JP3067049B2 - 容器および包装体 - Google Patents

容器および包装体

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JP3067049B2 JP36013991A JP36013991A JP3067049B2 JP 3067049 B2 JP3067049 B2 JP 3067049B2 JP 36013991 A JP36013991 A JP 36013991A JP 36013991 A JP36013991 A JP 36013991A JP 3067049 B2 JP3067049 B2 JP 3067049B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂の層と光
学的に異方性の溶融相を形成する共重合ポリエステルの
層との積層体からなる多層容器およびこの容器に内容物
を充填し、密封容器とし、続いてこれを熱水または蒸気
滅菌した、保存性、熱成形性のすぐれた包装体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル、とりわけポリエチレンテ
レフタレート(以下PETと略称することがある)は、
衛生性、保香性、加工性等の優れた性質を有しているた
めに、醤油、ソース等の調味料、ジュース、コーラ、ラ
ムネ等のソフトドリンク、生ビール、化粧品、医薬品な
どの容器として広く利用されている。さらに上記のよう
な性能に加えて、ガラスよりも軽量であること、適度の
耐圧力性、ガスバリヤー性を有することから、今後ガラ
ス瓶の代替としての一層の伸長が期待されている。しか
しながら、ガラス瓶代替として最も市場が大きいと予想
されるラガービール、ワイン等ではシェルフライフが長
くなること、また炭酸飲料等では容器の小型化により内
容量当たりの容器の表面積が増大することから、外部か
らの酸素の侵入や炭酸ガスの散逸をさらに減少させるた
めに容器のガスバリヤー性の向上が強く要望されてい
る。PET自体のガスバリヤー性の改良については、す
でにかなりのハイレベルにあること、また容器成形性能
や耐圧力性等の機械的性質を損なうことなく改良する必
要があることから、その実現はきわめて困難である。
【0003】従来PET容器のガスバリヤー性を改良す
る方法は種々提案されている。例えば、容器の内外層に
ポリ塩化ビニリデン等をコーティングする方法や、エチ
レン−ビニルアルコール共重合体等を用いて2層〜9層
の多層構造とする方法等が提案されているが、これらの
方法は従来のポリエステルの成形設備にさらにコーティ
ングや多層容器とするための設備が必要となり工業上不
利であるばかりでなく、異種のポリマーを用いるために
多層容器の場合には層間剥離を起こしやすい点、さらに
は使用済みの容器の回収再利用や焼却等についても不都
合な点を有している。またあらかじめポリエステルとナ
イロン等の異種ポリマーをブレンドしたものから容器を
製造する方法も提案されている(特公昭53−3361
8号、特開昭56−64839号)。この場合、既存の
設備で容器の製造は可能であるが、容器の物性低下を伴
うことと、回収再利用の点から不利である。
【0004】また、プラスチック容器では、特に近年食
品流通形態として脚光を浴びているレトルト殺菌処理に
おけるような熱と水分が同時に作用する条件下では、上
記した従来のPET容器およびエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体を1層以上含む多層容器ではガスバリヤー
性の不足も指摘され、またポリ塩化ビニリデン系ポリマ
ーはさらに最近の地球環境問題の観点(リサイクル使用
が出来ない、焼却による分解物質が酸性雨の原因となる
等)からも好ましくない。
【0005】一方、光学的に異方性の溶融相を形成する
いわゆるサ−モトロピック液晶ポリマーをガスバリヤー
材として用いる方法も近年提案されている(特開昭61
−192762号、特開昭62−119265号、特開
昭62−187033号、特開昭64−45242号、
特開平1−288421号等)。また、Polym.P
repr.(Am.Chem.Soc.,Div.Po
lym.Chem.),30(1),3−4(198
9)には、40モル%のポリエチレンテレフタレ−トと
60モル%の4−アセトキシ安息香酸とから製造される
サ−モトロピック液晶ポリマーより得られる溶融押出し
フィルムの35℃での酸素ガス透過量は36cc・20
μm/m↑2・day・atmであることが報告されて
いる。
【0006】なお、特公昭56−18016号には、式
−OC−R1−CO−O−R2−O−(ここでR1は炭素
数4〜20の脂環族2価ラジカル、炭素数1〜40の脂
肪族2価ラジカル、または少なくとも3個の炭素原子で
隔てられたカルボニル結合をもつ炭素数6〜16の芳香
族2価ラジカルを、R2は炭素数2〜40の脂肪族2価
ラジカル、炭素数4〜20の脂環族2価ラジカル、炭素
数6〜20の芳香族2価ラジカルまたは分子量200〜
8000のポリ(アルキレンオキシド)2価ラジカルを
示す)で表される繰り返し単位を有するポリエステルと
アシルオキシ芳香族カルボン酸とを反応させることによ
る共重合ポリエステルの製造方法が開示されているが、
アシルオキシ芳香族カルボン酸として具体的に例示され
ているのはアシルオキシ安息香酸類のみである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来提
案されているサーモトロピック液晶ポリマーを酸素バリ
ヤー用の成形体として用いる場合には多くの問題点があ
る。すなわち、第一の問題点としては、従来提案されて
いるサーモトロピック液晶ポリマーから得られる成形品
は概して結晶化度が高く、力学的物性の異方性が大であ
り、伸度が小であり実質的には延伸が不可能である点で
ある。従って、このようなポリマーから酸素バリヤー用
の各種の成形体、例えば、フィルム、シート、ボトル、
カップ、トレイ、袋等に成形加工することは非常に困難
である。
【0008】そのため、特開昭62−187033号で
は熱(サ−モトロピック)液晶ポリエステルからなる層
と少なくともその片面にポリエチレンテレフタレ−ト成
分を含有するポリエステルからなる層を有する積層延伸
成形品が提案されている。該公報中には(光学的に異方
性を形成しない)ポリエステルからなる層と熱液晶ポリ
エステルからなる層の厚み比は、積層延伸成形品の全厚
みに対してポリエステル層が50〜98%、熱液晶ポリ
エステル層が2〜50%、好ましくは5〜20%である
ことが開示されており、熱液晶ポリエステル層が50%
以上である場合には、ポリエステル単独で延伸した場合
に比べて延伸させにくいと記載されている。一方、力学
物性の異方性の小なる成形品を与えるサ−モトロピック
液晶ポリマーに関する提案もなされている。例えば、特
開昭60−28428号には、テレフタロイル基、1,
3−ジオキシフェニレン基および2−置換−1,4−ジ
オキシフェニレン基からなるサ−モトロピック液晶ポリ
エステルが提案されている。このように、イソ骨格、お
よび置換基の導入により、サ−モトロピック液晶ポリマ
ーの成形性が向上し、必ずしも充分ではないが、各種の
成形体を製造することは容易となる方向ではある。
【0009】また、従来提案されているサ−モトロピッ
ク液晶ポリマーを酸素バリヤー用の成形体として用いる
場合に生じうる第二の問題点としては、サ−モトロピッ
ク液晶ポリマーから得られる成形品の中には酸素バリヤ
ー性が必ずしも充分に高いとはいい難いものも含まれて
いることである。例えば、前述したPolym.Pre
pr.(Am.Chem.Soc.,Div.Poly
m.Chem.),30(1),3−4(1989)に
記載された40モル%のポリエチレンテレフタレ−トと
60モル%の4−アセトキシ安息香酸とから製造される
サ−モトロピック液晶ポリマーより得られるフィルムの
酸素ガス透過量は、36cc・20μm/m↑2・da
y・atmであることが報告されているように、該ポリ
マーは必ずしも高性能の酸素バリヤー材とは言えないレ
ベルである。また、本発明者等の検討によると、前述の
特開昭60−28428号に記載されたサ−モトロピッ
ク液晶ポリエステルから得られるフィルムの酸素バリヤ
ー性も、必ずしも高いレベルではないことが判明した。
【0010】また、特開昭62−68813号公報に
は、p−アセトキシ安息香酸と6−アセトキシ−2−ナ
フトエ酸とのアセトキシ芳香族カルボン酸混合物をポリ
エチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレ
ートと反応させることにより得られる共重合ポリエステ
ルが開示されており、アセトキシ芳香族カルボン酸とし
てp−アセトキシ安息香酸のみを用いた場合に較べて曲
げ強度、曲げ弾性率、および熱変形温度が改善されると
記載されている。しかしながら、かかる公報には、該共
重合ポリエステルからなる包装材料も容器も記載されて
おらず、しかも、該共重合ポリエステルが優れたガスバ
リヤー性、成形性(延伸性)、低温流動性などの優れた
特性を有するか否かについてさえも何ら開示されてな
い。
【0011】特開昭61−89816号には、サ−モト
ロピック液晶ポリマーと熱可塑性ポリマーとからなる多
層シートおよび多層フィルムに関する提案があるが、そ
の目的とするところはもっぱら引張特性、特に引張強度
の向上といった多層体の高強度化であり、該サ−モトロ
ピック液晶ポリマーのガスバリヤー性、成形性、延伸性
に関する特性は開示されてなく、さらには該サ−モトロ
ピック液晶ポリマーを使用した容器および容器に内容物
を充填し、さらには熱と水分が同時に作用する条件下で
処理して得られる食品包装体という技術的思想も開示さ
れていない。特開平2−253950号には、サ−モト
ロピック液晶ポリマーと熱可塑性ポリマーとからなる多
層シートおよび多層フィルムおよびそれらの特にガスバ
リヤー性を利用した各種包装材やレトルト食品への利用
に関する提案があるが、延伸性に関する特性は開示され
てない。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような状況に鑑み、
本発明者等は、従来の熱液晶ポリマーからなる容器が達
成し得ない優れたガスバリヤー性と成形加工性を兼ね備
えたポリエステル多層容器を提供すべく鋭意検討を重ね
た結果、本発明を完成するに至った。
【0013】すなわち本発明は、熱可塑性樹脂を主体と
する少なくとも1種の層と実質的に下記化5
【0014】
【化5】
【0015】で表される構成単位(1)、下記化6
【0016】
【化6】
【0017】で表される構成単位(2)、下記化7
【0018】
【化7】
【0019】で表される構成単位(3)、下記化8
【0020】
【化8】
【0021】で表される構成単位(4)からなり、構成
単位(1)と構成単位(2)が実質的に等しいモル数で
存在し、構成単位(1)および構成単位(2)の合計量
が15〜90モル%、構成単位(3)および構成単位
(4)の合計量が10〜85モル%であり、構成単位
(3)および構成単位(4)の合計量に対する構成単位
(3)の量の割合が10モル%以上である熱液晶ポリエ
ステルの層との積層体からなることを特徴とする多層容
器、および該多層容器に内容物を充填し、密封したあと
熱水または蒸気処理して得た包装体である。
【0022】なお、本明細書において用いられる用語
「容器」とは主として飲食品、医薬品等の包装用途に適
する成形物品を意味する。このような成形物品は本発明
の多層ポリエステルからなるシートおよびフィルム、さ
らにはボトル、トレイ、カップ、袋等の有底容器も含
む。
【0023】以下本発明を具体的に説明する。本発明中
で用いる熱液晶ポリエステルの構成単位(1)は、2,
6−ナフタレンジカルボン酸、あるいはそのエステル形
成性誘導体によって導入されるような2,6−ナフタレ
ンジカルボニル基である。構成単位(1)の一部、好ま
しくは構成単位(1)の20モル%以下は、他のジカル
ボン酸またはそのエステル形成性誘導体によって導入さ
れうる構成単位に置き換えられていてもよい。他のジカ
ルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル
酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタ
レンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン
酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられ
る。また得られるポリエステルが溶融成形可能である範
囲内の量であれば、構成単位(1)の一部をトリメリッ
ト酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボ
ン酸またはそのエステル形成性誘導体によって導入され
うる構成単位に置き換えることも可能である。
【0024】本発明中で用いる熱液晶ポリエステルにお
ける構成単位(2)とは、エチレングリコールにより導
入されるようなエチレンジオキシ基であるが、その一
部、好ましくは構成単位(2)の20モル%以下は、他
のグリコールにより導入されうる構成単位に置き換えら
れていてもよい。エチレングリコール以外のグリコール
としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3
−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3
−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオ
ール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコ
ール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5
−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ
ール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、o−、m−またはp−キシリレングリコールなどが
挙げられる。また得られるポリエステルが溶融成形可能
である範囲内の量であれば、構成単位(2)の一部を、
グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエチロール
プロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール
によって導入されうる構成単位に置き換えることも可能
である。
【0025】本発明中で用いる熱液晶ポリエステルにお
ける構成単位(1)および構成単位(2)は、主たる出
発物質として、2,6−ナフタレンジカルボン酸または
そのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを主
成分とする反応、またはテレフタル酸と2,6−ナフタ
レンジカルボン酸の混合物、もしくはそれらのエステル
形成性誘導体とエチレングリコールを用いる反応によっ
て得られるポリエチレンナフタレート系のポリエステル
を原料のひとつとして用いることによって本発明中の熱
液晶ポリエステルの分子中に導入される。
【0026】本発明中の熱液晶ポリエステルの製造にお
いて用いるポリエチレンナフタレート系のポリエステル
は、従来ポリエチレンナフタレートの製造に際して提案
されている方法で製造することができる。例えば、ジカ
ルボン酸とグリコールとをエステル化反応したあと重縮
合する方法、ジカルボン酸エステルとグリコールとをエ
ステル交換したあと重縮合する方法等によって得られ
る。その際、エステル化触媒、エステル交換触媒、重縮
合触媒、安定剤等を使用することが好ましい結果を与え
る場合があるが、これらの触媒、安定剤等としては、ポ
リエステル、特にポリエチレンナフタレートの製造にお
いて使用しうる触媒、安定剤等として知られているもの
を用いることができる。例えば、これらの反応を促進す
る触媒としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウ
ム、亜鉛、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウ
ム、チタン、アンチモン等の金属化合物が、また安定剤
としてはリン酸、リン酸エステル類、亜リン酸、亜リン
酸エステル類などのリン化合物を例示することができ
る。さらに、必要に応じて他の添加剤(着色剤、紫外線
吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進
剤等)を添加することもできる。
【0027】本発明中の熱液晶ポリエステルを製造する
際に原料ポリエステルとして用いるポリエチレンナフタ
レート系ポリエステルの重合度に関しては、特に規定は
ないが、フェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶
媒中、30℃で測定した極限粘度が0.01〜1.5d
l/gのものを用いることが望ましい。
【0028】構成単位(1)および構成単位(2)は、
それらの合計量において熱液晶ポリエステル中15〜9
0モル%の範囲内、好ましくは25〜85モル%の範囲
内、より好ましくは30〜80モル%の範囲内で存在す
る。
【0029】一方、本発明中で用いる熱液晶ポリエステ
ルにおける構成単位(3)および構成単位(4)は、そ
れぞれ、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸もしくはその
エステル形成性誘導体により導入されるような6−オキ
シ−2−ナフトイル基およびp−ヒドロキシ安息香酸も
しくはそのエステル形成性誘導体により導入されるよう
な4−オキシベンゾイル基である。構成単位(3)およ
び構成単位(4)の一部、好ましくはそれらを合わせた
ものの10モル%以下は、他のヒドロキシ芳香族カルボ
ン酸またはそのエステル形成性誘導体によって導入され
うる構成単位に置き換えられていてもよい。6−ヒドロ
キシ−2−ナフトエ酸およびp−ヒドロキシ安息香酸以
外のヒドロキシ芳香族カルボン酸としては、例えば、m
−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−クロロ安
息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸、
4−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、7−ヒドロキシ
−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、
5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0030】また、本発明中の熱液晶ポリエステルにお
いて、構成単位(3)および構成単位(4)の含有量の
合計は、10〜85モル%の範囲が適当であり、好まし
くは15〜75モル%であり、より好ましくは20〜7
0モル%である。構成単位(3)および構成単位(4)
の含有量の合計が85モル%を越えると、溶融重合が困
難となること、成形性が著しく損なわれることなどの不
都合が生じ、10モル%未満であると、得られるポリエ
ステルは熱液晶を形成せず、ガスバリヤー性が大きく低
下するので好ましくない。
【0031】また、構成単位(3)および構成単位
(4)の合計量に対する構成単位(3)の量の割合が1
0モル%以上であることが必要であり、このことによ
り、酸素ガスバリヤー性に極めて優れた成形品を与える
ポリエステルが得られる。
【0032】本発明中の熱液晶ポリエステルにおける構
成単位(3)および構成単位(4)は、通常対応するア
シルオキシカルボン酸を原料として用いることによりポ
リマー中に導入される。アシルオキシカルボン酸として
は、対応するヒドロキシカルボン酸と無水酢酸との反応
によって得られるようなアセトキシカルボン酸が好まし
い。
【0033】本発明中で用いる熱液晶ポリエステルは溶
融相において液晶を形成する(光学的異方性を示す)性
質を有する。溶融相におけるこのような光学的異方性の
確認は、当業者によく知られているように、加熱装置を
備えた偏光顕微鏡を用いて、直交ニコル下で試料の薄
片、好ましくは5〜20μm程度の薄片をカバーグラス
間にはさみ一定の昇温速度下で観察し、一定温度以上で
光を透過することを見ることにより行ない得る。尚、本
観察においては高温度下でカバーグラス間にはさんだ試
料に軽く圧力を加えるか、あるいはカバーグラスをずり
動かすことによってより確実に偏光の透過を観察し得
る。本観察において偏光の透過し始める温度が、光学的
に異方性の溶融相への転移温度である。溶融成形の容易
さの点から、この転移温度は350℃以下、より好まし
くは300℃以下であることが望ましい。
【0034】本発明中の熱液晶ポリエステルは溶融相に
おいて液晶を形成する(光学的異方性を示す)性質を有
する。溶融相におけるこのような光学的異方性の確認
は、当業者によく知られているように、加熱装置を備え
た偏光顕微鏡を用いて、直交ニコル下で試料の薄片、好
ましくは5〜20μm程度の薄片をカバーグラス間には
さみ一定の昇温速度下で観察し、一定温度以上で光を透
過することを見ることにより行ない得る。尚、本観察に
おいては高温度下でカバーグラス間にはさんだ試料に軽
く圧力を加えるか、あるいはカバーグラスをずり動かす
ことによってより確実に偏光の透過を観察し得る。本観
察において偏光の透過し始める温度が、光学的に異方性
の溶融相への転移温度である。溶融成形の容易さの点か
ら、この転移温度は350℃以下、より好ましくは30
0℃以下であることが望ましい。
【0035】本発明中の熱液晶ポリエステルの光学的に
異方性の溶融相への転移温度は、従来提案されている熱
液晶ポリエステルとは異なり、示差走査熱量計により決
定することは難しい。すなわち、あとの実施例から明ら
かなように、本発明中の熱液晶ポリエステルを示差走査
熱量計により測定した場合には、組成によっては明確な
吸熱ピークが観測されない場合があり、例え吸熱ピーク
が観測される場合にも、該ピークは必ずしも、結晶から
液晶への転移に基づくものではない。ポリエステル中、
構成単位(3)および構成単位(4)の割合が増加する
にしたがって吸熱ピークが小となり、構成単位(3)お
よび構成単位(4)の割合の合計が35モル%以上では
吸熱ピークが観測されなくなることが多い。
【0036】本発明中の熱液晶ポリエステルの製造は、
例えば先ずポリエチレンナフタレート系ポリエステルを
6−アシルオキシ−2−ナフトエ酸およびp−アシルオ
キシ安息香酸でアシドリシスすることによってポリエス
テルフラグメントを調製し、引き続いてこのポリエステ
ルフラグメントの重合度を上昇させることによって目的
とする熱液晶ポリエステルを調製する方法で行なわれ
る。第一段階のアシドリシスは、通常、窒素、アルゴ
ン、二酸化炭素のような不活性ガス雰囲気下250〜3
00℃で行なわれる。6−アシルオキシ−2−ナフトエ
酸およびp−アシルオキシ安息香酸としては、通常は6
−アセトキシ−2−ナフトエ酸およびp−アセトキシ安
息香酸をそれぞれ用いることが望ましい。
【0037】原料化合物として6−アシルオキシ−2−
ナフトエ酸およびp−アシルオキシ安息香酸の代わり
に、対応するヒドロキシカルボン酸(6−ヒドロキシ−
2−ナフトエ酸およびp−ヒドロキシ安息香酸)をそれ
ぞれ用いることもできる。その場合には、該ヒドロキシ
カルボン酸と低級脂肪族酸無水物、好ましくは無水酢酸
を反応させ、実質的にすべてのヒドロキシル基をアシル
オキシ基、好ましくはアセトキシ基に変換(アシル化)
したのちに生成した対応するアシルエステルを単離する
ことなく所定の原料ポリエステルと反応させることによ
り本発明の熱液晶ポリエステルが製造される。この場
合、原料ポリエステルは、6−ヒドロキシ−2−ナフト
エ酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のアシル化反応の前
後の任意の時期に系に加えることができる。この6−ヒ
ドロキシ−2−ナフトエ酸およびp−ヒドロキシ安息香
酸のアシル化反応段階では、6−ヒドロキシ−2−ナフ
トエ酸の含有量が多い組成の場合、反応の進行に伴って
生成する6−アシルオキシ−2−ナフトエ酸が系内に析
出し、攪拌が困難になることがあるので、それを未然に
防止するために、目的とするアシル化反応に悪影響を及
ぼさず、かつ100〜200℃程度の沸点を有する溶
媒、特に好ましくは酢酸を系内に存在させておくことが
望ましい。
【0038】6−アシルオキシ−2−ナフトエ酸および
p−アシルオキシ安息香酸と原料ポリエステルとのアシ
ドリシス反応の段階で生成する低級脂肪族酸は理論留出
量の大半が系外に出る。次いで系中に残存するアシドリ
シス反応の生成物を減圧下250〜350℃でさらに脱
低級脂肪族酸させて、所望の物品を成形するのに好適
な、好ましくは0.1dl/g以上の対数粘度にまで重
合度を増大させる。この場合、重合温度は、反応速度の
点から270℃以上、また生成ポリエステルの分解を抑
制する点から350℃以下の温度であることが好ましい
が、特に好ましくは270〜320℃である。この重合
段階においては減圧度を徐々に高め、最終的に1mmH
g以下、好ましくは0.5mmHg以下にすることが望
ましい。またさらに分子量を高める方法として、業界周
知の固相重合法等を用いることも可能である。
【0039】本発明中で用いる熱液晶ポリエステルの、
ペンタフルオロフェノール中、60℃で測定した対数粘
度は、得られる成形品の力学強度の点から、0.1dl
/g以上、好ましくは0.3dl/g以上、より好まし
くは0.4dl/g以上であることが望ましい。また、
対数粘度に臨界的な上限値はないが、溶融重合の容易
さ、成形性等の点から3.0dl/g以下、好ましくは
2.0dl/g以下であることが好ましい。
【0040】なお、本発明中で使用する熱液晶ポリエス
テルの構成単位(1)、(2)、(3)および(4)の
組成比に関しては、ポリマーを適当な溶媒に溶解させ、
該溶液のNMRスペクトルを測定することにより決定さ
れ、通常仕込み原料組成比と実質的に同一の組成を有す
るポリマーが得られる。
【0041】本発明中の熱液晶ポリエステルは、従来公
知の熱液晶ポリマーと異なり、溶融状態から急冷して得
られる成形品の結晶化度が極めて低く、通常の場合には
X線回折により求められる結晶化度は20%以下であ
る。熱液晶ポリエステル中の構成単位(3)および構成
単位(4)の割合が増加するに従って結晶化度が低下す
る。このため、本発明中の熱液晶ポリエステルから得ら
れるフィルム形態などの成形品は、従来提案されている
熱液晶ポリエステルとは異なり、後述するように、一軸
方向および二軸方向の加熱延伸が可能であり、多くの場
合2×2倍以上または3×3倍以上の同時、あるいは逐
次二軸延伸が可能である。しかも、本発明中の熱液晶ポ
リエステルから得られる成形品は、優れたガスバリヤー
性を有している。これらの際立った特性は、ヒドロキシ
芳香族カルボン酸成分としてp−ヒドロキシ安息香酸、
あるいはそのエステル形成性誘導体のみを用いた熱液晶
ポリエステルではまったく発現せず、また、ヒドロキシ
芳香族カルボン酸成分として2種のヒドロキシ安息香
酸、あるいはそのエステル形成性誘導体のみを用いた熱
液晶ポリエステルでもまったく発現しない。さらに、本
発明中の熱液晶ポリエステルから得られる成形品は、あ
との実施例からも明らかなように、結晶化度が低いにも
かかわらず曲げ強度、曲げ弾性率等の力学物性は従来提
案されている熱液晶ポリエステルから得られる成形品の
それに較べて著しく大である。
【0042】本発明の他の要件は、該熱液晶ポリエステ
ルの層と熱可塑性樹脂を主体とする少なくとも1種の層
との積層体からなることである。該熱液晶ポリエステル
の層に熱可塑性樹脂の層を積層することにより、ガスバ
リヤー性、耐熱水性、耐レトルト性、さらには熱成形性
に優れた包装体を得ることができる。
【0043】熱可塑性樹脂を主体とする層を形成する樹
脂としては、ガラス転移温度(Tg)170℃以下の熱
可塑性樹脂が好適に使用される。そのうち特にTg15
0℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。なおここで、Tg
とはDSC(昇温速度10℃/分で測定)によって得ら
れる値である。疎水性樹脂、とくにポリオレフィン系樹
脂が代表的なものとしてあげられる。ポリオレフィン系
樹脂としては、高密度、中密度あるいは低密度のポリエ
チレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル、アクリル酸エス
テル、あるいはブテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペ
ンテンなどのα−オレフィン類を共重合したポリエチレ
ン、アイオノマー樹脂、ポリプロピレンホモポリマー、
エチレンをグラフト共重合したポリプロピレン、あるい
はエチレン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなど
のα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン、ポリ
−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ある
いは上述のポリオレフィンに無水マレイン酸などを作用
させた変性ポリオレフィン、さらにはエチレン−ビニル
アルコール共重合体などを含んでいる。この中でポリプ
ロピレン(PP)類は本発明の目的に好適である。
【0044】さらに熱可塑性樹脂を主体とする層を形成
する樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート)、
ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフ
タレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタ
レート)などに代表されるポリエステル系樹脂やポリス
チレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イ
ソプレン共重合体などのポリスチレン系樹脂またはポリ
カーボネート系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイ
ロン6/12共重合体、ナイロン6/6,6共重合体な
どのポリアミド系樹脂があげられる。
【0045】さらに、熱可塑性樹脂を主体とする層を形
成する樹脂は上記樹脂を単独で用いてもまた2種類以上
配合して使用しても構わない。また成形性が損なわれな
い範囲でタルク、マイカ、クレー、セリサイト、ガラス
フレーク、炭酸カルシウム、ケイ酸、チタンなどの無機
フィラーを添加しても構わない。
【0046】また、上記した熱可塑性樹脂を主体とする
層を該ポリエステルからなる層に積層するにあたり、該
ポリエステルからなる層の内層または外層のどちらか1
層に積層されることが必須の要件であり、より好ましく
は内外層に積層されることである。とくに耐熱水性、耐
レトルト性を付与するためには内外層に積層されること
が効果的である。内外層に積層される場合、内外層を形
成する樹脂は同一でも良いし、異なっていても構わな
い。また、可塑剤、滑材、酸化防止剤、着色剤、紫外線
吸収剤などあるいは他のポリマーを本発明の作用効果が
損なわれない範囲で添加しても差し支えない。
【0047】本発明において上記熱可塑性樹脂を主体と
する少なくとも1種の層と該ポリエステルの層からなる
多層積層体および該多層積層体を使用した密封容器は従
来公知の方法で製造が可能であり、特に加熱延伸多層積
層体に好適に使用される。共押出法においては、各樹脂
層に対応する押出機で溶融混練後、T−ダイ、サーキュ
ラーダイなどの多層多重ダイスを通して所定の形状に押
出す。また、共射出法においては、各樹脂層に対応する
射出機で溶融混練後、金型中に射出し、多層の容器また
は容器用のプリフォームを製造する。ドライラミネート
法においては、本発明中のポリエステル樹脂を押出機で
溶融混練後、T−ダイ、サーキュラーダイなどの成形ダ
イより押出成形して得られたフィルム、シートと熱可塑
性樹脂を主体とするフィルム、シートとを積層すること
により多層積層体が製造される。積層にあたり、両フィ
ルム、シートは延伸されていても構わない。その他、サ
ンドラミネート法、押出ラミネート法により多層積層体
が製造される。共押出法において熱可塑性樹脂を主体と
する層には、本発明の多層容器を製造する際に発生する
スクラップを原料あるいは原料の一部として使用するこ
ともできる。また、スクラップを熱可塑性樹脂を主体と
する少なくとも1種の層と該ポリエステルの層とは独立
した層として使用することもできる。
【0048】本発明の多層容器の層を共押出法によって
作成する場合には、熱可塑性樹脂を主体とする少なくと
も1種の層と該ポリエステルの層の間に接着性樹脂の層
をはさんで積層する通常の方法が採用される。接着性樹
脂としては、実用段階でデラミネーションを起こさない
ものであればよく、特に限定はされないが、例えば、不
飽和カルボン酸またはその無水物をオレフイン系重合体
(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等
のポリオレフイン、オレフインを主体とする共重合体)
に化学的に(例えば付加反応、グラフト反応)結合させ
て得られる、カルボキシル基を含有する変性オレフイン
系重合体が挙げられる。具体的には無水マレイン酸グラ
フト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポ
リプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−
エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト
変性エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた1種ま
たは2種の混合物が挙げられる。また、グリシジルアク
リレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル
基を有する重合性不飽和化合物、メタクリロキシプロピ
ルトリメトキシシラン基を有する重合性不飽和化合物な
ど、グリシジル基、アルコキシシラン基などの変性オレ
フイン系重合体が挙げられる。これらの官能基は複数組
み合わせてもよい。具体的にはグリシジル変性ポリエチ
レン、グリシジル変性ポリプロピレン、グリシジル変性
エチレンーアクリル酸エチル共重合体、グリシジル変性
エチレンー酢酸ビニル共重合体、アルコキシシラン変性
ポリエチレン、アルコキシシラン変性ポリプロピレン、
アルコキシシラン変性エチレンー酢酸ビニル共重合体か
ら選ばれた1種または2種の混合物が挙げられる。その
他、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカル
ボン酸を構成成分としたポリエステル系樹脂も接着性樹
脂として挙げられる。
【0049】ドライラミネート法を採用する場合は、ド
ライラミネート用接着剤としては層間接着力が充分であ
れば特に限定されるものではない。例えばポリウレタン
系、ポリエステル系のドライラミネート用接着剤が挙げ
られる。また、積層化にあたり、コロナ放電処理、スパ
ッタリング処理、高周波処理、火炎処理、クロム酸処
理、溶剤エッチング処理などや、これらを組み合わせた
表面処理を施しても構わない。
【0050】これらの方法により製造された該積層体は
シート、フィルム、パリソン、プリフォーム等の形をと
り、該積層体は真空圧空成形、二軸延伸ブロー成形など
により、所定の温度で再加熱し延伸操作を行う方法、あ
るいは該多層積層体(シート、フィルム)を二軸延伸機
に供し、加熱延伸操作を行う方法、さらには共射出法で
得たパリソン、プリフォームを延伸ブローする方法によ
り所定の形状の容器に形成される。
【0051】さらに本発明の多層容器に関しては、胴部
壁の全層の平均厚さは40〜2500μm、特に250
〜1500μmが好ましく、また全層厚さに対する該ポ
リエステル層の厚さ割合は特に制限はないが、0.2〜
50%、好ましくは1〜30%、特に好ましくは2〜2
0%である。
【0052】本発明の多層容器の層構成としては、熱可
塑性樹脂層をA、該ポリエステル層をBとするとき、A
/B、A/B/A、A/B/A/B、A/B/A/B/
Aなどが挙げられる。各層間層には前記した接着性樹脂
層、さらには本発明の多層容器の回収層を配置すること
もできる。
【0053】本発明において、加熱延伸多層積層体とは
前記したとおり、加熱延伸することにより得られるカッ
プ、ボトルなどの容器あるいはシート、フィルム状物で
あり、また加熱とは該多層積層体を加熱延伸に必要な温
度に所定時間放置し、該多層積層体が熱的にほぼ均一に
なる様な操作を意味し、操作性を考慮して、種々のヒー
ターで加熱、均一化する方法が好ましい。
【0054】加熱操作は、延伸と同時に行ってもよい
し、また延伸前に行ってもよい。また加熱操作とは、熱
的に均一に加熱された多層積層体をチャック、プラグ、
真空力、圧空力などによりカップ、ボトル、フィルム状
に均一に成形する操作を意味し、一軸延伸、同時二軸延
伸、逐次二軸延伸のいずれでも採用できる。
【0055】本発明中の該熱液晶ポリエステルの延伸性
について述べる。該熱液晶ポリエステルを従来公知の方
法でT−ダイ、サーキュラーダイなどの成形ダイより押
出成形して得られたフィルム、シートは加熱延伸操作に
より、面積で延伸前と比較し1.3倍以上、好ましくは
4倍以上、より好ましくは9倍以上に拡大されることが
本発明を達成するために必須の要件である。ここで、延
伸温度は該熱液晶ポリエステルのガラス転移温度+10
℃〜ガラス転移温度+150℃あるいはガラス転移温度
+10℃〜融点の範囲、好ましくはガラス転移温度+3
0℃〜ガラス転移温度+130℃あるいはガラス転移温
度+30℃〜融点の範囲であり、ガラス転移温度および
融点は後述する方法で熱分析により得られる値である。
本発明中の該熱液晶ポリエステルから得られたフィル
ム、シートの延伸性が1.3倍未満であると、本発明中
の該熱液晶ポリエステルの層と熱可塑性樹脂を主体とす
る層からなる多層積層体から多層容器を得ようとして
も、該熱液晶ポリエステルの層が破断し所望の容器が得
られない。
【0056】本発明中の熱液晶ポリエステルは、酸素バ
リヤー性に優れており、ポリエチレンテレフタレートの
20〜400倍以上の性能を有しており、しかもその優
れた酸素バリヤー性の湿度依存性は極めて小さい。例え
ば、本発明中の熱液晶ポリエステルは、通常、20℃で
測定した酸素透過量が20cc・20μm/m↑2・d
ay・atm以下の急冷フィルムを与える。酸素バリヤ
ー性は成形品に対して熱処理を施すことにより更に向上
する場合がある。
【0057】このように得られた本発明の多層容器に、
内容物、とくに食品を充填後、必要に応じ公知の手段で
内部を脱気状態にして、あるいは窒素ガス、炭酸ガスな
どの不活性ガスで内部を置換した後に熱シールなどの手
段で密封し、続いて、例えば100℃以下のいわゆるボ
イル処理あるいは100℃を超える温度条件下、とりわ
け105〜135℃で実施されるレトルト処理のような
熱水または蒸気(特に高温、高圧蒸気滅菌)で殺菌処理
され、本発明の包装体、とくに食品包装体が得られる。
ここでボイル殺菌処理あるいはレトルト殺菌処理として
は通常の熱水または蒸気加熱処理条件を採用することが
できる。またレトルト殺菌処理は回収式、置換式、シャ
ワー式、スプレー式等の各種方法が採用される。
【0058】本発明の多層容器がカップあるいはトレー
型の容器のとき、とりわけ優れた食品包装体が得られ
る。
【0059】充填される内容物としては食品が主にあげ
られる。ここで食品としては、そのまま喫食されるか、
喫食に先だって加温されるような調理済みまたは半調理
の食品が適している。次に殺菌食品類の例を示す。調理
済みカレー、調理済みハヤシ、ビーフシチュウ、ボルシ
チ、ミートソース、酢豚、すき焼き、中華あん、八宝
菜、肉じゃが、おでん、アスパラガスゆで煮、スイート
コーン、マッシュルーム、ツナクリーム煮、コンソメ、
ポタージュ等の各種スープ類、味噌汁、豚汁、けんちん
汁、米飯、釜飯、炒飯、ピラフ、粥類、スパゲッティ、
そば、うどん、ラーメン、ヌードル、釜飯の素、中華そ
ばの素などの添加用食品類、ゆであずき、ぜんざい、あ
んみつ、肉団子、ハンバーグ、ビーフステーキ、ロース
トポーク、ポークソテー、コンビーフ、ハム、ソーセー
ジ、焼魚、焼肉、焼鳥、ローストチキン、ポークケチャ
ップ、魚肉くんせい、ベーコン、かまぼこ、プリン、ゼ
リー、ようかん、各種ペットフード類などがあげられ
る。
【0060】以下実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はこれによって何ら限定を受けるもの
ではない。なお、部は重量部を意味している。
【0061】
【実施例】本実施例中の物性値の測定、成形性およびレ
トルトの評価は次の方法に従った。
【0062】(1)対数粘度(ηinh) ペンタフルオロフェノ−ル溶媒を用いて0.1g/dl
の濃度で60℃で測定した。
【0063】ηinh=ln(t1/t0)/c
【0064】[式中、ηinhは対数粘度(dl/g)を
表し、t0は溶媒での流下時間(秒)を表し、t1は試料
溶液での流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃
度(0.1g/dl)を表す。]
【0065】(2)熱分析 示差走査熱量計(DSC;メトラー社製、TA−300
0型)を用いて、溶融状態から急冷した試料に対し、1
0℃/分の昇温速度にて融点(Tm)およびガラス転移
温度(Tg)を測定した。
【0066】(3)酸素透過量(OTR) ガス透過率測定装置(MODERN CONTOROL
S社製 OX−TRAN10/50A)を使用して20
℃、相対湿度65%の条件下で、インフレーションフィ
ルムについて測定した。単位はcc・20μm/m↑2
・day・atmである。
【0067】(4)延伸性 インフレーション製膜法により単層フィルムを製膜し、
このフィルムを(株)東洋精機製作所製二軸延伸装置を
用いて100〜200℃の温度で3×3倍(面積9倍)
の二軸延伸に付した。
【0068】(5)熱成形性 浅野研究所製の真空圧空成形機(絞り比1/1、丸底カ
ップ、ヒーター温度400℃)により、外観の目視評価
を行った。
【0069】(6)レトルト試験 (5)で作成した容器を使用し、内容物としてコーンビ
ーフを充填した密封容器をテストサンプルとして、レト
ルト装置((株)日阪製作所製、高温高圧調理殺菌試験
機RCS−40RTGN)を使用し、120℃、60分
のレトルト処理を実施し、味覚の変化などの官能試験を
実施した。
【0070】(7)ポリマー組成 得られたポリマーをトリフルオロ酢酸溶液とし、500
MHz 1H-NMR(日本電子製、JNM GX−50
0型)にて測定した。なお、本測定の結果、実施例およ
び比較例でそれぞれ得られた熱液晶ポリエステルの構成
組成は、いずれの場合も仕込み原料組成と分析精度内で
一致していることが確認された。
【0071】実施例1 フェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒を用い
て30℃で測定した極限粘度が0.65dl/gのポリ
エチレンナフタレート975g(4.0モル)、6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸1150g(5.0モル)、
およびp−アセトキシ安息香酸180g(1.0モル)
を、攪拌機、蒸留塔および窒素ガス吹き込み口を備えた
内容積8lの反応器に仕込み、反応系内を3回窒素置換
したのち窒素気流下290℃にて1時間攪拌加熱し、そ
の後徐々に系内を減圧にして約30mmHgで約2時間
反応させた。本操作の結果、理論留出酢酸量の約90%
が留出した。次いで反応系内の真空度をさらに上昇さ
せ、1mmHg以下で5時間反応させたのちポリマーを
取り出した。
【0072】得られたポリマーをトリフルオロ酢酸に溶
解させ1H-NMRスペクトルを測定した結果、本ポリマ
ーの構成単位比は、[構成単位(1)+構成単位
(2)]/[構成単位(3)+構成単位(4)]のモル
比で57/43であることが判明した。これは仕込みの原料
組成比と実質的に同一である。得られたポリマーの微小
片をリンカム(Linkam)社製、顕微鏡用加熱装置
TH-600内で窒素雰囲気下、10℃/分の速度で昇温
し、偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したところ、160
℃付近から光を透過し始め、その後昇温に伴って透過光
量はさらに増大し、最終的に350℃まで昇温しても光
学的に異方性の溶融相を形成したままであった。また、
本ポリマーを溶融状態から急冷した試料を10℃/分の
昇温速度でDSCで分析した結果、86℃にガラス転移
点が観測された以外、吸熱ピークはまったく観測されな
かった。さらに本ポリマーを溶融状態から急冷した試料
の結晶化度をX線広角散乱で測定した結果、該試料の結
晶化度は10%であった。次に本ポリマーから、田端機
械製小型射出成形機(TK14−1AP型)を用いて、
シリンダー温度280℃、射出圧力800kg/cm↑
2、金型温度30℃で75×15×2mmの大きさの試
験片を作製した。得られた試験片をJISK7203に
準じた方法により、曲げ強度および曲げ弾性率を測定し
たところ、次に示す結果が得られた(いずれも樹脂の流
動方向)。
【0073】 曲げ強度 2254kg/cm↑2
【0074】曲げ弾性率 13.3×10↑4
kg/cm↑2
【0075】次に、スケールアップした設備で作成した
本ポリマー(1H−NMRスペクトルの測定からするこ
とによりポリマーの各構成単位の組成は上述のポリマー
A実質的に同一であることが確認された)を280℃で
加熱混練後、直径40mm、スリット幅0.6mmの円
形ダイより押出し、インフレーション製膜法により、厚
み約100μmのフィルムを得た。本フィルムの酸素透
過量を、MODERNCONTOROLS社製ガス透過
率測定装置OX−TRAN10/50Aを使用して20
℃、相対湿度65%の条件下で測定した。また本フィル
ムを、(株)東洋精機製作所製二軸延伸装置を用いて、
温度150℃にて、3×3倍(面積9倍)の同時二軸延
伸に付した結果、厚み約10μmの厚さ均一なフィルム
が得られた。
【0076】本ポリマーの対数粘度、DSC分析結果、
フィルムの酸素透過量および延伸性の評価の結果を表1
および表2に示す。
【0077】また、上記インフレーション製膜法により
得た上述の厚み約100μmのフィルムを中間層に、内
外層に厚さ約300μmポリプロピレンシートを使用
し、ドライラミネートを実施し、3層の多層シートを得
た。ドライラミネート用接着剤としては二液型のウレタ
ン系接着剤{タケラックA−385(武田薬品工業
(株)製)を主剤に、タケネートA−10(武田薬品工
業(株)製)を硬化剤として}を使用した。接着剤の塗
布量は4.0g/m↑2であった。ラミネート後、40
℃、3日間養生を実施した。(株)浅野研究所製の真空
圧空成形機を使用してこの多層シートの熱成形を180
℃で実施し、底面が半径33mm、上部開口部が半径3
7mmの円形で高さが37mmのカップ型容器を得た。
カップはクラック、偏肉などの延伸むらもなく外観も良
好であった。
【0078】得られたカップに内容物としてコンビーフ
を充填し窒素ガスで置換後、アルミニウム箔/ポリプロ
ピレンのラミネートフィルムをふた材としてヒートシー
ルして密封容器とし、テストサンプル(1)を得た。ま
た、110ccのガラスびんにコンビーフを充填し、窒
素ガスで置換後アルミキャップで密封し、対照サンプル
(0)を準備した。上記サンプルをレトルト装置
((株)日阪製作所製、高温高圧調理殺菌試験機RCS
−40RTGN)を使用し、120℃、60分のレトル
ト処理を実施した。レトルト処理後サンプル(1)は特
に外観、形態に不良は認められなかった。このサンプル
(1)を20℃、65%RH中で、対照サンプル(0)
を冷蔵庫(5℃)に保存した。3ケ月後両者を開封し、
年齢、性別を無作為に選んだパネラー10人で評価した
ところ、10人中10人が味、色、臭いに変化を認め
ず、保存性良好であった。熱成形性およびレトルト試験
の結果を併せて表1および表2に示す。
【0079】実施例2 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を40/30/30にした以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したと
ころ、150℃付近から光を透過し始め、その後昇温に
伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで
昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであ
った。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSC
で分析した結果、81℃にガラス転移点が観測された以
外、吸熱ピークはまったく観測されなかった。さらに本
ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結
果、結晶化度は11%であった。次に実施例1と同様の
条件で射出成形を行ない、曲げ強度および曲げ弾性率を
測定したところ、次に示す結果が得られた(いずれも樹
脂の流動方向)。また、その他の評価試験も実施例1と
同様にして実施した。
【0080】 曲げ強度 2134kg/cm↑2
【0081】曲げ弾性率 12.7×10↑4
kg/cm↑2
【0082】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0083】実施例3 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を40/10/50にした以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したと
ころ、140℃付近から光を透過し始め、その後昇温に
伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで
昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであ
った。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSC
で分析した結果、75℃にガラス転移点が観測された以
外、吸熱ピークはまったく観測されなかった。さらに本
ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結
果、結晶化度は12%であった。次に実施例1と同様の
条件で射出成形を行ない、曲げ強度および曲げ弾性率を
測定したところ、次に示す結果が得られた(いずれも樹
脂の流動方向)。また、その他の評価試験も実施例1と
同様にして実施した。
【0084】 曲げ強度 2055kg/cm↑2
【0085】曲げ弾性率 12.3×10↑4
kg/cm↑2
【0086】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0087】実施例4 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を30/60/10にした以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したと
ころ、160℃付近から光を透過し始め、その後昇温に
伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで
昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであ
った。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSC
で分析した結果、89℃にガラス転移点が観測された以
外、吸熱ピークはまったく観測されなかった。さらに本
ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結
果、結晶化度は8%であった。また、その他の評価試験
も実施例1と同様にして実施した。
【0088】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0089】実施例5 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を30/35/35にした以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したと
ころ、150℃付近から光を透過し始め、その後昇温に
伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで
昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであ
った。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSC
で分析した結果、80℃にガラス転移点が観測された以
外、吸熱ピークはまったく観測されなかった。さらに本
ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結
果、結晶化度は10%であった。また、その他の評価試
験も実施例1と同様にして実施した。
【0090】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0091】実施例6 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を30/10/60にした以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したと
ころ、150℃付近から光を透過し始め、その後昇温に
伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで
昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであ
った。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSC
で分析した結果、72℃にガラス転移点が観測された以
外、吸熱ピークはまったく観測されなかった。さらに本
ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結
果、結晶化度は14%であった。また、その他の評価試
験も実施例1と同様にして実施した。
【0092】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0093】実施例7 6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1316g(7.0モ
ル)、p−ヒドロキシ安息香酸138g(1.0モ
ル)、無水酢酸918g(9.0モル)、フェノール/
テトラクロロエタン等重量混合溶媒を用いて30℃で測
定した極限粘度が0.65dl/gのポリエチレンナフ
タレート484g(2.0モル)、および反応溶媒とし
ての酢酸960g(16.0モル)を、攪拌機、蒸留塔
および窒素ガス吹き込み口を備えた内容積8lの反応器
に仕込み、反応系内を3回窒素置換したのち窒素気流
下、還流条件下で約2時間攪拌加熱した。その後、約3
時間かけて290℃まで昇温した後、徐々に系内を減圧
にして約30mmHgで約2時間反応させた結果、理論
留出量の約95%の酢酸および無水酢酸が留出した。次
に反応系内の真空度をさらに上昇させ、1mmHg以下
で1時間反応させたのち生成ポリエステルを取り出し
た。
【0094】本ポリマーを、実施例1で用いた装置によ
り偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したところ、160℃
付近から光を透過し始め、その後昇温に伴って透過光量
はさらに増大し、最終的に350℃まで昇温しても光学
的に異方性の溶融相を形成したままであった。また、本
ポリマーを実施例1と同様にしてDSCで分析した結
果、96℃にガラス転移点が観測された以外、吸熱ピー
クはまったく観測されなかった。さらに本ポリマーの結
晶化度を実施例1と同様にして測定した結果、結晶化度
は7%であった。また、その他の評価試験も実施例1と
同様にして実施した。
【0095】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0096】実施例8 実施例7において、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸5
64g(3.0モル)、p−ヒドロキシ安息香酸138
g(1.0モル)、無水酢酸490g(4.8モル)、
酢酸480g(8.0モル)およびポリエチレンナフタ
レート1452g(6.0モル)を反応器に仕込んだこ
と以外は実施例7と同様にしてポリエステルを得た。本
ポリマーを、実施例1で用いた装置により偏光顕微鏡直
交ニコル下で観察したところ、250℃付近から光を透
過し始め、その後昇温に伴って透過光量はさらに増大
し、最終的に350℃まで昇温しても光学的に異方性の
溶融相を形成したままであった。また、本ポリマーを実
施例1と同様にしてDSCで分析した結果、78℃にガ
ラス転移点、252℃に吸熱ピークが観測された。ま
た、その他の評価試験も実施例1と同様にして実施し
た。
【0097】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0098】実施例9 実施例7において、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸3
76g(2.0モル)、p−ヒドロキシ安息香酸138
g(1.0モル)、無水酢酸367g(3.6モル)、
酢酸360g(6.0モル)およびポリエチレンナフタ
レート1694g(7.0モル)を反応器に仕込んだこ
と以外は実施例7と同様にしてポリエステルを得た。本
ポリマーを、実施例1で用いた装置により偏光顕微鏡直
交ニコル下で観察したところ、255℃付近から光を透
過し始め、その後昇温に伴って透過光量はさらに増大
し、最終的に350℃まで昇温しても光学的に異方性の
溶融相を形成したままであった。また、本ポリマーを実
施例1と同様にしてDSCで分析した結果122℃にガ
ラス転移点、256℃に吸熱ピークが観測された。ま
た、その他の評価試験も実施例1と同様にして実施し
た。
【0099】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0100】比較例1 実施例1において6−アセトキシ−2−ナフトエ酸の代
わりにp−アセトキシ安息香酸を用いた、すなわちアセ
トキシ芳香族カルボン酸成分(6.0モル)をすべてp
−アセトキシ安息香酸にした以外は実施例1と同様にし
てポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で用い
た装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察したとこ
ろ、255℃付近から光を透過し始め、その後昇温に伴
って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃まで昇
温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままであっ
た。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDSCで
分析した結果、ガラス転移点は観測されず、258℃に
吸熱ピークが観測されたのみであった。さらに本ポリマ
ーの結晶化度を実施例1と同様にして測定した結果、結
晶化度は27%であった。また、その他の評価試験も実
施例1と同様にして実施した。
【0101】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0102】比較例2 比較例1においてにおいてポリエチレンナフタレートの
代わりに、フェノール/テトラクロロエタン等重量混合
溶媒を用いて30℃で測定した極限粘度が0.7dl/
gのポリエチレンテレフタレート(4.0モル)を用
い、重合温度を280℃に変更した以外は比較例1と同
様にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1
で用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察した
ところ、200℃付近から光を透過し始め、その後昇温
に伴って透過光量はさらに増大し、最終的に350℃ま
で昇温しても光学的に異方性の溶融相を形成したままで
あった。また、本ポリマーを実施例1と同様にしてDS
Cで分析した結果、ガラス転移点は明確には観測され
ず、205℃に吸熱ピークが観測されたのみであった。
さらに本ポリマーの結晶化度を実施例1と同様にして測
定した結果、結晶化度は25%であった。次に実施例1
と同様の条件で射出成形を行ない、曲げ強度および曲げ
弾性率を測定したところ、次に示す結果が得られた(い
ずれも樹脂の流動方向)。また、その他の評価試験も実
施例1と同様にして実施した。
【0103】 曲げ強度 970kg/cm↑2
【0104】曲げ弾性率 8.1×10↑4
kg/cm↑2
【0105】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0106】比較例3 実施例1において、ポリエチレンナフタレート/6−ア
セトキシ−2−ナフトエ酸/p−アセトキシ安息香酸の
モル比を90/5/5にしたこと以外は実施例1と同様
にしてポリエステルを得た。本ポリマーを、実施例1で
用いた装置により偏光顕微鏡直交ニコル下で観察した
が、350℃以下のいかなる温度においても光学的に異
方性の溶融相を形成しなかった。また、本ポリマーを実
施例1と同様にしてDSCで分析した結果、123℃に
ガラス転移点、260℃に吸熱ピークが観測された。ま
た、その他の評価試験も実施例1と同様にして実施し
た。
【0107】得られた本ポリマーの対数粘度、DSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0108】比較例4 実施例1で用いたポリエチレンナフタレートのDSC分
析結果、フィルムの酸素透過量、延伸性、熱成形性およ
びレトルト試験の結果を併せて表1および表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【発明の効果】ガスバリヤー性、熱成形性、耐熱水性お
よび耐レトルト性が優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−182319(JP,A) 特開 昭60−186526(JP,A) 特開 平3−176123(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B65D 65/40 B65D 1/00 - 1/48 C08G 63/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂を主体とする少なくとも1
    種の層と実質的に下記化1 【化1】 で表される構成単位(1)、下記化2 【化2】 で表される構成単位(2)、下記化3 【化3】 で表される構成単位(3)および下記化4 【化4】 で表される構成単位(4)からなり、構成単位(1)と
    構成単位(2)が実質的に等しいモル数で存在し、構成
    単位(1)および構成単位(2)の合計量が15〜90
    モル%、構成単位(3)および構成単位(4)の合計量
    が10〜85モル%であり、構成単位(3)および構成
    単位(4)の合計量に対する構成単位(3)の量の割合
    が10モル%以上である熱液晶ポリエステルの層との積
    層体からなることを特徴とする多層容器。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の多層容器に内容物を充
    填し、密封したあと熱水または蒸気処理して得た包装
    体。
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