その結果、該表面硬さを
Hv750以上と、従来の軟窒化品に比べて高くできる
ので、耐摩耗性を向上させことができる。
外輪、針状ころおよび保持器等の軸受を構成する各構成
要素における強度を高めることができるので、軸受全体
における強度の向上が図れ、得られたシェル型針状ころ
軸受としての長寿命化が実現できることになる。尚本発
明方法を実施するに当たり、各構成要素の素材について
は特に限定されるものではなく、上記した様なこれまで
用いられている素材から適宜選択して用いれば良い。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
来方法によってシェル型針状ころ軸受を作成した。 (A)本発明方法 軸受構成各要素の作成条件を下記に示す。 〈針状ころ〉 線材(SUJ2鋼)切断→落下式端面成形→タンブラー
→焼入れ・焼き戻し(*1)→外形研削→外形スーパー
→寸法選別 *1:840℃×30分で油焼入れ、次いで180℃×
90分で焼戻し 〈保持器〉 帯鋼(SPC)→断面形状成形→ポケット抜き→切断→
曲げ・溶接 〈シェル型外輪〉 帯鋼(SCM415)→深絞り成形(片縁のみ折り曲
げ) 上記条件にて作成されたシェル型外輪に、針状ころと保
持器を組み込み、シェル型外輪の残りの縁を折り曲げ、
軸受を組立てた。こうして組立てた軸受を下記の条件で
浸炭窒化処理し、焼入れ・焼戻し後本発明のシェル型針
状ころ軸受を得た。
Xガスに容積比で1〜3%のアンモニア添加)で、84
0〜850℃×35分間保持して浸炭窒化した後、直ち
に油中に急冷した。
保持器を組み込んだ後、シェル型外輪の焼鈍された一方
の端部半径方向内方に折り曲げ、完成品とした。 〈針状ころ〉 線材(SUJ2鋼)切断→落下式端面成形→タンブラー
→焼入れ・焼き戻し(*2)→外形研削→外形スーパー
→寸法選別 *2:840℃×30分で油焼入れ、次いで180℃×
90分で焼戻し 〈保持器〉 帯鋼(SPC)→断面形状成形→ポケット抜き→切断→
曲げ・溶接 〈シェル型外輪〉 帯鋼(SCM415)→プレス絞り成形→浸炭焼入れ・
焼戻し→高周波焼鈍→タンブラー
す。 (1) 保持器 :570〜580℃×35分で軟窒化
処理 (2) 針状ころ :840℃×30分でオーステナイト
化し、油中に焼入れ、次いで180℃×90分で焼戻し (3) シェル型外輪:840〜890℃で60分保持して
浸炭し(RXガス雰囲気中)、油中に焼入れ、次いで1
65℃×60分で焼戻し(一方の端縁部の焼鈍は、高周
波加熱によった)
品)と従来方法によって得られた製品(従来品)の性状
を、真円度や寿命L10と共に、下記表1に示す。尚真円
度や寿命L10との評価基準は下記の通りである。また試
験に供した軸受は、オープンエンドシェル型針状ころ軸
受であり、内径:15mm、外径:23mm、幅:16
mmのサイズのものを使用した(本発明品と従来品は同
一寸法)。
折り曲げ成形により形成させた鍔側外周面(最初にプレ
ス成形した鍔の端面を基準にして12.7mmの位置を
測定)の真円度をタリロンドを用いて測定し、従来品を
1としたときの比率を求めた。
行ない、従来品との比較を行なった。 回転速度:5000rpm ラジアル荷重:572kgf
来品に比べて強度の向上が図れ、長寿命は達成されてい
ることがわかる。またその工程数においても、各要素の
夫々を熱処理する工程が省略され、製造工程の簡略化が
達成されている。
り、従来のものよりも強度の向上を図り、異物が入り込
む環境においても長寿命が実現でき、またシェル型外輪
外径における真円度が良好なシェル型針状ころ軸受を、
比較的簡易な加工工程で製造することができた。
略断面図である。
概略説明図である。
を示すブロック図である。
細を示すブロック図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 円筒状体の軸方向両端縁を半径方向内方
に折り曲げて鍔としたシェル型外輪の内周に、複数の針
状ころを配置したシェル型針状ころ軸受を製造するに当
たり、一方の端縁部のみを半径方向内方に折り曲げて鍔
としたシェル型外輪を未焼入れの状態で組立ての際の所
定の形状に成形した後、焼入れ・焼戻し済または未焼入
れの針状ころを組込み、しかる後前記シェル型外輪の他
方の端縁部を半径方向内方に折り曲げて鍔とすることに
よって軸受を組立て、引き続き組立てた該軸受に対して
浸炭窒化処理し、更に焼入れ・焼戻しを施すことを特徴
とするシェル型針状ころ軸受の製造方法。 - 【請求項2】 シェル型針状ころ軸受は、前記複数の針
状ころを回転自在に支持する保持器を備えたものであ
り、該保持器は熱処理が施されずに組込まれる請求項1
に記載の製造方法。
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