JP3067322B2 - 抗かび性抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイシンaの製造法 - Google Patents

抗かび性抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイシンaの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗かび性抗生物質3′
−ヒドロキシベナノマイシンA(3′−Hydorox
ybenanomicin A)の醗酵法による製造法
に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明による抗かび性抗生物質3′−ヒ
ドロキシベナノマイシンAと構造上の特徴が類似する微
生物生産物として、本発明者らの発見したベナノマイシ
ンAおよびB(特開平1−121293号)、ベナノマ
イシンC(特開平2−83351号)、2′−デメチル
ベナノマイシンA(特願平2−96317号)、沖俊一
らのBU−3608(プラジマイシン)A,B,C,
D,E(特開昭63−270696号、特開平2−32
092号)およびSF2446[Takedaら:J.
Antibiotics 41:417−424(19
88)]、KS−619−1[Matsudaら:J.
Antibiotics 40:1104−1114
(1987)]、G−2NおよびG−2A[Gerbe
rら:Canad.J.Chem.62:2818−2
821(1984)]などが知られている。さらに、そ
れらの誘導体として本発明者らによるデキシロシルベナ
ノマイシンAおよびB(特開平3−187391号およ
び特開平1−168694号)、N−アセチルベナノマ
イシンB(特開平2−188597号)、ベナノマイシ
ンA4″′−O−硫酸エステル(特願平2−61254
号)などがある。しかし本発明による3′−ヒドロキシ
ベナノマイシンAはこれらの物質とは理化学的および生
物学的性状が異なり、化学構造によって明確に区別され
る。最近、4″位にメチルアミノ基およびアミノ基を有
するプラジマイシンFA−1およびFA−2[Sawa
daら:J.Antibiotics 43:1223
−1229(1990)]が報告されたが、4″位がヒ
ドロキシル基である3′−ヒドロキシベナノマイシンA
とは化学構造上明らかに区別される。
【0003】最近の公報、特開平3−170493号
(平成3年7月24日公開)に、前記のプラジマイシン
FA−2から化学的に誘導された4′−デアミノ−4′
−ヒドロキシプラジマイシンFA−2について述べられ
ているが、その合成収率はきわめて低く、本発明におけ
る醗酵法による製造法に及ばない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、微生物が生産す
る種々の抗生物質が知られているが、有効な抗かび性抗
生物質はそれ程多く見出されていないため、かびに起因
する各種感染症の医療分野においては新規な抗かび性抗
生物質の出現が常に要望されている。本発明者らは、特
開平1-121293号公報に記載されるベナノマイシン生産菌
であるアクチノマジュラ エスピーMH193-16F4株の培養
液中に既知のベナノマイシン成分のほかに、新規成分と
して抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイシンAが生産
されていることを見出した。そしてこれを分離すること
に成功した。また、この化合物が抗かび活性を有するこ
とを認めて本発明を完成させた。本発明の目的は、醗酵
法による抗かび性抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイ
シンAの製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明で得られた3′−
ヒドロキシベナノマイシンAの理化学的性状の詳細を列
記すると、次の通りである。
【0006】(1)色および形状:赤褐色粉末 (2)分子式:C3941NO20 (3)マススペクトル(FAB-MS、Negative) :m/z 843
(M) (4)融 点:228 〜229 ℃(分解) (5)紫外部及び可視部吸収スペクトル
【0007】
【0008】[MeOH]: 220 (sh 523), 238 (sh 503), 28
0 (423), 485 (208) (6)赤外部吸収スペクトル (KBr cm −1): 3414, 2984, 2926, 1734, 1630, 1605,
1541, 1508,1489, 1449, 1431, 1391, 1335, 1296, 12
56, 1237,1208, 1163, 1074, 1046, 999, 968, 901, 85
8, 801,748 (7)H-NMR スペクトル(400MHz, DMSO-d, 40℃) δ(ppm) : 1.13 (3H, d), 2.35 (3H, s), 3.08 (1H, d
d),3.12 (1H, dd), 3.16 (1H, dd), 3.31 (1H, ddd),3.
55 (1H, dd), 3.61 (1H, br q), 3.62 (1H, br s),3.72
(1H, dd), 3.73 (1H, br), 3.75 (1H, dd),3.78 (1H,
dd), 3.95 (3H,s), 4.42 (1H, d),4.49 (1H, dt), 4.53
(1H, d), 4.59 (1H,d),4.65 (1H, d), 6.91 (1H, d),
7.21 (1H, br s),7.28 (1H, d), 8.07 (1H, s), 8.18
(1H, d),8.72 (1H, br), 12.56 (1H, br), 12.80 (1H,
s),13.73 (1H, br) (8)13C-NMR スペクトル(100MHz, DMSO-d, 40
℃) δ(ppm) : 187.4 s, 185.0 s, 171.7 s, 167.1 s, 166.
0 s, 164.7 s,157.0 s, 151.1 s, 147.7 s, 138.2 s, 1
37.5 s, 134.3 s,131.3 s, 127.0 s, 125.6 s, 118.6
d, 115.5 s, 115.5 d,113.7 s, 110.0 s, 107.6 d, 10
6.8 d, 105.2 d, 104.4 d,83.0 d, 81.5 d, 76.0 d,
73.6 d, 71.9 d, 70.3 d,70.1 d, 70.1 d, 69.4 d,
65.6 t, 61.3 t, 56.4 q,55.0 d, 19.3 q, 16.3
q (9)溶解性:ジメチルスルホキシド、ジメチルホルム
アミド、アルカリ水に溶け、水、メタノール、クロロホ
ルム、酢酸エチル、アセトンに僅かに溶ける。
【0009】(10)塩基性、酸性、中性の区別:酸性物
質。
【0010】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの塩と
しては、金属塩、特にナトリウム塩の如きアルカリ金属
塩、カルシウム塩の如きアルカリ土類金属塩があり、更
に後記の如きアミンとの塩等がある。
【0011】3′−ヒドロキシベナノマイシンAは次式
(I)の構造式を有する。
【0012】
【0013】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの抗か
び活性は次の通りである。
【0014】本発明による3′−ヒドロキシベナノマイ
シンAについて1%グルコース添加栄養寒天培地による
倍数希釈法(27℃,42時間)で測定した各種かびに
対する最小発育阻止濃度を第1表に示した。
【0015】
【0016】本発明の要旨とするところは、アクチノマ
ジュラ・スパジックスMH193-16F4株(微工研条寄第2051
号として寄託)を培養して、次式(I) で表わされる3′−ヒドロキシベナノマイシンAを培養
物中で生産、蓄積させ、さらにその培養物から3′−ヒ
ドロキシベナノマイシンAを採取することを特徴とす
る、抗かび性抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイシン
Aの製造法にある。
【0017】本発明方法で3′−ヒドロキシベナノマイ
シンA生産菌として用いられるアクチノマジュラsp.MH1
93-16F4株は昭和59年3月、微生物化学研究所において
当研究所構内の土壌より分離された放線菌(Actinomycet
e)で、MH193-16F4の菌株番号を付された菌である。
【0018】この菌株の菌学的性状は次の通りである。
【0019】生産菌MH193−16F4株の菌学的性
〔1〕形態 MH193−16F4株は、顕微鏡下で分枝した基中菌
糸より気菌糸を形成する。基中菌糸の分断は認められな
い。気菌糸の着生はISP−培地2、ISP−培地3で
見られる程度であり、胞子形成はISP−培地3で通常
27℃で培養後18日目頃より観察される。気菌糸には
輪生枝、らせん形成及び胞子のう形成は認められず、気
菌糸にほぼ垂直に短い胞子柄を生じ、その先端に通常3
−7個、稀に2個の胞子の連鎖がみられる。なお胞子鎖
がループ状を呈することもある。個々の胞子は円柱状
(0.8×1.0−1.2μm)〜球状(0.8−1.
2μm)を示し、胞子表面は平滑である。
【0020】〔2〕各種培地における生育状態 色の記載について〔 〕内に示す標準は、コンティナー
・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモ
ニー・マニュアル(Container Corporation ofAmerica
のColor Harmony Manual)を用いた。
【0021】(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(2
7℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB群補強培地では発育は無色〜ピンク灰
〔5ec ,Dusty Peach 〕、気菌糸は着生せず、溶解性色
素はわずかに赤味をおびる程度である。
【0022】(2)グルコース・アスパラギン寒天培地
(27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB群補強培地では、発育は無色〜うすピ
ンク〔4gc, Nude Tan 〕、気菌糸は着生せず、溶解性色
素は赤味をおびる。
【0023】(3)グリセリン・アスパラギン寒天培地
(ISP−培地5、27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB群補強培地では、灰味赤紫〔8lg, Ros
e Mauve 〕〜にぶ赤紫〔8le, Rose Wine〕の発育上に、
わずかにうっすらと白の気菌糸を着生し、にぶ赤紫〔8p
c, Cranberry〕の溶解性色素を生産する。
【0024】(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP
−培地4、27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB補強培地では、溶解性色素がわずかに
赤味をおびる。
【0025】(5)チロシン寒天培地(ISP−培地
7、27℃培養) 発育は無色〜うす黄茶〔3ic, Lt Amber 〕、気菌糸は着
生せず、溶解性色素も認められない。ビタミンB群補強
培地では、発育は無色〜灰味赤紫、気菌糸は着生せず、
溶解性色素はわずかに赤味をおびる。
【0026】(6)栄養寒天培地(27℃培養) 発育はうす黄〔2gc, Bamboo 〕、気菌糸は着生せず、溶
解性色素も認められない。ビタミンB群補強培地の場合
も同様の性状を示した。
【0027】(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP−
培地2、27℃培養) うす黄〔2ec, Biscuit〕〜暗い赤〔7pi, Dk Wine−7 1/
2pe, Dk Red 〕〜灰味赤〔7pg, Wine 〕の発育上に、培
養後14日目頃より灰白の気菌糸を着生する。にぶ赤〔6
1/2pe, Tomato Red 〕の溶解性色素は、培養初期に発育
の周辺のみにみられるが、次第に拡散する。発育の色
素、溶解性色素ともにHClでだいだいに変色し、Na
OHでは変化はみられない。ビタミンB群補強培地でも
同様の性状である。
【0028】(8)オートミール寒天培地(ISP−培
地3、27℃培養) うすピンク〔4gc, Nude Tan 〕〜灰味赤〔6le, Cedar〕
〜暗い赤〔7pe, Cherry Wine〕〜紫味灰〔8ig, Mauve G
ray 〕の発育上に、培養後10日目頃よりうっすらと灰
白〔3cb, Sand 〕の気菌糸を着生する。溶解性色素は赤
味をおびる程度である。発育の色、溶解性色素ともにH
Clでだいだいに変色し、NaOHでは変化はみられな
い。ビタミンB群補強培地でも同様の性状を示した。
【0029】(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(27
℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB群補強培地でも同様の性状である。
【0030】(10)スターチ寒天培地(27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。ビタミンB群補強培地では、発育は無色、気菌糸
は着生せず、溶解性色素はわずかに赤味をおびる程度で
ある。
【0031】(11)リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培
養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素はわずかに
赤味をおびる程度である。ビタミンB群補強培地では、
発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められ
ない。
【0032】(12)セルロース(ろ紙片添加合成液、2
7℃培養) 生育は認められない。
【0033】(13)ゼラチン穿刺培養 15%単純ゼラチン培地(20℃培養)、グルコース・
ペプトン・ゼラチン培地(27℃培養)ともに生育が貧
弱で、発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認
められない。
【0034】(14)脱脂牛乳(37℃培養) 生育は極めて貧弱であり、発育は無色、気菌糸は着生せ
ず、溶解性色素も認められない。
【0035】〔3〕生理的性質 (1)生育温度範囲 スターチ・イースト寒天(可溶性でんぷん 1.0%、
イースト・エキス 0.2%、紐寒天 3.0%、pH
7.0)を用い、20℃、24℃、27℃、30℃、3
7℃、50℃の各温度で試験の結果、50℃を除いてそ
のいずれの温度でも生育したが、最適生育温度は27℃
〜37℃付近と思われる。
【0036】(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチ
ン培地、20℃培養;グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、27℃培養) 単純ゼラチン培地、グルコース・ペプトン・ゼラチン培
地ともに培養後3カ月間観察したが、液化を認めなかっ
た。
【0037】(3)スターチの加水分解(スターチ・無
機塩寒天培地およびスターチ寒天培地、いずれも27℃
培養) スターチ・無機塩寒天培地、スターチ寒天培地ともに弱
い水解性を認める。
【0038】(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂
牛乳、37℃培養) 生育が貧弱であり、培養後3カ月間の観察では凝固・ペ
プトン化ともに認められなかった。なお、接種菌量を多
くして試験した場合も生育は貧弱であるが、培養後7日
目には牛乳は凝固状を呈する。また、極めて弱いペプト
ン化を観察した。
【0039】(5)メラニン様色素の生成(トリプトン
・イースト・ブロス、ISP−培地1;ペプトン・イー
スト・鉄寒天、ISP−培地6;チロシン寒天、ISP
−培地7;いずれも27℃培養) いずれの培地でも陰性であった。
【0040】(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴト
リーブ寒天培地、ISP−培地9、27℃培養) グルコース、L−アラビノース、D−キシロース、D−
フラクトース、シュクロース、ラムノース、ラフィノー
ス、D−マンニトールを利用して発育し、イノシトール
は利用したり、しなかったりで判然としない。
【0041】(7)リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰
寒天、27℃培養) 陰性である。
【0042】(8)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カ
リウム含有ペプトン水、ISP−培地8、27℃培養) 陽性である。
【0043】(9)セルロースの分解(ろ紙片添加合成
液、27℃培養) 生育しない。
【0044】以上の性状を要約すると、MH193−1
6F4株は気菌糸の主軸にほぼ垂直に、3−7個(稀に
2個)の胞子からなる胞子連鎖を形成し、輪生枝、らせ
ん形成および胞子のう形成は観察されない。また、基中
菌糸の分断はみられない。胞子表面は平滑である。IS
P−培地2、ISP−培地3の2種の培地で灰味赤〜暗
い赤の発育上に灰白の気菌糸をうっすらと形成する。な
お、斜面培地(イースト・エキス 0.2%、可溶性で
んぷん 1.0%、紐寒天 3.0%、pH7.0)に
継代すると、わずかなピンクの気菌糸を着生することが
ある。また、ISP−培地2でにぶ赤の溶解性色素を産
生する。その他種々の培地では発育は無色、気菌糸は着
生せず、溶解性色素もほとんど認められない。しかし、
培地にビタミンB群を添加することにより発育が良好と
なり、発育が赤くなる培地がある。発育の色および溶解
性色素ともにHClで赤からだいだいに変色し、NaO
Hでは変化はみられない。メラニン様色素の生成は陰
性、蛋白分解力、スターチの水解性はともに弱く、硝酸
塩の還元反応は陽性である。また、ビタミンB群補強培
地で生育が良好となる場合があり、ビタミン要求性をも
つことが考えられる。
【0045】ところで、MH193−16F4株は菌体
成分として全菌体中にメソ・ジアミノピメリン酸、およ
び糖成分としてグルコース、マジュロースを含み、リシ
バリエら(Lechevalier et al, International Journal
of Systematic Bacteriology 20巻、435 頁、1970)の
提唱する細胞壁の主要構成成分のタイプIII Bを示し
た。またリン脂質のタイプはPI型、ミコール酸を含有
せず、メナキノンの組成はMK−9(H)、MK−9
(H)を主成分とし、DNAのG+C含量は69.3
%であった。なお、菌体のガスクロマトグラフィーによ
る分析の結果、イソ分枝脂肪酸(i−16:0)、アン
テイソ分枝脂肪酸(a−17:0)を特徴的に含むこと
がわかった。
【0046】以上の性状から、MH193−16F4株
はアクチノマジュラ(Actinomadura)属のアクチノマジ
ュラ・マジュレー(Actinomadura madurae)グループに
属すると考えられ、脂肪酸の特徴から近縁の種としてア
クチノマジュラ・スパジックス(Actinomadura spadix
)があげられた。両者の形態、培養、生理生化学的性
状および菌体成分の比較試験では、色調およびベナノマ
イシン生産能を除き、良く一致した成績を示す(後記の
第2表)。さらにMH193−16F4株とアクチノマ
ジュラ・スパジックスのDNAを調製し、ニックトラン
スレーションでラベルしたMH193−16F4株のD
NAをプローブとしてサザーンハイブリダイゼーション
を行った結果、MH193−16F4株とアクチノマジ
ュラ・スパジックスのDNAは高い相同性が認められ
た。
【0047】MH193−16F4株はアクチノマジュ
ラ・スパジックスに極めて近縁の種と考えられる。そこ
で、MH193−16F4株をアクチノマジュラ・スパ
ジックス(Actinomadura spadix )MH193−16F
4と同定した。なお、MH193−16F4株を工業技
術院微生物工業技術研究所に寄託申請し、昭和62年8
月21日に微工研菌寄第9529号として、昭和63年
(1988)9月13日にはブダペスト条約国際寄託に
移管し、微工研条寄第2051号として受託された。
【0048】
【0049】引用文献 1) 放線菌の同定実験法、日本放線菌研究会編、1985年 2) J.Poschnerら:DNA-DNA Reassociation and Chemot
axonomic Studies on Actinomadura, Microbispora, Mi
cotetraspora, Micropolyspora and Nocardiopsis, Sys
tematic and Applied Microbiology, 6巻、264~270頁、
1985年 3) A.Fischerら:Molecular-genetic and Chemotaxono
mic Studies on Actionomadura and Nocardiopsis. Jou
rnal of General Microbiology、129巻、3433~3446頁、
1983年 4) Thiemannら:A New Genus of the Actinomycetale
s: Microtetraspora gen.nov., Journal of General Mi
crobiology、50巻、295~303頁、1968年 5) 野々村ら:土壌中における放線菌の分布(第11報)
Actinomadura Lechevalier et al.属の数新種。発酵工
学会誌49巻、904~912頁、1971年 6) M. Goodfellow: Maduromycetes: Bergey's Manual
of Systematic Bacteriology、4巻、250~252頁、1989年
【0050】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの製造
では、アクチノマジュラ・スパジックスMH193-16F4株
(以下では、単に3′−ヒドロキシベナノマイシンA生
産菌と称することがある)を、通常の微生物が利用し得
る栄養源含有培地に接種して好気的条件下に発育させる
ことによって、主に培養液中に3′−ヒドロキシベナノ
マイシンAを生産、蓄積させて、更にその培養物、特に
培養液から目的物を分離する。用いる培地中の栄養源と
しては、放線菌の栄養源として用いられる公知のものが
使用できる。例えば市販されている大豆粉、エスサンミ
ート、ペプトン、肉エキス、コーン・スティープ・リカ
ー、綿実油、落花生粉、乾燥酵母、酵母エキス、NZア
ミン、カゼイン、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、
硝酸アンモニウムなどの窒素源、およびグリセリン、し
ょ糖、でん粉、グルコース、ガラクトース、マルトー
ス、デキストリン、乳糖、糖みつ、大豆油、脂肪、アミ
ノ酸などの炭素源、および食塩、燐酸塩、炭酸カルシウ
ム、硫酸マグネシウム、塩化コバルト、塩化マンガンな
どの無機塩を使用できる。その他必要に応じて微量の金
属塩、消泡剤として動、植、鉱物油などを添加すること
ができる。これらのものは生産菌が利用し、3′−ヒド
ロキシベナノマイシンAの生産に役立つものであれば良
く、公知の放線菌の培養材料はすべて用いることができ
る。さらに、DL−セリンを培地に培養初期から添加す
ることによって、目的の3′−ヒドロキシベナノマイシ
ンAの生産を増加せしめることができる。添加濃度は0.
1〜2%の範囲で使用される。3′−ヒドロキシベナノマ
イシンAの大量生産には液体培養が好ましく、培養温度
は3′−ヒドロキシベナノマイシンA生産菌が発育し
3′−ヒドロキシベナノマイシンAを生産する範囲で適
用でき、通常20〜40℃、好ましくは25〜37℃である。培
養は以上述べた条件を適宜選択して行うことができる。
【0051】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの採取
と精製は次のように行いうる。
【0052】本発明によって得られる3′−ヒドロキシ
ベナノマイシンAの培養物からの採取に当たっては、そ
の性状を利用した通常の分離手段、例えば、溶剤抽出
法、イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマト
法、ゲルろ過法、透析法、沈澱法等を単独でまたは適宜
組み合わせて抽出精製することができる。例えば、3′
−ヒドロキシベナノマイシンAは、培養菌体中からはア
ルカリ水、アセトン−水またはメタノール−水で抽出さ
れる。培養液中に蓄積された3′−ヒドロキシベナノマ
イシンAは、合成吸着剤であるダイヤイオンHP−20
(三菱化成社製)等に吸着される。
【0053】また、弱酸性(pH3)にして3′−ヒド
ロキシベナノマイシンAを沈澱化することができる。
3′−ヒドロキシベナノマイシンAをさらに精製するに
は、シリカゲル(ワコーゲルC−300、和光純薬工業
社製等)、アルミナ等の吸着剤やセファデックスLH−
20(ファルマシア社製)等を用いるクロマトグラフィ
ーを行うとよい。シリカゲルの細孔内部をオクタデシル
基で疎水性とした逆相充填剤を用いるクロマトグラフィ
ーも有効である。
【0054】このようにして培養物中に生産された3′
−ヒドロキシベナノマイシンAは遊離の形、すなわち
3′−ヒドロキシベナノマイシンAそれ自体として分離
することができ、また3′−ヒドロキシベナノマイシン
Aを含有する溶液またはその濃縮液を塩基、例えば水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合
物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカ
リ土類金属化合物、アンモニウム塩等のような無機塩
基、あるいはアミン例えばエタノールアミン、トリエチ
ルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基によ
り、各工程の操作中例えば抽出、分離または精製の各工
程の操作中に処理した場合、3′−ヒドロキシベナノマ
イシンAは対応するその塩類の形に変化し、分離され
る。また別にこのようにして製造された3′−ヒドロキ
シベナノマイシンAの塩類は、常法により遊離の形、
3′−ヒドロキシベナノマイシンAそれ自体に変化させ
ることができる。さらに遊離の形で得られた3′−ヒド
ロキシベナノマイシンAを前記塩基により常法で対応す
るその塩類に変化させてもよい。従って3′−ヒドロキ
シベナノマイシンAと同様に前記のようなその塩類も、
この発明の範囲内に包含されるものとする。さらに特徴
的なことは3′−ヒドロキシベナノマイシンAの塩、例
えばナトリウム塩の水溶解度が10%におよぶことであ
る。
【0055】以下に本発明の実施例を示すが、3′−ヒ
ドロキシベナノマイシンAの性状が本発明によって明ら
かにされたので、それらの性状にもとずき3′−ヒドロ
キシベナノマイシンAの製造法を種々考案することがで
きる。
【0056】従って本発明は下記の実施例に限定される
ものではなく、実施例の修飾手段は勿論、本発明によっ
て明らかにされた3′−ヒドロキシベナノマイシンAの
性状にもとずいて公知の手段を施して3′−ヒドロキシ
ベナノマイシンAを生産および採取する方法をすべて包
括する。
【0057】
【実施例】斜面寒天培地に培養したActinomadure sp.
MH193−16F4株( 微工研条寄第2051号)を
前培養培地(可溶性澱粉 2.0%、ポリペプトン
1.0%、肉エキス 0.3%、KHPO0.05
%、pH7.0)に接種した。これを28℃で24時間
振とう培養し、更に可溶性澱粉 1.0%、大豆粉3.
0%(pH6.2)からなる前培養培地80mlに継代
して28℃で48時間培養したものをジャーファーメン
ター(明治エンジニアリング社製,3.0リットル容
量,2.0リットル仕込み)の種母とした。
【0058】ジャーファーメンターではグルコース
6.0%、大豆粉 3.5%、DL−セリン 1.0
%、KHPO 0.1%、KPO 0.025
%、塩化コバルト 0.0005%(pH6.8)の組
成からなる生産培地に植菌し30℃で通気かくはん培養
(通気0.5vvm,24時間後1.0vvm、ベラ回
転数650rpm)を行った。培養中のpHは6.0〜
7.0にコントロールした。150時間培養後、培養液
を遠心分離して菌体を除去し上清液約1.55リットル
を得た。
【0059】この上清液中の活性物質は1N塩酸を用い
てpH3.05に調整することにより沈澱物として得
た。この沈澱物をろ取しpH3.5の塩酸水で洗浄した
後に減圧下乾燥すると、主として3′−ヒドロキシベナ
ノマイシンAをふくむ暗赤色粉末(10.1g)が得ら
れた。この粗粉末を少量のアルカリ水に溶解し、水で充
填したコスモシール75C18−OPN(ナカライテス
ク社製2.0リットル)のカラムにかけ、水洗浄の後メ
タノール濃度を1%から徐々に上げて展開した。3′−
ヒドロキシベナノマイシンAはメタノール濃度5〜10
%で溶離された。3′−ヒドロキシベナノマイシンAの
みをふくむ分画736〜876(1分画110ml)を
集め、減圧下1050mlまで濃縮した。
【0060】この濃縮液を再度水で充填したコスモシー
ル75C18−OPN(1.0リットル)のカラムにか
け、前回と同様の方法で展開した。3′−ヒドロキシベ
ナノマイシンAを含む分画332〜411(1分画11
0ml)を集め、1N塩酸を用いてpH3.0に調整す
ることにより沈澱化し、濾取後乾燥する事により純粋の
赤褐色の3′−ヒドロキシベナノマイシンAの粉末54
0mgを得た。
【0061】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本発明によ
ると放線菌MH193−16F4株の培養により抗かび
活性を有する有用な抗生物質として3′−ヒドロキシベ
ナノマイシンAが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】3′−ヒドロキシベナノマイシンAのメタノー
ル中(30μg/ml)の紫外部および可視部吸収スペ
クトルを示す。
【図2】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの臭化カリ
ウム錠での赤外部吸収スペクトルを示す。
【図3】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの重ジメチ
ルスルホキシド溶液中での400MHz水素核核磁気共
鳴スペクトルを示す。
【図4】3′−ヒドロキシベナノマイシンAの重ジメチ
ルスルホキシド溶液中での100MHz炭素核核磁気共
鳴スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:03) (C12P 19/56 C12R 1:03) (72)発明者 池田 大四郎 東京都渋谷区代々木5−29−8 代々木 コーポラス107 (72)発明者 魚谷 和道 神奈川県鎌倉市笛田483−7 鎌倉山ハ イム203 (72)発明者 今井 敏 神奈川県横浜市戸塚区俣野町1403 ドリ ームハイツ20−312 (72)発明者 宮川 聡 神奈川県小田原市栢山1123 清流荘4− 303 (72)発明者 五味 修一 東京都大田区上池台3−17−17 アイビ ーハイツ202 (56)参考文献 特開 平5−227985(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64 A61P 1/00 - 43/00 C07H 1/00 - 23/00 C12N 1/00 - 1/38 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクチノマジュラ・スパジックスMH193-
    16F4株(微工研条寄第2051号として寄託)を培養して次
    式(I) で表わされる3′−ヒドロキシベナノマイシンAを培養
    物中で生産、蓄積させ、さらにその培養物から3′−ヒ
    ドロキシベナノマイシンAを採取することを特徴とす
    る、抗かび性抗生物質3′−ヒドロキシベナノマイシン
    Aの製造法。
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