JP2838730B2 - 人工透析の医療機器の消毒洗浄剤 - Google Patents

人工透析の医療機器の消毒洗浄剤

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JP2838730B2 JP2257926A JP25792690A JP2838730B2 JP 2838730 B2 JP2838730 B2 JP 2838730B2 JP 2257926 A JP2257926 A JP 2257926A JP 25792690 A JP25792690 A JP 25792690A JP 2838730 B2 JP2838730 B2 JP 2838730B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は医療機器、特に人工透析装置、及びその周辺
機器・器具の消毒と洗浄に関するものである。
[従来の技術] 人工透析装置及びその周辺機器・器具等には血液、リ
ンパ液、汗、尿等が付着し、これらの中には蛋白質や脂
肪も含まれ、特に異種蛋白質はシヨック死及びアナフラ
キシーの原因になりやすいので、これら付着物を消毒し
かつ洗浄する必要があり、汚染に際しては随時清拭、消
毒を行ない、さらに定期的に清拭、消毒を行なうことが
望まれるのである。
また、透析液供給装置、透析液供給ライン、特に患者
監視装置(内部透析液配管)の汚れは配管内の細菌繁殖
にもつながり、エンドトキシンによる患者発熱の原因と
なる可能性もあり、さらに最近ではハイパフオーマンス
メンブレン透析器使用によるバックフイルトレーション
現象からもより完全な透析器配管の洗浄と消毒が必要と
なって来ているのである。
そしてまた、最近の重曹透析液の普及により配管内に
炭酸カルシウム等のカルシウム塩が析出し、これによっ
て患者監視装置のトラブル発生があるので、その予防に
留意する必要が生じるのである。
従来、これらの付着物、析出物を消毒・洗浄する薬剤
としては主としてホルマリン、次亜塩素酸ナトリウム、
クレゾール石けん液、ステリハイド(グルタラール系の
薬剤)等が使用されていたのである。
しかしながら、これらの薬剤はいずれも殺菌力は有す
るものの、チューブ等に付着する蛋白質や脂肪、及びカ
ルシウム塩等の剥離・分解・除去による洗浄力はほとん
どないのである。
またカルシウム塩は酢酸洗浄によって除去されている
がこの酢酸は金属腐食性があり機器の損傷を早めるし、
さらに排水時の終末処理に対する悪影響、法的排水制限
などの問題もあり、常時かつ連続して使用するには多く
の問題点を有しているのである。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、上記の様な従来の消毒・洗浄剤の問題点を
解決しようとするものであり、極めてすぐれた消毒洗浄
力を有し、蛋白質や脂肪を剥離・分解して除去し、かつ
安定性にもすぐれているという人工透析の医療機器の消
毒洗浄剤を提供しようとするものである。
しかも、最近普及して来たハイパフオーマンスメンブ
レン透析器によって血中から除去されて来る低分子蛋白
質に起因する配管内の著るしい汚れと細菌繁殖等に対し
ても分解洗浄効果を発揮し、患者監視装置のトラブル頻
発の防止とこれによる医療スタッフの精神的負担の軽減
を得ようとするものである。
さらに前記した重曹透析液の普及により配管内に析出
する炭酸カルシウム等のカルシウム塩を除去でき、金属
腐食や公害問題の要因となる酢酸洗浄を行なうことなし
に、カルシウム塩という患者監視装置のトラブル要因も
排除しようとするものである。
[課題を解決するための手段] 上記の目的を達成するために種々検討した結果、ある
特定のアニオン界面活性剤を殺菌剤としての次亜塩素酸
ナトリウム液に配合し、これに金属封鎖剤としてのエチ
レンジアミン四酢酸塩を同時に配合することにより、こ
れらの薬剤を別々に使用した場合に比べて大きな相乗効
果が発揮でき、消毒と洗浄が同時に達成され、蛋白質や
脂肪の剥離・分解による除去、及びカルシウム塩の除去
効果も得られるなど、従来の問題点を一挙に解決できる
ことを見い出したのである。
すなわち本発明は、アルキルエーテル硫酸エステル塩
またはアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩系のア
ニオン界面活性剤、次亜塩素酸ナトリウムとその安定
剤、及びエチレンジアミン四酢酸塩を必須成分として含
有することを特徴する人工透析の医療機器の消毒洗浄
剤、を要旨とするものである。
本発明の最大の特徴は、従来から殺菌消毒剤として使
用されている次亜塩素酸ナトリウムに特定のアニオン界
面活性剤を配合したことである。
つまり、強力な酸化剤でありかつその安定剤として加
えられる強アルカリ剤によってアルカリ性となっている
次亜塩素酸ナトリウム液に、その洗浄力を向上させる界
面活性剤を配合することは、界面活性剤が分解してしま
うため不可能であるという従来からの常識を打破したこ
とである。
すなわち、各種の界面活性剤と、アルカリ剤を含む次
亜塩素酸ナトリウムとの配合試験を繰返し実験した結
果、アルキルエーテル硫酸エステル塩またはアルキルフ
ェニルエーテル硫酸エステル塩系のアニオン界面活性剤
(以下、単に「特定アニオン」と略す)を使用すること
により、この特定アニオンは次亜塩素酸ナトリウムと安
定に共存し得ることを見い出し、両者の相乗効果により
その洗浄力を大幅に向上できることを知見したのであ
る。
この特定アニオンは下記の如き一般式を有するもので
ある。
一般式 但し、上記の一般式においてRは炭素数6〜18のアル
キル基を示し、nは5〜10の整数を示している。
この特定アニオン以外のアニオン活面活性剤は強アル
カリ剤を含む次亜塩素酸ナトリウム液に配合すると、そ
の酸化力により分解して界面活性剤としての作用がなく
なると同時にこの酸化によって次亜塩素酸ナトリウムの
消毒効果も低下するのである。
前記した様な特定アニオンは、強アルカリ剤を含む次
亜塩素酸ナトリウム液に配合しても分解が起らず、この
特定アニオンの洗浄力と次亜塩素酸ナトリウムとが相乗
的に作用して機器の配管内に付着している蛋白質や脂肪
の除去効果が殺菌消毒と同時に達成されるのである。
なお、透析機器やその配管・チューブなどを次亜塩素
酸ナトリウムで殺菌することは義務付けられており、こ
の次亜塩素酸ナトリウム自体も殺菌力と同時に洗浄力を
有しており、上記の特定アニオンの配合によりその洗浄
力が大幅に向上するのである。
またこの特定アニオンだけではなく、比較的耐酸化・
耐アルカリ性にすぐれているノニオン界面活性剤を併用
すると洗浄力の向上は一層増大し得るものとなる。
このノニオン界面活性剤としてはポリオキシエチレン
アルキルエーテル系のものが好ましく、例えばエチレン
オキサイドの5〜10モル付加物のポリオキシエチレンラ
ウリルエーテル等が好適に使用できるものである。
しかし、このノニオン界面活性剤は泡立ちやすいとい
う欠点があり、必ずしも併用する必要はなく併用すると
してもその配合量は前記特定アニオンの半分以下が好ま
しいものである。
次に、本発明洗浄剤に配合される次亜塩素酸ナトリウ
ムは、その酸素及び塩素による殺菌・分解力の主剤とな
るものである。
一般に脂肪や蛋白質等の有機物が介在しない状態では
1〜6ppmの低い水準の有効塩素量でウイルス、藻類、無
胞子殺菌など全ての微生物を殺菌することが可能である
が、有機物が存在すると殺菌能力が著しく低下し、20〜
100倍の有効塩素を必要とするのである。
本発明においては脂肪や蛋白質が存在する条件で洗浄
することを目的としているため、この次亜塩素酸ナトリ
ウムの配合量は増量しているものの、前述した特定アニ
オンの配合により、その増量を極力抑えることができる
様になっているのである。
なお、次亜塩素酸ナトリウムの大幅な増量は機器内部
の部材に著しい損傷を与えることは言うまでもない。
また、この次亜塩素酸ナトリウムはpHが5以下になる
と不安定になり塩素ガスを発生するので、必ず苛性ソー
ダ等の安定剤を併用することが必要になるのである。
次に本発明に使用するエチレンジアミン四酢酸塩は通
常、エチレンジアミン四酢酸の2ナトリウム塩(以下、
単にEDTAと略す)を用いれば良く、このEDTAは金属イオ
ンを封鎖するキレート化剤として知られている。
つまり、このEDTAは炭酸カルシウム等のカルシウム塩
を取除くために配合されたものであり、キレート化され
にくいカルシウムイオンをキレート化し得るものであっ
て、pH領域が8〜10のアルカリ側においてカルシウムイ
オンをキレート化して取除くと同時に再付着を防止する
作用を発揮するのである。
このEDTA以外のキレート化剤(例えば、クエン酸、ピ
ロリン酸、トリポリリン酸ソーダ等)はpHが3〜5以下
の酸性領域でのみカルシウムをキレート化するが本発明
洗浄剤の如きアルカリ領域ではキレート化剤として全く
作用しないのである。
本発明は以上の様に、特定アニオン、次亜塩素酸ナト
リウムとその安定剤、及びEDTAを必須成分とするもので
あるが、その適当な配合組成は下記の通りである。
特定アニオン … 5〜20 % 次亜塩素酸ナトリウムの12%液 … 40〜80 % 安定剤(NaOHの25%液) …3〜6 % EDTA …0.2〜1.0% 蒸留水 … 残量% なお、本発明洗浄剤は上記配合のものを実際の使用に
あたっては35〜140倍、好適には約70倍に稀釈して用い
るものであり、以下の配合組成の説明はこの稀釈を前提
として述べるものである。
上記配合において、特定アニオンが5%未満では洗浄
力向上が得にくくまた20%をこえて配合しても効果の向
上は比例して増大することはなく、通常10%前後が最も
適切である。
また次亜塩素酸ナトリウム12%液の配合が40%未満で
は脂肪、蛋白質存在下での殺菌・洗浄力が低下し、一方
80%をこえる配合では安定性が悪くなり有効塩素のロス
率が大きく、最も適切な配合量は60%前後となってい
る。
さらに、次亜塩素酸ナトリウムの安定化を得るための
安定剤の配合割合は次亜塩素酸ナトリウムの配合量に比
例して増減すれば良く、通常25%苛性ソーダ液を用いる
場合3〜6%位が適切であり、多く配合しすぎると金属
腐食性が出て来るし、少なすぎる場合は次亜塩素酸ナト
リウムの安定性が悪くなるのである。
次にEDTAはごく僅かの量で有効であり、1.0%以上は
不必要であって、0.2%未満ではカルシウム塩の除去が
充分には達成できないのである。
なお、ノニオン界面活性剤を配合する場合は前述した
如く特定アニオンの半分以下の配合率が適切であり、多
くなると発泡性が出て好ましくないのである。
[作用] 本発明は以上の如き構成からなり、その大きな特徴は
次亜塩素酸ナトリウム液にこれと共存し得る特定アニオ
ンを配合し、しかもアルカリ領域においてカルシウム塩
をキレート化できるEDTAを添加したことである。
その結果、特定アニオンと次亜塩素酸ナトリウムとが
相乗的に作用して、人工透析の医療機器の配管内などに
脂肪や蛋白質が付着・沈着していても次亜塩素酸ナトリ
ウムの消毒殺菌力は充分発揮され、しかも特定アニオン
の作用によりこの付着・沈着している脂肪や蛋白質が剥
離されやすくなり分解・洗浄されて取り除かれるのであ
る。
そして同じく配管内などに沈着しているカルシウム塩
はEDTAによるキレート化によって剥離され容易に除去で
きると共に再付着防止の効果が得られるのである。
このカルシウム塩が容易に除去できるので、従来の酢
酸洗浄は不要となり、したがって金属腐食による機器の
損傷はほとんどなく、酢酸の排出による環境汚染の問題
も発生しなくなるのである。
[実施例] 特定アニオンとして下記の化学構造式のものを使用し
た。
洗浄剤調製 次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)12%液を40%、60
%、80%の各配合に対して、上記特定アニオンを0%、
5%、10%、20%の各濃度に配合した消毒洗浄剤をそれ
ぞれ調製した。
なお、安定剤は25%苛性ソーダ液を4%、EDTAは0.5
%にそれぞれ配合した。
これら各配合液を70倍に稀釈して洗浄浸漬液とした。
試験法 人工透析チューブに脂肪、蛋白質、炭酸カルシウムが
均一に付着しているものを3.5cmに輪切し、さらにタテ
割に2等分したものをテストピースとし、その重量を静
秤した。
このテストピースを各々洗浄浸漬液に浸漬し測定時間
に対応して取り出し、これを乾燥して精秤し、浸漬前の
重量との差により付着物の除去率を求め、洗浄力を対比
した。
その結果をグラフに示すと第1図〜第3図の如くであ
った。
これらのグラフより12%次亜塩素酸ナトリウムの配合
は60%で充分であり80%配合とあまり変らず、40%配合
では洗浄力はやや低下することが認められる。
また、特定アニオンの配合%は10%が最も良く20%に
なるとやや洗浄力は低下し、5%では洗浄力はかなり低
下することが認められるが、次亜塩素酸ナトリウム単独
の場合に比べると効果は大きくなっていることが判る。
なお、特定アニオンを30%とする実験も行なったが汚
れの再付着現象があり効果は良くなかったのである。
この結果、次亜塩素酸ナトリウム12%液の濃度は60%
前後が好適で、特定アニオンの濃度は10%位が最適であ
り、両者を併用することが極めて有効であることが確認
できたのである。
また、第4図のグラフは特定アニオン単独で同様な実
験を行なったものであり、この特定アニオン単独では洗
浄効果が低いことが示されている。
つまり、次亜塩素酸ナトリウムと特定アニオンをそれ
ぞれ単独で使用するよりも、併用して使用することによ
り相乗効果が発現することが認められるのである。
さらに第5図のグラフは特定アニオンを10%とし12%
次亜塩素酸ナトリウムの量を40%、60%、80%とした洗
浄剤、及び12%次亜塩素酸ナトリウム60%単独の場合の
それぞれの経時変化、つまり有効塩素量の月数による低
下状況を示したものである。
なお、その保存条件は36℃の恒温器中にて紫外線カッ
トして行なったものである。
このグラフより特定アニオンの配合は安定性向上にも
有効であり、また12%次亜塩素酸ナトリウムの配合は60
%の場合が最も安定であると判断されるのである。
つまり、12%次亜塩素酸ナトリウムの配合は洗浄力だ
けから判断すれば60%よりも80%の方がやや良好である
が、安定性を考慮すれば前記の60%が好適であるとの認
定が正しいものと言えるのである。
[発明の効果] 本発明の効果については、これまでの説明において種
々述べて来たが、簡単にまとめて列挙すれば下記の通り
である。
(a)本発明洗浄剤は次亜塩素酸ナトリウム単剤と同程
度の殺菌・消毒作用を有している。
(b)しかも配管内に付着・沈着している脂肪や蛋白質
を剥離・分解して洗浄する能力を持っている。
(c)さらに、配管内に沈積しているカルシウム塩をキ
レート化して取除き再付着を防止する効果も有してい
る。
(d)有効塩素量の経時低下が少なく安定性にもすぐれ
ている。
これらの作用効果は、特定アニオンと次亜塩素酸ナト
リウムとを共存配合したことによる相乗効果とEDTAの配
合により達成されたものであり、殺菌繁殖となる蛋白質
及び脂肪を洗浄して取除くと同時に消毒殺菌も行ない、
しかもカルシウム塩も排除できるという従来の問題点を
一挙に解決したものである。
その結果、人工透析における透析液供給装置、透析液
供給ライン、患者監視装置(内部透析液配管)等の汚れ
は容易に洗浄でき、エンドトキシンによる患者発熱の原
因も排除され、ハイパフオーマンスメンブレン透析器の
使用によるバックフイルトレーション現象にも充分に対
処でき、ウイルス汚染器具による二次感染や院内感染の
予防にも重要な役割を果すのである。
さらに本発明洗浄剤は、最近の重曹透析液の普及によ
る配管内に沈積するカルシウム塩の除去もできるので、
従来の酢酸洗浄は不要となり、そのため金属腐食による
機器や配水管、下水道等の破損も大幅に軽減され、公害
防止上もすぐれた効果を奏するのである。
以上の様に本発明は種々なるすぐれた効果を有し、人
工透析の医療機器の消毒洗浄剤として極めて高い有用性
を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第3図は実施例におけるテストピースの付着物
除去率と浸漬時間の関係を示した洗浄効果のグラフであ
り、第1図は12%次亜塩素酸ナトリウムが60%の場合、
第2図は同じく80%の場合、第3図は同じく40%の場合
をそれぞれ示している。 第4図は特定アニオン単独配合の場合を同様にして示し
た洗浄効果のグラフである。 第5図は本発明洗浄剤の経時的有効塩素量の変化を次亜
塩素酸ナトリウム単独の場合と比較して示した安定性の
グラフである。 (a)……特定アニオン添加量、 (b)……12%NaClO添加量
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C11D 1/14 C11D 1/14 1/24 1/24 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61L 2/18 C11D 1/12 - 1/30,7/54,7/32 A61M 1/00 - 1/36

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルキルエーテル硫酸エステル塩またはア
    ルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩系のアニオン界
    面活性剤、次亜塩素酸ナトリウムとその安定剤、及びエ
    チレンジアミン四酢酸塩を必須成分として含有すること
    を特徴とする人工透析の医療機器の消毒洗浄剤。
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