JP3040009B2 - 油性成分の乳化剤および油性成分の乳化方法、ならびに、希釈用スープおよびその製造方法 - Google Patents

油性成分の乳化剤および油性成分の乳化方法、ならびに、希釈用スープおよびその製造方法

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JP3040009B2
JP3040009B2 JP3154939A JP15493991A JP3040009B2 JP 3040009 B2 JP3040009 B2 JP 3040009B2 JP 3154939 A JP3154939 A JP 3154939A JP 15493991 A JP15493991 A JP 15493991A JP 3040009 B2 JP3040009 B2 JP 3040009B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、油脂類の乳化剤およ
び油脂類の乳化方法、ならびに、希釈用スープおよびそ
の製造方法に関し、詳しくは、各種食品や化粧品などの
製造工程などで使用される油性成分の乳化剤、および、
この乳化剤を用いた油性成分の乳化方法に関する、ま
た、上記乳化剤の用途として、肉汁などのスープ成分を
濃厚に含み、工場などで予め大量製造されて販売あるい
は保存され、調理時に希釈して用いられる希釈用スープ
と、このような希釈用スープを製造する方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、各種食品や化粧品等の製造工程に
おいて、原材料に含まれる油性成分を製品中に均一に分
散させたり、安定的に乳化させておくことが必要になる
場合があった。例えば、希釈用スープは、工場で大量生
産された半調理品を、それぞれの店に供給して、ここで
最終的な調理を行って料理を完成するチェーン店方式の
飲食業や、一般消費者向けの即席食品の製造などで広く
利用されている。
【0003】希釈用スープの成分が、水あるいは湯に溶
けやすい成分だけであれば、希釈用スープを水または湯
に溶かして薄めるだけで、目的とするスープが得られる
が、希釈用スープの成分に水に溶け難い油性成分が含ま
れていると、水や湯に薄めてスープを得ようとしても、
油性成分がスープと分離して固まってしまったり、スー
プの表面に層になって浮いてしまったりするという問題
が発生する。
【0004】特に、豚骨ラーメン用のスープのように、
油性成分の含有量が多く、また、このような油性成分を
スープ中に均一に分散もしくは乳化させることによっ
て、独特の乳白色を呈したり特有の風味をだしたりして
いるスープを作るための希釈用スープの場合に、重大な
問題となっていた。そこで、希釈用スープに、油性スー
プ成分を均一に乳化もしくは分散させるための乳化剤あ
るいは分散剤を添加することも考えられたが、合成化合
物からなる薬剤は、食品添加物として認められ難く、ま
た、スープの風味を損なうという欠点もあった。
【0005】そのため、従来、豚骨ラーメン用の希釈用
スープとしては、スープ溶液中に、油性スープ成分とほ
ぼ同量のゼラチンを添加しておき、このゼラチンの乳化
特性によって、希釈用スープを薄めてスープを作ったと
きに、油性スープ成分がスープ中に均一に分散されるよ
うにしていた。ゼラチンは、元来、畜獣の骨や皮などの
天然原料から得られる材料であるから、食品添加物とし
ての安全性には全く問題がなく、また、スープと同じよ
うな材料から得られるものであるから、風味を損なうこ
とも少ないと考えられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ゼラチンを
用いると、スープ中に油性スープ成分を均一に乳化もし
くは分散させる能力が十分でなく、スープの表面に油が
浮いてしまうという問題が生じていた。これは、ゼラチ
ン自体の乳化能力がそれほど高くないため、希釈用スー
プに油性スープ成分が多量に含まれていると、この油性
スープ成分の全量を完全に乳化させることは困難である
ためである。また、希釈用スープを水や湯に攪拌しなが
ら薄めたときには、ある程度は均一に分散させることが
できても、スープを食するまでに時間があくと、一旦分
散した油性スープ成分が再分離して表面に浮いてくると
いう問題もある。従来の希釈用スープでは、スープを作
った後、数分たつと、スープの表面に油が浮いてくるの
で、例えば、ラーメン等を食べている間に油が浮き出
し、その結果、風味が悪くなってしまうという問題があ
った。
【0007】ゼラチンの添加量を増やせば、ある程度は
油性スープ成分に対する乳化能力を向上させることがで
きるが、ゼラチンの添加量があまり増えると、ゼラチン
特有の強い臭いや味がスープにつくことになり、スープ
本来の風味を損なうという新たな欠点が生じる。また、
ゼラチンの添加量が増えると、スープの温度が下がった
ときに、ゼラチンがゲル化してしまい、スープの舌触り
や風味が悪くなるという問題も生じる。
【0008】上記のような問題は、豚骨ラーメン用の希
釈用スープに限らず、その他の油性成分を含む希釈用ス
ープ、各種飲食品においても同様である。さらに、入浴
剤や化粧品のように、人体に対する安全性の点から化学
合成された乳化剤の使用が好ましくない。また、微妙な
香りや匂いが問題にされる各種製品の製造においても問
題となる。
【0009】そこで、この発明の課題は、油性成分の乳
化剤として、乳化作用に優れているとともに、食品およ
び化粧品等に用いたときにその風味を損なわず、人体に
対する安全性も良好な乳化剤と、このような乳化剤を用
いた油性成分の乳化方法を提供することにある。また、
豚骨ラーメン用スープのように、油性スープ成分を多量
に含むスープを作るための希釈用スープにおいて、希釈
用スープを薄めてスープを作ったときに、油性スープ成
分がスープ中に均一に乳化もしくは分散されて、スープ
の表面に油が浮き上がることがないように出来るととも
に、スープ本来の味や香りも損なわれず、良好な風味を
発揮できる希釈用スープを提供することにある。さら
に、このような希釈用スープを製造する方法を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する、こ
の発明にかかる乳化剤は、等電点6.5〜9.0の第1
のゼラチンと、等電点4.5〜5.5の第2のゼラチン
とを、第1のゼラチン:第2のゼラチン=95:5〜1
0:90の重量比率で含んでいる。ゼラチンは、畜獣の
骨や皮などを原料として、これらの原料から抽出製造さ
れるものであるが、原料に対する処理方法の違いによっ
て、主に、酸処理ゼラチンとアルカリ処理ゼラチンに大
別される。酸処理ゼラチンは、ゼラチン原料を酸で処理
した後、抽出を行って得られたゼラチンであり、アルカ
リ処理ゼラチンは、ゼラチン原料をアルカリで処理した
後、抽出を行って得られたゼラチンである。処理方法が
異なると、得られたゼラチンの等電点にも相違が生じ
る。この発明では、第1のゼラチンとして、等電点6.
5〜9.0のゼラチンを用い、より好ましくは、等電点
8.0〜9.0の範囲のものを用いる。第2のゼラチン
として、等電点4.5〜5.5のゼラチンを用い、より
好ましくは、等電点5.0±0.3の範囲のものを用い
る。第1のゼラチンとしては、通常、酸処理ゼラチンが
使用され、第2のゼラチンとしては、通常、アルカリ処
理ゼラチンが用いられる。第1のゼラチンと第2のゼラ
チンの使用割合は、重量比率で、第1のゼラチン:第2
のゼラチン=95:5〜10:90が好ましく、用途に
よっても異なるが、70:30程度が特に良好な結果が
得られる。ゼラチンには、粉末あるいは板状などの固型
の製品と、水溶液のゲル状の製品があり、何れを使用す
ることもできる。
【0011】油性成分は、製造する製品の種類あるいは
用途によって、様々な油脂類が用いられ、例えば、鉱
油、パラフィン、ラノリン、綿実油、ヤシ油、オリーブ
油、牛脂、ラード、ダイズ油、サラダ油、コーン油、ゴ
マ油などが挙げられる。ゼラチンの水溶液、あるいは、
固型のゼラチンを水あるいは湯に溶解させた後、このゼ
ラチン溶液と、油性成分を含む材料とを攪拌混合すれ
ば、油性成分とゼラチンが良好に混合乳化される。ゼラ
チン溶液のゼラチン濃度は、5〜30重量%にしておく
のが好ましい。粉末状のゼラチンを油性成分を含む材料
の溶液に直接投入して攪拌し、溶解と同時に混合乳化さ
せることもできる。逆に、ゼラチン水溶液に油性成分を
含む粉末状あるいは油状の材料を投入してもよい。ゼラ
チンと油性成分が均一に混合乳化されるように、十分に
攪拌混合するのが好ましい。第1および第2のゼラチン
の、乳化させる油性成分に対する添加割合は、油性成分
の全量が均一に乳化されるだけのゼラチン量があればよ
く、ゼラチンが多過ぎても、それ以上の効果は挙がらな
いとともに、製品の品質に悪影響が出る場合がある。具
体的には、油性成分の1/3〜1/40(重量比)のゼ
ラチン(第1および第2のゼチランの合計量)を添加し
ておくのが好ましい。
【0012】第1のゼラチンおよび第2のゼラチンと油
性成分を含む材料を混合した段階で、この混合材料のp
Hが、第1のゼラチンの等電点と第2のゼラチンの等電
点の間の値になるようにする。このpH値が、第1のゼ
ラチンあるいは第2のゼラチンの等電点に、あまり近づ
き過ぎると、後述するコアセルベーションが起こり難く
なり、油性成分の均一で安定な乳化が出来ない。但し、
一般に使用されるゼラチンは、等電点が一定の分布を持
っているものであり、特に、酸処理ゼラチンは、等電点
の分布が比較的広い。したがって、実際には、第1およ
び第2のゼラチンの平均的もしくは中心的な等電点の値
に対して、両方の等電点からある程度離れた間のpH範
囲に設定すればよい。具体的には、前記したpH範囲の
ゼラチンを用いた場合、製品材料のpHが、5.3〜
7.0になるようにすればよい。好ましくは、pH5.
8±0.3にする。
【0013】混合材料のpH値は、第1および第2のゼ
ラチンの性状および使用量と、油性成分を含む材料のそ
の他の成分の配合によって決まる。第1および第2のゼ
ラチンの選択組み合わせを適当に行うだけでも、得られ
た混合材料のpHを前記範囲に設定することができる。
得られた混合材料のpHが、前記範囲を外れている場合
には、適当なpH調整剤を添加して、pH調整を行えば
よい。pH調整剤としては、通常の食品や化学製品の製
造分野で用いられる各種pH調整剤が使用できる。pH
調整剤として好ましいものは、例えば、水酸化ナトリウ
ム、酢酸、塩酸、クエン酸、酢酸ナトリウム、水酸化カ
リウムなどが挙げられる。pH調整剤を添加する時期
は、第1および第2のゼラチンを水に混合溶解してゼラ
チン水溶液を作った段階でもよいし、ゼラチン水溶液と
油性成分を含む製品材料を混合した後でもよい。
【0014】この発明にかかる乳化剤の具体的用途とし
て、豚骨ラーメン用などに用いられる希釈用スープがあ
る。希釈用スープは、各種の肉や骨などの動物性材料と
香味野菜などの植物性材料その他を水で煮て得られる、
いわゆるスープ成分を高濃度で含むものであれば、その
原材料や基本的な製造方法は、通常の希釈用スープの場
合と同様でよい。但し、この発明は、希釈用スープの成
分として、水に溶け難い油性スープ成分を多く含むもの
に好ましく適用される。希釈用スープは、溶液およびゲ
ル状態で提供される場合と、噴霧乾燥などにより粉末状
にして提供される場合がある。
【0015】第1および第2のゼラチンとしては、食品
に使用する場合には、人体に対する安全性や、風味や舌
触りなども考慮して選ぶのが好ましい。例えば、豚骨ラ
ーメン用の希釈用スープの場合には、前記2種類のゼラ
チンの使用割合を、重量比率で、第1のゼラチン:第2
のゼラチン=80:20〜40:60程度に設定するの
が特に好ましい。また、希釈用スープに使用するゼラチ
ンの粘度を35mp(JIS−K6503)以上にしてお
くと、乳化が良好に行われる。
【0016】上記のようにして得られた希釈用スープ
は、業務用に使用する場合などは、特別な調味料や添加
剤を加えることなく、そのままで包装されて販売あるい
は保管され、調理時に、希釈用スープを水あるいは湯で
薄めてスープを作った段階で必要な調味料などを加えて
使用される。また、即席食品に添付したり、家庭用に販
売したりする際には、予め希釈用スープに必要な調味料
を添加した状態で、供給することもできる。
【0017】この発明にかかる希釈用スープは、ラーメ
ン等の麺料理のスープのほか、任意の料理に用いるスー
プあるいはだしその他の液体材料となる希釈用スープに
適用できる。したがって、この明細書において、スープ
とは、麺料理用のスープという狭い意味に限らず、料理
に用いる任意の混合材料という意味で使用している。但
し、この発明にかかる希釈用スープとしては、特に、油
性スープ成分を多く含み、この油性スープ成分がスープ
中に均一に乳化もしくは分散されている必要のあるスー
プ用の希釈用スープに好ましく適用される。具体的に
は、前記した豚骨ラーメン用スープのように、乳白色な
どの不透明な外観を有するスープが好ましい。
【0018】さらに、この発明にかかる乳化剤は、食用
油を乳化させてヨーグルト状の乳化飲料を製造したり、
デザート用の乳状ゼリーや、コーヒークリームなどの加
工飲食品に使用することができる。また、この発明にか
かる乳化剤で油性成分を乳化させたものを、風呂用の入
浴剤として利用したり、油性成分として、水に難溶性の
油脂、香料、ビタミンなどの薬品類を乳化させて、化粧
品用クリーム類、頭髪用あるいは洗髪用薬剤、洗顔用薬
剤、化粧用パック類などの化粧品に利用するなど、油性
成分を乳化させることによって、各種の機能を発揮させ
る製品に自由に利用することができる。
【0019】
【作用】前記したような、等電点に違いを有する第1お
よび第2のゼラチンを併用し、得られた混合材料のpH
が、第1および第2のゼラチンの等電点の間の値になる
ようにすることによって、製品材料中の油性成分が、非
常に良好に乳化し、しかも、この乳化状態が極めて安定
である。
【0020】等電点の異なる2種類のゼラチンを混合溶
解した水溶液を、両者の等電点の間のpH範囲にする。
そして、この水溶液中に、油性成分が存在していると、
油性成分がゼラチンと混合乳化され、油性成分の微小な
粒を核とし、2種類のゼラチンの間で、いわゆるコアセ
ルベーション反応が起こり、油性成分の外周をゼラチン
のコアセルベート薄膜が覆った状態になり、いわゆるミ
クロコアセルベートが形成される。この油性成分とゼラ
チンからなるミクロコアセルベートが、溶液中に乳化し
た状態は、非常に均一かつ安定であり、長い時間放置し
ても、油性成分のみが再集合したり、製品溶液の表面に
油性成分の層を作ったりすることが起きない。
【0021】しかも、上記ゼラチン同士のコアセルベー
ションによる油性成分の乳化は、極めて効率的に行わ
れ、少量のゼラチンを使用することにより、大量の油性
成分を良好にかつ安定に乳化させておくことができる。
【0022】
【実施例】
−実施例1− 第1のゼラチンとして、等電点8.5の酸処理ゼラチン
(粘度40mp)4gを用い、第2のゼラチンとして、等
電点5.0のアルカリ処理ゼラチン(粘度44mp)4g
を用いた。両方のゼラチンを水32mlに膨潤させ、60
℃に加温し溶解させた。このゼラチン水溶液が乳化剤と
なる。希釈用スープの材料として、常法により製造され
た豚骨ラーメン用の希釈用スープ原液を用いた。この希
釈用スープ原液には、従来のような、乳化剤としてのゼ
ラチンおよびその他の乳化剤は全く含まれていない。希
釈用スープ原液50mlを前記ゼラチン水溶液に加え、十
分に攪拌混合した。油性成分を含む希釈用スープ原液は
ゼラチンと均一に混合乳化された。このようにして得ら
れた希釈用スープのpH値は5.6であり、所定のpH
範囲内であったので、pH調整は行わなかった。
【0023】上記のようにして得られた希釈用スープ
1.2gを、50℃の湯200mlに薄めて、豚骨ラーメ
ン用スープを作った。得られた豚骨ラーメン用スープ
は、特有の乳白色を呈し、1時間以上放置しても、油の
浮き上がりは認められなかった。スープを食したとこ
ろ、味および香りは良好であった。スープを顕微鏡で観
察したところ、油性成分を包み込んだゼラチンのコアセ
ルベート微粒が確認できた。
【0024】つぎに、上記実施例において、酸処理ゼラ
チンとアルカリ処理ゼラチンの混合比率を変えて、同様
の手順で希釈用スープを製造し、その性能を評価した。
その結果を、表1に示している。表中の数値単位は重量
%であり、評価基準は以下のとおりであった。 ◎…非常に良好、○…良好、×…不良 表1.ゼラチンの混合比率による性能比較 ────────────────────────────────── 第1のゼラチン 第2のゼラチン (酸処理ゼラチン) (アルカリ処理ゼラチン) 評 価 ─────────────────────────────────── 比較例1.1 100 0 × 実施例1.1 95 5 ○ 実施例1.2 90 10 ○ 実施例1.3 80 20 ◎ 実施例1.4 70 30 ◎ 実施例1.5 60 40 ◎ 実施例1.6 50 50 ◎ 実施例1.7 40 60 ◎ 実施例1.8 30 70 ○ 実施例1.9 20 80 ○ 実施例1.10 10 90 △ 比較例1.2 0 100 × ─────────────────────────────────── 上記試験の結果、豚骨ラーメンの希釈用スープの場合、
第1のゼラチンと第2のゼラチンの混合比率は、95:
5〜10:90にしておく必要があることが判る。ま
た、混合比率が80:20〜40:60の範囲で優れた
性能が発揮できる。さらに、混合比率が70:30近く
の場合に、最も良好な結果が得られることも判った。
【0025】−実施例2− 前記実施例1において、酸処理ゼラチン6gとアルカリ
処理ゼラチン2gを32mlの水に膨潤溶解させ、希釈用
スープ原液を50ml用いた以外は、実施例1と同様の手
順で希釈用スープを製造した。得られた希釈用スープの
pH値は5.6であった。前記同様に、希釈用スープか
ら豚骨ラーメン用スープを作って、その性能を評価し
た。結果は良好であった。
【0026】−実施例3− この実施例では、酸処理ゼラチンおよびアルカリ処理ゼ
ラチンが製造時点で混合されている混合ゼラチンを用い
た。混合ゼラチンを製造するには、ゼラチン原料から、
酸処理およびアルカリ処理のそれぞれの工程にしたがっ
て処理および抽出された各々のゼラチン溶液を、所定の
割合で混合した後、これを常法に従って乾燥させること
により、2種類のゼラチンが均一に混合された混合ゼラ
チンが得られる。ゼラチン溶液は、前記実施例1と同じ
酸処理ゼラチンおよびアルカリ処理ゼラチンを製造する
際に用いたゼラチン溶液と同じものであった。酸処理ゼ
ラチンとアルカリ処理ゼラチンの混合比率は、実施例2
と同様に3:1であった。この混合ゼラチン8gを用
い、実施例2と同様の手順で希釈用スープを製造した。
得られた希釈用スープのpH値は5.6であった。前記
同様に、希釈用スープから豚骨ラーメン用スープを作っ
て、その性能を評価した。結果は、良好であった。
【0027】−実施例4− 実施例2において、実施例2とは別の酸処理ゼラチン
5.3g(等電点8.0)およびアルカリ処理ゼラチン
2.7g(等電点4.9)を用いた。この場合、第1の
ゼラチン:第2のゼラチン=66:34となる。実施例
2と同様にして32mlの水に膨潤溶解させたところ、溶
液のpH値が4.6であった。そこで、pH調整剤とし
て5%水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を
6.0に調整した。その後、実施例2と同様の手順で希
釈用スープを製造した。得られた希釈用スープのpH値
は6.0であった。前記同様に、希釈用スープから豚骨
ラーメン用スープを作って、その性能を評価した。結果
は、良好であった。
【0028】上記実施例において、pH調整剤の種類お
よび添加量を変えて、希釈用スープのpH値が種々異な
るものを製造し、その性能を、前記同様に評価した。表
2に評価結果を示している。評価基準は前記表1の場合
と同様である。 上記試験の結果、希釈用スープのpH値を、第1のゼラ
チンおよび第2のゼラチンの等電点の間に設定する必要
があることが判る。また、pH6.0付近が好ましい範
囲であることも判る。
【0029】−実施例5− 実施例4において、pH調整を、ゼラチン水溶液に対し
て行うのでなく、希釈用スープ原液とゼラチン水溶液を
混合して得られた希釈用スープに対して行った。pH調
整後の希釈用スープのpH値は6.0であった。実施例
4と同様にして、希釈用スープの性能を評価したとこ
ろ、良好なものであった。
【0030】−実施例6− 乳化剤を、各種の飲食品の製造に用いた。 〔乳化飲料〕実施例1と同様の条件で調製された乳化剤
すなわちゼラチン水溶液を用いた。ゼラチン水溶液に、
食用油50gを均一に混合乳化させた。pHを6.0に
調整して乳化飲料用素材を得た。この素材1gを、20
0mlの熱水に溶解し、糖類、香料を加え乳化安定させ
て、乳化飲料を得た。この乳化飲料は、高温状態でホッ
ト乳化飲料として飲用することもできたし、10℃程度
に冷やすことによってヨーグルト状乳飲料としても、お
いしく味わえた。何れの状態でも、油性成分が分離する
ことは無かった。 〔乳状ゼリー〕上記同様のゼラチン水溶液に、食用油2
0gおよび香料0.1gを均一に混合乳化させ、pHを
6.0に調整してゼリー素材を得た。このゼリー素材2
5gを、温水100mlに溶解させ、5℃程度に冷却した
結果、デザート用乳状ゼリーが得られた。この乳状ゼリ
ーは、通常の牛乳ゼリーと変わりのない良好な食感を有
するものであった。 〔コーヒークリーム〕上記同様のゼラチン水溶液に、食
用油脂30gを均一に混合乳化させ、pH5.6に調整
して、コーヒークリーム用乳化素材を得た。この素材1
gを、ホットコーヒーに添加し、よく攪拌混合して乳化
させる。その結果、得られたカフェオレ状の飲料は、従
来のミルクやクリームを用いたものよりも、まろやかで
風味も良好であった。
【0031】−実施例7− 家庭用の風呂などで、濁り湯を楽しむことの出来る入浴
剤と化粧用乳液を製造した。 〔入浴剤〕第1のゼラチンとして、等電点8.5、粘度
40mpの酸処理ゼラチン4gを用い、第2のゼラチンと
して、等電点5.0、粘度44mpのアルカリ処理ゼラチ
ン4gを用いた。両方のゼラチンを水32mlに膨潤溶解
させた。得られたゼラチン水溶液に、油性成分として、
保温性の高い油スクワラン50mlと、油性混合香料2ml
を加え、十分に攪拌混合した。油性成分とゼラチン水溶
液をホモジナイズして均一に乳化させ、乳化材料Aを得
た。この乳化材料AのpH値は4.8であった。5%水
酸化ナトリウムを用いて、上記乳化材料AのpH値をp
H5.6に調整し、入浴剤を得た。
【0032】得られた入浴剤を20g、30℃のお湯2
00mlに薄めた後、得られた溶液を、42℃で300l
の湯をはった浴槽に分散させた。浴槽の湯は、ほど良く
白濁して濁り湯状を呈するとともに、好ましい香りが立
ち込めた。また、湯の表面に油性成分が浮き上がること
もなかった。浴槽の湯から採取した液を、顕微鏡で観察
したところ、前記油性成分を含有したゼラチンのコアセ
ルベートマイクロカプセルが確認できた。実際に入浴し
てみたところ、肌がしっとりし、さら湯のようなカサカ
サ感がなく、湯上がり後の肌は、化粧水をすり込んだよ
うに好ましい状態であった。
【0033】また、前記入浴剤20gを直接、42℃3
00lの湯に投入して分散させたところ、上記同様に良
好な結果が得られた。なお、上記入浴剤を製品化する場
合には、必要に応じて、防腐剤など、通常の入浴剤に利
用されている各種の添加剤を加えるのが好ましい。 〔乳液〕前記乳化材料A(pH4.8)を、5%水酸化
ナトリウム溶液でpH5.8に調整して、乳液用素材を
得た。この乳液用素材10gを、35℃100mlのお湯
に希釈した結果、化粧用乳液が得られた。この化粧用乳
液を、顔や手足につけたり、洗浄に用いたりしたとこ
ろ、肌がしなやかになり、カサカサ感が抑えられること
が確認された。
【0034】
【発明の効果】以上に説明した、この発明にかかる油性
成分の乳化剤および油性成分の乳化方法によれば、油性
成分を均一かつ安定に乳化させておくことができるとと
もに、ゼラチンを原料としているので、食品や化粧品な
どに用いたときの安全性が非常に高い。また、油性成分
に対する乳化剤すなわちゼラチンの使用量が少なくて済
むので、食品の風味や、化粧品等の香りなどを損なうこ
とがない。
【0035】特に、希釈用スープに利用したときには、
希釈用スープに含まれる油性スープ成分を均一かつ安定
に乳化させた状態で保存でき、希釈用スープを薄めてス
ープを作ったときに、コアセルベートによる乳化安定性
にすぐれているため、油が分離してスープの表面に浮き
上がることがない、良好なスープが得られる。特に、ゼ
ラチンは天然材料からなり、人体に対する安全性が非常
に高いので安心して使用することができる。しかも、2
種類のゼラチンを併用し、ゼラチン同士のコアセルベー
ションを利用することで、油性スープ成分の乳化能力が
格段に向上する結果、1種類のゼラチンのみを用いる従
来の方法に比べて、ゼラチンの使用量を大幅に削減する
ことができ、従来のように、多量のゼラチン添加によっ
てスープ本来の風味を損なうこともなくなる。
【0036】また、入浴剤に用いれば、大量の湯に比較
的少量の油性成分を均一かつ安定して分散させることが
できるので、従来の入浴剤では得ることが難しい、油性
成分によるしっとりとしたなめらかな使用感が得られ
る。その他、従来の乳化剤では利用できなかった新たな
機能や用途に利用することも可能になる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/035 A23L 1/05 A23L 1/40 B01F 17/30 A61K 7/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 等電点6.5〜9.0の第1のゼラチン
    と、等電点4.5〜5.5の第2のゼラチンとを、第1
    のゼラチン:第2のゼラチン=95:5〜10:90の
    重量比率で含む油性成分の乳化剤。
  2. 【請求項2】 等電点6.5〜9.0の第1のゼラチン
    と、等電点4.5〜5.5の第2のゼラチンとが、第1
    のゼラチン:第2のゼラチン=95:5〜10:90の
    重量比率で混合溶解された水溶液に、油性成分を混合乳
    化させるとともに、溶液のpHを第1のゼラチンと第2
    のゼラチンの等電点の間の値に設定する油性成分の乳化
    方法。
  3. 【請求項3】 油性スープ成分を含む希釈用スープであ
    って、等電点6.5〜9.0の第1のゼラチンと、等電
    点4.5〜5.5の第2のゼラチンとが、第1のゼラチ
    ン:第2のゼラチン=95:5〜10:90の重量比率
    で添加され、pHが第1のゼラチンと第2のゼラチンの
    等電点の間の値であり、前記油性スープ成分がスープ中
    に混合乳化されている希釈用スープ。
  4. 【請求項4】 希釈用スープが、豚骨ラーメン用の希釈
    用スープである請求項3記載の希釈用スープ。
  5. 【請求項5】 油性スープ成分を含む希釈用スープを製
    造する方法であって、等電点6.5〜9.0の第1のゼ
    ラチンと、等電点4.5〜5.5の第2のゼラチンと
    が、第1のゼラチン:第2のゼラチン=95:5〜1
    0:90の重量比率で混合溶解された水溶液に、油性ス
    ープ成分を混合乳化させるとともに、溶液のpHを第1
    のゼラチンと第2のゼラチンの等電点の間の値に設定す
    る希釈用スープの製造方法。
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