JP3027630U - スポット溶接機の電極ドレス治具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電極を取付けたまま先端面の径を精度良く調
整仕上げするための電極ドレス治具を提供する。 【解決手段】 電極ドレス治具１１は、電極先端面１０
に当接する面板部１３と電極５の先端部外周に密接嵌合
する筒状部１６とを備えた有底筒状体１２にて構成さ
れ、その面板部１３に電極先端面１０の仕上げ径と同じ
径の罫書き線形成穴１５が形成されており、この治具１
１を電極５の先端部に対し嵌合させた後スポット溶接機
を通電せずに空打ちすることにより、電極先端にその仕
上げ径と同じ径の罫書き線１６を形成し、その罫書き線
１６に基づいて調整仕上げすることにより正確な電極先
端面１０を形成できるようにした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、スポット溶接機における電極の先端面を調整仕上げするために用い る電極ドレス治具に関する。

【０００２】

【従来の技術】

スポット溶接機１は、図５に示すように、上腕２と下腕３の先端部にそれぞれ 先端面が互いに対向するように電極４，５を設けるとともに各電極４，５にそれ ぞれ二次導線６，７を接続し、かつ上側の電極４を加圧シリンダ８又は機械的な 機構にて下側の電極５に対して加圧するように構成されており、電極４，５間に 溶接物９を挟んで加圧しながら電流を通じることにより、溶接物９の接触部の抵 抗発熱によって接合するものであり、その接合部には電極４，５の電極先端面１ ０とほぼ同径のナゲットと呼ばれる碁石状の凹部が形成される。

【０００３】 このスポット溶接において良好な接合部を得るには、加圧力、通電時間、電流 値などを適切にする必要がある。通電時間や電流値は精度良く制御することがで きるが、加圧力は加圧シリンダ８の押圧力を一定に制御しても、電極４，５の先 端面の径や形状変化によって大きく影響を受けることになる。そのため、良好な 接合部を得るには電極４，５の電極先端面１０の径や形状を一定に維持管理する 必要があるが、同じ電極４，５を用いて繰り返しスポット溶接を行なっていると 、図６（ａ）に示すような当初の電極先端面１０の状態から、図６（ｂ）に示す ように、電極先端面１０の径が大きくなるとともにその形状も崩れてくることに なり、良好な接合部が得られなくなる。

【０００４】 そこで、従来はナゲットや電極先端面１０自体から電極先端面１０の径や形状 が著しく適正でないことが判明すると、電極４，５を取り外してドレッサーにヨ って補修仕上げを行なっている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、電極４，５を取り外してドレッサーにて補修仕上げするには時 間と手間がかかり、スポット溶接機１の稼働率を低下させることになるという問 題があり、そのため電極先端面１０の径が多少大きくなってもそのまま溶接作業 を継続することが多く、スポット溶接の品質低下の原因になっていた。

【０００６】 また、電極４，５を取り外してドレスすると時間と手間がかかるので、電極４ ，５を取付けたまま、電極先端面１０の径を簡易にドレスすることも行なわれて いるが、手作業にて勘に頼って行なっているため、電極先端面１０を正確な径と 形状に仕上げることが困難で、十分な効果を発揮しないことが多いという問題が あった。

【０００７】 本考案は、上記従来の問題点に鑑み、電極を取付けたまま電極先端面の径を精 度良く調整仕上げできるようにするスポット溶接機の電極ドレス治具を提案する ことを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案は、後述の実施例における参照符号を参考 までに括弧書きして示すならば、スポット溶接機の電極(5) の先端部に対し嵌合 可能な有底筒状体(12)にて構成され、電極先端面(10)に当接する面板部(13)と電 極(5) の先端部外周に密接嵌合する筒状部(14)とを備え、前記面板部(13)には、 電極先端面(10)の仕上げ径と同じ径の罫書き線形成穴(15)が穿孔されている構成 を採用するものである。

【０００９】 罫書き線形成穴(15)は筒状部(14)の軸心に対して偏心して形成することがあり 、その場合筒状部(14)の外周面に罫書き線形成穴(15)の偏心方向に対して一定の 関係をもって目印(16)が形成される。

【００１０】

【考案の実施の形態】 以下、本考案のスポット溶接機の電極ドレス治具の一実施形態について、図１ 〜図３を参照しながら説明する。なお、スポット溶接機の全体構成については、 図５を参照して説明した従来例と同じであり、同一の構成要素については同一参 照符号を付して説明を省略する。

【００１１】 図１において、４は上側電極、５は下側電極、１１は電極ドレス治具である。 この電極ドレス治具１１は、スポット溶接機１の下側電極５の先端部に対し嵌合 可能な有底筒状体１２にて構成されており、図２にも示すように、電極先端面１ ０に当接する面板部１３と下側電極５の先端部外周に密接嵌合する筒状部１４と を備えている。面板部１３には、電極先端面１０の仕上げ径と同じ径の罫書き線 形成穴１５が形成されている。

【００１２】 以上の構成において、繰り返しスポット溶接を行なった結果、電極４，５の電 極先端面１０の外周縁１０ａの径が大きくなるとともにその形状が崩れると、電 極ドレス治具１１を下側電極５の先端部に対し密接嵌合させ、スポット溶接機１ を通電せずに図１（ａ）に示すように空打ちする。すると、図１（ｂ）に示すよ うに、電極４及び５の電極先端面１０にその仕上げ径と同じ径の罫書き線１６を 形成することができる。

【００１３】 次に、電極ドレス治具１１を取り外し、電極４及び５を取外すことなく、その まま罫書き線１６に基づいて先端部を調整仕上げすることにより、手作業によっ ても正確な電極先端面１０を形成することができる。かくして、スポット溶接機 １の稼働率を低下することなく、品質のばらつきの少ない高品質のスポット溶接 接合部を得ることができる。

【００１４】 以上の説明では、電極４，５が共に截頭円錐形で、それらの電極先端面１０が 電極径に比して小さい例を示したが、下側電極５のみが截頭円錐形で、上側電極 は平面形の場合には、図３に示すように、下側電極５に電極ドレス治具１１を嵌 合させるとともにこの電極ドレス治具１１と上側電極４との間に板材１７を介装 した状態でスポット溶接機１を空打ちすることにより、下側電極５にのみ電極先 端面１０の仕上げ径と同じ径の罫書き線１６を形成することができる。

【００１５】 また、上記実施形態では、電極４，５の軸心位置に電極先端面１０が形成され ており、電極ドレス治具１１の罫書き線形成穴１５も筒状部１４と同心状に形成 した例を示したが、スポット溶接機１によっては電極４，５の軸心に対して電極 先端面１０が偏心して形成されている場合があり、その場合に使用する電極ドレ ス治具を図４に示す。図４において、罫書き線形成穴１５は筒状部１４の軸心に 対して寸法ｄだけ偏心して形成されている。また、筒状部１４の外周面には、罫 書き線形成穴１５の偏心方向に対して一定の関係をもって、図示例では９０°ず れた方向に目印１８となる平坦面１９が形成されている。さらに、この平坦面１ ９には、電極ドレス治具１１の種類を表示した刻印２０が施されており、どのよ うな種類の電極に対する治具であるかを識別できるように成されている。

【００１６】 この電極ドレス治具１１においては、その筒状部１４の外周面に罫書き線形成 穴１５の偏心方向に対して一定の関係をもって目印１８を形成しているので、そ の目印１８を利用して電極５に対して電極ドレス治具１１の軸心まわりの位置決 めを行なって電極５に嵌合させ、上記と同様にスポット溶接機１を空打ちするこ とにより、電極５の軸心に対して電極先端面１０が偏心して形成されている場合 でも適正な位置に電極先端面の罫書き線を形成することができる。

【００１７】

【考案の作用及び効果】

本考案のスポット溶接機の電極ドレス治具は、以上のように実施し得るもので あって、電極先端面に当接する面板部と電極の先端部外周に密接嵌合する筒状部 とを備え、その面板部に電極先端面の仕上げ径と同じ径の罫書き線形成穴が形成 されているので、この治具を電極の先端部に対し密接嵌合させた後スポット溶接 機を通電せずに空打ちすることにより、電極先端面にその仕上げ径と同じ径の罫 書き線を形成することができ、電極を取付けたままその罫書き線に基づいて調整 仕上げすることにより正確な電極先端面を形成でき、スポット溶接機の稼働率を 低下することなく、品質のばらつきの少ない高品質のスポット溶接接合部を得る ことができるという効果を発揮する。

【００１８】 また、電極の軸心に対して電極先端面の中心が偏心している場合には、罫書き 線形成穴を筒状部の軸心に対して偏心して形成するとともに、その筒状部の外周 面に罫書き線形成穴の偏心方向に対して一定の関係をもって目印を形成すること により、その目印を利用して電極に対する治具の軸心まわりの位置決めを行なう ことができ、電極先端面が偏心して位置しても適正な位置に電極先端面の罫書き 線を形成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の電極ドレス治具の使用方法を示し、
（ａ）は使用状態の部分断面正面図、（ｂ）は使用後に
電極に形成された罫書き線を示す拡大平面図である。

【図２】 同実施形態の電極ドレス治具を示し、（ａ）
は縦断正面図、（ｂ）は下面図である。

【図３】 同実施形態の電極ドレス治具の他の使用状態
の部分断面正面図である。

【図４】 本考案の他の実施形態の電極ドレス治具を示
し、（ａ）は正面図、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａ矢視断面
図、（ｃ）は下面図である。

【図５】 スポット溶接機の要部の正面図である。

【図６】 スポット溶接機における電極の使用状態を示
し、（ａ）は電極の当初の状態、（ｂ）は多数溶接した
後の状態をそれぞれ示す正面図である。

【符号の説明】

１ スポット溶接機 ４ 上側電極 ５ 下側電極 １０ 電極先端面 １１ 電極ドレス治具 １２ 有底筒状体 １３ 面板部 １４ 筒状部 １５ 罫書き線形成穴 １８ 目印

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】スポット溶接機の電極(5) の先端部に対し
   嵌合可能な有底筒状体(12)にて構成され、電極先端面(1
   0)に当接する面板部(13)と電極(5) の先端部外周に密接
   嵌合する筒状部(14)とを備え、 前記面板部(13)には、電極先端面(10)の仕上げ径と同じ
   径の罫書き線形成穴(15)が形成されているスポット溶接
   機の電極ドレス治具。
2. 【請求項２】罫書き線形成穴(15)が筒状部(14)の軸心に
   対して偏心して形成され、筒状部(14)の外周面に罫書き
   線形成穴(15)の偏心方向に対して一定の関係をもって目
   印(18)が形成されている請求項１に記載のスポット溶接
   機の電極ドレス治具。