JP3053550B2 - 医療機器の洗浄方法 - Google Patents

医療機器の洗浄方法

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JP3053550B2
JP3053550B2 JP7179060A JP17906095A JP3053550B2 JP 3053550 B2 JP3053550 B2 JP 3053550B2 JP 7179060 A JP7179060 A JP 7179060A JP 17906095 A JP17906095 A JP 17906095A JP 3053550 B2 JP3053550 B2 JP 3053550B2
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鉦三 矢野
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、に使用される次亜
塩素酸ナトリウムを含む洗浄液による医療機器の洗浄方
法、特にエンドトキシン除去フィルターが付設された人
工透析ラインの洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】人工透析装置は、使用中に血液等の体液
やその成分が付着して汚染されるが、この汚染を放置す
れば細菌やウィルスによる感染、異種蛋白質によるアナ
フラキシー等の原因となるため、使用後に付着汚染物を
洗浄除去すると共に殺菌して危険性を除く必要がある。
また、透析液の供給装置や供給ラインの汚れは細菌増殖
の要因となり、細菌感染やエンドトキシンによる患者の
発熱等を招く可能性があるが、特に近年ではPH調整の
ために重炭酸ナトリウムを配合した透析液が汎用されて
いることから、配管等の接液部に炭酸カルシウム等のカ
ルシウム塩が析出して付着し易くなっており、患者監視
装置のトラブルの要因にもなるため、この汚れの除去も
必要とされる。更に、透析液の排出ラインにおいては、
上記カルシウム塩に加えて透析によって血液中から移行
した老廃物が付着し、不潔であって以降の透析時の逆汚
染につながるため、やはり洗浄消毒が必要となる。
【0003】そこで、従来では、上述のような透析装置
及びその周辺機器における付着・汚染物の除去及び殺菌
のために、一般的に次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸
溶液による2段階の洗浄が行われている。また、同様目
的に使用するものとして、陰イオン界面活性剤と次亜塩
素酸ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸(EDT
A)塩を含む消毒洗浄剤が提案されている(特開平4−
135559号)。また、本出願人も、特願平6−18
6117号として、次亜塩素酸ナトリウム及び陰イオン
界面活性剤と、重合りん酸塩、ポリアクリル酸塩−ポリ
マレイン酸塩共重合物、ポリアクリル酸塩より選ばれる
金属封鎖剤とを含む殺菌洗浄剤を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の次亜塩素酸ナトリウムと酢酸による一般的な洗浄手
段では、次亜塩素酸ナトリウムが殺菌消毒性に優れる反
面で洗浄性に劣り、特にカルシウム塩や油脂成分の汚れ
を除去できず、且つ酢酸溶液はカルシウム塩を溶解除去
できるが他の付着成分に対する除去能力に乏しいことか
ら、洗浄消毒効果は充分とは言えない上、次亜塩素酸ナ
トリウム及び酢酸が金属を侵すために医療機器の装置内
や配管系の金属部分の腐食を生じ易く、また2回に分け
て洗浄を行うために操作的に煩雑で多大な労力及び時間
を費やすという問題があった。
【0005】更に、前記提案の陰イオン界面活性剤と次
亜塩素酸ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸塩を含
む消毒洗浄剤では、エチレンジアミン四酢酸塩が金属封
鎖剤としてカルシウム塩に対する優れた除去作用を発揮
するが、このエチレンジアミン四酢酸塩が次亜塩素酸ナ
トリウムによって分解されて短時間で効力を消失すると
共に、この分解に伴って次亜塩素酸ナトリウム自体も消
費され、経時的な殺菌洗浄力の低下が著しいため、保存
が効かず、製造後に極めて短期間の内に使用する必要が
あり、実用性に乏しいという問題があった。
【0006】これに対し、本出願人の前記提案に係る特
定の金属封鎖剤を次亜塩素酸ナトリウム及び陰イオン界
面活性剤と共に用いた殺菌洗浄剤は、該金属封鎖剤によ
るカルシウム塩の除去作用が良好である上、次亜塩素酸
ナトリウムによる該金属封鎖剤の分解性が前記のエチレ
ンジアミン四酢酸塩に比較して格段に小さいため、製品
寿命が長く高い実用性を備えている。
【0007】しかしながら、上述のように金属封鎖剤の
分解性が小さくとも、殺菌洗浄剤を製造して出荷し、流
通段階を経て納入した医療機関において実際に洗浄に用
いるまでにはかなりの期間を要すると共に、その期間が
一定せず、温度等の環境条件の変化も大きいため、次亜
塩素酸ナトリウムの消失による殺菌力低下や他の配合成
分の変質を確実に防止し、且つ安定した殺菌洗浄力を確
保することは困難であった。また、これら提案の洗浄剤
では、液剤としての総量が大きいため、物流コストが高
く付くという難点もあった。
【0008】本発明は、上述の状況に鑑み、次亜塩素酸
ナトリウムを用いた医療機器洗浄剤において、次亜塩素
酸ナトリウムによる殺菌力を損なうことなく、炭酸カル
シウム等のカルシウム塩の除去性を付与でき、出荷から
流通を経て医療機関で実際に用いるまでの期間の長短や
環境条件の変化に左右されず、安定した殺菌洗浄力を確
保できる手段を提供することを第一の目的としている。
【0009】一方、人工透析においては既述のようにエ
ンドトキシンによる患者の発熱(逆濾過、逆拡散により
種々の発熱性物質が透析膜を介して患者の血中に移行す
ることによる)等が問題になっており、その対策として
近年では、エンドトキシン除去フィルターを設置して人
工透析及びオンライン人工透析濾過を行うようにしてい
る。このエンドトキシン除去フィルターは、ポリスルフ
ォン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステ
ルポリマーアロイ等よりなる中空糸膜を通した限外濾過
によってエンドトキシンを除去するものであり、特にオ
ンライン人工透析濾過においては血液中に直接補充する
補充液中のエンドトキシンを除去するという重要な機能
を担っている。
【0010】しかるに、このようなエンドトキシン除去
フィルターを設置した透析ラインの除菌洗浄において
は、該フィルターの中空糸膜が極めて微細な多孔構造で
あることから、その構造内部まで洗浄力を及ぼすことが
非常に難しい上、洗浄剤成分が残留すると血液中に持ち
込まれる危険性があるため、その残留を厳密に防止する
必要があり、また特に界面活性剤を含む洗浄剤では泡の
抱き込みによる流量低下によって洗浄性が悪化するとい
う問題があった。
【0011】従って、本発明の第二の目的は、上記のエ
ンドトキシン除去フィルターを設置した透析ラインの除
菌洗浄において、充分な洗浄効果を発揮でき、且つ洗浄
剤成分の残留を確実に防止できる除菌洗浄剤と洗浄方法
を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記第一及び第二の目的
を達成するために、請求項1の発明に係る医療機器の洗
浄方法は、金属封鎖剤として重合りん酸塩、ニトリロ三
酢酸アルカリ金属塩、クエン酸塩より選ばれる少なくと
も一種を含む医療機器洗浄液用配合剤を、次亜塩素酸ナ
トリウム水溶液に混合して、有効塩素濃度0.02〜
0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム及び金属封鎖剤を
含む洗浄液を調製し、この洗浄液によってエンドトキシ
ン除去フィルターが付設された人工透析ラインの洗浄を
行うことを特徴とするものである。
【0013】しかして、上記請求項1の医療機器の洗浄
方法における医療機器洗浄液用配合剤として、請求項2
の発明では金属封鎖剤と共に水酸化アルカリを含むもの
を、請求項3の発明では金属封鎖剤と共にケイ酸塩を含
むものを、請求項4の発明では金属封鎖剤と共に界面活
性剤としてパラトルエンスルホン酸塩又は/及びメタキ
シレンスルホン酸塩を含むものを、それぞれ用いてい
る。また、請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいず
れかの医療機器の洗浄方法において、医療機器洗浄液用
配合剤の混合量を、前記洗浄液1リットル中の金属封鎖
剤が50mg以上となるように設定するものとしてい
る。
【0014】一方、請求項6の発明では、上記請求項2
の医療機器の洗浄方法において、有効塩素濃度0.5〜
12重量%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に、ニトリ
ロ三酢酸アルカリ金属塩よりなる金属封鎖剤と水酸化ア
ルカリを含有する医療機器洗浄液用配合剤を混合し、こ
の混合液を希釈して前記洗浄液を調製するものとしてい
る。また、請求項7の発明では、上記請求項4の医療機
器の洗浄方法において、有効塩素濃度0.5〜12重量
%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に、金属封鎖剤と界
面活性剤及び水酸化アルカリを含有する医療機器洗浄液
用配合剤を混合し、この混合液を希釈して前記洗浄液を
調製するものとしている。そして、これら請求項6又は
7の医療機器の洗浄方法において、請求項8の発明で
は、医療機器洗浄液用配合剤中の水酸化アルカリによ
り、前記混合液のpHを12.5〜14.0の範囲に調
整するものとしている。
【0015】
【発明の実施の形態】人工透析装置の設備を有する医療
機関では、殆どの場合、該人工透析装置及びその周辺機
器の消毒洗浄用として、有効塩素濃度0.05〜12重
量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(市販の原液)を収
容する消毒洗浄原液タンクを所持しており、洗浄に際
し、該タンクより導出した必要量の原液を水で15〜1
50倍程度に希釈して有効塩素濃度0.02〜0.2重
量%の水溶液とし、既述のように、この希釈した次亜塩
素酸ナトリウム水溶液にて第一段の洗浄を施したのち、
酢酸溶液による第二段の洗浄を行っている。
【0016】しかして、前記原液タンク内の次亜塩素酸
ナトリウム原液は通常2〜3日、長くても一週間以内に
消費されるのが普通であり、また希釈した水溶液は30
分から遅くとも12時間以内に洗浄に供される。従っ
て、上記原液タンク内の原液について保存期間が一週間
を越える場合の殺菌力の経時的低下に配慮する必要は殆
どなく、更に洗浄液として用いる希釈水溶液における安
定性の問題はより緩和されることになる。
【0017】本発明の洗浄方法に用いる医療機器洗浄液
用配合剤は、有機系又は/及び無機系の金属封鎖剤を含
有するものであるが、予め次亜塩素酸ナトリウムを配合
したものではなく、医療機関において上述のように既に
設置されている消毒洗浄原液タンク内の次亜塩素酸ナト
リウム原液に混合するか、あるいは洗浄に際して該原液
を水で希釈する時又は希釈後の水溶液に混合して用いら
れる。そして、この配合剤を加えて調製された洗浄液
は、前記混合より実際の洗浄に供されるまでの期間(時
間)が上述の医療期間における洗浄液の取扱い慣行より
非常に短くなり、当該配合剤に含まれる金属封鎖剤と次
亜塩素酸ナトリウムとの相互作用の進行が少なく、温度
の環境条件等の変化も小さいため、洗浄時まで次亜塩素
酸ナトリウムの強い殺菌力が維持され、且つ金属封鎖剤
によるカルシウム塩の溶解除去力も損なわれない。従っ
て、この洗浄液の使用により、人工透析装置やその周辺
機器等の医療機器を効率よく殺菌洗浄でき、従来の酢酸
溶液による二次洗浄は不要となる。
【0018】上記の医療機器洗浄液用配合剤に用いる有
機系又は/及び無機系の金属封鎖剤としては、無機系で
は重合りん酸塩、有機系ではクエン酸塩とアミノカルボ
ン酸塩が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよ
い。
【0019】上記の重合りん酸塩の種類は特に制約され
ないが、適当な溶解度を有して金属封鎖性に富むものと
して、ポリメタりん酸ナトリウム及びポリメタりん酸カ
リウム、ポリりん酸二水素ナトリウム及びポリりん酸二
水素カリウム、ポリりん酸水素二ナトリウム及びポリり
ん酸水素二カリウム、ポリオルトりん酸ナトリウム及び
ポリオルトりん酸カリウム等で、分子中のP原子が2〜
10個であるものが挙げられる。そして、これらの中で
もトリポリりん酸、テトラポリりん酸、ペンタポリりん
酸、ピロりん酸、ヘキサメタりん酸の各アルカリ金属塩
が好適であり、更に炭酸カルシウム等のカルシウム塩の
溶解性に優れる点からトリポリりん酸アルカリ金属塩が
最適である。
【0020】有機系金属封鎖剤としては、上記の例示し
た成分のアルカリ金属塩が好適である。そして、これら
によるカルシウム塩の溶解力の大きさは、アミノカルボ
ン酸塩>クエン酸塩であり、前記無機系金属封鎖剤であ
るトリポリりん酸塩よりも大きな溶解性を示す。
【0021】ところで、上記のアミノカルボン酸塩は、
他の金属封鎖剤に比較して、カルシウム塩に対する溶解
除去性が極めて高い反面、次亜塩素酸ナトリウムとの相
互作用が激しい成分である。このため、既述したエチレ
ンジアミン四酢酸塩を用いた従来提案の洗浄剤のように
予め次亜塩素酸ナトリウムに配合した製品形態では、洗
浄に供するまでに両成分の分解が進み、洗浄時の殺菌洗
浄力が著しく低下してしまうことから、実質的に使用で
きないものであった。しかるに、本発明では、このよう
なアミノカルボン酸塩であっても、予め次亜塩素酸ナト
リウムに配合した製品形態とせず、医療機関において消
毒洗浄原液タンク内の次亜塩素酸ナトリウム原液又はそ
の希釈液に配合するから、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌
力を充分に維持した状態で洗浄に供することが可能とな
り、もって該アミノカルボン酸塩による極めて高いカル
シウム塩の除去能力を支障なく利用できるのであり、こ
れは本発明の大きな利点である。
【0022】なお、金属封鎖剤としてアミノカルボン酸
塩を用いた医療機器洗浄液用配合剤の場合、次亜塩素酸
ナトリウムの分解をより少なくする上で、次亜塩素酸ナ
トリウム原液(有効塩素濃度0.05〜12重量%)よ
りも、洗浄に供する希釈液(有効塩素濃度0.02〜
0.2重量%)に混合することが望ましい。ただし、ア
ミノカルボン酸塩と共に後述する水酸化アルカリを併用
すれば、次亜塩素酸ナトリウムの安定性が著しく向上す
るため、上記原液に混合して一週間程度(通常の最長保
存期間)保存しても、充分な殺菌洗浄力を確保できる。
【0023】このようなアミノカルボン酸塩としては、
ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸
(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢
酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DT
PA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)等
のアルカリ金属塩があるが、本発明では特にニトリロ三
酢酸アルカリ金属塩を用いる。すなわち、これらの中で
もニトリロ三酢酸アルカリ金属塩は、カルシウム塩の溶
解力が非常に大きいことに加え、次亜塩素酸ナトリウム
に対する分解性が比較的小さいため、特に推奨される。
【0024】医療機器洗浄液用配合剤の次亜塩素酸ナト
リウム水溶液に対する配合量は、少なくても量に見合う
作用が発揮され、多いほど金属封鎖性が高くなるが、実
質的な配合効果より、次亜塩素酸ナトリウムの前記原液
とその希釈液のいずれに混合する場合でも、洗浄に供す
る希釈液つまり有効塩素濃度0.02〜0.2重量%の
次亜塩素酸ナトリウム水溶液1リットル中の金属封鎖剤
が50mg以上となるように設定するのがよい。なお、
配合量の上限は使用する金属封鎖剤の種類による次亜塩
素酸ナトリウム水溶液に対する溶解限度より自ずと定ま
る。
【0025】本発明の洗浄方法に用いる医療機器洗浄液
用配合剤は、上記の金属封鎖剤単独からなるものでもよ
いが、必要に応じて各種添加剤を配合した形態としても
よい。このような添加剤の中で特に有用なものとして、
界面活性剤、水酸化アルカリ、ケイ酸塩が挙げられる。
【0026】上記の界面活性剤は、洗浄液中において次
亜塩素酸ナトリウムと相乗的に作用して高い洗浄力を発
揮する成分である。すなわち、次亜塩素酸ナトリウム
は、蛋白質系の汚れに対しては良好な洗浄作用を示す
が、油脂系の汚れに対する洗浄作用に劣り、また界面張
力の低下作用がなく、洗浄物への濡れ性と浸透性に欠け
るため、これと金属封鎖剤のみを含む洗浄液では洗浄む
らを生じることがある。そこで、金属封鎖剤と共に界面
活性剤を含む配合剤を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に加
えることにより、油脂系の汚れに対する洗浄力が増強さ
れると共に、洗浄物に対する濡れ性及び浸透性が向上
し、洗浄むらを解消できる。
【0027】ところで、従来の次亜塩素酸ナトリウムを
含む消毒洗浄剤では、その調製から洗浄に供するまでに
長期間を要することから、界面活性剤を配合する場合、
次亜塩素酸ナトリウムとの相互の安定性に配慮する上
で、極めて限られた種類のものしか使用できなかった。
しかも、次亜塩素酸ナトリウムに対して耐性のある界面
活性剤を選択しても、洗浄に供するまでの長期間に相互
作用が進行するため、有効塩素量の減少と界面活性剤の
変質を回避することは困難であった。しかるに、前記配
合剤を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に混合した直後又は
一週間以内の短期間に洗浄に供するようにすれば、該配
合剤に含まれる界面活性剤と次亜塩素酸ナトリウムとの
相互作用は僅少となる。
【0028】本発明の洗浄方法で使用する界面活性剤と
しては、パラトルエンスルホン酸塩とメタキシレンスル
ホン酸塩が挙げられる。これらは、低起泡性であるた
め、洗浄対象や洗浄液を取扱う機器が泡による問題を生
じ易いものである場合に好適であると共に、他の界面活
性剤に比較して分子量が小さいため、微細構造部まで浸
透して良好な洗浄力を発揮できる上、水洗によって該微
細構造部から確実に除去できるという利点があり、特に
人工透析装置のエンドトキシン除去フィルターを設置し
た透析ラインの洗浄に好都合である。
【0029】すなわち、エンドトキシン除去フィルター
を設置した透析ラインでは、既述のように、該フィルタ
ーの中空糸膜が極めて微細な多孔構造を持つため、泡が
抱き込まれると流量低下を引き起こして洗浄性が悪化す
る上、分子量の大きい界面活性剤では構造内部まで充分
な洗浄力を及ぼせず、且つ構造内部に入り込んだ界面活
性剤が後の水洗でも除去されずに残留し、この残留分が
透析中に遊離して患者の血液中に移行する恐れがある
が、これらの問題は界面活性剤として上記のパラトルエ
ンスルホン酸塩とメタキシレンスルホン酸塩を用いるこ
とによって解決できる。なお、界面活性剤の配合量は、
有効塩素濃度0.02〜0.2重量%の次亜塩素酸ナト
リウム水溶液1リットルに対して50〜500mgとな
る範囲が好適である。
【0030】また、エンドトキシン除去フィルターを設
置した透析ラインに適用する場合、界面活性剤として上
記2種の陰イオン界面活性剤を選択すると共に、金属封
鎖剤としても特にトリポリりん酸塩を選択することが推
奨される。これは、トリポリりん酸塩は、既述のように
他の重合りん酸塩に比較してカルシウム塩の除去能力が
大きい上、洗浄助剤としての機能や金属の腐食を抑制す
る機能を持つことに加え、低分子量であるため、上記フ
ィルターの微孔構造内部を透通してライン全体に行き渡
り、当該フィルター内部を含むライン全体に本来の作用
を充分に及ぼすことができると共に、他の重合りん酸塩
やポリマー系金属封鎖剤に比較して水洗性に優れ、洗浄
後の水洗によって該フィルター内部から確実に除去で
き、残留による危険性がないことによる。
【0031】なお、洗浄対象や洗浄液を取扱う機器の泡
による問題は、上記のエンドトキシン除去フィルターを
設置した場合の他、送液ポンプの泡による作動異常、透
析液及び洗浄液の希釈混合槽における泡の溢れ出し、こ
れら槽に設置した液面センサーの泡による誤作動等があ
り、これらの問題も界面活性剤として上記低起泡性のも
のを選択することによって緩和される。なお、金属封鎖
剤には起泡性がないため、界面活性剤を含まない配合剤
では上記の泡の問題はない。
【0032】前記の水酸化アルカリは、pH上昇によっ
て次亜塩素酸ナトリウムの安定性を増す安定化剤として
機能する共に、次亜塩素酸ナトリウムによる金属腐食を
ある程度抑制する作用を有する成分であり、水酸化ナト
リウム及び水酸化カリウムを好適に使用できる。しかし
て、この水酸化アルカリによる次亜塩素酸ナトリウムの
安定化作用は、有機系の金属封鎖剤を含む系ならびに界
面活性剤を含む系において顕著に発揮され、特に金属封
鎖剤がアミノカルボン酸塩である場合に極めて大きい。
例えば、金属封鎖剤としてニトリロ三酢酸ナトリウムを
用いた配合剤を次亜塩素酸ナトリウム原液(有効塩素濃
度2〜12重量%)に混合したとき、30℃,7日間の
保存による有効塩素残存率は、水酸化アルカリを含まな
い配合剤では35%程度になるが、水酸化アルカリを含
む配合剤では80%以上に向上する。従って、金属封鎖
剤にニトリロ三酢酸アルカリ金属塩を用いた配合剤を上
記原液に混合し、その混合した一週間後(通常の最長保
存期間)に洗浄に供しても、充分な殺菌洗浄力を発揮さ
せることができる。
【0033】このような水酸化アルカリは、配合剤を次
亜塩素酸ナトリウムの前記原液に混合する場合は、その
混合液のpHが12.5〜14.0の範囲になる量に設
定するのがよい。また前記の洗浄に供する希釈液つまり
有効塩素濃度0.02〜0.2重量%の次亜塩素酸ナト
リウム水溶液に混合する場合は、そのpHが11.0〜
12.5の範囲になるように、配合剤中の含有量及び該
配合剤の混合量を設定するのがよい。なお、このpHが
低過ぎては充分な安定化効果が得られず、逆に高過ぎて
は洗浄対象の機器に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0034】前記のケイ酸塩は、次亜塩素酸ナトリウム
による金属腐食の防止剤として顕著な効果を発揮する成
分である。すなわち、既述のように水酸化アルカリも上
記金属腐食をある程度抑制する機能を持つが、このケイ
酸塩を含む配合剤を使用することにより、人工透析機器
やその周辺機器の洗浄に伴う金属腐食を確実に防止で
き、もって該金属腐食による機器の耐久性低下が回避さ
れる。
【0035】このようなケイ酸塩としては、水溶性であ
れば特に制約はないが、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カ
リウムが好適である。しかして、その使用量は、配合剤
を次亜塩素酸ナトリウムの前記原液とその希釈液のいず
れに混合する場合でも、使用効果及び経済性の点から、
洗浄に供する希釈液つまり有効塩素濃度0.03〜0.
2重量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液1リットルに対
して3〜100mgとなる範囲が好適である。
【0036】本発明の洗浄方法に用いる医療機器洗浄液
用配合剤は、水溶液形態又は粉末形態(液状成分を含ま
ない場合)として製品化され、既述のように医療機関に
おいて消毒洗浄原液タンクに収容される高濃度の次亜塩
素酸ナトリウム水溶液(原液…有効塩素濃度0.5〜1
2重量%)又はその希釈水溶液に混合し、有効塩素濃度
0.02〜0.2重量%の洗浄液として人工透析機器や
その周辺機器等の医療機器の洗浄に供されるものであ
る。しかして、この洗浄液は次亜塩素酸ナトリウムによ
る強い殺菌性と金属封鎖剤によるカルシウム塩の溶解除
去性に優れているため、一回の洗浄操作だけで充分な殺
菌洗浄を施すことができ、従来のような酢酸溶液による
二次洗浄を省略できる。
【0037】
【実施例】金属封鎖剤、界面活性剤、水酸化ナトリウム
(NaOH)、ケイ酸ナトリウムの各成分を後記表1,
2記載の割合で配合し、水溶液形態で組成の異なる多数
の医療機器洗浄液用配合剤(No.1〜34)を調製し
た。表1,2中の各成分の配合数値はg数であり、これ
ら成分に水を加えて全量を100mlとしている。な
お、表1,2中の記号で表した金属封鎖剤と界面活性剤
の各成分は次のとおりである。
【0038】〔金属封鎖剤〕 PP1 ・・・トリポリりん酸ナトリウム PP2 ・・・テトラポリりん酸ナトリウム PP3 ・・・ペンタポリりん酸ナトリウム PP4 ・・・ヘキサポリりん酸ナトリウム CA1 ・・・クエン酸ナトリウム CA2 ・・・グルコン酸ナトリウム CA3 ・・・酒石酸ナトリウム CA4 ・・・リンゴ酸ナトリウム PAM ・・・ポリアクリル酸ナトリウム−ポリマレイ
ン酸ナトリウム共重合体(平均子量7000) PA ・・・ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量
7000) NTA ・・・ニトリロ三酢酸ナトリウム EDTA・・・エチレンジアミン四酢酸ナトリウム DTPA・・・ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム
【0039】〔陰イオン界面活性剤〕 AS1 ・・・パラトルエンスルホン酸ナトリウム AS2 ・・・メタキシレンスルホン酸ナトリウム AS3 ・・・ノニルジフェニルエーテルジスルホン酸
ナトリウム AS4 ・・・ポリオキシエチレンノニルフェニル硫酸
ナトリウム(オキシエチレン基数3〜9) AS5 ・・・ポリオキシエチレンドデシル硫酸ナトリ
ウム(オキシエチレン基数3〜9) AS6 ・・・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
(アルキル基の炭素数10〜12)
【0040】〔非イオン界面活性剤〕 NS1 ・・・ポリオキシエチレンデシルフェニルエー
テル(オキシエチレン基数10) NS2 ・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
(アルキル基の炭素数10〜12、オキシエチレン基数
12) NS3 ・・・ポリオキシエチレン−ポリプロピレン
(ポリオキシエチレン重量20%、平均分子量300
0)
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】前記の各配合剤20mlを有効塩素濃度
7.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原液)1
00mlに混和して洗浄原液を調製し、これら洗浄原液
について次亜塩素酸ナトリウムの安定性とカルシウム塩
除去性を調べた。その結果を表3,4に示す。なお、上
記安定性及び除去性は次の方法によって測定した。な
お、No.8の配合剤は界面活性剤に用いたアルキルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム(AS6)の溶解度、N
o.26,27の配合剤は金属封鎖剤に用いたポリアク
リル酸ナトリウム−ポリマレイン酸ナトリウム共重合体
(PAM)の溶解度、がいずれも低く上記原液には完全
溶解しないため、有効塩素濃度2.4重量%の次亜塩素
酸ナトリウム水溶液(前記原液の3倍希釈液)を使用し
た。
【0044】〔次亜塩素酸ナトリウムの安定性〕 洗浄原液を暗所において30℃にて7日間放置後、ヨウ
素滴定法によって塩素量を測定し、この測定値より有効
塩素残留率(%)を求めた。
【0045】〔カルシウム塩除去性〕 洗浄原液に炭酸ナトリウム0.5gを溶解させ、これに
0.25モルの酢酸カルシウムを加えて炭酸カルシウム
を生成させ、この炭酸カルシウムが溶解するように攪拌
を行い、攪拌を続けても液の濁りが消えなくなったとこ
ろを終点とし、この終点が示した値から配合剤20ml
当たりの炭酸カルシウム(CaCO3 )の溶解量(m
g)を求めた。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】表3及び表4より、金属封鎖剤として重合
りん酸塩を用いた配合剤(No.1〜17)を次亜塩素
酸ナトリウムの高濃度水溶液に加えた場合、いずれも次
亜塩素酸ナトリウムの安定性が極めてよいが、カルシウ
ム塩の除去能力に関しては、トリポリりん酸塩(No.
1〜21)は良好であるが、ペンタポリりん酸塩及びヘ
キサポリりん酸塩(No.16,17)はやや劣り、テ
トラポリりん酸塩(No.15)はかなり低いことが判
る。また特に重合りん酸塩と共に非イオン界面活性剤を
含む場合は、この非イオン界面活性剤によって次亜塩素
酸ナトリウムの安定性が若干低下する傾向(No.9,
11,13)が認められるが、水酸化アルカリを加える
こと(No.10,12,14)によって上記安定性の
低下をほぼ防止できることが判る。
【0049】一方、有機系の金属封鎖剤を用いた配合剤
(No.18〜34)を次亜塩素酸ナトリウムの高濃度
水溶液に加えた場合、カルボン酸系の金属封鎖剤では、
グルコン酸塩(No.22)を除いて次亜塩素酸ナトリ
ウムの安定性が極めてよいが、カルシウム塩の除去能力
に関しては、クエン酸塩(No.18〜〜21)は優秀
であるが、他のグルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩
(No.22〜24)は大きく劣ることが判る。またポ
リアクリル酸塩(No.25)とポリアクリル酸塩−ポ
リマレイン酸塩共重合体(No.26,27)について
は、次亜塩素酸ナトリウムの安定性は共に極めてよい
が、カルシウム塩の除去能力はポリアクリル酸塩−ポリ
マレイン酸塩共重合体が非常に優れるのに対し、ポリア
クリル酸塩はかなり劣ることが判る。
【0050】更にアミノカルボン酸塩(No.28〜3
4)は、いずれも卓越したカルシウム塩の除去能力を発
揮するが、次亜塩素酸ナトリウムの安定性を著しく阻害
する欠点がある。しかるに、この欠点は水酸化アルカリ
を加えること(No.29,30,32,34)で大き
く改善され、特にニトリロ三酢酸塩では水酸化アルカリ
の併用(No.29,30)によって上記安定性は充分
なレベルに達することが明らかである。
【0051】次に、実際の洗浄に供する有効塩素濃度
0.1重量%の次亜塩素酸ナトリウム希釈水溶液に対
し、前記の各配合剤を容量比1/300の割合で混和し
て洗浄液を調製し、これら洗浄液について次亜塩素酸ナ
トリウムの安定性、蛋白質及び油脂の汚れに対する洗浄
性、金属に対する腐食性、起泡性、エンドトキシン除去
フィルターに対する成分残留性をそれぞれ調べた。その
結果を表5〜9に示す。なお、上記各項目は次の方法に
よって測定した。
【0052】〔次亜塩素酸ナトリウムの安定性〕 洗浄液を調製した24時間後(室温25℃)に、ヨウ素
滴定法によって塩素量を測定し、この測定値より有効塩
素残留率(%)を求めた。
【0053】〔蛋白質の洗浄性〕 ヘマトクリット毛細管に人血清を塗布し、80℃にて4
時間加熱後、常温まで冷却し、これを洗浄液に浸漬し、
その15分後と20分後にそれぞれアミドブラック10
B呈色試験によって毛細管の付着物の有無を調べた。そ
の結果から、付着物の残留の多い場合を(+)、僅かに
残留している場合を(±)、全く残留が認められない場
合を(−)として評価した。
【0054】〔油脂の洗浄性〕 スライドガラスに、トリグリセライドとしてズダンIII
で着色した大豆油10μlを滴下し、室内で16時間放
置後に洗浄液に浸漬し、ガラス表面から油滴が消失する
までの時間(分)を測定した。
【0055】〔金属に対する腐食性〕 洗浄液を37℃に加温した状態で液中にSUS304ス
テンレス鋼板(50×20×1mm、重量約7.3g)
を5日間浸漬したのち、重量変化を測定すると共に板表
面の状態を観察した。
【0056】〔起泡性〕 洗浄液50mlを100ml共栓付きメスフラスコに入
れて栓をし、このメスフラスコの上下を逆にする操作を
20回繰り返したのち、30秒放置した時点での泡容量
を調べた。
【0057】〔エンドトキシン除去フィルターに対する
成分残留性〕 人工透析設備の患者監視装置の直前にエンドトキシン除
去フィルター(ETCF)を設置したラインにおいて、
透析終了後にラインを1時間水洗(流量500ml/
分)した上で、洗浄液によって30分間の洗浄(流量5
00ml/分)を行い、この洗浄後に水洗(流量500
ml/分)し、この水洗30分後にETCF内の流入側
の水を取り出して陰イオン界面活性剤の残留の程度を調
べると共に、同水洗60分後に同様に水を取り出してト
リポリりん酸ナトリウムの残留の程度を調べた。なお、
試験は、洗浄液として前記表1のNo.1,3〜8,1
2の各配合剤使用の8種、ETCFとして下記A〜Eの
5種、を使用した場合について、それぞれ行った。また
陰イオン界面活性剤とトリポリりん酸ナトリウムの量は
下記方法で検出した。
【0058】〔ETCF(エンドトキシン除去フィルタ
ー)の種類〕 A・・・TET−1.0 (東レ社製、中空糸膜…ポリ
スルフォン) B・・・U−7000 (ガンブロメディカル社製、
同…ポリアミド) C・・・PAN−17DX(旭メディカル社製、同…ポ
リアクリルニトリル) D・・・PS−1.6 (川澄化学社製、同…ポリス
ルフォン) E・・・FLX−12DW(日機装社製、同…ポリエス
テルポリマーアロイ)
【0059】〔検出法〕 陰イオン界面活性剤の量 AS1,AS2・・・吸光光度法(275nm)…検出
限界5ppm AS3〜AS3・・・メチレンブルー吸光光度法トリポ
リりん酸ナトリウムの量 ・・・モリブデン青吸光光度法…検出限界0.1ppm
【0060】
【表5】
【0061】表5の結果から、配合剤を洗浄に供する直
前の次亜塩素酸ナトリウム希釈水溶液に加える場合は、
金属封鎖剤にグルコン酸、アミノカルボン酸を用いたも
のでは次亜塩素酸ナトリウムの効力低下がある程度は認
められるが、他のものでは該効力低下は全くなく、また
アミノカルボン酸でも水酸化アルカリと併用したもの
(No.29,30,32,34)で該効力低下は小さ
く、特にニトリロ三酢酸塩では水酸化アルカリの併用
(No.29,30)によって充分な効力を発揮できる
ことが判る。
【0062】
【表6】
【0063】表6の結果から、金属封鎖剤として重合り
ん酸塩を用いた配合剤(No.1〜17)を加えた洗浄
液は、いずれも蛋白質及び油脂の汚れに対する除去性が
良好であり、界面活性剤を含む配合剤(No.4〜1
7)では油脂汚れの除去性がより向上し、特に非イオン
界面活性剤を用いた配合剤(No.9〜14)が同除去
性に優れることが判る。
【0064】一方、有機系の金属封鎖剤を用いた配合剤
を加えた洗浄液のうち、金属封鎖剤がクエン酸塩(N
o.18〜20)、ポリアクリル酸塩(No.25)、
ポリアクリル酸塩−ポリマレイン酸塩共重合体(No.
26,27)である場合は蛋白質及び油脂汚れの両除去
性が良好であるが、クエン酸塩以外のカルボン酸塩(グ
ルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩…No.22〜2
4)は油脂汚れの除去性に劣ることが判る。また金属封
鎖剤がアミノカルボン酸塩である場合、蛋白質汚れの除
去性は、ニトリロ三酢酸塩(No.28〜30)が良好
であり、他のエチレンジアミン四酢酸塩及びジエチレン
トリアミン五酢酸塩では不良であるが、水酸化アルカリ
の併用(No.32,34)によって改善されることが
判る。また油脂汚れの除去性は、アミノカルボン酸塩単
独ではやや劣るが、界面活性剤の併用(No.30,3
2,34)によって向上することが判る。
【0065】
【表7】
【0066】表7の結果から、配合剤にケイ酸塩を含む
場合(No.3,10,17,20,27,29)は優
れた金属腐食防止効果が得られ、また水酸化アルカリを
含むこと(No.2,19)によっても若干の金属腐食
抑制作用が得られることが判る。
【0067】
【表8】
【0068】表8の結果から、界面活性剤を含む配合剤
を加えた洗浄液の起泡性は、界面活性剤の種類に左右さ
れ、陰イオン界面活性剤のパラトルエンスルホン酸ナト
リウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウムを用いた場
合に洗浄時の発泡が抑えられることが判る。
【0069】
【表9】
【0070】表9の結果から、パラトルエンスルホン酸
ナトリウム(AS1)及びメタキシレンスルホン酸ナト
リウム(AS2)は他の陰イオン界面活性剤(AS3〜
6)に比べて水洗性がよく、また金属封鎖剤のトリポリ
りん酸塩(PP1)も水洗性がよく、エンドトキシン除
去フィルター(ETCF)への残留を防止できることが
判る。従って、該フィルターを設置した透析ラインの洗
浄用として、両者を組み合わせた洗浄液用配合剤(N
o.4,5)が特に好適であることが判る。
【0071】次に、有効塩素濃度0.015重量%の次
亜塩素酸ナトリウム希釈水溶液の各々に対し、前記の各
配合剤を容積比1/300の割合で混和し、これら液に
大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌の3種の菌を5分間接
触させたのち、SCDLP寒天培地「ダイゴ」に植種
し、37℃,48時間後の各菌の成育の有(+)無
(−)を調べた。その結果を表10に示す。
【0072】
【表10】
【0073】表10の結果から、金属封鎖剤として重合
りん酸塩(No.1,3,5,8,10,11,15〜
17)、クエン酸塩(No.19)、酒石酸塩(No.
23)、リンゴ酸塩(No.24)、ポリアクリル酸塩
(No.25)、ポリアクリル酸塩−ポリマレイン酸塩
共重合体(No.26)、ニトリロ三酢酸塩(No.2
8)を用いた配合剤は、いずれも次亜塩素酸ナトリウム
の殺菌性を阻害しないことが判る。これに対し、金属封
鎖剤としてグルコン酸塩(No.22)、エチレンジア
ミン四酢酸塩(No.31)、及びジエチレントリアミ
ン五酢酸塩(No.33)を用いた配合剤は上記殺菌性
を阻害するが、後2者のアミノカルボン酸塩でも水酸化
アルカリを併用した配合剤(No.32,34)では上
記殺菌性を阻害しないことが判る。
【0074】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、エンドトキシ
ン除去フィルターを付設した人工透析ラインの洗浄にお
いて、特定の金属封鎖剤を含む医療機器洗浄液用配合剤
を次亜塩素酸ナトリウム水溶液に混合して、有効塩素濃
度0.02〜0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム及び
金属封鎖剤を含む洗浄液を調製し、この洗浄液によって
洗浄することから、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌力を充
分に発揮できると共に、炭酸カルシウム等のカルシウム
塩を効率よく除去でき、また蛋白質及び油脂の汚れも良
好に洗浄できる上、洗浄液中の金属封鎖剤成分がエンド
トキシン除去フィルターに残留することがなく、安全性
の高い洗浄方法が提供される。
【0075】請求項2の発明によれば、前記洗浄方法に
おいて、医療機器洗浄液用配合剤として金属封鎖剤と共
に水酸化アルカリを含有するものを使用することから、
金属封鎖剤が有機系である場合の調製した洗浄剤におけ
る次亜塩素酸ナトリウムの安定性がよく、特に金属封鎖
剤がニトリロ三酢酸アルカリ金属塩である場合の該安定
性が著しく向上する上、界面活性剤の共存下での同安定
性も改善され、もって洗浄時の次亜塩素酸ナトリウムに
よる殺菌力を充分に発揮でき、また洗浄液による金属の
腐食を緩和できる。
【0076】請求項3の発明によれば、前記洗浄方法に
おいて、医療機器洗浄液用配合剤として金属封鎖剤と共
にケイ酸塩を含有するものを使用することから、人工透
析ラインにおける金属部分の腐食を著しく抑制できる。
【0077】請求項4の発明によれば、前記洗浄方法に
おいて、金属封鎖剤と共に特定の陰イオン界面活性剤を
含む配合剤を使用して調製した洗浄液を用いることか
ら、上記のエンドトキシン除去フィルターを充分に洗浄
できると共に、洗浄時の起泡による問題を殆ど生じず、
しかも洗浄後の水洗によって該フィルターに対する洗浄
剤成分の残留を防止でき、もって残留成分が患者の血液
中に持ち込まれる危険性を排除でき、洗浄の信頼性及び
安全性を確保できる。
【0078】請求項5の発明によれば、前記洗浄方法に
おいて、洗浄液1リットル中の金属封鎖剤を50mg以
上とすることから、エンドトキシン除去フィルターが付
設された人工透析ラインに付着したカルシウム塩を確実
に除去できる。
【0079】請求項6の発明によれば、前記洗浄方法に
おいて、有効塩素濃度0.05〜12重量%の次亜塩素
酸ナトリウムの水溶液に、ニトリロ三酢酸アルカリ金属
塩よりなる金属封鎖剤と水酸化アルカリを含有する医療
機器洗浄液用配合剤を混合し、この混合液を希釈して前
記洗浄液を調製することから、次亜塩素酸ナトリウムの
分解を生じ易いニトリロ三酢酸アルカリ金属塩を次亜塩
素酸ナトリウムの濃厚液に加えるにもかかわらず、該分
解を抑えて高い殺菌洗浄性を発揮させ、且つニトリロ三
酢酸アルカリ金属塩による優れたカルシウム塩除去性を
確保できる。
【0080】請求項7の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、有効塩素濃度0.05〜12重量%の次亜塩素
酸ナトリウムの水溶液に、金属封鎖剤と界面活性剤及び
水酸化アルカリを含有する医療機器洗浄液用配合剤を混
合し、この混合液を希釈して前記洗浄液を調製すること
から、次亜塩素酸ナトリウムの安定性低下につながる界
面活性剤を次亜塩素酸ナトリウムの濃厚液に加えるにも
かかわらず、次亜塩素酸ナトリウムの殺菌力低下を抑制
して、且つ界面活性剤による良好な洗浄性を確保でき
る。
【0081】請求項8の発明によれば、有効塩素濃度
0.05〜12重量%の次亜塩素酸ナトリウムの水溶液
に、水酸化アルカリを含有する医療機器洗浄液用配合剤
を混合する上記洗浄方法において、洗浄対象の機器に悪
影響を及ぼすことなく、水酸化アルカリによる次亜塩素
酸ナトリウムの安定性改善効果を確実に発揮させること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C11D 3/395 C11D 3/395 3/48 3/48 7/10 7/10 7/26 7/26 7/32 7/32 (56)参考文献 特開 平4−135559(JP,A) 特開 昭55−71798(JP,A) 特開 昭61−197698(JP,A) 特開 昭61−197699(JP,A) 特開 昭63−273700(JP,A) 特開 平2−308898(JP,A) 特開 平6−220496(JP,A) 特開 平4−261500(JP,A) 特開 平7−233396(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C11D 7/16 C11D 3/06 C11D 3/20 C11D 3/28 C11D 3/395 C11D 3/48 C11D 7/10 C11D 7/26 C11D 7/32

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属封鎖剤として重合りん酸塩、ニトリ
    ロ三酢酸アルカリ金属塩、クエン酸塩より選ばれる少な
    くとも一種を含む医療機器洗浄液用配合剤を、次亜塩素
    酸ナトリウム水溶液に混合して、有効塩素濃度0.02
    〜0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム及び金属封鎖剤
    を含む洗浄液を調製し、この洗浄液によってエンドトキ
    シン除去フィルターが付設された人工透析ラインの洗浄
    を行うことを特徴とする医療機器の洗浄方法。
  2. 【請求項2】 金属封鎖剤と共に水酸化アルカリを含む
    医療機器洗浄液用配合剤を使用して前記洗浄液を調製す
    る請求項1記載の医療機器の洗浄方法。
  3. 【請求項3】 金属封鎖剤と共にケイ酸塩を含む医療機
    器洗浄液用配合剤を使用して前記洗浄液を調製する請求
    項1又は2に記載の医療機器の洗浄方法。
  4. 【請求項4】 金属封鎖剤と共に界面活性剤としてパラ
    トルエンスルホン酸塩又は/及びメタキシレンスルホン
    酸塩を含む医療機器洗浄液用配合剤を使用して前記洗浄
    液を調製する請求項1〜3のいずれかに記載の医療機器
    の洗浄方法。
  5. 【請求項5】 医療機器洗浄液用配合剤の混合量は、前
    記洗浄液1リットル中の金属封鎖剤が50mg以上とな
    るように設定する請求項1〜4のいずれかに記載の医療
    機器の洗浄方法。
  6. 【請求項6】 有効塩素濃度0.5〜12重量%の次亜
    塩素酸ナトリウムの水溶液に、ニトリロ三酢酸アルカリ
    金属塩よりなる金属封鎖剤と水酸化アルカリを含有する
    医療機器洗浄液用配合剤を混合し、この混合液を希釈し
    て前記洗浄液を調製する請求項2記載の医療機器の洗浄
    方法。
  7. 【請求項7】 有効塩素濃度0.5〜12重量%の次亜
    塩素酸ナトリウムの水溶液に、金属封鎖剤と界面活性剤
    及び水酸化アルカリを含有する医療機器洗浄液用配合剤
    を混合し、この混合液を希釈して前記洗浄液を調製する
    請求項4記載の医療機器の洗浄方法。
  8. 【請求項8】 医療機器洗浄液用配合剤中の水酸化アル
    カリにより、前記混合液のpHを12.5〜14.0の
    範囲に調整する請求項6又は7に記載の医療 機器の洗浄
    方法。
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