JP3068951B2 - 回転陽極型x線管の製造方法 - Google Patents

回転陽極型x線管の製造方法

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JP3068951B2
JP3068951B2 JP4114270A JP11427092A JP3068951B2 JP 3068951 B2 JP3068951 B2 JP 3068951B2 JP 4114270 A JP4114270 A JP 4114270A JP 11427092 A JP11427092 A JP 11427092A JP 3068951 B2 JP3068951 B2 JP 3068951B2
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勝弘 小野
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  • Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、回転陽極型X線管の
製造方法に係わり、とくにその排気方法に関する。
【0002】
【従来の技術】回転陽極型X線管は、周知のように、軸
受部を有する回転体および固定体で円盤状の陽極ターゲ
ットを支え、真空容器外に配置したステータの電磁コイ
ルを付勢し高速回転させながら、陰極から放出した電子
ビームを陽極ターゲット面上に当ててX線を放射させ
る。軸受部は、ボールベアリングのようなころがり軸受
や、軸受面にらせん溝を形成するとともにガリウム(G
a)、又はガリウム−インジウム−錫(Ga−In−S
n)合金のような液体金属潤滑剤を軸受間隙に満たした
動圧式すべり軸受で構成される。後者のすべり軸受を用
いた例は、たとえば特公昭60-21463号、特開昭60-97536
号、特開昭 60-117531号、特開昭 62-287555号、あるい
は特開平2-227948号の各公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記各公報に開示され
ている回転陽極型X線管では、らせん溝を有する動圧す
べり軸受部の相対向する軸受面が、例えば20マイクロ
メートル程度の軸受間隙を保つように構成され、らせん
溝および軸受間隙に液体金属潤滑剤が充填される。この
潤滑剤が軸受間隙の全体にくまなくゆきわたらないと、
当然のことながら、すべり軸受の動圧が十分得られず、
安定な動圧すべり軸受の動作が維持できなくなる。そし
て、極端な場合は軸受面同士がかじり合いを起こし、回
転不能状態や破損を引き起こすおそれがある。一方、X
線管の組立時に、軸受構成部材や潤滑剤から内蔵ガスを
完全に放出させておかなければならない。このガス放出
が不十分であると、ガス気泡とともに潤滑剤の一部が軸
受部から外部に吹き出してしまう場合がある。このよう
な現象が生じると、すべり軸受の長時間の安定な動圧軸
受作用が得られず、さらにX線管容器内空間に飛散した
液体金属潤滑剤により、耐電圧性能が著しく損なわれる
という致命的な障害をもたらす。
【0004】この発明は、以上のような不都合を解消
し、X線管の組立て時、とくに排気工程で軸受構成部材
や液体金属潤滑剤から内蔵ガスを完全に放出させ得て、
潤滑剤の漏出を防止でき、安定な軸受動作を維持するこ
とができる回転陽極型X線管の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、すべり軸受
部のらせん溝を含む軸受間隙に液体金属潤滑剤を充填
し、これら組立体を真空容器の内側に装着し、真空容器
の内部を排気する工程が、すべり軸受部から真空容器の
内部空間に通じる隙間の少なくとも一部を、非回転状態
での液体金属潤滑剤の喫水線よりも上方にして排気する
工程を含む回転陽極型X線管の製造方法である。
【0006】
【作用】この発明によれば、排気工程で軸受構成部材や
液体金属潤滑剤から出るガスを、すべり軸受部から真空
容器の内部空間に通じる隙間の少なくとも一部を通して
確実に軸受部から排出させることができ、潤滑剤の漏出
防止、及び安定な軸受動作を維持する回転陽極型X線管
を得ることができる。
【0007】
【実施例】以下その実施例を図面を参照して説明する。
なお同一部分は同一符号であらわす。この発明の実施の
対象となるX線管の一例を図1乃至図4に示す。その組
立て完成後のX線管は、重金属からなる円盤状陽極ター
ゲット11が有底円筒状の回転体12の一端に突設された回
転軸13にナット14により一体的に固定されている。回転
体12は、その外周部に鉄のような強磁性体円筒12a およ
び銅のような良導電体円筒12b からなる二重のロータ円
筒が同軸的に嵌合固着されている。この回転体12の内側
には、円柱状の固定体15が挿入されている。固定体15の
図示下端部すなわち回転体開口部12c の近傍には、外径
が縮小された固定体径小部15a が形成されている。そし
て回転体開口部12c には、固定体径小部15a を近接して
包囲し、この開口部を実質的に閉塞するリング状の開口
部閉塞体16が複数個のボルト16a により固着されてい
る。固定体径小部15a には、これら回転体12および固定
体15を機械的に支える鉄材製の陽極支持部17がろう接に
より固着され、これはガラス製の真空容器18に気密接合
されている。なお、真空容器18の内部の陽極ターゲット
11に対向する位置には、電子ビームを放出する陰極構体
19が設置されている。
【0008】円筒状回転体12と固定体15との嵌合部分に
は、前述の各公報に示されるような動圧式のらせん溝す
べり軸受部が構成されている。すなわち、固定体15の外
周壁に、軸方向に所定間隔をおいてヘリンボン・パター
ンのらせん溝19a,19b が形成されており、2つのラジア
ルすべり軸受部20a,20b が構成されている。また、固定
体15の図示上端壁には、図2に示すサークル状のヘリン
ボン・パターンらせん溝21a が形成され、一方のスラス
トすべり軸受部22a が構成されている。開口部閉塞体16
の上面16c には、同様に図3に示すサークル状のヘリン
ボン・パターンらせん溝21b が形成され、他方のスラス
トすべり軸受部22b が構成されている。これら回転体及
び固定体の両軸受面は、およそ20マイクロメートルの
軸受間隙Gをもって対面するようになっている。
【0009】固定体15には、その中心部が軸方向に沿っ
てくり抜かれた孔からなる潤滑剤収容室23が設けられて
いる。この潤滑剤収容室23の図示上端開口23a は、図示
上部のサークル状らせん溝21a の内側中心部に位置し、
このスラスト軸受部22a の軸受間隙Gに連通している。
また、この固定体15には、その中間部外周壁が削られて
径小部24が形成され、潤滑剤収容室23からこの径小部24
に通じる4つの放射方向通路25が90度間隔で対称的に
形成されている。それによって、潤滑剤収容室23は放射
方向通路25を経て径小部24による円周状空間S1 に通
じ、さらにそれを経て図示上下にある2組のラジアル軸
受部20a,20b の軸受間隙Gに連通している。なお、潤滑
剤収容室23の図示下端部23b は、下部のスラストらせん
溝すべり軸受部22b の近傍位置まで延長されて終端とな
っている。開口部閉塞体16と固定体径小部15a との間に
は、固定体径小部の一部が円周状に切削されて構成され
た円周状空胴26が設けられている。閉塞体の円筒部16b
は、内側の固定体径小部15aとの間にわずかな半径方向
寸法の隙間Qをつくり、内周面にスクリューポンプ溝27
を有している。このスクリューポンプ溝27と隙間Qと
は、潤滑剤漏出抑制手段を構成している。円周状空胴26
は、隙間Qの半径方向寸法よりも十分大きい寸法を有し
ている。なお、この隙間Qは、固定体に対して回転体を
回転可能にするために不可避であり、軸受間隙Gを含む
軸受部の内部空間と真空容器18の内部空間とを区画する
とともに通気可能にしている。
【0010】そして、各軸受部20a,20b,22a,22b のらせ
ん溝、軸受間隙、およびこれに連通する潤滑剤収容室23
や放射方向通路25、径小部24による空間S1 には、後述
する充填方法によりGa合金のような液体金属潤滑剤L
が充填されている。この潤滑剤Lの充填量は、真空容器
内空間に通路上で最も近いらせん溝すべり軸受部の端部
すなわち図示下部のスラスト軸受部22b から内部のらせ
ん溝や軸受間隙、潤滑剤収容室、放射方向通路、および
径小部による空間S1 を含む内部空間容積の約50%の
体積である。つまり、放射方向通路25が上下のスラスト
軸受部22a,22bの中間にあり、上下の各部の空間容積が
同等であるこの実施例では、充填潤滑剤の量は、図1に
示すように潤滑剤が自重ですべて図示下方にある場合
に、下部のスラスト軸受部22b から放射方向通路25の位
置までの範囲Hに相当する量である。この場合の潤滑剤
Lの液面Hを、喫水線と定義する。
【0011】この液体金属潤滑剤の充填にあたっては、
図5に示すように、加熱ヒータ31を有し、一部に排気ポ
ンプ32が接続された真空ベルジャ33の内部に、各軸受構
成部材を配置する。回転体12は、その開口部12c が上に
向けられて、保持台を兼ねる超音波振動器34の上に載せ
られる。なお、回転軸13には、図示しないが、陽極ター
ゲットがナットで固定されている。この真空ベルジャ33
の内部には、固定体15を上方に吊り下げて保持する固定
体保持器35が設けられ、これは固定体15を回転体の上方
に位置決めして吊り下げている。固定体の上方外周に
は、開口部閉塞体16が図示しない保持体により保持され
ており、またそれを固定するための複数個のボルト16a
が締結具36によって所定位置に位置決めされて保持され
ている。さらにまた、Ga合金のような液体金属潤滑剤
を内蔵する潤滑剤注入器37が設けられており、ベルジャ
外の図示しない制御装置によって図示のように注入ノズ
ルの先端37a を回転体開口部12a の内側に差し込み、所
定量の潤滑剤を回転体内部に注入できるようになってい
る。なお、図示しないが、軸受構成部材12,15,…の温度
を検出する温度検出器が設けられている。
【0012】まず、同図に示すように各部品や制御装置
を配置し、排気ポンプ32によってベルジャ内を例えば1
-3Pa程度又はそれ以下の高真空にする。そして加熱
ヒータ31により少なくとも各軸受部材を200℃以上の
温度、例えば約450℃まで上昇させ、一定時間維持す
る。それによって、各部品、及び液体金属潤滑剤から内
蔵ガスが放出され、ポンプ32で排気される。この真空加
熱処理によって、各軸受部材は清浄化される。
【0013】次に、潤滑剤注入ノズル37a の先端を同図
示のように回転体開口部内に差し込み、上述の如く計量
された液体金属潤滑剤を回転体内部に注入する。同図に
おいて、符号Lが注入された液体金属潤滑剤を示す。超
音波振動により、この液体金属潤滑剤Lの内部やそれと
接触する回転体内壁から出るガスは、ベルジャ内空間に
効果的に出され、排気される。
【0014】次に、ベルジャ外から制御装置を駆動制御
して、潤滑剤注入器37を元の位置に移動し、上方から固
定体15をゆっくり下降させて、図6に示すように、回転
体12の内側に挿入する。それによって、回転体の底部に
ある液体金属潤滑剤Lは、両者の軸受間隙、らせん溝、
さらに放射方向通路を経て固定体中心部の潤滑剤収容室
内に流動して行き、図示下部のスラスト軸受部21a から
軸方向中間に位置する放射方向通路25までの範囲に這い
上がる。潤滑剤Lの喫水面は、放射方向通路25の中程に
なる。そしてこの範囲の軸受面は潤滑剤で濡らされる。
なお、この状態で固定体15を上下にピストン移動、ある
いは同時にゆっくり回転させてもよい。その際、もし各
部から内蔵ガスが放出されて気泡が生じた場合は、気泡
が上方に移動して隙間Qから軸受部材外に排出され、ポ
ンプ32で排気される。それに置き換わって潤滑剤が各部
に浸透する。超音波振動は、このガスの排出およびこの
ガス気泡と潤滑剤との置換作用を一層増進する。このよ
うに両者を嵌合した状態で、開口部閉塞体16を回転体開
口部12c に適合し、複数個のボルト16a を締結具36で締
付けて固定する。この状態で引き続き真空中での加熱を
続け、さらにまたそれに超音波振動を加え続けると、軸
受部材および潤滑剤からのガス抜きをより一層完全にで
きる。そして、所定時間真空加熱処理をした後、真空中
で25℃程度の室温まで徐冷する。その後一旦大気中に
取り出して、陽極支持部17をガラス真空容器18の端部の
金属リングに嵌めて気密溶接する。このようにX線管球
であるガラス真空容器18の内部に陽極構造体、陰極構体
等を組込み、次のX線管球の排気工程に移る。
【0015】排気工程では、図7に示すように、加熱炉
(図示せず)の内部の保持台38の上に、回転体と固定体
との隙間Qを上向きにして、真空容器18の陰極構体19の
方の端部18a を載せる。真空容器に接合されている排気
管18b は、真空ベローズ39を介して真空ポンプPに接続
されている。上に向けて保持されている回転体12に対応
する真空容器のまわりには、回転体を回転させるための
ステータ40、及びその上方に電磁石41が配置されてい
る。この電磁石41は、回転体12の強磁性円筒12aの上端
よりも上にその軸方向中心をずらして設置してある。そ
れによって、電磁石41に直流電流を通じた場合に、その
磁気吸引力により回転体12が上方に持ち上げられるよう
になっている。なお、電磁石の代わりに永久磁石を移動
可能に設置してもよい。なおまた、これらステータ40、
電磁石41は、同図の位置に装着したり、取り外したりで
きるように構成してもよい。
【0016】このような排気装置により、X線管の真空
容器の内部を真空に排気する。そして、加熱炉内の温度
を上昇させ、また、図示しない高周波誘導加熱装置によ
り、X線管の各部を加熱してガス放出させ、排気する。
そこで、この排気工程の適当な時期に、電磁石41に直流
電流を通じ、図8に示すように、回転体12を矢印Fの如
く上方に持ち上げる。それによって、それまでは自重で
下方に吊り下げられていた回転体12と、固定体15の図示
上側スラスト軸受部22b の密着していた軸受面が離れ、
その軸受間隙隙Gが拡大する。しかも、潤滑剤Lの喫水
線は放射方向通路25の中程にあるため、この喫水線から
上の潤滑剤収容室23の部分、放射方向通路25、ラジウル
軸受間隙Gは、拡大されたスラスト軸受間隙G、及び隙
間Qを介して比較的大きな通気コンダクタンスで真空容
器内空間に連通する。軸受構成部材や液体金属潤滑剤L
から出たガスは、これらの通路を経て能率よく排出さ
れ、真空ポンプで排気される。しかも、潤滑剤の漏出を
伴わずにガスだけを排出させることができる。この状態
を適当な時間維持したうえ、電磁石41への電流を遮断す
る。
【0017】次に、図9に示すように、X線管の管軸Z
を、垂直線Vに対して90度に近い角度、例えば80度
の角度θに横倒しする。それによって、図10に示すよ
うに、液体金属潤滑剤Lは図示左側のラジアル軸受部20
b 、及びスラスト軸受部22bの軸受間隙に流動してこれ
らの軸受面を濡らす。潤滑剤Lの喫水線Hは、スラスト
軸受部22b の一部に達する。この状態で、ステータ40に
交番電流を流し、回転磁界により回転体12を徐々に回転
させる。それにより、潤滑剤Lは、すべての軸受間隙に
ゆきわたり、軸受面を濡らす。回転数を徐々に上げて行
けば、軸受面の噛み付きも起こらず、安定した潤滑性能
が得られる。こうして、陽極ターゲット11を3000r
pm程度で連続回転させながら、陰極構体19から電子ビ
ームを放出してターゲットを衝撃しあるいは高周波誘導
加熱によりターゲットを例えば450℃に加熱しつつ、
各部品からガス放出させて排気する。
【0018】この過程で、ステータによる回転体の回転
を停止し、電磁石40に電流を通じて回転体12を同図の左
方向に移動させる。それによって、潤滑剤Lは再び自重
で下方に集まり、喫水線Hはほぼ元の位置になる。但
し、潤滑剤の一部は各軸受面に薄く付着しているので、
喫水線Hは厳密には元の位置よりもわずか下の位置にな
る。この状態では、ラジアル軸受間隙Gの一部、スラス
ト軸受間隙Gの一部は、潤滑剤のないガス通路となる。
したがって、軸受構成部材や潤滑剤から出たガスを、ラ
ジアル軸受部の軸受間隙および拡大したスラスト軸受部
の軸受間隙G、円周空胴26及び隙間Qを通して能率よく
排出させることができる。しかも、潤滑剤の漏出を伴わ
ずに、ガスだけを排出させることができる。
【0019】以上のような各操作を、適当な組み合わ
せ、及び適当な回数で繰返して行ってもよい。それによ
って、潤滑剤の漏出を伴わずに、内蔵ガスをより確実
に、より完全に排出させ、排気することができる。
【0020】この排気工程の最終段階で、排気管18b を
封止切りし、適当なエージングを行い、X線管を完成す
る。排気工程において、軸受構成部材及び潤滑剤から内
蔵ガスを十分取り除いておけば、完成したX線管の動作
時にガス放出が起こらず、したがってまた潤滑剤がガス
により押出されて漏出する現象も未然に防止される。こ
うして、信頼性の高いX線管が得られる。
【0021】なお、排気時の横倒しの角度θは、90
度、又はそれよりもわずか大きい角度であってもよい。
要は、すべり軸受部から真空容器の内部空間に通じる隙
間Qの少なくとも一部が、回転体を回転させない状態で
の液体金属潤滑剤Lの喫水線Hよりも上方にある姿勢と
すればよい。また、初めからこの横倒しの姿勢のまま排
気してもよい。その場合は、磁石により回転体を移動さ
せないでもスラスト軸受間隙の一部がガス通路を形成す
る確率が大きいので、磁石の配置が不要となる。
【0022】図11に示す実施例は、固定体15の軸方向
の中間部に径大部15c を構成し、その両端面にサークル
状ヘリンボン・パターンのらせん溝21a,21b をもつスラ
スト軸受部22a,22b を形成したものである。ラジアル軸
受部20a,20b は、径大部15cの図示上下両側に延長され
た固定体15に形成したらせん溝19a,19b により構成して
いる。図示上方のラジアル軸受部20b の軸受間隙Gは、
そのまま延長されて、軸受部の内部空間と真空容器の内
部空間とを区画する隙間Qに連続している。この隙間Q
は、液体金属潤滑剤を弾く材質の一対の漏出防止リング
42,43 の間に形成されている。固定体15に形成された潤
滑剤収容室23の開口23a は、固定体端面と回転体底面で
つくる隙間S2 に開口している。放射方向通路25は、径
大部15cの外周の隙間S3 に開口しており、この面と回
転体内周面との間の隙間S3 を介してスラスト軸受の軸
受間隙Gおよびらせん溝に連通している。これら潤滑剤
収容室23および通路25が開口している隙間S2,S3 は、
回転動作中、潤滑剤による動圧力が相対的に低くなる領
域にある。
【0023】このX線管は、同図のように隙間Qを上向
きにして排気される。この排気工程で、前述の実施例と
同様に、回転体12を少なくとも1回上方に持ち上げ、隙
間Qに隣接するスラスト軸受部22b の軸受間隙Gを拡大
して排気する。それによって、このスラスト軸受部22b
よりも奥の空間に滞留するガスを、潤滑剤の漏出を伴わ
ずに確実に排出させることができる。あるいはまた、管
軸を横倒しにして、潤滑剤をすべての軸受面に行き渡ら
せてから、回転体を徐々に回転させる。
【0024】以上の実施例は円筒状の回転体に陽極ター
ゲットを固定したものであるが、それに限らず、図12
に示すように、陽極ターゲットが一体結合されて回転す
る円柱状の回転体12を回転中心軸上に配置したものにも
この発明を適用できる。すなわち、円柱状回転体12の図
示上部には、パイプ製の回転軸13が固着され、それに陽
極ターゲット11が固定されている。そして、回転体12を
包囲して有底円筒状の固定体15が設けられている。この
固定体15の図示上端開口部15b には、開口部閉塞体16が
複数個のボルト16a により締結されている。固定体15の
外周には、モータのロータ円筒として機能する強磁性体
円筒12a およびその外側に嵌合された銅製の最外側円筒
12b が同軸状に配置されている。なお、強磁性体円筒12
a の上端部12d が回転軸13に機械的に強固に固着されて
いる。開口部閉塞体16は、回転体12の上端面に接してお
り、その接触面にらせん溝21b が形成されている。この
開口部閉塞体16の回転軸に近接する内周壁の下半部及び
回転体12の回転軸まわりに、円周状にくり抜かれた空胴
26が形成されている。この空胴26は、スラスト軸受部22
b の軸受間隙Gの内端に連通して設けられている。ま
た、この空胴26から固定体外周壁と強磁性体円筒内周壁
との間の隙間を経て真空容器内空間に通じる途中に、潤
滑剤漏出防止のための微小隙間Q及び半径方向の折返し
部44が設けられている。なお、この折返し部44の内面
に、液体金属潤滑剤が付着して反応する被膜を形成して
もよい。それによって、万一この付近まで潤滑剤の一部
が漏れ出ても、折返し部44の内面に付着してそれよりも
外部には漏出しない。そして、液体金属潤滑剤Lは、真
空容器内空間に最も近いスラスト軸受部22b から内部の
空間容積の約20%乃至70%の範囲に相当する体積で
ある。
【0025】このX線管の排気工程では、同図のように
隙間Qを上にして装着する。この実施例によれば、回転
体12は自重で下方にあるので、そのままで隙間Qに隣接
するスラスト軸受部22b の軸受間隙Gが拡大されてい
る。したがって、軸受内部に発生擦るガスは、拡大され
たスラスト軸受部22b の軸受間隙G及び隙間を経て排出
される。あるいはまた、管軸を直角または斜めになるよ
うに横倒しして徐々に回転させれば、潤滑剤が全ての軸
受面に行き渡り、安定した回転性能が得られる。必要に
より、再び同図のように管軸を垂直にして、排気を継続
する。それによって、軸受内部に放出されるガスを、潤
滑剤の漏出を伴わずに排気することができる。
【0026】なお、潤滑剤の充填量は、軸受構体内部の
らせん溝、軸受間隙、各空間、潤滑剤収容室及び各通路
を含む空間容積の20%以上、70%以下の範囲の体積
が適当である。潤滑剤の充填量が空間容積の20%に満
たないと、軸受面に必要十分な量の潤滑剤が供給されに
くく、安定な軸受動作が維持できなくなる。逆に、潤滑
剤の充填量が空間容積の70%を越えると、隙間Qを潤
滑剤の喫水線よりも上方に位置させるのに制約が多くな
り、したがって放出ガスの排出の際に潤滑剤を押出すお
それが強まり、真空容器内空間に液体金属を飛散させて
しまうおそれがある。
【0027】なおまた、各軸受構成部材の少なくともら
せん溝をもつすべり軸受面に、予め、軸受母材と潤滑剤
との反応層を薄く形成しておいてもよい。あるいは、前
述の図5及び図6に示した潤滑剤充填工程における真空
加熱処理で各軸受面に軸受母材と潤滑剤との反応層を薄
く形成させてもよい。この場合、潤滑剤の充填量は、反
応層の形成に消耗される量だけ余分に多く注入しておく
ことが望ましい。
【0028】なおまた、金属潤滑剤は、Ga、Ga−I
n合金、あるいはGa−In−Sn合金のようなGaを
主体とするものが使用できるが、それに限らず、例えば
ビスマス(Bi)を相対的に多く含むBi−In−Pb
−Sn合金、あるいはInを相対的に多く含むIn−B
i合金、又はIn−Bi−Sn合金を使用し得る。これ
らは融点が室温以上であるので、陽極ターゲットを回転
させる前に金属潤滑剤をその融点以上の温度に予熱した
うえで回転させることが望ましい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、
排気工程で軸受構成部材や液体金属潤滑剤から出るガス
を確実容易に軸受部から排出させることができ、潤滑剤
の漏出防止、及び安定な軸受動作を維持する回転陽極型
X線管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】同じく図1の縦断面図である。
【図3】図1の要部を示す上面図である。
【図4】図1の要部を示す上面図である。
【図5】組立工程における状態を示す縦断面図である。
【図6】同じく組立工程における状態を示す縦断面図で
ある。
【図7】図1のものの排気工程における状態を示す縦断
面図である。
【図8】図7の状態における要部拡大縦断面図である。
【図9】同じく排気工程における状態を示す縦断面図で
ある。
【図10】図9の状態における要部拡大縦断面図であ
る。
【図11】この発明の他の実施例を示す縦断面図であ
る。
【図12】この発明のさらに他の実施例を示す縦断面図
である。
【符号の説明】
11…陽極ターゲット、 12…回転体、 15…固定体、 18…真空容器、 20a,20b …ラジアルすべり軸受部、 22a,22b …スラストすべり軸受部、 23…潤滑剤収容室、 25…放射方向通路、 G…軸受間隙、 Q…隙間、 L…液体金属潤滑剤 H…潤滑剤の喫水線。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−227948(JP,A) 特開 昭60−117531JP,A) 特開 昭60−97536(JP,A) 特開 昭62−287555(JP,A) 特公 昭60−21463(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 9/385 H01J 35/26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極ターゲットが固定された回転体と、
    この回転体を回転可能に保持する固定体と、これら両者
    の近接部に設けられたらせん溝からなるラジアルすべり
    軸受部及びスラストすべり軸受部を有し、これらすべり
    軸受部の前記らせん溝を含む軸受間隙に液体金属潤滑剤
    を充填し、これら組立体を真空容器の内側に装着し、前
    記真空容器の内部を排気する回転陽極型X線管の製造方
    法において、上記排気工程は、上記すべり軸受部から真
    空容器の内部空間に通じる隙間の少なくとも一部が、上
    記回転体を回転させない状態での液体金属潤滑剤の喫水
    線よりも上方にある姿勢で排気する工程を含むことを特
    徴とする回転陽極型X線管の製造方法。
  2. 【請求項2】 すべり軸受部から真空容器の内部空間に
    通じる隙間に隣接するスラストすべり軸受部の軸受間隙
    を、少なくとも1回は拡大して排気する工程を含む請求
    項1記載の回転陽極型X線管の製造方法。
  3. 【請求項3】 液体金属潤滑剤の充填量は、真空容器内
    空間に最も近いらせん溝すべり軸受部の端部から内部の
    らせん溝を含む内容積の20%以上、70%以下の範囲
    の体積である請求項1,又は2記載の回転陽極型X線管
    の製造方法。
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