JP3050049B2 - 記録用インク - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、水、グリセリン、プロ
ピレングリコールを含む溶媒中に、着色材である顔料を
分散させてなる記録用インクに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、インクジェット記録方式に用いる
インクとしては、特開昭６３−５１４８５号公報、特開
昭６３−５６５７５号公報、特開平１−１９８６７１号
公報等に示されているように、各種の水溶性染料を水単
体、あるいは水および水溶性溶剤からなる溶媒中に溶解
し、必要に応じて各種添加剤を添加したものが主流とな
っている（以下、このようなインクのことを染料インク
と記述する）。染料インクを用いて実際に印字を行った
場合、被記録媒体上での記録画像の耐水性、耐光性が悪
いなどの問題点があった。

【０００３】そこで、染料インクの問題点である記録画
像の耐水性、耐光性を改善するために、着色剤として染
料のかわりにカーボンブラックやジアゾイエローなどの
顔料を用いたインク（以下、顔料インクと記述する）を
インクジェット記録方式に適用することが特開昭５７−
１０６６０号公報、特開昭５７−１０６６１号公報、特
公平１−１５５４２号公報、特開平２−２５５８７５号
公報、特開平２−２７６８７６号公報等に示されてい
る。顔料インクは樹脂などを使用することで顔料が紙な
どの被記録媒体に固着するため、顔料インクの耐水性は
染料インクよりも優れている。また、顔料は染料と比較
して光に対する反応性が低いため、顔料インクの耐光性
は染料インクに比べ優れている。

【０００４】ところで、インクジェット記録方式とは、
極めて細い流路にインクを満たしておき、その流路に瞬
間的に物理的な力を加えることで流路の先端部のノズル
からインクの液滴を噴射し、その液滴が紙などの被記録
媒体に着弾することで記録を行う方式である。このイン
クジェット記録方式では、ノズルにおいて溶媒が蒸発
し、顔料が残ることによってノズルが詰まり、記録が不
能となる場合がある。そこでインクジェット記録用イン
クにはノズルの詰まり防止を目的として、低揮発性の水
溶性溶剤を加えることが一般的に行われている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、インクジェ
ット記録方式に限らず、記録用インクは記録を行った後
は、インクによってプリンタやユーザーの手などが汚れ
ることが無いように、早急に乾燥することが求められ
る。しかし、インクに低揮発性の溶剤が加えられた場
合、記録を行った後も被記録媒体上において溶剤成分が
蒸発しにくく、よって記録後の早急な乾燥が実現できな
いこととなる。

【０００６】本発明は、上述した問題点を解決するため
になされたものであり、ノズルの目詰まり防止と、記録
後の被記録媒体上での早期乾燥の双方を実現する記録用
インクを提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明の請求項１では、水、グリセリン、プロピレン
グリコールを含む溶媒中に、着色材である顔料を分散さ
せてなる記録用インクであって、前記グリセリンの含有
量をＸ重量％、前記プロピレングリコールの含有量をＹ
重量％としたときに、次の３つの式、１０≦Ｘ≦２０、
３≦Ｙ≦４７、３０≦Ｘ＋Ｙ≦４０を全て満たすことを
特徴とする。

【０００８】請求項２では、インクを噴射して被記録媒
体に印字を行うインク噴射装置に用いられる記録用イン
クであって、水、グリセリン、プロピレングリコールを
含む溶媒中に、着色材である顔料を分散させてなり、前
記グリセリンの含有量をＸ重量％、前記プロピレングリ
コールの含有量をＹ重量％としたときに、次の３つの
式、３≦Ｘ≦２５、３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ＋Ｙ≦５０
を全て満たすことを特徴とする。

【０００９】

【作用】上記の構成を有する本発明の記録用インクで
は、前記グリセリンの含有量をＸ重量％、前記プロピレ
ングリコールの含有量をＹ重量％としたときに、次の３
つの式、１０≦Ｘ≦２０、３≦Ｙ≦４７、３０≦Ｘ＋Ｙ
≦４０を全て満たすことによって、記録後の被記録媒体
上で早期に乾燥される。

【００１０】また、インクを噴射して被記録媒体に印字
を行うインク噴射装置に用いられる記録用インクにおい
て、前記グリセリンの含有量をＸ重量％、前記プロピレ
ングリコールの含有量をＹ重量％としたときに、次の３
つの式、３≦Ｘ≦２５、３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ＋Ｙ≦
５０を全て満たすことによって、ノズルの目詰まりが防
止され、記録後の被記録媒体上で早期に乾燥される。

【００１１】

【実施例】本発明の記録用インクは、水を主としてグリ
セリン、プロピレングリコールを含有する溶媒と、着色
剤としての顔料とからなる記録用インクであるが、一般
的にはさらに分散剤およびその他の添加剤も添加され
る。分散剤は顔料を溶媒中で分散させるものであり、添
加剤は、例えば顔料粒子の凝集を防いだり、印字後の耐
水性を向上させるものである。

【００１２】本発明の記録用インクに使用できる溶媒は
水、グリセリン、およびプロピレングリコールからなる
混合物である。

【００１３】また、本発明の記録用インクに使用するこ
とのできる顔料は特に限定されるものではなく、例え
ば、白黒用としては、ファーネスブラック、ランプブラ
ック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカ
ーボンブラック類、または銅、鉄、酸化チタン等の金属
類、アルトニトロアニリンブラック等の有機顔料が挙げ
られる。さらにカラー用としてはトルイジンレッド、パ
ーマネントカーミンＦＢ、ファストイエロＡＡＡ、ジス
アゾオレンジＰＭＰ、レーキレッドＣ、ブリリアントカ
ーミン６Ｂ、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッ
ド、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブル
ー、アルカリブルートナー、ファーストイエロー１０
Ｇ、ジスアゾエローＡＡＭＸ、ジスアゾエローＡＡＯ
Ｔ、ジスアゾエローＡＡＯＡ、黄色酸化鉄、ジスアゾエ
ローＨＲ、オルトニトロアニリンオレンジ、ジニトロア
ニリンオレンジ、バルカンオレンジ、トルイジンレッ
ド、塩素化パラレッド、ブリリアンファーストスカーレ
ット、ナフトールレッド２３、ピラゾロンレッド、バリ
ウムレッド２Ｂ、カルシウムレッド２Ｂ、ストロンチウ
ムレッド２Ｂ、マンガンレッド２Ｂ、バリウムリソーム
レッド、ピグメントスカーレッド３Ｂレーキ、レーキボ
ルドー１０Ｂ、アンソシン３Ｂレーキ、アンソシン５Ｂ
レーキ、ローダミン６Ｇレーキ、エオシンレーキ、べん
がら、ファフトールレッドＦＧＲ、ローダミンＢレー
キ、メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレ
ッド、ベーシックブルー５Ｂレーキ、ベーシックブルー
６Ｇレーキ、ファストスカイブルー、アルカリブルーＲ
トナー、ピーコックブルーレーキ、紺青、群青、レフレ
ックスブルー２Ｇ、レフレックスブルーＲ、ブリリアン
トグリーンレーキ、ダイアモンドグリーンチオフラビン
レーキ、フタロシアニングリーンＧ、グリーンゴール
ド、フタロシアニングリーンＹ、酸化鉄粉、さびこ、亜
鉛華、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリ
ウム、アルミナ、アルミナホワイト、アルミニウム粉、
ブロンズ粉、昼光けい光顔料、パール顔料、ナフトール
カーミンＦＢ、ナフトールレッドＭ、パーマネントカー
ミンＦＢ、ファストエロＧ、ジスアゾエローＡＡＡ、ジ
オキサンバイオレッド、アルカリブルーＧトナー等、そ
の他顔料表面を樹脂等で処理したグラフトカーボン等の
加工顔料等が使用できる。これらは場合によっては２種
類以上を混合することもできる。

【００１４】分散剤としては、アニオン性界面活性剤、
カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界
面活性剤、高分子系界面活性剤、高分子重合物などを使
用することができる。

【００１５】アニオン性界面活性剤としては、アルキル
硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等
が使用できる。

【００１６】カチオン性界面活性剤としては、塩化アル
キルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチル
アンモニウム等が使用できる。

【００１７】両性界面活性剤としては、アルキルジメチ
ルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサ
イド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミ
ダゾリウムベタイン等が使用できる。

【００１８】ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチ
レンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフ
ェニルエーテル、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロ
ピレングリコール、ポリオキシプロピレンアルキルエー
テルなどが使用できる。

【００１９】高分子系界面活性剤としては、高分子量ポ
リウレタン、ポリエステル系などが、高分子重合物とし
ては顔料に親和性のある官能基（例えばカルボニル基、
アミノ基など）を持つものが使用できる。

【００２０】また、水溶性樹脂を分散剤として使用する
こともできる。その例としてはセルロース樹脂、アクリ
ル樹脂、シリコン樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。こ
れらの水溶性樹脂は顔料を被記録媒体に固着させるため
の固着剤としても添加できる。

【００２１】その他、必要に応じてｐＨ調整剤を使用
し、そのｐＨ調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化
物、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、プロパノールアミンなどの低級アルカノ
ールアミン、水酸化アンモニウム、リン酸二水素カリウ
ム等を使用できる。

【００２２】また、防カビ、防腐等の目的で、フェノー
ル系化合物、安息香酸ナトリウム等を使用でき、防錆の
目的で、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）等を使用
できる。

【００２３】以上、溶媒、顔料、分散剤、その他の成分
について例示したが、本発明はこの例に限定されるもの
ではない。

【００２４】以下に本発明の記録用インクの具体的な実
施例、および比較例について説明する。

【００２５】まず、表１に示されている実施例１の記録
用インクの製造方法を説明する。純水、グリセリン、プ
ロピレングリコールからなる溶媒に分散剤ＢＹＫ−１５
４、樹脂ポリビニルアルコールＢ０３を溶解させ、その
後に顔料ＰＲＩＮＴＥＸ９０を添加し、ビーズミルを使
用して分散を行う。以上の過程を経ることで実施例１の
インクが得られる。他の実施例および比較例についても
同様に製造した。なお、製造方法はこの方法だけには限
定されない。

【００２６】表１〜３に本発明による実施例１〜１８、
および比較例１〜１８の組成を示した。

【００２７】

【表１】

【００２８】

【表２】

【００２９】

【表３】

【００３０】次に、実施例１〜１８、および比較例１〜
１８として作製した各インクについて以下の項目の評価
を行った。

【００３１】まず、記録前のノズルにおける乾燥状態
（以下、ノズル乾燥と記す）を評価した。ノズル乾燥の
評価は前記のインク噴射用の細い流路にインクを充填
し、放置した際、記録が可能である放置時間を時間を測
定する事で行い、その基準は次の通りとした。 ・１２０秒以上放置しても記録が可能である・・・○
（優） ・６０秒以上１２０秒未満の時間放置すると記録が不可
能となる・・・○△（良） ・３０秒以上６０秒未満の時間放置すると記録が不可能
となる・・・△（不可） ・３０秒未満放置しただけで記録が不可能となる・・・
×（不良） 次に、被記録媒体上における乾燥状態（以下、紙面乾燥
と記す）を評価した。紙面乾燥の評価はコピー用紙（Ｘ
ＥＲＯＸ社製Ｌ紙）に１．５ミリグラム／平方センチメ
ートルの割合でインクを塗布し、その後手で触れた際に
インクが手につかなくなる程度に乾燥するまでの時間を
測定した。評価基準は以下の通り。 ・１０秒以内で手にインクがつかなくなる・・・・○
（優） ・１０秒以上１５秒未満の時間経過するとインクが手に
つかなくなる・・・・・・○△（良） ・１５秒以上２０秒未満の時間経過するとインクが手に
つかなくなる・・・・・・△（不可） ・２０秒以上経過してもインクが手につく・・・・・・
×（不良） これまでに示した２つの評価項目とも優、または良の評
価を与えられることが望ましい。

【００３２】実際の評価結果を表４、５に示す。

【００３３】

【表４】

【００３４】

【表５】

【００３５】表４に示されているように、実施例１〜１
８のインクでは、いずれもノズル乾燥、紙面乾燥の双方
がともに優または良であり、いずれの項目についても優
れた性質を示している。そこで、インク中に含まれるグ
リセリンの含有量をＸ重量％、プロピレングリコールの
含有量をＹ重量％とすると、実施例１〜１８のインクで
は、グリセリン、プロピレングリコールの含有量が、３
≦Ｘ≦２５、３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ＋Ｙ≦５０の３つ
の式を全て満たしている。

【００３６】また、実施例８、９、１２、１３のインク
では、ノズル乾燥、紙面乾燥の双方とも優であり、特に
優れた性質を示している。これらの実施例８、９、１
２、１３のインクでは、グリセリン、プロピレングリコ
ールの含有量が、１０≦Ｘ≦２０、３０≦Ｘ＋Ｙ≦４０
の２つの式を全て満たしている。

【００３７】一方、表５に示されているように、比較例
１、６、８では、ノズル乾燥、紙面乾燥の双方とも不可
あるいは不良であり、実施例１〜１８と比較して著しく
劣っている。比較例１、６、８では、いずれもグリセリ
ンとプロピレングリコールの合計量が実施例１〜１８と
比較して少なくなっている。従って、比較例１、６、８
のインクがノズル乾燥、紙面乾燥の双方とも実施例１〜
１８より劣っている理由は、グリセリンとプロピレング
リコールとの合計量の不足である。

【００３８】また、比較例２〜５では、紙面乾燥につい
ては良であるが、ノズル乾燥については不可であり、実
施例１〜１８と比較して劣っている。この比較例２〜５
のインクでは、プロピレングリコール量は実施例１〜１
８と同様の量、またはやや多い量を使用しているが、グ
リセリンは使用されていないか、または使用されていて
もごく少量である。従って、比較例２〜５のインクがノ
ズル乾燥で不可である理由は、グリセリン量が少ないこ
とである。

【００３９】また、比較例７、９〜１８では、ノズル乾
燥については優または良で優れているが、紙面乾燥につ
いては不可または不良であり、実施例１〜１８と比較し
て劣っている。これらのうち、比較例１０、１２では、
グリセリン量は実施例１〜１８と同様であるが、プロピ
レングリコールが少量しか使用されていない。一方、比
較例７、９、１１、１３では、実施例１〜１８と比較し
てグリセリンとプロピレングリコールとの合計量が多
く、比較例１５〜１８では、プロピレングリコール量は
実施例１〜１８と同様であるがグリセリン量が実施例１
〜１８と比較して多くなっている。そして比較例１４で
は、実施例１〜１８と比較してグリセリン量は多く、プ
ロピレングリコール量は小さくなっている。従って、比
較例７、９〜１８のインクが紙面乾燥で劣っている理由
は、グリセリン量の過剰、プロピレングリコール量の不
足、グリセリンとプロピレングリコールの合計量の過剰
の３つのいずれか１つ、あるいは２つ以上の要因による
ものである。

【００４０】以上説明したように、評価結果が優れてい
た実施例１〜１８の記録用インクでは、グリセリン含有
量をＸ重量％、プロピレングリコール含有量をＹ重量％
としたときに、３≦Ｘ≦２５、３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ
＋Ｙ≦５０の３つの式の全てを満たしているので、ノズ
ルの目詰まりが防止され、紙面上での乾燥が速い。

【００４１】また、上述した実施例１〜１８の記録用イ
ンクを、特開平２−１５０３５５号公報に開示されてい
るせん断モード型や特公昭５３−１２１３８号公報に開
示されているカイザー型や特公昭６１−５９９１４号公
報に開示されているサーマルジェット型のインク噴射装
置に用いて、印字を行ったところ、ノズルの目詰まりが
発生することなく良好に印字が行え、印字後のインクの
乾燥が速く、耐水性、耐摩擦性、指触性に優れていた。
従って、印字後の紙面上のインクによって、プリンタ内
部やユーザの手などが汚れることが無い。

【００４２】尚、本実施例では、ビーズミルを用いてイ
ンクを作製したが、ボールミル、サンドミル、アトライ
ター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、
コロイドミル、超音波ホモジナイザー、超高圧ホモジナ
イザー、パールミル等を用いてインクを作製してもよ
い。

【００４３】

【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
本発明の記録用インクによれば、前記グリセリンの含有
量をＸ重量％、前記プロピレングリコールの含有量をＹ
重量％としたときに、次の３つの式、１０≦Ｘ≦２０、
３≦Ｙ≦４７、３０≦Ｘ＋Ｙ≦４０を全て満たしている
ので、記録後の被記録媒体上において早期に乾燥する。
また、耐水性、耐摩擦性、指触性に優れていた。さらに
インクを噴射して被記録媒体に印字を行うインク噴射装
置に用いられる記録用インクにおいて、３≦Ｘ≦２５、
３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ＋Ｙ≦５０を全て満たすことに
よって、上記と同様の効果に加え、ノズルの目詰まりが
防止される。従って、記録後の紙面上のインクによっ
て、装置内部やユーザの手などが汚れることが無い。さ
らに、本発明の記録用インクは、顔料の持つ、高度な耐
光性、耐水性を活かして、長期にわたり、記録の保存を
達成できるという効果を有する。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水、グリセリン、プロピレングリコール
   を含む溶媒中に、着色材である顔料を分散させてなる記
   録用インクであって、 前記グリセリンの含有量をＸ重量％、前記プロピレング
   リコールの含有量をＹ重量％としたときに、次の３つの
   式、１０≦Ｘ≦２０ 、３≦Ｙ≦４７、３０≦Ｘ＋Ｙ≦４０ を全て満たすことを特徴とする記録用インク。
2. 【請求項２】 インクを噴射して被記録媒体に印字を行
   うインク噴射装置に用いられる記録用インクであって、 水、グリセリン、プロピレングリコールを含む溶媒中
   に、着色材である顔料を分散させてなり、 前記グリセリンの含有量をＸ重量％、前記プロピレング
   リコールの含有量をＹ重量％としたときに、次の３つの
   式、 ３≦Ｘ≦２５、３≦Ｙ≦４７、１３≦Ｘ＋Ｙ≦５０を全
   て満たす ことを特徴とする記録用インク。