JP2006144086A - 転動軸 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐疲労性に優れ塑性変形が生じにくい転動軸を提供する。
【解決手段】ラジアルニードル軸受1は、外輪2と、内輪に相当する転動軸3と、外輪2と転動軸3との間に転動自在に配された複数の転動体4と、を備えている。この転動軸3は、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成されており、高周波焼入れにより形成されたビッカース硬さHvが650以上の表面層3aと、この表面層3aの内側の芯部と、を有している。表面層3aの窒素濃度は0.1質量%以上0.8質量%以下で、残留オーステナイト量は15体積%以上40体積%以下である。また、芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。
【選択図】 図1
【解決手段】ラジアルニードル軸受1は、外輪2と、内輪に相当する転動軸3と、外輪2と転動軸3との間に転動自在に配された複数の転動体4と、を備えている。この転動軸3は、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成されており、高周波焼入れにより形成されたビッカース硬さHvが650以上の表面層3aと、この表面層3aの内側の芯部と、を有している。表面層3aの窒素濃度は0.1質量%以上0.8質量%以下で、残留オーステナイト量は15体積%以上40体積%以下である。また、芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。
【選択図】 図1
Description
本発明は転動軸に係り、特に転がり軸受(特にラジアルニードル軸受)の内輪に相当する転動軸に関する。
ラジアルニードル軸受の内輪に相当する転動軸には、耐疲労性に優れ塑性変形が生じにくいという性能が要求される。このような転動軸としては、例えば、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素を含有する鋼で構成され、高周波焼入れにより形成されたビッカース硬さHvが650以上の表面層を有するものが知られている(特許文献1を参照)。この表面層の窒素濃度は0.05質量%以上0.4質量%以下で、残留オーステナイト量は15体積%以上40体積%以下であるとともに、表面層の内側の芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。
特開2002−4003号公報
残留オーステナイト量は、鋼中に固溶している炭素及び窒素の量で決まるため、炉加熱においては、温度と時間の管理により安定した残留オーステナイト量が確保される。しかし、高周波焼入れで焼き入れしようとすると、転動軸の熱容量が小さい場合(例えば、転動軸の径が小さい場合や、転動軸が中空軸で肉厚が薄い場合など)には、適正な硬化層深さを得るために加熱時間を短くせざるを得ないので、転動軸の表面温度が十分に上昇しないおそれがあった。その結果、固溶される炭素及び窒素の量が不十分となって、必要な残留オーステナイト量が確保されないという問題が生じるおそれがあった。また、例えば浸炭窒化処理の後に芯部の残留オーステナイト量を0体積%とするために焼鈍しを行うと炭化物が析出するが、焼鈍し温度が高い場合は炭化物が粗大化するため、焼入れにおいて固溶しにくくなるという問題が生じるおそれがあった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、耐疲労性に優れ塑性変形が生じにくい転動軸を提供することを課題とする。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、耐疲労性に優れ塑性変形が生じにくい転動軸を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転動軸は、相手部材である転動体に対して相対的に転動する転動軸において、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成するとともに、高周波焼入れにより形成されたビッカース硬さHvが650以上の表面層を設け、前記表面層の窒素濃度を0.1質量%以上0.8質量%以下、残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とし、前記表面層の内側の芯部の残留オーステナイト量を0体積%としたことを特徴とする。
鋼中に0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素が含まれているため、窒素がケイ素と結合して鋼中に多量に固溶されやすい。炭化物が粗大化して炭素が固溶しにくくなっている場合でも、上記のように窒素が多量に固溶されやすいので、鋼中に固溶している炭素及び窒素の合計量が多くなり、残留オーステナイト量が増大することとなる。
熱容量が小さい転動軸に焼入れを施す場合には、適正な硬化層深さを得るために加熱時間を短くせざるを得ず、その結果、転動軸の表面温度が十分に上昇しないおそれがあるが、そのような転動軸であっても、十分な量の残留オーステナイトが確保される。なお、熱容量が小さい転動軸の例としては、直径が15mm以下(より好ましくは12mm以下)の転動軸や、中空軸で肉厚が15mm以下(より好ましくは12mm以下)の転動軸があげられる。
熱容量が小さい転動軸に焼入れを施す場合には、適正な硬化層深さを得るために加熱時間を短くせざるを得ず、その結果、転動軸の表面温度が十分に上昇しないおそれがあるが、そのような転動軸であっても、十分な量の残留オーステナイトが確保される。なお、熱容量が小さい転動軸の例としては、直径が15mm以下(より好ましくは12mm以下)の転動軸や、中空軸で肉厚が15mm以下(より好ましくは12mm以下)の転動軸があげられる。
このとき、表面に0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素を侵入させた後に、高周波焼入れを施して、ビッカース硬さがHv650以上で且つ残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である表面層を設ける方法により転動軸を製造すれば、表面層のオーステナイト結晶粒を粗大化させることなく、残留オーステナイトを形成させることができる。そして、これにより軌道表面(表面層)の耐疲労性を高めることができる。
また、表面に0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素を侵入させた後に、焼入れを施すか又は放冷し、さらに焼戻しを施して転動軸の全体の硬さをHv200〜300に調質し、その後に高周波焼入れを施して、ビッカース硬さがHv650以上で且つ残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である表面層を設ける方法により転動軸を製造すれば、上記の方法と同様に軌道表面(表面層)の耐疲労性を高めることができるとともに、表面層以外の部分(芯部)の残留オーステナイト量を0体積%とすることができるから、これにより、転動軸に発生する応力(弾性限界以内の応力)による残留オーステナイトの経時的な分解に伴う塑性変形を防止できる。
なお、本発明における表面層とは、表面から深さ2%Da(転動体の直径Daの2%)の位置までの部分を意味する。
ここで、上記の各数値の臨界的意義について説明する。
なお、本発明における表面層とは、表面から深さ2%Da(転動体の直径Daの2%)の位置までの部分を意味する。
ここで、上記の各数値の臨界的意義について説明する。
〔鋼の炭素濃度:0.5質量%以上1.2質量%以下〕
炭素濃度が0.5質量%未満であると、高周波焼入れにより表面層及び高周波焼入れ部の硬さを安定してHv650(Hrc58)以上とすることが難しい。転動軸の寸法がどのようなものであっても好ましい硬さであるHv650(Hrc58)以上とするためには、下限を0.5質量%とする必要がある。
なお、浸炭窒化法により浸炭する場合においては、表面層に微細な(0.5μm以上1.0μm以下)炭窒化物を形成するためにも、炭素は0.5質量%以上必要である。
また、炭素濃度が1.2質量%超過であると、鋼中に巨大な炭化物が生成しやすくなり、転がり寿命を低下させる。
炭素濃度が0.5質量%未満であると、高周波焼入れにより表面層及び高周波焼入れ部の硬さを安定してHv650(Hrc58)以上とすることが難しい。転動軸の寸法がどのようなものであっても好ましい硬さであるHv650(Hrc58)以上とするためには、下限を0.5質量%とする必要がある。
なお、浸炭窒化法により浸炭する場合においては、表面層に微細な(0.5μm以上1.0μm以下)炭窒化物を形成するためにも、炭素は0.5質量%以上必要である。
また、炭素濃度が1.2質量%超過であると、鋼中に巨大な炭化物が生成しやすくなり、転がり寿命を低下させる。
〔鋼のケイ素濃度:0.4質量%以上1.2質量%以下〕
表面層の残留オーステナイト量を十分に確保するためには、鋼中に固溶している炭素及び窒素の量が十分である必要があるが、短時間の加熱で炭素及び窒素の固溶を促進させるためには、表面層の窒素濃度を高めることが有効である。表面層の窒素濃度を十分に確保するためには、鋼のケイ素濃度を0.4質量%以上とする必要がある。ただし、1.2質量%を超えると、鋼の加工性,旋削性が低下するおそれがある。このような不都合が生じにくくするためには、鋼のケイ素濃度の上限値は0.7質量%とすることが好ましい。
表面層の残留オーステナイト量を十分に確保するためには、鋼中に固溶している炭素及び窒素の量が十分である必要があるが、短時間の加熱で炭素及び窒素の固溶を促進させるためには、表面層の窒素濃度を高めることが有効である。表面層の窒素濃度を十分に確保するためには、鋼のケイ素濃度を0.4質量%以上とする必要がある。ただし、1.2質量%を超えると、鋼の加工性,旋削性が低下するおそれがある。このような不都合が生じにくくするためには、鋼のケイ素濃度の上限値は0.7質量%とすることが好ましい。
〔鋼のマンガン濃度:0.1質量%以上2質量%以下〕
マンガンは脱酸剤として作用するほか、鋼の焼入れ性を向上させる作用や、転動部材に有効な残留オーステナイトの生成を促進する作用があるので、マンガン濃度は0.1質量%以上とする必要がある。ただし、マンガン濃度が高すぎると、被削性,冷間加工性が低下するだけでなく、熱処理後に多量の残留オーステナイトが生成して耐疲労性が低下し、寿命が低下するおそれがある。よって、鋼のマンガン濃度は2質量%以下とする必要があり、0.7質量%以下とすることが好ましい。
マンガンは脱酸剤として作用するほか、鋼の焼入れ性を向上させる作用や、転動部材に有効な残留オーステナイトの生成を促進する作用があるので、マンガン濃度は0.1質量%以上とする必要がある。ただし、マンガン濃度が高すぎると、被削性,冷間加工性が低下するだけでなく、熱処理後に多量の残留オーステナイトが生成して耐疲労性が低下し、寿命が低下するおそれがある。よって、鋼のマンガン濃度は2質量%以下とする必要があり、0.7質量%以下とすることが好ましい。
〔鋼のクロム濃度:0.5質量%以上2質量%以下〕
クロムは基地に固溶して鋼の焼入性,焼戻し軟化抵抗性等を高めるとともに、高硬度の微細な炭化物又は炭窒化物を形成して、鋼の硬さの向上や熱処理時の結晶粒粗大化の防止を促進することにより、寿命を向上させる作用を有している。このような効果を得るためには、鋼のクロム濃度は0.5質量%以上とする必要があり、1.3質量%以上とすることが好ましい。ただし、2質量%を超えると、製鋼過程で巨大な炭化物が生成して、焼入れ性や耐疲労性に悪影響が出るおそれがあることに加えて、冷間加工性が低下するおそれがある。このような不都合が生じにくくするためには、鋼のクロム濃度の上限値は1.6質量%とすることが好ましい。
クロムは基地に固溶して鋼の焼入性,焼戻し軟化抵抗性等を高めるとともに、高硬度の微細な炭化物又は炭窒化物を形成して、鋼の硬さの向上や熱処理時の結晶粒粗大化の防止を促進することにより、寿命を向上させる作用を有している。このような効果を得るためには、鋼のクロム濃度は0.5質量%以上とする必要があり、1.3質量%以上とすることが好ましい。ただし、2質量%を超えると、製鋼過程で巨大な炭化物が生成して、焼入れ性や耐疲労性に悪影響が出るおそれがあることに加えて、冷間加工性が低下するおそれがある。このような不都合が生じにくくするためには、鋼のクロム濃度の上限値は1.6質量%とすることが好ましい。
〔その他の合金成分や不純物について〕
モリブデン,バナジウム等の炭化物形成促進元素もクロムと同様の効果が得られるので、素材費向上や加工性低下によるコストアップが生じない範囲(2質量%以下)で添加してもよい。
また、上記のような各種合金成分の残部は鉄であるが、不可避的な不純物としてイオウ,リン,アルミニウム,チタン,酸素等を含有してもよい。これらの元素は、表面起点型の剥離には際だった影響を与えないとされているが、その品質が著しく低い場合には内部起点型の剥離が生じることとなるので、コストアップを招くような厳しい不純物規制は行わないものの、通常の軸受材料として使用できるような清浄度規制(JIS G4805に規定のもの)を満足する品質レベルとすることが好ましい。
モリブデン,バナジウム等の炭化物形成促進元素もクロムと同様の効果が得られるので、素材費向上や加工性低下によるコストアップが生じない範囲(2質量%以下)で添加してもよい。
また、上記のような各種合金成分の残部は鉄であるが、不可避的な不純物としてイオウ,リン,アルミニウム,チタン,酸素等を含有してもよい。これらの元素は、表面起点型の剥離には際だった影響を与えないとされているが、その品質が著しく低い場合には内部起点型の剥離が生じることとなるので、コストアップを招くような厳しい不純物規制は行わないものの、通常の軸受材料として使用できるような清浄度規制(JIS G4805に規定のもの)を満足する品質レベルとすることが好ましい。
〔表面層の窒素濃度:0.1質量%以上0.8質量%以下〕
窒素を炭素とともに焼入れ後の組織に固溶すると、マトリックスを強化する効果がある。このことにより、表面硬さが向上し焼戻し軟化抵抗性も向上することから、広い温度範囲にわたって耐摩耗性を得ることができ、それにより転動軸の寿命を向上することができる。さらに、窒素は、高周波焼入れによる短時間の加熱でも容易にマトリックスに固溶するため、十分な残留オーステナイト量が確保されやすい。
窒素を炭素とともに焼入れ後の組織に固溶すると、マトリックスを強化する効果がある。このことにより、表面硬さが向上し焼戻し軟化抵抗性も向上することから、広い温度範囲にわたって耐摩耗性を得ることができ、それにより転動軸の寿命を向上することができる。さらに、窒素は、高周波焼入れによる短時間の加熱でも容易にマトリックスに固溶するため、十分な残留オーステナイト量が確保されやすい。
例えば直径が12mm以下の転動軸や、肉厚が12mm以下の中空状の転動軸に高周波焼入れを施す際には、適正な硬化層深さを得るために加熱時間を短くせざるを得ず、その結果、転動軸の表面温度が十分に上昇しない場合があるが、窒素濃度が0.1質量%未満であると、そのような場合に表面層の残留オーステナイト量を15体積%以上とすることが困難となる。
また、0.8質量%を超えると、熱処理後の加工(研磨,研削等)に時間を要し、後加工コストが増大する。耐摩耗性と後加工コストとのバランスを最適なものとするには、表面層の窒素濃度を0.1質量%以上0.4質量%以下とすることがより好ましい。特に、転動面を支え表面疲労を生じにくくさせるための表面層を、完成転動軸の表面から深さ2%Daの位置までの部分とし、この位置(深さ2%Daの位置)での窒素濃度を0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上とすることが望ましい。
〔表面層の硬さ:ビッカース硬さHv650(Hrc58)以上〕
表面層の硬さがHv650未満であると、表面層の硬さが不十分であるため表面疲労(転動疲労)が早期に発生し、転動軸の寿命が低下する。
〔表面層の残留オーステナイト量:15体積%以上40体積%以下〕
例えば、ニードル軸受が自動車のトランスミッションやエンジン駆動系で使用される場合には、潤滑油に摩耗粉などの異物が混入したり、潤滑油の供給不足から表面疲労が生じやすくなる。本発明においては、表面を硬くすることや表面に炭窒化物を存在させることのほかに、残留オーステナイトによる一種のダンパー効果によって表面疲労を減ずることができることを見い出した。
表面層の硬さがHv650未満であると、表面層の硬さが不十分であるため表面疲労(転動疲労)が早期に発生し、転動軸の寿命が低下する。
〔表面層の残留オーステナイト量:15体積%以上40体積%以下〕
例えば、ニードル軸受が自動車のトランスミッションやエンジン駆動系で使用される場合には、潤滑油に摩耗粉などの異物が混入したり、潤滑油の供給不足から表面疲労が生じやすくなる。本発明においては、表面を硬くすることや表面に炭窒化物を存在させることのほかに、残留オーステナイトによる一種のダンパー効果によって表面疲労を減ずることができることを見い出した。
残留オーステナイト量が15体積%未満では、表面疲労を緩和するダンパー効果が少なく、転動軸の疲労寿命が低下する。また、40体積%を超えると、表面硬さを減じてしまうので、耐摩耗性や耐疲労性がかえって損なわれる。
残留オーステナイト量を20体積%以上35体積%以下とすれば、優れた疲労寿命が安定して得られるので、さらに好ましい。
残留オーステナイト量を20体積%以上35体積%以下とすれば、優れた疲労寿命が安定して得られるので、さらに好ましい。
〔芯部の残留オーステナイト量:0体積%〕
残留オーステナイトが存在すると、マルテンサイトへの変態によって塑性変形が生じる。表面層の残留オーステナイト量の影響も多少はあるが、芯部は転動軸の体積の大部分を占めることから、芯部に残留オーステナイトが存在すると、転動軸に塑性変形が生じやすく、転動軸の曲がりが大きくなり、結果として転動軸の疲労強度が低下する(曲げ応力などのよる局所の表面疲労により)。すなわち、芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすれば、表面層に残留オーステナイトが存在しても、転動軸の塑性変形はほとんど生じない。
調質によって残留オーステナイト量を0体積%としてもよいし、残留オーステナイト量が0体積%の素材をそのままの状態で使用してもよい。そうすれば、転動軸は外部応力や熱によって変形しにくい。
残留オーステナイトが存在すると、マルテンサイトへの変態によって塑性変形が生じる。表面層の残留オーステナイト量の影響も多少はあるが、芯部は転動軸の体積の大部分を占めることから、芯部に残留オーステナイトが存在すると、転動軸に塑性変形が生じやすく、転動軸の曲がりが大きくなり、結果として転動軸の疲労強度が低下する(曲げ応力などのよる局所の表面疲労により)。すなわち、芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすれば、表面層に残留オーステナイトが存在しても、転動軸の塑性変形はほとんど生じない。
調質によって残留オーステナイト量を0体積%としてもよいし、残留オーステナイト量が0体積%の素材をそのままの状態で使用してもよい。そうすれば、転動軸は外部応力や熱によって変形しにくい。
以上のように、本発明においては、転動軸の芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすることにより、転動軸に作用する外力による塑性変形を抑制している。また、転動体と転動する表面層に、硬さと窒素量と残留オーステナイトとを付与することにより、転動寿命を向上させたものである。
本発明の転動軸は、耐疲労性に優れ塑性変形が生じにくい。
本発明に係る転動軸の実施の形態を、図1を参照して詳細に説明する。
図1に示すラジアルニードル軸受1は、外輪2と、内輪に相当する円柱状の転動軸3と、外輪2と転動軸3との間に転動自在に配された複数の転動体4と、外輪2と転動軸3との間に複数の転動体4を保持する図示しない保持器と、で構成されている。この転動軸3は、相手部材である転動体4に対して相対的に転動するものである。なお、保持器は備えていなくてもよい。
図1に示すラジアルニードル軸受1は、外輪2と、内輪に相当する円柱状の転動軸3と、外輪2と転動軸3との間に転動自在に配された複数の転動体4と、外輪2と転動軸3との間に複数の転動体4を保持する図示しない保持器と、で構成されている。この転動軸3は、相手部材である転動体4に対して相対的に転動するものである。なお、保持器は備えていなくてもよい。
外輪2及び転動体4は、SUJ2等のずぶ焼入れ用の軸受用鋼に、焼入れ・焼戻し又は浸炭窒化後に焼入れ・焼戻しを施したものである。また、保持器は、SPCC等の板材をプレス加工等により加工した後、熱処理を行わずそのまま使用するか、あるいは浸炭又は浸炭窒化後に焼入れ・焼戻しを施して使用されている。
また、転動軸3は、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成されていて、軌道面を構成するその外周面に後述のような表面層3aを備えている。
また、転動軸3は、0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成されていて、軌道面を構成するその外周面に後述のような表面層3aを備えている。
この表面層3aは、転動軸3の外周面の表面から深さ2%Daの位置までの部分に、0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素を侵入させた後に高周波焼入れを施して、前記部分をHv650以上に硬化させ、前記部分の残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とすることにより形成したものである。このような表面層3aを備えていることから、転動軸3の軌道面は優れた耐疲労性を有している。
なお、転動軸3は、外周面の表面から深さ2%Daの位置までの部分に、0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素を侵入させた後に焼入れ・焼戻しを施して、全体の残留オーステナイト量を0体積%、硬さをHv300〜500(望ましくはHv400〜500)に調質し、その後に高周波焼入れを施して、前記部分(表面層3a)をHv650以上に硬化させ、前記部分(表面層3a)の残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下としたものでもよい。
このような転動軸3は、転動軸3全体の硬さが高いこと、及び、表面層3aと高周波焼入れによる硬化部以外の部分(芯部)の残留オーステナイト量が0体積%であることから、大きな衝撃荷重が加わった際の転動軸3の塑性変形を防止でき、また、転動軸3に発生する弾性限界以内の応力による残留オーステナイトの経時的な分解に伴う塑性変形を防止できる。
いずれの転動軸3であっても、前記軌道面の耐疲労性を高めるためには、窒素の侵入深さは2%Da以下であることが好ましい。また、表面層3aの窒素濃度が0.1質量%以上0.8質量%以下であることから、高周波焼入れ後の表面層3aの残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とすることができる。
なお、表面に窒素を侵入させる方法としては、浸炭窒化法の他、塩浴窒化,ガス窒化,イオン窒化法等があげられる。また、高周波焼入れは、転動軸3の外周面に長手方向全体にわたって施す場合と、軸端部をかしめ加工するために、転動体4が接触する部分(軌道面)のみに施す場合とがある。さらに、転動軸3の端面3bが他の部品と接触する場合には、摩耗防止のため端面3bにも高周波焼入れを施す場合がある。
なお、表面に窒素を侵入させる方法としては、浸炭窒化法の他、塩浴窒化,ガス窒化,イオン窒化法等があげられる。また、高周波焼入れは、転動軸3の外周面に長手方向全体にわたって施す場合と、軸端部をかしめ加工するために、転動体4が接触する部分(軌道面)のみに施す場合とがある。さらに、転動軸3の端面3bが他の部品と接触する場合には、摩耗防止のため端面3bにも高周波焼入れを施す場合がある。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、ラジアルニードル軸受を例示して説明したが、本発明の転動軸は他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。また、転がり軸受に限らず、他の転動装置に適用することも可能である。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下のような方法により、上記の実施形態における転動軸3とほぼ同様の構成の転動軸を製造した。なお、転動軸の素材である鋼としては、表1に示すような組成を有するSUJ2,SUJ3,及びSUJ5を用いた。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下のような方法により、上記の実施形態における転動軸3とほぼ同様の構成の転動軸を製造した。なお、転動軸の素材である鋼としては、表1に示すような組成を有するSUJ2,SUJ3,及びSUJ5を用いた。
前記鋼製の円柱状部材に浸炭窒化処理を施して表面に浸炭窒化層を形成した後に、高温焼戻しを施して両端面の硬さをHv300以下、内側の芯部の残留オーステナイト量を0質量%とした。次に、円柱状部材の外周面のうち転動軸の転動面に相当する部分に高周波焼入れを施して、最表面部分に浸炭窒化層を有する硬化層(表面層)を形成した。そして、最後に焼戻しを施して、転動軸を得た。硬化層のビッカース硬さはHv650以上であり、残留オーステナイト量は15体積%以上40体積%以下である。
この高周波焼入れは、円柱状部材の外周面の径方向外方にコイルを配置し、高周波加熱した後に冷却することにより行うことができる。この高周波焼入れは、コイルと円柱状部材との相対位置を固定して焼入れを行う、いわゆる一発焼入れでもよいし、コイルと円柱状部材とが軸方向に相対的に移動しながら連続的に焼入れを行う、いわゆる移動焼入れでもよい。
上記の浸炭窒化処理,高温焼戻し,高周波焼入れ,及び最後の焼戻しの具体的な条件は、以下の通りである。浸炭窒化処理は、RXガス,エンリッチガス,アンモニアガスを含有する雰囲気下で、800〜850℃で1〜5時間加熱することにより行った。高温焼戻しは、400〜700℃で2時間加熱した後に冷却することにより行った。高周波焼入れは、200kHz,50kWで3秒間高周波加熱した後に冷却することにより行った。最後の焼戻しは、150〜200℃で2時間加熱した後に冷却することにより行った。
上記のようにして種々の直径を有する転動軸を製造し、硬化層の残留オーステナイト量を測定した。そして、SUJ2,SUJ3,及びSUJ5を素材とする転動軸について、直径と残留オーステナイト量との関係を調査した。結果を図2のグラフに示す。
このグラフから分かるように、直径が15mm以上の場合は、いずれの素材においても十分な量(15体積%以上)の残留オーステナイトが硬化層に存在する。直径が10mm以下の場合は、ケイ素濃度が0.4質量%以上1.2質量%以下であるSUJ3及びSUJ5については、十分な量(15体積%以上)の残留オーステナイトが硬化層に存在するが、ケイ素濃度が0.4質量%未満であるSUJ2については、硬化層の残留オーステナイト量が不十分(15体積%未満)であった。
このグラフから分かるように、直径が15mm以上の場合は、いずれの素材においても十分な量(15体積%以上)の残留オーステナイトが硬化層に存在する。直径が10mm以下の場合は、ケイ素濃度が0.4質量%以上1.2質量%以下であるSUJ3及びSUJ5については、十分な量(15体積%以上)の残留オーステナイトが硬化層に存在するが、ケイ素濃度が0.4質量%未満であるSUJ2については、硬化層の残留オーステナイト量が不十分(15体積%未満)であった。
1 ラジアルニードル軸受
2 外輪
3 転動軸
3a 表面層
4 転動体
2 外輪
3 転動軸
3a 表面層
4 転動体
Claims (1)
- 相手部材である転動体に対して相対的に転動する転動軸において、
0.5質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.4質量%以上1.2質量%以下のケイ素と、0.1質量%以上2質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上2質量%以下のクロムと、を含有する鋼で構成するとともに、
高周波焼入れにより形成されたビッカース硬さHvが650以上の表面層を設け、前記表面層の窒素濃度を0.1質量%以上0.8質量%以下、残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とし、前記表面層の内側の芯部の残留オーステナイト量を0体積%としたことを特徴とする転動軸。
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Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004337339A Withdrawn JP2006144086A (ja) | 2004-11-22 | 2004-11-22 | 転動軸 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009113477A1 (ja) * | 2008-03-10 | 2009-09-17 | 株式会社ジェイテクト | 転動部品及びその製造方法 |
CN102425595A (zh) * | 2011-11-16 | 2012-04-25 | 燕山大学 | 分层复合组织轴类零件材料及其制备方法 |
-
2004
- 2004-11-22 JP JP2004337339A patent/JP2006144086A/ja not_active Withdrawn
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WO2009113477A1 (ja) * | 2008-03-10 | 2009-09-17 | 株式会社ジェイテクト | 転動部品及びその製造方法 |
JP2009215597A (ja) * | 2008-03-10 | 2009-09-24 | Aichi Steel Works Ltd | 転動部品及びその製造方法 |
CN102425595A (zh) * | 2011-11-16 | 2012-04-25 | 燕山大学 | 分层复合组织轴类零件材料及其制备方法 |
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