JP3032477B2 - 床版鉄筋組立用の移動足場 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、主桁に支持され
る床版の鉄筋を型枠組立前に組み立て仮支持した後床版
型枠上に載置するための床版鉄筋組立用の移動足場に関
する。

【０００２】

【従来の技術】鋼橋の床版を構築する際には、主桁及び
床版型枠上に鉄筋を組み立ててからコンクリートを打設
するが、型枠組立の完了を待って配筋作業に入る工程で
は型枠と鉄筋の組立作業を同時に進行させることができ
ず、工期が長くなる欠点があった。このため、型枠組立
と並行してブロック化した鉄筋を別の場所で組み立て、
揚重機器を用いてブロック鉄筋を型枠上に吊り上げ工期
短縮を図る工法が提案されている。この工法は、例えば
橋梁架設に当たって、当該床版下方の地上で鉄筋を組み
立て、これを吊り金具により主桁上方に吊り上げ、床版
型枠上で継手部の処理を行った後短期間でコンクリート
打設を実施するものであった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、ブロック鉄筋
はかなりの重量物となる上、一般に主桁は地上から高い
位置にあるため、吊上げ用には大型の揚重機器を常備し
なければならず重機費用が増大する欠点があった。又、
床版下方の地形によっては鉄筋組立ヤードを造成するこ
とができないため、適用し得る橋梁が限定されてしまう
欠点もあった。

【０００４】この発明は上記課題を解決して、組立鉄筋
を吊り上げるための大型の揚重機器が不要で、床版下方
の地形によらず鉄筋組立用の作業床を型枠とは別に設け
ることができ、型枠と鉄筋の組立作業を並行して行うこ
とができる床版鉄筋組立用の移動足場を提供することを
目的としている。又、鉄筋足場と床版型枠が双方とも移
動可能で、効率よい床版構築作業が実現できる床版鉄筋
組立用の移動足場を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明の床版鉄筋組立用の移動足場は、床版鉄筋
の組立に適合する作業床を載置し主桁上を移動し得る台
車と、作業床に移動可能に立設する前方柱体と、伸縮可
能な脚部を備え既設床版上に立設する後方柱体と、前方
柱体と後方柱体間に架設する鉄筋吊上げ部と、後方柱体
の近傍に設け前記脚部の縮小時に鉄筋吊上げ部を支持す
る中間柱体と、吊上げた組立鉄筋を床版型枠上に載置し
た後主桁上に設置して中間柱体及び後方柱体の移動をガ
イドし床版コンクリート打設前に撤去する柱体ガイド部
材とを備えることを特徴とするものである。

【０００６】台車は主桁の上フランジ上を転動する車輪
に支持され、床版下面の形状に合わせて形成する作業床
を載置する。主桁は一方向に並列配置されているもので
あるが、鋼桁でなくとも可能で、橋梁以外の構造物でも
適用可能である。作業床には前方柱体が容易に移動でき
るレーンを、例えば主桁上方に設ける。前方柱体は、こ
のレーン上を移動するため下端部に車輪等の転動部材、
あるいは滑り部材を設ける。

【０００７】鉄筋吊上げ部は、前方柱体及び後方柱体間
に掛け渡す縦梁と、この縦梁に係止する昇降部材及び吊
上げ金具を備え、ブロック鉄筋の水平状態を維持しなが
ら吊上げ、降下することができる。作業床上で組み立て
たブロック鉄筋を吊り上げた後、台車を鉄筋の外部まで
移動する。この時、鉄筋吊上げ部は停止状態にあり、前
方柱体の下面を台車が通過する。前方柱体が作業床の後
端に位置したとき台車の移動を停止する。

【０００８】その後床版型枠を設置するが、床版型枠が
移動足場の下方に移動し得る構成の場合には台車の移動
を待たずに型枠を設置することも可能である。なお、作
業床の下面で並行して型枠支保工を組み立てることがで
き、ブロック鉄筋吊上げ時に床面を張ることもできるの
で移動型の型枠以外にも適用可能である。

【０００９】床版型枠上に吊上げた組立鉄筋を載置し、
更に柱体ガイド部材を主桁上に設置する。柱体ガイド部
材は、主桁上の鉄筋間に立設する柱部と、この柱部の頂
部に固着する溝型の案内部よりなり、案内部の内面には
中間柱体及び後方柱体の下端が容易に滑動できる滑り面
を設ける。滑り面は作業床に設けるレーンとほぼ同一の
高さとする。柱体ガイド部材は、空荷状態の鉄筋吊上げ
部を前方に移動した作業床まで送り出すための部材であ
って、その設置及び撤去が容易にできる部材荷重で構成
する。柱体ガイド部材をセットした後、中間柱体を案内
部に当接支持し後方柱体の脚部を縮小して、これらを滑
り面に沿って移動する。

【００１０】中間柱体を柱体ガイド部材から作業床の後
端に移行し、これに支持した後、柱体ガイド部材を撤去
する。この時点で移動足場は構築する床版から離れるの
で床版コンクリートの打設が可能となる。構築した床版
上に再度後方柱体を伸長立設し、移動足場を停止状態に
する。作業床上の鉄筋吊上げ部及び中間柱体を上昇させ
た後、次のブロックの床版鉄筋を組み立てる。

【００１１】

【発明の実施の形態】次にこの発明の実施の形態を添付
図面に基づき詳細に説明する。図１は床版鉄筋組立用の
移動足場の側面図、図２及び図３は各々図１のII−II断
面、III−III断面を示す断面図である。又、図４乃至図
１０は鉄筋組立に伴う各工程での移動足場の側面図を示
す。移動足場１は主桁２上を移動し得る台車３と、鉄筋
吊上げ架台４とを有し、これに加えて鉄筋吊上げ架台４
の移動時に使用する柱体ガイド架台５を備える。

【００１２】台車３は、主桁２の上フランジ２ａ上を転
動する車輪６に支持され、床版下面の形状に適合する作
業床７を載置する。車輪６は上フランジ２ａに突設する
ジベル２ｂを避けて転動し、かつ脱輪しない構成とす
る。又作業床７の内で主桁２上方に位置する部分には鉄
筋吊上げ架台４の移動レーン７ａを形成する。

【００１３】鉄筋吊上げ架台４は、前方柱体８、後方柱
体９及び中間柱体１０の頂部に縦梁１１を掛け渡し、こ
れにチェーンブロック等からなる昇降部材１２を係止す
る。昇降部材１２はブロック鉄筋１３の全域をカバーす
る吊上げ金具１４を懸吊し、作業床７上で組み上げたブ
ロック鉄筋１３の水平を維持しながらこれを吊上げ、降
下することができる。このためブロック鉄筋１３に細い
材料を使用しても、大きくたわませることなく吊上げる
ことができる。

【００１４】前方柱体８は移動レーン７ａ上を移動する
ため下端部に車輪等の転動部材８ａあるいは滑り部材を
設ける。又、後方柱体９は伸縮可能な脚部９ａを備え、
これを伸長して既設の床版１５上に立設するが、鉄筋吊
上げ架台４の移動を防止するため後方柱体９より背面側
に控綱１６をとる。中間柱体１０は後方柱体９の近傍に
設け、同様に伸縮可能な脚部１０ａを備える。図１に示
すように後方柱体９を床版１５上に立設する時には、中
間柱体１０の脚部１０ａは縮小しておく。

【００１５】図３に示すように床版１５を構築するため
の主桁間型枠１７及び張出床版用型枠１８は各々主桁間
型枠移動部１９及び張出床版用型枠移動部２０で支持し
ており、ブロック移動の際には移動方向前方にセットし
たウインチ等の引張装置を用いて別々に橋軸方向に移動
する。主桁間型枠移動部１９は、主桁２を連結する横桁
２１上に転がり支持部材２２を配置し、この上に高さ調
整用のジャッキ２３を介して主桁間型枠１７を載置して
いる。

【００１６】又、張出床版用型枠移動部２０は、型枠受
トラス２４をトラス保持部材２５及び鉛直荷重支持部材
２６で支持する。トラス保持部材２５は部材荷重を支持
しながら型枠支保工を主桁２沿いにスライドするための
もので、鉛直荷重支持部材２６は型枠受トラス２４に作
用するコンクリート打設時の鉛直荷重を主桁２に伝達す
るための部材である。

【００１７】次に床版構築時における移動足場の使用方
法を図４乃至図１０に基づき説明する。作業床７上でブ
ロック鉄筋１３を組み上げると、昇降部材１２を使用し
て吊上げ金具１４を降下し、ブロック鉄筋１３の水平を
維持しながら吊上げ（図４）、その後台車３を鉄筋の外
部まで移動する。この時、鉄筋吊上げ架台４は控綱１６
の作用によって停止状態にあるため、台車３は前方柱体
８の転動部材８ａを回転させながら通過することにな
る。前方柱体８が作業床７の後端に位置したとき台車３
の移動を停止する（図５）。

【００１８】ブロック鉄筋１３を吊上げた状態で主桁間
型枠１７及び張出床版用型枠１８を主桁間型枠移動部１
９や張出床版用型枠移動部２０の作用によって所定位置
まで移動する（図６）。なお、床版型枠が移動足場１の
下方に移動し得る構成の場合には台車３の移動を待たず
に型枠を設置することも可能である。又、作業床７の下
面では並行して型枠支保工を組み立てることができ、か
つブロック鉄筋１３を吊上げ台車３を移動した時には床
面を張ることもできるので、この移動足場１はスライド
移動型の型枠以外にも適用可能である。

【００１９】床版型枠上に吊上げたブロック鉄筋１３を
載置し（図７）、吊上げ金具１４の係合を解いてこれを
上昇し、継手部の処理を行った後、柱体ガイド架台５を
主桁２上に設置する。柱体ガイド架台５は、主桁２上の
鉄筋１３及びジベル２ｂを回避して立設する複数の柱部
５ａと、この柱部５ａの頂部に固着する溝型の案内部５
ｂからなり、案内部５ｂの内面には中間柱体１０及び後
方柱体９の下端が容易に滑動できる滑り面を設ける。こ
の滑り面の高さは作業床７に設ける移動レーン７ａの高
さとほぼ同一にする。

【００２０】柱体ガイド架台５は、空荷状態の鉄筋吊上
げ架台４を前方に移動した作業床７まで送り出すための
部材であって、その設置及び撤去が容易にできるよう部
材荷重を考慮して作成する。柱体ガイド架台５をセット
した後、中間柱体１０の脚部１０ａを伸長して案内部５
ｂに当接支持する一方、後方柱体９の脚部９ａを案内部
５ｂの高さまで上昇させる（図８）。

【００２１】鉄筋吊上げ架台４を移動して、前方柱体８
及び中間柱体１０を各々作業床７の前端、後端に移行す
る（図９）。その後、柱体ガイド架台５を撤去し、床版
コンクリートの打設が行う。新たに構築した床版１５上
に再度後方柱体９を伸長立設し、控綱１６をとって移動
足場１を停止状態にする。作業床７上の吊上げ金具１４
及び中間柱体１０を上昇させた後、次のブロックの床版
鉄筋の組立準備に入る（図１０）。以後、同一手順を繰
り返すことで連続して床版構築を行う。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の床版鉄
筋組立用の移動足場は、主桁上を移動し得る台車に作業
床を設置し、この上で組み立てた鉄筋を鉄筋吊上げ部で
保持しながら作業床を移動し得る構成とするので、型枠
組立に先行して鉄筋を組み立てることができる。このよ
うに型枠と鉄筋の組立作業を並行して行うことができる
ので大幅な工期短縮が図れる。しかも、作業床を主桁上
に設けるので床版設置箇所の条件によらず専用の鉄筋組
立ヤードを独立して設けることができる。

【００２３】又、作業床に鉄筋吊上げ部を付設するので
組立鉄筋を吊り上げるための大型の揚重機器が不要とな
り、コスト低減にも寄与する。又、旋回等を行わずに鉄
筋を吊上げその移動範囲も限定されるため、細い鉄筋を
使用しても吊上げ時に大きなたわみを生ずる恐れがな
い。

【００２４】又、鉄筋吊上げ部を前方柱体、後方柱体及
び中間柱体で支持し、これらを主桁上に設置する取り外
し可能な柱体ガイド部材を用いて移動するので、吊上げ
た組立鉄筋を床版型枠上に載置した後にも鉄筋上を通過
して鉄筋吊上げ部を移動することができる。

【００２５】又、請求項２記載の床版鉄筋組立用の移動
足場は、主桁と平行に移動する床版型枠移動部と組み合
わせるので、組立鉄筋吊上げ時に直ちに型枠を設置する
ことができ、コンクリート打設サイクルをより短縮する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】床版鉄筋組立用の移動足場の側面図である。

【図２】図１のII−II断面を示す断面図である。

【図３】図１のIII−III断面を示す断面図である。

【図４】ブロック鉄筋組上げ時の移動足場の側面図であ
る。

【図５】台車移動時の移動足場の側面図である。

【図６】型枠移動時の移動足場の側面図である。

【図７】ブロック鉄筋型枠上載置時の移動足場の側面図
である。

【図８】柱体ガイド架台設置時の移動足場の側面図であ
る。

【図９】鉄筋吊上げ架台移動時の移動足場の側面図であ
る。

【図１０】床版鉄筋組立準備時の移動足場の側面図であ
る。

【符号の説明】

１ 移動足場 ２ 主桁 ３ 台車 ４ 鉄筋吊上げ架台 ５ 柱体ガイド架台 ７ 作業床 ８ 前方柱体 ９ 後方柱体 ９ａ 脚部 １０ 中間柱体 １２ 昇降部材 １３ ブロック鉄筋 １４ 吊上げ金具 １５ 床版

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 床版鉄筋の組立に適合する作業床を載置
   し主桁上を移動し得る台車と、作業床に移動可能に立設
   する前方柱体と、伸縮可能な脚部を備え既設床版上に立
   設する後方柱体と、前方柱体と後方柱体間に架設する鉄
   筋吊上げ部と、後方柱体の近傍に設け前記脚部の縮小時
   に鉄筋吊上げ部を支持する中間柱体と、吊上げた組立鉄
   筋を床版型枠上に載置した後主桁上に設置して中間柱体
   及び後方柱体の移動をガイドし床版コンクリート打設前
   に撤去する柱体ガイド部材とを備えることを特徴とする
   床版鉄筋組立用の移動足場。
2. 【請求項２】 前記床版型枠は、主桁と平行に移動して
   所定位置で固定する床版型枠移動部を備えることを特徴
   とする請求項１記載の床版鉄筋組立用の移動足場。