JP6186890B2 - ポリエステル樹脂容器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱充填が可能な耐熱性ポリエステル樹脂容器の製造方法に関する。
従来、電子レンジやホットベンダーなどで加熱される食品容器に用いられる構造体の材料には耐熱性に優れるポリスチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂などが使用されている。これらの素材は耐熱性に優れ、例えば、ポリスチレン樹脂は安価で加工性に優れるものの、残留モノマーの安全衛生性の課題があり、またポリプロピレン樹脂は安価で加工性に優れるが、透明性や印刷性が劣る問題がある。そのため、安全衛生性、透明性、印刷性などに優れたポリエステル樹脂への代替が強く求められている。
しかし、代表的なポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートは、透明性や強度、安全衛生性に優れるものの、未延伸状態や低延伸状態でなおかつ結晶化処理されずに使用されるため、耐熱温度は60℃程度であり、加熱すると容易に変形してしまう問題があった。例えば、約80〜90℃でのゼリーや豆類の充填など、内容物や雰囲気温度が高温であるときには、容器の収縮や平坦部の反りや膨らみなどの変形や容積が変化する問題点があった。
このためポリエチレンテレフタレートを延伸成形させたり、いわゆる熱固定を行って耐熱性を向上させる方法(特許文献1、2)が知られている。しかし、延伸成形では二軸延伸などにより耐熱性が改善されるものの、圧空成形が困難であり、絞り成形性が低下する問題点がある。また、熱固定による結晶化では、耐熱性は改善するものの、透明性やヒートシール性が低下し、さらに真空圧空成形で長時間かけて成形するため工程時間が長くなり高価となる問題がある。さらに、食品包装用途では、内容物を美しく見せることが要求されるために、透明性が必要とされるが、前記方法では、これら要求を満たしたものを得ることはできない。
特公平4−36534号公報 特開平5−220832号公報
本発明の目的は前記の如き状況に鑑み、耐熱性に優れる加熱充填が可能なポリエステル樹脂容器の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層を少なくとも一層含むポリエステル樹脂シートについて、加熱軟化した後に、特定の温度範囲にある金型を用いて成型することで耐熱性に優れる容器が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕
ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層を少なくとも一層含むポリエステル樹脂シートを加熱軟化した後に金型にて所望の形状に成型して容器を製造する方法において、金型温度を60℃以上でガラス転移点以下の範囲にて成型することを特徴とするポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔2〕
ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂が非晶性ポリエステルである〔1〕記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔3〕
ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂が、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂である〔1〕又は〔2〕に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔4〕
該環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
または一般式(2):
(式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
で表されるジオールに由来するジオール単位である〔3〕に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔5〕
該環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である〔4〕に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔6〕
環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群選ばれる1種以上のジオールに由来するジオール単位である〔3〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔7〕
ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸からなる群選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である〔〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法
〔8〕
ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂以外に、ジオール単位中に環状アセタール骨格を有するジオール単位を含まないポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含むことを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔9〕
ジオール単位中に環状アセタール骨格を有するジオール単位を含まないポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であることを特徴とする〔8〕記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔10〕
ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層からなる層以外の少なくとも1層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれた樹脂を含む樹脂層である〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔11〕
ポリエステル樹脂シートが3層から6層までの層からなり、そのスキン層がガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層であることを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
〔12〕
3層からなる〔11〕に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂のジカルボン酸単位またはジオール単位とは、エステル結合による繰り返し単位を指し、該ポリエステル樹脂のエステル結合を加水分解した際に生成するジカルボン酸またはジオールの名称を挙げ、それらに由来するジカルボン酸単位またはジオール単位と表記する。
本発明の製造方法により得られる容器は、耐熱性、透明性、耐衝撃性に優れ、加熱充填が可能な透明耐熱容器を得ることができ、食品包装分野等において容器を加熱する用途で好適に用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態のポリエステル樹脂容器の製造方法は、ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層(A)を少なくとも一層含むポリエステル樹脂シートを加熱軟化した後に金型にて所望の形状に成型して容器を製造する方法において、金型温度を60℃以上でガラス転移点以下の範囲にて成型することを特徴とするポリエステル樹脂容器の製造方法である。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂は、特に制限されるものではないが、透明性、外観及び成形性の観点から非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位とジオール単位から構成される。
ジオール単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等の環状アセタール骨格を有するジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビド、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニルプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;前記ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類のアルキレンオキシド付加物;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等に由来するジオール単位が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性、透明性を考慮するとエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、環状アセタール骨格を有するジオール類、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビド、ペンタシクロドデカンジメタノール等に由来するジオール単位が好ましい。例示したジオール単位は単独で使用する事もできるし、複数を併用する事もできる。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂は、ジオール単位中5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であることがより好ましい。環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は、10〜70モル%がさらに好ましく、15〜60モル%が特に好ましい。環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が上記範囲にある場合、ポリエステル樹脂はガラス転移点が高くなり耐熱性に優れるが、80モル%を超えると、シート成形時の温度が高くなり、着色や強度低下などの不具合を生じる恐れがある。
前記環状アセタール骨格を有するジオール単位としては、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物に由来するジオール単位がより好ましい。
一般式(1)と(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。例示するならば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基;シクロヘキシレン基;フェニレン基などが挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基が好ましい。Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。例示するならば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピル基、イソブチル基;シクロヘキシル基;フェニル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基が好ましい。
前記一般式(1)または(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンが特に好ましい。
また、ジオール単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を使用する場合、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位を併用する。環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビド、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニルプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;前記ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類のアルキレンオキシド付加物;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等に由来するジオール単位が例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性、及びジオールの入手の容易さを考慮するとエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等に由来するジオール単位が好ましく、エチレングリコールに由来するジオール単位が特に好ましい。例示したジオール単位は単独で使用する事もできるし、複数を併用する事もできる
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂のジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン等の脂肪族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が例示できる。ポリエステル樹脂(A)の機械強度、耐熱性、及びジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が特に好ましい。例示したジカルボン酸は単独で使用することもできるし、複数を併用することもできる。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂には、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコール単位やトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール単位、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸単位、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸単位、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸単位を含んでもよい。
成形性、耐熱性、機械的性能、耐加水分解性などを考慮すると、本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂は、環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位であり、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコールに由来するジオール単位であり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位から選ばれる1種類以上のジカルボン酸単位であるポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂の耐熱性は用途に応じて適宜選択することができるが、ガラス転移点は90〜150℃であることが好ましく、より好ましくは92〜150℃、特に好ましくは95〜140℃である。ガラス転移点を90℃以上にすることで、金型温度を60℃以上の高温にしても、金型への粘着による型くずれがなく、離型性が良好になる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂のガラス転移点は、構成単位の種類及び割合により変化するが、ジオール単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を使用し、その環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位であり、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール構成単位がエチレングリコールに由来するジオール単位であり、ジカルボン酸構成単位がテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である場合、上記範囲のガラス転移点が達成される。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂の極限粘度は、成形方法や用途に応じて適宜選択することができる。一般的に熱流動性が求められる射出成形で成形する場合には極限粘度が小さいポリエステル樹脂が適する場合が多く、押出成形で成形する場合や機械物性、耐薬品性等が重視される用途では極限粘度が大きいポリエステル樹脂が適する場合が多い。本発明に使用するポリエステル樹脂ではフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値で0.5〜1.5dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2dl/gであり、更に好ましくは0.6〜1.0dl/gである。極限粘度がこの範囲にある場合、本発明に使用するポリエステル樹脂は成形性及び機械的性能のバランスに優れる。
本実施形態におけるガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂の溶融粘度も成形方法や用途に応じて適宜選択することができる。極限粘度と同様に、一般的に熱流動性が求められる射出成形で成形する場合には溶融粘度が小さいポリエステル樹脂が適する場合が多く、押出成形で成形する場合や機械物性、耐薬品性等が重視される用途では溶融粘度が大きいポリエステル樹脂が適する場合が多い。溶融粘度の値としては、温度240℃、せん断速度100sec−1において300〜7000Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜5000Pa・sである。溶融粘度がこの範囲にある場合、本発明におけるポリエステル樹脂は成形性及び機械的性能のバランスに優れる。溶融粘度はポリエステル樹脂の極限粘度にも依存するが、構成単位にも依存する。ジオール単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を使用する場合には、環状アセタール骨格を有するジオール単位が多いほど溶融粘度は高くなる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂を製造する方法は特に制限はなく、従来公知のポリエステルの製造方法を適用することができる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げることができる。製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができ、これらは反応速度やポリエステル樹脂の色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性や安全衛生性などに応じて適宜選択される。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートは、前記ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂のみからなっていても良いが、異なるポリエステル樹脂同士を混合してなるポリエステル樹脂組成物を用いることもできる。ポリエステル樹脂組成物としては、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂と、さらにジオール単位中に環状アセタール骨格を有するジオール単位を含まないポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含む樹脂組成物が好ましい。この場合、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂が30重量%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。上記範囲にある場合、離型性に優れ、耐熱性に優れた容器を得ることができる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートは、前記ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層(A)以外に、他の樹脂層(B)を含むことができ、特に限定されるものではないが、好適な例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上の化合物、ならびにエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびビスフェノールAから選ばれる1種以上の化合物に由来する単位からなるポリエステル樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−2,6−ナフタレンジカルボン酸−エチレングリコール−1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリアリレートなどが挙げられ、ホモポリエステルでも共重合ポリエステルでもよく、あるいはこれらの2種以上のブレンド物であってもよい。上記ポリエステル樹脂を樹脂層(B)に含むことで、得られる容器の耐衝撃性や耐熱性や成形性、耐衝撃性などを調整することができる。上記ポリエステル樹脂のうち、機械物性、入手の容易さ、コストなどを勘案するとポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
他の樹脂層(B)に含むことのできる他の樹脂の例としては、酸素透過率がポリエチレンテレフタレートより小さい酸素バリア性樹脂がある。酸素バリア性樹脂を含むことにより、本発明のポリエステル樹脂構造体は酸素バリア性に優れ、食品包材等に好適に使用できる。酸素バリア性樹脂は従来公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ブタジエングラフトアクリロニトリル−アクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−エチレン共重合体、セロハン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニル、ナイロン6、ナイロン66、キシリレン基含有ポリアミド樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリグリコール酸、ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンナフタレート共重合体、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体が挙げられる。中でもキシリレン基含有ポリアミド樹脂が好ましく、キシリレン基含有ポリアミド樹脂の具体例として、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体;及びメタキシリレン−パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン−パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体;あるいはこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ピペラジン等の脂環式ジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン等の芳香族ジアミン、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタム等のラクタム、7−アミノヘプタン酸等のω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられる。さらに、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができ、特に、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分を重縮合して得られたキシリレン基含有ポリアミド樹脂が酸素バリア性、成形性、ポリエステル樹脂との相溶性等に優れており好ましく用いられる。また、上記キシリレン基含有ポリアミド樹脂には、モンモリロナイト等の粘土鉱物やステアリン酸コバルト等の有機遷移金属を添加することにより、樹脂組成物のガスバリア性が向上することがある。他の樹脂層に酸素バリア性樹脂を含む場合、その含量は1〜90重量%であり、より好ましくは1〜60重量%であり、特に好ましくは1〜40重量%である。
本実施形態における樹脂層には酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤、成形助剤;ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、AS樹脂等の樹脂、又はこれらのオリゴマー;木粉、竹粉、やし殻粉、コルク粉、パルプ粉、架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン・アクリル、尿素樹脂、カーボン繊維、合成繊維、天然繊維などの有機フィラー;炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、マイカ、ネフエリンシナイト、合成ケイ酸、石英粉、珪石粉、ケイソー土、硫酸バリウム、軽石粉、シラスバルン、ガラスバルン、フライアッシュバルン、ガラス繊維、セピオライト、鉱物繊維、ウイスカーなどの無機フィラーなどを添加することもできる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートはガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂からなる樹脂層(A)のみからなっていても良いが、少なくともガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂からなる樹脂層を一つの層として有する多層構造体であっても良い。上記以外の層は機能、用途、要求性能等により適宜選択されれば良く、特に制限されるものではないが、例えば、ガラス転移点が85℃以上のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、酸素バリア性樹脂、回収ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、AS樹脂等の樹脂層;エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、共重合ポリエステル等の接着剤層;印刷層;鉄、アルミニウム、亜鉛等の金属層;酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物層;炭素層;板紙、段ボール等の紙層などが挙げられる。これらの単一の材料からなる層であっても良いし、複数の材料の組成物からなる層であっても良い。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートが、少なくともガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂からなる樹脂層(A)を一つの層として有する多層構造体である場合、その層構成は用途により適宜選択されれば良いが、好適な例としては、樹脂層(A)をスキン層とする構成である。この場合、スキン側両面を樹脂層(A)とすることが好ましい。樹脂層(A)をスキン層とすることで、金型温度を高くしても樹脂の粘着を抑制でき、またヒートシール性を付与することができる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートを作製する方法は、特に制限されるものではないが、押出成形、発泡成形などが挙げられ、多層構造体の場合、共押出や、ラミネート、蒸着など従来公知の多層化技術を用いることができる。押出成形の場合、押出機は単軸あるいは二軸を用いることができ、その際、押出機の温度は200〜290℃が好ましい。
本実施形態においては前記ポリエステル樹脂シートからなる容器の製法には特に限定はないが、好ましい製法として、前記ポリエステル樹脂シートを圧空成形機、真空成形機、圧空真空成形機などを用いて、シート表面温度を90〜250℃に急速加熱軟化した後に、金型温度を60℃以上に設定した所望の形状の金型にて成型して容器を得ることができる。
シート表面温度が90℃を下回る場合、シートの軟化が不十分なため、成形が困難となる。また、250℃を超えると、ドローダウンが激しくなり、成形ができない。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートからなる容器は、前記温度に予熱した前記ポリエステル樹脂シートを60℃以上でガラス転移点以下の範囲に設定した金型を用いて成形することで製造することが出来る。金型温度をこの範囲に設定することによって、成型で得られる容器の耐熱性を高めることが出来る。金型温度が60℃未満の場合、耐熱性が不十分となり、加熱充填を行った際に容器の変形が生じる。金型温度が高いほど耐熱性をより高めることが出来るので、金型温度は、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。
また、金型温度の上限としては、シートのガラス転移点温度以下がよく、好ましくはシートのガラス転移点温度−10℃、さらに好ましくはシートのガラス転移点温度−20℃、特に好ましくは、シートのガラス転移点温度−25℃である。金型温度が高いほど耐熱性は高まるものの、金型温度が上記温度を超えると、離型時にシートが金型に張りつきやすくなり、容器の変形や生産性の低下といった問題が生じる。
前記容器成形の製法で使用される金型は、製造する容器によって異なるが、通常金型として用いられるものであればよく、特に限定はされない。
金型内での保持時間は5〜40秒が好ましく、より好ましくは8〜30秒、さらに好ましくは10〜20秒である。保持時間が上記より短いと、冷却が不十分なために形状の変化が生じ、長すぎると生産性が悪くなる。
本実施形態におけるポリエステル樹脂シートの全体の厚みは、用途により適宜選択すれば良いが、一般に10〜3000μmであるのが好ましく、より好ましくは50〜2000μmである。本発明のポリエステル樹脂シートが多層構造体である場合、各層の厚みは耐熱性や酸素バリア性、コスト等の各種要求性能により適宜選択すれば良いが、樹脂層(A)の厚みは、10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、且つ全体の厚みに対して5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上の厚みを有していることが良い。
また、容器の厚みは5〜3000μmであるのが好ましく、より好ましくは20〜2000μm、さらに好ましくは、30〜1500μmである。
上記範囲にある場合、本発明のポリエステル樹脂容器は種々の加熱に必要な耐熱性を有する。
本実施形態におけるポリエステル樹脂容器に充填される内容物は、特に制限されるものではなく、食品、化粧品、医薬品、トイレタリー、機械・電気・電子部品、オイル、樹脂類などが挙げられるが、本発明のポリエステル樹脂容器の持つ耐熱性、安全衛生性、透明性、印刷性、耐衝撃性などを勘案すると本発明のポリエステル樹脂容器は、特に食品を保存するための容器として好適に使用できる。
充填される食品は、特に制限されるものではないが、具体例を示すならば、例えば、野菜汁、果汁、お茶類、コーヒー・コーヒー飲料類、乳・乳飲料類、ミネラルウォーター、イオン性飲料、酒類、乳酸菌飲料、豆乳等の飲料;豆腐類、卵豆腐類、ゼリー類、プリン、水羊羹、ムース、ヨーグルト類、杏仁豆腐などのゲル状食品;ソース、醤油、ケチャップ、麺つゆ、たれ、食酢、味醂、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、味噌、漬物の素、すり下ろし香辛料等の調味料;サラミ、ハム、ソーセージ、焼鳥、ミートボール、ハンバーグ、焼豚、ビーフジャーキー等の食肉加工品;蒲鉾、貝水煮、煮魚、竹輪等の水産加工品;粥、炊飯米、五目飯、赤飯等の米加工品;ミートソース、マーボーソース、パスタソース、カレー、シチュー、ハヤシソース等のソース類;チーズ、バター、クリーム、コンデンスミルク等の乳加工品;ゆで卵、温泉卵等の卵加工品;煮野菜・煮豆;揚げ物、蒸し物、炒め物、煮物、焼き物等の惣菜類;漬物;うどん、そば、スパゲッティ等の麺類・パスタ類;果物シラップ漬け等が挙げられる。
本実施形態のポリエステル樹脂容器は、その耐熱性を生かして、予め加熱されている食品を容器に充填する容器として、および、容器に充填後に調理、再加熱、殺菌、保温等の目的で加熱をおこなう場合の容器としてより好適に用いられる。
本実施形態のポリエステル樹脂容器に充填した食品の加熱方法は、特に制限されるものではないが、具体例として、電子レンジ、湯煎、加熱空気、水蒸気、紫外線、ボイル、レトルト、ホットベンダーなどが挙げられる。食品の加熱の温度や時間は、方法や理由、充填される内容物等により異なるが、本実施形態のポリエステル樹脂容器は、加熱温度70〜140℃、加熱時間0.001〜100分の範囲内で好適に使用できる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
〔評価方法〕
以下の実施例及び比較例において、評価方法は、下記の方法で行った。
(1)離型性
ヒーター、金型、真空ポンプ、コンプレッサー、冷却器等からなる真空圧空成形機を用い、上側ヒーター温度330℃、下側ヒーター温度300℃で、ポリエステルシートをシート表面温度120℃に加熱させた後、所定の金型温度のカップ状型(開口部70x70mm、深さ26mm、容積100ml)にて、冷却時間20秒で容器を成型した際の、離型性を評価した。
○:金型への貼りつきなし。
×:金型への貼りつきあり。
(2)曇価
日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用し、JIS−K−7105、ASTM D1003に準じて、切り出した容器底部を48時間調湿後、23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。
(3)熱水充填容積保持率
容器の容積を(V1)を測定し、次に該容器に50〜90℃の熱水を満水まで充填後、室温に下がるまで放置した。その後、再度容積(V2)を測定し、下記式より容積保持率を求めた。
容積保持率(%)=(V2/V1)×100
容積保持率(%)の高いものほど、耐熱性が高いと評価できる。
(4)充填後の容器外観
容器に熱水を充填し、室温まで放置後、外観を目視で観察した。
○:外観変化なし
△:容器側面に膨れあり
×:容器が大きく変形
〔原料樹脂〕
本願の実施例、比較例で使用した樹脂を以下に記す。
・ポリエチレンテレフタレート:日本ユニペット(株)製、RT−553C(表中PETと略記)
〔ポリエステル樹脂(A−1)、(A−2)、(A−3)の製造〕
本願の実施例、比較例で使用したジオール単位として環状アセタール骨格を有するジオール単位を用いるポリエステル樹脂の製造方法について以下に記す。
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、攪拌機、過熱装置、窒素導入管を備えた150リットルのポリエステル樹脂製造装置に表1に記載量のテレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、常法にてエステル化反応を行った。得られたエステルに表1に記載量の解重合用エチレングリコールと、二酸化ゲルマニウムを加え、225℃、窒素気流下で解重合を行なった。生成する水を留去しつつ3時間反応を行った後、215℃、13.3kPaでエチレングリコールを留去した。得られたエステルに表1に記載量のテトラ−n−ブチルチタネート、酢酸カリウム、リン酸トリエチル、SPGを添加し、225℃13.3kPaで3時間反応を行った。得られたエステルを昇温、減圧し、最終的に270℃、高真空化(300Pa以下)で重縮合反応を行い、所定の溶融粘度となったところで反応を終了しポリエステルを得た。
尚、表中の略記の意味は下記の通りである。
・PTA:テレフタル酸
・SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエテチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
・EG:エチレングリコール
・GeO2:二酸化ゲルマニウム
・TBT:テトラ−n−ブチルチタネート
・AcOK:酢酸カリウム
・TEP:リン酸トリエチル
〔ポリエステル樹脂(A−1)、(A−2)、(A−3)の評価方法〕
ポリエステル(A−1)、(A−2)、(A−3)の評価方法は以下の通りである。
(5)ガラス転移点
島津製作所製DSC/TA−50WSを使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度20℃/minで測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移点とした。
(6)環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は、ポリエスエル樹脂20mgを1gの重クロロホルムに溶解し、H−NMR測定、ピーク面積比から算出した。測定装置は日本電子(株)製JNM−AL400を用い、400MHzで測定した。
(7)分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mn)
ポリエステル樹脂2mgを20gのクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで検量したものをMn、Mw/Mnとした。GPCは東ソー株式会社製TOSOH 8020に東ソー株式会社製カラムGMHHR−Lを2本、TSK G5000HRを1本接続し、カラム温度40℃で測定した。溶離液はクロロホルムを1.0ml/minの流速で流し、UV検出器で測定した。
(8)溶融粘度
東洋精機製 Capirograph 1C(キャピログラフ)を用い、温度:250℃、予熱時間:1min、ノズル径:1mm、ノズル長:10mm、剪断速度:100(1/sec)で測定を行った。
<実施例1>
ポリエステル(A−3)をベント付35mm二軸押出機に供給し、シリンダ温度250℃、スクリュー回転数120rpmの条件で、ベント脱揮を行いながら押出し、Tダイ押出法で単層シート(厚み350μm)を製造した。次いで、真空圧空成形機にて容器を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリエステル(A−3)を30mmφ二軸押出機と、Tダイ、冷却ロール、巻き取り機を備えた単層シート成形機(プラスチック光学研究所製PTM−30)に供給し、スクリュー回転65rpm、押出温度260℃、引取速度1.1m/minで厚さ350μmのシートを作製した。
さらに、得られたシートについて、浅野研究所製のプラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が120℃に達した時点で金型温度50、60、70℃の各々の温度で熱成形を行い、開口部70x70mm、深さ26mm、容積100mlのカップ状容器を得た。得られたシートと熱成形容器の評価結果を表2に示す。なお、熱水充填による容積保持率の測定は充填温度80℃で実施した。
金型温度50℃の結果に比べて、金型温度60、70℃の場合の方が、容器の耐熱性を示す容積保持率及び充填後の容器外観のデータが良好になっている。
<比較例1>
実施例1において、ポリエステル(A−3)に代えてポリエチレンテレフタレートを用いとした以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し容器成型を行った。評価結果を表2に示す。
何れの金型温度で成型した容器も容積保持率、充填後の容器外観、共に悪く、耐熱性は不十分である。
<実施例2>
実施例1において、ポリエステル(A−2)を用い、金型温度を50、60,70,80,90℃とした以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し容器成型を行った。評価結果を表3に示す。なお、熱水充填による容積保持率の測定は充填温度85℃で実施した。
金型温度を上げるに従って、容器の耐熱性を示す容積保持率及び充填後の容器外観のデータが良好になる傾向を示している。
<実施例3>
実施例1において、ポリエステル(A−1)を用い、金型温度を50、60,70,80,90℃とした以外は、実施例1と同様にしてシートを作製し容器成型を行った。評価結果を表4に示す。なお、熱水充填による容積保持率の測定は充填温度90℃で実施した。
<実施例4>
コア層としてポリエチレンテレフタレートをベント付65mm単軸押出機を用いてベント脱揮を行いながら押出し、一方、スキン層としてポリエステル(A−2)を、ベント付32mm単軸押出機を用いて押出し、マルチマニホールドタイプのダイを用いてロール温度70〜90℃にて2種3層の多層ポリエステルシート(スキン層/コア層/スキン層=50/250/50μm)を製造した。
さらに、得られたシートについて、浅野研究所製のプラグアシストを備えた真空圧空成形機を使用して、シート表面温度が120℃に達した時点で金型温度50、60,70,80,90℃の各々の温度で熱成形を行い、開口部70x70mm、深さ26mm、容積100mlのカップ状容器を得た。得られたシートと熱成形容器の評価結果を表3に示す。なお、熱水充填による容積保持率の測定は充填温度85℃で実施した。
本発明の方法で製造されるポリエステル樹脂容器は、耐熱性、透明性、耐衝撃性に優れ、加熱充填が可能な透明耐熱容器であり、食品包装分野等において、予め加熱されている食品を容器に充填する容器として、および、容器に充填後に調理、再加熱、殺菌、保温等の目的で加熱をおこなう場合の容器として好適に用いられる。

Claims (12)

  1. ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層を少なくとも一層含むポリエステル樹脂シートを加熱軟化した後に金型にて所望の形状に成型して容器を製造する方法において、金型温度を60℃以上でガラス転移点以下の範囲にて成型することを特徴とするポリエステル樹脂容器の製造方法。
  2. ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂が非晶性ポリエステルである請求項1記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  3. ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂が、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  4. 該環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
    (式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
    または一般式(2):
    (式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
    で表されるジオールに由来するジオール単位である請求項3に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  5. 該環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項4に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  6. 環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群選ばれる1種以上のジオールに由来するジオール単位である請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  7. ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸からなる群選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である請求項3〜6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法
  8. ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂以外に、ジオール単位中に環状アセタール骨格を有するジオール単位を含まないポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  9. ジオール単位中に環状アセタール骨格を有するジオール単位を含まないポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項8記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  10. ガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層からなる層以外の少なくとも1層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれた樹脂を含む樹脂層である請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  11. ポリエステル樹脂シートが3層から6層までの層からなり、そのスキン層がガラス転移点が90℃以上のポリエステル樹脂を含む樹脂層であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
  12. 3層からなる請求項11に記載のポリエステル樹脂容器の製造方法。
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